(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/12 20060101AFI20240409BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20240409BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101M
B41J2/47 101D
H04N1/113
(21)【出願番号】P 2020110813
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓真
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094084(JP,A)
【文献】特開2014-167592(JP,A)
【文献】特開2006-192770(JP,A)
【文献】特開2013-010265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192373(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104020651(CN,A)
【文献】特開平04-146465(JP,A)
【文献】特開2019-082697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を
像担持体に向けて偏向する複数の偏向面が、回転方向に隣接して配置された回転多面鏡と
を備え、隣接する前記偏向面の境界部分に入射する光までを、前記像担持体に潜像を形成するのに使用するオーバーフィールド方式の光走査装置において、
前記光源から
隣接する前記偏向面
の境界部分に向けて出射された出射光のうち、前記偏向面で正反射されて当該出射光の光路を前記光源に戻る戻り光を検知する戻り光検知センサと、
前記戻り光検知センサで戻り光が検知されてから次に戻り光が検知されるまでの間における前記光源からの出射光の光量の時間変化を示す補正パターンを記憶するメモリと、
前記戻り光検知センサで戻り光が検知されたタイミングを基準として、前記メモリに記憶された前記補正パターンに従って前記光源から出射される出射光の光量の補正タイミングを制御するコントローラとを備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光源と、前記戻り光検知センサがユニット化されていることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
像担持体と、
画像情報によって変調された光で前記像担持体を走査することによって、前記像担持体に潜像を形成する請求項1または2に記載の光走査装置と、
前記像担持体に形成された潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置で現像された画像を媒体に転写する転写装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記戻り光検知センサで戻り光が検知されたタイミングを基準として、前記光源による前記像担持体への潜像の書き出しタイミングを制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
複数の像担持体と、
画像情報によって変調された光で前記像担持体を走査することによって、前記像担持体に潜像を形成する光走査装置と、
前記像担持体に形成された潜像を現像する現像装置と、
前記現像装置で現像された画像を媒体に転写する転写装置とを備え、
前記光走査装置は、
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を偏向する複数の偏向面が、回転方向に隣接して配置された回転多面鏡と、
前記光源から前記偏向面に向けて出射された出射光のうち、前記偏向面で正反射されて当該出射光の光路を前記光源に戻る戻り光を検知する戻り光検知センサと、
前記光源からの出射光の光量の時間変化を示す補正パターンを記憶するメモリと、
前記戻り光検知センサで戻り光が検知されたタイミングを基準として、前記メモリに記憶された前記補正パターンに従って前記光源から出射される出射光の光量の補正タイミングを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記戻り光検知センサで戻り光が検知されたタイミングを基準として、前記光源による前記像担持体への潜像の書き出しタイミングを制御し、
前記光走査装置は、複数の前記像担持体それぞれに対応付けて複数の前記光源及び複数の前記戻り光検知センサを備え、
前記コントローラは、
前記複数の戻り光検知センサのうちの1つで戻り光が検知されたタイミングを基準として、前記複数の光源それぞれによる前記書き出しタイミングを共通して制御し、
前記複数の戻り光検知センサそれぞれで戻り光が検知されたタイミングを基準として、対応する前記光源の前記補正タイミングを個別に制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、画像データに応じて駆動変調されたビームをポリゴンミラー(回転多面鏡)で偏向し且つ走査光学系で感光体ユニット上を走査することによって潜像を形成し、感光体ユニット上の潜像を現像器で現像し、現像された画像を用紙に転写することによって、用紙に画像を形成する。
【0003】
