(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】キャリア、現像剤、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/113 20060101AFI20240409BHJP
G03G 9/107 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G03G9/113 352
G03G9/113 351
G03G9/113 361
G03G9/107 311
(21)【出願番号】P 2020101132
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】庭山 桂
(72)【発明者】
【氏名】増子 健一
(72)【発明者】
【氏名】大光司 真人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健都
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-317933(JP,A)
【文献】特開2011-170272(JP,A)
【文献】特開2005-084208(JP,A)
【文献】特開平07-043954(JP,A)
【文献】特開2001-154414(JP,A)
【文献】特開2018-084608(JP,A)
【文献】特開2012-058551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/113
G03G 9/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子の表面が被覆層により被覆されているキャリアであって、
前記芯材粒子は、飽和磁化が90emu/gよりも大きく、110emu/g以下であり、
前記被覆層は、アクリルシリコーン樹脂と、カーボンブラックを含
み、
前記アクリルシリコーン樹脂は、一般式(A)
【化1】
(式中、R
1
は、水素原子又はメチル基であり、R
2
は、炭素数1~4のアルキル基であり、mは、1~8の整数である。)
で表される構成単位と、一般式(B)
【化2】
(式中、R
1
は、水素原子又はメチル基であり、R
2
は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
3
は、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、mは、1~8の整数である。)
で表される構成単位を含み、前記一般式(A)で表される構成単位の含有量が10~90mol%であり、前記一般式(B)で表される構成単位の含有量が10~90mol%である、キャリア。
【請求項2】
前記アクリルシリコーン樹脂は、一般式(C)
【化3】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、R
2は、炭素数1~4のアルキル基である。)
で表される構成単位をさらに含み、前記一般式(A)で表される構成単位の含有量が10~40mol%であり、前記一般式(B)で表される構成単位の含有量が10~40mol%であり、前記一般式(C)で表される構成単位の含有量が30~80mol%であり、前記一般式(B)で表される構成単位及び一般式(C)で表される構成単位の総含有量が60~90mol%である、請求項
1に記載のキャリア。
【請求項3】
芯材粒子の表面が被覆層により被覆されているキャリアであって、
前記芯材粒子は、飽和磁化が90emu/gよりも大きく、110emu/g以下であり、
前記被覆層は、アクリルシリコーン樹脂と、カーボンブラックを含む前記キャリアと、トナーを有
し、
前記キャリアに対する前記トナーの質量比が2~50であり、
補給用現像剤である、現像剤。
【請求項4】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、
該帯電した静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
該静電潜像担持体に形成された静電潜像を、請求項
3に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、
該静電潜像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段を有する、画像形成装置。
【請求項5】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を、請求項
3に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段を有する、プロセスカートリッジ。
【請求項6】
静電潜像担持体に静電潜像を形成する工程と、
該静電潜像担持体に形成された静電潜像を、請求項
3に記載の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、
該静電潜像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、
該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程を含む、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、現像剤、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は、帯電手段及び露光手段を用いて、感光体の表面に静電潜像を形成した後、現像剤を用いて、静電潜像を現像してトナー像を形成し、トナー像を記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナー像を定着して、画像を形成する方法である。
【0003】
静電潜像を現像する方法としては、パウダークラウド法、カスケード法、磁気ブラシ法等が挙げられるが、通常、磁気ブラシ法が用いられる。
【0004】
磁気ブラシ法に用いられる二成分系乾式現像剤は、一般に、芯材粒子の表面が被覆層により被覆されているキャリア(例えば、特許文献1、2参照)と、トナーを有する。このとき、現像装置では、キャリアと、トナーの摩擦により発生した電気力により、トナーがキャリアに保持されて、磁気ブラシが形成される。次に、磁気ブラシを構成するトナーが、感光体の表面に形成された静電潜像に近接すると、静電潜像が形成する電界による吸引力が、キャリアの保持力に打ち勝つ。その結果、トナーが磁気ブラシから離脱して、静電潜像に付着し、トナー像が形成される。そして、補給用現像剤を用いて、現像によって消費されたトナーを補給しながら、二成分系乾式現像剤を反復使用する。
