(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサンおよびそれを含有するコーティング用組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/20 20060101AFI20240409BHJP
C08G 77/18 20060101ALI20240409BHJP
C08G 77/28 20060101ALI20240409BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240409BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240409BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20240409BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20240409BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20240409BHJP
C09D 183/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G77/20
C08G77/18
C08G77/28
C08L83/06
C08L83/07
C08L83/08
C09D183/06
C09D183/07
C09D183/08
(21)【出願番号】P 2019205881
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2021-12-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 成紀
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179587(JP,A)
【文献】特開2018-084783(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0006323(KR,A)
【文献】国際公開第2020/189463(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/209083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位と、ケイ素原子に直接に結合する、下記一般式(2)で表される基から選ばれる少なくとも一種とを有し、下記平均構造式(3)で表されることを特徴とするオルガノポリシロキサン。
【化1】
(式中、R
1は、非置換
の炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1~12のアルキル基、シアノ基で置換された炭素原子数1~12のアルキル基
、非置換
の炭素原子数6~10のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数6~10のアリール基、またはシアノ基で置換された炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
【化2】
(式中、R
2は、水素原子、非置換
の炭素原子数1~10のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素原子数1~10のアルキル基、シアノ基で置換された炭素原子数1~10のアルキル基、非置換
の炭素原子数6~10のアリール基、
ハロゲン原子で置換された炭素原子数6~10のアリール基、またはシアノ基で置換された炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表し、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、一価の有機基を表すが、R
3の少なくとも一部は、(メタ)アクリロイルオキシ基
で置換された炭素原子数1~12のアルキル基またはメルカプト基で置換された炭素原子数1~12のアルキル基であり、a、b、c、d、eおよびfは、a>0、b≧0、
c>0、d≧0、e≧0、f>0の数を表す。)
【請求項2】
下記平均構造式(4)で表される請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【化4】
(式中、R
1、R
2、R
3、aおよびfは、前記と同じ意味を表し、cは、c>0の数を表す。)
【請求項3】
下記構造式(5)で表されるトリアルコキシシランを含むアルコキシシランを加水分解および縮合させる請求項1記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化5】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表す。)
【請求項4】
下記構造式(5)で表されるトリアルコキシシランと、下記構造式(7)で表されるアルコキシシランとを、加水分解および縮合により共重合させる請求項2記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表す。)
【化7】
(式中、R
2およびR
3は、前記と同じ意味を表す。)
【請求項5】
(A)請求項1または2記載のオルガノポリシロキサンおよび(B)硬化触媒を含有する硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B)硬化触媒が、アミン系化合物である請求項5記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項5または6記載の硬化性組成物が硬化してなる硬化物。
【請求項8】
(A)請求項1または2記載のオルガノポリシロキサンおよび(B)硬化触媒を含有するコーティング剤組成物。
【請求項9】
前記(B)硬化触媒が、アミン系化合物である請求項8記載のコーティング剤組成物。
【請求項10】
請求項8または9記載のコーティング剤組成物が硬化してなる被覆層を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンおよびそれを含有するコーティング用組成物に関し、さらに詳述すると、1分子中に特定の構成単位と、アルコキシシリル基および/またはシラノール基とを有するオルガノポリシロキサン、並びにこれを用いたコーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は、撥水性、耐熱性、耐候性、耐寒性、電気絶縁性、耐薬品性、および身体に対する安全性等の性質に優れていることから、現在、様々な分野で広く使用されている。
特に、SiO2単位(Q単位)やRSiO1.5単位(T単位)(Rは、アルキル基、フェニル基等の有機基)を主成分とする3次元架橋構造を持つオルガノポリシロキサンは、シリコーンレジンやシリコーンアルコキシオリゴマーと呼ばれ、その硬化性を利用して塗料、コーティング剤用途や、バインター用途等に広く使用されている。
【0003】
中でも、アルコキシシリル基を架橋基とする液状のシリコーンアルコキシオリゴマーは、可燃性で人体に有害な有機溶剤を含まない無溶剤型塗料の主剤として利用されている(非特許文献1参照)。
また、このアルコキシシリル基は、空気中の湿気により常温で架橋反応が進む。そのため、アルコキシシリル基を含有するシリコーンアルコキシオリゴマーは、硬化触媒を配合することで、常温でそのアルコキシシリル基が反応してシロキサンネットワークを形成するため、耐熱性や耐候性に優れた被膜を容易に形成できることから、屋外建造物から電子部品まで、幅広い分野で使用されている。
さらに、シリコーンアルコキシオリゴマーは、上述の通り硬化に加熱が必要なく、この物を主剤として用いた塗料は、現場施工が可能であるという利点もある。
【0004】
