(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】エラストマー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240409BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240409BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240409BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240409BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/01
C08L91/06
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
(21)【出願番号】P 2020058868
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 真寛
(72)【発明者】
【氏名】武山 慶久
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009188(WO,A1)
【文献】特開2010-222582(JP,A)
【文献】国際公開第2010/007705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーAおよびカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ含有組成物Aと、エラストマーBを含む組成物Bとを混練する工程(1)を備え、
前記組成物Bの複素粘度η
Bに対する前記カーボンナノチューブ含有組成物Aの複素粘度η
Aの比(η
A/η
B)が、0.5以上2.0以下であ
り、
前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを含み、
前記組成物Bは、増粘剤を更に含む、エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ含有組成物Aは、可塑剤を更に含む、請求項
1に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項3】
前記可塑剤は、液状エラストマーおよびワックスの少なくとも一方を含む、請求項
2に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】
前記増粘剤は、炭素材料、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、および水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
1~3の何れかに記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項5】
前記エラストマーAと前記エラストマーBは同種のエラストマーを含む、請求項1~
4の何れかに記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項6】
更に、前記工程(1)で得られた組成物(1)と添加剤とを混練する工程(2)を備える、請求項1~
5の何れかに記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(2)において用いる添加剤は、炭素材料、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、液状エラストマー、ワックス、および架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
6に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)において用いる前記架橋剤は、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤、およびアミン系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
7に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項9】
更に、前記工程(2)で得られた組成物(2)と架橋剤とを混練する工程(3)を備える、請求項
6~
8の何れかに記載のエラストマー組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(3)において用いる前記架橋剤は、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤、およびアミン系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
9に記載のエラストマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性、熱伝導性、および強度などの特性に優れる材料として、エラストマーに炭素材料を配合してなるエラストマー組成物が使用されている。そして、近年では、上記特性の向上効果が高い炭素材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略記する場合がある。)が注目されている。
【0003】
ここで、CNTは、一本一本の特性は優れているものの、外径が小さいため、バルク材料として使用する際にファンデルワールス力によってバンドル化し易い(束になり易い)。そのため、エラストマーとCNTとを含有するエラストマー組成物を用いて成形体を作製するに際しては、CNTのバンドル構造体を解繊し、エラストマーのマトリックス中にCNTを良好に分散させることが求められている。
【0004】
このような課題に対し、CNTとエラストマーを含むマスターバッチを用いてエラストマー組成物を調製することが従来から行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら近年、エラストマー中に一層良好にCNTを分散させて、諸特性に優れる成形体を得る新たな技術が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、エラストマーのマトリックス中にCNTが良好に分散してなる(即ち、CNT分散性に優れる)エラストマー組成物を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、エラストマーAおよびCNTを含むカーボンナノチューブ含有組成物A(以下、「CNT含有組成物A」と称する場合がある。)と、エラストマーBを含む組成物Bとを混練するに際し、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)(以下、「ηA/ηB」と称する場合がある。)を所定範囲内とすれば、CNT分散性に優れるエラストマー組成物を効率良く製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーAおよびカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ含有組成物Aと、エラストマーBを含む組成物Bとを混練する工程(1)を備え、前記組成物Bの複素粘度ηBに対する前記カーボンナノチューブ含有組成物Aの複素粘度ηAの比(ηA/ηB)が、0.5以上2.0以下であることを特徴とする。このように、互いの複素粘度の比(ηA/ηB)が所定範囲内であるCNT含有組成物Aと組成物Bとを混練することで、CNT分散性に優れるエラストマー組成物を効率良く製造することができる。
なお、本発明において、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)および組成物Bの複素粘度(ηB)は、本明細書の実施例に記載された方法を用いて測定することができる。