【0005】
電子写真法により、画像を形成する機器としては、従来、複写機が用いられてきたが、近年では、コンピューターの普及により、レーザービームプリンターも用いられるようになってきており、それに伴い、高画質化の要求も高まっている。
【0006】
そこで、トナー及びキャリアを小粒径化することが考えられる。ここで、トナーを小粒径化する場合、トナーの現像性を確保するために、トナーの濃度を高くすると共に、キャリアを小粒径化する必要がある。キャリアを小粒径化すると、上述の磁気ブラシを緻密に形成できることから、階調性やベタ均一性を向上させることが期待できると同時に、キャリア自体が軽量化されるため、二成分系乾式現像剤の劣化を防止する面でも有利である。
【0007】
しかしながら、キャリアを小粒径化すると、長期間画像を形成した場合に、キャリア付着が発生しやすくなる。キャリアは、通常、磁気力により、現像スリーブ上に保持されているが、静電誘導或いは電荷注入による電荷がキャリアに存在しており、感光体上の電荷との間に静電力が作用している。ここで、キャリアの粒径が小さくなると、粒子1個当たりに作用する磁気力が小さくなるため、感光体との静電力が、現像スリーブの保持力に打ち勝って、キャリアが感光体上に付着しやすくなる。
【0008】
さらに、近年市場が拡大しているプロダクションプリンティングの分野では、これまで以上に高画質化の要求が高まっていることに加えて、画像出力速度を高速化することも求められている。画像出力速度を高速化するためには、現像スリーブの回転速度も必然的に高速化されるが、キャリアが遠心力によって受ける力が大きくなるため、キャリア付着に対して不利な条件となる。
【0009】
こうした問題を解決する手段として、芯材粒子の飽和磁化を高くすることで、キャリアの現像スリーブ側への磁気拘束力を高くすることが考えられる。
【0010】
しかしながら、芯材粒子の飽和磁化が高くなると、現像スリーブ上に形成される磁気ブラシが固く締った状態となり、階調性や中間調の再現性が低下するため、濃度ムラが発生しやすくなる。
【0011】
近年は、消費電力を低減するために、トナーを低温定着化させる傾向にあり、また、プリント速度の高速化も相まって、キャリアへのトナースペントが一段と生じやすくなっている。さらに、高画質化の要求から、トナーは、多くの添加剤を含む傾向にあり、これらの添加剤がキャリアにスペントして、トナーの帯電量が低下し、トナー飛散及び地肌かぶりに対する余裕度が低下しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一態様は、長期間画像を形成しても、キャリア付着、トナー飛散、地肌かぶり及び濃度ムラの発生を抑制することが可能なキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、芯材粒子の表面が被覆層により被覆されているキャリアであって、前記芯材粒子は、飽和磁化が90emu/gよりも大きく、110emu/g以下であり、前記被覆層は、アクリルシリコーン樹脂と、カーボンブラックを含
み、前記アクリルシリコーン樹脂は、一般式(A)
【化1】
(式中、R
1
は、水素原子又はメチル基であり、R
2
は、炭素数1~4のアルキル基であり、mは、1~8の整数である。)
で表される構成単位と、一般式(B)
【化2】
(式中、R
1
は、水素原子又はメチル基であり、R
2
は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
3
は、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、mは、1~8の整数である。)
で表される構成単位を含み、前記一般式(A)で表される構成単位の含有量が10~90mol%であり、前記一般式(B)で表される構成単位の含有量が10~90mol%である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、長期間画像を形成しても、キャリア付着、トナー飛散、地肌かぶり及び濃度ムラの発生を抑制することが可能なキャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
[キャリア]
本実施形態のキャリアは、芯材粒子の表面が被覆層により被覆されている。ここで、芯材粒子は、飽和磁化が90emu/gよりも大きく、110emu/g以下である。また、被覆層は、アクリルシリコーン樹脂と、カーボンブラックを含む。
【0018】
本実施形態においては、長期間画像を形成した場合のキャリア付着の発生を抑制するために、飽和磁化が90emu/gよりも大きい芯材粒子を用いる。このような芯材粒子は、電気抵抗が低いため、被覆層の削れが発生しても、電気抵抗が急激に低下しないように、被覆層の形成に用いられる組成物に、芯材粒子と被覆層の接着性、被覆層の撥水性、硬さ、耐削れ性を両立させることが可能なアクリルシリコーン樹脂を添加する。
【0019】
(芯材粒子)
芯材粒子の飽和磁化は、90emu/gよりも大きく、110emu/g以下であり、90emu/gより大きく、100emu/g以下であることが好ましい。芯材粒子の飽和磁化が90emu/g以下であると、キャリアの現像スリーブ側への磁気拘束力が十分ではなく、長期間画像を形成すると、エッジキャリア付着及びベタキャリア付着が発生しやすくなる。一方、芯材粒子の飽和磁化が110emu/gよりも大きいと、現像スリーブ上に形成される磁気ブラシが固く締った状態となり、階調性や中間調の再現性が低下するため、濃度ムラが発生しやすくなる。
【0020】
芯材粒子を構成する材料としては、飽和磁化が90emu/gよりも大きく、110emu/g以下であれば、特に限定されないが、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;磁性体が分散している樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、飽和磁化を高くしやすい点で、マグネタイトが好ましい。
【0021】
芯材粒子の重量平均粒径は、20~65μmであることが好ましい。芯材粒子の重量平均粒径が20μm以上であると、長期間画像を形成しても、エッジキャリア付着及びベタキャリア付着が発生しにくくなり、65μm以下であると、画像細部の再現性が向上し、精細な画像を形成することができる。
【0022】
(被覆層)
