(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】導体基板、配線基板、ストレッチャブルデバイス及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240409BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240409BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240409BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K1/02 A
H05K3/46 Q
H05K3/46 T
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2022203296
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2020518362の分割
【原出願日】2019-05-10
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2018092105
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小川 禎宏
(72)【発明者】
【氏名】正木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
(72)【発明者】
【氏名】シム タンイー
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067797(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016534(WO,A1)
【文献】特開2007-112848(JP,A)
【文献】特開2007-051258(JP,A)
【文献】特開2007-211143(JP,A)
【文献】特開2008-195846(JP,A)
【文献】特開2018-024774(JP,A)
【文献】特開2006-059999(JP,A)
【文献】特開2012-122046(JP,A)
【文献】特開2011-233622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 1/02
H05K 3/46
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性樹脂層と、
前記伸縮性樹脂層上に設けられた導体箔と、を有する導体基板であって、
前記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分と、(B)エポキシ基を有する架橋成分と、(C)エステル系硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、
前記樹脂組成物における前記(A)ゴム成分の含有量が、前記(A)ゴム成分、前記(B)架橋成分及び前記(C)エステル系硬化剤の総量を基準として、60~95質量%である、導体基板。
【請求項2】
前記導体箔の弾性率が40~300GPaである、請求項1に記載の導体基板。
【請求項3】
前記(A)ゴム成分が、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムを含む、請求項1又は2に記載の導体基板。
【請求項4】
前記(A)ゴム成分が、架橋基を有するゴムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の導体基板。
【請求項5】
前記架橋基が、酸無水物基又はカルボキシル基のうちの少なくとも一方である、請求項4に記載の導体基板。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、(D)硬化促進剤を更に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の導体基板。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、酸化防止剤を更に含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の導体基板。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の導体基板を含み、前記導体箔が配線パターンを形成している、配線基板。
【請求項9】
請求項8に記載の配線基板と、前記配線基板に搭載された電子素子と、を備えるストレッチャブルデバイス。
【請求項10】
伸縮性樹脂層と、前記伸縮性樹脂層上に設けられた導体箔と、を有する導体基板を含み、前記導体箔が配線パターンを形成している、配線基板を形成するために用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の導体基板。
【請求項11】
伸縮性樹脂層と前記伸縮性樹脂層上に積層された導体箔とを有する積層板を準備する工程と、
前記導体箔上にエッチングレジストを形成する工程と、
前記エッチングレジストを露光し、露光後の前記エッチングレジストを現像して、前記導体箔の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンによって覆われていない部分の前記導体箔を除去する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、を含む、請求項8に記載の配線基板を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、高い伸縮性を有することのできる配線基板、及びその製造方法に関する。本発明の別の側面は、上記配線基板を形成するために用いることのできる導体基板に関する。本発明の更に別の側面は、上記配線基板を用いたストレッチャブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブル機器及びヘルスケア関連機器等の分野において、例えば身体の曲面又は関節部に沿って使用できると共に、脱着しても接続不良が生じにくいためのフレキシブル性及び伸縮性が求められている。このような機器を構成するためには、高い伸縮性を持つ配線基板又は基材が求められる。
【0003】
特許文献1には、伸縮性の樹脂組成物を用いてメモリーチップ等の半導体素子を封止する方法が記載されている。特許文献1では、伸縮性の樹脂組成物の封止用途への適用が主として検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、封止材に伸縮性を持たせることで従来の封止材では困難であった伸縮性を有した部材の実現が可能となった。一方で、ベース基材は伸縮性を有していないため、より高い伸縮性を持たせることが困難であった。そのため、より高い伸縮性を有する配線基板が求められている。
【0006】
また、耐熱性向上の観点から、配線基板のベース基材を作製するための材料としては、反応性官能基を有する架橋成分を用いることが検討されている。しかしながら、反応性官能基を有する架橋成分を用いると、得られるベース基材の誘電正接が増加し易く、ベース基材上に設けられた配線の伝送損失が増大し易いという問題がある。
【0007】
