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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/387 20060101AFI20240409BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240409BHJP
   H04N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H04N1/387 110
H04N1/04 D
H04N1/19
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020104460
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021197678
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小山 忠明
(72)【発明者】
【氏名】中澤 政元
(72)【発明者】
【氏名】宿谷 祐一郎
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028029(JP,A)
【文献】特開平11-205618(JP,A)
【文献】特開2009-089382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/387
H04N 1/04
H04N 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に不可視光を照射するための不可視光源と、
被写体に可視光を照射するための可視光源と、
前記不可視光の一部である前記被写体からの不可視反射光を読み取ることで不可視画像を取得する不可視画像読み取り部と、
前記可視光の一部である前記被写体からの可視反射光を読み取ることで可視画像を取得する可視画像読み取り部と、
前記不可視画像読み取り部で取得した前記不可視画像において消失した情報を復元する画像復元処理部と、
を備え
前記画像復元処理部は、
前記不可視画像および前記可視画像に基づく消失されるべきではない情報を復元対象であると判断して、第二の判断結果として出力する第二の画像情報判断部と、
前記不可視画像において消失した情報について前記第二の判断結果を基に復元した第三の出力画像を生成する第三の画像復元部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第二の画像情報判断部は、
前記消失されるべきではない情報について、色相と彩度との少なくともいずれか1つが第一の閾値以上であるかを判断する、
ことを特徴とする、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第二の画像情報判断部は、
前記消失されるべきではない情報について、黒とグレーとのいずれかであるかを判断する、
ことを特徴とする、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第二の画像情報判断部は、前記第一の閾値を任意に変更可能とする復元色指定部を備える、
ことを特徴とする、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第二の画像情報判断部は、黒またはグレーか否かを任意に変更可能とする復元色指定部を備える、
ことを特徴とする、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記不可視光源から照射される前記不可視光は、赤外光である、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記可視画像読み取り部は、
少なくともRedの可視波長域に感度を持つR画素列と、
少なくともGreenの可視波長域に感度を持つG画素列と、
少なくともBlueの可視波長域に感度を持つB画素列と、
の3つの読み取り画素列から構成され、
前記不可視画像読み取り部は、
前記R画素列、前記G画素列、前記B画素列の内の一部あるいは全部の不可視光波長感度領域を用いる、
ことを特徴とする請求項1ないしの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記可視画像読み取り部は、
少なくともRedの可視波長域に感度を持つR画素列と、
少なくともGreenの可視波長域に感度を持つG画素列と、
少なくともBlueの可視波長域に感度を持つB画素列と、
の3つの読み取り画素列から構成され、
前記不可視画像読み取り部は、
不可視光波長域に感度を持つ不可視光波長画素列から構成されている、
ことを特徴とする請求項1ないしの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記可視画像読み取り部と前記不可視画像読み取り部とは、一体の構成である、
ことを特徴とする請求項1ないしの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記画像復元処理部は、前記可視画像を第四の出力画像として出力する、
ことを特徴とする請求項1ないしの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
不可視光源から照射された不可視光の一部である被写体からの不可視反射光を不可視画像読み取り部で読み取ることで不可視画像を取得する不可視画像読み取りステップと、
可視光源から照射された可視光の一部である被写体からの可視反射光を可視画像読み取り部で読み取ることで可視画像を取得する可視画像読み取りステップと、
前記不可視画像読み取りステップで取得した前記不可視画像において消失した情報を復元する画像復元ステップと、
を含み、
前記画像復元ステップは、
前記不可視画像および前記可視画像に基づく消失されるべきではない情報を復元対象であると判断して、第二の判断結果として出力する第二の画像情報判断ステップと、
