(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240409BHJP
【FI】
G02B7/04 D
(21)【出願番号】P 2022185775
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2021501622の分割
【原出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019029346
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】山田 智士
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 拓司
(72)【発明者】
【氏名】岸本 崇
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-250063(JP,A)
【文献】特開2009-294267(JP,A)
【文献】特開2009-244620(JP,A)
【文献】特開平11-072684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒と、
前記第1筒に設けられる固定部材と、
第1突部を有する移動部材と、
前記固定部材及び前記移動部材が配置される直進溝を有する第2筒と、
前記固定部材と前記移動部材との間に
、光軸を中心とする周方向に沿って配置される弾性部と、を備えるレンズ鏡筒。
【請求項2】
第1筒と、
前記第1筒に設けられる固定部材と、
前記固定部材に対して移動可能に保持され、直進溝に配置される第1突部を有する移動部材と、
光軸を中心とする周方向に付勢力を有し、前記固定部材と前記移動部材との間に配置される弾性部と、を備え、
前記弾性部によって、前記第1突部は前記直進溝の一方の側面と当接するレンズ鏡筒。
【請求項3】
第1筒と、
前記第1筒に設けられる固定部材と、
前記固定部材に対して移動可能に保持される移動部材と、
前記固定部材及び前記移動部材が配置される直進溝を有する第2筒と、
前記固定部材と前記移動部材との間に配置される弾性部と、を備え、
前記弾性部によって、前記固定部材は前記直進溝の一方の側面と当接し、前記移動部材は前記直進溝の他方の側面と当接する
レンズ鏡筒。
【請求項4】
前記弾性部は、前記固定部材と前記移動部材との間に、光軸を中心とする周方向に沿って配置される請求項1から請求項3の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記弾性部は、光軸を中心とする周方向に前記固定部材と前記移動部材とを付勢する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記移動部材は第1突部を有し、前記固定部材に対して光軸を中心とする周方向に移動可能であり、
前記第1突部は、前記弾性部によって前記移動部材が光軸を中心とする周方向に移動することにより、前記直進溝の一方の側面と当接する
請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記固定部材は、第2突部が取り付けられ、
前記弾性部の付勢によって、前記第2突部は前記直進溝の他方の側面と当接する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記移動部材は第1突部を有し、
前記第1突部及び第2突部は、ベアリングを有する
請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記固定部材及び前記移動部材が配置される直進溝を有する第2筒を備え、
前記第1筒と前記第2筒とは
、光軸方向における相対的な位置関係が変化する
請求項1から請求項8の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記移動部材は第1突部を有し、
前記固定部材は、前記第1突部が配置される穴部を有する
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記移動部材は、前記固定部材より内周側に配置される
請求項1から請求項10の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記移動部材は第1突部を有し、
