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特許7468631アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/08 20060101AFI20240409BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G77/08
C08G77/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022515259
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010891
(87)【国際公開番号】W WO2021210333
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020073362
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 中
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋敬
(72)【発明者】
【氏名】井原 俊明
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107722276(CN,A)
【文献】特開2002-060393(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107629210(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)下記一般式(1):
【化1】
(式中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、aは3≦a≦6を満たす整数である。)
で表される環状オルガノポリシロキサンと、
(a2)下記平均組成式(2):
【化2】
(式中、R2は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、bは2以上の整数であり、cは0以上の整数であり、dは0以上の整数であり、eは0以上の整数であり、及び2≦b+c+d+e≦50である。ただし、前記R1及びR2のうち少なくとも2個はアルケニル基である。)
で表される直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンとを
(a1)成分中のR1 2SiO2/2単位と(a2)成分とをモル比で1:1~498:1の割合で配合し、
(a3)水分含有率1.6質量%以下である陽イオン交換樹脂
の存在下、反応時間20分以内で重合させることを特徴とする、下記平均組成式(3)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法(ただし、上記(a1)環状オルガノポリシロキサンとして、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを含むものを除く。)
【化3】
(式中、R3は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、R3のうち少なくとも2個はアルケニル基であり、fは2以上の整数であり、gは3以上の整数であり、hは0以上の整数であり、iは0以上の整数であり、及び10≦f+g+h+i≦500である。)
【請求項2】
前記(a1)成分及び(a2)成分の混合液を、前記陽イオン交換樹脂を充填したカラムに連続的に通過させ、重合を行う請求項1記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
前記陽イオン交換樹脂が、スチレンジビニルベンゼンスルホン酸共重合体である請求項1又は2記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
前記平均組成式(3)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が、1~1,000mPa・sである請求項1~のいずれか1項記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法に関する。より詳細には、原料の混合液を陽イオン交換樹脂の存在下で重合させる簡便な工程で、工業的に有利にアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造としては、原料に鎖状や環状のオルガノポリシロキサン、触媒に強酸や強塩基物質を使用して行われることが広く知られている。例えば、非特許文献1には、強酸として、塩酸、硫酸、リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等、強塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はこれらのシラノレート等を用いた製造例が示されている。
【0003】
一方で、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの用途としては、該オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンに白金族金属系触媒を加えた硬化性オルガノポリシロキサン組成物が数多く報告されており、紙やプラスチック等のシート状基材と粘着材料との接着や固着を防止するために、基材表面に該組成物の硬化皮膜を形成した剥離シートとしての利用が古くから知られている(特許文献1:特開昭47-32072号公報)。このようなヒドロシリル化反応で硬化皮膜を形成する方法は、硬化性に優れ、軽剥離から重剥離までの様々な剥離特性の要求に対して対応可能であることから広く用いられている。
【0004】
ヒドロシリル化反応により硬化して皮膜を形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物としては、該組成物を有機溶剤に溶解させたタイプ、乳化剤を用いて水に分散させてエマルジョンにしたタイプ、及び、溶剤を含まない無溶剤型タイプがある。溶剤タイプは人体や環境に対して有害であるという欠点を有する。エマルジョンタイプは水を除去するのに高いエネルギーを必要とし、更に、乳化剤が残存するため、得られる硬化皮膜は基材への密着性が低下するという問題がある。そのため近年では、無溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物が多く使用されている。
【0005】
無溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、塗工性の観点から、比較的低粘度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンが用いられており、前述したような需要の高まりから、より品質の安定した、より生産性の高い低コストのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造が望まれている。
【0006】
そのような生産性の高い製造方法としてイオン交換樹脂等の固体触媒の使用が報告されており、例えば、特許文献2(特表2012-512272号公報)には、イオン交換樹脂触媒の乾燥質量に対し6~19質量%の水を含有するイオン交換樹脂触媒の存在下で、少なくとも2つのシロキサンを反応させる工程を備えるシロキサンの製造方法が記載されている。イオン交換樹脂触媒中の水の含有量を規定することで、反応時間の短縮及びイオン交換樹脂触媒の再利用が可能となっているが、反応時に水の含有量を調整する必要があり、工程が煩雑となっている。また製造されるのはオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンについては言及されていない。
【0007】
