(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】回路接続用接着剤フィルム及びその製造方法、回路接続構造体の製造方法、並びに、接着剤フィルム収容セット
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20240409BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240409BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240409BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240409BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240409BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
C09J7/30
C09J9/02
C09J4/02
C09J201/00
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2021505094
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2020010388
(87)【国際公開番号】W WO2020184585
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019046128
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】大當 友美子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 直
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/021457(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/125993(WO,A1)
【文献】特開2016-033021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/00- 11/32
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子を含有する第1の接着剤層と、
前記第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備える回路接続用接着剤フィルムであって、
前記接着剤フィルムの前記第1の接着剤層側の表面から前記導電粒子の表面までの最短距離が0μmを超え1μm以下であり、
前記導電粒子の平均粒径に対する前記第1の接着剤層の厚さの比が10%以上80%以下であり、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層の合計厚さに対する前記第2の接着剤層の厚さの比が96%未満である、回路接続用接着剤フィルム。
【請求項2】
前記第1の接着剤層は第1の硬化性組成物の硬化物からなり、
前記第1の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含有する、請求項1に記載の回路接続用接着剤フィルム。
【請求項3】
前記第2の接着剤層は第2の硬化性組成物からなり、
前記第2の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含有する、請求項1又は2に記載の回路接続用接着剤フィルム。
【請求項4】
導電粒子を含有する第1の接着剤層と、前記第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備える回路接続用接着剤フィルムの製造方法であって、
前記第1の接着剤層を用意する用意工程と、
前記第1の接着剤層上に、第2の硬化性組成物からなる前記第2の接着剤層を積層する積層工程と、を備え、
前記用意工程は、導電粒子を含有する第1の硬化性組成物からなる層に対して光照射又は加熱を行うことにより前記第1の硬化性組成物を硬化させ、前記第1の接着剤層を得る硬化工程を含み、
前記接着剤フィルムの前記第1の接着剤層側の表面から前記導電粒子の表面までの最短距離が0μmを超え1μm以下であり、
前記導電粒子の平均粒径に対する前記第1の接着剤層の厚さの比が10%以上80%以下であり、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層の合計厚さに対する前記第2の接着剤層の厚さの比が96%未満である、回路接続用接着剤フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第1の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を更に含有する、請求項4に記載の回路接続用接着剤フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含有する、請求項4又は5に記載の回路接続用接着剤フィルムの製造方法。
【請求項7】
第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材との間に、請求項1~3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤フィルムを介在させ、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材を熱圧着して、前記第1の電極及び前記第2の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、回路接続構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤フィルムと、該接着剤フィルムを収容する収容部材と、を備え、
前記収容部材は、前記収容部材の内部を外部から視認可能とする視認部を有し、
前記視認部における波長365nmの光の透過率は10%以下である、接着剤フィルム収容セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤フィルム及びその製造方法、回路接続構造体の製造方法、並びに、接着剤フィルム収容セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路接続を行うために各種の接着材料が使用されている。例えば、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、フレキシブルプリント配線基板(FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続のための接着材料として、接着剤中に導電粒子が分散された異方導電性を有する回路接続用接着剤フィルムが使用されている。具体的には、回路接続用接着剤フィルムにより形成される回路接続部によって、回路部材同士が接着されると共に、回路部材上の電極同士が回路接続部中の導電粒子を介して電気的に接続されることで、回路接続構造体が得られる。
【0003】
異方導電性を有する回路接続用接着剤フィルムが使用される精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、微小電極上に効率良く導電粒子を捕捉させ、高い接続信頼性を得ることが必ずしも容易ではなくなっている。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1では、導電粒子を異方導電性接着シートの片側に偏在させ、導電粒子同士を離間させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の回路接続用接着剤フィルムを用いた場合、回路部材同士を接続するときに導電粒子が流動してしまうおそれがある。この場合、特に電極間距離が小さい回路を接続する際の短絡のリスクが高くなる。また、従来の回路接続用接着剤フィルムを用いて得られる回路接続構造体では、対向する電極間の接続直後の接続抵抗に加えて、高温高湿環境下(例えば85℃、85%RH)に置いた後の接続抵抗が上昇してしまう場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、回路接続時における接着剤フィルム中の導電粒子の流動を抑制すると共に、回路接続構造体の接続直後及び高温高湿環境下に置かれた後の接続抵抗の上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、導電粒子を含有する第1の接着剤層と、第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備える回路接続用接着剤フィルムであって、接着剤フィルムの第1の接着剤層側の表面から導電粒子の表面までの最短距離が0μmを超え1μm以下であり、導電粒子の平均粒径に対する第1の接着剤層の厚さの比が10%以上80%以下であり、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の合計厚さに対する第2の接着剤層の厚さの比が96%未満である、回路接続用接着剤フィルムである。
【0009】
この回路接続用接着剤フィルムでは、回路部材同士を接続する際の導電粒子の流動が抑制されているため、導電粒子が対向する電極間に好適に捕捉され、短絡のリスクが低減される。加えて、この回路接続用接着剤フィルムによれば、接続直後及び高温高湿環境下(例えば85℃、85%RH)に置かれた後の回路接続構造体における接続抵抗の上昇を抑制できる。
【0010】
この一側面において、第1の接着剤層は第1の硬化性組成物の硬化物からなっていてよく、第1の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含有してよい。第2の接着剤層は第2の硬化性組成物からなっていてよく、第2の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含有してよい。
【0011】
