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特許7468033距離測定装置、移動体、歩行ロボット、3次元計測装置、距離画像カメラ、及び距離測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】距離測定装置、移動体、歩行ロボット、3次元計測装置、距離画像カメラ、及び距離測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240409BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20240409BHJP
   G01S 17/87 20200101ALI20240409BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/894
G01S17/87
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020050240
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148669
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 靖厚
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008483(JP,A)
【文献】特開2018-059826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0304042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0077074(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S17/00-17/95
G01C 3/06- 3/08
G01B11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の遅れ量を有する第1の距離イメージセンサであって、測定開始信号が入力され、前記測定開始信号をトリガーにして前記第1の遅れ量に応じたタイミングでパルス変調された第1の発光変調信号と前記第1の発光変調信号に対して同相である第1の蓄積タイミング信号と前記第1の発光変調信号に対して逆相である第2の蓄積タイミング信号とを出力する第1のタイミング制御手段と、測定対象物からの反射光を受光し、前記第1の蓄積タイミング信号に同期して第1の電荷量を蓄積し、前記第2の蓄積タイミング信号に同期して第2の電荷量を蓄積する第1の受光手段とを含む第1の距離イメージセンサと、
第2の遅れ量を有する第2の距離イメージセンサであって、前記第1の距離イメージセンサと同じタイミングの前記測定開始信号をトリガーにして前記第2の遅れ量に応じたタイミングでパルス変調された第2の発光変調信号と前記第2の発光変調信号に対して同相であるの蓄積タイミング信号と前記第2の発光変調信号に対して逆相である第4の蓄積タイミング信号とを出力する第2のタイミング制御手段と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記第3の蓄積タイミング信号に同期して第3の電荷量を蓄積し、前記第4の蓄積タイミング信号に同期して第4の電荷量を蓄積する第2の受光手段とを含む第2の距離イメージセンサと、
前記第1の発光変調信号又は前記第2の発光変調信号に応じて変調された光を前記測定対象物に照射する投光手段と、
記第1の発光変調信号と前記第2の発光変調信号のタイミングのずれを計測する計測手段と、
前記第1の荷量及び前記第2の電荷量を用いて前記測定対象物までの第1の距離を求め、前記第荷量及び前記第4の電荷量を用いて前記測定対象物までの第2の距離を求め、前記計測手段で計測されたずれから換算される補正量を用いて前記第2の距離を補正する演算手段と、
を有する距離測定装置。
【請求項2】
前記投光手段が前記第1の発光変調信号又は前記第2の発光変調信号に応じて変調された光を測定対象物に照射し前記計測手段が前記第1の発光変調信号と前記第2の発光変調信号のタイミングのずれを計測する処理が複数回繰り返される場合、前記計測手段は、前記ずれを複数回計測して平均した値を前記ずれの計測値として出力する
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記計測手段は、前記測定開始信号から前記第1の発光変調信号までの第1の時間と、前記測定開始信号から前記第2の発光変調信号までの第2の時間とを測定し、前記第1の時間と前記第2の時間に基づいて前記ずれを求める