しかし、このようなシリコーンレジンやシリコーンアルコキシオリゴマーは、その3次元架橋構造により、硬化性が良く、表面硬度が高いという長所を持つ一方、その架橋密度の高さゆえに可撓性や耐屈曲性が不足し、成膜後に経時で、あるいは外部応力が加えられた際などに塗膜にクラックが生じる場合がある。
この可撓性や耐屈曲性を改良するために、シリコーンレジンやシリコーンアルコキシオリゴマーの合成時に、ジオルガノシロキサン(R2SiO1.0)単位(D単位)を組み込む方法が採られているが、この場合、構造中にD単位はランダムに組み込まれるため、可撓性を付与するためには多くのD単位を添加する必要があり、シリコーンレジンの長所である優れた硬化性や表面硬度が低下してしまうという問題点がある。
【0005】
また、分子末端をTEOS(Si(OEt)4)で封鎖したシリコーンオイルを添加する方法も提案されている(非特許文献1参照)が、シリコーンレジンやシリコーンアルコキシオリゴマーに対する相溶性が悪く、塗膜の白濁やハジキの原因となる。
【0006】
加えて、シリコーンアルコキシオリゴマーは、室温で十分な硬化性を確保するためには一般に有機金属化合物等の触媒の添加が不可欠であり、中でも特に有機スズ系化合物の添加が有効である。しかし、通常触媒として使用される有機スズ系化合物は人体や環境への毒性が懸念され、近年環境規制が厳しくなっており、その使用が敬遠されてきている。
また、脱アルコールタイプの室温硬化性組成物において有機スズ系化合物等の有機金属系触媒を使用した場合、発生するアルコールによって主鎖のシロキサン結合が切断(クラッキング)され、経時で硬化性が低下したり、増粘したりする等の保存安定性不良を生ずるという問題もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Polymeric Materia1s Science and Engineering,1998,Vol.79,192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、硬度と耐屈曲性とを両立し得、アミン系化合物を硬化触媒として用いた場合であっても速硬化性が良好であり、安全性に優れたオルガノポリシロキサンおよびそれを含有するコーティング用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1分子中に特定の構成単位としてアルコキシ-メチレン-ケイ素結合を有し、かつアルコキシシリル基および/またはシラノール基を有するオルガノポリシロキサンが、有機スズ化合物の代わりにアミン系化合物を硬化触媒として用いた場合でも速硬化性に優れ、硬度と耐屈曲性とを両立し得る硬化物を与えることを見出すとともに、この化合物を含む組成物が、コーティング剤等の材料を形成する硬化性組成物として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)で表される構成単位と、ケイ素原子に直接に結合する、下記一般式(2)で表される基から選ばれる少なくとも一種とを有することを特徴とするオルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、R
1は、非置換もしくは置換の炭素原子数1~12のアルキル基、または非置換もしくは置換の炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
【化2】
(式中、R
2は、水素原子、非置換もしくは置換の炭素原子数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換の炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
2. 下記平均構造式(3)で表される1のオルガノポリシロキサン、
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表し、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、一価の有機基を表し、a、b、c、d、eおよびfは、a>0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0、f>0の数を表す。)
3. 下記平均構造式(4)で表される1または2のオルガノポリシロキサン、
【化4】
(式中、R
1、R
2、R
3、aおよびfは、前記と同じ意味を表し、cは、c>0の数を表す。)
4. 下記構造式(5)で表されるトリアルコキシシランを含むアルコキシシランを加水分解および縮合させる1または2のオルガノポリシロキサンの製造方法、
【化5】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表す。)
5. 下記構造式(5)で表されるトリアルコキシシランと、下記構造式(7)で表されるアルコキシシランとを、加水分解および縮合により共重合させる3のオルガノポリシロキサンの製造方法、
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表す。)
【化7】
(式中、R
2およびR
3は、前記と同じ意味を表す。)
6. (A)1~3のいずれかのオルガノポリシロキサンおよび(B)硬化触媒を含有する硬化性組成物、
7. 前記(B)硬化触媒が、アミン系化合物である6の硬化性組成物、
8. 6または7の硬化性組成物が硬化してなる硬化物、
9. (A)1~3のいずれかのオルガノポリシロキサンおよび(B)硬化触媒を含有するコーティング剤組成物、
10. 前記(B)硬化触媒が、アミン系化合物である9のコーティング剤組成物、
11. 9または10のコーティング剤組成物が硬化してなる被覆層を有する物品
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサンは、1分子中に特定の構成単位としてアルコキシ-メチレン-ケイ素結合を有し、かつアルコキシシリル基および/またはシラノール基とを有しているため、従来のシリコーンレジンやシリコーンアルコキシオリゴマーに比べ、有機スズ化合物の代わりにアミン系化合物を硬化触媒として用いた場合でも速硬化性に優れ、硬度と耐屈曲性とを両立し得る硬化物を与えるという特性を有している。
このような特性を有する本発明のオルガノポリシロキサンを含む組成物は、コーティング剤等の材料を形成する硬化性組成物として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される構成単位、およびケイ素原子に直接に結合した下記一般式(2)で表される基を有する。
【0013】
【0014】
ここで、R1は、非置換もしくは置換の炭素原子数1~12、好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基、または非置換もしくは置換の炭素原子数6~10のアリール基を表す。
R1の炭素原子数1~12のアルキル基は、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよいが、直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル基等が挙げられるが、メチル、エチル、t-ブチル基が好ましく、メチル、エチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
また、炭素原子数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられるが、フェニル基が好ましい。
また、硬化性および硬度の観点から、R1は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましい。
【0015】
上記R2は、水素原子、非置換もしくは置換の炭素原子数1~10のアルキル基、または非置換もしくは置換の炭素原子数6~10のアリール基を表す。
