(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】組成物、アンテナの製造方法及び成形品
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20240409BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20240409BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240409BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01Q1/38
C08L27/18
C08K7/02
C08K7/16
(21)【出願番号】P 2021542819
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031495
(87)【国際公開番号】W WO2021039596
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019157041
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019187947
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】光永 敦美
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-143921(JP,A)
【文献】特開平10-025363(JP,A)
【文献】特開2006-061936(JP,A)
【文献】特開平11-228824(JP,A)
【文献】特開平11-255992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 7/02
C08K 7/16
H01P 11/00
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく単位
と、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン又はフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含有する熱溶融性のポリマー
の25~75質量%と、平均粒子径2μm以下の球状フィラー、又は長さ30μm以下かつ径2μm以下の繊維状フィラーである誘電率が1.5以上の誘電体フィラーの25~75質量%とを含み、
誘電率が1.5超かつ誘電正接が0.05以下の基体を射出成形又は圧縮成形により形成するために使用される組成物であって、
前記基体が、アンテナの成形部又は整合層である、組成物。
【請求項2】
前記成形部又は前記整合層の厚さが1cm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物に占める前記熱溶融性のポリマーの割合に対する前記誘電体フィラーの割合の質量での比が、1/10~1/1である、請求項
1又は
2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記組成物に占める前記熱溶融性のポリマーの割合に対する前記ポリテトラフルオロエチレンの質量での比が1以下であり、前記基体を射出成形により形成するために使用される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
さらに、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記組成物に占める前記熱溶融性のポリマーの割合に対する前記ポリテトラフルオロエチレンの質量での比が1以上であり、前記基体を圧縮成形により形成するために使用される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
アンテナパターンと、誘電正接が0.05以下であり、前記アンテナパターンを保持する成形部とを備えるアンテナの製造方法であって、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物を、前記成形部に対応する形状を有する型内に射出して前記成形部を形成する際に、前記成形型内に前記アンテナパターンを配置した状態とするか、前記成形部を形成した後、前記成形部と前記アンテナパターンとを組み立てる、アンテナの製造方法。
【請求項8】
アンテナパターンと、誘電正接が0.05以下であり、前記アンテナパターンを覆う整合層とを備えるアンテナの製造方法であって、請求項1~
4及び
6のいずれか1項に記載の組成物を、前記整合層に対応する形状を有する型内に供給及び圧縮して整合層を形成した後、前記整合層と前記アンテナパターンとを組み立てる、アンテナの製造方法。
【請求項9】
前記整合層の前記アンテナパターンと反対側の面に、さらに金属層を形成する、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物から、射出成形又は圧縮成形により形成された成形品。
【請求項11】
前記成形品がアンテナである、請求項