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記第1の受光手段と前記第2の受光手段の少なくとも1つは、複数の画素が2次元的に配列されており、画素ごとに電荷を蓄積可能であ
請求項1から3のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記第1の距離に応じた第1の距離画像を求め、前記補正された第2の距離に応じた第2の距離画像を求め、前記第1の距離画像と前記第2の距離画像とが合成された距離画像を生成して出力する
請求項4に記載の距離測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の距離測定装置を備えた移動体。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の距離測定装置を備えた歩行ロボット。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の距離測定装置を備えた3次元計測装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の距離測定装置を備えた距離画像カメラ。
【請求項10】
測定開始信号が入力され、前記測定開始信号をトリガーにして第1の距離イメージセンサの第1の遅れ量に応じたタイミングでパルス変調された第1の発光変調信号と前記第1の距離イメージセンサと同じタイミングの前記測定開始信号をトリガーにして第2の距離イメージセンサの第2の遅れ量に応じたタイミングでパルス変調された第2の発光変調信号とを出力する変調ステップと、
前記第1の発光変調信号または前記第2の発光変調信号に応じて変調された光を測定対象物に照射する投光ステップと、
前記測定対象物からの反射光を第1の受光手段で受光し、前記第1の発光変調信号に対して同相である第1の蓄積タイミング信号に同期して前記第1の受光手段で第1の電荷を蓄積し、前記第1の発光変調信号に対して逆相である第2の蓄積タイミング信号に同期して前記第1の受光手段で第2の電荷量を蓄積する第1の受光ステップと、
前記測定対象物からの反射光を第2の受光手段で受光し、前記第2の発光変調信号に対して同相であるの蓄積タイミング信号に同期して前記第2の受光手段で第3の電荷を蓄積し、前記第2の発光変調信号に対して逆相である第4の蓄積タイミング信号に同期して前記第2の受光手段で第4の電荷量を蓄積する第2の受光ステップと、
前記第1の発光変調信号と前記第2の発光変調信号のタイミングのずれを計測する計測ステップと、
前記第1の荷量及び前記第2の電荷量を用いて前記測定対象物までの第1の距離を求め、前記第荷量及び前記第4の電荷量を用いて前記測定対象物までの第2の距離を求め、前記計測ステップで計測されたずれから換算される補正量を用いて前記第2の距離を補正する演算ステップと、
を含む距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置、移動体、歩行ロボット、3次元計測装置、距離画像カメラ、及び距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体までの距離を測定する方法として、TOF(Time Of Flight)と呼ばれる光の飛行時間を利用した測距方法が知られている。この方法では、物体に強度変調された照射光を照射し、物体からの反射光を距離イメージセンサーで受光して、照射光と反射光の位相差を画素ごとに検出し、画素ごとに物体までの距離を求める。このとき、高解像度の距離画像を得るために、複数の距離イメージセンサーを用いて測距をすることがある。
【0003】
特許文献1には、撮像装置において、マスタの制御回路が発光部に発光タイミング信号を送信して発光部を発光させ、第1の撮像部及びスレーブの制御回路に撮像タイミング信号を送信し、スレーブの制御回路が第2の撮像部にその撮像タイミング信号を転送することが記載されている。これにより、特許文献1によれば、複数の撮像部が同時に撮像を行うため、複数の撮像部間の撮像タイミングの差異への配慮が不要になるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、マスタの制御回路から第1の撮像部へ撮像タイミング信号を送信するトリガーとなる条件とスレーブの制御回路から第2の撮像部へ撮像タイミング信号を送信するトリガーとなる条件とが異なるため、第1の撮像部と第2の撮像部とで撮像タイミングがずれやすく、正確な測距が困難になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高解像度且つ高精度の距離画像を得ることできる距離測定装置、移動体、歩行ロボット