本発明の他の一側面は、導電粒子を含有する第1の接着剤層と、第1の接着剤層上に積層された第2の接着剤層と、を備える回路接続用接着剤フィルムの製造方法であって、第1の接着剤層を用意する用意工程と、第1の接着剤層上に、第2の硬化性組成物からなる第2の接着剤層を積層する積層工程と、を備え、用意工程は、導電粒子を含有する第1の硬化性組成物からなる層に対して光照射又は加熱を行うことにより第1の硬化性組成物を硬化させ、第1の接着剤層を得る硬化工程を含み、接着剤フィルムの第1の接着剤層側の表面から導電粒子の表面までの最短距離が0μmを超え1μm以下であり、導電粒子の平均粒径に対する第1の接着剤層の厚さの比が10%以上80%以下であり、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の合計厚さに対する第2の接着剤層の厚さの比が96%未満である、回路接続用接着剤フィルムの製造方法である。
【0012】
この一側面において、第1の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を更に含有してよい。第2の硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物を含有してよい。
【0013】
本発明の他の一側面は、第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材との間に、上記回路接続用接着剤フィルムを介在させ、第1の回路部材及び第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続する工程を備える、回路接続構造体の製造方法である。
【0014】
本発明の他の一側面は、上記の回路接続用接着剤フィルムと、該接着剤フィルムを収容する収容部材と、を備え、収容部材は、収容部材の内部を外部から視認可能とする視認部を有し、視認部における波長365nmの光の透過率は10%以下である、接着剤フィルム収容セットである。
【0015】
ところで、一般に、回路接続用接着剤フィルムを使用する環境はクリーンルームと呼ばれる、室内の温度、湿度及びクリーン度が一定レベルで管理されている部屋である。回路接続用接着剤フィルムが生産現場より出荷される際には、直接外気にさらされ、塵及び湿気による品質低下を招かないように、回路接続用接着剤フィルムを梱包袋等の収容部材に収容する。通常、この収容部材には、内部の接着剤フィルムに貼り付けてある製品名、ロットナンバー、有効期限等の各種情報が収容部材の外からでも確認できるように、透明な材料で形成された視認部が設けられている。
【0016】
しかしながら、上述した回路接続用接着剤フィルムを従来の収容部材に収容して保管又は運搬した後に使用する場合、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離が生じやすくなる、接着剤フィルムの接続抵抗の低減効果が減少する等の不具合が生じる場合があることが本発明者らの検討により明らかになった。このような検討結果に基づき本発明者らが更に検討を行ったところ、第1の接着剤層が光硬化性組成物の硬化物からなり、第2の接着剤層が、該光硬化性組成物における光重合開始剤と反応し得る重合性化合物を含む硬化性組成物からなる場合に、接着剤フィルムの保管中及び運搬中に第2の接着剤層が硬化し、上記不具合が生じることが明らかになった。そこで、本発明者らは、第1の接着剤層中に残留した光重合開始剤由来のラジカルによって第2の接着剤層中の重合性化合物の重合が進行しているとの推察に基づき更に検討を行ったところ、上記特定の収容部材を備える接着剤フィルム収容セットとすることで、保管時又は運搬時における第2の接着剤層の硬化を抑制することができ、上記不具合の発生を抑制できることを見出した。
【0017】
すなわち、本発明の一側面の接着剤フィルム収容セットによれば、第2の接着剤層中の重合性化合物として第1の接着剤層中の光重合開始剤と反応し得る化合物を用いる場合において、接着剤フィルムの保管時又は運搬時における第2の接着剤層の硬化を抑制することができ、接着剤フィルムの接続抵抗の低減効果が減少する等の不具合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回路接続時における接着剤フィルム中の導電粒子の流動を抑制すると共に、回路接続構造体の接続直後及び高温高湿環境下に置かれた後の接続抵抗の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態の回路接続用接着剤フィルムを示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した回路接続用接着剤フィルムの要部を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の回路接続構造体を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の回路接続構造体の製造方法を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の接着剤フィルム収容セットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。
【0021】
<回路接続用接着剤フィルム>
図1は、一実施形態の回路接続用接着剤フィルムを示す模式断面図である。
図1に示すように、回路接続用接着剤フィルム1(以下、単に「接着剤フィルム1」ともいう。)は、第1の接着剤層2と、第1の接着剤層2上に積層された第2の接着剤層3と、を備える。
【0022】
接着剤フィルム1では、導電粒子4が第1の接着剤層2中に分散されている。すなわち、第1の接着剤層2は、導電粒子4を含有している。そのため、接着剤フィルム1は、異方導電性を有する異方導電性接着剤フィルムであり得る。接着剤フィルム1は、第1の電極を有する第1の回路部材と、第2の電極を有する第2の回路部材との間に介在させ、第1の回路部材及び前記第2の回路部材を熱圧着して、第1の電極及び第2の電極を互いに電気的に接続するために用いられる。
【0023】
(第1の接着剤層)
第1の接着剤層2は、例えば、第1の硬化性組成物の硬化物からなる。第1の硬化性組成物は、光硬化性組成物であってよく、熱硬化性組成物であってよく、光・熱硬化性組成物(光硬化性及び熱硬化性の両方を有する組成物)であってもよい。第1の硬化性組成物は、例えば、(A)重合性化合物(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)重合開始剤(以下、「(B)成分」ともいう。)、及び(C)導電粒子4(以下、「(C)成分」ともいう。)を含有する。
【0024】
第1の硬化性組成物が光硬化性組成物である場合、第1の硬化性組成物は、(B)成分として光重合開始剤を含有する。第1の硬化性組成物が熱硬化性組成物である場合、第1の硬化性組成物は、(B)成分として熱重合開始剤を含有する。このような第1の接着剤層2は、例えば、第1の硬化性組成物からなる層に対して光照射又は加熱を行うことで(A)成分を重合させ、第1の硬化性組成物を硬化させることで得られる。つまり、第1の接着剤層2は、導電粒子4と、第1の硬化性組成物の導電粒子4以外の成分を硬化させてなる第1の接着剤成分5とからなっていてよい。第1の接着剤層2は、第1の硬化性組成物を完全に硬化させた硬化物であってもよく、第1の硬化性組成物を部分的に硬化させた硬化物であってもよい。すなわち、第1の硬化性組成物が(A)成分及び(B)成分を含有する場合、第1の接着剤成分5は、未反応の(A)成分及び(B)成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0025】
[(A)成分:重合性化合物]
(A)成分は、例えば、光(例えば紫外光)の照射又は加熱によって重合開始剤(光重合開始剤又は熱重合開始剤)が発生させたラジカル、カチオン又はアニオンにより重合する化合物である。(A)成分は、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれであってもよい。(A)成分として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(A)成分は、少なくとも一つの重合性基を有する。重合性基は、例えば、重合性不飽和二重結合(エチレン性不飽和結合)を含む基である。重合性基は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、ラジカルにより反応するラジカル重合性基であることが好ましい。すなわち、(A)成分は、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられる。(A)成分が有する重合性基の数は、重合後、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、2以上であってよく、重合時の硬化収縮を抑える観点から、10以下であってよい。(A)成分は、架橋密度と硬化収縮のバランスをとるために、重合性基の数が上記範囲内の重合性化合物に加えて、重合性基の数が上記範囲外の重合性化合物を更に含んでもよい。
【0027】
(A)成分の具体例としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、スチレン誘導体、アクリルアミド誘導体、ナジイミド誘導体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリレート化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフォスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルフォスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0029】
マレイミド化合物としては、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-s-ブチル-4-8(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス(1-(4マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシル)ベンゼン、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0030】
ビニルエーテル化合物としては、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
アリル化合物としては、1,3-ジアリルフタレート、1,2-ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0032】