10に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の熱溶融性のポリマーを含む組成物、並びにかかる組成物を用いたアンテナの製造方法及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン等の携帯通信機器の小型化に伴って、それに搭載されるアンテナ(チップアンテナ)の小型化が進んでいる。
かかる小型のアンテナは、通常、導電体で構成されたアンテナパターンと、このアンテナパターンを保持し、樹脂等の誘電体で構成された基体(誘電基体)とを有している(特許文献1参照)。
特許文献1では、アンテナパターンをインサート部品として、誘電体を射出成形して基体を形成し、アンテナパターンと基体とが一体化された小型のアンテナを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナの更なる高性能化(アンテナ利得の向上)の観点からは、誘電特性に優れた誘電体が必要とされる。しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1の誘電体(誘電基体)では未だ充分ではなかった。また、特許文献1では、アンテナパターンと誘電基体とを一体化しているものの、それらの間の接着性も充分ではなかった。
本発明者らは、これらの点を改善すべく鋭意検討した。その結果、所定の熱溶融性のポリマーを含めば、電気特性及び接着性に優れ、射出成形又は圧縮成形に適した組成物を調製できる点を見い出した。
本発明は、接着性に優れた誘電正接が低い基体を射出成形又は圧縮成形により形成できる組成物、かかる組成物から形成された基体を備える高性能なアンテナの製造方法、及び上記成形物から成形された成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>テトラフルオロエチレンに基づく単位を含有する熱溶融性のポリマーを含み、誘電正接が0.05以下の基体を射出成形又は圧縮成形により形成するために使用される、組成物。
<2>前記基体が、アンテナの成形部又は整合層である、上記<1>の組成物。
<3>前記基体が、アンテナの成形部又は整合層であり、前記成形部又は前記整合層の厚さが1cm以下である、上記<1>又は<2>の組成物。
<4>さらに、誘電率が1.5以上の誘電体フィラーを含み、前記基体の誘電率が1.5超である、上記<1>~<3>のいずれかの組成物。
<5>前記誘電体フィラーが、平均粒子径2μm以下の球状フィラー、又は長さ30μm以下かつ径2μm以下の繊維状フィラーである、上記<4>の組成物。
<6>前記組成物に占める前記熱溶融性のポリマーの割合に対する前記誘電体フィラーの割合の質量での比が、1/10~1/1である、上記<4>又は<5>の組成物。
<7>前記熱溶融性のポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン又はフルオロアルキルエチレンに基づく単位を含有する、上記<1>~<6>のいずれかの組成物。
<8>さらに、ポリテトラフルオロエチレンを含む、上記<1>~<7>のいずれかの組成物。
<9>さらに、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記組成物に占める前記熱溶融性のポリマーの割合に対する前記ポリテトラフルオロエチレンの質量での比が1以下であり、前記基体を射出成形により形成するために使用される、上記<1>~<8>のいずれかの組成物。
<10>さらに、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記組成物に占める前記熱溶融性のポリマーの割合に対する前記ポリテトラフルオロエチレンの質量での比が1以上であり、前記基体を圧縮成形により形成するために使用される、上記<1>~<9>のいずれかの組成物。
<11>アンテナパターンと、誘電正接が0.05以下であり、前記アンテナパターンを保持する成形部とを備えるアンテナの製造方法であって、上記<1>~<10>のいずれかの組成物を、前記成形部に対応する形状を有する型内に射出して前記成形部を形成する際に、前記成形型内に前記アンテナパターンを配置した状態とするか、前記成形部を形成した後、前記成形部と前記アンテナパターンとを組み立てる、アンテナの製造方法。
<12>アンテナパターンと、誘電正接が0.05以下であり、前記アンテナパターンを覆う整合層とを備えるアンテナの製造方法であって、上記<1>~<8>及び<10>のいずれかの組成物を、前記整合層に対応する形状を有する型内に供給及び圧縮して整合層を形成した後、前記整合層と前記アンテナパターンとを組み立てる、アンテナの製造方法。
<13>前記整合層の前記アンテナパターンと反対側の面に、さらに金属層を形成する、上記<12>の製造方法。
<14>上記<1>~<10>のいずれかの組成物から、射出成形又は圧縮成形により形成された成形品。
<15>前記成形品がアンテナである、上記<14>の成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、接着性に優れた誘電正接が低い基体の成形に適した、射出成形又は圧縮成形用の組成物、及び高性能なアンテナが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「熱溶融性のポリマー」とは、溶融流動性を示すポリマーを意味し、荷重49Nの条件下、ポリマーの溶融温度よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