、3次元計測装置、距離画像カメラ、及び距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかる距離測定装置は、第1の遅れ量を有する第1の距離イメージセンサであって、測定開始信号が入力され、前記測定開始信号をトリガーにして前記第1の遅れ量に応じたタイミングでパルス変調された第1の発光変調信号と前記第1の発光変調信号に対して同相である第1の蓄積タイミング信号と前記第1の発光変調信号に対して逆相である第2の蓄積タイミング信号とを出力する第1のタイミング制御手段と、測定対象物からの反射光を受光し、前記第1の蓄積タイミング信号に同期して第1の電荷量を蓄積し、前記第2の蓄積タイミング信号に同期して第2の電荷量を蓄積する第1の受光手段とを含む第1の距離イメージセンサと、第2の遅れ量を有する第2の距離イメージセンサであって、前記第1の距離イメージセンサと同じタイミングの前記測定開始信号をトリガーにして前記第2の遅れ量に応じたタイミングでパルス変調された第2の発光変調信号と前記第2の発光変調信号に対して同相であるの蓄積タイミング信号と前記第2の発光変調信号に対して逆相である第4の蓄積タイミング信号とを出力する第2のタイミング制御手段と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記第3の蓄積タイミング信号に同期して第3の電荷量を蓄積し、前記第4の蓄積タイミング信号に同期して第4の電荷量を蓄積する第2の受光手段とを含む第2の距離イメージセンサと、前記第1の発光変調信号又は前記第2の発光変調信号に応じて変調された光を前記測定対象物に照射する投光手段と、記第1の発光変調信号と前記第2の発光変調信号のタイミングのずれを計測する計測手段と、前記第1の荷量及び前記第2の電荷量を用いて前記測定対象物までの第1の距離を求め、前記第荷量及び前記第4の電荷量を用いて前記測定対象物までの第2の距離を求め、前記計測手段で計測されたずれから換算される補正量を用いて前記第2の距離を補正する演算手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高解像度且つ高精度の距離画像を得ることできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、距離測定装置の基本構成を示す図である。
図2図2は、距離測定装置の基本動作を示す波形図である。
図3図3は、実施形態にかかる距離測定装置の構成を示す図である。
図4図4は、実施形態における距離測定装置の動作を示す波形図である。
図5図5は、実施形態における時間計測部の構成を示す回路図である。
図6図6は、実施形態におけるずれ時間の計測を示す波形図である。
図7図7は、実施形態にかかる距離測定装置の動作を示す波形図である。
図8図8は、実施形態の変形例にかかる距離測定装置の構成を示す図である。
図9図9は、実施形態の変形例における時間差の計測を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
実施形態にかかる距離測定装置は、物体までの距離を測定する方法として、TOF(Time Of Flight)と呼ばれる光の飛行時間を利用した測距方法を用いる。この方法では、物体に強度変調された照射光を照射し、物体からの反射光を距離イメージセンサーで受光して、照射光と反射光の位相差を画素ごとに検出し、画素ごとに物体までの距離を求める。
【0010】
例えば、距離測定装置1は、基本的に、図1に示すように構成される。図1は、距離測定装置の基本構成を示す図である。図1では、距離イメージセンサーが1つ、投光部が1つの距離測定装置の構成を示す。
【0011】
距離測定装置1は、投光部10、距離イメージセンサーS、及び距離演算部30を有する。距離イメージセンサーSは、タイミング制御部21及び受光部22を有する。
【0012】
投光部10には、光源10a及び駆動回路10bを有している。光源10aは、例えば、LED、LD、VCSELなどである。駆動回路10bは、光源10aを駆動する。タイミング制御部21から発光変調信号が入力されると、駆動回路10bは、発光変調信号に応じた電流を光源10aに流す。これに応じて、変調された光が光源10aから測定対象物2に向けて照射される。
【0013】
距離イメージセンサーSは、小型化のために1つのチップとして構成され得る。受光部22は、複数の画素を有する。受光部22は、複数の画素が2次元的に配列されたエリアセンサーであってもよい。各画素は、蓄積部A及び蓄積部Bを有している。蓄積部A及び蓄積部Bは、互いに独立して電荷蓄積動作を行うように構成されている。蓄積部A及び蓄積部Bは、それぞれ、受光した光に応じて光電変換で発生した電荷を蓄積する。各画素は、測定対象物2から反射された変調光を受光する。各画素において、蓄積部Aは、タイミング制御部21からの露光タイミング信号Aに従って電荷蓄積動作を行い、蓄積部Bは、露光タイミング信号Bに従って電荷蓄積動作を行う。