このような状況において、本発明の一側面は、高い伸縮性を有すると共に、低い誘電正接を有する導体基板、それを用いた配線基板、ストレッチャブルデバイス及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面は、伸縮性樹脂層と、上記伸縮性樹脂層上に設けられた導体箔と、を有する導体基板であって、上記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分と、(B)エポキシ基を有する架橋成分と、(C)エステル系硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、導体基板を提供する。
【0009】
本発明の別の一側面は、伸縮性樹脂層と、上記伸縮性樹脂層上に設けられた導体めっき膜と、を有する導体基板であって、上記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分と、(B)エポキシ基を有する架橋成分と、(C)エステル系硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、導体基板を提供する。
【0010】
上記導体基板によれば、そのベース基材として(A)ゴム成分を含む伸縮性樹脂層を用いることにより、高い伸縮性を得ることができる。また、従来、伸縮性樹脂層を作製するための材料として反応性官能基を有する架橋成分を用いた場合に誘電正接が増加してしまうのは、架橋成分が硬化反応時に水酸基を生成するためであると考えられる。水酸基は体積が小さく分極率が高い官能基であるため、水酸基を有する材料は全体として誘電正接が増加することとなる。これに対し、架橋成分として(B)エポキシ基を有する架橋成分と、硬化剤として(C)エステル系硬化剤とを組み合わせて用いることにより、架橋成分の硬化反応時に水酸基が生成することを大きく抑制できることを本発明者らは見出した。これは、架橋成分が有するエポキシ基と、エステル系硬化剤との硬化反応が、水酸基の生成を伴わず、また、硬化後においても水酸基を生成し難いためである。更に、それらの硬化物は、伸縮性に悪影響を及ぼさない。このため、上記構成を有する導体基板によれば、高い伸縮性を維持しつつ、耐熱性を向上できる架橋成分を用いながら低い誘電正接を実現することができる。
【0011】
本発明の別の一側面は、上記本発明の導体基板を含み、上記導体箔又は導体めっき膜が配線パターンを形成している、配線基板を提供する。上記配線基板は、上記本発明の導体基板における導体箔又は導体めっき膜が配線パターンを形成したものであり、上記特定の構成を有する伸縮性樹脂層を備えるものであるため、高い伸縮性を有すると共に、架橋成分を用いることで高い耐熱性を有しつつ、低い誘電正接を有することができ、配線パターンの伝送損失が十分に低減されたものとなる。
【0012】
本発明の別の一側面は、上記本発明の配線基板と、上記配線基板に搭載された電子素子と、を備えるストレッチャブルデバイスを提供する。上記ストレッチャブルデバイスは、上記本発明の配線基板を備えるものであり、上記特定の構成を有する伸縮性樹脂層を備えるものであるため、高い伸縮性を有すると共に、架橋成分を用いることで高い耐熱性を有しつつ、低い誘電正接を有することができ、配線パターンの伝送損失が十分に低減されたものとなる。
【0013】
本発明の別の一側面は、伸縮性樹脂層と、上記伸縮性樹脂層上に設けられた導体箔又は導体めっき膜と、を有する導体基板を含み、上記導体箔又は導体めっき膜が配線パターンを形成している、配線基板を形成するために用いられる、上記本発明の導体基板を提供する。
【0014】
本発明の別の一側面は、伸縮性樹脂層と上記伸縮性樹脂層上に積層された導体箔とを有する積層板を準備する工程と、上記導体箔上にエッチングレジストを形成する工程と、上記エッチングレジストを露光し、露光後の上記エッチングレジストを現像して、上記導体箔の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンによって覆われていない部分の上記導体箔を除去する工程と、上記レジストパターンを除去する工程と、を含む、上記本発明の配線基板を製造する方法を提供する。
【0015】
本発明の別の一側面は、伸縮性樹脂層上にめっきレジストを形成する工程と、上記めっきレジストを露光し、露光後の上記めっきレジストを現像して、上記伸縮性樹脂層の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、上記伸縮性樹脂層の上記レジストパターンによって覆われていない部分の表面上に無電解めっきによって導体めっき膜を形成する工程と、上記レジストパターンを除去する工程と、を含む、上記本発明の配線基板を製造する方法を提供する。
【0016】
本発明の別の一側面は、伸縮性樹脂層上に無電解めっきにより導体めっき膜を形成する工程と、上記導体めっき膜上にめっきレジストを形成する工程と、上記めっきレジストを露光し、露光後の上記めっきレジストを現像して、上記伸縮性樹脂層の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンによって覆われていない部分の上記導体めっき膜上に、電解めっきによって導体めっき膜を更に形成する工程と、上記レジストパターンを除去する工程と、無電解めっきによって形成された上記導体めっき膜のうち、電解めっきによって形成された導体めっき膜によって覆われていない部分を除去する工程と、を含む、上記本発明の配線基板を製造する方法を提供する。
【0017】
本発明の別の一側面は、伸縮性樹脂層上に形成された導体めっき膜上にエッチングレジストを形成する工程と、上記エッチングレジストを露光し、露光後の上記エッチングレジストを現像して、上記伸縮性樹脂層の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンによって覆われていない部分の上記導体めっき膜を除去する工程と、上記レジストパターンを除去する工程と、を含む、上記本発明の配線基板を製造する方法を提供する。
【0018】
上記製造方法により、導体箔又は導体めっき膜が配線パターンを形成している本発明の配線基板を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によれば、高い伸縮性を有すると共に、低い誘電正接を有する導体基板、それを用いた配線基板、ストレッチャブルデバイス及び配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】回復率の測定例を示す応力-ひずみ曲線である。
【
図3】耐熱性試験の温度プロファイルを示すグラフである。
【
図4】比較例1の硬化前後の伸縮性樹脂層の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【
図5】実施例1、3及び比較例1の硬化後の伸縮性樹脂層の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
一実施形態に係る導体基板は、伸縮性樹脂層と、伸縮性樹脂層の片面上又は両面上に設けられた導体層とを有し、伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分と、(B)エポキシ基を有する架橋成分と、(C)エステル系硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む。一実施形態に係る配線基板は、上記樹脂組成物の硬化物を含む伸縮性樹脂層と、伸縮性樹脂層の片面上又は両面上に設けられ、配線パターンを形成している導体層とを有する。導体層は、導体箔又は導体めっき膜であることができる。