R2の炭素原子数1~10のアルキル基は、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよいが、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等が挙げられるが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、n-オクチル基が好ましく、メチル、エチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
また、炭素原子数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられるが、フェニル基が好ましい。
特に、硬化性の観点から、R2は水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基が好ましい。
【0016】
なお、上記R1およびR2のアルキル基やアリール基の水素原子の一部または全部は、F、Cl、Br等のハロゲン原子、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、そのような基の具体例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基;2-シアノエチル基等のシアノ置換アルキル基等が挙げられる。
【0017】
本発明のオルガノポリシロキサンは、上記一般式(1)で表される構成単位と、ケイ素原子に直接に結合した、上記一般式(2)で表される基を有するものであれば特に限定されるものではなく、その中にオルガノポリシロキサン骨格からなる直鎖状構造、分岐状構造、または架橋構造を有していてもよい。
【0018】
より具体的には、本発明のオルガノポリシロキサンとしては、平均構造式が下記式(3)で表されるものが好ましく、このような化合物を用いることで、さらに良好な速硬化性、硬度および耐屈曲性が発揮される。
【0019】
【化9】
(式中、R
1およびR
2は、上記と同じ意味を表す。)
【0020】
ここで、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、一価の有機基を表す。
上記一価の有機基は、特に限定されるものではなく、例えば、上記一般式(1)中のR1で例示した炭素原子数1~12のアルキル基および炭素原子数6~10のアリール基等が挙げられる。
また、これらのアルキル基、アリール基の水素原子の一部または全部は置換基で置換されていてもよく、このような置換基としては、ハロゲン原子、ビニル基等のアルケニル基、グリシジル型エポキシ基、脂環式エポキシ基、チイラン基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、無水コハク酸基、アミノ基、エチレンジアミノ基、パーフルオロアルキル基、ポリオキシエチレン基等のポリエーテル基、パーフルオロポリエーテル基等が挙げられる。
【0021】
また、R3、R4およびR5は、異なる2種以上の一価の有機基であってもよく、その場合、異なる2種以上の一価の有機基の含有比率は任意であり、異なる2種以上の一価の有機基の含有比率の合計値が1となれば特に限定されるものではない。
例えば、R3としてアルキル基が0.5かつアリール基が0.5や、R4としてアルキル基が0.2かつグリシジル型エポキシ基含有アルキル基が0.8のように、上述した各種一価の有機基から任意に選択することが可能であり、また任意の含有比率をとることが可能である。
【0022】
これらの中でも、R3、R4およびR5は、速硬化性、硬度および耐屈曲性の観点から、好ましくは、置換基を有しない炭素原子数1~12のアルキル基、置換基を有しない炭素原子数6~10のアリール基、グリシジル型エポキシ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基であり、より好ましくは、置換基を有しない炭素原子数1~12のアルキル基である。
【0023】
また、a、b、c、d、eおよびfは、a>0、b≧0、c≧0、d≧0、e≧0、f>0の数を表すが、速硬化性、硬度および耐屈曲性の観点から、1000≧a>0、500≧b≧0、1000≧c≧0、1000≧d≧0、100≧e≧0、1000≧f>0の数が好ましく、500≧a>0、100≧b≧0、500≧c≧0、500≧d≧0、50≧e≧0、500≧f>0の数がより好ましく、500≧a>0、b=0、500≧c>0、d=0、e=0、500≧f>0の数がより一層好ましい。
【0024】
したがって、本発明のオルガノポリシロキサンとしては、平均構造式が下記式(4)で表されるものが好ましく、このような化合物を用いることで、さらに良好な速硬化性、硬度および耐屈曲性が発揮される。
【0025】
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
3、aおよびfは前記と同じ意味を表し、c>0の数を表す。)
【0026】
本発明のオルガノポリシロキサンの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、当該化合物を含む硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物に、十分な速硬化性、硬度および耐屈曲性を付与することを考慮すると、数平均分子量200~10万が好ましく、300~1万がより好ましく、400~5,000がより一層好ましく、500~1,000がさらに好ましい。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0027】
本発明のオルガノポリシロキサンは、下記構造式(5)で表されるトリアルコキシシラン(以下、トリアルコキシシラン(5)という)と、任意成分として下記構造式(6)、(7)、(8)および(9)で表される各種アルコキシシラン(以下、それぞれアルコキシシラン(6)、(7)、(8)または(9)という)とを、加水分解および縮合により共重合させて製造できる。
【0028】
【化11】
(式中、R
1~R
5は、上記と同じ意味を表す。)
【0029】
トリアルコキシシラン(5)の具体例としては、メトキシメチルトリメトキシシラン、エトキシメチルトリエトキシシラン等が挙げられるが、得られるオルガノポリシロキサンの速硬化性、硬度および耐屈曲性を考慮すると、メトキシメチルトリメトキシシラン、エトキシメチルトリエトキシシランが好ましい。
なお、例えば、上記具体例のメトキシメチルトリメトキシシラン、エトキシメチルトリエトキシシランの構造式を示せば、以下の通りである。
【0030】
【0031】
任意成分であるアルコキシシラン(6)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
任意成分であるアルコキシシラン(7)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、オクテニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8-アクリロキシオクチルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-アミノメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-アミノメチルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、8-アミノオクチルトリメトキシシラン、8-アミノオクチルトリエトキシシラン、N-フェニル-アミノメチルトリメトキシシラン、N-フェニル-アミノエチルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリメトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、8-クロロオクチルトリメトキシシラン、8-クロロオクチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールメチル-3-トリメトキシシリルプロピルエーテル、ポリエチレングリコールメチル-3-トリエトキシシリルプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールメチル-3-トリメトキシシリルプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールメチル-3-トリエトキシシリルプロピルエーテル等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、アルコキシシラン(7)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリエチレングリコールメチル-3-トリメトキシシリルプロピルエーテルが好ましく、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランがより好ましい。