前記固定部材は、前記第1突部が配置される穴部を有し、
前記穴部は、前記第1突部が前記固定部材に対して移動可能な方向に長さを有する
請求項11に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか1項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒は、ガタを防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様のレンズ鏡筒は、第1筒と、前記第1筒に設けられる固定部材と、第1突部を有する移動部材と、前記固定部材及び前記移動部材が配置される直進溝を有する第2筒と、前記固定部材と前記移動部材との間に、光軸を中心とする周方向に沿って配置される弾性部と、を備えるレンズ鏡筒を備える構成とする。
【0005】
第2の態様のレンズ鏡筒は、第1筒と、前記第1筒に設けられる固定部材と、前記固定部材に対して移動可能に保持され、直進溝に配置される第1突部を有する移動部材と、光軸を中心とする周方向に付勢力を有し、前記固定部材と前記移動部材との間に配置される弾性部と、を備え、前記弾性部によって、前記第1突部は前記直進溝の一方の側面と当接する構成とする。
【0006】
第3の態様のレンズ鏡筒は、第1筒と、前記第1筒に設けられる固定部材と、前記固定部材に対して移動可能に保持される移動部材と、前記固定部材及び前記移動部材が配置される直進溝を有する第2筒と、前記固定部材と前記移動部材との間に配置される弾性部と、を備え、前記弾性部によって、前記固定部材は前記直進溝の一方の側面と当接し、前記移動部材は前記直進溝の他方の側面と当接する構成とする。
【0007】
第4の態様の撮像装置は、上記レンズ鏡筒を備える構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態のレンズ鏡筒1を示す断面図であり、上部と下部とで焦点距離が異なる状態を示す。
【
図2】直進筒15を外周側から見た部分斜視図であり、直進筒15の外周に位置する固定筒14を点線で示す。
【
図3】
図2においてガタ取り構造100を分解して示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態のレンズ鏡筒201内の筒構成の一部を示す側面図である。
【
図5】固定筒214の外周に回転移動筒213が配置された状態を示す分解図である。
【
図6】
図4から固定筒214を取り除いた状態の部分斜視図である。
【
図7】
図6の状態において、後述のガタ取り構造250を分解斜視図で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、第1実施形態のレンズ鏡筒1について説明する。
図1は、第1実施形態のレンズ鏡筒1を示す断面図であり、
図1における上部と下部とは、焦点距離が異なる状態を示す。
レンズ鏡筒1は、図中右側にレンズ側マウント部11を有し、カメラボディ2に設けられたボディ側マウント部(図示せず)に対して着脱可能な交換式レンズ鏡筒1である。ただしこれに限定されず、カメラボディ2と一体型のレンズ鏡筒であっても良い。
以下、光軸OAに沿った図中左側を被写体側、図中右側を像側と称す。
【0010】
レンズ鏡筒1は、外周側からフォーカスリング12と、フォーカスリング12の被写体側の内周側に配置され、フォーカスリング12と一体で回転する回転筒13と、回転筒13の内周側に配置され、回転筒13よりもさらに像側に延びる固定筒14と、回転筒13及び固定筒14の内周側に配置され、回転筒13の回転によって直進する直進筒15と、を備える。
【0011】
レンズ鏡筒1は、本実施形態では2群構成の単焦点レンズで、1群レンズL1と、2群レンズL2とを備える。ただし、2群構成の単焦点レンズに限定されない。例えば、ズームレンズでも良いし、より多くの群で構成されていてもよい。
1群レンズL1は、第1-1群レンズL11と、第2-1群レンズL12と、第3-1群レンズL13と、第4-1群レンズL14と、第5-1群レンズL15と、第6-1群レンズL16と、第7-1群レンズL17と、を備える。