「溶融流れ速度(MFR)」とは、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定される、ポリマーのメルトマスフローレートを意味する。
「ポリマーの溶融温度(融点)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「組成物の溶融粘度」は、JIS K 7199:1999(ISO 11443:1995)に準拠して測定された剪断速度1000/秒における値である。
「平均粒子径」は、対象とする粒子(パウダー、フィラー等)を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒子の粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点が平均粒子径(D50)である。なお、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が10%となる点を、D10とする。
「十点平均粗さ(Rzjis)」は、JIS B 0601:2013の附属書JAで規定される値である。
本発明における「誘電率」は、比誘電率とも呼ばれる、真空の誘電率に対する相対的な誘電率を意味する。
ポリマーにおける「単位」は、重合反応によってモノマーから直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られたポリマーを所定の方法で処理して、構造の一部が変換された原子団であってもよい。ポリマーに含まれる、モノマーAに基づく単位を、単に「モノマーA単位」とも記す。
【0008】
本発明の組成物は、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位を含有する熱溶融性のポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)を含み、誘電正接が0.05以下の基体(誘電基体)を射出成形又は圧縮成形により形成するために使用される。
本発明におけるFポリマーは、良好な熱溶融性を示し、その溶融粘度が所定の範囲に収束するため、射出成形又は圧縮成形において、高密度に充填成形されやすい。その結果、形成される基体中に気泡(空気層)が形成されにくく、気泡の存在による誘電特性の低下が抑制されたと考えられる。また、組成物が、誘電体フィラー等のフィラーを含む場合には、フィラーが均一かつ安定分散しやすくなる。その結果、低い誘電正接を発現する基体を形成できたと推察される。
【0009】
本発明における基体の誘電正接は、0.05以下である。基体の誘電正接としては0.04以下が好ましく、0.03以下がより好ましい。その下限は、通常、0.001である。
また、本発明における基体の誘電率としては、1.5超が好ましく、2以上がより好ましい。さらに、3以上が好ましく、4以上が特に好ましい。その上限は、通常、10である。本発明における基体は、誘電率が1.5超であり、かつ、誘電正接が0.05以下であるのが好ましく、誘電率が2以上であり、かつ、誘電正接が0.05以下であるのがより好ましい。なお、本明細書における誘電率と誘電正接は、それぞれ20GHzで測定される値である。
本発明における基体は、特に、アンテナの成形部又は整合層として使用して、アンテナ性能を向上させるために好適に使用できる。かかるアンテナは、高い性能(アンテナ利得)を発揮しやすい。
ここで、アンテナの成形部は、導電体で構成されたアンテナパターンを保持する部材(保持部材)が好ましい。アンテナの整合層とは、アンテナパターンに流れる電流の減衰を抑制するために、アンテナパターンを覆うように設けられる層である。
アンテナの成形部及び整合層の厚さは、それぞれ、1cm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.01mm以下がさらに好ましい。本発明の組成物は、成形性に優れ、かかる薄い誘電特性に優れた、成形部又は整合層を形成できる。
【0010】
本発明におけるFポリマーは、TFEに基づく単位(TFE単位)を含有する、熱溶融性のポリマーである。Fポリマーは、TFEのホモポリマーであってもよく、TFEと、TFEと共重合可能な他のモノマー(コモノマー)とのコポリマーであってもよい。つまり、熱溶融性を示すのであれば、Fポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。
Fポリマーは、ポリマーを構成する全単位に対して、TFE単位を90~100モル%有するのが好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70~76質量%が好ましく、72~76質量%がより好ましい。上記範囲のフッ素含有量のFポリマーを使用すれば、基体の誘電特性の向上(特に、低誘電正接化)が図られる。
【0011】