被覆層は、アクリルシリコーン樹脂と、カーボンブラックを含む組成物を加熱処理して形成することができる。このため、長期間画像を形成しても、トナー飛散、地肌かぶり、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において、アクリルシリコーン樹脂とは、加水分解によりシラノール基を生成することが可能な基を有するアクリル樹脂を意味する。このため、アクリルシリコーン樹脂を加熱処理すると、アクリルシリコーン樹脂由来のシラノール基が縮合して、シロキサン結合が形成される。
【0024】
なお、組成物を加熱処理する条件は、アクリルシリコーン樹脂由来のシラノール基を縮合させることが可能であれば、特に限定されない。
【0025】
被覆層の平均厚さは、0.05~0.50μmであることが好ましい。被覆層の平均厚さが0.05μm以上であると、被覆層の耐久性が向上し、0.50μm以下であると、ベタキャリア付着が発生しにくくなる。
【0026】
(アクリルシリコーン樹脂)
アクリルシリコーン樹脂は、一般式(A)
【0027】
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、R
2は、炭素数1~4のアルキル基であり、mは、1~8の整数である。)
で表される構成単位と、一般式(B)
【0028】
【化2】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、R
2は、炭素数1~4のアルキル基であり、R
3は、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、mは、1~8の整数である。)
で表される構成単位を含むことが好ましく、必要に応じて、一般式(A)、(B)で表される構成単位以外の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0029】
一般式(A)で表される構成単位は、アルキル基が多数存在するトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有するため、被覆層の表面エネルギーを小さくする、即ち、被覆層の撥水性を向上させることができる。
【0030】
一般式(B)で表される構成単位は、架橋性基であるジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するため、被覆層の強靭性が高くなると共に、芯材粒子と被覆層の接着性が高くなる。
【0031】
アクリルシリコーン樹脂中の一般式(A)で表される構成単位の含有量は、10~90mol%であることが好ましく、30~70mol%であることがさらに好ましい。アクリルシリコーン樹脂中の一般式(A)で表される構成単位の含有量が10mol%以上であると、キャリアへのトナースペントが発生しにくくなり、90mol%以下であると、被覆層の耐久性が向上する。
【0032】
アクリルシリコーン樹脂中の一般式(B)で表される構成単位の含有量は、10~90mol%であることが好ましく、30~70mol%であることがさらに好ましい。アクリルシリコーン樹脂中の一般式(B)で表される構成単位の含有量が10mol%以上であると、被覆層の耐久性が向上し、90mol%以下であると、被覆層の可撓性が向上する。
【0033】
一般式(A)で表される構成単位に対応するモノマーとしては、以下に示すトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートが例示され、二種以上を併用してもよい。
【0034】
CH2=CMe-COO-C3H6-Si(OSiMe3)3
CH2=CH-COO-C3H6-Si(OSiMe3)3
CH2=CMe-COO-C4H8-Si(OSiMe3)3
CH2=CMe-COO-C3H6-Si(OSiEt3)3
CH2=CH-COO-C3H6-Si(OSiEt3)3
CH2=CMe-COO-C4H8-Si(OSiEt3)3
CH2=CMe-COO-C3H6-Si(OSiPr3)3
CH2=CH-COO-C3H6-Si(OSiPr3)3
CH2=CMe-COO-C4H8-Si(OSiPr3)3
ここで、Meは、メチル基であり、Etは、エチル基であり、Prは、プロピル基である。
【0035】
トリス(トリアルキルシロキシ)シリル基を有する(メタ)アクリレートの合成方法としては、例えば、白金触媒の存在下、トリス(トリアルキルシロキシ)シランと、アリル(メタ)アクリレートを反応させる方法、カルボン酸と酸触媒の存在下、メタクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシランと、ヘキサアルキルジシロキサンを反応させる方法(例えば、特開平11-217389号公報参照)等が挙げられる。
【0036】
一般式(B)で表される構成単位に対応するモノマーとしては、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン等のジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートが例示され、二種以上を併用してもよい。
【0037】
アクリルシリコーン樹脂は、一般式(C)
【0038】
【化3】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、R
2は、炭素数1~4のアルキル基である。)
で表される構成単位をさらに含むことが好ましい。
【0039】
一般式(C)で表される構成単位は、アルキルオキシカルボニル基を有するため、被覆層の可撓性が高くなると共に、芯材粒子と被覆層の接着性が高くなる。
【0040】
アクリルシリコーン樹脂中の一般式(A)で表される構成単位の含有量は、10~40mol%であることが好ましく、15~30mol%であることがさらに好ましい。アクリルシリコーン樹脂中の一般式(A)で表される構成単位の含有量が10mol%以上であると、キャリアへのトナースペントが発生しにくくなり、40mol%以下であると、被覆層の耐久性が向上する。
【0041】
アクリルシリコーン樹脂中の一般式(B)で表される構成単位の含有量は、10~40mol%であることが好ましく、10~35mol%であることがさらに好ましい。アクリルシリコーン樹脂中の一般式(B)で表される構成単位の含有量が10mol%以上であると、被覆層の耐久性が向上し、40mol%以下であると、被覆層の可撓性が向上する。
【0042】
アクリルシリコーン樹脂中の一般式(C)で表される構成単位の含有量は、30~80mol%であることが好ましく、35~75mol%であることがさらに好ましい。アクリルシリコーン樹脂中の一般式(C)で表される構成単位の含有量が30mol%以上であると、被覆層の可撓性及び耐久性が向上し、80mol%以下であると、被覆層の撥水性及び耐久性が向上する。