特許文献3(特開2011-219647号公報)には、オルガノアルコキシシランと水とを、陽イオン交換樹脂を充填した筒状容器に連続的に通過させる、シラノール基含有オルガノシラン及びオルガノポリシロキサンの製造方法が記載されている。筒状容器に連続的に通過させるという非常に生産性の高い製造方法ではあるが、シラノール基含有オルガノポリシロキサンの製造方法についてであり、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンについては言及されていない。
【0008】
特許文献4~6(特開2012-140391号公報、特開2013-36000号公報、特開平7-316299号公報)には、種々のイオン交換樹脂を用いたオルガノポリシロキサンの製造方法が記載されているが、含有している官能基がシラノール基、アミノ基、(メタ)アクリル基であり、いずれもアルケニル基含有オルガノポリシロキサンについては言及されていない。また反応時間は5~24時間と非常に長いため、いずれも生産性が高い製造方法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭47-32072号公報
【文献】特表2012-512272号公報
【文献】特開2011-219647号公報
【文献】特開2012-140391号公報
【文献】特開2013-36000号公報
【文献】特開平7-316299号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】シリコーンハンドブック(伊藤邦雄編、日刊工業新聞社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、比較的低粘度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを提供すること、及び、該オルガノポリシロキサンをより生産性が高く低コストに製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、環状オルガノポリシロキサンと、アルケニル基を有する直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンとを特定配合割合とし、水を実質的に含有しない陽イオン交換樹脂の存在下、反応時間60分以内で重合させる製造方法により、上記の目的を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
[1]
(a1)下記一般式(1):
【化1】
(式中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、aは3≦a≦6を満たす整数である。)
で表される環状オルガノポリシロキサンと、
(a2)下記平均組成式(2):
【化2】
(式中、R2は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、bは2以上の整数であり、cは0以上の整数であり、dは0以上の整数であり、eは0以上の整数であり、及び2≦b+c+d+e≦50である。ただし、前記R1及びR2のうち少なくとも2個はアルケニル基である。)
で表される直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンとを
(a1)成分中のR1 2SiO2/2単位と(a2)成分とをモル比で1:1~498:1の割合で配合し、
(a3)水を実質的に含有しない陽イオン交換樹脂
の存在下、反応時間60分以内で重合させることを特徴とする、下記平均組成式(3)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【化3】
(式中、R3は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、R3のうち少なくとも2個はアルケニル基であり、fは2以上の整数であり、gは3以上の整数であり、hは0以上の整数であり、iは0以上の整数であり、及び10≦f+g+h+i≦500である。)
[2]
前記(a1)成分及び(a2)成分の混合液を、前記陽イオン交換樹脂を充填したカラムに連続的に通過させ重合を行う[1]記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
[3]
前記陽イオン交換樹脂が、水分含有率1.6質量%以下である[1]又は[2]記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
[4]
前記陽イオン交換樹脂が、スチレンジビニルベンゼンスルホン酸共重合体である[1]~[3]のいずれかに記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
[5]
前記平均組成式(3)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が、1~1,000mPa・sである[1]~[4]のいずれかに記載のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、強酸や強塩基物質を触媒とした従来の製造方法に比べ、より生産性が高く、かつ低コストで簡略化された工程により、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の製造方法について、より詳細に説明する。
本発明は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。該製造方法により得られるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(3)で表される。
【化4】
(式中、R3は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、R3のうち少なくとも2個はアルケニル基であり、fは2以上の整数であり、gは3以上の整数であり、hは0以上の整数であり、iは0以上の整数であり、及び10≦f+g+h+i≦500である。)
【0016】
本発明の製造方法は、(a1)下記一般式(1)で表される環状オルガノポリシロキサンと、(a2)下記平均組成式(2)で表される直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンとを特定割合で配合し、(a3)水を実質的に含有しない陽イオン交換樹脂の存在下、反応時間60分以内で重合させることを特徴とする。
【化5】
(式中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、aは3≦a≦6を満たす整数である。)
【化6】
(式中、R2は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、bは2以上の整数であり、cは0以上の整数であり、dは0以上の整数であり、eは0以上の整数であり、及び2≦b+c+d+e≦50である。ただし、前記R1及びR2のうち少なくとも2個はアルケニル基である。)
【0017】
[(a1)成分]
(a1)成分は、下記一般式(1)で表される環状オルガノポリシロキサンである。
【化7】
(式中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、aは3≦a≦6を満たす整数である。)
【0018】
上記式(1)中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12、好ましくは1~10の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びオクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のアリール基;ベンジル基、及びフェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、及び臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、及び3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。R1として、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、更に好ましくはメチル基又はビニル基であるが、(a2)成分との相溶性の観点から全R1の70モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0019】