【0014】
具体的には、受光部22は、露光タイミング信号Aがアクティブレベル(例えば、Hレベル)の期間において、各画素の蓄積部Aに電荷を蓄積させ、露光タイミング信号Bがアクティブレベル(例えば、Hレベル)の期間において、各画素の蓄積部Bに電荷を蓄積させる(図2参照)。
【0015】
タイミング制御部21は、外部からトリガー信号(測定開始信号)が入力されると、発光変調信号のパルスを繰り返し生成して投光部10へ出力する。それとともに、タイミング制御部21は、露光タイミング信号Aのパルスを繰り返し生成して受光部22の蓄積部Aへ出力し、露光タイミング信号Bのパルスを繰り返し生成して受光部22の蓄積部Bへ出力する。これにより、各画素の蓄積部A及び蓄積部Bに、それぞれ、電荷が出力されたパルス数に応じて蓄積されていく。所定の回数(所定のパルス数)で蓄積部A及び蓄積部Bの各電荷蓄積動作が繰り返された後、タイミング制御部21は、発光変調信号、露光タイミング信号A、露光タイミング信号Bの出力をストップさせ、受光データ出力指示信号を受光部22へ出力する。
【0016】
受光部22は、タイミング制御部21から受光データ出力指示信号が入力されると、各画素の蓄積部A、蓄積部Bに蓄積された電荷量を電圧に変換し受光信号A、受光信号Bを生成し、受光信号A、受光信号BをAD変換して受光データA、受光データBを生成する。受光部22は、受光データA、受光データBを順次にタイミング制御部21へ出力する。タイミング制御部21は、受光データA、受光データBをそのまま、あるいは所定のフォーマットに変換して距離演算部30へ出力する。
【0017】
距離演算部30は、距離イメージセンサーSから送られてくる受光データA、受光データBの情報を含んだセンサデータから、各画素における距離データを算出し、距離画像を生成する。
【0018】
距離測定装置1は、基本的に、図2に示すように動作する。図2は、距離測定装置1の基本動作を示す波形図である。図2に示す発光変調信号がタイミング制御部21から投光部10へ供給されると、投光部10は、照射光Leを測定対象物2に向けて照射する。図2では、照射光Leの光波形の位相は、発光変調信号波形の位相からの遅れはないものとして示している。
【0019】
照射光Leが測定対象物2で反射されると、反射光Lrが受光部22で受光される。図2に示す反射光Lrの光波形の形は、照射光Leの光波形の形とほぼ同じであり、波形の周期及びデューティ比が略均等である。デューティ比は、例えば、略50%である。反射光Lrの光波形は、照射光Leの光波形より位相が時間τに相当する分遅れた波形になっている。反射光Lrの光波形は、照射光Leの照射タイミングから時間τ遅れて受光部22に反射光Lrが入射されることを示している。この時間τは、光が投光部10から出射され、測定対象物2に当たって反射し受光部22に戻ってくるまでの時間であり、測定対象物2までの距離によって変わる。つまり、時間τが分かれば、光の速度Cを用いて次の数式1によって測定対象物2までの距離Dを求めることができる。
D=τ×C/2・・・数式1
【0020】
このとき、露光タイミング信号AがHレベルの期間に受光部22の各画素の蓄積部Aが電荷蓄積動作を行い、露光タイミング信号BがHレベルの期間に受光部22の各画素の蓄積部Bが電荷蓄積動作を行う。露光タイミング信号Aは、照射光Leとほぼ同じタイミングでHレベルを維持し、パルス時間幅Tw後にHレベルからLレベルに遷移する。露光タイミング信号Bは、タイミング信号AがLレベルになるのとほぼ同時にLレベルからHレベルに遷移し、その遷移タイミングからパルス時間幅Tw経過後にHレベルからLレベルに遷移する。
【0021】
露光タイミング信号AがHレベルを維持する期間が蓄積部Aの電荷蓄積期間なので、図2に示すハッチングで示す期間において蓄積部Aが反射光Lrに応じた電荷量Aを蓄積する。同様に、タイミング信号BがHレベルを維持する期間が蓄積部Bの電荷蓄積期間なので、図2にハッチングで示す期間において蓄積部Bが反射光Lrに応じた電荷量Bを蓄積する。ここで、時間τが0≦τ≦Twの範囲であれば次の数式2に示す関係が成り立つ。
τ/Tw=B/(A+B)・・・数式2
【0022】
数式1及び数式2により、測定対象物2までの距離Dは、蓄積部Aによる反射光Lrの蓄積電荷量A、蓄積部Bによる反射光Lrの蓄積電荷量Bから次の数式3によって求めることができる。
D=B/(A+B)×Tw×C/2・・・数式3
【0023】
図1及び図2では、距離イメージセンサーが1つの距離測定装置1の構成及び動作が例示されている。