Fポリマーとしては、TFEとエチレンとのコポリマー(ETFE)、TFEとプロピレンとのコポリマー、TFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)とのコポリマー(PFA)、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(FEP)、TFEとフルオロアルキルエチレン(FAE)とのコポリマー、TFEとクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマーが挙げられる。なお、これらのコポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含有していてもよい。
【0012】
Fポリマーは、TFE単位と、PAVE単位、HFP単位又はFAE単位とを含有するのが好ましい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(PPVE)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8Fが挙げられる。
FAEとしては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4Hが挙げられる。
【0013】
Fポリマーの溶融粘度は、380℃において1×102~1×106Pa・sが好ましく、300℃において1×102~1×106Pa・sがより好ましい。この場合、より低温で基体を射出形成しやすくなる。
Fポリマーの溶融温度は、260~320℃が好ましく、285~320℃がより好ましい。この場合、誘電体フィラーの変質、劣化を好適に防止できる。
FポリマーのMFRは、20g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。この場合、より複雑な形状の基体を形成しやすくなる。
組成物の溶融粘度は、剪断速度1000/秒において50~1000Pa・sが好ましく、75~750Pa・sが好ましい。この場合も、より複雑な形状の基体を形成しやすくなる。
【0014】
Fポリマーの好適な具体例としては、変性PTFE、FEP、PFAが挙げられる。なお、変性PTFEとは、TFEと極微量のコモノマー(HFP、PAVE、FAE等)のコポリマー等であり、熱溶融性を示すPTFEである。
Fポリマーとしては、極性官能基を有するFポリマーが好ましい。極性官能基は、Fポリマー中のモノマー単位に含まれていてもよく、ポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者のポリマーとしては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として極性官能基を有するポリマーが挙げられる。また、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られる、極性官能基を有するFポリマーも挙げられる。
極性官能基を有するFポリマーは、極性官能基を有するモノマー単位(以下、「極性単位」とも記す。)を有するFポリマーが好ましい。重合により極性単位となる、極性官能基を有するモノマーを、以下、「極性モノマー」とも記す。
【0015】
極性官能基としては、水酸基含有基、カルボニル基含有基、アセタール基及びホスホノ基(-OP(O)OH2)が好ましく、他の部材(アンテナパターン等)との接着性をより高める観点から、カルボニル基含有基がより好ましい。
水酸基含有基としては、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CF2CH2OH、-C(CF3)2OH及び1,2-グリコール基(-CH(OH)CH2OH)がより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボニル基含有基としては、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH2)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましい。
【0016】
カルボニル基含有基を有するモノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)及び無水マレイン酸がさらに好ましい。
極性官能基を有するFポリマーの好適な具体例としては、TFE単位と、HFP単位、PAVE単位又はFAE単位と、極性官能基を有する単位とを有するFポリマーが挙げられる。
【0017】
Fポリマーは、ポリマーを構成する全単位に対して、TFE単位を90~99モル%、HFP単位、PAVEに単位又はFAE単位を0.5~9.97モル%、極性単位を0.01~3モル%、それぞれ含有するのが好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
Fポリマーが極性官能基(特に、カルボニル基含有基)を有する場合、基体の他の部材(アンテナパターン等)に対する接着性がより向上する。
【0018】