前記不可視画像において消失した情報について前記第二の判断結果を基に復元した第三の出力画像を生成する第三の画像復元ステップと、
を含むことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不可視光による画像読み取りによって、特定の色材・成分によって文書に埋め込まれた不可視情報の抽出の他、文書の可読性やOCR(Optical Character Recognition/Reader:光学的文字認識)の精度向上を可能とする技術が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、カラー画像の原稿から画質劣化のない、OCRの認識率向上も可能な良好なモノクロ画像を得る目的で、各画像領域の輝度情報および色情報に基づいて所定の画像補正を行う画像処理技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、特定の色の画像を用いて別の色の画像を補正処理し、文字または画像の欠落を防ぐものであるが、例えば文字の上に押印された印鑑を除去処理した後には、重なっていた文字での部分欠損は避けられないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特定の重要情報の消失あるいは文字の欠損を生じることなく、不要な情報のみを精度良く除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被写体に不可視光を照射するための不可視光源と、被写体に可視光を照射するための可視光源と、前記不可視光の一部である前記被写体からの不可視反射光を読み取ることで不可視画像を取得する不可視画像読み取り部と、前記可視光の一部である前記被写体からの可視反射光を読み取ることで可視画像を取得する可視画像読み取り部と、前記不可視画像読み取り部で取得した前記不可視画像において消失した情報を復元する画像復元処理部と、を備え、前記画像復元処理部は、前記不可視画像および前記可視画像に基づく消失されるべきではない情報を復元対象であると判断して、第二の判断結果として出力する第二の画像情報判断部と、前記不可視画像において消失した情報について前記第二の判断結果を基に復元した第三の出力画像を生成する第三の画像復元部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の重要情報の消失あるいは文字の欠損を生じることなく、不要な情報のみを精度良く除去することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の一例の構成を示す図である。
図2図2は、画像読取装置の構造を例示的に示す断面図である。
図3図3は、分光特性の一例を示す図である。
図4図4は、画像読取装置を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
図5図5は、撮像部の分光感度特性例を示す図である。
図6図6は、画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図7図7は、画像復元処理の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施の形態にかかる画像読取装置の構成を示す図である。
図9図9は、図8で示したイメージセンサの分光感度特性の一例を示す図である。
図10図10は、第3の実施の形態にかかる画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図11図11は、画像復元処理の一例を示す図である。
図12図12は、画像復元処理の別の一例を示す図である。
図13図13は、第4の実施の形態にかかる画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図14図14は、画像復元処理の一例を示す図である。
図15図15は、第5の実施の形態にかかる画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図16図16は、画像復元処理の一例を示す図である。
図17図17は、画像処理部の機能構成の変形例を示すブロック図である。
図18図18は、第6の実施の形態にかかる画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図19図19は、画像処理部の機能構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置および画像読取方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置100の一例の構成を示す図である。図1において、画像処理装置である画像形成装置100は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機と称されるものである。
【0011】
画像形成装置100は、読取装置である画像読取装置101およびADF(Automatic Document Feeder)102を有し、その下部に画像形成部103を有する。画像形成部103については、内部の構成を説明するために、外部カバーを外して内部の構成を示している。
【0012】
ADF102は、画像を読み取らせる原稿を読取位置に位置づける原稿支持部である。ADF102は、載置台に載置した原稿を読取位置に自動搬送する。画像読取装置101は、ADF102により搬送された原稿を所定の読取位置で読み取る。また、画像読取装置101は、原稿を載置する原稿支持部であるコンタクトガラスを上面に有し、読取位置であるコンタクトガラス上の原稿を読み取る。具体的に画像読取装置101は、内部に光源や、光学系や、CMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を有するスキャナであり、光源で照明した原稿の反射光を光学系を通じて固体撮像素子で読み取る。