【0023】
<導体基板>
[導体箔]
導体箔の弾性率は、40~300GPaであってもよい。導体箔の弾性率が40~300GPaであることにより、配線基板の伸長による導体箔の破断が生じ難い傾向がある。同様の観点から、導体箔の弾性率は50GPa以上又は60GPa以上であってもよく、280GPa以下又は250GPa以下であってもよい。ここでの導体箔の弾性率は、共振法によって測定される値であることができる。
【0024】
導体箔は、金属箔であることができる。金属箔としては、銅箔、チタン箔、ステンレス箔、ニッケル箔、パーマロイ箔、42アロイ箔、コバール箔、ニクロム箔、ベリリウム銅箔、燐青銅箔、黄銅箔、洋白箔、アルミニウム箔、錫箔、鉛箔、亜鉛箔、半田箔、鉄箔、タンタル箔、ニオブ箔、モリブデン箔、ジルコニウム箔、金箔、銀箔、パラジウム箔、モネル箔、インコネル箔、ハステロイ箔等が挙げられる。適切な弾性率等の観点から、導体箔は、銅箔、金箔、ニッケル箔、及び鉄箔から選ばれてもよい。配線形成性の観点から、導体箔は銅箔であってもよい。銅箔は、フォトリソグラフィーにより、伸縮性樹脂層の特性を損なわずに、簡易的に配線パターンを形成できる。
【0025】
銅箔としては、特に制限はなく、例えば銅張積層板及びフレキシブル配線板等に用いられる電解銅箔及び圧延銅箔を使用できる。市販の電解銅箔としては、例えばF0-WS-18(古河電気工業株式会社製、商品名)、NC-WS-20(古河電気工業株式会社製、商品名)、YGP-12(日本電解株式会社製、商品名)、GTS-18(古河電気工業株式会社製、商品名)、及びF2-WS-12(古河電気工業株式会社製、商品名)が挙げられる。圧延銅箔としては、例えばTPC箔(JX金属株式会社製、商品名)、HA箔(JX金属株式会社製、商品名)、HA-V2箔(JX金属株式会社製、商品名)、及びC1100R(三井住友金属鉱山伸銅株式会社製、商品名)が挙げられる。伸縮性樹脂層との密着性の観点から、粗化処理を施している銅箔を使用してもよい。耐折性の観点から、圧延銅箔を用いてもよい。
【0026】
金属箔は、粗化処理によって形成された粗化面を有していてもよい。この場合、通常、粗化面が伸縮性樹脂層に接する向きで、金属箔が伸縮性樹脂層上に設けられる。伸縮性樹脂層と金属箔との密着性の観点から、粗化面の表面粗さRaは、0.1~3μm、又は0.2~2.0μmであってもよい。微細な配線を容易に形成するために、粗化面の表面粗さRaが0.3~1.5μmであってもよい。
【0027】
表面粗さRaは、例えば、表面形状測定装置Wyko NT9100(Veeco社製)を用いて、以下の条件で測定することができる。
測定条件
内部レンズ:1倍
外部レンズ:50倍
測定範囲:0.120×0.095mm
測定深度:10μm
測定方式:垂直走査型干渉方式(VSI方式)
【0028】
導体箔の厚みは、特に制限はないが、1~50μmであってもよい。導体箔の厚みが1μm以上であると、より容易に配線パターンを形成することができる。導体箔の厚みが50μm以下であると、エッチング及び取り扱いが特に容易である。
【0029】
導体箔は、伸縮性樹脂層の片面又は両面上に設けられる。伸縮性樹脂層の両面上に導体箔を設けることにより、硬化等のための加熱による反りを抑制することができる。
【0030】
導体箔を設ける方法は特に制限されないが、例えば、伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物を金属箔に直接塗工する方法、及び、伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物をキャリアフィルムに塗工して樹脂層(硬化前の伸縮性樹脂層)を形成し、形成された樹脂層を導体箔上に積層する方法がある。
【0031】
[導体めっき膜]
導体めっき膜は、アディティブ法又はセミアディティブ法に用いられる通常のめっき法により形成することができる。例えば、パラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行った後、伸縮性樹脂層を無電解めっき液に浸漬してプライマーの表面全面に厚み0.3~1.5μmの無電解めっき層(導体層)を析出させる。必要に応じて、電解めっき(電気めっき)を更に行って、必要な厚みに調整することができる。無電解めっきに用いる無電解めっき液としては、任意の無電解めっき液を用いることが可能であり、特に制限はない。電解めっきについても通常の方法を採用することが可能であり、特に制限はない。導体めっき膜(無電解めっき膜、電解めっき膜)は、コスト面及び抵抗値の観点から銅めっき膜であってもよい。
【0032】
更に不要な箇所をエッチング除去して回路層を形成することができる。エッチングに用いられるエッチング液は、めっきの種類により適宜選択できる。例えば、導体が銅めっきである場合、エッチングに用いられるエッチング液としては、例えば濃硫酸と過酸化水素水の混合溶液、又は塩化第二鉄溶液等を使用できる。
【0033】
導体めっき膜との接着力を向上させるために、伸縮性樹脂層上にあらかじめ凹凸を形成してもよい。凹凸を形成する手法としては、例えば銅箔の粗化面を転写する方法が挙げられる。銅箔としては、例えばYGP-12(日本電解株式会社製、商品名)、GTS-18(古河電気工業株式会社製、商品名)又はF2-WS-12(古河電気工業株式会社製、商品名)を用いることができる。
【0034】
銅箔の粗化面を転写する手法としては、例えば銅箔の粗化面に伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物を直接塗工する方法、及び、伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物をキャリアフィルムに塗工後、樹脂層(硬化前の伸縮性樹脂層)を銅箔上に成型する方法がある。伸縮性樹脂層の両面上に導体めっき膜を形成することにより、硬化等のための加熱による反りを抑制することができる。
【0035】
導体めっき膜との高接着化を目的として、伸縮性樹脂層に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば一般的な配線板の製造工程に用いられる粗化処理(デスミア処理)、UV処理、及びプラズマ処理が挙げられる。
【0036】
デスミア処理としては、一般的な配線板の製造工程で用いられる方法を用いてもよく、例えば過マンガン酸ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0037】
[伸縮性樹脂層]
伸縮性樹脂層は、例えば歪み20%まで引張変形した後の回復率が80%以上であるような、伸縮性を有することができる。この回復率は、伸縮性樹脂層の測定サンプルを用いた引張試験において求められる。1回目の引っ張り試験で加えたひずみ(変位量)をX、次に初期位置に戻し再度引っ張り試験を行ったときに荷重が掛かり始めるときの位置とXとの差をYとし、式:R(%)=(Y/X)×100で計算されるRが、回復率として定義される。回復率は、Xを20%として測定することができる。
図1は、回復率の測定例を示す応力-ひずみ曲線である。繰り返しの使用に対する耐性の観点から、回復率が80%以上、85%以上、又は90%以上であってもよい。回復率の定義上の上限は100%である。
【0038】
伸縮性樹脂層の弾性率(引張弾性率)は、0.1MPa以上1000MPa以下であってもよい。弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下であると、基材としての取り扱い性及び可撓性が特に優れる傾向がある。この観点から、弾性率が0.3MPa以上100MPa以下、又は0.5MPa以上50MPa以下であってもよい。