【0034】
任意成分であるアルコキシシラン(8)の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、オクテニルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、アルコキシシラン(8)としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましく、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランがより好ましい。
【0036】
任意成分であるアルコキシシラン(9)の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられるが、トリメチルメトキシシランが好ましい。
【0037】
トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)との加水分解および縮合による共重合は、通常、無溶剤で行われるが、反応に用いるアルコキシシランの全てを溶解する有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、アセトン、トルエンおよびキシレン等)の存在下で行ってもよい。
有機溶媒を使用する場合、その使用量は特に制限はないが、通常、トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)の総質量1質量部に対して、20質量部以下が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、1~5質量部がより一層好ましい。
【0038】
加水分解および縮合による共重合は、上記のアルコキシシランの混合液または溶液に、加水分解反応の触媒となる酸または塩基と水を滴下または投入して行われる。この際、酸または塩基は、水溶液で滴下してもよい。
酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸やその水和物、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂等が挙げられ、塩酸、メタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂が好ましく、塩酸、陽イオン交換樹脂がより好ましく、塩酸がより一層好ましい。
酸の使用量は、通常、トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)の総モル数1モルに対して、0.001~1モルが好ましく、0.01~0.2モルがより好ましい。
【0039】
塩基としても、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド、トリエチルアミン、陰イオン交換樹脂等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウムが好ましく、酢酸ナトリウムがより好ましい。
塩基の使用量は、通常、トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)の総モル数1モルに対して、0.001~1モルが好ましく、0.01~0.2モルがより好ましい。
【0040】
加水分解および縮合による共重合に用いる水の使用量は、通常、トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)の総モル数1モルに対して、0.1~100モルが好ましく、0.3~10モルがより好ましく、0.5~2.0モルがより一層好ましい。
【0041】
トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)との加水分解および縮合による共重合の反応温度は特に制限はないが、通常0~150℃、好ましくは20~120℃、より好ましくは40~100℃、より一層好ましくは50~80℃である。
反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2~72時間である。
【0042】
トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)との加水分解および縮合による共重合を行った反応混合物の濃縮温度は特に制限はないが、通常10~150℃、好ましくは60~120℃である。
濃縮時の圧力は特に制限はなく、常圧下でも、減圧下でもよい。
【0043】
トリアルコキシシラン(5)と、任意成分であるアルコキシシラン(6)~(9)の量論比は、特に限定されるものではないが、得られるオルガノポリシロキサンの速硬化性、硬度および耐屈曲性を考慮すると、好ましくはトリアルコキシシラン(5)1モルに対して、アルコキシシラン(6)0~1,000モル、アルコキシシラン(7)0~1,000モル、アルコキシシラン(8)0~1,000モル、アルコキシシラン(9)0~1,000モルであり、より好ましくはトリアルコキシシラン(5)1モルに対して、アルコキシシラン(6)0~100モル、アルコキシシラン(7)0.001~100モル、アルコキシシラン(8)0~100モル、アルコキシシラン(9)0~100モル、さらに好ましくはトリアルコキシシラン(5)1モルに対して、アルコキシシラン(6)0モル、アルコキシシラン(7)0.001~50モル、アルコキシシラン(8)0モル、アルコキシシラン(9)0モルである。
【0044】
したがって、本発明のオルガノポリシロキサンは、トリアルコキシシラン(5)と、アルコキシシラン(7)とを、加水分解および縮合により共重合させて製造することが好ましく、このような製法によって得られた化合物を用いることで、さらに良好な速硬化性、硬度および耐屈曲性が発揮される。
【0045】
【化13】
(式中、R
1~R
3は、上記と同じ意味を表す。)
【0046】
本発明の硬化性組成物およびコーティング剤組成物(以下、両者を併せて組成物という。)は、上述した(A)オルガノポリシロキサン、および(B)硬化触媒を少なくとも含有する。
本発明の組成物は、上述した本発明のオルガノポリシロキサンを含んでいるため、これを用いて固体基材を被覆処理した場合、従来のオルガノポリシロキサンを用いた場合に比べ、本発明のオルガノポリシロキサンの構造に起因し、硬化被膜の速硬化性、硬度および耐屈曲性が向上する。
【0047】
一方、硬化触媒(B)は、(A)オルガノポリシロキサンに含まれる加水分解性シリル基が空気中の水分で加水分解縮合される反応を促進し、組成物の硬化を促進させる成分であり、効率的に硬化させるために添加される。
硬化触媒(B)の添加量は特に限定されるものではないが、硬化速度を適切な範囲に調整して所望の物性の硬化被膜を作製するとともに、塗布時の作業性を向上させること、さらには添加に伴う経済性などを考慮すると、(A)成分100質量部に対して0.01~50質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましく、0.1~5質量部がより一層好ましい。