【0043】
一般式(C)で表される構成単位に対応するモノマーとしては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルが例示され、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、メチルメタクリレートが好ましい。
【0044】
アクリルシリコーン樹脂は、公知の重合法を用いて、合成することができる。
【0045】
例えば、撹拌機付きフラスコに、トルエン等の有機溶媒を投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温する。次に、モノマーと、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等の重合開始剤を含む組成物を1時間かけて滴下する。次に、重合開始剤が有機溶媒に溶解している溶液を加えて、90~100℃で3時間混合する。
【0046】
被覆層に含まれる樹脂は、例えば、以下の方法により解析することができる。被覆層に含まれる樹脂をキシレン、MEK、クロロホルム等の溶媒で溶解させ、ろ過した後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて、分析を実施し、構造解析することにより、樹脂を同定する。GC-MSとしては、例えば、QP-2010(島津製作所製)を用いることができる。
【0047】
(シリコーン樹脂)
被覆層の形成に用いられる組成物は、シリコーン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0048】
シリコーン樹脂としては、例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタン等により変性されている変性シリコーン樹脂等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0049】
ストレートシリコーン樹脂の市販品としては、KR271、KR255、KR152(以上、信越化学工業製)、SR2400、SR2406、SR2410(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン製)等が挙げられる。
【0050】
アルキド変性シリコーン樹脂の市販品としては、KR206(信越化学工業製)、SR2110(東レ・ダウコーニング・シリコーン製)等が挙げられる。
【0051】
アクリル変性シリコーン樹脂の市販品としては、KR5208(信越化学工業製)等が挙げられる。
【0052】
エポキシ変性シリコーン樹脂の市販品としては、ES1001N(信越化学工業製)、SR2115(東レ・ダウコーニング・シリコーン製)等が挙げられる。
【0053】
ウレタン変性シリコーン樹脂の市販品としては、KR305(信越化学工業製)等が挙げられる。
【0054】
(シラノール縮合触媒)
被覆層の形成に用いられる組成物は、シラノール縮合触媒をさらに含んでいてもよい。
【0055】
シラノール縮合触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒が例示される。これらの中でも、チタン系触媒が好ましく、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が特に好ましい。これは、シラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、失活しにくいためである。
【0056】
(カーボンブラック)
芯材粒子の表面が被覆層により被覆されているキャリアは、一般に、被覆層による被覆に伴って絶縁化され、現像電極として働かなくなるので、特に、ベタ画像部でエッジ効果が生じやすくなる。また、磁気ブラシからトナーが離脱する時のカウンターチャージも過大となるため、非画像部へのキャリア付着が発生しやすくなる。
【0057】
そこで、被覆層の形成に用いられる組成物に、抵抗調整能力の優れているカーボンブラックを添加することにより、経時でのキャリアの抵抗変動を抑制することができ、その結果、ベタキャリア付着の発生を抑制することができる。
【0058】
(シランカップリング剤)
被覆層の形成に用いられる組成物は、シランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0059】
シランカップリング剤としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド等が例示され、二種以上を併用してもよい。
【0060】
シランカップリング剤の市販品としては、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940(東レ・シリコーン製)等が例示される。
【0061】
シランカップリング剤の添加量は、アクリルシリコーン樹脂に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。シランカップリング剤の添加量が、アクリルシリコーン樹脂に対して、0.1質量%以上であると、芯材粒子とアクリルシリコーン樹脂の接着性が向上し、長期間画像を形成しても、被覆層が脱落しにくくなり、10質量%以下であると、長期間画像を形成しても、トナーのフィルミングが発生しにくくなる。
【0062】
[現像剤]
本実施形態の現像剤は、本実施形態のキャリアと、トナーを有する。
【0063】
(トナー)
トナーは、結着樹脂と着色剤を含むが、モノクロトナー及びカラートナーのいずれであってもよい。また、定着ローラにトナー固着防止用オイルを塗布しないオイルレスシステムに適用するために、トナーは、離型剤をさらに含んでいてもよい。
【0064】
トナーは、粉砕法、重合法等の公知の製造方法を用いて、製造することができる。
【0065】
例えば、まず、トナー材料の混練物を冷却した後、粉砕し、分級して、母体粒子を作製する。次に、母体粒子に外添剤を添加し、トナーを作製する。
【0066】
トナー材料を混練する装置としては、例えば、バッチ式の2本ロール;バンバリーミキサー;KTK型2軸押出し機(神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出し機(東芝機械製)、2軸押出し機(KCK製)、PCM型2軸押出し機(池貝鉄工製)、KEX型2軸押出し機(栗本鉄工所製)等の連続式の2軸押出し機;コ・ニーダー(ブッス製)等の連続式の1軸混練機等が挙げられる。
【0067】