【0039】
伸縮性樹脂層の破断伸び率は、100%以上であってもよい。破断伸び率が100%以上であると、十分な伸縮性が得られ易い傾向がある。この観点から、破断伸び率は150%以上、200%以上、300%以上又は500%以上であってもよい。破断伸び率の上限は、特に制限されないが、通常1000%程度以下である。
【0040】
伸縮性樹脂層の誘電正接(Df)は、0.004以下であってもよい。誘電正接が0.004以下であると、伸縮性樹脂層上に設けられた配線パターンの伝送損失を十分に低減することができる傾向がある。この観点から、誘電正接は0.0035以下、0.003以下、又は、0.0025以下であってもよい。誘電正接の下限は、特に制限されないが、通常0.0005程度以上である。
【0041】
伸縮性樹脂層の比誘電率(Dk)は、4.0以下であってもよい。比誘電率が4.0以下であると、伸縮性樹脂層上に設けられた配線パターンの伝送損失を十分に低減することができる傾向がある。この観点から、比誘電率は3.5以下、3.0以下、又は、2.5以下であってもよい。
【0042】
伸縮性樹脂層は、その赤外線吸収スペクトルにおいて、水酸基の伸縮振動に帰属される吸収ピークが存在しないものであってもよい。これにより、伸縮性樹脂層の誘電正接が十分に低減されたものとなり、伸縮性樹脂層上に設けられた配線パターンの伝送損失を十分に低減することができる傾向がある。
【0043】
伸縮性樹脂層は、(A)ゴム成分と、(B)エポキシ基を有する架橋成分と、(C)エステル系硬化剤と、を含有する樹脂組成物(硬化性樹脂組成物)の硬化物を含む。すなわち、伸縮性樹脂層は、(B)エポキシ基を有する架橋成分の架橋重合体を含有する。伸縮性樹脂層には、主に上記(A)ゴム成分によって、容易に伸縮性が付与される。
【0044】
(A)ゴム成分は、例えば、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムを含むことができる。吸湿等による配線へのダメージを保護する観点から、ガス透過性が低いゴム成分を用いてもよい。係る観点から、(A)ゴム成分が、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びブチルゴムから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。スチレンブタジエンゴムを用いることにより、めっき工程に使用する各種薬液に対する伸縮性樹脂層の耐性が向上し、歩留まりよく配線基板を製造することができる。
【0045】
アクリルゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン株式会社「Nipol ARシリーズ」、クラレ株式会社「クラリティシリーズ」が挙げられる。
【0046】
イソプレンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン株式会社「Nipol IRシリーズ」が挙げられる。
【0047】
ブチルゴムの市販品としては、例えばJSR株式会社「BUTYLシリーズ」等が挙げられる。
【0048】
スチレンブタジエンゴムの市販品としては、例えばJSR株式会社「ダイナロンSEBSシリーズ」、「ダイナロンHSBRシリーズ」、クレイトンポリマージャパン株式会社「クレイトンDポリマーシリーズ」、アロン化成株式会社「ARシリーズ」が挙げられる。
【0049】
ブタジエンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン株式会社「Nipol BRシリーズ」等が挙げられる。
【0050】
アクリロニトリルブタジエンゴムの市販品としては、例えばJSR株式会社「JSR NBRシリーズ」が挙げられる。
【0051】
シリコーンゴムの市販品としては、例えば信越シリコーン株式会社「KMPシリーズ」が挙げられる。
【0052】
エチレンプロピレンゴムの市販品としては、例えばJSR株式会社「JSR EPシリーズ」等が挙げられる。
【0053】
フッ素ゴムの市販品としては、例えばダイキン株式会社「ダイエルシリーズ」等が挙げられる。
【0054】
エピクロルヒドリンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン株式会社「Hydrinシリーズ」が挙げられる。
【0055】
(A)ゴム成分は、合成により作製することもできる。例えば、アクリルゴムでは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等を反応させることにより得られる。
【0056】
(A)ゴム成分は、架橋基を有するゴムを含んでいてもよい。架橋基を有するゴムを用いることにより、伸縮性樹脂層の耐熱性が向上し易い傾向がある。架橋基は、(A)ゴム成分の分子鎖を架橋する反応を進行させ得る反応性基であればよい。その例としては、後述する(B)架橋成分が有する反応性基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、エポキシ基及びカルボキシル基が挙げられる。
【0057】
(A)ゴム成分は、酸無水物基又はカルボキシル基のうち少なくとも一方の架橋基を有するゴムを含んでいてもよい。酸無水物基を有するゴムの例としては、無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムが挙げられる。無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムは、無水マレイン酸に由来する構成単位を含む重合体である。無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムの市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のスチレン系エラストマー「タフプレン912」がある。
【0058】
無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムは、無水マレイン酸で部分的に変性された水素添加型スチレン系エラストマーであってもよい。水素添加型スチレン系エラストマーは、耐候性向上等の効果も期待できる。水素添加型スチレン系エラストマーは、不飽和二重結合を含むソフトセグメントを有するスチレン系エラストマーの不飽和二重結合に水素を付加反応させて得られるエラストマーである。無水マレイン酸で部分的に変性された水素添加型スチレン系エラストマーの市販品の例としては、クレイトンポリマージャパン株式会社の「FG1901」、「FG1924」、旭化成株式会社の「タフテックM1911」、「タフテックM1913」、「タフテックM1943」がある。
【0059】
(A)ゴム成分の重量平均分子量は、塗膜性の観点から、20000~200000、30000~150000、又は50000~125000であってもよい。ここでの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる標準ポリスチレン換算値を意味する。
【0060】
