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特許7468172粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法
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  • 特許-粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/40 20190101AFI20240409BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240409BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240409BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240409BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20240409BHJP
   B29C 48/57 20190101ALI20240409BHJP
   B29C 48/635 20190101ALI20240409BHJP
【FI】
B29C48/40
C08L67/00
C08K3/36
C08K3/00
C08K5/00
C08J3/20 B CFD
B29B7/48
B29C48/57
B29C48/635
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020102464
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021194845
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】北村 広之
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534596(JP,A)
【文献】特表2018-502198(JP,A)
【文献】特開2014-040576(JP,A)
【文献】特開2015-085558(JP,A)
【文献】特表2019-514762(JP,A)
【文献】特開2004-230631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-11/14
B29B13/00-15/06
B29C31/00-31/10
B29C37/00-37/04
B29C48/00-48/96
B29C71/00-71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂と粒子とを二軸押出機を用いて混練することにより粒子配合ポリエステル樹脂組成物を製造する方法において、該二軸押出機のスクリューとして、シャフトと、該シャフトに対して装着された
(1)スクリューの基端から中央部までの部分に、円形板状のディスクを一枚以上並べて構成されている、ニーディングディスク、
(2)スクリューの中央部から先端までの部分に、シャフトの断面中心に対して断面がいびつな構造を有した偏心フラクショナルミキシングエレメント、
及び
(3)該ニーディングディスクと該偏心フラクショナルミキシングエレメントとの間にフルフライト
を有するスクリューを備えた二軸押出機を用いて混練する粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
前記ニーディングディスクの長さが、スクリュー全体長さの3~10%を占め、
前記偏心フラクショナルミキシングエレメントの長さが、スクリュー全体長さの6~30%を占める
ことを特徴とする粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記粒子が平均粒子径0.1~2.0μmの粒子である請求項に記載の粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記粒子がシリカ粒子である請求項1又は2に記載の粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法に関する。詳細にはポリエステル樹脂と粒子との混練において、粒子混練後の固有粘度保持率及び粒子分散性に優れた粒子配合ポリエステル樹脂組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性、保香性、衛生性等に優れる上に、比較的安価で軽量であるため、繊維、フィルム、シート、あるいは容器などの成形品として広く用いられている。
【0003】
これらの成形品は多くの場合、製造時の作業性や製品の取り扱い性を向上させるため、その表面の滑り性を改善することが求められる。表面の滑り性を改善するために、ポリエステル樹脂に微粒子を配合する方法が知られており、例えば二軸押出機を用いて、ポリエステル樹脂と微粒子を溶融、混練する方法がある。