冷却した混練物を粉砕する方法としては、例えば、ハンマーミル、ロートプレックス等を用いて、粗粉砕した後、ジェット気流を用いる微粉砕機、機械式の微粉砕機等を用いて、微粉砕する方法等が挙げられる。
【0068】
なお、冷却した混練物を粉砕する際には、平均粒径が3~15μmになるように粉砕することが好ましい。
【0069】
粉砕された混練物を分級する装置としては、例えば、風力式分級機等が挙げられる。
【0070】
なお、粉砕された混練物を分球する際には、母体粒子の平均粒径が5~20μmとなるように分級することが好ましい。
【0071】
また、母体粒子に外添剤を添加する方法としては、例えば、ミキサー類を用いて、母体粒子と外添剤を混合攪拌する方法等が挙げられる。
【0072】
結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリp-スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の単独重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0073】
圧力定着用の結着樹脂としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体;エポキシ樹脂、ポリエステル、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0074】
着色剤(顔料又は染料)としては、例えば、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等の緑色顔料;カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等の黒色顔料等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0075】
離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナバワックス、エステルワックス等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0076】
トナーは、帯電制御剤をさらに含んでいてもよい。
【0077】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン;炭素数が2~16のアルキル基を有するアジン系染料;C.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)等の塩基性染料;これらの塩基性染料のレーキ顔料;C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩;ジブチル、ジオクチル等のジアルキルスズ化合物;ジアルキルスズボレート化合物;グアニジン誘導体;アミノ基を有するビニル系ポリマー、アミノ基を有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂;モノアゾ染料の金属錯塩;サルチル酸;ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体;スルホン化した銅フタロシアニン顔料;有機ホウ素塩類;含フッ素4級アンモニウム塩;カリックスアレン系化合物等が挙げられるが、二種以上を併用してもよい。
【0078】
なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好ましい。
【0079】
外添剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機粒子;ソープフリー乳化重合法により得られる平均粒径が0.05~1μmのポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子が挙げられ、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、表面が疎水化処理されているシリカ、酸化チタン等の金属酸化物粒子が好ましい。さらに、疎水化処理されているシリカ及び疎水化処理されている酸化チタンを併用し、疎水化処理されているシリカよりも疎水化処理されている酸化チタンの添加量を多くすることにより、湿度に対する帯電安定性に優れるトナーが得られる。
【0080】
(補給用現像剤)
本実施形態の現像剤において、キャリアに対するトナーの質量比を2~50にすると、補給用現像剤として、用いることができる。キャリアに対するトナーの質量比が2未満であると、現像装置中のキャリアの比率が高くなるため、現像剤の帯電量が増加し、画像濃度が低下する。一方、キャリアに対するトナーの質量比が50を超えると、現像装置中のキャリアの入れ替わる頻度が低くなり、長期間に亘って安定した画像品質が得られなくなる。
【0081】
補給用現像剤を現像装置内の余剰の現像剤を排出しながら、画像形成装置に適用することで、長期間に亘って安定した画像品質が得られる。つまり、現像装置内の劣化したキャリアと、補給用現像剤中の劣化していないキャリアを入れ替えることにより、長期間に亘って帯電量を安定に保つことができ、その結果、安定した画像品質が得られる。
【0082】
補給用現像剤は、特に、画像面積率が高い画像を形成する時に有効である。画像面積率が高い画像を形成する時は、キャリアへのトナースペントが発生するが、補給用現像剤を補給することで、トナースペントが発生したキャリアが入れ替わる頻度が高くなる。これにより、長期間に亘って安定した画像品質が得られる。
【0083】
[画像形成装置]
本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電した静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像担持体に形成された静電潜像を、本実施形態の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、静電潜像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段を有する。
【0084】
本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等をさらに有していてもよい。
【0085】
[画像形成方法]
本実施形態の画像形成方法は、静電潜像担持体に静電潜像を形成する工程と、静電潜像担持体に形成された静電潜像を、本実施形態の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、静電潜像担持体に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程を含む。