(A)成分は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、好ましくは(メタ)アクリレート化合物の1種又は2種以上を含む。(A)成分は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、好ましくは、ジシクロペンタジエン骨格等の高Tg骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含む。
【0033】
(A)成分は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、好ましくは、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入した化合物を含み、より好ましくは(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(ウレタン(メタ)アクリレート又はポリウレタン(メタ)アクリレート)を含む。この場合、(A)成分の重量平均分子量は、架橋密度と硬化収縮のバランスに優れる観点から、3000以上であってよく、5000以上であってよく、1万以上であってよい。(A)成分の重量平均分子量は、他成分との相溶性に優れる観点から、100万以下であってよく、50万以下であってよく、25万以下であってよい。なお、重量平均分子量は、実施例に記載の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0034】
(A)成分は、(メタ)アクリレート化合物として、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。この場合、無機物(金属等)の表面に対する接着強度が向上するため、例えば、電極同士(例えば回路電極同士)の接着に好適である。
【化1】
式中、nは1~3の整数を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示す。
【0035】
上記リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物は、例えば、無水リン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0036】
(A)成分の含有量は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、第1の硬化性組成物の全質量基準で、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよい。(A)成分の含有量は、重合時の硬化収縮を抑える観点から、第1の硬化性組成物の全質量基準で、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。
【0037】
[(B)成分:重合開始剤]
(B)成分は、150~750nmの範囲内の波長を含む光、好ましくは254~405nmの範囲内の波長を含む光、更に好ましくは365nmの波長を含む光(例えば紫外光)の照射によってラジカル、カチオン又はアニオンを発生する光重合開始剤(光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤又は光アニオン重合開始剤)であってよく、熱によってラジカル、カチオン又はアニオンを発生する熱重合開始剤(熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤又は熱アニオン重合開始剤)であってよい。(B)成分は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、ラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤)であることが好ましい。(B)成分として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。例えば、第1の硬化性組成物が(B)成分として光重合開始剤及び熱重合開始剤の両方を含有していてもよい。
【0038】
光ラジカル重合開始剤は、光により分解して遊離ラジカルを発生する。つまり、光ラジカル重合開始剤は、外部からの光エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物である。光ラジカル重合開始剤としては、オキシムエステル構造、ビスイミダゾール構造、アクリジン構造、α-アミノアルキルフェノン構造、アミノベンゾフェノン構造、N-フェニルグリシン構造、アシルフォスフィンオキサイド構造、ベンジルジメチルケタール構造、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造等の構造を有する化合物が挙げられる。光ラジカル重合開始剤は、接続抵抗の低減効果により優れる観点から、オキシムエステル構造、α-アミノアルキルフェノン構造及びアシルフォスフィンオキサイド構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましい。
【0039】
オキシムエステル構造を有する化合物の具体例としては、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-o-ベンゾイルオキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0040】
α-アミノアルキルフェノン構造を有する化合物の具体例としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-モルフォリノフェニル-ブタノン-1等が挙げられる。
【0041】
アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物の具体例としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0042】
熱ラジカル重合開始剤は、熱により分解して遊離ラジカルを発生する。つまり、熱ラジカル重合開始剤は、外部からの熱エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物である。熱ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている有機過酸化物及びアゾ化合物から任意に選択することができる。熱ラジカル重合開始剤としては、安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90~175℃であり、且つ、重量平均分子量が180~1000の有機過酸化物が好ましく用いられる。1分間半減期温度がこの範囲にあることで、貯蔵安定性に更に優れ、ラジカル重合性も充分に高く、短時間での硬化が可能となる。
【0043】
有機過酸化物の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0044】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
【0045】
(B)成分の含有量は、速硬化性に優れる観点、及び、接続抵抗の低減効果に更に優れる観点から、第1の硬化性組成物の全質量基準で、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。(B)成分の含有量は、貯蔵安定性が向上する観点、及び、接続抵抗の低減効果に更に優れる観点から、第1の硬化性組成物の全質量基準で、15質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
【0046】
第1の硬化性組成物は、(B)成分として、光重合開始剤及び熱重合開始剤のうち少なくとも一方を含有することが好ましく、回路接続用接着剤フィルムの製造が容易となる観点から、光重合開始剤を含有することがより好ましく、光重合開始剤及び熱重合開始剤を含有することが更に好ましい。
【0047】
[(C)成分:導電粒子]
(C)成分は、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属で構成された金属粒子、導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子などであってよい。(C)成分は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含む核と、上記金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子であってもよい。これらの中でも、熱溶融性の金属で形成された金属粒子、又はプラスチックを含む核と、金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子が好ましく用いられる。この場合、第1の硬化性組成物の硬化物を加熱又は加圧により変形させることが容易であるため、電極同士を電気的に接続する際に、電極と(C)成分との接触面積を増加させ、電極間の導電性をより向上させることができる。
【0048】
(C)成分は、上記の金属粒子、導電性カーボン粒子、又は被覆導電粒子と、樹脂等の絶縁材料を含み、該粒子の表面を被覆する絶縁層とを備える絶縁被覆導電粒子であってもよい。(C)成分が絶縁被覆導電粒子であると、(C)成分の含有量が多い場合であっても、粒子の表面が樹脂で被覆されているため、(C)成分同士の接触による短絡の発生を抑制でき、また、隣り合う電極回路間の絶縁性を向上させることもできる。(C)成分としては、上述した各種導電粒子の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0049】
(C)成分の最大粒径は、電極の最小間隔(隣り合う電極間の最短距離)よりも小さいことが必要である。(C)成分の最大粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上であってよく、2.0μm以上であってよく、2.5μm以上であってよい。(C)成分の最大粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってよく、5μm以下であってよい。本明細書では、任意の導電粒子300個(pcs)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた最も大きい値を(C)成分の最大粒径とする。なお、(C)成分が突起を有する場合等、(C)成分が球形ではない場合、(C)成分の粒径は、SEMの画像における導電粒子に外接する円の直径とする。
【0050】