上記構成の画像形成装置において、ポリゴンミラーに面精度誤差がある場合の画質劣化を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この画像形成装置は、2つのセンサを用いてポリゴンミラーの偏向面を一意に特定し、特定した偏向面に対応する補正パターンをメモリから読み出し、読み出した補正パターンに従ってビームの出力制御を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の画像形成装置では、ポリゴンミラーの偏向面を特定するために、複数のセンサを必要とする。また、偏向面毎の補正データをメモリに格納する必要があるので、メモリが大容量化する。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ハードウェア構成を簡素化しつつ、回転多面鏡の面精度誤差に起因する画質劣化を抑制した光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を像担持体に向けて偏向する複数の偏向面が、回転方向に隣接して配置された回転多面鏡とを備え、隣接する前記偏向面の境界部分に入射する光までを、前記像担持体に潜像を形成するのに使用するオーバーフィールド方式の光走査装置において、前記光源から隣接する前記偏向面の境界部分に向けて出射された出射光のうち、前記偏向面で正反射されて当該出射光の光路を前記光源に戻る戻り光を検知する戻り光検知センサと、前記戻り光検知センサで戻り光が検知されてから次に戻り光が検知されるまでの間における前記光源からの出射光の光量の時間変化を示す補正パターンを記憶するメモリと、前記戻り光検知センサで戻り光が検知されたタイミングを基準として、前記メモリに記憶された前記補正パターンに従って前記光源から出射される出射光の光量の補正タイミングを制御するコントローラとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハードウェア構成を簡素化しつつ、回転多面鏡の面精度誤差に起因する画質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【
図4】本実施形態に係る光走査装置の機能ブロック図。
【
図5】レーザダイオードから出射された出射光の軌跡と、ポリゴンミラーの回転角との関係を示す図。
【
図6】ポリゴンミラーの回転角と、感光体に到達する偏向光の光量との関係を示す図。
【
図7】フォトセンサから出力される戻り光信号の一例を示す図。
【
図9】本実施形態に係る同期検知信号、戻り光信号、補正パターン、及び出射光量の関係を示す図。
【
図10】変形例1に係る光走査装置の機能ブロック図。
【
図11】変形例1に係る戻り光信号、補正パターン、及び出射光量の関係を示す図。
【
図12】変形例2に係る光走査装置の機能ブロックの要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置100について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の概略構成図である。画像形成装置100は、所謂「電子写真方式」によって媒体Pに画像を形成する装置である。
【0010】
図1に示すように、画像形成装置100は、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)を並べて配設したタンデム型の画像形成部を備える。プロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)は、画像形成装置100に着脱可能に構成され、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0011】
具体的には、プロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)は、潜像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体2の表面にトナー像を形成する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング手段としてのクリーニングブレード5とを主に備える。なお、
図1では、イエロープロセスユニット1Yが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニングブレード5のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1(1C,1M,1Bk)においては符号を省略している。
【0012】
各プロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)の上方には、感光体2の表面をレーザ光で走査することによって、感光体2に潜像を形成する光走査装置6が配設されている。光走査装置6は、パソコン等の外部機器やスキャナから入力された画像データに基づいて、各感光体2の表面へレーザ光を照射するようになっている。光走査装置6の詳細は、
図3を参照して後述する。
【0013】
また、各プロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)の下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト10を有している。中間転写ベルト10は、複数の張架ローラ(21,22,23,24)に張架されており、これら張架ローラ(21,22,23,24)の内の1つが駆動ローラとして回転して、中間転写ベルト10は図の矢印に示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0014】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11は、それぞれの位置で中間転写ベルト10の内周面を押圧されており、中間転写ベルト10の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0015】