【0013】
画像形成部103は、記録紙を手差しする手差ローラ104や、記録紙を供給する記録紙供給ユニット107を有する。記録紙供給ユニット107は、多段の記録紙給紙カセット107aから記録紙を繰り出す機構を有する。供給された記録紙は、レジストローラ108を介して二次転写ベルト112に送られる。
【0014】
二次転写ベルト112上を搬送する記録紙は、転写部114において中間転写ベルト113上のトナー画像が転写される。
【0015】
また、画像形成部103は、光書込装置109や、タンデム方式の作像ユニット(Y、M、C、K)105や、中間転写ベルト113や、上記二次転写ベルト112などを有する。作像ユニット105による作像プロセスにより、光書込装置109が書き込んだ画像を中間転写ベルト113上にトナー画像として形成する。
【0016】
具体的に、作像ユニット(Y、M、C、K)105は、4つの感光体ドラム(Y、M、C、K)を回転可能に有し、各感光体ドラムの周囲に、帯電ローラ、現像器、一次転写ローラ、クリーナーユニット、及び除電器を含む作像要素106をそれぞれ備える。各感光体ドラムにおいて作像要素106が機能し、感光体ドラム上の画像が各一次転写ローラにより中間転写ベルト113上に転写される。
【0017】
中間転写ベルト113は、各感光体ドラムと各一次転写ローラとの間のニップに、駆動ローラと従動ローラとにより張架して配置されている。中間転写ベルト113に一次転写されたトナー画像は、中間転写ベルト113の走行により、二次転写装置で二次転写ベルト112上の記録紙に二次転写される。その記録紙は、二次転写ベルト112の走行により、定着装置110に搬送され、記録紙上にトナー画像がカラー画像として定着する。その後、記録紙は、機外の排紙トレイへと排出される。なお、両面印刷の場合は、反転機構111により記録紙の表裏が反転されて、反転された記録紙が二次転写ベルト112上へと送られる。
【0018】
なお、画像形成部103は、上述したような電子写真方式によって画像を形成するものに限るものではなく、インクジェット方式によって画像を形成するものであってもよい。
【0019】
次に、画像読取装置101について説明する。
【0020】
図2は、画像読取装置101の構造を例示的に示す断面図である。図2に示すように、画像読取装置101は、本体11内に、固体撮像素子である撮像部22を備えたセンサ基板10、レンズユニット8、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を有する。第1キャリッジ6は、LED(Light Emitting Diode)である光源2及びミラー3を有する。第2キャリッジ7は、ミラー4,5を有する。また、画像読取装置101は、上面にコンタクトガラス1を設けている。
【0021】
光源2は、可視光源2aおよび不可視光源2bで構成される。可視光源2aは、被写体や基準白板13に対して可視光を照射する。不可視光源2bは、被写体に不可視光を照射する。不可視光源2bとして、赤外光を使用することが有効である。一般的に、可視光波長域は380-780nm、また780nm以降は赤外波長域とされ、不可視の波長域である。
【0022】
図3は、分光特性の一例を示す図である。図3に示すように、黒(K)トナーによる黒画像と、シアン(C)トナー、マゼンタ(M)トナー、イエロー(Y)トナーの合成である黒(C+M+Y)トナーによる黒画像では、可視光領域ではどちらも低反射率であり同じ「黒」として認識される。しかしながら、赤外光領域においては反射率に大きな違いが見られ、特に後者による黒の画像はほぼ「白」と認識され、画像情報として読み取った際に消失してしまうこととなる。
【0023】
可視光波長域ではいずれも黒であることから、画像として読み取る前に人間の目でこれらを判別することは困難であり、よって2つの画像情報が赤外光読み取りによって消失してしまうか否かを判別することはできず、意図しない情報の消失を生じてしまう。
【0024】
そこで、本実施形態においては、被写体読み取り用の不可視光源2bとして赤外光を使用することにより、不要情報の消去と消失画像情報の復元を可能にする画像処理装置を実現する。
【0025】
また、画像読取装置101は、上面に基準白板13を設けている。より詳細には、基準白板13は、撮像部22の撮像範囲において、照明部である光源2とは被写体に対して反対側に設けられる。
【0026】
画像読取装置101は、読取動作において、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を待機位置(ホームポジション)から副走査方向(A方向)に移動させながら光源2から光を上方に向けて照射する。そして、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、被写体である原稿12からの反射光を、レンズユニット8を介して撮像部22上に結像させる。
【0027】
また、画像読取装置101は、電源ON時などには、基準白板13からの反射光を読取って基準を設定する。即ち、画像読取装置101は、第1キャリッジ6を基準白板13の直下に移動させ、光源2を点灯させて基準白板13からの反射光を撮像部22の上に結像させることによりゲイン調整を行う。
【0028】
撮像部22は、可視、不可視の波長域を撮像可能である。撮像部22には、入射光量を電気信号に変換する画素が配置されている。画素は行列状に配置される。各画素上には特定の波長の光のみを透過するカラーフィルタが配置されている。本実施の形態の撮像部22では、同一のカラーフィルタが配置された画素群から得られる各信号をチャンネルと称する。なお、本実施形態では可視光を照射して撮像部22によって撮像された画像を可視画像、近赤外光などの不可視光を照射して撮像部22によって撮像された画像を不可視画像と呼ぶ。
【0029】
なお、本実施形態の画像読取装置101として縮小光学系の画像読取装置を適用したが、これに限るものではなく、等倍光学系(密着光学系:CIS方式)であってもよい。
【0030】