樹脂組成物において、(A)ゴム成分の含有量は、(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤の総量を基準として、60~95質量%であることが好ましく、65~90質量%であることがより好ましく、70~85質量%であることが更に好ましい。(A)ゴム成分の含有量が60質量%以上であると、より十分な伸縮性が得られ易く、かつゴム成分と架橋成分がよく混ざり合う傾向がある。(A)ゴム成分の含有量が95質量%以下であると、伸縮性樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。伸縮性樹脂層における(A)ゴム成分の含有量が、伸縮性樹脂層の質量を基準として、上記範囲内にあってもよい。
【0061】
(B)エポキシ基を有する架橋成分は、硬化反応時に架橋して架橋重合体を形成する成分である。(B)エポキシ基を有する架橋成分は、分子内にエポキシ基を有していれば特に制限されず、例えば一般的なエポキシ樹脂であることができる。エポキシ樹脂としては、単官能、2官能又は多官能のいずれでもよく、特に制限はないが、十分な硬化性を得るためには2官能又は多官能のエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0062】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型等が挙げられる。脂肪鎖で変性したエポキシ樹脂は、柔軟性を付与できる。市販の脂肪鎖変性エポキシ樹脂としては、例えばDIC株式会社製のEXA-4816が挙げられる。硬化性、低タック性、及び耐熱性の観点から、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ナフタレン型、又はジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂を選択してもよい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
無水マレイン酸基又はカルボキシル基を有するゴムと、エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)との組み合わせにより、伸縮性樹脂層の耐熱性及び低透湿度、伸縮性樹脂層と導電層との密着性、並びに、伸縮性樹脂層の低いタックの点で、特に優れた効果が得られる。伸縮性樹脂層の耐熱性が向上すると、例えば窒素リフローのような加熱工程における伸縮性樹脂層の劣化を抑制することができる。伸縮性樹脂層が低いタックを有すると、作業性良く導体基板又は配線基板を取り扱うことができる。
【0064】
樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、(B)エポキシ基を有する架橋成分以外の他の架橋成分を含んでいてもよい。他の架橋成分の含有量は、伸縮性樹脂層の誘電正接をより十分に低減する観点から、(B)エポキシ基を有する架橋成分100質量部に対して10質量部未満であることが好ましい。
【0065】
(C)エステル系硬化剤は、それ自体が硬化反応に関与する化合物であり、伸縮性樹脂層の耐熱性を向上しつつ、誘電正接を低減することができる。
【0066】
エステル系硬化剤としては特に制限されないが、耐熱性の向上効果及び誘電正接の低減効果をより十分に得る観点から、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に1個又は2個以上有する化合物が好ましく用いられる。エステル系硬化剤としてより具体的には、例えば、「EPICLON HPC8000-65T」、「EPICLON HPC8000-L-65MT」、「EPICLON HPC8150-60T」(いずれもDIC株式会社製の商品名)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
エステル系硬化剤は、硬化反応時に下記式(I)に示すように(B)架橋成分と反応するものと考えられる。このような(C)エステル系硬化剤と、(B)架橋成分との反応において水酸基は生成せず、また、副反応が生じたとしても水酸基は生成し難く、その結果、低い誘電正接を実現できるものと考えられる。
【0068】
【化1】
式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、1価の有機基を示すが、本発明の効果がより十分に得られることから、芳香環を有する1価の有機基であってもよい。
【0069】
樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、(C)エステル系硬化剤以外の他の硬化剤を含んでいてもよい。他の硬化剤の含有量は、伸縮性樹脂層の誘電正接をより十分に低減する観点から、(C)エステル系硬化剤100質量部に対して10質量部未満であることが好ましい。
【0070】
樹脂組成物において、(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤の合計の含有量は、(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤の総量を基準として、5~40質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤の合計の含有量が5質量%以上であると、より十分な硬化が得られ易いと共に、伸縮性樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤の合計の含有量が40質量%以下であると、より十分な伸縮性が得られ易く、かつゴム成分と架橋成分がよく混ざり合う傾向がある。
【0071】
樹脂組成物において、(B)架橋成分と(C)エステル系硬化剤との含有量比は、(B)エポキシ樹脂中のエポキシ基と(C)エステル系硬化剤中のエステル結合との当量比で、4:5~5:4の範囲であることが好ましい。含有量比が上記範囲内であることで、より十分な硬化が得られ易いと共に、伸縮性樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。
【0072】
樹脂組成物は、更に(D)硬化促進剤を含有してもよい。(D)硬化促進剤は、硬化反応の触媒として機能する化合物である。(D)硬化促進剤は、三級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、リン系化合物、ルイス酸、アミン錯塩及びホスフィンから選ばれるものであってもよい。これらの中でも、樹脂組成物のワニスの保存安定性及び硬化性の観点から、イミダゾールを使用してもよい。(A)ゴム成分が無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムを含む場合、これと相溶するイミダゾールを選択してもよい。
【0073】
樹脂組成物において、(D)硬化促進剤の含有量は、(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤の合計量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよい。(D)硬化促進剤の含有量が0.1質量部以上であると、より十分な硬化が得られ易い傾向がある。(D)硬化促進剤の含有量が10質量部以下であると、より十分な耐熱性が得られ易い傾向がある。以上の観点から、(D)硬化促進剤の含有量は0.3~7質量部、又は0.5~5質量部であってもよい。
【0074】
樹脂組成物は、以上の成分の他、必要に応じて、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤、難燃剤、レベリング剤等を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で更に含んでもよい。