また、中間転写ベルト10を張架する1つの張架ローラ24に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト10の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト10とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0016】
画像形成装置100の下部には、紙やOHP等のシート状の対象物としての媒体Pを収容した複数の媒体収容カセット13が配設されている。各媒体収容カセット13には、収容されている媒体Pを送り出す給送ローラ14が設けてある。また、画像形成装置100の図の左側の外面には、機外に排出された媒体Pをストックする排出トレイ20が設けてある。
【0017】
画像形成装置100内には、媒体Pを媒体収容カセット13から二次転写ニップを通って排出トレイ20へ搬送するための搬送路Rが配設されている。この搬送路Rには、二次転写ローラ12の位置よりも媒体Pの搬送方向の上流側にはレジストローラ15が配設されている。また、二次転写ローラ12の位置よりも媒体Pの搬送方向の下流側には、定着装置8、一対の排出ローラ16が順次配設されている。
【0018】
定着手段としての定着装置8は、例えば、内部にヒータを有する定着部材としての定着ローラ17と、定着ローラ17を加圧する加圧部材としての加圧ローラ18を備えている。そして、定着ローラ17と加圧ローラ18とが接触した箇所には、定着ニップが形成される。
【0019】
以下、画像形成装置100の基本的動作について説明する。まず、画像形成装置100は、外部装置またはスキャナから画像情報を取得する。これと同時に、各プロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)の感光体2が
図1における反時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。
【0020】
そして、取得した画像情報に基づいて、光走査装置6から帯電された各感光体2の表面にレーザ光が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0021】
中間転写ベルト10を張架する張架ローラの1つが回転駆動し、中間転写ベルト10を
図1中の矢印の方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2に形成された各色のトナー画像が、一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト10上に順次重ね合わせて転写される。このようにして中間転写ベルト10は、その表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト10に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去される。
【0022】
給送ローラ14が回転することによって、媒体収容カセット13から媒体Pが搬出される。搬出された媒体Pは、レジストローラ15によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト10との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト10上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト10上のトナー画像が媒体P上に一括して転写される。
【0023】
その後、媒体Pは定着装置8に送り込まれ、定着ローラ17と加圧ローラ18によって媒体Pが加圧及び加熱されてトナー画像が媒体P上に定着される。そして、媒体Pは、一対の排出ローラ16によって排出トレイ20に排出される。なお、二次転写ニップで媒体P上に残ったトナー像は、張架ローラ22に中間転写ベルト10を介して対向するように設けられたベルトクリーニング装置により除去されて、次の画像形成(プリント)に備える。
【0024】
以上の説明は、媒体P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作である。しかし、画像形成装置100は、4つのプロセスユニット1(1Y,1C,1M,1Bk)のいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0025】
図2は、画像形成装置100のハードウェア構成図である。
図2に示すように、画像形成装置100は、制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)201、記憶手段としてのRAM(Random Access Memory)202、記憶手段としてのROM(Read Only Memory)203、記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)204、及びインタフェースとしてのI/F205が通信手段としての共通バス206を介して接続されている構成を備える。CPU201、RAM202、ROM203、HDD204は、コントローラ200の一例である。