(C)成分の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上であってよく、2.0μm以上であってよく、2.5μm以上であってよい。(C)成分の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、20μm以下であってよく、10μm以下であってよく、5μm以下であってよい。本明細書では、任意の導電粒子300個(pcs)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた粒径の平均値を平均粒径とする。
【0051】
第1の接着剤層2において、(C)成分は均一に分散されていることが好ましい。第1の接着剤層2における(C)成分の粒子密度は、安定した接続抵抗が得られる観点から、100pcs/mm2以上であってよく、1000pcs/mm2以上であってよく、2000pcs/mm2以上であってよい。第1の接着剤層2における(C)成分の粒子密度は、隣り合う電極間の絶縁性を向上する観点から、100000pcs/mm2以下であってよく、50000pcs/mm2以下であってよく、10000pcs/mm2以下であってよい。
【0052】
(C)成分の含有量は、導電性をより向上させることができる観点から、第1の接着剤層の全体積基準で、0.1体積%以上であってよく、1体積%以上であってよく、5体積%以上であってよい。(C)成分の含有量は、短絡を抑制しやすい観点から、第1の接着剤層の全体積基準で、50体積%以下であってよく、30体積%以下であってよく、20体積%以下であってよい。なお、第1の硬化性組成物中の(C)成分の含有量(第1の硬化性組成物の全体積基準)は上記範囲と同じであってよい。
【0053】
(C)成分の含有量は、導電性をより向上させることができる観点から、第1の接着剤層の全質量基準で、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。(C)成分の含有量は、短絡を抑制しやすい観点から、第1の接着剤層の全質量基準で、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよい。なお、第1の硬化性組成物中の(C)成分の含有量(第1の硬化性組成物の全質量基準)は上記範囲と同じであってよい。
【0054】
[その他の成分]
第1の硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外のその他の成分を更に含有していてよい。その他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、カップリング剤及び充填材が挙げられる。これらの成分は、第1の接着剤層2に含有されていてもよい。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルゴム等が挙げられる。第1の硬化性組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、第1の接着剤層を容易に形成することができる。第1の硬化性組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、第1の硬化性組成物の硬化時に発生する、第1の接着剤層の応力を緩和することができる。熱可塑性樹脂は水酸基等の官能基を有していてよく、この場合、第1の接着剤層の接着性が向上しやすい。
【0056】
熱可塑性樹脂の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全質量基準で、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。
【0057】
カップリング剤としては、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミダゾール基、エポキシ基等の有機官能基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシシラン等のシラン化合物、テトラアルコキシチタネート誘導体、ポリジアルキルチタネート誘導体などが挙げられる。第1の硬化性組成物がカップリング剤を含有する場合、接着性を更に向上することができる。
【0058】
カップリング剤の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全質量基準で、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、2質量%以下であってよい。
【0059】
充填材としては、例えば、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。第1の硬化性組成物が充填材を含有する場合、接続信頼性の更なる向上が期待できる。充填材は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子;窒化物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子などの有機微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよく、コア-シェル型構造を有していてもよい。充填材の最大径は、導電粒子4の最小粒径未満であることが好ましい。
【0060】
充填材の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全体積を基準として、0.1体積%以上であってよく、50体積%以下であってよい。充填材の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全質量基準で、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
【0061】
第1の硬化性組成物は、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等のその他の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量は、第1の硬化性組成物の全質量基準で、例えば、0.1質量%以上であってよく、10質量%以下であってよい。これらの添加剤は、第1の接着剤層2に含有されていてもよい。
【0062】
第1の硬化性組成物は、(A)成分及び(B)成分に代えて、又は、(A)成分及び(B)成分に加えて、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。熱硬化性樹脂は、熱により硬化する樹脂であり、少なくとも一つの熱硬化性基を有する。熱硬化性樹脂は、例えば、熱によって硬化剤と反応することにより架橋する化合物である。熱硬化性樹脂として一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性基は、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を更に抑制できる観点から、例えば、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基等であってよい。
【0063】
熱硬化性樹脂の具体例としては、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、F、AD等と、の反応生成物であるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等との反応生成物であるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物などのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0064】
(A)成分及び(B)成分に代えて熱硬化性樹脂を用いる場合、第1の硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全質量を基準として、20質量%以上であってよく、80質量%以下であってよい。(A)成分及び(B)成分に加えて熱硬化性樹脂を用いる場合、第1の硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、例えば、第1の硬化性組成物の全質量を基準として、30質量%以上であってよく、70質量%以下であってよい。
【0065】
第1の硬化性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、第1の硬化性組成物は、上述した熱硬化性樹脂の硬化剤を含有していてもよい。熱硬化性樹脂の硬化剤としては、例えば、熱ラジカル発生剤、熱カチオン発生剤、熱アニオン発生剤等が挙げられる。硬化剤の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、20質量部以下であってよい。
【0066】
第1の接着剤層2は、未反応の(A)成分、(B)成分等の第1の硬化性組成物由来の成分を含んでいてもよい。本実施形態の接着剤フィルム1を従来の収容部材に収容して保管及び運搬を行った場合、第1の接着剤層2に未反応の(B)成分が残留することにより、保管中及び運搬中において、第2の接着剤層3における第2の硬化性組成物の一部が硬化し、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離が生じやすくなる、接着剤フィルム1の接続抵抗の低減効果が減少する等の不具合が生じると推察される。そのため、上記不具合の発生を抑制できる観点から、第1の接着剤層2における未反応の(B)成分の含有量は、第1の接着剤層の全質量を基準として、15質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。第1の接着剤層2における未反応の(B)成分の含有量は、第1の接着剤層の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよい。なお、第1の接着剤層2が未反応の(B)成分として光重合開始剤を含む場合、後述の収容部材に接着剤フィルム1を収容することで、上記不具合の発生を抑制し得る。
【0067】
(第2の接着剤層)
第2の接着剤層3は、例えば、第2の硬化性組成物である第2の接着剤成分6からなる。第2の硬化性組成物は、例えば、(a)重合性化合物(以下、(a)成分ともいう。)及び(b)重合開始剤(以下、(b)成分ともいう。)を含有する。第2の硬化性組成物は、(b)成分として熱重合開始剤を含有する熱硬化性組成物であってよく、(b)成分として光重合開始剤を含有する光硬化性組成物であってもよく、光・熱硬化性組成物(光硬化性及び熱硬化性の両方を有する組成物)であってもよい。第2の接着剤層3を構成する第2の硬化性組成物は、回路接続時に流動可能な未硬化の硬化性組成物である。