【0048】
硬化触媒としては、一般的な湿気縮合硬化型組成物の硬化に用いられる硬化触媒であれば特に限定されるものではなく、その具体例としては、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシド等のアルキル錫化合物;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジバーサテート等のアルキル錫エステル化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル、およびチタンキレート化合物並びにそれらの部分加水分解物;ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート、鉄-2-エチルヘキソエート、コバルト-2-エチルヘキソエート、マンガン-2-エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、三水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、アルミニウムアシレートの塩、アルミノシロキシ化合物、アルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N′-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エタン-1,2-ジアミン、N,N′-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エタン-1,2-ジアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン;ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン、テトラメチルグアニジン等のアミン化合物およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジエトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシランおよびシロキサン;N,N,N’,N’,N'',N''-ヘキサメチル-N'''-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-ホスホリミディックトリアミド等のホスファゼン塩基を含有するシランおよびシロキサン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
【0049】
これらの中でも、より反応性に優れることから、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N′-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エタン-1,2-ジアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランが好ましく、組成物の硬化性の観点からジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、テトラn-ブトキシチタン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランがより好ましく、有機スズ系化合物を非含有とし、より低毒性とすることから、テトラn-ブトキシチタン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランがより一層好ましく、組成物の硬化性の観点からテトラn-ブトキシチタン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0050】
また、本発明の組成物の粘度を調整して作業性を良くする目的や、組成物の硬化性、得られる塗膜の硬度、可撓性などを調整する目的で、使用目的に応じて、任意でアルコキシシリル基を含有するシラン化合物、1分子中にアルコキシシリル基および/またはシラノール基を有するシリコーンアルコキシオリゴマー、並びにシリコーンレジンから選択される1種あるいは2種以上の化合物を、(A)成分のオルガノポリシロキサンとは別に混合してもよい。
【0051】
アルコキシシリル基を含有するシラン化合物としては特に限定されるものではないが、その具体例としては、上記アルコキシシラン(5)~(9)で例示されたもの等が挙げられる。
1分子中にアルコキシシリル基および/またはシラノール基を有するシリコーンアルコキシオリゴマーとしては、特に限定されるものではなく、市販品として入手可能なものでもよい。その具体例としては、信越化学工業(株)製 X-40-9250、X-40-9246、X-40-9225、KR-500、KR-515、KC-89S、KR-401N、X-40-9227、KR-510、KR-9218、KR-400、X-40-2327、KR-401等が挙げられる。
また、シリコーンレジンとしては、特に限定されるものではなく、市販品として入手可能なものでも良い。その具体例としては、信越化学工業(株)製 KR-220L、KR-251、KR-112、KR-300、KR-311、KR-480、KR-216等が挙げられる。
【0052】
さらに、本発明の組成物は、実質的に有機溶剤(多くの場合、人体に有害であり可燃性を有する)を含まない無溶剤型の形態が好ましいが、その用途や作業性の面から溶剤を加えて用いることもできる。
ここで、「実質的に」とは、組成物中に含まれる溶剤が1質量%以下、特に0.1質量%以下であることを意味する。
使用可能な溶剤の具体例としては、(A)オルガノポリシロキサンの製造時に使用した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
なお、溶剤としては、減圧留去によって完全に除去できなかった反応溶媒など、硬化性組成物ならびにコーティング剤組成物中に意図的に添加した成分ではないものも含む。
【0053】
なお、本発明の組成物には、使用目的に応じて、接着性改良剤、無機および有機の紫外線吸収剤、光安定剤、保存安定性改良剤、可塑剤、充填剤、顔料等の各種添加剤を添加することができる。
【0054】
以上説明した本発明の組成物を、固体基材の表面に塗布し、硬化させて被覆層を形成することで、硬化物品である被覆固体基材が得られる。
塗布方法としては特に限定されず、その具体例としては、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、ローラーコート、刷毛塗り、バーコート、フローコート等の公知の方法から適宜選択して用いることができる。
固体基材としても特に限定されず、その具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート類およびポリカーボネートブレンド、ポリ(メタクリル酸メチル)等のアクリル系樹脂、ポリ(エチレンテレフタレート),ポリ(ブチレンテレフタレート),不飽和ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとのブレンド、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレン樹脂などの有機ポリマー基材、鋼板等の金属基材、塗料塗布面、ガラス、セラミック、コンクリート、スレート板、テキスタイル、木材、石材、瓦、(中空)シリカ,チタニア,ジルコニア,アルミナ等の無機フィラー、ガラス繊維をはじめとしたガラスクロス,ガラステープ,ガラスマット,ガラスペーパー等のガラス繊維製品などが挙げられ、基材の材質および形状については特に限定されるものではないが、本発明の組成物は、鋼板、ガラスの被覆に特に好適に用いることができる。
【0055】