本発明の組成物は、さらに、Fポリマー以外のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むのが好ましい。Fポリマー以外のPTFEとしては、非熱溶融性のPTFEが好ましい。かかるPTFEは、低分子量PTFE、電子線処理されたPTFE、γ線処理されたPTFEが好ましい。
基体を射出成形により形成するために使用する組成物に占める、Fポリマーに対するPTFEの質量での比は、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましい。上記比は、通常、0.1以上である。この場合、PTFEに対してFポリマーが充分量含まれ、射出成形によりFポリマーが高度に充填された基体を形成しやすい。
基体を圧縮成形により形成するために使用する組成物に占める、Fポリマーに対するPTFEの質量での比は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がさらに好ましい。上記比の上限は、通常、5である。この場合、Fポリマーに対してPTFEが充分量含まれ、圧縮成形性に優れたPTFEの物性が発現しやすいだけでなく、密着接着性に優れた基体を形成しやすい。
【0019】
本発明の組成物におけるFポリマーの形状は、粒状であるのが好ましい。
基体を射出成形により形成するために使用する組成物におけるFポリマーの形状は、ペレット状であるのが好ましく、3~5mmの塊状であるのがより好ましい。この場合、射出成形性を損ない難く、Fポリマーが高度に充填された基体を形成しやすい。
基体を圧縮成形により形成するために使用する組成物におけるFポリマーの形状は、パウダー状であるのが好ましい。パウダー状である場合、その体積基準累積10%径は0.1~10μm、体積基準累積50%径は0.3~50μmであるのが、それぞれ好ましい。この場合、密着接着性に優れた基体を形成しやすい。
【0020】
本発明の組成物は、さらに、誘電体フィラーを含むのが好ましい。
誘電体フィラーの25℃における誘電率としては、1.5以上が好ましく、6以上がより好ましい。さらに、18以上が好ましく、25以上が特に好ましい。誘電率の上限は、通常、1000である。上記範囲の誘電率を有する誘電体フィラーを使用すれば、基体に優れた誘電特性(高誘電率及び低誘電正接)を容易に付与できる。本発明の組成物は誘電率が1.5以上の誘電体フィラーを含み、誘電率が1.5超かつ誘電正接が0.05以下の基体を射出成形又は圧縮成形により形成するために使用されるのが好ましい。さらに、本発明の組成物は、誘電率が6以上の誘電体フィラーを含み、誘電率が2以上かつ誘電正接が0.05以下の基体を射出成形又は圧縮成形により形成するために使用されるのがより好ましい。
かかる誘電体フィラーには、有機誘電体フィラー及び無機誘電体フィラーのいずれも使用できる。
【0021】
有機誘電体フィラーとしては、硬化性樹脂の硬化物や非硬化性樹脂からなるフィラーが挙げられる。硬化性樹脂や非硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、アクリル樹脂、フェノール樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリベンズアゾール、アラミド、ポリエチレンが挙げられる。
【0022】
無機誘電体としては、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、スズ、ネオジム、サマリウム、ビスマス、鉛、ランタン、リチウム及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属元素を含む金属酸化物、及び、ガラスが好ましい。
無機誘電体の具体例としては、チタン酸バリウム、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、タンタル酸ビスマスストロンチウム、ニオブ酸ビスマスストロンチウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。
また、誘電体フィラーとしては、無機誘電体フィラーを有機誘電体の被覆層で被覆してなる複合フィラーであっても、有機誘電体フィラーに無機誘電体の微粒子が分散した複合フィラーであってもよい。
【0023】
また、誘電体フィラーは、無機誘電体のセラミック(焼結体)であってもよい。
誘電率が1.5~18の低誘電率セラミックフィラーとしては、アルミナ、炭酸カルシウム及びフォルステライトの焼結体の粉末が挙げられる。
誘電率が100~200の高誘電率セラミックフィラーとしては、ルチル型酸化チタン及びチタン酸カルシウムの焼結体の粉末が挙げられる。
セラミックスフィラーを使用する際は、得られる射出成形により得られる基体の誘電異方性を抑制する観点から、低誘電率セラミックの粉末と高誘電率セラミックの粉末とを併用するのが好ましい。この場合、セラミックの粉末に占める後者の粉末の割合は、50体積%以下が好ましい。さらに、得られる基体中のセラミックスフィラーの配列の観点から、前者の粉末の粒径が1~7μm、後者の粉末の粒径が0.1~2μmであるのが好ましく、前者の粉末の粒径が後者の粉末の粒径より大きいのが好ましい。
【0024】
誘電体フィラーの形状は、粒状であってもよく、非粒状(鱗片状、層状)であってもよく、繊維状であってもよい。