【0010】
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、ηA/ηBを0.5以上2.0以下の範囲に調整する態様としては、以下の2つが考えられる。すなわち、調整の態様としては、(1)組成物Bの複素粘度(ηB)を上げて、ηA/ηBを上記範囲に調整する方法、(2)CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)を下げて、ηA/ηBを上記範囲に調整する方法、を挙げることができる。
【0011】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。CNTとして単層CNTを含むエラストマー組成物を用いれば、導電性、熱伝導性、および強度などの特性に優れる成形体を得ることができる。
【0012】
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記カーボンナノチューブ含有組成物Aは、可塑剤を更に含むことが好ましい。CNT含有組成物Aが可塑剤を更に含めば、ηA/ηBの調整が容易になる。そのため、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0013】
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記可塑剤は、液状エラストマーおよびワックスの少なくとも一方を含むことができる。
なお、本発明において、「液状エラストマー」とは、常温常圧下で液状のエラストマーを指す。また、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
なお、本発明において、「液状エラストマー」は、「エラストマー」には分類されず、「可塑剤」に分類されるものとする。
【0014】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記組成物Bは、増粘剤を更に含むことが好ましい。組成物Bが増粘剤を更に含めば、ηA/ηBの調整が容易になる。そのため、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0015】
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記増粘剤は、炭素材料、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、および水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記エラストマーAと前記エラストマーBは同種のエラストマーを含むことが好ましい。エラストマーAとエラストマーBが同種のエラストマーを含めば、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0017】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、更に、前記工程(1)で得られた組成物(1)と添加剤とを混練する工程(2)を備えることができる。
【0018】
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法では、前記工程(2)において用いる添加剤は、炭素材料、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、液状エラストマー、ワックス、および架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0019】
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法では、前記工程(2)において用いる前記架橋剤は、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤、およびアミン系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0020】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、更に、前記工程(2)で得られた組成物(2)と架橋剤とを混練する工程(3)を備えることができる。
【0021】
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法では、前記工程(3)において用いる前記架橋剤は、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤、およびアミン系架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、CNT分散性に優れるエラストマー組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーおよびCNTが複合してなるエラストマー組成物(複合体)を製造する際に用いることができる。また、本発明のエラストマー組成物の製造方法を用いて製造したエラストマー組成物は、例えば架橋処理などを経て成形体とすることができる。
【0024】
(エラストマー組成物の製造方法)
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、エラストマーAおよびCNTを含むCNT含有組成物Aと、エラストマーBを含む組成物Bとを混練する工程(1)を少なくとも含む。
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、上述したCNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)が、0.5以上2.0以下であることを特徴とする。
【0025】
そして、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、上述した工程(1)を備えると共に、ηA/ηBが上述した範囲内であるため、当該製造方法によれば、CNT含有組成物Aと組成物Bの混練が効率良く進行し、CNT分散性に優れるエラストマー組成物を製造することができる。
【0026】
<工程(1)>
工程(1)では、エラストマーAおよびCNTを含むCNT含有組成物Aと、エラストマーBを含む組成物Bとを混練する。
【0027】
<<CNT含有組成物A>>
CNT含有組成物Aは、エラストマーAおよびCNTを含み、任意に、可塑剤およびその他の成分を更に含有する。
【0028】
[エラストマーA]
CNT含有組成物Aに含まれるエラストマーAとしては、特に限定されることなく、例えば、任意のゴム、樹脂またはそれらの混合物を用いることができる。
具体的には、ゴムとしては、特に限定されることなく、例えば、天然ゴム;フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)、テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系ゴム(FFKM)などのフッ素ゴム;ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレン-ブタジエンゴム(H-SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)などのジエンゴム;シリコーンゴム;等が挙げられる。
また、樹脂としては、特に限定されることなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル樹脂;ポリスチレン(PS);ポリカーボネート(PC);等が挙げられる。これら上述したエラストマーAには、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基などの親水性基が導入されたものも含まれる。
【0029】