第1-1群レンズL11の外周は第1-1群レンズ保持枠21に保持され、第2-1群レンズL12外周は第2-1群レンズ保持枠22に保持され、第3-1群レンズL13の外周は第3-1群レンズ保持枠23に保持され、第4-1群レンズL14の外周は第4-1群レンズ保持枠24に保持され、第5-1群レンズL15外周は第5-1群レンズ保持枠25に保持され、第6-1群レンズL16の外周は第6-1群レンズ保持枠26に保持され、第7-1群レンズL17外周は第7-1群レンズ保持枠27に保持されている。
【0012】
第3-1群レンズ保持枠23と、第4-1群レンズ保持枠24と、第5-1群レンズ保持枠25とは、それらの外周に配置された第2直進移動筒32に固定されている。第2直進移動筒32は直進筒15にネジ止めされている。
したがって、直進筒15が直進すると、第2直進移動筒32が直進し、これにより第3-1群レンズ保持枠23と、第4-1群レンズ保持枠24と、第5-1群レンズ保持枠25と、が直進し、ゆえに第3-1群レンズL13と、第4-1群レンズL14と、第5-1群レンズL15とが直進する。
【0013】
第1-1群レンズ保持枠21と、第2-1群レンズ保持枠22とは、それらの外周に配置された第1直進移動筒31に固定されている。第1直進移動筒31は第2直進移動筒32の被写体側の先端にネジ止めされている。
したがって、直進筒15が直進すると、第2直進移動筒32とともに第1直進移動筒31が直進し、これにより第1-1群レンズ保持枠21と、第2-1群レンズ保持枠22とが直進し、ゆえに第1-1群レンズL11と、第2-1群レンズL12とが直進する。
【0014】
第6-1群レンズ保持枠26と、第7-1群レンズ保持枠27とは、直進筒15に固定されている。したがって、直進筒15が直進すると、第6-1群レンズ保持枠26と、第7-1群レンズ保持枠27とが直進し、ゆえに第6-1群レンズL16と第7-1群レンズL17とが直進する。すなわち、直進筒15の直進により、1群レンズL1が全て直進する。
【0015】
また、2群レンズL2は、2群レンズ保持枠28に保持され、2群レンズ保持枠28は、固定筒14の像側に固定されている。
【0016】
(固定筒14)
図1に示すように固定筒14は、被写体側が大径で像側が小径の筒部材である。なお、固定筒14の形状はこれに限らず、被写体側も像側もほぼ同径の形状であってもよい。
図2は、直進筒15を外周側から見た部分斜視図であり、直進筒15の外周に位置する固定筒14を点線で示す。
図3は、
図2において後述のガタ取り構造100を分解して示す斜視図である。
なお、「ガタ」とは、筒部材間での、製造上の誤差や、機械設計時に意図的に設けられた組立上必要なクリアランス等によって生じてしまう相対的な動きをいう。また、「ガタ取り」とは、この相対的な動きを除去することを意味する。
【0017】
(直進筒15)
図1に示すように、直進筒15は、固定筒14と同様に被写体側が大径で、像側が小径であり、被写体側の端部に大径部よりもさらに大径で外周にヘリコイドネジが設けられたネジ部15Cが設けられている。なお、直進筒15の形状はこれに限らず、被写体側と像側とがほぼ同径の形状でもよい。
ヘリコイドネジは、回転筒13の被写体側の内面に設けられたヘリコイド溝に螺合し、回転筒13が回転すると、ヘリコイドネジがヘリコイド溝に沿って移動する。これにより直進筒15は、固定筒14と、固定筒14に対して回転するが光軸OA方向には移動しない回転筒13とに対して光軸OA方向に直進移動(進退)する。
【0018】
図1の上部は、直進筒15の固定筒14に対する突出量が最も少ない状態を示し、直進筒15のネジ部15Cのみが第1環状部材16及び固定筒14から突出している。
図1の下部は直進筒15の固定筒14に対する突出量が最も大きい状態を示し、直進筒15のネジ部15Cは、
図1の上部に示す状態と比べて第1環状部材16及び固定筒14から光軸方向に離間しており、直進筒15の大径部の約半分程度が第1環状部材16及び固定筒14よりも被写体側に突出している。ただし、直進筒15の先端は、回転筒13の先端から突出しておらず、回転筒13のヘリコイド溝と、直進筒15のヘリコイドネジとの係合は維持されている。
【0019】
図2及び
図3においては1箇所のみ示すが、直進筒15の外面には、周方向に均等な3箇所に、光軸OA方向に延びる凹部152が設けられている。また、
図2において点線で1箇所のみ示すが、固定筒14には、内径側における周方向の均等な3箇所に、直進溝141が設けられている。
【0020】