【0068】
[(a)成分:重合性化合物]
(a)成分は、例えば、光(例えば紫外光)の照射又は加熱によって重合開始剤(光重合開始剤又は熱重合開始剤)が発生させたラジカル、カチオン又はアニオンにより重合する化合物である。(a)成分としては、(A)成分として例示した化合物を用いることができる。(a)成分は、低温短時間での接続が容易となり、接続抵抗の低減効果が更に向上し、接続信頼性により優れる観点から、ラジカルにより反応するラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。(a)成分における好ましいラジカル重合性化合物の例及び好ましいラジカル重合性化合物の組み合わせは、(A)成分と同様である。(a)成分がラジカル重合性化合物であり、且つ、第1の接着剤層における(B)成分が光ラジカル重合開始剤である場合、接着剤フィルムを後述する収容部材に収容することで、接着剤フィルムの保管時又は運搬時における第2の硬化性組成物の硬化が顕著に抑制される傾向がある。
【0069】
(a)成分はモノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれであってもよい。(a)成分として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。(a)成分は、(A)成分と同一であっても異なっていてもよい。
【0070】
(a)成分の含有量は、接続抵抗を更に低減するために必要な架橋密度が得られやすい観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってよい。(a)成分の含有量は、重合時の硬化収縮を抑え、良好な信頼性が得られる観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってよい。
【0071】
[(b)成分:重合開始剤]
(b)成分としては、(B)成分として例示した重合開始剤と同様の重合開始剤を用いることができる。(b)成分は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。(b)成分における好ましいラジカル重合開始剤の例は、(B)成分と同様である。(b)成分として、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。第2の硬化性組成物は、(b)成分として、好ましくは、光重合開始剤及び熱重合開始剤のうち少なくとも一方を含有し、回路接続が更に容易となる観点から、より好ましくは熱重合開始剤を含有し、更に好ましくは熱重合開始剤のみを含有する。
【0072】
(b)成分の含有量は、低温短時間での接続が容易になる観点、及び、接続信頼性により優れる観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってよい。(b)成分の含有量は、ポットライフの観点から、第2の硬化性組成物の全質量基準で、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
【0073】
[その他の成分]
第2の硬化性組成物は、(a)成分及び(b)成分以外のその他の成分を更に含有していてよい。その他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填材、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等が挙げられる。その他の成分の詳細は、第1の接着剤層2におけるその他の成分の詳細と同じである。
【0074】
第2の硬化性組成物は、(a)成分及び(b)成分に代えて、又は、(a)成分及び(b)成分に加えて、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。第2の硬化性組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、第2の硬化性組成物は、熱硬化性樹脂を硬化するために用いられる硬化剤を含有していてもよい。熱硬化性樹脂及び硬化剤としては、第1の硬化性組成物におけるその他の成分として例示した熱硬化性樹脂及び硬化剤と同様の熱硬化性樹脂及び硬化剤を用いることができる。(a)成分及び(b)成分に代えて熱硬化性樹脂を用いる場合、第2の硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、例えば、第2の硬化性組成物の全質量を基準として、20質量%以上であってよく、80質量%以下であってよい。(a)成分及び(b)成分に加えて熱硬化性樹脂を用いる場合、第2の硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、例えば、第2の硬化性組成物の全質量を基準として、20質量%以上であってよく、80質量%以下であってよい。硬化剤の含有量は、第1の硬化性組成物における硬化剤の含有量として記載した範囲と同じであってよい。
【0075】
第2の接着剤層3における導電粒子4の含有量は、例えば、第2の接着剤層の全質量基準で、1質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。第2の接着剤層3は、導電粒子4を含まないことが好ましい。
【0076】
続いて、
図2を参照しながら、接着剤フィルム1の構成をより詳細に説明する。接着剤フィルム1は、積層方向からみたときに、導電粒子4が存在する領域(存在領域)R1と、導電粒子4が存在しない領域(不存在領域)R2とから構成されている。
【0077】
接着剤フィルム1は、存在領域R1においては、第1の接着剤成分5、導電粒子4、第1の接着剤成分5、及び第2の接着剤成分6を、第1の接着剤層2側から積層方向にこの順で備えている。すなわち、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2aと、導電粒子4との間には、第1の接着剤成分5が存在していると共に、導電粒子4の第2の接着剤層3側の表面にも、当該表面を覆うように第1の接着剤成分5が存在している。
【0078】
接着剤フィルム1の第1の接着剤層2側の表面2aから導電粒子4の表面までの最短距離Dは、高温高湿環境下における接続抵抗の上昇を抑制し、回路接続時の導電粒子の流動も抑制できる観点から、0μmを超え1μm以下である。当該最短距離Dは、同様の観点から、0.1μm以上、又は0.2μm以上であってもよく、0.8μm以下であってもよい。なお、この実施形態では、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2aが接着剤フィルム1の一方の表面2aを構成している(すなわち、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2aが露出している)ため、上記最短距離Dは、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2aから導電粒子4の表面までの最短距離ということもできる。
【0079】
第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の界面Sから導電粒子4の表面までの最短距離d11は、例えば、0.1μm以上であってよく、3.0μm以下、2.0μm以下、又は1.0μm以下であってよい。他の一実施形態では、導電粒子4の第2の接着剤層3側の表面には、第1の接着剤成分が存在していなくてもよい。すなわち、上記最短距離d11は、0μm以上であってよいということもできる。
【0080】
存在領域R1において、第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の界面Sから第2の接着剤層3の第1の接着剤層2と反対側の表面3aまでの最短距離d21は、例えば、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、又は10μm以上であってよく、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってよい。
【0081】
接着剤フィルム1は、不存在領域R2においては、第1の接着剤成分5及び第2の接着剤成分6を、第1の接着剤層2側から積層方向にこの順で備えている。上述したとおり、第1の接着剤成分5は、導電粒子4の表面(第2の接着剤層3側の表面を含む)を覆うように存在している。そのため、第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の界面Sは、不存在領域R2において、導電粒子4の近傍(存在領域R1と不存在領域R2との境界近傍)では導電粒子4の表面形状に追従するような曲面となっており、導電粒子4(存在領域R1と不存在領域R2との境界)から遠ざかるにつれて、第1の接着剤層2の第2の接着剤層3と反対側の表面2a、及び第2の接着剤層3の第1の接着剤層2と反対側の表面3aのそれぞれと略平行な略平面となっている。
【0082】
第1の接着剤層2の厚さは、導電粒子4の近傍で最も厚くなっており、導電粒子4から遠ざかるにつれて薄くなっている。第2の接着剤層3の厚さは、導電粒子4の近傍で最も薄くなっており、導電粒子4から遠ざかるにつれて厚くなっている。本明細書において、第1の接着剤層の厚さ及び第2の接着剤層の厚さは、導電粒子4が存在しない不存在領域R2における第1の接着剤層の厚さ及び第2の接着剤層の厚さとしてそれぞれ定義される。また、第1の接着剤層の厚さ及び第2の接着剤層の厚さの好適な範囲について以下で説明するが、以下は、不存在領域R2の任意の位置における第1の接着剤層の厚さ(例えば、導電粒子4の近傍の厚さd12及びそこから遠ざかった位置における厚さd13の両方)及び第2の接着剤層の厚さ(例えば、導電粒子4の近傍の厚さd22及びそこから遠ざかった位置における厚さd23の両方)が以下で示される範囲内となることが好適であることを意味する。
【0083】
第1の接着剤層2の厚さは、導電粒子4の平均粒径より小さくなっている。具体的には、導電粒子4の平均粒径に対する第1の接着剤層2の厚さの比(第1の接着剤層2の厚さ/導電粒子4の平均粒径)が、回路接続時の導電粒子4の流動を抑制する観点から10%以上となっており、接続抵抗の上昇を抑制する観点から80%以下となっている。当該比は、回路接続時の導電粒子4の流動を更に抑制する観点から、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。当該比は、接続抵抗の上昇を更に抑制する観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは55%以下、特に好ましくは50%以下である。