ここで、CNT含有組成物Aに含まれるエラストマーAとしては、耐熱性や耐薬品性などに優れる観点から、フッ素ゴム、ジエンゴムが好ましく、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)がより好ましい。
なお、これらのエラストマーAは、1種単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
また、エラストマーAの具体例として上記列挙したエラストマーは、固体状エラストマーであることが好ましい。
なお、本発明において、「固体状エラストマー」とは、常温常圧下で固体のエラストマーを指す。
【0031】
そして、CNT含有組成物A中のエラストマーAの濃度は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。CNT含有組成物A中のエラストマーAの濃度が上述した範囲内であれば、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0032】
[カーボンナノチューブ]
CNTとしては、特に限定されることなく、単層CNTおよび/または多層CNTを用いることができるが、単層から5層までのCNTであることが好ましく、単層CNTであることがより好ましい。単層CNTを用いれば、配合量が少量であっても、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)が向上するからである。
【0033】
また、CNTの平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径を上記範囲内とすれば、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に向上させることができる。
ここで、本発明において、CNTの「平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0034】
また、CNTとしては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満のCNTを用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超のCNTを用いることがより好ましく、3σ/Avが0.50超のCNTを用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTを使用すれば、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を更に向上させることができる。
なお、CNTの平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
【0035】
そして、CNTとしては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
【0036】
また、CNTは、平均長さが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが更に好ましく、600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。CNTの平均長さを上記範囲内とすれば、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に向上させることができる。
なお、本発明において、CNTの「平均長さ」は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて長さを測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0037】
更に、CNTは、通常、アスペクト比が10超である。なお、CNTのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択したCNT20本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0038】
また、CNTは、BET比表面積が、600m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、1000m2/g以上であることが更に好ましく、2000m2/g以下であることが好ましく、1800m2/g以下であることがより好ましく、1600m2/g以下であることが更に好ましい。CNTのBET比表面積が600m2/g以上であれば、少ない配合量で、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に高めることができる。また、CNTのBET比表面積が2000m2/g以下であれば、CNTのバンドル構造体を良好に解繊することができ、その結果、エラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0039】
また、CNTは、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。なお、「t-プロット」は、窒素ガス吸着法により測定されたCNTの吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、CNTのt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。
なお、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すCNTは、開口処理が施されていないCNTであることが好ましい。
【0040】
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
【0041】
そして、上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt-プロットの形状を有するCNTは、CNTの全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、CNTを構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
【0042】
なお、CNTのt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。CNTのt-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあれば、少ない配合量で、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を高めることができる。
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
【0043】
更に、CNTは、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。CNTのS2/S1の値がかかる範囲内であれば、少ない配合量で、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を高めることができる。
ここで、CNTの全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
【0044】
因みに、CNTの吸着等温線の測定、t-プロットの作成、および、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
【0045】
更に、CNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、RadialBreathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層CNTのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
【0046】
