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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】バケットコンベア
(51)【国際特許分類】
   B65G 17/12 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B65G17/12 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020078409
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172497
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】原 博之
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 隆志
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234020(JP,A)
【文献】実開平02-052820(JP,U)
【文献】実開昭60-119018(JP,U)
【文献】特開2010-215379(JP,A)
【文献】特開昭58-109315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部水平搬送部、垂直搬送部、及び、上部水平搬送部を含んで構成されている無端の周回路である搬送路に、開口面を有する箱型形状からなる複数のバケットが連続して設置されている搬送物収容部と、
前記下部水平搬送部の上方に設置されていて前記バケットの前記開口面に搬送物を投入する搬送物投入部と、
前記上部水平搬送部の終端部において、前記開口面が上方から下方に回動するときに、前記開口面から排出される前記搬送物を収集する搬送物収集部と、を備え、
前記バケットは、前記下部水平搬送部及び前記上部水平搬送部の行き経路と、前記垂直搬送部の上昇経路においては、前記開口面の方向(前記バケットの底面の中心と前記開口面の中心とを結ぶ線分の向かう方向)、進行方向に対する前方側の斜め上方を向き、前記下部水平搬送部及び前記上部水平搬送部の戻り経路と、前記垂直搬送部の下降経路においては、前記開口面の方向、進行方向に対する前方側の斜め下方を向くように構成されている、バケットコンベアであって、
掃除用気体噴出部と、付着物回収部と、を更に有し、
前記掃除用気体噴出部は、前記搬送物収集部の設置位置よりも下流側であって、前記上部水平搬送部の前記戻り経路を通過中の前記バケットの内面に向け気体を吹き付けることができる位置に設置されていて、前記バケットの進行方向に対する前方側の斜め下方から該バケットの底面に対して気体を吹き付けることができる態様で設置されている逆行気体噴出部と、前記バケットの進行方向に対する後方側の斜め下方から該バケットの該進行方向に対する前方側の面に対して気体を吹き付けることができる態様で設置されている順行気体噴出部と、を含んでなり
前記付着物回収部は、前記掃除用気体噴出部の設置位置の近傍範囲の下方位置であって、前記逆行気体噴出部と、前記順行気体噴出部の間の下方位置に配置されいる、
バケットコンベア。
【請求項2】
前記掃除用気体噴出部は、
前記上部水平搬送部における前記逆行気体噴出部の設置位置よりも下流側に、前記バケットの進行方向に対する前方側の斜め下方から該バケットの底面に対して気体を吹き付けることができる態様で設置されている第2の逆行気体噴出部を更に含んでなり、
第2の付着物回収部が、前記第2の逆行気体噴出部の上流側近傍範囲の下方位置に配置されている、
請求項に記載のバケットコンベア。
【請求項3】
何れかの前記掃除用気体噴出部が、前記バケットの内側の両側面に対して気体を吹き付けることができるように気体噴出角度が設定されている、
請求項1又は2に記載のバケットコンベア。
【請求項4】
前記掃除用気体噴出部は、中空の管状部材に複数の気体噴出孔が長軸方向に沿って並設されている構成からなり、前記管状部材が、前記バケットの搬送路を横断して配置されている、
請求項1からの何れかに記載のバケットコンベア。
【請求項5】
前記搬送物収集部から排出された搬送物の搬送路と、前記付着物回収部で回収された残留搬送物の搬送路とが合流可能に形成されてなる排出物回収部が、前記搬送物収集部及び前記付着物回収部の下方に設置されている、