【0075】
特に、樹脂組成物は、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、及び加水分解防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の劣化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、酸化による劣化を抑制する。また、酸化防止剤は、高温下での十分な耐熱性を伸縮性樹脂層に付与する。熱安定剤は、高温下での安定性を伸縮性樹脂層に付与する。光安定剤の例としては、紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤、光を遮断する光遮断剤、有機材料が吸収した光エネルギーを受容して有機材料を安定化する消光機能を有する消光剤が挙げられる。加水分解防止剤は、水分による劣化を抑制する。劣化防止剤は、酸化防止剤、熱安定剤、及び紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。劣化防止剤としては、以上例示した成分から1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。より優れた効果を得るために、2種以上の劣化防止剤を併用してもよい。
【0076】
酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤からなる群より選ばれる1種以上であってもよい。より優れた効果を得るために、2種以上の酸化防止剤を併用してもよい。フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用してもよい。
【0077】
フェノール系酸化防止剤は、フェノール性水酸基のオルト位にt-ブチル基(ターシャリーブチル基)及びトリメチルシリル基等の立体障害の大きい置換基を有する化合物であってもよい。フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とも称される。
【0078】
フェノール系酸化防止剤は、例えば2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。フェノール系酸化防止剤は、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンに代表される高分子型フェノール系酸化防止剤であってもよい。
【0079】
ホスファイト系酸化防止剤は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ジノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルトリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト及びトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよく、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトであってもよい。
【0080】
その他の酸化防止剤の例として、N-メチル-2-ジメチルアミノアセトヒドロキサム酸に代表されるヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネートに代表される硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物の質量(固形分全量)を基準として、0.1~20質量%であってもよい。酸化防止剤の含有量が0.1質量%以上であると、伸縮性樹脂層の十分な耐熱性が得られやすい。酸化防止剤の含有量が20質量%以下であると、ブリード及びブルームを抑制できる。
【0082】
酸化防止剤の分子量は、加熱中の昇華防止の観点から、400以上、600以上、又は750以上であってもよい。2種以上の酸化防止剤を含む場合、それらの分子量の平均が上記範囲であってもよい。
【0083】
熱安定剤(熱劣化防止剤)としては、高級脂肪酸の亜鉛塩とバリウム塩の組み合わせのような金属石けん又は無機酸塩、有機スズマレエート及び有機スズメルカプチドのような有機スズ化合物、並びに、フラーレン(例えば、水酸化フラーレン)が挙げられる。
【0084】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及び、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートに代表されるシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0085】
加水分解防止剤としては、例えば、カルボジイミド誘導体、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、酸無水物、オキサゾリン化合物、及びメラミン化合物が挙げられる。
【0086】
その他の劣化防止剤の例としては、ヒンダードアミン系光安定剤、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、カテキン、シュウ酸、マロン酸、及び亜リン酸エステルが挙げられる。
【0087】
伸縮性樹脂層は、例えば、(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)エステル系硬化剤、並びに、必要により他の成分を、有機溶剤に溶解又は分散して樹脂ワニスを得ることと、樹脂ワニスを後述の方法によって導体箔又はキャリアフィルムの上に成膜することとを含む方法により、製造することができる。
【0088】
ここで用いる有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドなどが挙げられる。溶解性及び沸点の観点から、トルエン、又はN,N-ジメチルアセトアミドを用いてもよい。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス中の固形分(有機溶媒以外の成分)濃度は、20~80質量%であってもよい。
【0089】
キャリアフィルムとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、液晶ポリマーなどのフィルムが挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、又はポリスルホンのフィルムをキャリアフィルムとして用いてもよい。
【0090】
キャリアフィルムの厚みは、特に制限されないが、3~250μmであってもよい。キャリアフィルムの厚みが3μm以上であるとフィルム強度が十分であり、キャリアフィルムの厚みが250μm以下であると十分な柔軟性が得られる。以上の観点から、厚みは5~200μm、又は7~150μmであってもよい。伸縮性樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等によりキャリアフィルムに離型処理が施されたフィルムを必要に応じて用いてもよい。
【0091】
必要に応じて、保護フィルムを伸縮性樹脂層上に貼り付け、導体箔又はキャリアフィルム、伸縮性樹脂層及び保護フィルムからなる3層構造の積層フィルムとしてもよい。
【0092】