粒状の誘電体フィラーとしては、球状の無機酸化物フィラーが挙げられ、その具体例としては、シランカップリング剤で表面処理された平均粒子径1μm以下のシリカフィラー(アドマテックス社製の「アドマファイン」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された平均粒子径0.1μm以下の酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製の「FINEX」シリーズ等)、平均粒子径0.5μm以下かつ最大粒子径1μm未満の球状溶融シリカ(デンカ社製のSFPグレード等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された平均粒子径0.5μm以下のルチル型酸化チタン(石原産業社製の「タイペーク」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理された平均粒子径0.1μm以下のルチル型酸化チタン(テイカ社製の「JMT」シリーズ等)が挙げられる。
【0025】
鱗片状である誘電体フィラーの具体例としては、鱗片状の窒化ホウ素フィラーが挙げられる。その粒子径は30~100μmが好ましく、そのアスペクト比は10~100が好ましい。
繊維状フィラーが有機誘電体である場合、その繊維長は0.5~10mmであり、その繊維径は5~20μmであるのが、それぞれが好ましい。
かかる繊維状フィラーの具体例としては、ポリベンズアゾール繊維、パラアラミド繊維、ポリアリレート繊維、高分子量ポリエチレンが挙げられる。
繊維状フィラーがガラス繊維である場合、その繊維長は10μm~5mmが好ましい。また、その断面形状は、真円形、まゆ形、楕円形、半円形、多角形、星形のいずれであってもよく、真円形が好ましい。さらに、アスペクト比(繊維の長さ方向に垂直な断面の直径に対する繊維長の比)は、10~600が好ましい。
【0026】
緻密かつ均一に誘電体フィラーが分散し、誘電特性により優れた基体が得られる観点から、誘電体フィラーとして、微細構造を有する誘電体フィラーを使用するのが好ましい。
かかる微細構造を有する無機フィラーの好適な態様としては、平均粒子径2μm以下の球状フィラー、及び、長さ30μm以下かつ径2μm以下の繊維状フィラーが挙げられる。
前者の誘電体フィラーの平均粒子径は、0.05~5μmが好ましく、0.1~3μmがより好ましい。この場合、誘電体フィラーは、溶融状態の射出成形材料及び基体中においてより均一に分散しやすくなる。
後者の誘電体フィラーにおいて、長さは繊維長であり、径は繊維径である。繊維長は、1~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。繊維径は、0.1~1μmが好ましく、0.3~0.6μmがより好ましい。
【0027】
組成物に占めるFポリマーに対する誘電体フィラーの質量での比は、1/10~1/1が好ましく、1/8~1/2がより好ましく、1/6~1/3がさらに好ましい。この場合、基体の誘電特性がより向上しやすい。
組成物に占めるFポリマーの具体的な割合は、10~80質量%が好ましく、25~75質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。
また、組成物に占める誘電体フィラーの具体的な割合は、20~90質量%が好ましく、25~75質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。
また、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、チキソ性付与剤、消泡剤、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤を含んでいてもよい。
【0028】
本発明の組成物から製造される基体の用途としては、アンテナ、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品、ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品用部品、ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具用部品、コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー等の音響製品用部品、光ケーブル用フェルール、電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器用部品、分離爪、ヒータホルダー等の複写機関連部品、インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車用部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具、床材、壁材等の断熱・防音用部材、梁、柱等の支持部材、屋根材等の建築資材又は土木建築用部材、航空機、宇宙機、宇宙機器用部品、原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品、センサー類部品、サニタリー備品等が挙げられる。
【0029】