直進筒15の凹部152の底面には貫通した直線穴151が設けられている。直線穴151は凹部152の長手方向の概ね中央に位置している。凹部152の底面における、直線穴151を挟んだ両側には、それぞれ円形の開口部153が設けられている。なお、直線穴151は必ずしも貫通してなくてもよい。
【0021】
直進筒15の凹部152の中には、ガタ取り構造100が配置されている。ガタ取り構造100は、凹部152内を光軸方向に延びる固定部材101と、凹部152内を固定部材101と同様に光軸OA方向に延びるが、固定部材101よりも短い移動部材102と、固定部材101と移動部材102との間に配置されるバネ103と、外径側に突出する2つの内側ベアリング104と、内側ベアリング104の外側に配置され、内側ベアリング104と同様に外径側に突出する2つの外側ベアリング105とを備える。
【0022】
(固定部材101)
固定部材101は、凹部152内を光軸OA方向に延びる細長い部材である。固定部材101は、長手方向の概ね中央に設けられた固定側対向部101aと、固定側対向部101aの両端からそれぞれ長手方向に延びる固定側ベアリング取付部101bとを備える。2つの固定側ベアリング取付部101bにはそれぞれ、固定側対向部101a側から、内側ベアリング移動長穴101cと外側ベアリング固定穴101dとが貫通して設けられている。2つの内側ベアリング移動長穴101cは、それぞれ固定部材101の短手方向(光軸を中心とする周方向)に長い長穴である。
【0023】
(移動部材102)
移動部材102は、凹部152内を光軸OA方向に延びる細長い部材で、固定部材101より短い。移動部材102は、長手方向の中央に移動側対向部102aを備える。移動側対向部102aは、固定側対向部101aと略同じ長さで、固定側対向部101aと周方向に対向するように配置されている。
移動部材102は、移動側対向部102aの両端からそれぞれ長手方向に延びる移動側ベアリング取付部102bを備える。2つの移動側ベアリング取付部102bにはそれぞれ、内側ベアリング固定穴102cが貫通して設けられている。
移動側ベアリング取付部102bは、固定側ベアリング取付部101bよりも、径方向において直進筒15側(内径側)となるように設けられている。言い換えると、移動側ベアリング取付部102bは、固定側ベアリング取付部101bと直進筒15との間に配置される。
【0024】
直進筒15の凹部152の中に、移動部材102が配置され、固定部材101は、移動側ベアリング取付部102bの上に、固定側ベアリング取付部101bが配置され且つ、移動側対向部102aと固定側対向部101aとが対向するように配置される。
このとき、固定側対向部101aと移動側対向部102aとの間には2つのバネ103が配置されている。バネ103は圧縮バネで、周方向に延びるように(周方向に沿って)配置されている。つまり、バネ103は、固定部材101(固定側対向部101a)と移動部材102(移動側対向部102a)とを周方向に付勢する。
【0025】
(内側ベアリング104)
2つの内側ベアリング移動長穴101c間の光軸OA方向の距離と、2つの内側ベアリング固定穴102c間の光軸方向の距離は概ね等しい。
内側ベアリング移動長穴101cを貫通して、内側ベアリング固定穴102cに内側ベアリング104の中心軸が固定される。
このとき、内側ベアリング104の外周は、移動部材102の移動側対向部102aより周方向に突出している。
【0026】
ここで、内側ベアリング移動長穴101cは固定部材101の短手方向に長穴であるので、移動部材102の内側ベアリング固定穴102cに固定された内側ベアリング104は、内側ベアリング移動長穴101cの長軸方向(レンズ鏡筒の周方向)に移動可能である。つまり、内側ベアリング104が周方向に移動可能なように、内側ベアリング移動長穴101cはレンズ鏡筒の周方向(内側ベアリング104や移動部材102が移動可能な方向)に長い長穴の形状に形成されている。なお、内側ベアリング移動長穴101cは、長穴に限らず、内側ベアリング104が周方向に移動可能なように形成されていればよい。例えば、固定部材101の短手方向(光軸を中心とする周方向)に向かって切り欠かれた切欠きであってもよい。
【0027】
(外側ベアリング105)
2つの外側ベアリング固定穴101d間の光軸OA方向の距離と、直進筒15の凹部152に設けられた2つの開口部153間の光軸OA方向の距離は等しい。