請求項1からの何れかに記載のバケットコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を搬送する装置として広く用いられている、バケットコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉状物等を搬送する装置として、循環駆動する無端チェーンに取り付けられた複数のバケットによって、搬送物を連続的に搬送するバケットコンベアが広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
上記のバケットコンベアにおいては、搬送物は、図1に示すように、搬送物投入部2において箱型の容器であるバケット12に投入され、バケット12の開口面121が斜め上方に向けられた状態が保持されたまま、下部水平搬送部と垂直搬送部と上部水平搬送部とを含んで構成されている搬送路に沿って搬送される。そして、このようにして搬送された搬送物は、最終的に搬送路の上部水平搬送部の末端付近の折り返し部分において、バケット12の開口面121が斜め下方に向けられることにより搬送物収集部3に向けて落下する態様で排出される。
【0004】
ところが、上記のように作動するバケットコンベアにおいて、搬送物収集部3への搬送物の排出後も、バケット12の内面に搬送物の一部が付着したまま残留してしまうことが問題となっていた。このようなバケット内への不適切な搬送物の残留は、戻り経路における残留搬送物の自然剥離によるケーシング内への粉粒体の堆積と、それに伴う掃除作業の増加や粉塵飛散量の増加、更には堆積物による設備故障を引き起していた。又、付着物によるバケット容量の減少に起因する搬送量の低下、或いは、バケット内への異種搬送物の意図しない混入等、様々な不具合の原因となる。
【0005】
バケット内の残留搬送物に起因する上述の様々な不具合の発生を回避するために、多くのバケットコンベアの稼働施設においては、作業員による人的作業(例えば、ハンマー等を用いた手作業)によって、バケット12に付着した残留搬送物の除去作業が行われていた。しかしながら、このような作業を行う際には、作業員の安全性を確保し、尚且つ、十分に残留搬送物を除去するために、作業の都度、バケットコンベアの動作を停止する必要があり、当該作業の実施が、多大な労力を要することになり、バケットコンベアの稼働率を低下させる一因ともなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-6637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて考案されたものであり、バケットコンベアにおいて、搬送物の排出後にバケット内に付着残留する残留搬送物を、稼働率を低下させることなく、効率的且つ安全に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、バケットの搬送路に対して適切な位置に、バケットの内面に向けて適切な方向から気体を吹き付けることができる掃除用気体噴出部と、付着物回収部を設置することによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 下部水平搬送部、垂直搬送部、及び、上部水平搬送部を含んで構成されている無端の周回路である搬送路に、開口面を有する箱型形状からなる複数のバケットが連続して設置されている搬送物収容部と、前記下部水平搬送部の上方に設置されていて前記バケットの前記開口面に搬送物を投入する搬送物投入部と、前記上部水平搬送部の終端部において、前記開口面が上方から下方に回動するときに、前記開口面から排出される前記搬送物を収集する搬送物収集部と、を備え、前記バケットは、前記下部水平搬送部及び前記上部水平搬送部の行き経路と、前記垂直搬送部の上昇経路においては、前記開口面が上方又は斜め上方を向き、前記下部水平搬送部及び上部水平搬送部の戻り経路と、前記垂直搬送部の下降経路においては、該開口面が下方又は斜め下方を向くように構成されている、バケットコンベアであって、掃除用気体噴出部と、付着物回収部と、を更に有し、前記掃除用気体噴出部は、前記搬送物収集部の設置位置よりも下流側であって、前記上部水平搬送部の前記戻り経路を通過中の前記バケットの内面に向けて下方又は斜め下方から気体を吹き付けることができる位置に設置されていて、前記付着物回収部は、前記掃除用気体噴出部の設置位置の近傍範囲の下方位置に配置されいる、バケットコンベア。
【0010】