上記式(1)中、aは3≦a≦6を満たす整数であり、好ましくは3≦a≦5を満たす整数である。aが6より大きいと(a1)成分の反応性が低下し、設定した構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを得られない可能性がある。
【0020】
上記式(1)の環状オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のジメチルシロキサン環状体;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のメチルビニルシロキサン環状体;オクタフェニルシクロテトラシロキサン等のジフェニルシロキサン環状体;トリメチルトリフルオロプロピルシクロトリシロキサン等のメチルトリフルオロプロピルシロキサン環状体等が挙げられる。これらの中では、原料調達の容易さの点から、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のジメチルシロキサン環状体が好ましく、また、架橋点としてのアルケニル基導入の点からはメチルビニルシロキサン環状体の併用が好ましい。
これらの環状オルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0021】
[(a2)成分]
(a2)成分は、下記平均組成式(2)で表される直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンである。(a2)成分は末端封止剤であり、重合反応を停止させることにより、重合度を調節するために配合するものである。
【化8】
(式中、R2は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、bは2以上の整数であり、cは0以上の整数であり、dは0以上の整数であり、eは0以上の整数であり、及び2≦b+c+d+e≦50である。ただし、前記R1及びR2のうち少なくとも2個はアルケニル基である。)
【0022】
上記式(2)において、R2で表される一価炭化水素基としては、前記(a1)成分にて例示した一価炭化水素基が挙げられ、中でもメチル基又はビニル基が好ましく、全R2の70モル%以上がメチル基であるのがよい。メチル基の割合が全R2の70モル%未満であると前記(a1)成分との相溶性に劣り、(a1)成分と(a2)成分の混合液が白濁分離してしまい製造がうまくいかないおそれがある。
上記(a1)成分の式(1)及び(a2)成分の式(2)において、R1及びR2のうち少なくとも2個、好ましくは2~20個はアルケニル基である。アルケニル基は前記R1及びR2のどちらにあってもよいが、末端にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを得るためには、上記式(2)のR2 3SiO1/2単位(M単位)のR2のうち、少なくとも1個がアルケニル基であることが好ましい。
【0023】
上記式(2)において、bは2以上の整数、好ましくは2~15の整数であり、cは0以上の整数、好ましくは0~20の整数であり、dは0以上の整数、好ましくは0~15の整数であり、eは0以上の整数、好ましくは0~10の整数であり、及び2≦b+c+d+e≦50であり、好ましくは2≦b+c+d+e≦40であり、より好ましくは2≦b+c+d+e≦30である。b+c+d+eが上記上限値を超えると末端封止剤としての反応性が低下し、目的とするアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを得ることができない。
【0024】
平均組成式(2)で表される直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記構造で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式において、Me、Viはそれぞれメチル基、ビニル基を表す(以下同様)。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。これらの直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンは1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0025】
【化9】
(0≦z1≦48)
【化10】
(0≦z2≦48)
【化11】
(0≦z3≦46、2≦z4≦48、2≦z3+z4≦48)
【化12】
(0≦z5≦47、1≦z6≦48、1≦z5+z6≦48)
【化13】
(0≦z7≦46、0≦z8≦46、1≦z9≦24、2≦z7+((z8+2)×z9)≦48)
【化14】
(0≦z10≦45、0≦z11≦43、0≦z12≦22、0≦z13≦45、0≦z14≦45、1≦z15≦16、3≦z10+((z11+2)×z12)+((z13+z14+3)×z15)≦48)
【0026】
本発明で使用される(a1)成分と(a2)成分との配合比は、求めるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの重合度に応じて変化させることができるが、(a1)成分中のR1 2SiO2/2単位(D単位)と(a2)成分とをモル比で1:1~498:1とすることが好ましく、より好ましくは2:1~400:1、更に好ましくは3:1~300:1である。(a2)成分が少なすぎると末端源が不足してしまい高粘度化する場合があり、多すぎると末端源が過剰となり低粘度化する場合がある。
【0027】
[(a3)成分]
(a3)成分は、前記(a1)成分と(a2)成分とを重合させる触媒として作用する陽イオン交換樹脂である。本発明に使用される陽イオン交換樹脂は、ドライタイプと呼ばれる水分含有率が1.6質量%以下と、実質的に水分を含んでいないものが好ましい。このような陽イオン交換樹脂以外を使用した場合、触媒としての性能が劣るために、目的とした重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとならない。
【0028】
本発明の陽イオン交換樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンが共重合した骨格からできているスチレンジビニルベンゼンスルホン酸共重合体であることが好ましいが、骨格中のフェニル基に結合しているスルホン基がH+型となっている多孔性のマイクロポーラス型陽イオン交換樹脂がより好適である。
【0029】
このような陽イオン交換樹脂は市販品から入手することができ、例えば、アンバーリスト15JS-HG・DRY(オルガノ社製、スチレンジビニルベンゼンスルホン酸共重合体、マイクロポーラス型、水分含有率1.6質量%以下)、デュオライトSC100(住友化学CHEMTEX社製、スチレンジビニルベンゼンスルホン酸共重合体、マイクロポーラス型、水分含有率1.5質量%以下)等が挙げられる。
【0030】
[製造方法]
上記(a3)成分の陽イオン交換樹脂を用いたアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法としては、バッチ式又は連続式のどちらを用いることも可能である。
【0031】
バッチ式の製造方法
バッチ式の場合は、前記(a1)成分と(a2)成分の混合液に前記(a3)成分の陽イオン交換樹脂を添加し、所定の温度と時間で反応させる。その後陽イオン交換樹脂を濾過し、中和後に加熱減圧下で未反応の低分子シロキサン等を除去(ストリッピング工程)することでアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを容易に得ることができる。
【0032】