図4は、画像読取装置101を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。図4に示すように、画像読取装置101は、上述した撮像部22、光源2に加え、画像処理部20、制御部23、光源駆動部24、を備えている。制御部23は、撮像部22、画像処理部20、光源駆動部24を制御する。光源駆動部24は、制御部23の制御に従い、光源2を駆動する。撮像部22は、信号を後段に配置される画像処理部20へと転送する。
【0031】
撮像部22は、不可視画像読み取り部として機能する不可視光イメージセンサ22bと、可視画像読み取り部として機能する可視光イメージセンサ22aと、を備える。不可視光イメージセンサ22bは、不可視光の一部である被写体からの不可視反射光を読み取ることで不可視画像(不可視光波長領域の画像)を取得する。可視光イメージセンサ22aは、可視光の一部である被写体からの可視反射光を読み取ることで可視画像(可視光波長領域での画像)を取得する。不可視光イメージセンサ22bおよび可視光イメージセンサ22aは、縮小光学系用センサであり、例えばCMOSイメージセンサなどである。
【0032】
図5は、撮像部22の分光感度特性例を示す図である。図5に示すように、撮像部22の可視光イメージセンサ22aは、Blue、Green、Redの各可視波長域に分光感度を有している。撮像部22の不可視光イメージセンサ22bは、780nm以降の赤外光波長域にのみ感度を有している。このような構成によれば、撮像部22は、光源2(可視光源2aおよび不可視光源2b)が不可視光と赤外光を同時に照射した場合に、一度の被写体読み取りで両方の画像を取得することが可能となる。すなわち、イメージセンサ毎に照射光を分ける必要がなく、簡易構成可能である。なお、可視光イメージセンサ22aのR、G、B各画素に混入する赤外光情報は、赤外光画素の画像データを用いてそれぞれの読み取りデータから適切に除去するなどすればよい。
【0033】
なお、可視光イメージセンサ22aと不可視光イメージセンサ22bとは、一体型の構成であってもよい。これにより、より小型な構成で、かつ可視光と赤外光の読み取り位置がより近くなるため、高精度な消失情報の抽出及び復元が可能となる。すなわち、複数回読み取ることによる画像のずれが無く、位置精度よく補正可能である。
【0034】
画像処理部20は、画像データの使用目的に合わせた各種の画像処理を実行する。なお、画像処理部20は、ハードウェア、ソフトウェアのどちらで実現されても良い。
【0035】
ここで、図6は画像処理部20の機能構成を示すブロック図である。図6に示すように、画像処理部20は、画像復元処理部21を備える。例えば、本実施形態においては、まず、不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りを不可視光イメージセンサ22bで行う。不可視光は特定の成分を含まない情報(例:カラー情報)を透過することから、必要な情報(例:黒(カーボン))のみを画像として読み取った不可視画像を基に、カラーにて構成される地紋や罫線などを除去し、可読性やOCR精度を向上することが可能となる。しかし一方で、本来残したい情報(例:カラー情報)であっても、意図せず除去されてしまうケースも存在する。
【0036】
そこで、本実施形態においては、可視光源2aから照射された可視光による画像読み取りを可視光イメージセンサ22aで行うとともに、不可視光イメージセンサ22bで取得した不可視画像において消失した情報を画像復元処理部21が可視画像を基に復元する。
【0037】
より詳細には、図6に示すように、画像復元処理部21は、第一の画像復元部21aを備える。第一の画像復元部21aは、不可視画像に対し、可視光イメージセンサ22aで読み取った可視画像を用いて画像情報の補正・復元を行う画像復元処理を実行することで第一の出力画像を生成する。
【0038】
以下において、画像復元処理部21が実行する画像復元処理について詳述する。
【0039】
ここで、図7は画像復元処理の一例を示す図である。図7(a)に示す文書は、カラーの地紋(薄いブルーなど)が施された台紙に、日付や金額等はカーボンなど特定の成分を含む黒トナーで印字され、さらに朱肉によって受領印が押印された紙文書を想定した例である。
【0040】
図7(b)は、図7(a)に示す文書のカラードロップアウト画像を示すものである。OCRによる文字情報抽出のため文書スキャンを行う場合、地紋や受領印は除去されていることが望ましいため、例えばこれらのカラー情報を従来のカラードロップアウト処理によって除去すると、図7(b)に示すように地紋はきれいに除去されるものの、受領印が重畳していた金額部分に文字欠けが発生してしまう。
【0041】
図7(c)は、図7(a)に示す文書の不可視画像を示すものである。可視光による画像読み取りに対し、不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りであれば、地紋・受領印ともに特定の成分を含まない材質であるために不可視光は透過し、結果として図7(c)に示すように黒の文字情報を精度よく読み取ることができるようになる。
【0042】
一方で、数字などの重要情報と同じように黒で記載された情報であっても、カーボンなどの「特定の成分を含まない材質」であるために不可視光が透過してしまい、本来残したい情報(例:カラー情報)が意図せず消去されてしまうケースも存在する。
【0043】
図7(d)に示す文書は、黒トナーで記載された領収書に「重要」の文字が追記された紙文書を想定した例である。「重要」の文字は、黒トナーとは異なる特定の成分は含まない黒で手書きによって記載されたものである。この「重要」の文字は、文書の重要度や優先度などを示す情報であり、消失は望ましくない。
【0044】
図7(e)は、図7(d)に示す文書の不可視画像を示すものである。不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りでは、図7(e)に示すように本来残したい情報である「重要」の文字が消去されてしまい、望ましくない。