【0026】
CPU201は演算手段であり、画像形成装置100全体の動作を制御する。RAM202は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU201が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM203は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD204は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム等が格納される。
【0027】
画像形成装置100は、ROM203やHDD204からRAM202にロードされた各種プログラムをCPU201が備える演算機能によって処理する。その処理によって、画像形成装置100の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、画像形成装置100に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、画像形成装置100の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0028】
I/F205は、プロセスユニット1、光走査装置6、転写装置7、定着装置8、及び各種ローラ14~16を、共通バス206に接続するインタフェースである。すなわち、コントローラ200は、I/F205を通じて、プロセスユニット1、光走査装置6、転写装置7、定着装置8、及び各種ローラ14~16を制御する。
【0029】
図3は、光走査装置6の概略構成図である。
図3に示すように、光走査装置6は、光源ユニット301と、アパーチャ302と、回転多面鏡の一例であるポリゴンミラー303と、fθレンズ304と、折り返しミラー305、306、307と、同期検知センサ308とを主に備える。
【0030】
図4に示すように、光源ユニット301は、所定の幅の光束(以下、「出射光」と表記する。)を出射するレーザダイオード(光源)301aと、ポリゴンミラー303からの戻り光を検知するフォトセンサ(戻り光検知センサ)301bと、レーザダイオード301a及びフォトセンサ301bを制御するレーザ駆動部301cとをユニット化したものである。
【0031】
フォトセンサ301bは、レーザダイオード301aからポリゴンミラー303に向けて出射された出射光のうち、偏向面で偏向されて当該出射光の光路をレーザダイオード301aに戻る(すなわち、偏向面で正反射された)戻り光を受光できる位置に配置される。
【0032】
アパーチャ302は、レーザダイオード301aから出射された出射光を、ポリゴンミラー303上に収束させる。fθレンズ304、折り返しミラー305、306、307(これらを総称して、「走査光学系」と表記する。)は、ポリゴンミラー303で偏向された偏向光を、感光体2上の所定の位置に集光させる。すなわち、光走査装置6は、レーザダイオード301aから出射された出射光で、感光体2上を走査する。
【0033】
ポリゴンミラー303は、底面が多角形の角柱である。本実施形態では、底面が六角形であるが、八角形などであってもよい。ポリゴンミラー303は、ポリゴンモータ426(
図4参照)の駆動力が伝達されて、角柱の軸方向を中心として回転(自転)する。また、ポリゴンミラー303の複数(本実施形態では、6個)の側面それぞれは、複数の偏向面303a、303b、303c、303d、303e、303f(
図5参照)を構成する。
【0034】
偏向面303a~303fは、ポリゴンミラー303の回転方向に隣接して配置されている。また、隣接する偏向面303a~303fは、所定の角度(本実施形態では、120°)をなしている。そして、偏向面303a~303fは、レーザダイオード301aから出射された出射光を偏向して、fθレンズ304及び折り返しミラー305、306、307を通じて感光体2に導く。
【0035】
図4は、本実施形態に係る光走査装置6の機能ブロック図である。
図4に示す制御ブロックは、例えば、各機能ブロックは、コントローラ200内のCPU201が、HDD204に記憶されているプログラムをRAM202に展開し、演算実行することで実現される。なお、
図4に示す各機能ブロックによって実現される処理は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0036】
図4に示すように、光走査装置6の動作は、画像書込制御部400(コントローラ)によって制御される。画像書込制御部400は、速度変換用ラインメモリ401と、各種パターン生成部402と、書込γ変換部403と、LD変調及び各種クロック生成部404と、連続点灯検出部405と、LUT(ルックアップテーブル)406と、バイアス電流発生部407と、画像領域制御及び各種タイミング制御部408と、各種設定レジスタ及びポリゴンモータ制御部409と、光量制御部410とを主に備える。
【0037】
また、画像書込制御部400は、画像データ入力I/F(Interface)420、コマンドI/F421、LD変調I/F422、同期検知I/F423、及びポリゴンモータI/F424を有している。画像書込制御部400は、これ等のI/Fによって、外部からのデータ若しくは信号の入力、又は外部へのデータ若しくは信号の出力を行う。
【0038】