【0086】
[プロセスカートリッジ]
図1に、本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す。
【0087】
プロセスカートリッジ(10)は、感光体(11)と、感光体(11)を帯電させる帯電装置(12)と、帯電した感光体(11)に形成された静電潜像を、本実施形態の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像装置(13)と、トナー像が記録媒体に転写された感光体(11)に残留したトナーを除去するクリーニング装置(14)が一体に支持されている。プロセスカートリッジ(10)は、複写機、プリンタ等の画像形成装置の本体に対して着脱可能である。
【0088】
以下、プロセスカートリッジ(10)を搭載した画像形成装置を用いて画像を形成する方法について説明する。
【0089】
まず、感光体(11)が所定の周速度で回転駆動され、帯電装置(12)により、感光体(11)の周面が正又は負の所定電位に均一に帯電する。次に、スリット露光方式の露光装置、レーザービームで走査露光する露光装置等の露光装置から感光体(11)の周面に露光光が照射され、静電潜像が順次形成される。さらに、感光体(11)の周面に形成された静電潜像は、現像装置(13)により、本実施形態の現像剤を用いて現像され、トナー像が形成される。次に、感光体(11)の周面に形成されたトナー像は、感光体(11)の回転と同期されて、給紙部から感光体(11)と転写装置の間に給紙された転写紙に、順次転写される。さらに、トナー像が転写された転写紙は、感光体(11)の周面から分離されて定着装置に導入されて定着された後、複写物(コピー)として、画像形成装置の外部へプリントアウトされる。一方、トナー像が転写された感光体(11)は、クリーニング装置(14)により、残留したトナーが除去されて清浄化された後、除電装置により除電され、繰り返し画像形成に使用される。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、部は、質量部を意味する。
【0091】
[芯材粒子1]
芯材粒子1として、飽和磁化が95emu/g、重量平均粒径が35μmのマグネタイト粒子を用いた。
【0092】
[芯材粒子2]
芯材粒子2として、飽和磁化が91emu/g、重量平均粒径が35μmのマグネタイト粒子を用いた。
【0093】
[芯材粒子3]
芯材粒子3として、飽和磁化が108emu/g、重量平均粒径が35μmのマグネタイト粒子を用いた。
【0094】
[芯材粒子4]
芯材粒子4として、飽和磁化が75emu/g、重量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いた。
【0095】
[芯材粒子5]
芯材粒子5として、飽和磁化が116emu/g、重量平均粒径が35μmのマグネタイト粒子を用いた。
【0096】
[芯材粒子の飽和磁化]
BHU-60型磁化測定装置(理研測定製)を用いて、芯材粒子の飽和磁化を測定した。具体的に、芯材粒子を約1.0g秤量した後、内径7mm、高さ10mmのセルに詰め、磁化測定装置にセットした。次に、印加磁場を徐々に増大し、最大3,000エルステッドまで変化させた後、印加磁場を減少し、芯材粒子のヒステリシスカーブを得た。得られたヒステリシスカーブから、芯材粒子の飽和磁化を求めた。
【0097】
[芯材粒子の重量平均粒径]
マイクロトラック粒度分布計モデルHRA9320-X100(日機装製)を用いて、芯材粒子の重量平均粒径を測定した。
【0098】
表1に、芯材粒子の特性を示す。
【0099】
【表1】
[アクリルシリコーン樹脂1の合成]
撹拌機付きフラスコに、トルエン500gを投入して、窒素ガス気流下、90℃まで昇温した。次に、サイラプレーンTM-0701T(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)(チッソ製)211g(500mmol)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン124.0g(500mmol)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.58g(3mmol)の混合液を、1時間かけて滴下した。次に、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.06g(0.3mmol)がトルエン15gに溶解している溶液を加え、90~100℃で3時間混合し、アクリルシリコーン樹脂1のトルエン溶液を得た。
【0100】
アクリルシリコーン樹脂1は、重量平均分子量が35,000であった。また、アクリルシリコーン樹脂1のトルエン溶液を、不揮発分が25質量%になるように、トルエンで希釈した希釈液は、粘度が8.5mm2/sであり、比重が0.91であった。
【0101】
[アクリルシリコーン樹脂2の合成]
3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの添加量を379.8g(900mmol)に変更し、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの添加量を24.8g(100mmol)に変更した以外は、アクリルシリコーン樹脂1と同様にして、アクリルシリコーン樹脂2のトルエン溶液を得た。
【0102】
アクリルシリコーン樹脂2は、重量平均分子量が37,000であった。また、アクリルシリコーン樹脂2のトルエン溶液を、不揮発分が25質量%になるように、トルエンで希釈した希釈液は、粘度が8.4mm2/sであり、比重が0.92であった。
【0103】
[アクリルシリコーン樹脂3の合成]
3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの添加量を42.2g(100mmol)に変更し、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの添加量を223.2g(900mmol)に変更した以外は、アクリルシリコーン樹脂1と同様にして、アクリルシリコーン樹脂3のトルエン溶液を得た。
【0104】
アクリルシリコーン樹脂3は、重量平均分子量が34,000であった。また、アクリルシリコーン樹脂3のトルエン溶液を、不揮発分が25質量%になるように、トルエンで希釈した希釈液は、粘度が8.7mm2/sであり、比重が0.90であった。
【0105】