そして、外側ベアリング固定穴101d貫通して、直進筒15(開口部153)に外側ベアリング105の中心軸が取り付けられている。
これにより、固定部材101は、外側ベアリング105によって、直進筒15に対して固定される。
【0028】
固定部材101はこのように直進筒15に対して固定されている。一方、移動部材102は固定部材101に対して移動可能である。このため、移動部材102は、バネ103の付勢力によって固定側対向部101aに対して、レンズ鏡筒1の周方向に押圧されて周方向に移動可能である。
また、内側ベアリング104の外周は、移動部材102の移動側対向部102aより周方向に突出しているので、内側ベアリング104が固定筒14の直進溝141の側面の一方に当接する。直進筒15に取り付けられたガタ取り機構100は、直進筒15が光軸方向に移動する際に、直進溝141を移動する。このとき、内側ベアリング104が直進溝141に当接しているため、直進筒15はガタなくスムーズに移動することができる。
【0029】
外側ベアリング105の外周は、固定部材101の固定側対向部101aより周方向に突出している。ゆえに、外側ベアリング105が固定筒14の直進溝141の側面の他方に当接する。よって、ガタ取り機構100が直進溝141内を移動する際に、外側ベアリング105が直進溝141に当接しているためガタを抑制しスムーズに移動することができる。ただしこれに限定されず、外側ベアリング105は直進溝141と当接しない構成でも良い。
また、移動側ベアリング取付部102bが、固定側ベアリング取付部101bと直進筒15とに挟み込まれているため、移動部材102が浮いてしまうことを防止できる。
【0030】
以上、本実施形態によると、内側ベアリング104の外周が固定筒14の直進溝141の側面の一方に当接して、固定筒14が直進筒15に対してバネ力によって周方向の付勢されている。したがって、固定筒14と、固定筒14に対して直進移動する直進筒15との間の周方向のガタを取ることができる。また、直進溝141を用いてガタ取りすることで、相対的に回転しない筒同士のガタを適切にとることができる。相対的に回転しない筒同士のガタをとることで、光学性能が向上する。
直進筒15は内部に第2直進移動筒32等を介して複数のレンズ群を保持している。直進筒15の周方向のガタを取ることにより、直進筒15内部に保持されているレンズ群の倒れやガタを抑制することができ、レンズ鏡筒1の光学性能を向上させることができる。
なお、本実施形態において、周方向に均等な3箇所設けられた凹部152にガタ取り構造100が設けられる例を記載したが、これに限らない。2箇所以下でもよいし、4箇所以上に設けても良い。また、均等ではなく不均等に複数の凹部152及びガタ取り構造100を設けてもよい。
なお、実施形態では固定筒14の内径側に直進筒15が配置される例を説明したが、固定筒14の外径側に直進筒15を配置してもよい。その場合、内側ベアリング104や外側ベアリング104は内径側に突出し、直進溝141に係合してよい。この場合、直進溝141は固定筒14の外周側に設けられる。
なお、実施形態では、固定部材101は、外側ベアリング105によって、直進筒15に対して固定される例を説明したが、固定部材101に対応する部分が直進筒15に一体形成されていてもよい。
【0031】
(第2実施形態)
次に、図面等を参照して第2実施形態のレンズ鏡筒201について説明する。
図4は、第2実施形態のレンズ鏡筒201内の筒構成の一部を示す側面図である。第2実施形態のレンズ鏡筒201も、第1実施形態のレンズ鏡筒1と同様に、レンズ側マウント部(図示せず)を有し、カメラボディ(図示せず)に対して着脱可能な交換式レンズ鏡筒201である。ただし、これに限定されず、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒であっても良い。
【0032】
レンズ鏡筒201は、少なくとも、
図4に示す固定筒214と、固定筒214の内径側に配置されレンズ群M(
図6に図示)を保持するとともに固定筒214に対して直進する直進筒215と、固定筒214の外周側に配置され、固定筒214に対して相対回転するとともに光軸OA方向に移動する、
図4において点線で示す回転移動筒213とを備える。
【0033】
図5は、固定筒214の外周に回転移動筒213が配置された状態を示す分解図である。
図6は、