ここで、バッチ式の場合の陽イオン交換樹脂の添加量は、前記(a1)成分と(a2)成分の合計量に対して好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.01~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%である。陽イオン交換樹脂の使用量が上記下限値未満では重合が不十分となる場合があり、上記上限値を超えるとシロキサンが吸着され、収率の低下等に繋がるおそれがある。
【0033】
また、バッチ式の場合の反応温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは25~125℃、更に好ましくは50~100℃であり、反応時間は、好ましくは60分以内、より好ましくは1~60分、更に好ましくは5~50分である。この反応温度が上記下限値未満では重合が不十分となる場合があり、上記上限値を超えると陽イオン交換樹脂の劣化等を招く危険性があるため好ましくない。また反応時間が上記下限値未満では重合が不十分となる場合があり、上記上限値を超えてもそれ以上反応が進行しないことから非効率的である。
【0034】
バッチ式の中和工程は様々な手法が知られているが、その中でも簡便なものとして、前記(a1)成分と(a2)成分の重合物をハイドロタルサイト類により処理する手法が知られている。ハイドロタルサイト類は、層状構造をしたマグネシウム、アルミニウムを含む化合物であり、商品名としてキョーワード300、500SH、1000(協和化学工業社製)等が挙げられる。添加量としては、該重合物100質量部に対して好ましくは0.01~1質量部であり、より好ましくは0.05~0.8質量部であり、更に好ましくは0.1~0.6質量部である。添加量が上記下限値未満では該重合物中に残存する(a3)成分から溶出する酸触媒を十分に除去することが困難となる場合があり、上記上限値を超えるとマグネシウムイオンやアルミニウムイオン等のイオン性不純物が多くなり好ましくない。また、ハイドロタルサイト類で処理する条件は、該重合物の粘度や不純物の量により異なるため限定されないが、一般的に処理温度は0~80℃、好ましくは20~60℃であり、処理時間は1~5時間、好ましくは1~3時間である。処理後は濾過を行うことで、ハイドロタルサイト類の除去が可能である。
【0035】
バッチ式のストリッピング工程は、上記手法で中和した後の前記(a1)成分と(a2)成分の重合物をフラスコ等に入れ、任意の温度・時間で未反応の低分子シロキサン等をストリッピングすることで行われる。この場合、温度は好ましくは50~200℃、より好ましくは80~180℃であり、時間は好ましくは0.5~10時間、より好ましくは1~8時間である。ストリッピングの温度・時間が上記下限値未満ではストリッピングとして不十分であり、未反応の低分子シロキサン等が残存する可能性がある。また上記上限値を超えると、該重合物の官能基の離脱や主鎖の切断等が起こり、所望のオルガノポリシロキサンが得られない可能性がある。なお必要に応じて減圧下でストリッピングを行ってもよいが、その場合の圧力は50mmHg以下、好ましくは30mmHgである。
【0036】
連続式の製造方法
以上のように陽イオン交換樹脂を用いたアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造はバッチ式で行うことも可能であるが、より生産性が高く低コストに製造する方法としては連続式の方が好ましい。連続式では、陽イオン交換樹脂を充填したカラム(例えば、円筒状などの筒状カラム)の中を、前記(a1)成分と(a2)成分の混合液を連続的に通過させて重合を行う。
【0037】
ここで、連続式の場合の陽イオン交換樹脂(a3)の使用量は、充填するカラムの体積の約8割を満たす量で使用すればよい。使用量が少なすぎると重合が不十分となる場合があり、使用量が多すぎると陽イオン交換樹脂が使用中に湿潤して膨張することからカラムの破損に繋がる可能性がある。
【0038】
この場合、使用する原料(前記(a1)成分及び(a2)成分)と触媒である陽イオン交換樹脂の反応性から、滞留時間や、温度等の反応条件は適宜決めればよい。一般的には、前述したバッチ式の反応条件と同様に、反応温度は好ましくは0~150℃、より好ましくは25~125℃、更に好ましくは50~100℃であり、滞留時間は好ましくは60分以内、より好ましくは1~60分、更に好ましくは5~50分である。連続式では重合後に陽イオン交換樹脂の濾過がないため、バッチ式に比べてより生産性の高い製造が可能である。
【0039】
更に連続式の場合、以下の工程(中和・ストリッピング)も連続して行われる。すなわち中和工程では、前記(a1)成分と(a2)成分の重合物を、中和用のイオン交換樹脂を充填したカラム(例えば、円筒状などの筒状カラム)に連続的に通過させることで中和を行う。該イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合してなるイオン交換樹脂を用いることが好ましく、例えば、デュオライトUP6000、デュオライトUP7000、スミカイオンMB77(いずれも住友化学CHEMTEX社製)、アンバーリストMSPS2-1・DRY(オルガノ社製)等が挙げられる。ここでも中和塩やハイドロタルサイト類のような中和剤の濾過が必要ないため、生産性の高い製造が可能となる。
ここで、中和用のイオン交換樹脂の使用量は、充填するカラムの体積の約8割を満たす量で使用すればよい。使用量が少なすぎると中和が不十分となる場合があり、使用量が多すぎると中和用のイオン交換樹脂が使用中に湿潤して膨張することからカラムの破損に繋がる可能性がある。
中和工程における温度は好ましくは0~120℃、より好ましくは30~100℃、更に好ましくは50~80℃であり、滞留時間は好ましくは60分以内、より好ましくは1~60分、更に好ましくは5~50分である。
【0040】
連続式のストリッピング工程としては、例えば薄膜蒸留装置を用いた短経路蒸留が挙げられる。薄膜蒸留装置は、前記(a1)成分と(a2)成分の重合物を薄膜状に拡散させる撹拌駆動装置と、該重合物薄層を減圧下で加熱し蒸発・濃縮させる加熱及び蒸発/濃縮部を具備した、公知の使用の装置であってよい。そのような装置のいずれでも、蒸留操作は、その装置の操作に通常用いられる方法により行うことができる。具体的には、薄膜蒸留における温度は好ましくは100~280℃、より好ましくは150~250℃である。温度が上記下限値未満の場合は、未反応の低分子シロキサン等が十分に留去されず最終生成物の純度低下に繋がる場合があるため好ましくない。また、上記上限値を超えると該重合物の高粘度化やゲル化を生じるおそれがある。薄膜蒸留における圧力は任意に変更できるが、好ましくは1×10-7~5mmHg、より好ましくは1×10-6~3mmHgである。圧力が上記下限値未満の場合は、該重合物の目的物と未反応の低分子シロキサン等の沸点差が縮まることから目的物まで留去してしまい、最終生成物の純度低下に繋がる場合があるため好ましくない。また、上記上限値を超えると、未反応の低分子シロキサン等が十分に留去されず最終生成物の純度低下に繋がるおそれがある。更にフィード速度も薄膜蒸留における重要なファクターであるが、好ましくは0.1~10g/分であり、より好ましくは1~5g/分である。フィード速度が上記下限値未満の場合は減圧蒸留の効率が低下し、工業的に不利であるため好ましくない。上記上限値を超えると分離効率が悪化し、最終生成物の純度低下に繋がるおそれがある。
【0041】
[生成物]
本発明の製造方法により得られるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、上述した通り、下記平均組成式(3)で表される。該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【化15】
(式中、R3は互いに独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、R3のうち少なくとも2個はアルケニル基であり、fは2以上の整数であり、gは3以上の整数であり、hは0以上の整数であり、iは0以上の整数であり、及び10≦f+g+h+i≦500である。)
【0042】
上記式(3)中、R3で表される一価炭化水素基としては、前記一般式(1)においてR1にて例示した一価炭化水素基が挙げられ、中でもメチル基又はビニル基が好ましく、硬化性が良好であることから全R3の70モル%以上がメチル基であるのがよい。