【0024】
一方、距離測定のエリアを広げるために、この距離測定装置1に広角のレンズを取り付けることが考えられるが、一般に距離測定装置1に用いられる距離イメージセンサーの画素数は少ないため、広角のレンズを付けて得られる距離画像の空間分解能が十分なものでなくなり画像品質が低下してしまう可能性がある。そのため、空間分解能を上げ、より高解像度の距離画像を得るために、距離測定装置に複数の距離イメージセンサーを設け、複数の距離イメージセンサーを用いて測距をすることが考えられる。
【0025】
この場合、距離イメージセンサーが、光を照射するための発光変調信号と反射光を受光するための露光タイミング信号とを生成するが、正確な距離を測定するには、複数の距離イメージセンサーの間で、発光変調信号と露光タイミング信号とは、同位相、または常に一定の位相関係であることが望まれる。
【0026】
複数の距離イメージセンサーを用いて測距を行う場合、発光信号としていずれか1つの距離イメージセンサーが生成する信号を用いると、各距離イメージセンサーはそれぞれ別の露光タイミング信号で動作しているため、選択した発光変調信号と他の距離イメージセンサーが生成する露光タイミング信号とは一定の関係でなくなってしまう。そのため、複数の距離イメージセンサーを用いた測距において正確な距離測定が出来なくなる可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、距離測定装置において、測定開始信号をトリガーに各距離イメージセンサーが出力する発光変調信号のうちいずれか1つを用いて光源を発光させ、各距離イメージセンサーが出力する発光変調信号の時間差を測定し、各距離イメージセンサーから算出された距離値を測定された時間差により補正することで、簡易な構成で高解像度且つ高精度の距離画像を得ることを目指す。
【0028】
具体的には、距離測定装置101は、図3に示すように、距離測定装置1と次の点で異なる構成を有する。図3は、実施形態にかかる距離測定装置101の構成を示す図である。
【0029】
距離測定装置101は、距離イメージセンサーS、距離演算部30(図1参照)に代えて複数の距離イメージセンサーS1,S2、距離演算部31を有し、発光信号選択部40及び時間計測部50をさらに有する。各距離イメージセンサーS1,S2は、その撮像面に沿ってシフトした位置に配されており、測定対象物、測定シーンの異なる場所を撮影可能である。また、トリガー信号は、距離イメージセンサーS1と距離イメージセンサーS2との両方に入力される。
【0030】
各距離イメージセンサーS1,S2内の構成は、距離イメージセンサーS内の構成と同様であり、同様の信号が扱われる。以下では、距離イメージセンサーS1と距離イメージセンサーS2とのいずれで扱われる信号かを区別するために、便宜的に、図1と同様の信号名の前にS1,S2をつけたものを新たに信号名とする。
【0031】
発光信号選択部40は、S1発光変調信号を距離イメージセンサーS1のタイミング制御部21から受け、S2発光変調信号を距離イメージセンサーS2のタイミング制御部21から受ける。発光信号選択部40は、S1発光変調信号及びS2発光変調信号のいずれかを選択して発光変調信号として投光部10へ出力する。
【0032】
時間計測部50は、S1発光変調信号を距離イメージセンサーS1のタイミング制御部21から受け、S2発光変調信号を距離イメージセンサーS2のタイミング制御部21から受ける。時間計測部50は、S1発光変調信号とS2発光変調信号とのずれ時間を測定し、測定結果に応じたずれ補正値を距離演算部31へ出力する。
【0033】
距離演算部31は、S1センサデータを距離イメージセンサーS1から受け、S2センサデータを距離イメージセンサーS2から受ける。距離演算部31は、S1センサデータ、S2センサデータ、及びずれ補正値を用いて、各画素における距離データを算出し、S1距離画像、S2距離画像を生成する。距離演算部31は、S1距離画像及びS2距離画像を合成して距離画像を生成し、距離画像を出力する。
【0034】
具体的には、距離測定装置101は、図4に示すような動作を行う。図4は、距離測定装置101の動作を示す波形図である。図4では、図3に示す各信号、及び照射光、反射光の波形が示されている。図4では、発光信号選択部40でS1発光変調信号が選択されて発光変調信号として投光部10へ出力され、距離イメージセンサーS1に反射光を返す物体の箇所までの距離と距離イメージセンサーS2に反射光を返す物体の箇所までの距離とが同じ場合を例示している。
【0035】
タイミングt1において、トリガー信号(測定開始信号)が各距離イメージセンサーS1,S2に入力されると、トリガー信号を合図に、各距離イメージセンサーS1,S2は、発光変調信号、露光タイミング信号A、露光タイミング信号Bの出力を開始しようとする。