このような構成要素からなる画像書込制御部400は、画像データ入力I/F420を通じて入力される画像データを速度変換用ラインメモリ401に格納し、連続点灯検出部405を介して取得された主走査ライン毎の点灯時間をLUT406に読み込ませる。なお、LUT406とは、一定の計算結果を予め格納しておくテーブルであり、これにより、処理の高速化やシステムの負担軽減を図ることができる。
【0039】
各種パターン生成部402は、速度変換用ラインメモリ401に格納された画像データから各種パターンを生成して出力する。書込γ変換部403は、各種パターン生成部402で生成された各種パターンに対して書込γ変換を行う。ここで、γ変換とは、入力された色情報を出力される色情報に変換する、所謂「発色変換」を指す。LD変調及び各種クロック生成部404は、書込γ変換部403で変換された色情報と、同期検知I/F423を通じて同期検知センサ308から取得した同期検知信号とに基づいて、レーザダイオード301aの点灯制御を実行する。
【0040】
また、各種設定レジスタ及びポリゴンモータ制御部409は、画像領域制御及び各種タイミング制御部408に各種設定を通知すると共に、ポリゴンモータI/F424及びポリゴンモータドライバ425を通じて、ポリゴンモータ426を駆動させる。光量制御部410の詳細は、
図8を参照して後述する。
【0041】
同期検知センサ308は、レーザダイオード301aから出射され、ポリゴンミラー303で偏向され、fθレンズ304、折り返しミラー305、306、307を通じて感光体2に到達する光を検知して、同期検知信号を出力する。そして、LD変調及び各種クロック生成部404は、同期検知センサ308から出力される同期検知信号に基づいて、走査方向における感光体2に対する潜像の書き出しタイミングを制御する。
【0042】
図5は、レーザダイオード301aから出射された光の軌跡と、ポリゴンミラー303の回転角との関係を示す図である。
図6は、ポリゴンミラー303の回転角と、感光体2に到達する偏向光の光量(像面光量)との関係を示す図である。
図7は、フォトセンサ301bから出力される戻り光信号の一例を示す図である。以下、レーザダイオード301aから出射された出射光を偏向面303aで偏向する場合について説明する。但し、他の偏向面303b~303fで出射光を偏向する場合も同様である。
【0043】
なお、レーザダイオード301aから出射された出射光のうち、ポリゴンミラー303で偏向されてfθレンズ304に向かう光を「偏向光」と表記し、ポリゴンミラー303で偏向(正反射)されてフォトセンサ301bに戻る光を「戻り光」と表記し、ポリゴンミラー303で偏向されてフォトセンサ301b及びfθレンズ304と異なる方向へ向かう光を「フレア光」と表記する。
【0044】
まず、
図5(A)に示す出射光は、偏向面303aのみならず、ポリゴンミラー303の回転方向の下流側において偏向面303aと隣接する偏向面303fにも入射する。これにより、偏向面303aに入射した出射光が偏向光としてfθレンズ304に向かい、偏向面303fに入射した出射光がフレア光となる。次に、
図5(A)から
図5(B)の位置までポリゴンミラー303が回転すると、レーザダイオード301aから出射された出射光が偏向面303aのみで偏向(全反射)されて、全てが偏向光としてfθレンズ304に向かう。
【0045】
次に、
図5(B)から
図5(C)の位置までポリゴンミラー303が回転すると、出射光は、偏向面303aのみならず、ポリゴンミラー303の回転方向の上流側において偏向面303aと隣接する偏向面303bにも入射する。これにより、偏向面303aに入射した出射光が偏向光としてfθレンズ304に向かい、偏向面303bに入射した出射光がフレア光となる。次に、
図5(C)から
図5(D)の位置までポリゴンミラー303が回転すると、偏向面303aに入射した出射光がフレア光となり、偏向面303bに入射した出射光が戻り光としてフォトセンサ301bで受光される。
【0046】
図6に示すように、ポリゴンミラー303が
図5(A)の位置のとき、レーザダイオード301aから出射された出射光のうちの一部のみが偏向光として感光体2に到達する。また、感光体2に到達する偏向光の光量は、ポリゴンミラー303の回転に伴って増加する。また、ポリゴンミラー303が
図5(B)の位置のとき、光路上での損失を考慮しなければ、レーザダイオード301aから出射された出射光の全てが偏向光として感光体2に到達する。
【0047】
また、ポリゴンミラー303が
図5(C)の位置のとき、レーザダイオード301aから出射された出射光のうちの一部のみが偏向光として感光体2に到達する。また、感光体2に到達する偏向光の光量は、ポリゴンミラー303の回転に伴って減少する。さらに、ポリゴンミラー303が
図5(D)の位置のとき、感光体2に到達する偏向光の光量は、0または0に近い状態まで低下する。そして、ポリゴンミラー303がさらに回転すると、レーザダイオード301aと偏向面303bとが
図5(A)の位置関係となる。
【0048】
すなわち、レーザダイオード301aから出射された出射光が、隣接する偏向面303a、303fまたは隣接する偏向面303a、303bの境界位置に入射するとき、偏向面303aのみに入射するときと比較して、感光体2に到達する偏向光の光量が少なくなる。そして、隣接する偏向面の境界部分に入射する光までを描画に使用する方式を、「オーバーフィールド方式」等と呼ぶ。オーバーフィールド方式によれば、光学系の大型化を抑制しつつ高速かつ高密度に走査することができる。
【0049】