【0045】
図7(f)は、図7(d)に示す文書の可視画像を示すものである。可視光源2aから照射された可視光による画像読み取りでは、図7(f)に示すように「重要」の文字が消去されずに残ることになる。
【0046】
図7(g)は、図7(d)に示す文書の不可視画像+復元画像を示すものである。本実施形態においては、図7(f)に示す可視光読み取りにより可視光イメージセンサ22aで取得された可視画像を用い、第一の画像復元部21aが、不可視光イメージセンサ22bで取得した不可視画像に対して「重要」の文字を復元する画像復元処理を実行することで、図7(g)に示す第一の出力画像を生成する。これにより、本来残したい情報が意図せず消失されることを防止することが可能となる。
【0047】
このように本実施形態によれば、不可視光読み取りによって不要情報を除去し、さらに意図せず除去されてしまった画像情報を可視画像を基に補うことで、特定の重要情報の消失あるいは文字の欠損を生じることなく、不要な情報のみを精度良く除去することができる。すなわち、文書に対する地紋や印鑑といった不要情報を除去しつつ、かつ除去に望ましくない情報は復元することができる。また、可読性及びOCRの文字認識精度を大きく向上させることができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0049】
第2の実施の形態は、不可視光イメージセンサ22bとしてシリコン製の一般的なイメージセンサを使用する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0050】
第1の実施の形態においては、不可視光波長領域の画像を取得するための不可視光イメージセンサ22bと、可視光波長領域での画像を取得するための可視光イメージセンサ22aと、をそれぞれ設けるようにしたが、これに限るものではない。上述したように、被写体読み取り用の不可視光源2bとして赤外光を使用することにより、赤外波長領域に感度を有するシリコン製のイメージセンサを使用することができるようになる。
【0051】
ここで、図8は第2の実施の形態にかかる画像読取装置101の構成を示す図である。図8に示すように、画像読取装置101は、可視光イメージセンサ22aおよび不可視光イメージセンサ22bを、RGB3ラインの一般的なシリコン製のイメージセンサで構成する。
【0052】
図9は、図8で示したイメージセンサの分光感度特性の一例を示す図である。図9に示すように、一般的なシリコン製のイメージセンサは、Blue、Green、Redの各可視波長域に加え、赤外波長域にも分光感度を有している。例えば不可視光に赤外光、可視光に白色光を用いることで、可視光イメージセンサ22aおよび不可視光イメージセンサ22bを一般的なイメージセンサによる簡易的な構成とし、被写体の不可視画像および可視画像を読み取ることが可能となる。
【0053】
なお、図9に示すイメージセンサでは、R、G、B各画素において可視光波長域と不可視光波長域の両方に感度を有している。そのため、本構成では、被写体を読み取る際には、可視光源2aと不可視光源2bとの何れか一方を照射することにより、可視画像および不可視画像を取得することが可能となる。この時、イメージセンサは同一のものを使用することが可能であり、簡易的な構成が可能となる。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0055】
第3の実施の形態は、不可視画像に対する復元対象の判断要因として可視画像を用いる点が、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0056】
ここで、図10は第3の実施の形態にかかる画像処理部20の機能構成を示すブロック図である。図10に示すように、本実施形態の画像復元処理部21は、第1の実施の形態で説明した第一の画像復元部21aに代えて、第一の画像情報判断部21bと、第二の画像復元部21cと、を備える。
【0057】
第一の画像情報判断部21bは、可視画像に基づく消失されるべきではない情報を復元対象であると判断して、第一の判断結果として生成する。
【0058】
第二の画像復元部21cは、不可視画像において消失した情報について第一の判断結果を基に復元した第二の出力画像を生成する。
【0059】
このように、不可視画像に対する復元対象の判断要因として可視画像を用いることで、意図せず消失した画像を精度良く復元することが可能となる。
【0060】
以下において、画像復元処理部21が実行する画像復元処理について詳述する。
【0061】
ここで、図11は画像復元処理の一例を示す図である。図11(a)に示す文書は、カラーの地紋(薄いブルーなど)が施された台紙に、日付や金額等はカーボンなど特定の成分を含む黒トナーで印字され、さらに朱肉によって受領印が押印された紙文書を想定した例である。
【0062】
なお、図11(a)に示す文書の右上には手書きで「重要」の文字が追記されているが、黒トナーとは異なる特定の成分は含まない黒で記載されている。この「重要」の文字は、文書の重要度や優先度などを示す情報であり、消失は望ましくない。
【0063】
図11(b)は、図11(a)に示す文書の不可視画像を示すものである。不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りでは、図11(b)に示すように地紋、受領印、「重要」の文字が消去されてしまうことになる。
【0064】
図11(c)は、図11(a)に示す文書の可視画像を示すものである。不可視光による画像読み取りに対し、可視光源2aから照射された可視光による画像読み取りであれば、図11(c)に示すように地紋、受領印、「重要」の文字が消去されずに残ることになる。
【0065】
図11(d)は、判断情報を示すものである。第一の画像情報判断部21bは、(c)に示す可視画像より消失されるべきではない情報を判断して第一の判断結果を生成する。そして、第一の画像情報判断部21bは、第一の判断結果として画像(d)を出力する。図11(d)は、例えば画像中の黒の情報のみを抽出した例を示している。