本発明の組成物は、雰囲気中の水分と接触することで、(A)オルガノポリシロキサンの加水分解縮合反応が進行し、硬化反応が開始する。雰囲気中の水分の指標としては10~100%RHの任意の湿度でよく、空気中の湿気で充分であるが、一般に、湿度が高い程早く加水分解が進行するため、所望により雰囲気中に水分を加えてもよい。
硬化反応温度および時間は、使用する基材、水分濃度、触媒濃度、および加水分解性基の種類等の因子に応じて適宜変更し得る。通常、使用する基材の耐熱温度を超えない範囲で1分から1週間程度である。
本発明の組成物は、常温でも良好に硬化が進行するため、特に、現場施工などで室温硬化が必須となる場合でも、数分から数時間で塗膜表面のベタツキ(タック)がなくなり、作業性に優れているが、基材の耐熱温度を超えない範囲内に加熱処理を行っても構わない。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記において、各生成物の粘度は、オストワルド粘度計による25℃における測定値であり、分子量は、東ソー(株)製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)装置を使用し、溶剤としてトルエン、検出器としてRIを用いたGPC測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量(以下Mn)である。
シリコーン平均組成は、日本電子(株)製300MHz-NMR測定装置を用いて、1H-NMRおよび29Si-NMRにおける検出スペクトルの積分値から算出した。
各生成物中に含まれるシラノール性水酸基の含有量(質量%)は、各生成物にグリニャール試薬(メチルマグネシウムヨージド)を作用させた際のメタンガス発生量より定量した。
【0057】
[1]オルガノポリシロキサンの合成
[参考例1-1]オルガノポリシロキサン1の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン150g(0.90モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸17.9gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン1を得た(収量101g)。得られたオルガノポリシロキサン1は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度124mm2/s、Mn840、シラノール性水酸基の含有量0.1質量%であった。
【0058】
【0059】
[参考例1-2]オルガノポリシロキサン2の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、エトキシメチルトリエトキシシラン150g(0.67モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸13.4gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生エタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン2を得た(収量96g)。得られたオルガノポリシロキサン2は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度20mm2/s、Mn815、シラノール性水酸基の含有量0.5質量%であった。
【0060】
【0061】
[参考例1-3]オルガノポリシロキサン3の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン3.0g(0.02モル)およびメチルトリメトキシシラン150g(1.1モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸22.2gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン3を得た(収量93g)。得られたオルガノポリシロキサン3は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度44mm2/s、Mn820、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0062】
【0063】
[参考例1-4]オルガノポリシロキサン4の合成
0.1N-塩酸の使用量を30.2gに変更した以外は、参考例1-3と同様にしてオルガノポリシロキサン4を得た(収量73g)。得られたオルガノポリシロキサン4は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度300mm2/s、Mn2,490、シラノール性水酸基の含有量0.3質量%であった。
【0064】
【0065】
[参考例1-5]オルガノポリシロキサン5の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、エトキシメチルトリエトキシシラン19.4g(0.09モル)およびメチルトリエトキシシラン140g(0.79モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸17.3gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生エタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン5を得た(収量87g)。得られたオルガノポリシロキサン5は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度12mm2/s、Mn600、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0066】
【0067】
[参考例1-6]オルガノポリシロキサン6の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン83.1g(0.5モル)およびジメチルジメトキシシラン60.1g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン6を得た(収量90g)。得られたオルガノポリシロキサン6は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度70mm2/s、Mn820、シラノール性水酸基の含有量0.1質量%であった。
【0068】
【0069】
[参考例1-7]オルガノポリシロキサン7の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン3.0g(0.02モル)、メチルトリメトキシシラン75g(0.55モル)およびジメチルジメトキシシラン66.2g(0.55モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸22.2gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン7を得た(収量85g)。得られたオルガノポリシロキサン7は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度32mm2/s、Mn870、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0070】
【0071】
[参考例1-8]オルガノポリシロキサン8の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン83.1g(0.5モル)およびフェニルトリメトキシシラン99.1g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン8を得た(収量128g)。得られたオルガノポリシロキサン8は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度170mm2/s、Mn1,410、シラノール性水酸基の含有量0.2質量%であった。