しかし、二軸押出機を用いて混練する際に、粒子の分散性を向上させるために、スクリュー回転数を増加させると、せん断熱による劣化でポリエステル樹脂の固有粘度が低下し、成形品の強度が低下する課題がある。
【0004】
ポリエステル樹脂等に粒子等の充填剤を配合する技術に関しては特許文献1がある。特許文献1では、成形時の流動性に優れ、機械特性、表面外観等に優れた成形品を得るため、また同時にせん断による炭素繊維の折損を抑制するために、軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントを使用することが提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されているスクリュー構成では固有粘度の低下は抑制されるものの、粒子分散性の向上が達成できず、更なる改良が望まれる。粒子分散性が不十分であると粗大粒子が存在するようになり、外観や透明性あるいは表面粗度の均一性を損ない、商品価値が著しく低下してしまう。
【0005】
特許文献2には、ニーディングディスクと軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントが隣接したスクリュー構成が示されている。しかし、このスクリュー構成では、ニーディングディスクの搬送能力が非常に低いため、軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントへ樹脂及び粒子や繊維等が安定供給されにくくなり、分散不良が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-40576号公報
【文献】米国特許第6783270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂と粒子との混練において、粒子混練後の固有粘度保持率及び粒子分散性に優れた粒子配合ポリエステル樹脂組成物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、ポリエステル樹脂と粒子とを二軸押出機を用いて混練することにより粒子配合ポリエステル樹脂組成物を製造する方法において、該二軸押出機として、(1)スクリューの基端から中央部までの部分にニーディングディスク、(2)スクリューの中央部から先端までの部分に軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメント、(3)該ニーディングディスクと該フラクショナルミキシングエレメントとの間にフルフライトを有するスクリューを備えた二軸押出機を用いて混練することを特徴とする粒子配合ポリエステル樹脂組成物の製造方法、に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリエステル樹脂と粒子との混練において、粒子混練後の固有粘度保持率及び粒子分散性に優れた粒子配合ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1,2で採用したスクリュー構成を示す模式図である。
図2】比較例1,2で採用したスクリュー構成を示す模式図である。
図3】比較例3で採用したスクリュー構成を示す模式図である。
図4】比較例4で採用したスクリュー構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0012】
[ポリエステル樹脂]
本発明におけるポリエステル樹脂は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位又はエチレン-2,6-ナフタレート単位からなるものが好ましく、本発明の目的を損なわない範囲で、好ましくはポリエステル樹脂の全繰り返し単位に対して、15モル%以下、さらに10モル%以下の範囲で、他の成分を共重合した共重合体であっても良い。共重合成分としては、テレフタル酸(主たる繰り返し単位がエチレン-2,6-ナフタレート単位の場合)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位の場合)、2,7-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂環族ジカルボン酸、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールなどが例示できる。これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0013】
[粒子]
上記のポリエステル樹脂に混練する粒子は、平均粒子径が0.1~2.0μm、特に0.2~0.5μmであるものが好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、得られる成形品の表面滑性の向上に有利である。また平均粒子径が2.0μm以下であれば、粗大粒子の頻度が少なく、ざらつき感、外観の低下を抑制できる。
【0014】