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が0.5以上5.0以下であることが好ましい。G/D比が0.5以上5.0以下であれば、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を更に向上させることができる。
【0047】
なお、CNTは、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTは、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物およびキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるCNTを「SGCNT」と称することがある。
そして、スーパーグロース法により製造されたCNTは、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
【0048】
更に、CNT含有組成物A中のCNTの配合量は、エラストマーA100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることが更に好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。CNT含有組成物A中のCNTの配合量が、エラストマーA100質量部当たり、1質量部以上であれば、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に向上させることができる。一方、CNT含有組成物A中のCNTの配合量が、エラストマーA100質量部当たり、15質量部以下であれば、エラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0049】
[可塑剤]
本発明のエラストマー組成物の製造方法において、CNT含有組成物Aが任意に含み得る可塑剤は、CNT含有組成物Aの粘度を低下させるために用い得る成分である。CNT含有組成物Aが可塑剤を含めば、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)の調整が容易になる。そのため、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0050】
ここで、可塑剤としては、CNT含有組成物Aの粘度を低下させ得るものであれば特に限定されないが、例えば、液状フッ素ゴム、液状シリコーンゴム等の液状エラストマー;フッ素オイル、シリコーンオイル等のオイル;カルナバワックス等のワックス;フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP);フタル酸ジイソノニル(DINP)などが挙げられる。これらの中でも、可塑剤としては、液状エラストマー、ワックスが好ましく、液状フッ素ゴムがより好ましい。
なお、これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
そして、CNT含有組成物A中の可塑剤の配合量は、エラストマーA100質量部当たり、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上とすることができ、また50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下とすることができる。
【0052】
[その他の成分]
更に、CNT含有組成物Aは、その他の成分として、本明細書において記載する、エラストマー組成物の作製に使用し得る上述した以外の成分を含んでいてもよい。
なお、その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0053】
[CNT含有組成物Aの調製方法]
ここで、CNT含有組成物Aの調製は、例えば、上述したエラストマーAおよびCNTと、任意成分である可塑剤およびその他の成分とを、所望の配合比で混合することにより行うができる。また、混合方法としては、エラストマーA中にCNTを分散させることが可能な任意の混合方法を用いることができる。具体的には、混合法としては、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などを用いることができる。そして、CNT含有組成物Aは、例えば、有機溶媒にエラストマーAを溶解させてなるエラストマー溶液、または分散媒にエラストマーAを分散させてなるエラストマー分散液に対し、CNTを添加し、更に高速乳化分散装置や湿式ジェットミルなどを用いてCNTを分散処理してスラリーを調製した後、得られたスラリーとしての分散処理液から有機溶媒または分散媒を除去することにより調製することが好ましい。
【0054】
なお、溶媒または分散媒の除去には、例えば凝固法、キャスト法または乾燥法を用いることができる。あるいは、CNT含有組成物Aの調製に際して、溶媒を用いることなく、エラストマーAおよびCNTと、任意の可塑剤およびその他の成分とを、既知の混練方法により直接混練することも勿論可能である。
【0055】
<<組成物B>>
組成物Bは、エラストマーBを含み、任意に、増粘剤およびその他の成分を更に含有する。
【0056】
[エラストマーB]
組成物Bに含まれるエラストマーBとしては、特に限定されることなく、例えば、「CNT含有組成物A」の項で上述したエラストマーAと同じものが挙げられる。ここで、エラストマーAとエラストマーBとは、同種のエラストマーを含むことが好ましい。エラストマーAとエラストマーBが同種のエラストマーを含めば、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0057】
そして、組成物B中のエラストマーBの濃度は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。組成物B中のエラストマーBの濃度が50質量%以上であれば、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。また、組成物B中のエラストマーBの濃度の上限は、特に限定されないが、例えば、99質量%以下とすることができ、95質量%以下とすることができる。
【0058】
[増粘剤]
本発明のエラストマー組成物の製造方法において、組成物Bが任意に含み得る増粘剤は、組成物Bの粘度を上昇させるために用い得る成分である。組成物Bが増粘剤を含めば、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)の調整が容易になる。そのため、得られるエラストマー組成物のCNT分散性を更に向上させることができる。
【0059】
ここで、増粘剤としては、組成物Bの粘度を上昇させ得るものであれば特に限定されず、例えば、CNT、カーボンブラック、グラフェン、グラファイトなどの炭素材料;シリカ;タルク;炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、硫酸バリウムなどの無機化合物;等が挙げられる。これらの中でも、増粘剤としては、炭素材料、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウムが好ましく、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウムがより好ましい。
なお、これらの増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0060】
そして、組成物B中の増粘剤の配合量は、粘度調整がしやすいため、エラストマーB100質量部当たり、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上とすることができ、また100質量部以下、70質量部以下、50質量部以下、45質量部以下とすることができる。
【0061】
[その他の成分]
更に、組成物Bは、その他の成分として、本明細書において記載する、エラストマー組成物の作製に使用し得る上述した以外の成分を含んでいてもよい。