【0084】
第2の接着剤層3の厚さは、第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さに対して所定の割合となっている。具体的には、第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さに対する第2の接着剤層3の厚さの比(第2の接着剤層3の厚さ/第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さ)が、回路接続時の導電粒子4の流動を抑制する観点から、96%未満となっている。当該比は、回路接続時の導電粒子4の流動を更に抑制する観点から、好ましくは94%以下、より好ましくは93%以下、更に好ましくは88%以下、特に好ましくは86%以下である。当該比は、例えば、75%以上、78%以上、又は80%以上であってよい。
【0085】
第1の接着剤層2の厚さは、導電粒子の大きさにもよるが、例えば、0.3μm以上であってよく、20μm以下、10μm以下、又は5μm以下であってよい。第2の接着剤層3の厚さは、電極間のスペースを十分に充填して電極を封止することができ、より良好な信頼性が得られる観点から、5μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってよい。第1の接着剤層2及び第2の接着剤層3の合計厚さ(接着剤フィルム1の厚さ)は、例えば、5μm以上、6μm以上、又は7μm以上であってよく、200μm以下、100μm以下、50μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0086】
以上、本実施形態の回路接続用接着剤フィルムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0087】
例えば、回路接続用接着剤フィルムは、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の二層から構成されるものであってよく、第1の接着剤層及び第2の接着剤層以外の層(例えば第3の接着剤層)を備える、三層以上の層から構成されるものであってもよい。第3の接着剤層は、第1の接着剤層又は第2の接着剤層について上述した組成と同様の組成を有する層であってよく、第1の接着剤層又は第2の接着剤層について上述した厚さと同様の厚さを有する層であってよい。回路接続用接着剤フィルムは、例えば、第1の接着剤層における第2の接着剤層の反対側の面上に第3の接着剤層を更に備えていてよい。すなわち、回路接続用接着剤フィルムは、例えば、第2の接着剤層、第1の接着剤層及び第3の接着剤層がこの順で積層されてなる。ただし、接着剤フィルムの第1の接着剤層側の表面(この場合は第3の接着剤層の表面)から導電粒子の表面までの最短距離は、0μmを超え1μm以下となっている。この場合、第3の接着剤層は、例えば、第2の接着剤層と同様に第2の硬化性組成物(例えば熱硬化性組成物)からなる。
【0088】
上記実施形態の回路接続用接着剤フィルムは、異方導電性を有する異方導電性接着剤フィルムであるが、回路接続用接着剤フィルムは、異方導電性を有していない導電性接着剤フィルムであってもよい。
【0089】
<回路接続用接着剤フィルムの製造方法>
本実施形態の回路接続用接着剤フィルム1の製造方法は、例えば、上述した第1の接着剤層2を用意する用意工程(第1の用意工程)と、第1の接着剤層2上に上述した第2の接着剤層3を積層する積層工程と、を備える。回路接続用接着剤フィルム1の製造方法は、第2の接着剤層3を用意する用意工程(第2の用意工程)を更に備えていてもよい。
【0090】
第1の用意工程では、例えば、基材上に第1の接着剤層2を形成する。具体的には、まず、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を、有機溶媒中に加え、攪拌混合、混錬等により、溶解又は分散させて、ワニス組成物を調製する。その後、離型処理を施した基材上に、ワニス組成物をナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗布した後、加熱により有機溶媒を揮発させて、基材上に第1の硬化性組成物からなる層を形成する。続いて、第1の硬化性組成物からなる層に対して光照射又は加熱を行うことにより、第1の硬化性組成物を硬化させ、基材上に第1の接着剤層2を形成する(硬化工程)。
【0091】
ワニス組成物の調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。ワニス組成物の調製の際の攪拌混合及び混錬は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0092】
基材としては、第1の硬化性組成物を光により硬化させる場合には有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、第1の硬化性組成物を加熱により硬化させる場合には、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件及び第1の硬化性組成物を硬化させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はない。基材としては、例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム系、液晶ポリマー等からなる基材(例えばフィルム)を用いることができる。
【0093】
基材へ塗布したワニス組成物から有機溶媒を揮発させる際の加熱条件は、有機溶媒が十分に揮発する条件とすることが好ましい。加熱条件は、例えば、40℃以上120℃以下で0.1分間以上10分間以下であってよい。
【0094】
硬化工程における光の照射には、150~750nmの範囲内の波長を含む照射光(例えば紫外光)を用いることが好ましい。光の照射は、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を使用して行うことができる。光の照射量は、例えば、波長365nmの光の積算光量で、100mJ/cm2以上であってよく、200mJ/cm2以上であってよく、300mJ/cm2以上であってよい。光の照射量は、例えば、波長365nmの光の積算光量で、10000mJ/cm2以下であってよく、5000mJ/cm2以下であってよく、3000mJ/cm2以下であってよい。
【0095】
加熱条件は、例えば、30℃以上300℃以下で0.1分間以上5000分間以下であってよく、50℃以上150℃以下で0.1分間以上3000分間以下であってよい。
【0096】
第2の用意工程では、(a)成分及び(b)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を用いること、及び、硬化工程を実施しない(光照射及び加熱を行わない)こと以外は、第1の用意工程と同様に、基材上に第2の接着剤層3を形成する。
【0097】
積層工程では、例えば、第1の用意工程で用意された第1の接着剤層2と、第2の用意工程で用意された第2の接着剤層3とを貼り合わせることにより、第1の接着剤層2上に第2の接着剤層3を積層してよい。あるいは、積層工程では、第1の用意工程で用意された第1の接着剤層2上に、(a)成分及び(b)成分、並びに必要に応じて添加される他の成分を用いて得られるワニス組成物を塗布し、有機溶媒を揮発させることにより、第1の接着剤層2上に第2の接着剤層3を積層してもよい。
【0098】
第1の接着剤層2と第2の接着剤層3とを貼り合わせる方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、0~80℃の加熱条件下で行ってよい。
【0099】
<回路接続構造体及びその製造方法>
以下、回路接続材料として上述した回路接続用接着剤フィルム1を用いた回路接続構造体及びその製造方法について説明する。
【0100】
図3は、一実施形態の回路接続構造体を示す模式断面図である。
図3に示すように、回路接続構造体10は、第1の回路基板11及び第1の回路基板11の主面11a上に形成された第1の電極12を有する第1の回路部材13と、第2の回路基板14及び第2の回路基板14の主面14a上に形成された第2の電極15を有する第2の回路部材16と、第1の回路部材13及び第2の回路部材16の間に配置され、第1の電極12及び第2の電極15を互いに電気的に接続する回路接続部17と、を備えている。
【0101】
第1の回路部材13及び第2の回路部材16は、互いに同じであっても異なっていてもよい。第1の回路部材13及び第2の回路部材16は、電極が形成されているガラス基板又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンICチップ等であってよい。
【0102】
第1の回路基板11及び第2の回路基板14は、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等の複合物などで形成されていてよい。第1の電極12及び第2の電極15は、金、銀、錫、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミ、モリブデン、チタン、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)等で形成されていてよい。
【0103】
第1の電極12及び第2の電極15は回路電極であってよく、バンプ電極であってもよい。第1の電極12及び第2の電極15の少なくとも一方は、バンプ電極であってよい。
図3では、第2の電極15がバンプ電極である。
【0104】
回路接続部17は、上述した接着剤フィルム1により形成される。回路接続部17は例えば、接着剤フィルム1の硬化物からなる。回路接続部17は、例えば、第1の硬化物18と、第2の硬化物19と、導電粒子4とを有している。
【0105】
第1の硬化物18は、第1の回路部材13と第2の回路部材16とが互いに対向する方向(以下「対向方向」)における第1の回路部材13側に位置している。第1の硬化物18は、上述の第1の硬化性組成物における第1の接着剤成分5(導電粒子4以外の(A)成分、(B)成分等の成分)の硬化物である。第2の硬化物19は、対向方向における第2の回路部材16側に位置している。第2の硬化物19は、(a)成分、(b)成分等を含有する上述の第2の硬化性組成物(第2の接着剤成分6)の硬化物である。導電粒子4は、少なくとも第1の電極12及び第2の電極15の間に介在して、第1の電極12及び第2の電極15を互いに電気的に接続している。
【0106】