【0072】
【0073】
[参考例1-9]オルガノポリシロキサン9の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン83.1g(0.5モル)およびジフェニルジメトキシシラン122.1g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン9を得た(収量150g)。得られたオルガノポリシロキサン9は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度80mm2/s、Mn1,000、シラノール性水酸基の含有量0.5質量%であった。
【0074】
【0075】
[参考例1-10]オルガノポリシロキサン10の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン83.1g(0.5モル)およびテトラメトキシシラン76.1g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン10を得た(収量105g)。得られたオルガノポリシロキサン10は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度580mm2/s、Mn1180、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0076】
【0077】
[参考例1-11]オルガノポリシロキサン11の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン16.6g(0.1モル)、フェニルトリメトキシシラン119g(0.6モル)およびジメチルジメトキシシラン36.1g(0.3モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン11を得た(収量120g)。得られたオルガノポリシロキサン11は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度160mm2/s、Mn1,500、シラノール性水酸基の含有量0.3質量%であった。
【0078】
【0079】
[実施例1-12]オルガノポリシロキサン12の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン10g(0.06モル)、メチルトリメトキシシラン8.2g(0.06モル)および3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン206.2g(0.88モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸13.5gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン12を得た(収量185g)。得られたオルガノポリシロキサン12は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度45mm2/s、Mn940、シラノール性水酸基の含有量0.2質量%であった。
【0080】
【0081】
[参考例1-13]オルガノポリシロキサン13の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン41.6g(0.25モル)、メチルトリメトキシシラン34.1g(0.25モル)および3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン118.2g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸14.4gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン13を得た(収量150g)。得られたオルガノポリシロキサン13は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度60mm2/s、Mn930、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0082】
【0083】
[実施例1-14]オルガノポリシロキサン14の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン62.3g(0.37モル)、メチルトリメトキシシラン51g(0.37モル)および3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン49.1g(0.25モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸15.3gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン14を得た(収量120g)。得られたオルガノポリシロキサン14は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度12mm2/s、Mn750、シラノール性水酸基の含有量0.2質量%であった。
【0084】
【0085】
[実施例1-15]オルガノポリシロキサン15の合成
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン206.2gの代わりに、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン218.5g(0.88モル)を用いた以外は、実施例1-12と同様にしてオルガノポリシロキサン15を得た(収量195g)。得られたオルガノポリシロキサン15は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度50mm2/s、Mn1,000、シラノール性水酸基の含有量0.1質量%であった。
【0086】
【0087】
[参考例1-16]オルガノポリシロキサン16の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン73.9g(0.44モル)、ジフェニルジメトキシシラン81.5g(0.33モル)およびビニルトリメトキシシラン32.9g(0.22モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸13.5gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン16を得た(収量150g)。得られたオルガノポリシロキサン16は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度130mm2/s、Mn1,130、シラノール性水酸基の含有量0.1質量%であった。
【0088】
【0089】
[参考例1-17]オルガノポリシロキサン17の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン83.1g(0.5モル)およびN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン111.1g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン17を得た(収量140g)。得られたオルガノポリシロキサン17は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度600mm2/s、Mn1,230、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0090】
【0091】
[参考例1-18]オルガノポリシロキサン18の合成