【0066】
ここで、第一の画像情報判断部21bによる復元対象とするか否かの判断について詳述する。第一の画像情報判断部21bは、例えば、色相と彩度との少なくともいずれか1つが第一の閾値以上か否かを判断することで、不可視画像に対する画像の復元要否を判断する。
【0067】
図3に示したように、白紙面上に画像形成されたシアン(C)トナー、マゼンタ(M)トナー、イエロー(Y)トナーの分光反射特性は、可視波長領域においてそれぞれ異なる特性を示しており、それぞれ異なる色となって視認される。また、Cトナー、Mトナー、Yトナーを合成して作られた黒(C+M+Y)トナーは、可視波長領域(波長400~750nm付近)においては低反射率=黒、近赤外光領域(波長750nm以降)においては高反射率=白、を示している。一方で、図3に示したように、黒(K)トナーは、全波長域に渡って低反射率=黒を示している。すなわち、同じ“黒”と視認される色であっても、近赤外波長域では黒(K)は黒い文字や画像として読み取られるが、黒(C+M+Y)は白として読み取られ、情報としては消失してしまうこととなる。
【0068】
そこで、本実施形態の第一の画像情報判断部21bは、可視画像に含まれる色相と彩度との少なくともいずれか1つの情報から、“黒”と判断された情報を「意図せず消失してしまう情報」と判断する。
【0069】
このようにして判断された「意図せず消失してしまう情報」は、該当する可視画像を用いて不可視画像へ付加、補正、置き換え等を行うことにより、情報の復元に用いられる。仮に「意図せず消失してしまう情報」が黒(K)の情報であっても、消失していない情報への追加処理となるため、影響はない。
【0070】
これにより、意図せず消失し得る画像を精度良く検出することが可能となる。
【0071】
図11(e)は、図11(a)に示す文書の不可視画像+復元画像を示すものである。本実施形態においては、(b)に示す不可視画像と(d)に示す判断情報とを用いて、第二の画像復元部21cが例えば画像毎にORをとることで、図11(e)に示す第二の出力画像である復元画像を得ることができる。これにより、不要な情報を除去しつつ、意図せず消失し得る画像を復元することができる。
【0072】
このように本実施形態によれば、不可視画像における復元対象判断要因として可視画像における画像情報を用いることで、意図せず消失し得る画像を精度良く検出・復元することが可能となる。
【0073】
なお、本実施形態においては、第一の画像情報判断部21bは、可視画像に基づく消失されるべきではない情報について、色相と彩度との少なくともいずれか1つが第一の閾値以上か否かを判断することで、不可視画像に対する画像の復元要否を判断するようにしたが、これに限るものではない。例えば、第一の画像情報判断部21bは、低明度である黒と、低明度および低彩度であるグレーといずれかであるかどうかを判断基準としてもよい。
【0074】
ここで、図12は画像復元処理の別の一例を示す図である。図12(a)に示す文書は、カラーの地紋(薄いブルーなど)が施された台紙に、日付や金額等はカーボンなど特定の成分を含む黒トナーで印字された紙文書を想定した例である。
【0075】
なお、図12(a)に示す文書の右上には手書きで「重要」の文字が追記されているが、カラーインク合成による黒で記載されている。この「重要」の文字は、文書の重要度や優先度などを示す情報であり、消失は望ましくない。
【0076】
カラーインク合成による黒の印字である「重要」の文字は、不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りでは消去されてしまうが、本発明の復元処理によって復元され、また台紙のカラーの地紋(薄いブルーなど)は閾値以上の色相や彩度(色味)を持っていることから復元はされない。結果として、図12(b)に示すように、地紋のみが除去され、視認性が大きく向上した第二の出力画像である復元画像が得られる。
【0077】
これにより、意図せず消失し得る画像を精度良く検出ことが可能となる。
【0078】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0079】
第4の実施の形態は、不可視画像に対する復元対象の判断要因として可視画像と不可視画像の両方を用いる点が、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0080】
ここで、図13は第4の実施の形態にかかる画像処理部20の機能構成を示すブロック図である。
【0081】
図13に示すように、本実施形態の画像復元処理部21は、第1の実施の形態で説明した第一の画像復元部21aに代えて、第二の画像情報判断部21dと、第三の画像復元部21eと、を備える。
【0082】
第二の画像情報判断部21dは、可視画像および不可視画像に基づく消失されるべきではない情報を復元対象であると判断して、第二の判断結果を生成する。
【0083】
第三の画像復元部21eは、不可視画像において消失した情報について第二の画像情報判断部21dにおける第二の判断結果を基に復元した第三の出力画像を生成する。
【0084】
このように、不可視画像に対する復元対象の判断要因として可視画像と不可視画像の両方を用いることで、意図せず消失し得る画像を精度良く、かつより少ないデータ量で判断情報を構成することが可能となる。
【0085】
以下において、画像復元処理部21が実行する画像復元処理について詳述する。
【0086】
ここで、図14は画像復元処理の一例を示す図である。図14(a)に示す文書は、カラーの地紋(薄いブルーなど)が施された台紙に、日付や金額等はカーボンなど特定の成分を含む黒トナーで印字された紙文書を想定した例である。
【0087】
なお、図14(a)に示す文書の右上には手書きで「重要」の文字が追記されているが、黒トナーとは異なる特定の成分は含まない黒で記載されている。この「重要」の文字は、文書の重要度や優先度などを示す情報であり、消失は望ましくない。