保護フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどのフィルムが挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンのフィルムを保護フィルムとして用いてもよい。伸縮性樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等により保護フィルムに離型処理が施されていてもよい。
【0093】
保護フィルムの厚みは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、10~250μmであってもよい。厚みが10μm以上であるとフィルム強度が十分である傾向があり、250μm以下であると十分な柔軟性が得られる傾向がある。以上の観点から、厚みは15~200μm、又は20~150μmであってもよい。
【0094】
[配線基板の製造方法]
一実施形態に係る導体箔を有する配線基板は、例えば、伸縮性樹脂層と伸縮性樹脂層上に積層された導体箔とを有する積層板(導体基板)を準備する工程と、導体箔上にエッチングレジストを形成する工程と、エッチングレジストを露光し、露光後の上記エッチングレジストを現像して、導体箔の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンによって覆われていない部分の導体箔を除去する工程と、レジストパターンを除去する工程と、を含む方法により、製造することができる。
【0095】
伸縮性樹脂層及び導体箔を有する積層板(導体基板)を得る手法としては、どのような手法を用いてもよいが、伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物のワニスを導体箔に塗工する方法、及び、キャリアフィルム上に形成された伸縮性樹脂層に導体箔を真空プレス、ラミネータ等により積層する方法などがある。伸縮性樹脂層は、樹脂組成物を加熱して架橋成分の架橋反応(硬化反応)を進行させることで形成することができる。
【0096】
キャリアフィルム上の伸縮性樹脂層を導体箔に積層する手法としては、どのようなものでもよいが、ロールラミネータ、真空ラミネータ、真空プレス等が用いられる。生産効率の観点から、ロールラミネータ又は真空ラミネータを用いて成型してもよい。
【0097】
伸縮性樹脂層の乾燥後の厚みは、特に限定されないが、通常は5~1000μmである。上記の範囲であると、伸縮性樹脂層の十分な強度が得られ易く、かつ乾燥が十分に行えるため伸縮性樹脂層中の残留溶媒量を低減できる。
【0098】
伸縮性樹脂層の導体箔とは反対側の面に更に導体箔を積層することにより、伸縮性樹脂層の両面上に導体箔が形成された積層板を作製してもよい。伸縮性樹脂層の両面上に導体層を設けることにより、硬化時の積層板の反りを抑制することができる。
【0099】
積層板(配線基板形成用積層板)の導体箔に配線パターンを形成させる手法としては、一般的にエッチング等を用いた手法が用いられる。例えば導体箔として銅箔を用いた場合、エッチング液としては、例えば濃硫酸と過酸化水素水の混合溶液、塩化第二鉄溶液等を使用できる。
【0100】
エッチングに用いるエッチングレジストとしては、例えばフォテックH-7025(日立化成株式会社製、商品名)、及びフォテックH-7030(日立化成株式会社製、商品名)、X-87(太陽ホールディングス株式会社製、商品名)が挙げられる。エッチングレジストは、配線パターンの形成の後、通常、除去される。
【0101】
導体めっき膜を有する配線基板を製造する方法の一実施形態は、伸縮性樹脂層上に無電解めっきにより導体めっき膜を形成する工程と、導体めっき膜上にめっきレジストを形成する工程と、めっきレジストを露光し、露光後のめっきレジストを現像して、伸縮性樹脂層の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンによって覆われていない部分の導体めっき膜上に、電解めっきによって導体めっき膜を更に形成する工程と、レジストパターンを除去する工程と、無電解めっきによって形成された導体めっき膜のうち、電解めっきによって形成された導体めっき膜によって覆われていない部分を除去する工程と、を含む。
【0102】
配線基板を製造する方法の更に別の一実施形態は、伸縮性樹脂層上に形成された導体めっき膜上にエッチングレジストを形成する工程と、エッチングレジストを露光し、露光後のエッチングレジストを現像して、伸縮性樹脂層の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンによって覆われていない部分の導体めっき膜を除去する工程と、レジストパターンを除去する工程と、を含む。
【0103】
めっきのマスクとして用いるめっきレジストとしては、例えばフォテックRY3325(日立化成株式会社製、商品名)、及びフォテックRY-5319(日立化成株式会社製、商品名)、MA-830(太陽ホールディングス株式会社製、商品名)が挙げられる。その他、無電解めっき及び電解めっきの詳細については上述のとおりである。
【0104】
配線基板に各種の電子素子を搭載することにより、ストレッチャブルデバイスを得ることができる。
【実施例】
【0105】
本発明について以下の実施例を挙げて更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
<伸縮性樹脂層形成用の樹脂ワニスの作製>
(A)成分としてトルエンで希釈し不揮発分25質量%に調整した無水マレイン酸変性スチレンエチレンブタジエンゴム(KRATON株式会社製、商品名「FG1924GT」)80質量部(不揮発分の配合量)、(B)成分としてトルエンで希釈し不揮発分25質量%に調整したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EPICLON HP7200H」)11.1質量部(不揮発分の配合量)、(C)成分としてトルエンで希釈し不揮発分25質量%に調整したエステル系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「HPC8000-65T」、ジシクロペンタジエン型のジフェノール化合物)8.9質量部(不揮発分の配合量)、及び(D)成分として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名「1B2MZ」)3質量部を撹拌しながら混合して、樹脂ワニスを得た。
【0107】
<積層フィルムの作製>
キャリアフィルムとして離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA31」、厚み25μm)を準備した。このPETフィルムの離型処理面上にナイフコータ(株式会社康井精機製、商品名「SNC-350」)を用いて上記樹脂ワニスを塗布した。塗膜を乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名「MSO-80TPS」)中、100℃で20分の加熱により乾燥して、厚み100μmの樹脂層(硬化前の伸縮性樹脂層)を形成させた。形成された樹脂層に、キャリアフィルムと同じ離型処理PETフィルムを、離型処理面が樹脂層側になる向きで保護フィルムとして貼付けて、積層フィルムを得た。
【0108】
<導体基板の作製>