(1)のバケットコンベアは、掃除用気体噴出部から吹き付けられた気体によってバケットの内面から剥離した付着物を収集して排出するように構成されている。これにより、搬送物の排出後にバケット内に付着残留する残留搬送物を、稼働率を低下させることなく、効率的、且つ、安全に除去することができる。又、除去された残留搬送物をバケットコンベアのケーシング内部等に残留させずに速やかに回収することもできる。
【0011】
(2) 前記掃除用気体噴出部は、前記バケットの進行方向に対する前方側の斜め下方から該バケットの底面に対して気体を吹き付けることができる態様で設置されている逆行気体噴出部を含んでなり、前記付着物回収部は、前記逆行気体噴出部の上流側近傍範囲の下方位置に配置されている、(1)に記載のバケットコンベア。
【0012】
(2)のバケットコンベアによれば、進行方向に沿って、開口面を下方又は斜め下方に向けた状態で、掃除用気体噴出部に近づいてくるバケットの内面の底面に向けて掃除用の気体を吹き付けることにより、特に付着物が残留しやすい当該底面の残留搬送物を、より効率よく除去することができる。
【0013】
(3) 前記掃除用気体噴出部は、前記バケットの進行方向に対する後方側の斜め下方から該バケットの該進行方向に対する前方側の面に対して気体を吹き付けることができる態様で設置されている順行気体噴出部を更に含んでなり、前記付着物回収部は、前記逆行気体噴出部と、前記順行気体噴出部の間の下方位置に配置されている、(2)に記載のバケットコンベア。
【0014】
(3)のバケットコンベアによれば、バケット内面の前方側の面に向けて掃除用の気体を吹き付けることができるので、底面の次に付着物が残留しやすい前方側の面の残留搬送物を、より効率よく除去することができる。
【0015】
(4) 前記掃除用気体噴出部は、前記上部水平搬送部における前記逆行気体噴出部の設置位置よりも下流側に、前記バケットの進行方向に対する前方側の斜め下方から該バケットの底面に対して気体を吹き付けることができる態様で設置されている第2の逆行気体噴出部を更に含んでなり、第2の付着物回収部が、前記第2の逆行気体噴出部の上流側近傍範囲の下方位置に配置されている、(2)又は(3)に記載のバケットコンベア。
【0016】
(4)のバケットコンベアによれば、進行方向に沿って掃除用気体噴出部に近づいてくるバケットの内面の底面に向けて掃除用の気体を再度吹き付けることにより、(2)又は(3)のバケットコンベアで完全に除去できなかった残留搬送物を完全に除去することができる。
【0017】
(5) 何れかの前記掃除用気体噴出部が、前記バケットの内側の両側面に対して気体を吹き付けることができるように気体噴出角度が設定されている、(1)から(4)の何れかに記載のバケットコンベア。
【0018】
(5)のバケットコンベアによれば、バケットコンベアの内側の両側面の略全域に、気体を吹き付けることによって、残留搬送物の除去を更に確実に行うことができる。
【0019】
(6) 前記掃除用気体噴出部は、中空の管状部材に複数の気体噴出孔が長軸方向に沿って並設されている構成からなり、前記管状部材が、前記バケットの搬送路を横断して配置されている、(1)から(5)の何れかに記載のバケットコンベア。
【0020】
(6)のバケットコンベアによれば、掃除用気体噴出部を簡便な構成によって形成できるので、残留搬送物の除去手段として、既存の設備への追加設置も容易であり、経済性の面での更なる有意性を享受することができる。又、噴出孔の数、位置、角度の調整を容易に行うことができる。
【0021】
(7) 前記搬送物収集部から排出された搬送物の搬送路と、前記付着物回収部で回収された残留搬送物の搬送路とが合流可能に形成されてなる排出物回収部が、前記搬送物収集部及び前記付着物回収部の下方に設置されている、(1)から(6)の何れかに記載のバケットコンベア。
【0022】
(7)のバケットコンベアによれば、除去された残留搬送物についても適切に仕分けして回収することができるので、全く余計な手間が生じない。これにより、バケットコンベアを備える生産設備の生産性向上にも寄与することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バケットコンベアにおいて、搬送物の排出後にバケット内に付着残留する残留搬送物を、バケットコンベアの稼働率を低下させることなく、効率的、且つ、安全に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のバケットコンベアの全体構成を模式的に示す側断面図である。