【0088】
図14(b)は、図14(a)に示す文書の不可視画像を示すものである。不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りでは、図14(b)に示すように地紋、「重要」の文字が消去されてしまうことになる。
【0089】
図14(c)は、図14(a)に示す文書の可視画像を示すものである。不可視光による画像読み取りに対し、可視光源2aから照射された可視光による画像読み取りであれば、図14(c)に示すように地紋、「重要」の文字が消去されずに残ることになる。
【0090】
図14(d)は、判断情報を示すものである。第二の画像情報判断部21dは、図14(b)に示す不可視画像と図14(c)に示す可視画像とを用い、例えば2つの画像における黒の情報かつ非共通の情報を抽出することで、その部分は消失されるべきではない情報と判断して第二の判断結果を生成する。そして、第二の画像情報判断部21dは、第二の判断結果として図14(d)の画像を出力する。図14(d)は、例えば2つの画像における黒の情報かつ非共通の情報を抽出した例を示している。判断情報として出力される図14(d)の画像は、図11(d)の例と比べてより少ない情報量で構成されている。
【0091】
ここで、第二の画像情報判断部21dによる復元対象とするか否かの判断について詳述する。第二の画像情報判断部21dは、不可視画像および可視画像に基づく消失されるべきではない情報について、色相と彩度との少なくともいずれか1つが第一の閾値以上か否かを判断することで、不可視画像に対する画像の復元要否を判断する。具体的には、第二の画像情報判断部21dは、可視画像に含まれる色相と彩度との少なくともいずれか1つの情報から、“黒”と判断された情報を「意図せず消失してしまう情報」と判断する。
【0092】
このようにして判断された「意図せず消失してしまう情報」は、該当する可視画像を用いて不可視画像へ付加、補正、置き換え等を行うことにより、情報の復元に用いられる。仮に「意図せず消失してしまう情報」が黒(K)の情報であっても、消失していない情報への追加処理となるため、影響はない。
【0093】
これにより、意図せず消失し得る画像を精度良く検出することが可能となる。
【0094】
図14(e)は、図14(a)に示す文書の不可視画像+復元画像を示すものである。本実施形態においては、(b)に示す不可視画像と(d)に示す判断情報とを用いて、第三の画像復元部21eが例えば画像毎にORをとることで、図14(e)に示す第三の出力画像である復元画像を得ることができる。これにより、不要な情報を除去しつつ、意図せず消失し得る画像を復元することができ、さらに判断情報はより少ない情報量で構成することができる。
【0095】
このように本実施形態によれば、不可視画像における復元対象判断要因として可視画像と不可視画像を用いることで、意図せず消失し得る画像をより精度良く検出・復元することが可能となる。
【0096】
なお、本実施形態においては、第二の画像情報判断部21dは、色相と彩度との少なくともいずれか1つが第一の閾値以上か否かを判断することで、不可視画像に対する画像の復元要否を判断するようにしたが、これに限るものではない。例えば、第二の画像情報判断部21dは、低明度である黒と低明度および低彩度であるグレーとのいずれかであるかどうかを判断基準としてもよい。
【0097】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0098】
第5の実施の形態は、ユーザが指定した色を復元する点が、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と異なる。以下、第5の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0099】
図15は、第5の実施の形態にかかる画像処理部20の機能構成を示すブロック図である。
【0100】
図15に示すように、本実施形態の画像復元処理部21は、図10に示した構成に加えて、さらに不可視画像に対する復元色指定部21fを備える。
【0101】
復元色指定部21fは、画像復元部における復元対象とする情報/画像を任意に変更可能とすることで、任意のカラーの重要情報(朱色の印影やカラーペンによる受領サインなど)の消失を防止することが可能となる。
【0102】
より詳細には、復元色指定部21fは、第一の画像情報判断部21bが色相と彩度との少なくともいずれか1つが第一の閾値以上か否かを判断する場合、第一の閾値を任意に変更可能とする。また、復元色指定部21fは、第一の画像情報判断部21bが低明度である黒や、低明度および低彩度であるグレーであるかどうかを判断する場合、黒もしくはグレーか否かを任意に変更可能とする。
【0103】
なお、復元色指定部21fは、制御部23による自動指定であってもよいし、あるいはユーザによる任意の色を指定可能な構成であってもよい。
【0104】
ここで、図16は画像復元処理の一例を示す図である。図16(a)に示す文書は、カラーの地紋が施された台紙に、日付や金額等はカーボンなど特定の成分を含む黒トナーで印字されている。さらに、図16(a)に示す文書は、黒トナーとは異なる特定の成分は含まない黒で金額の取り消し線および修正文字が記載され、また赤色の訂正印が押印されている。この文書では、地紋以外の記載情報全てが必要情報であることから、これらの情報消失は望ましくない。
【0105】
図16(b)は、(a)に示す文書の不可視画像を示すものである。不可視光源2bから照射された不可視光による画像読み取りでは、図16(b)に示すように地紋、受領印のみならず、必要情報である取り消し線および修正文字まで消去されてしまうことになる。
【0106】
図16(c)は、(a)に示す文書の可視画像を示すものである。不可視光による画像読み取りに対し、可視光源2aから照射された可視光による画像読み取りであれば、図16(c)に示すように地紋、受領印、必要情報である取り消し線および修正文字が消去されずに残ることになる。