[アクリルシリコーン樹脂4の合成]
撹拌機付きフラスコに、トルエン300gを投入して、窒素ガス気流下、90℃まで昇温した。次に、サイラプレーンTM-0701T(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)(チッソ製)84.4g(200mmol)、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン52g(200mmol)、メタクリル酸メチル60.0g(600mmol)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.58g(3mmol)の混合液を、1時間かけて滴下した。次に、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.06g(0.3mmol)がトルエン15gに溶解している溶液を加え、90~100℃で3時間混合し、アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液を得た。
【0106】
アクリルシリコーン樹脂4は、重量平均分子量が33,000であった。また、アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液を、不揮発分が25質量%になるように、トルエンで希釈した希釈液は、粘度が8.8mm2/sであり、比重が0.91であった。
【0107】
[アクリルシリコーン樹脂の重量平均分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、標準ポリスチレン換算で、アクリルシリコーン樹脂の重量平均分子量を求めた。
【0108】
[アクリルシリコーン樹脂の溶液の不揮発分]
アクリルシリコーン樹脂の溶液1gをアルミニウム皿に秤取り、150℃で1時間加熱した後の質量を測定した。式
(加熱前の質量-加熱後の質量)/(加熱前の質量)×100
により、アクリルシリコーン樹脂の溶液の不揮発分を算出した。
【0109】
[アクリルシリコーン樹脂の溶液の粘度]
JIS-K2283に準じて、アクリルシリコーン樹脂の溶液の粘度を25℃で測定した。
【0110】
表2に、アクリルシリコーン樹脂の特性を示す。
【0111】
【表2】
[実施例1]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液(200部)、カーボンブラック(4部)、シラノール縮合触媒チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)TC-750(マツモトファインケミカル製)(20部)、シランカップリング剤SH6020(東レ・シリコーン製)(4部)を、ホモミキサーを用いて、トルエン1000部中に分散させ、固形分10質量%の被覆層用塗布液を得た。
【0112】
流動床型コーティング装置を用いて、流動槽内の温度を各65℃に制御し、被覆層用塗布液を芯材粒子1に塗布し、乾燥させた後、電気炉を用いて、230℃で1時間焼成し、キャリアを得た。
【0113】
[実施例2]
芯材粒子1の代わりに、芯材粒子2を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0114】
[実施例3]
芯材粒子1の代わりに、芯材粒子3を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0115】
[実施例4]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液の代わりに、アクリルシリコーン樹脂2のトルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0116】
[実施例5]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液の代わりに、アクリルシリコーン樹脂3のトルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0117】
[実施例6]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液の代わりに、アクリルシリコーン樹脂1のトルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0118】
[実施例7]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液(200部)の代わりに、重量平均分子量15000のメチルシリコーン樹脂の25質量%トルエン溶液(100部)、アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液(100部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0119】
[比較例1]
芯材粒子1の代わりに、芯材粒子4を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0120】
[比較例2]
芯材粒子1の代わりに、芯材粒子5を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0121】
[比較例3]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液の代わりに、重量平均分子量15000のメチルシリコーン樹脂の25質量%トルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0122】
[比較例4]
アクリルシリコーン樹脂4のトルエン溶液の代わりに、アクリル樹脂RHR-3001(日立化成製)の25質量%トルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0123】
[比較例5]
カーボンブラックの代わりに、酸化スズ微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、キャリアを得た。
【0124】
[トナーの製造]
(ポリエステルAの合成)
温度計、攪拌機、冷却器、窒素導入管の付いた反応槽中に、水酸基価320のビスフェノールAのPO付加物(443部)、ジエチレングリコール(135部)、テレフタル酸(422部)、ジブチルチンオキサイド(2.5部)を入れた後、酸価が10になるまで200℃で反応させて、ポリエステルAを得た。ポリエステルAは、Tgが63℃であり、ピーク分子量が6000であった。
【0125】