なお、その他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0062】
[組成物Bの調製方法]
また、組成物Bの調製は、例えば、上述したエラストマーBと、任意成分である増粘剤およびその他の成分とを、所望の配合比で混合することにより行うことができる。そして、混合方法としては、例えば、CNT含有組成物Aを調製する際に用いたのと同じ方法を用いることができる。
【0063】
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練方法]
更に、CNT含有組成物Aと組成物Bとの混練は、上述のようにして得られたCNT含有組成物Aと組成物Bとを、所望の配合比で混合することにより行うことができる。そして、混練方法としては、例えば、CNT含有組成物Aを調製する際に用いたのと同じ方法を用いることができる。また、混合条件は、本発明の所望の効果の発現が阻害されない範囲内で、適宜調節することができる。
ここで、CNT含有組成物Aと組成物Bとを混練するに際し、CNT含有組成物Aの配合量は、組成物B100質量部当たり、3質量部以上であることが好ましい。組成物B100質量部当たりのCNT含有組成物Aの配合量が3質量部以上であれば、エラストマー組成物から得られる成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に向上させることができる。一方、CNT含有組成物Aの配合量は、組成物B100質量部当たり、5質量部以上、7質量部以上、10質量部以上とすることができ、また、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、90質量部以下とすることができる。
【0064】
[複素粘度]
ここで、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)は、0.5以上2.0以下であることが必要であり、0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1.9以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。ηA/ηBが上述の範囲外であると、工程(1)においてCNT含有組成物Aと組成物Bとを混練する際に、CNTが凝集などを引き起こし、エラストマー組成物のCNT分散性が低下する。
なお、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)は、例えば、CNT含有組成物A中の成分の種類および/または量(濃度)、CNT含有組成物Aの調製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、CNT含有組成物A中の可塑剤の量(濃度)を増加させることによって、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)を低下させることができる。
また、組成物Bの複素粘度(ηB)は、例えば、組成物B中の成分の種類および/または量(濃度)、組成物Bの調製条件を変更することにより、調整することができる。具体的には、例えば、組成物B中の増粘剤の量を増加させることによって、組成物Bの複素粘度(ηB)を上昇させることができる。
【0065】
上述した工程(1)において、CNT含有組成物Aと組成物Bを混練して得られる組成物(1)を、エラストマー組成物として用いてもよい。しかしながら、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、後述する工程(2)、および工程(3)を更に備えることが好ましい。
【0066】
<工程(2)>
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、更に、上述した工程(1)で得られた組成物(1)と添加剤とを混練する工程(2)を備えることが好ましい。
【0067】
<<添加剤>>
ここで、添加剤としては、特に限定されず、例えば、増粘剤;可塑剤;架橋剤;ステアリン酸等の潤滑剤;4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩等の老化防止剤;などが挙げられる。そして、増粘剤、可塑剤としては、「工程(1)」の項で上述したものを用いることができる。これらの中でも、添加剤としては、炭素材料、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、液状エラストマー、ワックス、架橋剤が好ましく、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、液状フッ素ゴムがより好ましい。なお、炭素材料としては、「工程(1)」の項で上述したものを用いることができる。
【0068】
[架橋剤]
そして、架橋剤としては、特に限定されず、エラストマー組成物に含まれているエラストマーを架橋可能な既知の架橋剤を用いることができる。より具体的には、架橋剤としては、例えば、硫黄系架橋剤、ポリオール架橋剤、有機過酸化物架橋剤、アミン系架橋剤、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも、架橋剤としては、硫黄系架橋剤、ポリオール架橋剤、有機過酸化物架橋剤、アミン系架橋剤が好ましく、有機過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤がより好ましい。
なお、これらの架橋剤は、1種単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。
【0069】
―硫黄系架橋剤―
硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄および不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼノピン-2)、含リンポリスルフィドおよび高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物が挙げられる。
【0070】
―有機過酸化物架橋剤―
有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ジクミルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、パラメンタンヒドロパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、1,3-および1,4-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ビス-(t-ブチル-パーオキシ)-n-ブチルバレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキシン-3、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、p-クロロベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。これらの中でも、1,3-および1,4-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。
【0071】
―ポリオール架橋剤―
ポリオール架橋剤としては、成形体の耐圧縮永久歪み性を高める観点から、ポリヒドロキシ芳香族化合物を好適に用いることができる。ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、レゾルシン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシスチルベン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’-テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールAが挙げられる。