図2】本発明のバケットコンベアにおける掃除用気体噴出部の設置態様及び気体の噴出態様を模式的に示す、バケット、掃除用気体噴出部、及び、付着物回収部の側断面図である。
図3】本発明のバケットコンベアにおける掃除用気体噴出部の設置態様及び気体の噴出態様を模式的に示す、バケット、第2の逆行気体噴出部、及び、第2の付着物回収部の側断面図である。
図4】本発明のバケットコンベアにおける掃除用気体噴出部の設置態様及び気体の噴出態様を模式的に示す、バケット、掃除用気体噴出部の上断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<バケットコンベア>
[全体構成]
図1に示すバケットコンベア100は、本発明の好ましい実施形態の一例である。バケットコンベア100は、従来公知のバケットコンベアと同様、搬送路11に箱型形状のバケット12が連続して設置されている搬送物収容部1と、搬送路11の所定位置の上方に設置されていてバケット12に搬送物を投入する搬送物投入部2と、搬送路11の所定位置の下方に設置されていてバケットから排出される搬送物を収集して、更にはこれを排出する搬送物収集部3と、を含んで構成される。
【0026】
そして、バケットコンベア100は、上記の搬送装置としての基本構成に加えて、掃除用気体噴出部4及び付着物回収部5とを更に備える。掃除用気体噴出部4は、搬送路11上における搬送物収集部3の設置位置よりも下流側であって、搬送路11の戻り経路113Bを通過中のバケット12の内面に向けて下方又は斜め下方から気体を吹き付けることができる位置に設置されている。又、付着物回収部5は、掃除用気体噴出部4の下方位置に配置されている。
【0027】
尚、バケットコンベア100の搬送物収容部1は、通常、ケーシング8に取り囲まれているが、このケーシング8には、図1に示すように、搬送路11の垂直搬送部112の下降経路112Bの終端部近傍域の側面に点検扉81が設置されている。このことにより、第2の付着物回収部51で回収しきれずに垂直搬送部112のケーシング8内を落下して、ケーシング8の底面上に堆積した搬送物等があったとしても、これを速やかに掻き出すことができる。
【0028】
[搬送物収容部・搬送物投入部・搬送物収集部]
バケットコンベア100における搬送物収容部1は、搬送する粉粒体を収容可能なバケット12が、無端の周回路である搬送路11を構成する無端チェーン等に連続して隙間無く複数配置されることによって構成される。
【0029】
図1に示すように、バケットコンベア100の搬送路11は、下部水平搬送部111、垂直搬送部112、及び、上部水平搬送部113を含んで構成されている。搬送路11の下部水平搬送部111及び上部水平搬送部113は、搬送物の搬送方向に沿う経路である行き経路111A、113Aと、搬送物排出後の折り返し経路である戻り経路111B、113Bと、からなる。又、搬送路11の垂直搬送部112は、上方に向かう上昇経路112Aと、下方に向かう下降経路112Bからなる。
【0030】
バケット12の形状は、搬送物投入部2から連続的に投入される所定量の粉粒体を、上方から収容するために必要な容積を有する箱型形状であって、上記粉粒体を投入するための開口面121を有するものであればよい。
【0031】
又、図1に示す通り、バケット12は、行き経路111A、113A、及び上昇経路112Aにおいては、開口面121が上方又は斜め上方を向き、戻り経路111B、113B、及び、下降経路112Bにおいては、開口面121が下方又は斜め下方を向く構造で搬送路11を構成する無端リンクチェーン等に固定されている。尚、本明細書で言うところの開口面121が下方或いは斜め下方を向く、という場合の「開口面の方向」とは、バケット12の側壁の端辺が形成する開口面の向けられる方向を意味するものではなく、バケット12の底面の中心と開口面の中心とを結ぶ線分の向かう方向(概ねの排出方向と考えられる方向)のことを意味するものとする。
【0032】
又、バケットコンベア100においては、図1に示す通り、下部水平搬送部111の行き経路111Aの始端部近傍域の上方に搬送物投入部2が設置されている。各種の粉粒体からなる搬送物は、この搬送物投入部2から落下する態様で、上方からバケット12の開口面121に向けて投入される。
【0033】
そして、バケットコンベア100においては、図1に示す通り、上部水平搬送部113の行き経路113Aの終端部又は当該終端部において折り返した後の戻り経路113Bの始端部近傍域の下方に搬送物収集部3が設置されている。各種の粉粒体からなる搬送物は、バケット12の開口面121が上方から下方に回動したときに、バケット12の開口面121から落下する態様で、上方から搬送物収集部3内に収集されて排出される。