【0036】
しかしながら、トリガー信号を伝送する配線の各距離イメージセンサーS1,S2までの配線長が異なることがある。また、デバイスの製造ばらつきにより各距離イメージセンサーS1,S2のタイミング制御部21で露光タイミング信号を生成する際の基準となるクロックのタイミングが、距離イメージセンサーS1,S2間で揃っていないことがある。これにより、距離イメージセンサーS1から出力されるS1発光変調信号、S1露光タイミング信号A、S1露光タイミング信号Bと、距離イメージセンサーS2から出力されるS2発光変調信号、S2露光タイミング信号A、S2露光タイミング信号Bとの出力タイミングも揃わなくなることがある。
【0037】
図4では、S1発光変調信号及びS1露光タイミング信号Aの波形のエッジタイミングt2に対して、S2発光変調信号及びS2露光タイミング信号Aの波形のエッジタイミングt3が時間Δtずれている場合が例示されている。
【0038】
発光信号選択部40が発光変調信号としてS1発光変調信号を選択しているので、照射光Leは、S1発光変調信号のエッジタイミングt2で照射を開始する。この照射光Leが測定対象物2で反射して各距離イメージセンサーS1,S2側へ戻ってきた光が反射光Lr1、反射光Lr2である。各反射光Lr1,Lr2は、どちらも同じ距離の箇所からの反射光なので、図4に示すように、エッジタイミングがt4で同じである。
【0039】
各反射光Lr1,Lr2のエッジタイミングt4は、照射光Leのエッジタイミングt2に対して時間τで遅れている。すなわち、各反射光Lr1,Lr2は、照射光Leが照射されてから時間τ遅れて各距離イメージセンサーS1,S2へ入射される。距離イメージセンサーS1では、S1露光タイミング信号Aに応じて蓄積部Aが電荷蓄積動作を行い、S1露光タイミング信号Bに応じて蓄積部Bが電荷蓄積動作を行う。距離イメージセンサーS2では、S2露光タイミング信号Aに応じて蓄積部Aが電荷蓄積動作を行い、S2露光タイミング信号Bに応じて蓄積部Bが電荷蓄積動作を行う。
【0040】
このとき、S1露光タイミング信号Aのエッジタイミングt2とS2露光タイミング信号Aのエッジタイミングt3とが互いにずれており、S1露光タイミング信号Bのエッジタイミングt5とS2露光タイミング信号Aのエッジタイミングt6とが互いにずれている。これにより、同じ距離からの反射光を受光しても、距離イメージセンサーS1と距離イメージセンサーS2とで、蓄積部Aに蓄積される電荷量が異なり、蓄積部Bに蓄積される電荷量が異なる。よって、距離イメージセンサーS1で蓄積された電荷量から算出される距離値と、距離イメージセンサーS2で蓄積した電荷量から算出される距離値とには、相対的に誤差が発生し得る。
【0041】
そこで、距離イメージセンサーS1の値を基準として、距離イメージセンサーS2の値のずれを求める。S1発光変調信号のエッジタイミングとS2発光変調信号のエッジタイミングとのずれ時間を図3に示す時間計測部50で計測し、計測されたずれ時間に応じたずれ補正値で、距離イメージセンサーS2の距離値の補正を行う。
【0042】
例えば、距離演算部31は、距離イメージセンサーS1について、蓄積部Aによる反射光Lr1の蓄積電荷量A、蓄積部Bによる反射光Lr1の蓄積電荷量Bから、次の数式4によって距離値Dを求める。
=B/(A+B)×Tw×C/2・・・数式4
【0043】
同様に、距離演算部31は、距離イメージセンサーS2について、蓄積部Aによる反射光Lr2の蓄積電荷量A、蓄積部Bによる反射光Lr2の蓄積電荷量Bから、次の数式5によって距離値Dを求める。
=B/(A+B)×Tw×C/2・・・数式5
【0044】
時間計測部50は、S1発光変調信号のエッジタイミングt2に対するS2発光変調信号のエッジタイミングt3のずれ時間を計測し、図4に示すΔtを得る。時間計測部50は、ずれ時間Δtを次の数式6で距離のずれΔDに換算して、ずれ補正値ΔDを求める。例えば、Δt=100[ps]であれば、ΔD=15[mm]が求まる。
【0045】
ΔD=Δt×C/2・・・数式6
【0046】
時間計測部50は、次の数式7に示すように、ずれ補正値ΔDを距離演算部31へ供給する。距離演算部31は、距離イメージセンサーS2について距離値Dにずれ補正値ΔDを加算することで、補正された距離値D’を得る。
【0047】
’=D+ΔD・・・数式7
【0048】
距離演算部31は、数式4に示す距離値Dを用いてS1距離画像を生成し、数式7に示す距離値D’を用いてS2距離画像を生成する。そして、距離演算部31は、S1距離画像とS2距離画像とを合成して、合成結果を距離画像として出力する。
【0049】