【0072】
―アミン系架橋剤―
アミン系架橋剤としては、例えば、(1)2つ以上のアミノ基を有する化合物、或いは、(2)架橋時に2つ以上のアミノ基を有する形態になる化合物などのポリアミン系架橋剤を用いることができる。具体的には、アミン系架橋剤としては、例えば、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(-CONHNH2で表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換されたポリアミン系架橋剤が挙げられる。
【0073】
[組成物(1)と添加剤の混練方法]
そして、工程(2)における組成物(1)と添加剤の混練方法としては、特に限定されず、例えば、「工程(1)」の項で上述した混練方法を用いることができる。
【0074】
ここで、添加剤の配合量は、エラストマー組成物の成形性向上、およびエラストマー組成物から形成される成形体の機械的強度確保などの観点から、工程(1)で用いたエラストマーAとエラストマーBとの合計100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることが更に好ましい。
【0075】
<工程(3)>
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、更に、上述した工程(2)で得られた組成物(2)と架橋剤とを混練する工程(3)を備えることが好ましい。
【0076】
<<架橋剤>>
ここで、架橋剤としては、特に限定されることなく、例えば、「工程(2)」の項で上述した架橋剤と同じものが挙げられる。そして、架橋剤としては、硫黄系架橋剤、ポリオール架橋剤、有機過酸化物架橋剤、アミン系架橋剤が好ましく、有機過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤がより好ましい。
【0077】
[組成物(2)と架橋剤の混練方法]
そして、工程(3)における組成物(2)と架橋剤の混練方法としては、特に限定されず、例えば、「工程(1)」の項で上述した混練方法を用いることができる。
【0078】
ここで、工程(3)における架橋剤の配合量は、工程(1)で用いたエラストマーAとエラストマーBとの合計100質量部当たり、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましく、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、CNT含有組成物Aおよび組成物Bの複素粘度(ηA、ηB)、ならびに成形体(架橋シート)の体積抵抗率は、以下の方法で評価した。
<複素粘度>
実施例および比較例で得られたCNT含有組成物Aおよび組成物Bの複素粘度(ηA、ηB)は、動的粘弾性測定装置(「Premier RPA」、Alpha Technologies社製)を用いて、温度:100℃、歪み:0.5%、周波数:1Hzにおける複素粘性率(Pa・s)を測定することにより求めた。
<体積抵抗率>
実施例および比較例で得られた架橋シート(幅150mm、長さ150mm、厚み2mm)の同一サンプル内において、抵抗率計(「ロレスタ-GX MCP-T700」、三菱ケミカルアナリテック社製)およびLSPプローブを用いて、体積抵抗率(Ω・cm)を計10点(列理方向5点、反列理方向5点)測定した。そして、10点の測定値の平均値を算出した。この体積抵抗率の値が小さいほど、架橋シート(成形体)におけるCNT分散性が優れていることを意味する。
【0080】
(実施例1)
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
メチルエチルケトン(MEK)27.0kgに、エラストマーAとしてのフッ化ビニリデン系ゴム(FKM;「Viton(登録商標)A500」、ケマーズ社製)3.0kgを投入した。撹拌機を用いて23℃で8時間以上撹拌し、FKMをMEKに溶解させることで、フッ素ゴム溶液を調製した。このフッ素ゴム溶液に、CNTとしてのSGCNT(「ZEONANO SG101」、ゼオンナノテクノロジー社製、単層CNT、比重:1.7、平均直径(Av):3.5nm、標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ):1.9nm、3σ/Av:0.54、平均長さ:400μm、BET比表面積:1324m2/g、G/D比:2.1、t-プロットは上に凸、S2/S1:0.09、屈曲点の位置:0.6nm)を120g添加し、撹拌機を用いて10分間撹拌した。なお、上記SGCNTは、ラマン分光光度計での測定において、単層CNTに特徴的な100~300cm-1の低波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルを示した。
更に、高圧分散装置(「ナノジェットパル(登録商標)JN1000」、常光社製)を使用して、SGCNTを添加したフッ素ゴム溶液を圧力10MPaで1回分散処理した後、圧力50MPaで1回分散処理し、さらに圧力100MPaで5回分散処理して、分散処理液を得た。次いで、得られた分散処理液を120kgの水へ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。そして、得られた黒色固体を80℃で12時間減圧乾燥し、CNT含有組成物Aを得た。このようにして得られたCNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)を測定した。結果を表1に示す。
[組成物Bの調製]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、エラストマーBとしてのフッ化ビニリデン系ゴム(FKM;Viton A500、ケマーズ社製)2.7kgと、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.27kgと、増粘剤としての酸化マグネシウム(「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)0.108kgと、増粘剤としての水酸化カルシウム(「CALDIC1000」、近江化学工業社製)0.216kgとを投入し、混練することで組成物Bを得た。このようにして得られた組成物Bの複素粘度(ηB)を測定した。結果を表1に示す。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A0.728kg(FKM25部およびCNT1部を含有)と組成物B2.562kg(FKM75部、カーボンブラック7.5部、酸化マグネシウム3部、および水酸化カルシウム6部を含有)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、工程(1)で得られた組成物(1)2.938kg(FKM100部、CNT1部、カーボンブラック7.5部、酸化マグネシウム3部、および水酸化カルシウム6部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.313kg(12.5部)とを投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、工程(2)で得られた組成物(2)3.25kg(FKM100部、CNT1部、カーボンブラック20部、酸化マグネシウム3部、および水酸化カルシウム6部を含有)と、架橋剤としてのポリオール架橋剤(「Viton キュラティブ VC#50」、ケマーズ社製)0.063kg(2.5部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
<成形体(架橋シート)の作製>
上述のようにして得られたエラストマー組成物を金型に投入し、温度160℃、圧力10MPaで20分間架橋させた(一次架橋)。次いで、232℃のギヤーオーブンで24時間加熱し、二次加硫を行うことにより(二次架橋)、架橋シート(長さ:150mm、幅:150mm、厚さ:2mm)を得た。このようにして得られた架橋シートの体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例2)