図4から固定筒214を取り除いた状態で、回転移動筒213及び固定筒214を点線で示した部分斜視図である。
図7は
図6の状態において、後述のガタ取り構造250を分解斜視図で示した図である。
【0034】
(回転移動筒213)
回転移動筒213は、レンズ鏡筒201に設けられた回転操作部(図示せず)を回転させることにより、光軸OAを中心として回転しつつ、光軸OA方向に移動する筒である。回転移動筒213は、内周面に、光軸OAを中心とした円周方向に延びる周溝213aが設けられている。
【0035】
(固定筒214)
固定筒214には、図中1箇所のみ示すが、光軸OAに沿って延びる直進ガイド溝214bとガタ取り用直進溝214aとの2本の直進溝の組が、周方向の均等な3箇所に設けられている。
【0036】
(直進筒215)
直進筒215はレンズ群Mを保持し、図中1箇所のみ示すが、周方向の均等な3か所に、直進ガイド部230とガタ取り構造250とを備える。
【0037】
(直進ガイド部230)
直進ガイド部230は、直進筒215の外周面に、光軸OA方向に延びるように取り付けられた略矩形の直進部231と、直進部231の外面に外径側に突出するようにして固定された直進駆動第1ベアリング232とを備える。直進駆動第1ベアリング232は、回転移動筒213の周溝213aに係合している。
【0038】
(ガタ取り構造250)
ガタ取り構造250は、直進筒215の外周面に外径側に突出して固定された2段ベアリング251と、直進筒215の光軸OAに対して直交する側面215aに取り付けられた移動板252と、移動板252を貫通して直進筒215の側面215aに固定された第1固定ピン253及び第2固定ピン254と、第2固定ピン254と移動板252とを付勢するバネ255と、移動板252に固定された押圧ベアリング256とを備える。
【0039】
(2段ベアリング251)
2段ベアリング251は、内径側の固定ベアリング251aと、外径側の直進駆動第2ベアリング251bとを備える2段構造であり、直進筒215の外周面に外径側に突出して固定されている。
直進駆動第2ベアリング251bは、直進ガイド部230の直進駆動第1ベアリング232と、光軸OAからの径方向距離が略等しく、また光軸OA方向においても同一周上に位置し、直進駆動第1ベアリング232とともに、回転移動筒213の周溝213aに係合している。
なお、実施形態において固定ベアリング251aの外周は、ガタ取り用直進溝214aの側面に当接しているわけではない。ただしこれに限定されず当接させても良い。この場合、固定ベアリング251aは、後述する押圧ベアリング256が当接する直進溝214aの側面とは他方の側面と当接する。
【0040】
(移動板252)
図7に示すように、移動板252は、長手方向の両側のそれぞれに、長手方向に延びる長穴252a、252bが設けられている平坦部252Aと、平坦部252Aにおける、2つの長穴252a、252bの間の側面の一方から平坦部252Aに対して略直角に折れ曲がって像側に延びるベアリング保持部252cと、平坦部252Aの長手方向の一端から平坦部252Aに対して略直角に折れ曲がってベアリング保持部252cと同じくウント側に延びるバネかけ部252dと、を備える。
【0041】
(第1固定ピン253、第2固定ピン254)
バネかけ部252dが設けられた側の長穴252bには、第1固定ピン253が挿入され、第1固定ピン253は長穴252bを貫通して直進筒215の側面215aに固定されている。他方の長穴252aには、第2固定ピン254が挿入され、第2固定ピン254は長穴242aを貫通して直進筒215の側面215aに固定されている。これにより移動板252は、長手方向が直進筒215の周方向に沿い且つ周方向に移動可能に配置される。
【0042】
(バネ255)
第2固定ピン254は第1固定ピン253よりも光軸OA像側に向って長く延び、第2固定ピン254とバネ255かけ部との間に引っ張りバネ255が取り付けられている。
【0043】
(押圧ベアリング256)
押圧ベアリング256は、移動板252のベアリング保持部252cに固定され、直進筒215よりも外径に突出している。
【0044】
直進筒215に固定された第2固定ピン254に一端が固定され、移動板252のバネかけ部252dに他端が固定されたバネ255は、バネかけ部252d、すなわち移動板252を周方向の第2固定ピン254側に引っ張る。