3のうち少なくとも2個はアルケニル基であり、2個未満では硬化後も未架橋分子が残る可能性が高く、硬化性が低下するため望ましくない。より詳細には、アルケニル基の含有量は、該アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100g当たり、好ましくは0.001モル以上1モル未満であり、より好ましくは0.005モル以上0.8モル以下、更に好ましくは0.01モル以上0.6モル以下である。上記上限値を超える場合も、アルケニル基が過剰となり硬化性が低下するため望ましくない。
【0043】
該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、1~1,000mPa・s、好ましくは3~900mPa・s、より好ましくは5~800mPa・sである。詳細は後述するが、該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び、白金族金属系触媒と共に使用され、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することが可能である。更に該組成物は、シート状基材の少なくとも1面に塗工され、加熱硬化により該組成物の硬化物からなる層を有する剥離シートを提供することが可能である。このように、該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを該組成物の主剤として用いた場合には、塗工性の観点から、上記粘度であることが好ましい。上記上限値を超える及び下限値未満のいずれの場合も、該組成物の塗工性が低下するおそれがあるため好ましくない。なお、本発明において、粘度はB型粘度計(例えば東機産業社製の「TVB-10M型」)を用いて測定することができる。ロータや回転数は粘度に応じて適宜選定されるが、例えば粘度500mP・s前後であれば、ロータTM3、回転数60rpmで測定することができる(以下同様)。
【0044】
上記式(3)中、fは2以上の整数、好ましくは2~15の整数であり、gは3以上の整数、好ましくは8~498の整数であり、hは0以上の整数、好ましくは0~15の整数であり、iは0以上の整数、好ましくは0~10の整数であり、及び10≦f+g+h+i≦500であり、好ましくは10≦f+g+h+i≦400であり、より好ましくは10≦f+g+h+i≦300である。f+g+h+iが上記上限値を超える及び下限値未満いずれの場合も、上述したように、該アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤として用いた場合に、該組成物の塗工性が低下する。
なお、f+g+h+iは、式(3)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの製造に用いた式(2)で表される直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンのb+c+d+eの値より大きい。
【0045】
本発明の製造方法により得られるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
【0046】
【化16】
(8≦z16≦498)
【化17】
(8≦z17≦498)
【化18】
(0≦z18≦496、2≦z19≦498、8≦z18+z19≦498)
【化19】
(0≦z20≦497、1≦z21≦498、8≦z20+z21≦498)
【化20】
(0≦z22≦496、0≦z23≦496、1≦z24≦249、8≦z22+((z23+2)×z24)≦498)
【化21】
(0≦z25≦495、0≦z26≦493、0≦z27≦247、0≦z28≦495、0≦z29≦495、1≦z30≦166、8≦z25+((z26+2)×z27)+((z28+z29+3)×z30)≦498)
【0047】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物]
本発明は、更には、該製造方法により得られた上記平均組成式(3)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、及び、白金族金属系触媒(C)を含む、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することが可能である。また、シート状基材と、該基材の少なくとも1面に該組成物の硬化物からなる層とを有する剥離シートを提供することが可能である。
【0048】
[(B)成分]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、SiH基という)を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、付加反応型オルガノポリシロキサン組成物に使用される公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0049】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中にあるSiH基と、上記(A)成分中にあるアルケニル基とが付加反応して硬化し皮膜を形成する。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(4)で表される。
4 jkSiO(4-j-k)/2・・・(4)
(式中、R4は互いに独立に、脂肪族不飽和炭化水素基を除く、非置換又は置換の、炭素数1~12の一価炭化水素基を表し、但し、全R4の少なくとも50モル%はメチル基であり、j及びkは、0.7≦j≦2.1、0.001≦k≦1.0、かつ0.8≦j+k≦3.0を満たす正数である。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水素原子を有する。)
【0050】
上記式(4)中、R4は互いに独立に、脂肪族不飽和炭化水素基を除く、非置換又は置換の、炭素原子数1~12、好ましくは1~10の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びオクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のアリール基;ベンジル基、及びフェネチル基等のアラルキル基;又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基等で置換した一価炭化水素基が挙げられる。R4として、好ましくはアルキル基であり、更に好ましくはメチル基であるが、硬化性及び剥離力が低いことから、全R4の50モル%以上、典型的には60~100モル%がメチル基であることが好ましい。メチル基の割合が全R4の50モル%未満の場合、(A)成分との相溶性に劣り、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が白濁する、もしくは相分離するおそれがある。
【0051】
上記式(4)中、jは0.7≦j≦2.1、好ましくは1.0≦j≦2.0を満たす正数であり、kは0.001≦k≦1.0、好ましくは0.01≦k≦0.98を満たす正数であり、j+kは0.8≦j+k≦3.0、好ましくは1.3≦j+k≦2.5を満たす正数である。
【0052】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、それらの混合物であってもよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、R4HSiO2/2単位、HSiO3/2単位、及びR4 2HSiO1/2単位の少なくとも1種を有し、場合により更にR4 2SiO2/2単位、R4SiO3/2単位、及びR4 3SiO1/2単位の少なくとも1種を含んでなるポリマー又はコポリマーが例示される。R4は上記の通りである。R4HSiO2/2単位又はR4 2HSiO1/2単位を合計して1分子中に少なくとも2個有するものであることが好ましい。また、SiO4/2単位を含有していてもよく、その量は本発明の効果が損なわれない範囲であればよい。