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン111.1gの代わりに、3-アミノプロピルトリメトキシシラン89.6g(0.5モル)を用いた以外は、参考例1-17と同様にしてオルガノポリシロキサン18を得た(収量120g)。得られたオルガノポリシロキサン18は、無色透明液体であり、粘度400mm2/s、Mn1,060、シラノール性水酸基の含有量0質量%、平均構造式が下記式であった。
【0092】
【0093】
[参考例1-19]オルガノポリシロキサン19の合成
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン111.1gの代わりに、(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル)トリメトキシシラン234.1g(0.5モル)を用いた以外は、参考例1-17と同様にしてオルガノポリシロキサン19を得た(収量260g)。得られたオルガノポリシロキサン19は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度90mm2/s、Mn1,400、シラノール性水酸基の含有量0.5質量%であった。
【0094】
【0095】
[参考例1-20]オルガノポリシロキサン20の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLのセパラブルフラスコに、メトキシメチルトリメトキシシラン83.1g(0.5モル)およびポリエチレングリコールメチル-3-トリメトキシシリルプロピルエーテル(ポリエチレングリコール部分の平均重合度10)317.3g(0.5モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸19.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン20を得た(収量340g)。得られたオルガノポリシロキサン20は、下記平均構造式で表される黄色透明液体であり、粘度80mm2/s、Mn1,820、シラノール性水酸基の含有量0.3質量%であった。
【0096】
【0097】
[比較例1-1]オルガノポリシロキサン21の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メチルトリメトキシシラン150g(1.1モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸21.8gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生メタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン21を得た(収量90g)。得られたオルガノポリシロキサン21は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度50mm2/s、Mn860、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0098】
【0099】
[比較例1-2]オルガノポリシロキサン22の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた300mLのセパラブルフラスコに、メチルトリエトキシシラン150g(0.84モル)を仕込み、撹拌下、25℃で0.1N-塩酸16.7gを滴下し、60℃で2時間加水分解縮合した。これを120℃まで加熱して副生エタノールを常圧留去した後、濾過し、オルガノポリシロキサン22を得た(収量81g)。得られたオルガノポリシロキサン22は、下記平均構造式で表される無色透明液体であり、粘度11mm2/s、Mn600、シラノール性水酸基の含有量0質量%であった。
【0100】
【0101】
[2]コーティング剤組成物および硬化被膜の作製
[参考例2-1]
上記参考例1-1で得られたオルガノポリシロキサン1 100質量部と、硬化触媒であるテトラn-ブトキシチタン2質量部とを撹拌機を用いて均一に混合し、コーティング剤組成物を調製した。
得られたコーティング剤組成物を、25℃、50%RHの空気下でバーコーターNo.14を用いてガラス板または磨き鋼板に塗布し、25℃、50%RHの空気下で1日間乾燥・硬化させ、硬化被膜を作製した。
【0102】
[参考例2-2~2-11、2-13、2-16~2-20、実施例2-12、2-14、2-15、および比較例2-1~2-2]
参考例2-1のオルガノポリシロキサン1を、参考例1-2~1-11、1-13、1-16~1-20、実施例1-12、1-14、1-15で得られたオルガノポリシロキサン2~20、および比較例1-1~1-2で得られたオルガノポリシロキサン21~22にそれぞれ変更した以外は、参考例2-1と同様にしてコーティング剤組成物および硬化被膜を作製した。
【0103】
[参考例2-21]
テトラn-ブトキシチタン2質量部に代えて、ジ-n-ブトキシ(エチルアセトアセテート)アルミニウム2質量部を硬化触媒として用いた以外は、参考例2-1と同様にしてコーティング剤組成物および硬化被膜を作製した。
【0104】
[参考例2-22]
テトラn-ブトキシチタン2質量部に代えて、3-アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を硬化触媒として用いた以外は、参考例2-2と同様にしてコーティング剤組成物および硬化被膜を作製した。
【0105】
[参考例2-23]
テトラn-ブトキシチタン2質量部に代えて、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン2質量部を硬化触媒として用いた以外は、参考例2-1と同様にしてコーティング剤組成物および硬化被膜を作製した。
【0106】
[比較例2-3]
テトラn-ブトキシチタン2質量部に代えて、3-アミノプロピルトリエトキシシラン2質量部を硬化触媒として用いた以外は、比較例2-1と同様にしてコーティング剤組成物および硬化被膜を作製した。
【0107】
上記参考例2-1~2-11、2-13、2-16~2-23、実施例2-12、2-14、2-15、および比較例2-1~2-3で作製した硬化膜について下記の評価を実施した。それらの結果を表1,2および3に併せて示す。
〔指触乾燥時間〕
上記塗布方法にてコーティング剤組成物をガラス板に塗布して得た試験片を25℃、50%RHの空気下に放置し、湿気硬化が進行することによって、塗布表面を指で圧しても塗膜が指に付着しなくなるまでの時間を示した。値が小さいほど硬化性は良好であることを示す。
〔鉛筆硬度〕
上記塗布方法にてガラス板に硬化被膜を形成した試験片を、JIS K 5600-5-4記載の鉛筆引掻き試験に準じた方法で750gの荷重をかけて測定し、その結果を示した。
〔耐屈曲性〕
上記塗布方法にて磨き鋼板に硬化被膜を形成した試験片を、JIS K 5600-5-1記載の方法に準じて円筒形マンドレル(タイプ1)を用いて測定し、その結果を示した。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表1,2および3に示されるように、参考例1-1~1-11、1-13、1-16~1-20、実施例1-12、1-14、1-15で得られたオルガノポリシロキサン1~20を用いた参考例2-1~2-11、2-13、2-16~2-23、実施例2-12、2-14、2-15で作製した硬化被膜は、比較例2-1~2-2で作製した硬化被膜に比べ、硬度と耐屈曲性とを両立し得、アミン系化合物を硬化触媒として用いた場合であっても速硬化性に優れていることがわかる。
一方、比較例2-1~2-2で作製した硬化被膜は、硬度、耐屈曲性および硬化性が不十分であった。また、比較例2-3では硬化が進行しなかった。
【0112】
以上説明したとおり、本発明のオルガノポリシロキサンは、アミン系化合物を硬化触媒として用いた場合であっても速硬化性に優れているうえに、従来のシリコーンレジンやシリコーンアルコキシオリゴマーでは困難であった、硬度と耐屈曲性との両立を達成することのできる硬化被膜を得ることができる。