中でも、本発明における基体の用途としては、アンテナ(特に、小型アンテナ)が好適である。かかるアンテナの具体例としては、I:アンテナパターンと、誘電率が2以上かつ誘電正接が0.05以下であり、アンテナパターンを保持する成形部とを備えるアンテナ(前者のアンテナ)、及び、II:アンテナパターンと、誘電率が2以上かつ誘電正接が0.05以下であり、アンテナパターンを覆う整合層とを備えるアンテナ(後者のアンテナ)が挙げられる。
【0030】
前者のアンテナは、本発明の組成物を、成形部に対応する形状を有する型内に射出して、成形部を形成して製造するのが好ましい。
この際、アンテナは、基体とアンテナパターンとを別個に作製した後、組み立てる(嵌め込む)アウター成形によって製造してもよいし、成形型内にアンテナパターンを配置した状態で、成形型内に成形用材料を射出するインサート成形によって製造してもよく、後者のインサート成形によって製造するのが好ましい。
インサート成形によれば、アンテナパターンと基体とが高度に接着したアンテナが得られる。かかるアンテナは、性能に優れるとともに、耐久性も良好である。
射出成形時の加熱温度は、Fポリマーの融点以上の温度に設定すればよく、具体的には、300~400℃が好ましく、320~380℃がより好ましい。
また、アンテナは、アンテナパターンを1つのみ有していても、2つ以上有していてもよい。
後者のアンテナは、本発明の組成物を、整合層に対応する形状を有する型内に供給及び圧縮して整合層を形成した後、整合層とアンテナパターンとを組み立てる(嵌め込む)アウター成形により製造するのが好ましい。
上述したとおり、本発明の組成物から射出成形又は圧縮成形により形成された成形品は、誘電特性に優れており、アンテナとして有用である。
【0031】
本発明により得られるアンテナの表面(基体のアンテナパターンと反対側の面(以下、「アンテナ表面」とも記す。))には、さらに金属層を形成してもよい。金属層は、気相成膜法によって形成してもよく、金属メッキ法によって形成してもよい。
金属層を構成する金属としては、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられる。
金属層の厚さは、1~50μmが好ましく、10~25μmがより好ましい。かかる厚さの金属層であれば、アンテナ全体の反りを抑制しつつ、各種用途へ使用しやすい。
また、前者の方法によれば、均一かつアンテナ表面との密着性に優れる金属層を形成しやすい。気相成膜法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられ、スパッタリング法が好ましい。
【0032】
金属層は、ポリマー層側の部分(第1部分)を気相成膜法により形成し、残りの部分(第2部分)を電気めっき等により形成してもよい。
特に、金属層は、第1部分を気相成膜法(特に、スパッタリング法)により形成し、第2部分を電解めっき法により形成するのが好ましい。
具体的には、金属層は、スパッタリング法によりnmオーダーの第1部分を形成し、この第1部分をシード層として、電解めっき法によりμmオーダーまで成長させて形成するのが好ましい。
なお、第1部分においては、金属の結晶構造が柱状構造を形成しているのが好ましい。
【0033】
アンテナ表面の十点表面粗さは、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。上記の十点表面粗さは、20μm以下が好ましい。アンテナ表面が、かかる表面粗さであれば、アンテナ表面に金属層を強固に接着積層させやすい。本発明におけるアンテナ表面を形成する基体は、本発明の組成物から射出成形法又は圧縮成形法により形成されるため、その表面粗さは、かかる所望の範囲に制御しやすい。
また、本発明の組成物が、誘電体フィラー、特に金属酸化物を含む誘電フィラーを含めば、アンテナ表面に金属層を強固に接着積層しやすい。
【0034】
アンテナ表面に金属層を形成したアンテナは、さらにエッチング処理に供して上記金属層に伝送回路を形成してもよく、はんだ処理に供して加工してもよい。アンテナ表面の金属層が強固に接着積層され、耐熱性(はんだリフロー性)と耐薬品性に優れるため、これらの処理において、金属層とアンテナが剥離し難い。
金属層のアンテナ表面に対する剥離強度は、3N/cm以上が好ましく、5N/cm以上がより好ましく、10N/cm以上がさらに好ましい。なお、剥離強度の上限は、通常、25N/cmである。
なお、剥離強度とは、金属層が形成されたアンテナ表面を矩形状(長さ100mm、幅10mm)に切り出し、長さ方向の一端から50mmの位置を固定し、引張り速度50mm/分、長さ方向の片端から切り出し片に対して90°で、アンテナ表面と金属層とを剥離させた際にかかる最大荷重(N/cm)である。
【0035】
以上、本発明の組成物、アンテナの製造方法及び成形品について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。
例えば、本発明の組成物及び成形品は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加で有してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