一方、オーバーフィールド方式を採用した場合、感光体2に到達する偏向光の光量の変動に起因して画質が劣化する可能性がある。そこで、本実施形態に係る光量制御部410は、この偏向光の光量の変動を平準化するように、レーザダイオード301aから出射される出射光の光量を補正する。すなわち、本発明は、オーバーフィールド方式を採用する画像形成装置に適用することによって、特に有利な作用効果を奏する。
【0050】
また、フォトセンサ301bは、受光した戻り光の光量が閾値を超えたときに、光量制御部410に戻り光信号を出力する。すなわち、フォトセンサ301bは、レーザダイオード301aと偏向面303a~303fそれぞれとが、
図5(D)の位置関係になったタイミングで戻り光信号を出力する。その結果、
図7に示すように、フォトセンサ301bは、所定の回転角(理想的には、120°)毎に戻り光信号を繰り返し出力する。
【0051】
但し、ポリゴンミラー303の偏向面303a~303fの面精度に誤差があると、戻り光信号の出力間隔は厳密に120°間隔にならない。より詳細には、偏向面303a~303fそれぞれが、僅かに凸形状または僅かに凹形状になっていると、戻り光信号の出力間隔が広がったり、狭まったりすることになる。そこで、本実施形態に係る光量制御部410は、偏向面303a~303fの面精度の誤差を吸収して、偏向面303a~303fそれぞれに対して、適切なタイミングで出射光の光量の補正を開始する。
【0052】
図8は、光量制御部410のブロック図である。光量制御部410は、HDD(メモリ)204に記憶された補正パターンに従って、レーザダイオード301aから出射される出射光の光量を補正する。また、光量制御部410は、フォトセンサ301bから戻り光信号が出力されたタイミングを基準として、補正パターンによる補正タイミングを制御する。
【0053】
補正パターンは、光レーザの光量の時間変化を示すデータである。換言すれば、補正パターンは、時間的に隣接する2つの戻り光信号の間の各時刻に対応する光レーザの光量を示すデータである。さらに換言すれば、補正パターンは、ポリゴンミラー303の回転方向における各偏向面303a~303fの両端部(すなわち、
図5(A)及び
図5(C))に向けて出射する光レーザの光量が、各偏向面303a~303fの中央部(すなわち、
図5(B))に向けて出射する光レーザの光量より大きくなるように補正するためのデータである。
【0054】
補正パターンは、実験やシミュレーションなどに基づいて予め決定され、HDD204に保存される。また、補正パターンは、各偏向面303a~303fに対して共通して用いられる。すなわち、HDD204には、補正パターンが1つだけ保存されていればよい。換言すれば、本実施形態では、各偏向面303a~303fそれぞれに対応する複数の補正パターンを設ける必要がない。
【0055】
図9は、本実施形態に係る同期検知信号、戻り光信号、補正パターン、及び出射光量の関係を示す図である。まず、レーザダイオード301aは、同期・戻り光検知用の出射光を、所定の時間間隔毎に繰り返し出射する。同期・戻り光検知用の出射光は、予め定められた時間幅だけ出射される。同期・戻り光検知用の出射光は、フォトセンサ301bが戻り光を検知し、同期検知センサ308が光レーザを検知するのに必要なタイミング及び時間幅に設定される。
【0056】
これにより、フォトセンサ301bから戻り光信号が、同期検知センサ308から同期検知信号が、所定の時間間隔毎に繰り返し出力される。本実施形態では、
図9に示すように、同期検知信号が戻り光信号より僅かに遅れて出力されるものとする。
【0057】
LD変調及び各種クロック生成部404は、光源ユニット301を制御することによって、同期検知信号を基準として、描画領域への出射を開始する。すなわち、LD変調及び各種クロック生成部404は、同期検知信号を基準として書き出しタイミングを制御する。書き出しタイミングは、感光体2上に潜像を形成するための光の出力を開始するタイミングを指す。より詳細には、LD変調及び各種クロック生成部404は、同期検知信号が出力されてから所定の時間が経過したタイミングで、描画領域への出射を開始する。「所定の時間」は、例えば、光走査装置6のハードウェア構成、形成する画像によって決定される。
【0058】
光量制御部410は、フォトセンサ301bから戻り光信号を取得したタイミングを、HDD204から読み出した補正パターンの先頭の時刻に合わせる。そして、光量制御部410は、描画領域に向けて出射する期間において、レーザダイオード301aから出力される出射光の光量を、補正パターンに従って補正する。より詳細には、光量制御部410は、戻り光信号の取得タイミングを時刻0として、出射光の光量を、補正パターン上の各時刻に対応する光量に補正する。
【0059】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0060】
上記の実施形態によれば、フォトセンサ301bから戻り光信号が出力されるタイミングを基準として、各偏向面303a~303fに共通の補正パラメータに従って、レーザダイオード301aからの出射光の光量を補正する。これにより、各偏向面303a~303fを一意に特定する必要がないし、偏向面303a~303f毎の補正パターンを記憶する必要もない。その結果、ハードウェア構成を簡素化しつつ、ポリゴンミラー303の面精度誤差に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、隣接する2つの偏向面の境界で瞬間的に発生する戻り光を基準として、補正パターンによる光量の補正を開始するので、偏向面303a~303f毎の補正開始のタイミングのバラツキを少なくすることができる。その結果、ポリゴンミラー303の面精度誤差に起因する画質劣化を、より適切に抑制することができる。