ポリエステル樹脂に対する粒子の配合量は、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは1~7重量%、さらに好ましくは3~5重量%である。粒子の配合量が0.1重量%以上であれば、粒子を配合したことによる表面滑性の向上効果を有効に得ることができる。粒子の配合量が10重量%以下であれば、混練時の粒子同士の衝突による凝集を抑制して、本発明による分散性の向上効果を有効に得ることができる。
【0015】
本発明で用いる粒子としては、有機粒子、無機粒子いずれであってもよい。有機粒子としては高融点又は不溶性の樹脂の微粉末が挙げられる。無機粒子としてはシリカ(酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルクなどが挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0016】
そのなかでも、硬度が高く、効果的に表面滑性を付与できるシリカ粒子が好ましく用いられる。シリカ粒子の屈折率は1.5程度でポリエステル樹脂の屈折率(屈折率1.6程度)と比較的近く、透明性の高い成形品を得られるという利点もある。
【0017】
シリカ粒子は例えば、テトラアルコキシシランを加水分解・重縮合するアルコキシド法や、ケイ酸ソーダを原料として加水分解・重縮合する水ガラス法やゲル法により得ることができる。なお、シリカ粒子中のケイ素元素及び酸素元素の含有量は合計して99重量%以上であることが好ましい。これらの方法で得られたシリカ粒子は、必要に応じ乾燥後焼成処理を施してもよい。焼成処理は通常800~1,300℃程度で行う。焼成処理により、表面に存在していたシラノール基が縮合・脱水され、シラノール基含有量の少ないシリカ粒子となる。さらに、不純物を除去することができるため、異物の少ない粒子配合ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
[ポリエステル樹脂と粒子の混練]
本発明においては、ポリエステル樹脂と粒子とを溶融、混練するために二軸押出機を用いる。二軸押出機は、二つのスクリューの噛み合い送り力により樹脂のいわゆる食い込みがよく、また混練効果にも比較的優れていて多用されている。
【0019】
なお、本発明における二軸押出機とは、主に溶融及び/又は混練の機能を有するスクリューを二つ備えた装置を指し、その名称には拘らない。例えば、混練機や溶融混練機などと呼ばれる場合もある。
本発明で用いる二軸押出機の二つのスクリューの回転方向は同方向でも異方向でもよい。
【0020】
本発明で用いる二軸押出機は、ベント式二軸押出機であることが好ましい。ベント式とは、二軸押出機による樹脂の溶融押出の際に発生する揮発分や水分、ホッパーから巻き込まれた空気などを減圧下、ベント口から除去するシステムを指す。通常、ベント口は押出機の長手方向の中央部付近に一つ設けるが、複数設けてもよい。
【0021】
本発明における二軸押出機は、基本的にホッパー、溶融部、ベント口、混練部、及びダイを備えている。ホッパーから樹脂及び粒子を供給し、溶融部及び混練部において回転するスクリューとシリンダー(もしくはバレル)と呼ばれる外壁との間で連続的に加熱、溶融、混練し、それを先端部のダイから押し出して、成形又はペレット状にする。溶融部は上流側(樹脂供給口側)に位置し、主として樹脂の溶融及び搬送を担い、混練部は下流側(樹脂吐出口側)に位置し、主として樹脂の混練及び搬送を担う。一般にベント口が一つの場合、ベント口の上流側が溶融部、下流側が混練部となることが多い。
本発明では、このスクリューの上流側の端部を「基端」と称し、スクリューの下流側の端部を「先端」と称す。
【0022】
本発明で用いる二軸押出機のスクリューは、シャフトに脱着可能に装着されたエレメントと呼ぶ部品を備えている。エレメントは大別するとスクリューエレメントとディスクとなる。ディスク状のエレメントには混練を主目的としたニーディングディスクと、樹脂の流れを堰き止め樹脂圧力を高めるためのシールリングがある。溶融、混練の効果と関係が深いのはスクリューエレメントとニーディングディスクである。それぞれ複数のエレメントをシャフトの軸方向に繋ぎ合わせて、集合体やブロックと呼ばれるスクリューの主要部分が構成される。
【0023】
スクリューエレメントには、多くの形状がある。シャフト本体にらせん状に1本又は複数のフライト(らせん状の羽)を設けたフルフライト型が最も基本的な形状であるが、フルフライト型とは逆方向にフライトを設けた逆フライト型を組み合わせて使用する場合もある。逆フライト型を組みあわせて用いると樹脂流の押し戻し効果により混練効果を高めることができる。またスクリューエレメントとしてはダルメージ型、バリア型、ベント型、ダブルフライト型、セミフライト型、軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントなどが使用されている。多くのスクリューエレメントが同心タイプであるのに対し、軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントはシャフトの断面中心に対して断面がいびつな構造を有しており、同心タイプとは異なる混練挙動も考えられる。この軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメント(以下、「偏心フラクショナルミキシングエレメント」と称す場合がある。)は、例えばSTEER社から販売されている。