ずれ時間を計測するための時間計測部50は、例えば、図5に示すように構成され得る。図5は、時間計測部50の構成を示す回路図である。
【0050】
時間計測部50は、複数の遅延素子51-1~51-n、複数のフリップフロップ52-1~52-n、及びずれ時間算出部53を有する。nは、任意の2以上の整数である。複数の遅延素子51-1~51-nは、チェーン状にn段で接続されている。1段目の遅延素子51-1の入力ノードには、start信号が入力されている。複数の遅延素子51-1~51-nは、複数のフリップフロップ52-1~52-nに対応している。各遅延素子51-1~51-nの出力ノードは、対応するフィリップフロップ52のデータ入力ノードに接続されている。各フリップフロップ52-1~52-nのクロック入力ノードには、stop信号が入力されている。ずれ時間算出部53は、複数の入力ノード531-1~531-n及び出力ノード532を有する。複数のフリップフロップ52-1~52-nは、複数の入力ノード531-1~531-nに対応している。各フリップフロップ52-1~52-nの出力ノードは、ずれ時間算出部53における対応する入力ノード531に接続されている。
【0051】
各遅延素子51は、互いに均等な遅延時間を有していてもよい。1段目の遅延素子51-1に入力されたstart信号は、各遅延素子51の出力ノードからその段数に応じた遅延量でフリップフロップ52のデータ入力ノードへ入力される。各フリップフロップ52は、stop信号の立上りエッジのタイミングに同期して、遅延素子51の出力ノードから入力された信号をラッチする。各フリップフロップ52は、stop信号の次の立上りエッジのタイミングに同期して、ラッチされたデータQ0~Qnをずれ時間算出部53へ出力する。ずれ時間算出部53は、データQ0~Qnのうち、“1”のデータ数をカウントし、そのカウント値と遅延素子1個の遅延時間とを積算することでずれ時間を算出する。図3に示す時間計測部50では、start信号にS1発光変調信号が、stop信号にS2発光変調信号が入力されて、S1発光変調信号とS2発光変調信号のずれ時間を計測している。
【0052】
例えば、時間計測部50は、図6に示すように、ずれ時間を計測してもよい。図6は、ずれ時間の計測を示す波形図である。
【0053】
時間計測部50は、S1発光変調信号のエッジタイミングとS2発光変調信号のエッジタイミングとのずれをk回計測して、時間td1~tdkを得ると、次の数式8に示すように、ずれ時間td1~tdkをk回について平均した値td_avを求める。
td_av=(td1+td2+・・・+tdk)/k・・・数式8
【0054】
これにより、ずれ時間をより精度よく測定できるので、より正確な距離値を測定できるようになる。
【0055】
また、距離測定装置101の動作について図7を用いて説明する。図7は、距離測定装置101の動作を示す波形図である。
【0056】
外部(例えば、上位のコントローラ)から発光信号選択部40においてどちらの発光変調信号を選択するかを設定しておく。あるいは、予めどちらかの発光変調信号を選択するように、発光信号選択部40を構成しておいてもよい。
【0057】
タイミングt11において、外部から各距離イメージセンサーS1,S2にトリガー信号が入力される。
【0058】
トリガー信号の入力を受けて、タイミングt12において、距離イメージセンサーS1が発光変調信号、露光タイミング信号A、露光タイミング信号Bの出力を開始し、タイミングt13において、距離イメージセンサーS2が発光変調信号、露光タイミング信号A、露光タイミング信号Bの出力を開始する。また、時間計測部50がS1発光変調信号とS2発光変調信号とのタイミングのずれ時間の計測を開始する。
【0059】
このとき、発光信号選択部40で選択された発光変調信号に従って変調された照射光Leが測定対象物2に照射され、その反射光Lr1,Lr2が距離イメージセンサーS1,S2でそれぞれ受光される。各距離イメージセンサーS1,S2は、露光タイミング信号A、露光タイミング信号Bに従って、電荷蓄積動作を行う。
【0060】
所定の回数(所定のパルス数)で蓄積部A及び蓄積部Bの各電荷蓄積動作が繰り返された後、タイミングt14において、各距離イメージセンサーS1,S2のタイミング制御部21は、発光変調信号、露光タイミング信号A、露光タイミング信号Bの出力をストップさせる。また、時間計測部50は、ずれ時間の計測結果に応じてずれ補正値を求めて距離演算部31へ出力する。
【0061】
タイミングt15において、各距離イメージセンサーS1,S2のタイミング制御部21は、受光データ出力指示信号を受光部22へ出力する。これに応じて、各距離イメージセンサーS1,S2の受光部22は、蓄積された電荷量に対応する受光データA、受光データBを1画素ずつ出力し始める。