回路接続部は、上述した第1の硬化物18及び第2の硬化物19のように2つの硬化物を別個の領域に有していなくてもよく、例えば、上述の第1の接着剤成分5(第1の硬化性組成物における導電粒子4以外の成分)の硬化物と第2の接着剤成分6(第2の硬化性組成物)の硬化物とが混在した硬化物を有していてもよい。
【0107】
図4は、回路接続構造体10の製造方法を示す模式断面図である。
図4に示すように、回路接続構造体10の製造方法は、例えば、第1の電極12を有する第1の回路部材13と、第2の電極15を有する第2の回路部材16との間に、上述した接着剤フィルム1を介在させ、第1の回路部材13及び第2の回路部材16を熱圧着して、第1の電極12及び第2の電極15を互いに電気的に接続する工程を備える。
【0108】
具体的には、
図4(a)に示すように、まず、第1の回路基板11及び第1の回路基板11の主面11a上に形成された第1の電極12を備える第1の回路部材13と、第2の回路基板14及び第2の回路基板14の主面14a上に形成された第2の電極15を備える第2の回路部材16と、を用意する。
【0109】
次に、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを、第1の電極12と第2の電極15とが互いに対向するように配置し、第1の回路部材13と第2の回路部材16との間に接着剤フィルム1を配置する。例えば、
図4(a)に示すように、第1の接着剤層2側が第1の回路部材13の主面11aと対向するようにして接着剤フィルム1を第1の回路部材13上にラミネートする。次に、第1の回路基板11上の第1の電極12と、第2の回路基板14上の第2の電極15とが互いに対向するように、接着剤フィルム1がラミネートされた第1の回路部材13上に第2の回路部材16を配置する。
【0110】
他の一実施形態では、例えば、第1の接着剤層2側が第2の回路部材16の主面14aと対向するようにして接着剤フィルム1を第2の回路部材16上にラミネートしてもよい。この場合、第1の回路基板11上の第1の電極12と、第2の回路基板14上の第2の電極15とが互いに対向するように、接着剤フィルム1がラミネートされた第2の回路部材16上に第1の回路部材13を配置する。
【0111】
そして、
図4(b)に示すように、第1の回路部材13、接着剤フィルム1及び第2の回路部材16を加熱しながら、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを厚さ方向に加圧することで、第1の回路部材13と第2の回路部材16とを互いに熱圧着する。その結果、
図4(b)において矢印で示すように、第2の接着剤層が第2の電極15,15間の空隙を埋めるように流動すると共に、上記加熱によって硬化する。これにより、第1の電極12及び第2の電極15が導電粒子4を介して互いに電気的に接続され、また、第1の回路部材13及び第2の回路部材16が互いに接着されて、
図3に示す回路接続構造体10が得られる。
【0112】
本実施形態の回路接続構造体10の製造方法では、導電粒子4が第1の接着剤層2中に固定されており、また、第1の接着剤層2が上記熱圧着時にほとんど流動しないため、対向する第1の電極12及び第2の電極15間に捕捉されやすくなり、その結果、第1の電極12及び第2の電極15間の接続抵抗が低減される。そのため、接続信頼性に優れる回路接続構造体が得られる。なお、第2の硬化性組成物が光硬化性組成物を含む場合、加熱による熱圧着に代えて、加圧と光照射、又は、加圧と加熱と光照射を行うことにより第1の回路部材13と第2の回路部材16とを接続してよい。
【0113】
<接着剤フィルム収容セット>
図5は、一実施形態の接着剤フィルム収容セットを示す斜視図である。
図5に示すように、接着剤フィルム収容セット20は、回路接続用接着剤フィルム1と、該接着剤フィルム1が巻き付けられたリール21と、接着剤フィルム1及びリール21を収容する収容部材22と、を備える。
【0114】
図5に示すように、接着剤フィルム1は、例えばテープ状である。テープ状の接着剤フィルム1は、例えば、シート状の原反を用途に応じた幅で長尺に切り出すことによって作製される。接着剤フィルム1の一方面上には基材が設けられていてよい。基材としては、上述したPETフィルム等の基材を用いることができる。
【0115】
リール21は、接着剤フィルム1が巻き付けられる巻芯23を有する第1の側板24と、巻芯23を挟んで第1の側板24と対向するように配置された第2の側板25と、を備える。
【0116】
第1の側板24は、例えばプラスチックからなる円板であり、第1の側板24の中央部分には、断面円形の開口部が設けられている。
【0117】
第1の側板24が有する巻芯23は、接着剤フィルム1を巻き付ける部分である。巻芯23は、例えばプラスチックからなり、接着剤フィルム1の幅と同様の厚さの円環状をなしている。巻芯23は、第1の側板24の開口部を囲うように、第1の側板24の内側面に固定されている。リール21の中央部には、巻付装置又は繰出装置(不図示)の回転軸が挿入される部分である軸穴26が設けられている。この軸穴26に巻付装置又は繰出装置の回転軸を差し込んだ状態で回転軸を駆動した場合に、空回りすることなくリール21が回転するようになっている。軸穴26には、乾燥剤が収容された乾燥剤収容容器が嵌め込まれていてもよい。
【0118】
第2の側板25は、第1の側板24と同様に、例えばプラスチックからなる円板であり、第2の側板25の中央部分には、第1の側板24の開口部と同径の断面円形の開口部が設けられている。
【0119】
収容部材22は、例えば袋状をなしており、接着剤フィルム1及びリール21を収容している。収容部材22は、収容部材22の内部に接着剤フィルム1及びリール21を収容(挿入)するための、挿入口27を有している。
【0120】
収容部材22は、収容部材22の内部を外部から視認可能とする視認部28を有する。
図5に示す収容部材22は、収容部材22の全体が視認部28となるように構成されている。
【0121】
視認部28は、可視光に対する透過性を有している。例えば、視認部28における光の透過率を波長450~750nmの範囲で測定した場合、波長450~750nmの間に、光の透過率の平均値が30%以上となる、波長幅が50nmである領域が少なくとも1つ存在する。視認部28の光の透過率は、視認部28を所定の大きさに切り取った試料を作製し、試料の光の透過率を紫外可視分光光度計で測定することにより得られる。収容部材22がこのような視認部28を有するため、収容部材22の内部の例えばリール21に貼り付けてある製品名、ロットナンバー、有効期限等の各種情報を収容部材22の外部からでも確認することができる。これにより、違う製品の混入を防止すること、及び、仕分け作業の効率が向上することが期待できる。
【0122】
視認部28における波長365nmの光の透過率は、10%以下である。視認部28における波長365nmの光の透過率が10%以下であるため、(B)成分として光重合開始剤を用いた場合における、収容部材22の外部から内部へ入射する光と、第1の接着剤層2中に残留した光重合開始剤と、に起因する第2の硬化性組成物の硬化を抑制することができる。その結果、高温高湿環境下において回路部材と回路接続部との間での剥離が生じやすくなる、接着剤フィルムの接続抵抗の低減効果が減少する等の不具合の発生を抑制できる。光重合開始剤からの活性種(例えばラジカル)の発生が一層抑制される観点から、視認部28における波長365nmの光の透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
【0123】
同様の観点から、視認部28における、上述の光重合開始剤((B)成分)からラジカル、カチオン又はアニオンを発生させることが可能な波長領域での光の透過率の最大値は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。具体的には、視認部28における波長254~405nmにおける光の透過率の最大値は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
【0124】
視認部28(収容部材22)は、例えば厚さ10~5000μmのシートで形成されている。当該シートは、視認部28における波長365nmの光の透過率が10%以下となる材料によって構成されている。このような材料は、一種の成分からなっていてよく、複数種の成分からなっていてもよい。当該材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ガラス等が挙げられる。これらの材料は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。視認部28は、光透過性の異なる複数の層を積層することにより形成される積層構造を有していてもよい。この場合、視認部28を構成する各層は、上述した材料からなっていてよい。
【0125】
挿入口27は、収容に際し、外部からの空気の侵入を防ぐために、例えばシール機などにより閉じられることによって、密閉されていてよい。この場合、挿入口27を閉じる前に収容部材22内の空気を吸引除去しておくことが好ましい。収容した初期の段階から収容部材22内の湿気が少なくなり、かつ外部からの空気の進入を防ぐことが期待できる。収容部材22の内面とリール21とが密着することにより、運搬時の振動で収容部材22の内面とリール21の表面とがこすれあって異物が発生すること、及び、リール21の側板24,25の外側面への傷つきを防止できる。
【0126】
上記実施形態では、収容部材は、収容部材の全体が視認部となるように構成されていたが、他の一実施形態では、収容部材は、収容部材の一部に視認部を有していてもよい。例えば、収容部材は、収容部材の側面の略中央に矩形状の視認部を有していてよい。この場合、収容部材の視認部以外の部分は、例えば紫外光及び可視光を透過させないように黒色を呈していてよい。
【0127】
上記実施形態では、収容部材の形状は袋状であったが、収容部材は、例えば箱状であってもよい。収容部材には、開封のための切り込みがついていることが好ましい。この場合、使用時の開封作業が容易になる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0129】
<ポリウレタンアクリレート(UA1)の合成>