以下のようにして調製したエラストマー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形体(架橋シート)を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
実施例1と同様にして、CNT含有組成物Aを調製した。
[組成物Bの調製]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、エラストマーBとしてのフッ化ビニリデン系ゴム(FKM;Viton A500、ケマーズ社製)2.9kgと、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.29kgとを投入し、混練することで組成物Bを得た。このようにして得られた組成物Bの複素粘度(ηB)を測定した。結果を表1に示す。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A1.56kg(FKM50部およびCNT2部を含有)と組成物B1.65kg(FKM50部、カーボンブラック5部を含有)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(1)2.675kg(FKM100部、CNT2部、カーボンブラック5部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.375kg(15部)と、増粘剤としての酸化マグネシウム(「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)0.075kg(3部)と、増粘剤としての水酸化カルシウム(「CALDIC1000」、近江化学工業社製)0.15kg(6部)を投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(2)3.144kg(FKM100部、CNT2部、カーボンブラック20部、酸化マグネシウム3部、および水酸化カルシウム6部を含有)と、架橋剤としてのポリオール架橋剤(「Viton キュラティブ VC#50」、ケマーズ社製)0.06kg(2.5部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
【0082】
(実施例3)
以下のようにして調製したエラストマー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形体(架橋シート)を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、実施例1のCNT含有組成物A2.496kg(FKM25部およびCNT1部を含有)と、液状エラストマーとしての液状フッ素ゴム(「ダイエル(登録商標)G-101」、ダイキン社製)0.72kg(7.5部)とを投入し、実施例1のようにして混練することでCNT含有組成物Aを得た。
[組成物Bの調製]
組成物Bとして、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM;「Viton A500」、ケマーズ社製)を用いた。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A0.972kg(FKM25部、液状フッ素ゴム7.5部、およびCNT1部を含有)と組成物B2.175kg(FKM75部)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(1)2.604kg(FKM100部、液状フッ素ゴム7.5部、およびCNT1部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.48kg(20部)と、増粘剤としての酸化マグネシウム(「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)0.072kg(3部)と、増粘剤としての水酸化カルシウム(「CALDIC1000」、近江化学工業社製)0.144kg(6部)を投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(2)3.163kg(FKM100部、液状フッ素ゴム7.5部、CNT1部、カーボンブラック20部、酸化マグネシウム3部、および水酸化カルシウム6部を含有)と、架橋剤としてのポリオール架橋剤(「Viton キュラティブ VC#50」、ケマーズ社製)0.058kg(2.5部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
【0083】
(実施例4)
以下のようにして調製したエラストマー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形体(架橋シート)を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
メチルエチルケトン(MEK)28.5kgに、エラストマーAとしての水素化ニトリルゴム(H-NBR;「Zetpol(登録商標)2020」、日本ゼオン社製)1.5kgを投入した。撹拌機を用いて23℃で8時間以上撹拌し、H-NBRをMEKに溶解させることで、ゴム溶液を調製した。このゴム溶液に、CNTとしてのSGCNTを120g添加して、撹拌機を用いて10分間撹拌した。その後、実施例1と同様にして、分散処理、凝固化および減圧乾燥を行い、CNT含有組成物Aを得た。このようにして得られたCNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)を測定した。結果を表1に示す。
[組成物Bの調製]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、エラストマーBとしての水素化ニトリルゴム(H-NBR;「Zetpol 2020」、日本ゼオン社製)1.4kgと、増粘剤としてのカーボンブラック(「Seast SO」、東海カーボン社製)0.56kgとを投入し、混練することで組成物Bを得た。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A0.203kg(H-NBR12.5部およびCNT1部を含有)と組成物B1.838kg(H-NBR87.5部およびカーボンブラック35部を含有)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(1)1.904kg(H-NBR100部、CNT1部、およびカーボンブラック35部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(「Seast SO」、東海カーボン社製)0.07kg(5部)と、増粘剤としての酸化亜鉛(「酸化亜鉛2種」、正同化学工業(株)社製)0.07kg(5部)と、潤滑剤としてのステアリン酸(「ビーズステアリン酸つばき」、日油(株)社製)0.014kg(1部)と、老化防止剤としての4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(「ノクラックCD」、大内新興化学工業(株)社製)0.021kg(1.5部)と、老化防止剤としての2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(「ノクラックMBZ」、大内新興化学工業(株)社製)0.021kg(1.5部)を投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(2)を1.95kg(H-NBR100部、CNT1部、カーボンブラック40部、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、老化防止剤3部を含有)と、架橋剤としての過酸化物架橋剤(Vulcup(登録商標)40KE、アルケマ社製)0.104kg(8部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