また、本発明のアンテナの製造方法は、上記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.Fポリマー
Fポリマー1:TFE単位、PPVE単位及びNAH単位を、この順に98.0モル%、1.9モル%、0.1モル%含み、極性官能基を有するポリマー(融点:300℃、溶融粘度:1×103Pa・s、MFR:8g/10分)
2.誘電体フィラー
フィラー1:チタン酸バリウム繊維(繊維長:20μm、繊維径1.5μm)
フィラー2:ガラス繊維(横断面形状:円形、繊維長:3mm、繊維径11μm、日東紡績株式会社製の「CS-3J-256」)
フィラー3:窒化ホウ素フィラー(鱗片状、粒子径:35mm、アスペクト比:30、デンカ社製の「XGP」)
フィラー4:ポリベンズアゾール繊維(繊維長:1mm、繊維径:12μm、東洋紡社製の「ザイロン」)
フィラー5:球状シリカフィラー(アミノシランカップリング剤による表面処理品、平均粒子径:0.5μm、アドマテックス社製の「アドマファインSO-C2」)
【0037】
3.組成物
組成物1:66質量部のFポリマー1と34質量部のフィラー1とを、340℃のシリンダー温度に設定した二軸押出機を用いて、溶融混練して、ヘッド穴を通して糸状に成形し、さらに水中で冷却した後、φ2×5mm程度にカットして得られたペレット
組成物2:66質量部のFポリマー1のパウダー(平均粒子径:20μm)と34質量部のフィラー1とを、ドライブレンドして得られたパウダー
組成物3:70質量部のFポリマー1のパウダー(平均粒子径:50μm)と10質量部のフィラー2と20質量部のフィラー3とを使用した以外は、組成物1と同様にして得られたペレット
組成物4:90質量部のFポリマー1のパウダー(平均粒子径:50μm)と10質量部のフィラー4とを、ラボプラストミル装置を用いて溶融混練して得られたペレット
組成物5:60質量部のFポリマー1のパウダー(平均粒子径:50μm)と40質量部のフィラー5とを、ラボプラストミル装置を用いて溶融混練して得られたペレット
組成物6:90質量部のFポリマー1のパウダー(平均粒子径:50μm)と10質量部のフィラー3とを使用した以外は、組成物1と同様にして得られたペレット
【0038】
4.組成物の成形例
以下、基体の誘電率及び誘電正接は、測定器としてネットワークアナライザを使用して、空洞共振器摂動法(測定周波数:20GHz)により測定した。
4-1.射出成形例
組成物3を射出成形機に投入し、320℃で溶融した後、金属製の成形型のφ3mmのサイドゲートに射出成形して、シート部を有する基体(誘電基体)を得た。この金属層を有する基体は、誘電率が3.0であり、誘電正接は0.0019であった。
組成物3に代えて組成物4を使用した以外は、上記と同様にして、基体を得た。その誘電率は2.3であり、誘電正接は0.0016であり、線膨張係数は79ppm/℃であった。
【0039】
組成物3に代えて組成物5を使用した以外は、上記と同様にして、基体を得た。その誘電率は2.6であり、誘電正接は0.0010であり、線膨張係数は134ppm/℃であった。
組成物3に代えて組成物6を使用した以外は、上記と同様にして、基体を得た。その誘電率は2.3であり、誘電正接は0.0010であり、線膨張係数は200ppm/℃以下であった。
【0040】
5.アンテナの製造例
5-1.射出成形によるアンテナの製造例
組成物1を射出成形機に投入し、320℃で溶融した後、銅箔製のアンテナパターンがインサートされた金属製の成形型のφ3mmのサイドゲートに射出成形して、アンテナパターンと、それを保持する基体(誘電基体)とを備えるアンテナを得た。
基体の誘電率は4.0であり、誘電正接は0.03であった。また、アンテナにおいて、アンテナパターンと基体との界面は、密着性が高く、強固に接着されていた。
【0041】
5-2.圧縮成形によるアンテナの製造例
組成物2を圧縮成形機に投入し、温度380℃、圧縮圧力17MPaの条件にて圧縮成形して、アンテナパターンを覆う形状を有する整合層(厚さ0.03cmの錠剤状、誘電率:4.0、誘電正接:0.03)を形成した。この整合層をアンテナパターンに嵌め込み、整合層を備えるアンテナを得た。
5-3.金属層の形成例
上記「5-1」で得られたアンテナにおける基体の表面(アンテナパターンと反対側の面)に、真空スパッタリング装置を用いて、ニッケルクロム合金層(厚さ:20nm、ニッケル含有量80%、クロム含有量20%)と銅層(厚さ:100nm)とをこの順に形成した。さらに、硫酸銅めっきにより、シード銅層上に銅層(厚さ:16μm)を形成して、アンテナの表面に金属層を形成した。この金属層はアンテナ表面に強固に接着しており、それに伝送回路を形成する際の耐熱性(はんだリフロー性)に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の組成物は、射出成形性又は圧縮成形性に優れており、電気・電子部品をはじめとする各種部品(部材)、特にアンテナの基体の製造に好適に使用できる。
なお、2019年8月29日に出願された日本特許出願2019-157041号および2019年10月11日に出願された日本特許出願2019-187947号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。