このとき、移動板252は、第1固定ピン253及び第2固定ピン254を介して、直進筒215に対して、長穴252a、252bの長軸の長さの範囲で周方向に移動可能に保持されている。
したがって移動板252はバネ255によって周方向に引っ張られると、周方向に移動する。これにより、押圧ベアリング256も周方向に移動して固定筒214のガタ取り用直進溝214aの側面に当接する。
【0045】
レンズ鏡筒201に設けられた回転操作部(図示せず)を回転させと、回転移動筒213は、光軸OAを中心として回転しつつ光軸OA方向に直進移動する。このとき、回転移動筒213の内周面に設けられた周溝213aに、直進駆動第1ベアリング232と、直進駆動第2ベアリング251bとが係合している。直進駆動第1ベアリング232と、直進駆動第2ベアリング251bとは、回転せずに直進移動のみ可能な直進筒215に固定されている。したがって、直進駆動第1ベアリング232と直進駆動第2ベアリング251bとは、周溝213aが回転しても、光軸OAを中心とした回転はしない。
しかし、直進駆動第1ベアリング232と直進駆動第2ベアリング251bとは、周溝213aと当接している外面がそれぞれの中心軸を中心として回転可能である。
ゆえに、周溝213a、すなわち回転移動筒213の周方向の回転を妨げることなく、直進駆動第1ベアリング232と直進駆動第2ベアリング251bが設けられている直進筒215は、光軸OA方向の駆動力を得ることができる。
【0046】
このとき直進筒215は、固定筒214に設けられた直進ガイド溝214bによって直進移動がガイドされる。
このとき、直進筒215に取り付けられた押圧ベアリング256が固定筒214のガタ取り用直進溝214aの側面に当接して、固定筒214と直進筒215との間の周方向のガタは除去される。これにより、直進筒215のレンズ群Mの倒れを抑制することができ、レンズ鏡筒1の光学性能を向上させることができる。また、ガタ取り用直進溝214aを用いてガタ取りすることで、相対的に回転しない筒同士のガタを適切にとることができる。相対的に回転しない筒同士のガタをとることで、光学性能が向上する。
なお、実施形態では周方向の均等な3か所に、直進ガイド部230とガタ取り構造250とを備える構成を説明したがこれに限らない。直進ガイド部230とガタ取り構造250とは、2箇所以下に設けられても良いし、4箇所以上に設けられてもよい。また、不均等に設けられても良い。
なお、実施形態では固定筒214の内径側に直進筒215が配置される例を説明したが、固定筒214の外径側に直進筒215を配置してもよい。その場合、2段ベアリング251や押圧ベアリング256は内径側に突出し、ガタ取り用直進溝214aに係合してよい。また、回転移動筒213を固定筒214の内径側に配置し、2段ベアリング251や押圧ベアリング256が、ガタ取り用直進溝214aと円周溝213aと係合するようにしてもよい。
なお、実施形態では、第2固定ピン254が直進筒215に固定される例を説明したが、第2固定ピン254に対応する部分が直進筒215に一体形成されている構成でもよい。
【0047】
なお、上記説明した実施形態に限らず任意の組み合わせでも良い。
【符号の説明】
【0048】
L1:1群レンズ、L2:2群レンズ、M:レンズ群、OA:光軸、1:レンズ鏡筒、13:回転筒、14:固定筒、15:直進筒、15C:ネジ部、16:第1環状部材、100:ガタ取り構造、101:固定部材、101a:固定側対向部、101b:固定側ベアリング取付部、101c:内側ベアリング移動長穴、101d:外側ベアリング固定穴、102:移動部材、102a:移動側対向部、102b:移動側ベアリング取付部、102c:内側ベアリング固定穴、103:バネ、104:内側ベアリング、105:外側ベアリング、141:直進溝、151:直線穴、152:凹部、153:開口部、201:レンズ鏡筒、213:回転移動筒、213a:周溝、214:固定筒、214a:用直進溝、214b:直進ガイド溝、215:直進筒、215a:側面、230:直進ガイド部、231:直進部、232:直進駆動第1ベアリング、242a:長穴、250:構造、251:段ベアリング、251a:固定ベアリング、251b:直進駆動第2ベアリング、252:移動板、252A:平坦部、252a:長穴、252b:長穴、252c:ベアリング保持部、252d:バネかけ部、253:第1固定ピン、254:第2固定ピン、255:バネ、256:押圧ベアリング