【0053】
なお、SiH基の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に2~300個有し、好ましくは3~200個、より好ましくは5~100個である。SiH基の個数が上記下限値未満又は上記上限値を超えると、硬化性が低下する場合や密着性が低下する場合がある。
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中のケイ素原子数(又は重合度)が2~502個、特に10~100個程度のものが好ましい。
【0054】
(B)成分は、25℃における粘度が好ましくは0.1~5,000mPa・s、より好ましくは0.3~3,000mPa・s、更に好ましくは0.5~1,000mPa・sである。粘度が低すぎると硬化性が低下する場合があり、高すぎると塗工性が低下する場合がある。
【0055】
(B)成分としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は下記に制限されるものでない。
【化22】
(2≦z31≦300)
【化23】
(2≦z32≦300、1≦z33≦498、2≦z32+z33≦500)
【化24】
(0≦z34≦298、0≦z35≦500、0≦z34+z35≦500)
【化25】
(0≦z36≦300、0≦z37≦300、1≦z38≦248、2≦z36+z37≦300、2≦z36+((z37+2)×z38)≦500)
【化26】
(0≦z39≦300、0≦z40≦300、0≦z41≦246、0≦z42≦300、0≦z43≦300、1≦z44≦165、2≦z39+z40+z42+z43≦300、2≦z39+((z40+2)×z41)+((z42+z43+3)×z44)≦500)
【0056】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のアルケニル基の個数に対する(B)成分中のSiH基の個数の比が、好ましくは0.5~5、より好ましくは0.7~4、更に好ましくは1~3となる量である。上記個数比が上記下限値より小さいと、硬化皮膜と基材との密着性が低下する場合がある。また上記上限値より大きいと、得られる剥離シートが重剥離化し(すなわち、粘着材料を剥離シートから剥離するのに強い力を要する)、剥離後に粘着材料に残留する接着強度(残留接着強度)が低下してしまう場合がある。
【0057】
[(C)成分]
(C)成分は、上記(A)成分及び(B)成分との付加反応を促進するための白金族金属系触媒である。いわゆるヒドロシリル化反応を促進する触媒であればよく、公知の触媒を使用することができる。白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等の触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましく用いられる。この白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸又は白金の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
【0058】
(C)成分の配合量は触媒量であればよい。触媒量とは上記付加反応を促進できる有効量である。良好な硬化皮膜を得ると共に経済的な見地から、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の全質量、特には(A)成分及び(B)成分の合計質量に対して、白金族金属の質量として10~200ppmとすることが好ましい。該白金族金属系触媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0059】
[その他の成分]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記(A)~(C)成分以外にも、その他の任意の成分を配合することができる。例えば下記の成分が挙げられる。その他の成分は、各々、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0060】
・ポットライフ延長剤
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、ポットライフを確保するために、(D)ポットライフ延長剤を更に含有することができる。ポットライフ延長剤は、上記(C)成分の白金族金属系触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、従来から公知のものを用いることができる。例えば、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、及び有機クロロ化合物などが挙げられる。
【0061】
より詳細には、例えば、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニルシクロヘキサノール等のアセチレン系アルコール、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のアセチレン系化合物、これらのアセチレン系化合物とアルコキシシラン又はシロキサンあるいはハイドロジェンシランとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物及びその他の有機リン化合物、オキシム化合物、及び有機クロロ化合物等が挙げられる。これら化合物の配合量は、良好なポットライフが得られる量であればよい。一般に(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、より好ましくは0.05~5質量部である。ポットライフ延長剤を適量添加することにより、剥離剤組成物は室温での長期貯蔵安定性及び加熱硬化性により優れたものとなる。
【0062】
・(A)成分以外のアルケニル基含有化合物
本発明の組成物には、(A)成分以外にも、(B)成分と付加反応するアルケニル基含有化合物を配合してもよい。(A)成分以外のアルケニル基含有化合物としては、硬化物の形成に関与するものが好ましく、1分子あたり1個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。その分子構造は、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等いずれでもよい。
【0063】
更に、上記オルガノポリシロキサン以外のアルケニル基含有有機化合物を配合することも可能である。例えば、αオレフィン、ブタジエン、多官能性アルコールから誘導されたジアクリレートなどのモノマー;ポリエチレン、ポリプロピレン又はスチレンと他のエチレン性不飽和化合物(例えば、アクリロニトリル又はブタジエン)とのコポリマーなどのポリオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸のエステル等の官能性置換有機化合物から誘導されたオリゴマー又はポリマーが挙げられる。これらのアルケニル基含有化合物は室温で液体であっても固体であってもよい。
【0064】
・その他の任意成分
更に、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて、公知の酸化防止剤、顔料、安定剤、帯電防止剤、消泡剤、密着向上剤、増粘剤、又はシリカ等の無機充填剤を配合することができる。配合量は従来技術に従い適宜選択されればよい。
【0065】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じてポットライフ延長剤や任意成分をそれぞれの所定量混合することによって得られる。ポットライフの面からは、上記(A)成分、(B)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(C)白金族金属系触媒を使用直前に添加する方法が好ましい。