【0024】
一方、ニーディングディスクは、通常、概ね円形で板状のディスクを軸方向に一枚以上並べて構成されている。スクリューの回転に伴ってニーディングディスクが回転し、ニーディングディスクとシリンダー内壁との間で樹脂が混練される。なお、ニーディングディスクに溶融樹脂の送り機能を持たせる構造とするか否かで送りニーディングディスクあるいは中立ニーディングディスクなどと分類する場合もある。
【0025】
これらのエレメントは溶融、混練いずれの目的にも使用することができるので、その組み合わせは多岐にわたる。本発明は、これらエレメントの多くの組み合わせの中から、特定の位置に特定のエレメントを有するスクリューを用いた時、初めて所望の効果を高度に達成できるとの知見に基づくものである。
【0026】
すなわち、本発明で用いる二軸押出機のスクリューは、
(1)スクリュー基端から長さ方向の中央部までの部分にニーディングディスクを有し、
(2)スクリューの長さ方向の中央部から先端までの部分に偏心フラクショナルミキシングエレメントを有し、
(3)ニーディングディスクと偏心フラクショナルミキシングエレメントとの間のスクリュー部分にフルフライトを有する
ことを特徴とする。即ち、本発明で用いる二軸押出機のスクリューは、スクリュー基端側から、ニーディングディスク→フルフライト→偏心フラクショナルミキシングエレメントの順で配置したスクリュー構成とされている。
【0027】
このようなスクリュー構成のスクリューを備えた二軸押出機を用いて、ポリエステル樹脂と粒子とを混練することにより、固有粘度保持率及び粒子分散性を共に高いレベルで達成することができる。このことは従来知られていない新たな知見である。
ここで、スクリューの長さ方向の中央部とは、スクリューの基端から先端までの長さの2分の1の位置を指す。なお、樹脂の流れからみると(1)の部分は上流側、(2)の部分は下流側となる。
【0028】
本発明で明らかにした、かかる特定のエレメントの組み合わせの場合に初めて低発熱で高い粒子分散性の効果が得られる理由は定かではないが、ニーディングディスク及び偏心フラクショナルミキシングエレメントがそれぞれ他のエレメントと組み合わさって、さらにポリエステル樹脂の固有粘度などの適切さも加わって、それぞれ主に溶融部及び混練部で効率よく所望の効果を発揮し、更にニーディングディスクと偏心フラクショナルミキシングエレメントフルフライトとの間に存在するフルフライトがよりスムースな溶融や搬送、より高度な粒子分散性に寄与するためと考えられる。
【0029】
本発明においては、上記した(1)、(2)及び(3)の要件を満たすスクリューであればよく、よりスムースな溶融や搬送、より高度な粒子分散性を望むときなどには、他のエレメント、例えば上記(3)以外のフルフライトや上記(1)以外のニーディングディスク、逆フルフライトなどを必要に応じて付け加えることができる。
例えば、溶融のための樹脂供給口が1か所の場合は、(樹脂供給口→)フルフライト→ニーディングディスク→フルフライト→偏心フラクショナルミキシングエレメント→逆フライト→フルフライト(→吐出口)のスクリュー構成を好ましい例として挙げることができる。また樹脂供給口が2か所の場合は、(樹脂供給口1→)フルフライト→ニーディングディスク→フルフライト→偏心フラクショナルミキシングエレメント→逆フライト→フルフライト(→樹脂供給口2)→ニーディングディスク→逆フライト→フルフライト(→吐出口)のスクリュー構成を好ましい例として挙げることができる。
【0030】
本発明において、偏心フラクショナルミキシングエレメントの設置長さは、スクリュー全体長さの4~30%、特に5~20%、とりわけ6~15%であることが好ましい。この値が4%以上であれば、特に溶融、混練後の固有粘度保持率を高く維持することができる。またこの値が30%以下であれば、比較的高価な偏心フラクショナルミキシングエレメントの使用割合を抑えた上で十分な効果を得ることができる。
特に(2)の偏心フラクショナルミキシングエレメントは、スクリューの基端側から、スクリュー全体長さの50~80%の領域に設けることが好ましい。
【0031】
ニーディングディスクの長さ(ニーディングディスクを2ヶ所に設ける場合にはその合計の長さ)はスクリュー全体の長さの3~20%、特に4~10%とするのが好ましい。ニーディングディスクの割合が、この範囲にある時、偏心フラクショナルミキシングエレメントと組み合わさって、粒子混練後の固有粘度保持率及び粒子分散性において優れた結果を得ることができる。
特に(1)のニーディングディスクは、スクリューの基端側から、スクリュー全体長さの20~49%の領域に設けることが好ましい。
【0032】
フルフライトの長さ(フルフライトを2ヶ所に設ける場合にはその合計の長さ)はスクリュー全体の長さの75~90%、特に80~85%とするのが好ましい。フルフライトの割合がこの範囲にあると、適度な滞留時間で搬送されることにより、よりスムースな溶融や搬送、より高度な粒子分散性を達成することができる。
【0033】