【0062】
なお、光量制御部410の機能は、レーザ駆動部301cに実装されてもよい。この場合、レーザ駆動部301cもコントローラの一部に含まれる。このような構成とすることにより、戻り光信号を画像書込制御部400に一旦入力する必要がなくなるので、信号伝送用のハーネスや信号回路を減らすことができる。
【0063】
[変形例1]
図10は、変形例1に係る光走査装置6の機能ブロック図である。
図11は、変形例1に係る戻り光信号、補正パターン、及び出射光量の関係を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0064】
変形例1に係る光走査装置6は、同期検知センサ308が省略されていると共に、光量制御部410及び同期検知I/F423の両方にフォトセンサ301bから戻り光信号が入力される点において、上記の実施形態と相違する。
【0065】
そして、LD変調及び各種クロック生成部404は、戻り光信号を基準として、描画領域への出射を開始する。すなわち、LD変調及び各種クロック生成部404は、戻り光信号が出力されてから所定の時間が経過したタイミングで、描画領域への出射を開始する。また、光量制御部410は、上記の実施形態と同様に、戻り光信号を基準として、補正パターンの従った光量の補正を行う。
【0066】
変形例1によれば、描画領域への潜像の書き出し及び補正パターンに従った光量の補正の両方を、戻り光信号を基準として開始するので、同期検知センサ308を省略することができる。その結果、ハードウェア構成をさらに簡素化しつつ、ポリゴンミラー303の面精度誤差に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0067】
[変形例2]
図12は、変形例2に係る光走査装置6の機能ブロックの要部拡大図である。なお、上記の実施形態及び変形例1との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。変形例2に係る光走査装置6は、各々が異なる色の出射光を出力する複数の光源ユニット301w、301x、301y、301zと、複数の光源ユニット301w、301x、301y、301zそれぞれに対応する複数の光量制御部410w、410x、410y、410zとを備える点において、上記の実施形態及び変形例1と相違する。
【0068】
光源ユニット301w、301x、301y、301zの構成は、上記の実施形態に係る光源ユニット301と共通する。また、各光源ユニット301w、301x、301y、301zそれぞれのフォトセンサ301bは、対応する光量制御部410w、410x、410y、410zに戻り光信号を出力する。さらに、光源ユニット301zのフォトセンサ301bは、同期検知I/F423にも戻り光信号を出力する。
【0069】
そして、光量制御部410w、410x、410y、410zは、対応するフォトセンサ301bから取得した戻り光信号を基準として、対応するレーザダイオード301aから出力される出射光の光量の補正を個別に開始する。一方、LD変調及び各種クロック生成部404は、光源ユニット301zのフォトセンサ301bから出力される戻り光信号を基準として、全ての光源ユニット301w、301x、301y、301zの書き出しタイミングを共通して制御する。
【0070】
変形例2によれば、高い精度が要求される光量の補正タイミングを個別に制御すると共に、光量の補正タイミングほど精度の要求されない書き出しタイミングを共通して制御する。これにより、同期検知I/F423に入力される信号数が減少するので、信号伝送用のハーネスや信号回路の数を減らすことができる。その結果、タンデム型カラープリンタにおいても、ハードウェア構成を簡素化しつつ、ポリゴンミラー303の面精度誤差に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 :プロセスユニット
2 :感光体
3 :帯電ローラ
4 :現像装置
5 :クリーニングブレード
6 :光走査装置
7 :転写装置
8 :定着装置
10 :中間転写ベルト
11 :一次転写ローラ
12 :二次転写ローラ
13 :媒体収容カセット
14 :給送ローラ
15 :レジストローラ
16 :排出ローラ
17 :定着ローラ
18 :加圧ローラ
20 :排出トレイ
22,24:張架ローラ
100 :画像形成装置
200 :コントローラ
201 :CPU
202 :RAM
203 :ROM
204 :HDD
205 :I/F
206 :共通バス
301 :光源ユニット
301a :レーザダイオード
301b :フォトセンサ
301c :レーザ駆動部
302 :アパーチャ
303 :ポリゴンミラー
303a,303b,303c,303d,303e,303f:偏向面
304 :fθレンズ
305,306,307:折り返しミラー
308 :同期検知センサ
400 :画像書込制御部
401 :速度変換用ラインメモリ
402 :パターン生成部
403 :書込γ変換部
404 :クロック生成部
405 :連続点灯検出部
407 :バイアス電流発生部
408 :タイミング制御部
409 :ポリゴンモータ制御部
410 :光量制御部
420 :画像データ入力I/F
421 :コマンドI/F
422 :LD変調I/F
423 :同期検知I/F
424 :ポリゴンモータI/F
425 :ポリゴンモータドライバ
426 :ポリゴンモータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】