【0107】
ここで、復元色指定部21fは、例えば、黒と赤を復元色として指定したものとする。復元色指定部21fにおいて黒と赤を復元色として指定した場合、復元色指定部21fは、第一の画像情報判断部21bに向けて黒と赤を残すあるいは復元するよう指示する。
【0108】
図16(d)は、判断情報1を示すものである。図16(d)に示すように、黒と赤を復元色として指定した指示を受けた第一の画像情報判断部21bは、図16(c)に示す可視画像を用いて黒と赤の情報を抽出した判断情報1(d)を第一の判断結果として出力する。
【0109】
図16(e)は、判断情報2を示すものである。黒と赤を復元色として指定した指示を受けた第一の画像情報判断部21bは、図16(d)に示す判断情報1から図16(b)に示す不可視画像を除いた判断情報2である図16(e)の画像を第一の判断結果として出力する。
【0110】
図16(f)は、(a)に示す文書の不可視画像+復元画像を示すものである。本実施形態においては、図16(d)に示す判断情報1、あるいは図16(b)に示す不可視画像と図16(d)に示す判断情報1、あるいは図16(b)に示す不可視画像と図16(e)に示す判断情報2を用いて、第二の画像復元部21cが例えば画像毎にORをとることで、図16(f)に示す復元画像を得ることができる。これにより、不要な情報を除去しつつ、意図せず消失し得る任意の色の画像を復元することが可能となる。
【0111】
このように本実施形態によれば、復元対象とする色を制御部23もしくはユーザが任意に変更可能とすることで、カラーの重要情報(朱色の印影やカラーペンによる受領サインなど)の消失を防止することが可能である。
【0112】
なお、本実施形態においては、図10に示した構成において、さらに不可視画像に対する復元色指定部21fを備えた構成例について説明したが、これに限るものではない。ここで、図17は画像処理部20の機能構成の変形例を示すブロック図である。図17に示すように、画像復元処理部21は、図13に示した構成に加えて、さらに不可視画像に対する復元色指定部21fを備えるようにしてもよい。
【0113】
この場合においても、不要な情報を除去しつつ、意図せず消失し得る任意の色の画像を復元することが可能となる。
【0114】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0115】
第6の実施の形態は、可視画像も外部出力する点が、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態と異なる。以下、第6の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0116】
これまでに示した各実施形態では、不可視画像における消失情報や画像を適切に復元・補正し、第一の出力画像または第二の出力画像として出力する構成であった。
【0117】
本実施形態では、可視画像も外部出力することを可能にしたものである。これにより、例えば本発明による復元や補正が行われる前の状態、すなわち受け取った/処理した文書の視認画像を保存/確認/エビデンス用などに使用することが可能となる。
【0118】
図18は、第6の実施の形態にかかる画像処理部20の機能構成を示すブロック図である。図18に示すように、本実施形態の画像復元処理部21は、図10に示した構成において、さらに第四の出力画像として可視画像を出力する。
【0119】
図11で説明した適用例によれば、最終的には第二の出力画像として図11(e)に示す復元画像が出力されるが、厳密にはオリジナルの図11(a)に示す文書から地紋が除去されているため、OCRや可読性改善には適しているものの、例えば文書の持つ証拠能力や法的な扱いに対しては、十分でない可能性がある。
【0120】
そのため、本実施形態の画像復元処理部21は、図11(c)の文書の可視画像であるオリジナル画像も出力可能とすることで、これらの効果消失分を補い、解消することが可能となる。
【0121】
このように本実施形態によれば、不可視光補正画像に加え、可視画像を保存/確認/エビデンス用などに使用することが可能となる。
【0122】
なお、本実施形態においては、図10に示した構成において、さらに第四の出力画像として可視画像を出力する構成例について説明したが、これに限るものではない。ここで、図19は、画像処理部20の機能構成の変形例を示すブロック図である。図19に示すように、画像復元処理部21は、図13に示した構成において、さらに第四の出力画像として可視画像を出力するようにしてもよい。
【0123】
この場合においても、文書の可視画像であるオリジナル画像も出力可能とすることで、これらの効果消失分を補い、解消することが可能となる。
【0124】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像処理装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像処理装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
2a 可視光源
2b 不可視光源
21 画像復元処理部
21a 第一の画像復元部
21b 第一の画像情報判断部
21c 第二の画像復元部
21d 第二の画像情報判断部
21e 第三の画像復元部
21f 復元色指定部
22a 可視画像読み取り部
22b 不可視画像読み取り部
100 画像処理装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【文献】特開2006-121674号公報
図1
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図3
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図5
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