(ポリエステルBの合成)
温度計、攪拌機、冷却器、窒素導入管の付いた反応槽中に、水酸基価320のビスフェノールAのPO付加物(443部)、ジエチレングリコール(135部)、テレフタル酸(422部)、ジブチルチンオキサイド(2.5部)を入れた後、酸価が7になるまで230℃で反応させて、ポリエステルBを得た。ポリエステルBは、Tgが65℃であり、ピーク分子量が16000であった。
【0126】
(母体粒子の作製)
ポリエステルA(40部)、ポリエステルB(60部)、カルナバワックス(1部)、カーボンブラック#44(三菱化学製)(15部)を、ヘンシェル20B(三井鉱山製)を用いて、1500rpmで3分間混合した。得られた混合物を、小型ブス・コ・ニーダー(ブッス製)を用いて、以下の条件で混練した。
【0127】
入口部の設定温度:100℃
出口部の設定温度:50℃
フィード量:2kg/h
得られた混練物を圧延冷却した後、パルペライザーを用いて、粉砕した。得られた粉砕物を、I式ミルIDS-2型(日本ニューマチック製)において、平面型衝突板を用いて、以下の条件で微粉砕した後、分級機132MP型(アルピネ製)を用いて、分級し、母体粒子を得た。母体粒子は、平均粒径が7.2μmであった。
【0128】
エアー圧力:6.8atm/cm2
フィード量:0.5kg/h
(外添剤処理)
ヘンシェルミキサーを用いて、母体粒子(100部)と、疎水性シリカ粒子R972(日本アエロジル製)(1部)を混合し、トナーを得た。トナーは、
[現像剤の作製]
ボールミルを用いて、キャリア(93部)と、トナー(7部)を20分間攪拌し、現像剤を得た。
【0129】
[現像剤の評価]
次に、現像剤を用いて、ランニング評価を実施した。
【0130】
具体的には、デジタルカラー複写機・プリンタ複合機RICOH Pro C9100(リコー製)に現像剤を充填して、画像面積率40%で、1万枚及び100万枚ランニングした後のトナー飛散、地肌かぶり、エッジキャリア付着、ベタキャリア付着、濃度ムラを評価した。
【0131】
(トナー飛散)
現像スリーブの下部に溜まったトナーを吸引することにより回収し、トナーの質量を測定し、トナー飛散を評価した。
【0132】
なお、トナー飛散の判定基準は、以下の通りである。
【0133】
トナーの質量が0mg以上50mg未満である場合:◎(大変良好)
トナーの質量が50mg以上100mg未満である場合:○(良好)
トナーの質量が100mg以上250mg未満である場合:△(使用可能)
トナーの質量が250mg以上である場合:×(不良)
(地肌かぶり)
白紙画像を形成中に電源をOFFにして、マシンを停止させた後、現像後の感光体上のトナーをテープ転写し、未転写のテープの画像濃度との差(△ID)を、938スペクトロデンシトメーター(X-Rite製)を用いて、測定し、地肌かぶりを評価した。
【0134】
なお、地肌かぶりの判定基準は、以下の通りである。
【0135】
△IDが0以上0.005未満である場合:◎(大変良好)
△IDが0.005以上0.01未満である場合:○(良好)
△IDが0.01以上0.02未満である場合:△(使用可能)
△IDが0.02以上である場合:×(不良)
(エッジキャリア付着)
10℃、15%の低温低湿環境の環境評価室にマシンを入れて一日放置した後、以下の条件で、170μm×170μmを1マスとして、ベタ画像部と白紙部を縦横交互に配置させた画像をA3サイズで出力し、ベタ画像部と白紙部の境目における画像の白抜け個数をカウントし、エッジキャリア付着を評価した。
【0136】
帯電電位(Vd):-630V
現像バイアス:-500V(DC)
なお、エッジキャリア付着の判定基準は、以下の通りである。
【0137】
画像の白抜け個数が0個である場合:◎(大変良好)
画像の白抜け個数が1~3個である場合:○(良好)
画像の白抜け個数が4~10個である場合:△(使用可能)
画像の白抜け個数が11個以上である場合:×(不良)
(ベタキャリア付着)
以下の条件で、ベタ画像を形成中に電源をOFFにして、マシンを停止させた後、転写後の感光体上の10mm×100mmの領域のキャリア付着の個数をカウントし、ベタキャリア付着を評価した。
【0138】
帯電電位(Vd):-600V
ベタ画像部に対応する部分の露光後の感光体の電位:-100V
現像バイアス:-500V(DC)
なお、ベタキャリア付着の判定基準は、以下の通りである。
【0139】
キャリア付着の個数が0個である場合:◎(大変良好)
キャリア付着の個数が1~3個である場合:○(良好)
キャリア付着の個数が4~10個である場合:△(使用可能)
キャリア付着の個数が11個以上である場合:×(不良)
(濃度ムラ)
ベタ画像及びハーフトーン画像を出力した後、目視で観察して、濃度ムラを評価した。
【0140】
なお、濃度ムラの判定基準は、以下の通りである。
【0141】
画像上に濃度ムラが全くない場合:◎(大変良好)
画像上に濃度ムラが僅かに観察される場合:○(良好)
画像上に濃度ムラが観察されるが、問題とならないレベルである場合:△(使用可能)
画像上に濃度ムラが観察され、問題となるレベルである場合:×(不良)
表3に、現像剤のランニング評価の結果を示す。
【0142】
【表3】
表3から、実施例1~7のキャリアは、100万枚ランニングしても、エッジキャリア付着、ベタキャリア付着、トナー飛散、地肌かぶりの発生を抑制できることがわかる。
【0143】
これに対して、比較例1のキャリアは、芯材粒子の飽和磁化が75emu/gであるため、長期間画像を形成すると、エッジキャリア付着及びベタキャリア付着が発生する。
【0144】
比較例2のキャリアは、芯材粒子の飽和磁化が116emu/gであるため、1万枚ランニングすると、濃度ムラが発生する。
【0145】
比較例3のキャリアは、アクリルシリコーン樹脂を含まず、メチルシリコーン樹脂を含む被覆層用塗布液が用いられているため、100万枚ランニングすると、ベタキャリア付着が発生する。
【0146】
比較例4のキャリアは、アクリルシリコーン樹脂を含まず、アクリル樹脂を含む被覆層用塗布液が用いられているため、100万枚ランニングすると、エッジキャリア付着が発生する。
【0147】
比較例5のキャリアは、カーボンブラックを含まない被覆層用塗布液が用いられているため、100万枚ランニングすると、ベタキャリア付着が発生する。
【符号の説明】
【0148】
10 プロセスカートリッジ
11 感光体
12 帯電装置
13 現像装置
14 クリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0149】
【文献】特開2004-133178号公報
【文献】特開平8-234501号公報