攪拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を有する還流冷却管、及び、窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリ(1,6-ヘキサンジオールカーボネート)(商品名:デュラノール T5652、旭化成ケミカルズ株式会社製、数平均分子量1000)2500質量部(2.50mol)と、イソホロンジイソシアネート(シグマアルドリッチ社製)666質量部(3.00mol)とを3時間かけて均一に滴下した。次いで、反応容器に充分に窒素ガスを導入した後、反応容器内を70~75℃に加熱して反応させた。次に、反応容器に、ハイドロキノンモノメチルエーテル(シグマアルドリッチ社製)0.53質量部(4.3mmol)と、ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ社製)5.53質量部(8.8mmol)とを添加した後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(シグマアルドリッチ社製)238質量部(2.05mol)を加え、空気雰囲気下70℃で6時間反応させた。これにより、ポリウレタンアクリレート(UA1)を得た。ポリウレタンアクリレート(UA1)の重量平均分子量は15000であった。なお、重量平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm2)
流量:1.00mL/min
【0130】
<導電粒子の作製>
ポリスチレン粒子の表面上に、層の厚さが0.2μmとなるようにニッケルからなる層を形成した。このようにして、平均粒径4μm、最大粒径4.5μm、比重2.5の導電粒子を得た。
【0131】
<ポリエステルウレタン樹脂の調製方法>
攪拌機、温度計、コンデンサー、真空発生装置及び窒素ガス導入管が備え付けられたヒーター付きステンレス製オートクレーブに、イソフタル酸48質量部及びネオペンチルグリコール37質量部を投入し、更に、触媒としてのテトラブトキシチタネート0.02質量部を投入した。次いで、窒素気流下220℃まで昇温し、そのまま8時間攪拌した。その後、大気圧(760mmHg)まで減圧し、室温まで冷却した。これにより、白色の沈殿物を析出させた。次いで、白色の沈殿物を取り出し、水洗した後、真空乾燥することでポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールを十分に乾燥した後、MEK(メチルエチルケトン)に溶解し、攪拌機、滴下漏斗、還流冷却機及び窒素ガス導入管を取り付けた四つ口フラスコに投入した。また、触媒としてジブチル錫ラウレートをポリエステルポリオール100質量部に対して0.05質量部となる量投入し、ポリエステルポリオール100質量部に対して50質量部となる量の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートをMEKに溶解して滴下漏斗で投入し、80℃で4時間攪拌することで目的とするポリエステルウレタン樹脂を得た。
【0132】
<第1の硬化性組成物及び第2の硬化性組成物のワニス(ワニス組成物)の調製>
以下に示す成分を表1に示す配合量(質量部)で混合し、第1の硬化性組成物のワニス及び第2の硬化性組成物のワニスを調製した。
【0133】
(重合性化合物)
A1:ジシクロペンタジエン型ジアクリレート(商品名:DCP-A、東亞合成株式会社製)
A2:上述のとおり合成したポリウレタンアクリレート(UA1)
A3:2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製)
(光重合開始剤)
B1:1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)(商品名:Irgacure(登録商標)OXE01、BASF社製)
(熱重合開始剤)
C1:ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT-K40、日油株式会社製)
(導電粒子)
D1:上述のとおり作製した導電粒子
(熱可塑性樹脂)
E1:上述のとおり合成したポリエステルウレタン樹脂
E2:フェノキシ樹脂(商品名:PKHC、ユニオンカーバイド社製)
(カップリング剤)
F1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業株式会社製)
(充填材)
G1:シリカ微粒子(商品名:R104、日本アエロジル株式会社製、平均粒径(一次粒径):12nm)
(溶剤)
H1:メチルエチルケトン
【0134】
【0135】
(実施例1~6及び比較例1~3)
[第1の接着剤フィルムの作製]
第1の硬化性組成物のワニスを、厚さ50μmのPETフィルム上に塗工装置を用いて塗布した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム上に第1の硬化性組成物からなる層を形成した。このとき、ワニスにおける溶剤H1(メチルエチルケトン)の含有量を0~300質量部の範囲で調整することにより、得られる第1の接着剤層の厚さを表2,3に示すとおりに調整した。
次に、第1の硬化性組成物からなる層に対し、メタルハライドランプを用いて積算光量が1500mJ/cm2となるように光照射を行い、重合性化合物を重合させた。これにより、第1の硬化性組成物を硬化させ、第1の接着剤層を形成した。以上の操作により、PETフィルム上に第1の接着剤層を備える第1の接着剤フィルムを得た。
【0136】
[第2の接着剤フィルムの作製]
第2の硬化性組成物のワニスを、厚さ50μmのPETフィルム上に塗工装置を用いて塗布した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム上に第2の接着剤層(第2の硬化性組成物からなる層)を形成した。このとき、ワニスにおける溶剤H1(メチルエチルケトン)の含有量を0~100質量部の範囲で調整することにより、得られる第2の接着剤層の厚さを表2,3に示すとおりに調整した。以上の操作により、PETフィルム上に第2の接着剤層を備える第2の接着剤フィルムを得た。
【0137】
[回路接続用接着剤フィルムの作製]
第1の接着剤フィルムと第2の接着剤フィルムとを、基材であるPETフィルムと共に40℃で加熱しながら、ロールラミネータでラミネートした。これにより、第1の接着剤層と第2の接着剤層とが積層された二層構成の回路接続用接着剤フィルムを備える、基材付き回路接続用接着剤フィルムを作製した。
【0138】
得られた各接着剤フィルムを2枚のガラス(厚み:1mm程度)で挟み込み、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER811、三菱ケミカル株式会社製)100gと、硬化剤(商品名:エポマウント硬化剤、リファインテック株式会社製)10gとからなる樹脂組成物で注型後に、研磨機を用いて断面研磨を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:SE-8020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて各層の厚み等を測定した。
【0139】
測定結果(接着剤フィルムの第1の接着剤層側の表面から導電粒子までの最短距離、第1の接着剤層の略最厚部及び略最薄部のそれぞれの厚さ、第2の接着剤層の略最厚部の厚さ、並びに第1の接着剤層及び第2の接着剤層の合計厚さ)を表2,3に示す。なお、第1の接着剤層の略最厚部の厚さは、導電粒子が存在しない不存在領域において、第1の接着剤層の厚さが略最大となる位置における厚さを意味する。第1の接着剤層の略最薄部の厚さは、導電粒子が存在しない不存在領域において、第1の接着剤層の厚さが略最小となる位置における厚さを意味する。第2の接着剤層の略最厚部の厚さは、導電粒子が存在しない不存在領域において、第2の接着剤層の厚さが略最大となる位置における厚さを意味する。また、測定結果から算出した、導電粒子の平均粒径に対する第1の接着剤層の厚さの比、並びに、第1の接着剤層及び第2の接着剤層の合計厚さに対する第2の接着剤層の略最厚部の厚さの比も表2,3に併せて示す。
【0140】
(比較例4)
第2の硬化性組成物のワニスを用いて、厚さ1μmの接着剤層(第3の接着剤層)を作製した。次に、実施例2の接着剤フィルムにおいて、第1の接着剤層の第2の接着剤層と反対側の面上に第3の接着剤層を更にラミネートして、接着剤フィルムを得た。得られた接着剤フィルムにおける各層の厚み等を上記と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0141】
[回路接続構造体の作製]
作製した回路接続用接着剤フィルムを介して、ピッチ25μmのCOF(FLEXSEED社製)と、ガラス基板上に非結晶酸化インジウム錫(ITO)からなる薄膜電極(高さ:1200Å)を備える、薄膜電極付きガラス基板(ジオマテック社製)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、株式会社太陽機械製作所製)を用いて、170℃、6MPaで4秒間の条件で加熱加圧を行って幅1mmにわたり接続し、回路接続構造体(接続構造体)を作製した。なお、接続の際には、回路接続用接着剤フィルムにおける第1の接着剤層側の面がガラス基板と対向するように、回路接続用接着剤フィルムをガラス基板上に配置した。
【0142】
[導電粒子の流動性の評価]
得られた回路接続構造体について、回路接続用接着剤フィルムの染み出し部分の粒子流動状態を顕微鏡(商品名:ECLIPSE L200、株式会社ニコン製)を用いて評価した。具体的には、作製した回路接続構造体をガラス基板側から、顕微鏡にて観察し、回路接続用接着剤フィルムの幅よりも外側に染み出した部分の粒子状態を3段階で評価した。粒子がほとんど動かず、染み出し部分に粒子がない状態を1、多少粒子が動いているが、粒子が互いに連結していない状態を2、粒子が流動し、粒子が互いに連結している状態を3とした。
【0143】
[接続抵抗値の評価]
上記の導電粒子の流動性の評価において1又は2であった(導電粒子の流動が抑制されている)実施例及び比較例については、接続抵抗値の評価も実施した。具体的には、得られた回路接続構造体について、接続直後、及び、高温高湿試験後の対向する電極間の接続抵抗値を、マルチメーターで測定した。高温高湿試験は、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に200時間放置することにより行った。接続抵抗値は、対向する電極間の抵抗16点の平均値として求めた。
【0144】
【0145】
【符号の説明】
【0146】
1…回路接続用接着剤フィルム、2…第1の接着剤層、3…第2の接着剤層、4…導電粒子、10…回路接続構造体、12…回路電極(第1の電極)、13…第1の回路部材、15…バンプ電極(第2の電極)、16…第2の回路部材、20…接着剤フィルム収容セット、22…収容部材、28…視認部。