【0066】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、25℃における粘度が50~1,000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは80~800mPa・s、更に好ましくは100~600mPa・sである。粘度が上記範囲外では、基材上に硬化皮膜を形成する際に塗工できない、又は塗工できたとしても均一な皮膜とならない等の問題を生じることがある。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、粘度が低く、溶媒を必要としないことから、無溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物とすることができる。
【0067】
[塗工品(剥離シート)]
本発明は、更に、シート状基材と、該基材表面の片面又は両面に、上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化皮膜とを有する剥離シートを提供する。該基材表面の片面又は両面に、上記硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工し、加熱することにより硬化皮膜を形成することができる。
【0068】
塗工方法及び加熱硬化条件は特に制限されず、適宜選択されればよいが、例えば、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をそのまま、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター等による塗工、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等の塗工方法を用いて、紙、フィルム等のシート状基材の片面又は両面上に0.01~100g/m2塗工した後、50~200℃で1~120秒間加熱することにより、基材上に硬化皮膜を形成させることができる。基材の両面に剥離層を作る場合は、基材の片面ずつ硬化皮膜の形成操作を行うことが好ましい。
【0069】
なお、本発明において、剥離シートとは、シート状基材が紙であるものに加え、公知の各種フィルム等で形成されたものも含む。基材の例としては、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、クレーコート紙等各種コート紙、ユポ等合成紙、ポリエチレンフィルム、CPPやOPP等のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリフェノールフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。また人工皮革、セラミックシート、両面セパレーター等の製造用の工程紙を基材として使用することも可能である。これらの基材と剥離層の密着性を向上させるために、基材面にコロナ処理、エッチング処理、プライマー処理あるいはプラズマ処理したものを用いてもよい。
【実施例
【0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、下記に挙げる重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)分析(溶媒:トルエン、ポリスチレン換算)により求め、粘度は25℃において回転粘度計を用いて測定した値である。反応途中で測定した揮発分(未反応の低分子シロキサン等)は、直径6cmのアルミシャーレに反応物を約1.5g入れ、開放系で150℃×30分間加熱後の反応物の残存量から算出した。ビニル基の含有割合はJIS K0070に記載のヨウ素価測定法に準じた方法で測定した。また各アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの構造は、29Si-NMRにより決定されたものである。
【0071】
また実施例及び比較例で以下の各原料を用いた。下記式中、Meはメチル基、Viはビニル基である。
(a1)成分
(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン
(a1-2)テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン
【0072】
(a2)成分
(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン
(a2-2)下記式で表される直鎖状オルガノポリシロキサン
【化27】
(a2-3)下記式で表される分岐状オルガノポリシロキサン
【化28】
【0073】
(a3)成分
(a3-1)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト15JS-HG・DRY
マイクロポーラス型、水分含有率1.6質量%以下
(a3-2)住友化学CHEMTEX社製陽イオン交換樹脂デュオライトSC100
マイクロポーラス型、水分含有率1.5質量%以下
【0074】
(a4)成分:比較例用成分
(a4-1)下記式で表される直鎖状オルガノポリシロキサン
【化29】
(a4-2)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト31WET
ゲル型、水分含有率63~67質量%
【0075】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの調製
[実施例1]
温度計、攪拌羽を備え、窒素置換した300mlのセパラブルフラスコに、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン149.8g(D単位(Me2SiO2/2単位、Meはメチル基である)2.0モル)、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン3.7g(0.02モル)、(a3-1)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト15JS-HG・DRYを15.4g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して10質量%)加え、80℃で30分間加熱撹拌した。反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると12質量%であり、反応が進行していることを確認した。反応物を濾過し、陽イオン交換樹脂を除去した後、協和化学工業社製キョーワード500SHを0.55g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して3,600ppm)加え、50℃で2時間加熱撹拌した(中和工程)。キョーワード500SHを濾過により除去した後、反応物をセパラブルフラスコに入れ、150℃、5mmHgにて3時間減圧ストリッピングすることで、25℃における粘度190mPa・sを有する、下記平均組成式で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-1)を得た。重量平均分子量は12,600であり、ビニル基の割合は0.026モル/100g(理論値0.026モル/100g)であった。
(A-1)
【化30】
【0076】
[実施例2]
内径が直径22mmで長さ120mmの円筒形状のカラムに(a3-1)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト15JS-HG・DRYを内容積の8割程度充填し、次に、重合温度が80℃、滞留時間が20分となるように、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン97.58質量%、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン2.42質量%となる割合(モル比で(a1-1)中のD単位/(a2-1)=100)の混合液をカラムに連続的に通過させた。反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると12質量%であり、反応が進行していることを確認した。更に内径が直径22mmで長さ120mmの円筒形状のカラムにオルガノ社製イオン交換樹脂アンバーリストMSPS2-1・DRYを内容積の8割程度充填し、そこへ先ほどの重合物を、中和温度が50℃、滞留時間が20分となるように連続的に通過させ中和を行った。中和後の重合物を、薄膜式蒸留装置(柴田科学社製MS-300型、回転型薄膜蒸留装置)を用いて温度150℃、圧力0.30mmHg、フィード速度2.0g/分で連続的にストリッピングすることで、25℃における粘度190mPa・sを有する、下記平均組成式で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-2)を得た。重量平均分子量は11,800であり、ビニル基の割合は0.026モル/100g(理論値0.026モル/100g)であった。