【0084】
(比較例1)
以下のようにして調製したエラストマー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形体(架橋シート)を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
実施例1と同様にして、CNT含有組成物Aを調製した。
[組成物Bの調製]
実施例3と同様にして、組成物Bを調製した。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A0.832kg(FKM25部およびCNT1部を含有)と組成物B2.4kg(FKM75部)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(1)2.525kg(FKM100部およびCNT1部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.5kg(20部)と、増粘剤としての酸化マグネシウム(「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)0.075kg(3部)と、増粘剤としての水酸化カルシウム(「CALDIC1000」、近江化学工業社製)0.15kg(6部)を投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(2)3.25kg(FKM100部、CNT1部、カーボンブラック20部、酸化マグネシウム3部、および水酸化カルシウム6部を含有)と、架橋剤としてのポリオール架橋剤(「Viton キュラティブ VC#50」、ケマーズ社製)0.063kg(2.5部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
【0085】
(比較例2)
以下のようにして調製したエラストマー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形体(架橋シート)を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
実施例1と同様にして、CNT含有組成物Aを調製した。
[組成物Bの調製]
実施例3と同様にして、組成物Bを調製した。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A0.832kg(FKM25部およびCNT1部を含有)と組成物B2.4kg(FKM75部)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(1)2.424kg(FKM100部およびCNT1部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(MT-CB;「サーマックスMT」、Cancarb社製)0.48kg(20部)と、増粘剤としての酸化マグネシウム(「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)0.072kg(3部)と、増粘剤としての水酸化カルシウム(「CALDIC1000」、近江化学工業社製)0.144kg(6部)と、液状エラストマーとしての液状フッ素ゴム(「ダイエルG-101」、ダイキン社製)0.18kg(7.5部)を投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(2)3.163kg(FKM100部、CNT1部、カーボンブラック20部、酸化マグネシウム3部、水酸化カルシウム6部、および液状フッ素ゴム7.5部を含有)と、架橋剤としてのポリオール架橋剤(「Viton キュラティブ VC#50」、ケマーズ社製)0.058kg(2.5部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
【0086】
(比較例3)
以下のようにして調製したエラストマー組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、成形体(架橋シート)を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<エラストマー組成物の調製>
<<工程(1)>>
[CNT含有組成物Aの調製]
実施例4と同様にして、CNT含有組成物Aを調製した。
[組成物Bの調製]
組成物Bとして、水素化ニトリルゴム(H-NBR;「Zetpol 2020」、日本ゼオン社製)を用いた。
[CNT含有組成物Aと組成物Bの混練]
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上述のようにして得られた、CNT含有組成物A0.23kg(H-NBR12.5部およびCNT1部を含有)と組成物B1.488kg(H-NBR87.5部)とを投入し、混練することで組成物(1)を得た。
<<工程(2)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(1)1.414kg(H-NBR100部およびCNT1部を含有)と、増粘剤としてのカーボンブラック(「Seast SO」、東海カーボン社製)0.56kg(40部)と、増粘剤としての酸化亜鉛(「酸化亜鉛2種」、正同化学工業(株)社製)0.07kg(5部)と、潤滑剤としてのステアリン酸(「ビーズステアリン酸つばき」、日油(株)社製)0.014kg(1部)と、老化防止剤としての4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(「ノクラックCD」、大内新興化学工業(株)社製)0.021kg(1.5部)と、老化防止剤としての2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(「ノクラックMBZ」、大内新興化学工業(株)社製)0.021kg(1.5部)を投入し、混練することで組成物(2)を得た。
<<工程(3)>>
2.5Lのニーダー(「ワンダーニーダー」、日本スピンドル製造(株)社製)に、上記の組成物(2)1.95kg(H-NBR100部、CNT1部、カーボンブラック40部、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、および老化防止剤3部を含有)と、架橋剤としての過酸化物架橋剤1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(「Vulcup40KE」、アルケマ社製)0.104kg(8部)とを投入し、混練することでエラストマー組成物を得た。
【0087】
なお、以下に示す表1中、
「FKM」は、フッ化ビニリデン系ゴムを示し、
「H-NBR」は、水素化ニトリルゴムを示し、
「CB」は、カーボンブラックを示し、
「MgO」は、酸化マグネシウムを示し、
「Ca(OH)2」は、水酸化カルシウムを示し、
「ZnO」は、酸化亜鉛(酸化亜鉛2種)を示す。
【0088】
【0089】
表1より、所定の工程(1)を含み、且つCNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)が所定の範囲内であるエラストマー組成物の製造方法を用いた実施例1~4では、CNT分散性に優れるエラストマー組成物を作製できていることが分かる。
一方、CNT含有組成物Aの複素粘度(ηA)と組成物Bの複素粘度(ηB)との比(ηA/ηB)が所定範囲外であるエラストマー組成物の製造方法を用いた比較例1~3では、CNT分散性に優れるエラストマー組成物を作製できていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、CNT分散性に優れるエラストマー組成物の製造方法を提供することができる。