【0034】
[掃除用気体噴出部]
バケットコンベア100は、搬送物収集部3への搬送物の排出後にバケット12の内部に付着残留する残留搬送物を除去するための手段として、バケット12の内面に気体を吹き付けることができる掃除用気体噴出部4を有する。
【0035】
掃除用気体噴出部4は、上述した通り、搬送路11上における搬送物収集部3の設置位置よりも下流側であって、上部水平搬送部113の戻り経路113Bを通過中のバケット12の内面に向けて下方又は斜め下方から気体を吹き付けることができる位置に設置されている(図1参照)。バケットコンベア100においては、この掃除用気体噴出部4による気体の吹き付けによって、バケット12の内面に残留搬送物として付着している粉粒体をバケット12の内面から剥離させて除去する。
【0036】
掃除用気体噴出部4は、バケット12の内面に所望の流量、流速で、気体を吹き付けることができるものであれば、特に限定はされない。一例として、図4に示すように、中空の管状部材401に複数の気体噴出孔402が長軸方向に沿って並設されている部材を、掃除用気体噴出部4を構成する部材として好ましく用いることができる。
【0037】
又、上記の気体噴出孔402は、噴出する掃除用の気体の気体噴出角度が所望の角度範囲になるように設計された円錐スプレーノズルが設置されていることが好ましい。例えば、ねじ込み式の円錐スプレーノズルを交換するだけで、バケットの進行方向に対する垂直な面のみならず、平行な面における角度範囲についても適正範囲に調整することができる。以上の構成を備える掃除用気体噴出部4をバケット12の進行方向dを横断して配置することにより、簡便な構成でありながら、掃除用気体噴出部4から噴出させる掃除用気体噴出角度を適切に調整して、最適な角度に設定することにより、バケット12の内面の所望の範囲に効率よく掃除用の気体を吹き付けることができる。
【0038】
掃除用気体噴出部4から噴出させる気体の種類や供給方法は特に限定されないが、例えば、圧縮空気を掃除用気体噴出部4に接続されているタンクに貯めて、これを瞬間的に吐出する方法によることができる。又、掃除用気体噴出部4からの気体の噴出を制御することができる弁装置を設置し、この開閉を外部の操作端末等から手動制御又はプログラム等により自動制御することもできる。これにより、気体の吹き付けを間欠的に行い、吹き付けの間隔も任意の間隔に制御することができる。
【0039】
このような構成からなる掃除用気体噴出部4は、上部水平搬送部113の戻り経路113Bを、開口面121を下方又は斜め下方に向けた状態で通過中のバケット12の内面の略全域に気体を吹き付けることができるようにすることが好ましく、そのためには、複数の掃除用気体噴出部4が、戻り経路113Bの複数の箇所にそれぞれ最適に調整された方向に向けて設置されることが好ましい。
【0040】
図2に示すように、掃除用気体噴出部4は、少なくとも逆行気体噴出部41を含む構成であることが好ましい。又、同図に示す通り、掃除用気体噴出部4は、逆行気体噴出部41と順行気体噴出部42とを組合せた構成であることが、より好ましい。ここで、本明細書における逆行気体噴出部41とは、掃除用気体噴出部4のうち、図2に示すように、バケット12の進行方向dに対する前方側の斜め下方からバケット12の内面に向けて気体を吹き付けることができる態様で設置されている掃除用気体噴出部のことを言う。又、同様に、順行気体噴出部42とは、バケット12の進行方向dに対する後方側の斜め下方からバケット12の内面に向けて気体を吹き付けることができる態様で設置されている掃除用気体噴出部のことを言う。
【0041】
上述した通り、バケットコンベア100は、戻り経路113Bにおいて、バケット12が、進行方向に向かって下方又は斜め下方に開口面121を向ける構成とされている。よって、逆行気体噴出部41は、図2に示す通り、バケット12の進行方向dに対する前方側の斜め下方から、逆行気体噴出部41に向かって近づいてくるバケット12の底面に対して気体を吹き付けることができる。
【0042】
又、順行気体噴出部42は、同じく図2に示す通り、バケット12の進行方向dに対する後方側の斜め下方から、バケット12の進行方向に対する前方側の面に気体を吹き付けることができる。
【0043】