【0062】
タイミングt16において、距離演算部31は、受光データA、受光データB、及びずれ補正値を用いて、距離値(距離データ)を求める。距離演算部31は、全画素について距離値(距離データ)を求めると、距離値を受光データA、受光データBの画素座標に応じて2次元的に構成し、各距離イメージセンサーS1,S2について、それぞれ、S1距離画像、S2距離画像を生成する。距離演算部31は、S1距離画像及びS2距離画像を合成して、合成結果を距離画像として出力する。
【0063】
以上のように、本実施形態では、距離測定装置101において、測定開始信号をトリガーに各距離イメージセンサーS1,S2が出力する発光変調信号のうちいずれか1つを用いて光源を発光させ、各距離イメージセンサーS1,S2が出力する発光変調信号のタイミングのずれ時間を測定し、各距離イメージセンサーS1,S2の出力から算出された距離値をずれ時間により補正する。これにより、高解像度且つ高精度の距離画像を得ることができる。
【0064】
なお、距離測定装置201は、トリガー信号を基準にしてS1発光変調信号とS2発光変調信号のタイミングのずれ時間を計測してもよい。この場合、距離測定装置201は、図8に示すように構成され得る。図8は、実施形態の変形例にかかる距離測定装置201の構成を示す図である。
【0065】
距離測定装置201は、時間計測部50(図3参照)に代えて時間計測部250を有する。時間計測部250には、外部(例えば、上位のコントローラ)からトリガー信号が入力される構成となっている。これにより、時間計測部250は、図9に示すように、トリガー信号の立上りからのS1発光変調信号までの時間td_s1と、S2発光変調信号までの時間td_s2を計測し、その差(td_s2-td_s1)をずれ時間として求め、ずれ時間を距離に換算することなどによりずれ補正値を求めて距離演算部31へ出力する。
【0066】
このようにしても、ずれ時間を得ることができるので、複数の距離イメージセンサーS1,S2を用いた距離測定装置201において、正確に距離を計測することができる。また、この場合、S2発光変調信号の方が早く出力されても容易に、正しい時間差を算出できる。
【0067】
また、実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置は、移動体に用いてもよい。実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置を備えた移動体によれば、複数の距離イメージセンサーS1,S2により広範囲の距離計測が可能になることから高解像度の距離画像を得ることができ、また、本実施形態の技術により高精度の距離画像を得ることができる。これにより、走行又は進行経路上の障害物等を広範囲かつ高精度に検出でき、走行又は進行の安全性を高めることができる。
【0068】
また、実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置は、ロボットに用いてもよい。実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置を備えたロボットによれば、高解像度且つ高精度の距離画像を得ることができるため、歩行経路上の障害物等を広範囲かつ高精度に検出でき、歩行の安全性を高めることができる。
【0069】
また、実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置は、3次元計測装置に用いてもよい。実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置を備えた3次元計測装置によれば、高解像度且つ高精度の距離画像を得ることができるため、計測対象物の3次元情報を高解像度且つ高精度に得ることができる。
【0070】
また、実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置は、監視カメラに用いてもよい。実施形態及びその変形例にかかる距離測定装置を備えた監視カメラによれば、高解像度且つ高精度の距離画像を得ることができるため、監視対象物について高解像度且つ高精度の画像情報を得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1,101,201 距離測定装置
10 投光部
30,31 距離演算部
40 発光信号選択部
50,250 時間計測部
S,S1,S2 距離イメージセンサー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【文献】特許第6333921号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9