積層フィルムの保護フィルムを剥離し、露出した樹脂層に、表面粗さRaが1.5μmの粗化面を有する電解銅箔(古河電気工業株式会社製、商品名「F2-WS-12」)を、粗化面が樹脂層側になる向きで重ねた。その状態で、真空加圧式ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ株式会社製、商品名「V130」)を用いて、圧力0.5MPa、温度90℃及び加圧時間60秒の条件で電解銅箔を樹脂層にラミネートした。その後、乾燥機(株式会社二葉科学製、商品名「MSO-80TPS」)中、180℃で60分の加熱により、樹脂層の硬化物である伸縮性樹脂層と、導体層としての電解銅箔とを有する導体基板を得た。
【0109】
(実施例2~6及び比較例1~2)
樹脂ワニスの組成を表1に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂ワニス、積層フィルム及び導体基板を作製した。なお、表1中、「HP5000」は、ノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「EPICLON HP5000」)であり、「HPC8000-L-65MT」は、エステル系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「EPICLON HPC8000-L-65MT」、HPC8000-65Tの低分子量グレード)であり、「HPC8150-60T」は、エステル系硬化剤(DIC株式会社製、商品名「EPICLON HPC8150-60T」、ナフタレン骨格を有する化合物)である。また、表1中の各成分の配合量は不揮発分の配合量であり、単位は「質量部」である。
【0110】
[引張弾性率及び破断伸び率の測定]
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを180℃で60分加熱することにより樹脂層を硬化させて、伸縮性樹脂層を形成させた。キャリアフィルム及び保護フィルムを除去し、伸縮性樹脂層を長さ40mm、幅10mmの短冊状に切断して、試験片を得た。この試験片の引張試験をオートグラフ(株式会社島津製作所製、商品名「EZ-S」)を用いて行い、応力-ひずみ曲線を得た。得られた応力-ひずみ曲線から、引張弾性率及び破断伸び率を求めた。引張試験は、チャック間距離20mm、引張速度50mm/分の条件で行った。引張弾性率は、応力0.5~1.0Nの範囲の応力-ひずみ曲線の傾きから求めた。試験片が破断した時点のひずみを破断伸び率として記録した。結果を表1に示す。
【0111】
[回復率の測定]
上記引張弾性率及び破断伸び率の測定と同様にして、長さ40mm、幅10mmの短冊状の伸縮性樹脂層の試験片を作製した。この試験片を、オートグラフ(株式会社島津製作所製、商品名「EZ-S」)を用いて、引張速度100mm/分でひずみ20%まで伸長させ、その後応力を解放して初期位置に戻してから、再度引っ張り試験を行った。回復率Rは、1回目の引っ張り試験で加えたひずみ(変位量)をX、再度引っ張り試験を行ったときに荷重が掛かり始めるときの位置とXとの差をYとし、下記式により求めた。本試験において、Xは20%である。結果を表1に示す。
R(%)=Y/X×100
【0112】
[比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)の測定]
上記引張弾性率及び破断伸び率の測定と同様にして、80mm×80mmのサイズの伸縮性樹脂層の試験片を作製した。この試験片を用いて、空洞共振器法によりDk及びDfを算出した。測定器にはベクトル型ネットワークアナライザE8364B(キーサイトテクノロジー社製)、CP531(関東電子応用開発社製)及びCPMA-V2(プログラム)をそれぞれ使用して、雰囲気温度25℃、周波数10kHzの条件で測定を行った。結果を表1に示す。
【0113】
[耐熱性の評価]
実施例1~6及び比較例1~2で得られた積層フィルムを180℃で60分加熱することにより樹脂層を硬化させて、伸縮性樹脂層を形成させた。キャリアフィルム及び保護フィルムを除去してから、伸縮性樹脂層を窒素リフローシステム(田村製作所株式会社製、商品名「TNV-EN」)を用いて、IPC/JEDEC J-STD-020に準拠する
図3の温度プロファイルで加熱処理する工程を10回繰り返す耐熱性試験を行った。耐熱性試験後、上記と同様の方法で、伸縮性樹脂層の引張弾性率、破断伸び率及び回復率を測定した。その結果を、耐熱性試験前の測定結果と併せて表2及び表3に示す。
【0114】
[赤外線吸収スペクトル(IR)の測定]
比較例1の積層フィルムの樹脂層(硬化前の伸縮性樹脂層)及びそれを180℃で60分加熱して硬化した後の伸縮性樹脂層、並びに、実施例1及び3の積層フィルムの樹脂層を180℃で60分加熱して硬化した後の伸縮性樹脂層について、キャリアフィルム及び保護フィルムを除去した後、フーリエ変換赤外分光光度計(Bio-Rad社製、商品名「FTS3000MX」)を用いて、透過法により赤外線吸収スペクトルを測定した。
図4に、比較例1の硬化前後の伸縮性樹脂層の赤外線吸収スペクトルを、
図5に、実施例1、3及び比較例1の硬化後の伸縮性樹脂層の赤外線吸収スペクトルを、それぞれ示す。
【0115】
図4に示されるように、比較例1の伸縮性樹脂層では、硬化後に、硬化前には無かった水酸基の伸縮振動に帰属される3400cm
-1付近の吸収ピークが現れており、硬化反応により水酸基が生成したことが確認された。また、
図5に示されるように、実施例1及び3の伸縮性樹脂層では、水酸基の伸縮振動に帰属される吸収ピークがほぼ無く、水酸基の生成が抑制されていることが確認された。
【0116】
[配線基板の作製とその評価]
図2に示すような、伸縮性樹脂層3及び伸縮性樹脂層3上に形成された波型パターンを有する導体箔(電解銅箔)を導体層5として有する試験用の配線基板1を作製した。まず、伸縮性樹脂層表面に凹凸が形成された実施例及び比較例で得られた導体基板の導体層上にエッチングレジスト(日立化成株式会社製、商品名「フォテックRY-5325」)をロールラミネータで貼着し、そこに波型パターンを形成したフォトツールを密着させた。エッチングレジストを、オーク製作所社製EXM-1201型露光機を使用して、50mJ/cm
2のエネルギー量で露光した。次いで、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、240秒間スプレー現像を行い、エッチングレジストの未露光部を溶解させ、波型の開口部を有するレジストパターンを形成した。次いで、エッチング液により、レジストパターンによって覆われていない部分の銅箔を除去した。その後、剥離液によりエッチングレジストを除去し、配線幅が50μmで所定の方向Xに沿って蛇行する波型の配線パターンを形成している導体層5を伸縮性樹脂層3上に有する配線基板1を得た。
【0117】
得られた配線基板をXの方向に歪み10%まで引張変形させ、元に戻したときの、伸縮性樹脂層及び波型の配線パターンを観察した。その結果、実施例及び比較例のいずれの配線基板も、伸張時に伸縮性樹脂層及び配線パターンの破断を生じなかった。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1~6の導体基板は、比較例1~2の導体基板と比較して、優れた伸縮性を有すると共に、低い誘電正接を有することが確認された。また、表2及び表3に示した結果から明らかなように、実施例1~6の導体基板は、耐熱性試験後でも良好な伸縮性及び弾性率を維持できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の導体基板及びこれから得られる配線基板は、例えばウェアラブル機器の基板として適用することが期待される。
【符号の説明】
【0123】
1…配線基板、3…伸縮性樹脂層、5…導体層(導体箔又は導体めっき膜)。