上部水平搬送部113の行き経路113Aの終端部、即ち、進行方向が180度変わる屈曲部において、開口面121が上方から下方に回動したときのバケット12の動きから推定できるように、バケットの内面の各部のうち、特に付着物が残留しやすいのが底面であり、次に付着物が残留しやすいのが進行方向に対する前方側の面である。そこで、逆行気体噴出部41によって底面に、順行気体噴出部42によって前方側の面に気体を吹き付けることで、これら2つの面の付着物を集中的に除去することができる。
【0044】
掃除用気体噴出部4を逆行気体噴出部41と順行気体噴出部42とを組合せた構成とした場合において、気体噴出孔402から噴出する気体噴出角度(気体の広がり角度)や、設置角度(気体の噴出方向)を、図2に示すように、バケット12の形状、サイズ、全体の傾き角度等に応じて適切な角度に調整することによって、進行方向dに対する前方側の面、後方側の面及び底面の略全域に気体を吹き付けることができる。より具体的には、気体噴出角度についてはバケット内面の吹き付け対象部分までの距離と、各気体噴出孔402間の間隔に応じて、気体を吹き付けたい範囲の全域に何れかの気体噴出孔から噴出された気体が到達するように気体噴出角度を決定すればよい。又、設置角度については、気体を吹き付けたい面に直交する方向とすることが好ましい。一例として、逆行気体噴出部41、順行気体噴出部42共に、気体噴出孔の個数を3個とし、配置位置は等間隔とし、設置角度(気体の噴出方向)を何れも上方45度、噴出角度(気体の広がり角度)を何れも50~70度とする設置態様を好ましい態様の一例として挙げることができる。
【0045】
又、各掃除用気体噴出部4の配置と気体噴出角度について、更には、図4に示すように、バケット12の形状やサイズに応じて、少なくとも何れかの掃除用気体噴出部4、好ましくは、逆行気体噴出部41又は第2の逆行気体噴出部43の何れかが、バケット12の内側の両側面の略全域に対して気体を吹き付けることができるように、配置と気体噴出角度を設定することが好ましい。これにより、バケット12の内側の両側面に付着した残留搬送物についても、底面等と同様に除去することができる。尚、上記の「両側面」とは、箱型のバケット12の内面のうち、その進行方向に対して平行な対向する2つの面のことを言う。
【0046】
又、掃除用気体噴出部4は、図3に示すように、戻り経路113Bにおける一つの逆行気体噴出部41の設置位置よりも更に下流側に、第2の逆行気体噴出部43を含んでなる構成であることが更に好ましい。掃除用気体噴出部4を第2の逆行気体噴出部43を更に備える構成とした場合において、気体噴出孔402から噴出する気体噴出角度と設置角度を、図3に示すように、バケット12の形状やサイズに応じて適切な角度に設定することによって、逆行気体噴出部41や順行気体噴出部42による気体の吹き付けによって十分に除去できなかった残留搬送物を完全に除去することができる。第2の逆行気体噴出部43の配置と気体噴出角度についても上記同様にバケット12の形状、サイズ、全体の傾き角度等に応じて適切な角度に調整することによって、上述の除去に係る効果をより好ましく発現させることができる。第2の逆行気体噴出部43については、一例として、気体噴出孔の個数を3個、配置位置は等間隔とし、設置角度(気体の噴出方向)を上方45度、噴出角度(気体の広がり角度)を30~50度とする設置態様を好ましい態様の一例として挙げることができる。
【0047】
[付着物回収部]
バケットコンベア100には、掃除用気体噴出部4の設置位置の近傍範囲の下方位置に付着物回収部5が配置されている(図1参照)。掃除用気体噴出部4によってバケット12の内面から除去された上述の残留搬送物は、この付着物回収部5に排出される。
【0048】
付着物回収部5は、吹きつけられた気体によってバケット12の内面から剥離した付着物を収集して排出することができる配置であればよい。掃除用気体噴出部4が逆行気体噴出部41である場合には、付着物回収部5は、逆行気体噴出部41の上流側近傍範囲の下方位置に配置される。又、掃除用気体噴出部4が逆行気体噴出部41と順行気体噴出部42との組合せである場合には、付着物回収部5は、逆行気体噴出部41と、順行気体噴出部42の間の下方位置に配置される。又、上述の第2の逆行気体噴出部が配置される場合には、第2の逆行気体噴出部の上流側近傍範囲の下方位置に第2の付着物回収部51が配置される。
【0049】
[排出物搬送部]