また、逆フルフライトを設ける場合、逆フルフライトの長さ(逆フルフライトを2ヶ所に設ける場合にはその合計の長さ)はスクリュー全体の長さの0.5~2%、特に0.7~1%とするのが好ましい。逆フルフライトの割合がこの範囲にあると、適切な滞留時間を確保できることにより、より高度な粒子分散性を達成することができる。
【0034】
本発明において、二軸押出機に粒子を供給する方法は特に限定されない。例えば、事前にポリエステル樹脂と粒子を混合する方法、ポリエステル樹脂を溶融させた後に粒子を供給する方法が挙げられる。
また、二軸押出機のスクリュー構成以外の構成及び混練条件についても、効率よく安定して混練押出を行うことができればよく特に限定はされない。
ポリエステル樹脂を溶融する温度、すなわちシリンダー温度は、ポリエステル樹脂の融点より10~40℃高く、好ましくは15~30℃高くするのがよい。
なお、二軸押出機のスクリュー長さは、通常500~3000mm程度である。
【0035】
粒子混練後のポリエステル樹脂組成物の固有粘度保持率は80%以上であることが好ましい。固有粘度保持率が上記下限以上であれば、得られる成形品あるいは次工程のためのペレットの強度を高く保つことができる。
【0036】
本発明の製造方法により得られる粒子配合ポリエステル樹脂組成物は、二軸押出機の先端から吐出した樹脂組成物をそのまま成形して成形品としてもよく、また一旦ペレット化して貯蔵し次工程で成形してもよい。次工程で成形する場合は、得られたペレットをそのまま用いて成形してもよいし、希釈のためや機能性(例えば帯電防止、難燃性、酸化防止)付与のため他のポリエステル樹脂をブレンドした後、成形してもよい。
【実施例
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂及び得られた粒子配合ポリエステル樹脂組成物は以下の測定方法によって測定、評価を行った。
【0038】
<固有粘度>
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00g/dLとなるように溶解させた後、30℃まで冷却し、30℃において全自動溶液粘度計(センテック社製、「DT553」)にて、試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式により、固有粘度(IV)を算出した。
IV=((1+4Kηsp0.5-1)/(2KC)
ここで、ηsp=η/η-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。なお試料の溶解条件は、110℃で30分間である。
【0039】
<固有粘度保持率>
粒子混練前のポリエステル樹脂、粒子混練後のポリエステル樹脂組成物の固有粘度をそれぞれ測定し、次式から固有粘度保持率を算出した。この値は高いほどよい。
固有粘度保持率(%)=(粒子混練後のポリエステル樹脂組成物の固有粘度/粒子混練前のポリエステル樹脂の固有粘度)×100
【0040】
<粒子分散性>
粒子混練後のポリエステル樹脂組成物を溶融させ、ガラス板間で薄くフィルム化し、顕微鏡を用いて0.1mmの範囲を観察し、最大径が5μm以上の凝集物の個数を数えた。この値は少ないほどよい。
【0041】
<実施例1、2及び比較例1~4>
シリカ粒子(日本触媒株式会社製「シーホスターKE-S30」、平均粒子径:0.3μm)を表1の割合(ポリエステル樹脂に対する配合量)なるようにポリエステル樹脂(三菱ケミカル株式会社製「GM701S」、固有粘度:0.855dL/g)と混合した後、ベント口一つを有する二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM-18SS」)へ投入し、表1の条件でペレット化した。
二軸押出機のスクリュー構成については、各実施例及び比較例毎に図1~4のスクリュー構成A~Dの通りとした。なお、図1~4において、カッコ内の数値(%)はスクリュー全体の長さ(903mm)に対する各エレメント長さの割合である。偏心フラクショナルミキシングエレメントとしてはSTEER社製「FME」を用いた。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1、2は、本発明のスクリュー構成を有するスクリューを備えた二軸押出機を用いてポリエステル樹脂と粒子との混練を行った例であるが、混練後の固有粘度保持率が高く、また粒子分散性にも優れる。
一方、比較例1~4は、本発明のスクリュー構成を有しないスクリューを用いた場合の例であるが、混練後の固有粘度保持率及び/又は粒子分散性が不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、ポリエステル樹脂と粒子との混練において、粒子混練後の固有粘度保持率及び粒子分散性に優れた粒子配合ポリエステル樹脂組成物を得ることができ、製造された粒子配合ポリエステル樹脂組成物を用いて高品質の成形品を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 フルフライト
2 ニーディングディスク
3 偏心フラクショナルミキシングエレメント
4 逆フルフライト
図1
図2
図3
図4