バケットコンベア100は、搬送物収集部3で収集された搬送物、及び、付着物回収部5(51)で回収された残留搬送物を、更に、それぞれ所定の搬送物収集器71、72、73に搬送するための排出物回収部6を有する。排出物回収部6は、搬送物収集部3の下方に配置され、搬送物収集部3から排出された搬送物を搬送する経路を構成する排出物経路61と、排出物経路62とからなる。それぞれの経路は、従来公知の各種のベルトコンベアによって構成することができる。
【0050】
排出物回収部6を構成する排出物経路61、62は、図1に示すように、両経路が相互に合流可能となるように配置されていることが好ましい。例えば、図1に示す配置とする場合であれば、各経路が合流可能に形成されていることにより、搬送物収集部3で収集された搬送物は、排出物経路61、62を、それぞれ任意の方向に進行させながら両経路を経由させることにより、搬送物収集器71、72、73のうちの所望の収集器に収集することができる。
【0051】
又、付着物回収部5で回収された残留搬送物については、排出物経路62に合流させるため、同様にして、搬送物収集器72、73のうちの所望の収集器に収集することができる。排出物回収部6を、図1に示したような構成とすることによって、除去された残留搬送物についても適切に仕分けして回収することができる。従って、付着物回収部5、51で回収された残留搬送物に対しても、余計な作業が発生しない。即ち、従来のような、作業員による人的作業が全く発生しない。そのことで、バケットコンベアを備える生産設備の生産性向上にも寄与することができる。
【0052】
付着物回収部51で回収された残留搬送物については、シュートを経て搬送物収集器73に排出することができる。ただし、排出物回収部6は、図1に示したものに限定されず、排出物経路や搬送物収集器の数と組合せについては、最適な方法を選択することができるし、付着物回収部5、51の排出先についても最適な方法を選択することができる。
【0053】
<バケットコンベアの運転方法>
バケットコンベア100を、逆行気体噴出部41、順行気体噴出部42、第2の逆行気体噴出部43が、戻り経路113Bの進行方向に沿って順次配置されている構成とした場合であれば、逆行気体噴出部41から掃除用の気体を吹付けた後に、順行気体噴出部42から掃除用の気体の吹付けを行い、順行気体噴出部42から掃除用の気体を吹付けた後に、第2の逆行気体噴出部43から掃除用の気体の吹付けを行い、第2の逆行気体噴出部43から掃除用の気体を吹付けた後、逆行気体噴出部41から掃除用の気体の吹付けを行うサイクルを繰返す運転方法とすることができる。このような運転方法とすることによって、例えば、圧縮空気による吹き付けを行うに当たって、計装用機器やエアー駆動式装置を動かすために配置されている工場内の圧縮空気供給ラインから、本発明の吹き付け用空気を取出すことができる。そうすると、空気の圧縮装置等の特別な設備を増設せずに、圧縮空気の供給量に制限のある既設ラインから、他の動作機器に影響を及ぼさずに、低コストで本発明を実施することができる。
【0054】
或いは、バケットコンベア100を、上記同様、逆行気体噴出部41、順行気体噴出部42、第2の逆行気体噴出部43が、搬送路11の進行方向に沿って順次配置されている構成とした場合であれば、逆行気体噴出部41と順行気体噴出部42から順次掃除用の気体を同時に吹付けた後、第2の逆行気体噴出部43から掃除用の気体の吹付けを行い、第2の逆行気体噴出部43から掃除用の気体を吹付けた後に、逆行気体噴出部41と順行気体噴出部42から同時に掃除用の気体の吹付けを行うサイクルを繰返す運転方法とすることもできる。考え方は上記と同様ではあるが、工場内の圧縮空気供給ラインからの圧縮空気の供給量にある程度の余裕がある場合、折衷案として、このような運転方法とすることもできる。そうすると、逆行気体噴出部41、順行気体噴出部42による残留搬送物の除去を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 搬送物収容部
11 搬送路
111 下部水平搬送部
111A 行き経路
111B 戻り経路
112 垂直搬送部
112A 上昇経路
112B 下降経路
113 上部水平搬送部
113A 行き経路
113B 戻り経路
12 バケット
121 開口面
2 搬送物投入部
3 搬送物収集部
4 掃除用気体噴出部
41 逆行気体噴出部
42 順行気体噴出部
43 第2の逆行気体噴出部
401 管状部材
402 気体噴出孔
5 付着物回収部
51 第2の付着物回収部
6 排出物回収部
61、62 排出物経路
71、72、73 搬送物収集器
8 ケーシング
81 点検扉
100 バケットコンベア
図1
図2
図3
図4