(A-2)
【化31】
【0077】
[実施例3~7]
実施例2で使用した原料を下記表1に記載の原料に変更した他は実施例2の合成例に従って、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-3)~(A-7)を得た。各々の平均組成の構造を下記式に示す。また得られたアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの物性について、表1にまとめた。なお、(a1-2)中のD単位はMeViSiO2/2単位(Meはメチル基、Viはビニル基)である。
【0078】
【表1】
【0079】
(A-3)
【化32】
(A-4)
【化33】
(A-5)
【化34】
(A-6)
【化35】
(A-7)
【化36】
【0080】
[比較例1]
内径が直径22mmで長さ120mmの円筒形状のカラムに(a3-1)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト15JS-HG・DRYを内容積の8割程度充填し、次に、重合温度が80℃、滞留時間が20分となるように、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン29.26質量%、(a4-1)直鎖状オルガノポリシロキサン70.74質量%となる割合(モル比で(a1-1)中のD単位/(a4-1)=30)の混合液をカラムに連続的に通過させた。しかしながら、反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると34質量%であり、反応が十分に進行していなかった。
【0081】
[比較例2]
内径が直径22mmで長さ120mmの円筒形状のカラムに(a4-2)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト31WETを内容積の8割程度充填し、次に、重合温度が80℃、滞留時間が20分となるように、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン97.58質量%、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン2.42質量%となる割合(モル比で(a1-1)中のD単位/(a2-1)=100)の混合液をカラムに連続的に通過させた。しかしながら、反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると98質量%であり、反応がまったく進行していなかった。
【0082】
[比較例3]
内径が直径22mmで長さ120mmの円筒形状のカラムに(a3-1)オルガノ社製陽イオン交換樹脂アンバーリスト15JS-HG・DRYを内容積の8割程度充填し、次に、重合温度が80℃、滞留時間が50分となるように、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン99.52質量%、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン0.48質量%となる割合(モル比で(a1-1)中のD単位/(a2-1)=525、すなわち前記平均組成式(3)中のf+g+h+i=527)の混合液をカラムに連続的に通過させた。しかしながら、反応物の粘度が高くなってしまい、設定通りの流速で反応を続けることができなかった。また前記円筒形状のカラム内の内圧が高くなりすぎてしまい、安全性の面からスケールアップは困難な処方であった。
【0083】
[比較例4]
温度計、攪拌羽を備え、窒素置換した300mlのセパラブルフラスコに、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン149.8g(D単位2.0モル)、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン3.7g(0.02モル)、触媒としてKOHを0.0046g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して30ppm)加え、150℃で20分間加熱撹拌した。しかしながら、反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると41質量%であり、反応が十分に進行していなかった。
【0084】
[比較例5]
温度計、攪拌羽を備え、窒素置換した300mlのセパラブルフラスコに、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン149.8g(D単位2.0モル)、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン3.7g(0.02モル)、触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸を0.092g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して600ppm)加え、50℃で20分間加熱撹拌した。しかしながら、反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると35質量%であり、反応が十分に進行していなかった。
【0085】
[比較例6]
温度計、攪拌羽を備え、窒素置換した300mlのセパラブルフラスコに、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン149.8g(D単位2.0モル)、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン3.7g(0.02モル)、触媒としてKOHを0.0046g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して30ppm)加え、150℃で8時間加熱撹拌した。反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると13質量%であり、反応が進行していることを確認した。そこへ2-クロロエタノールを0.060g(モル比で2-クロロエタノール/KOH=9)加え、150℃で1時間加熱撹拌した(中和工程)。得られた反応物を150℃、5mmHgにて3時間減圧ストリッピングすることで、25℃における粘度180mPa・sを有する、下記平均組成式で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-8)を得た。重量平均分子量は11,200であり、ビニル基の割合は0.028モル/100g(理論値0.026モル/100g)であった。
(A-8)
【化37】
【0086】
[比較例7]
温度計、攪拌羽を備え、窒素置換した300mlのセパラブルフラスコに、(a1-1)オクタメチルシクロテトラシロキサン149.8g(D単位2.0モル)、(a2-1)テトラメチルジビニルジシロキサン3.7g(0.02モル)、触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸を0.092g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して600ppm)加え、50℃で4時間加熱撹拌した。反応物の一部を抜き出し揮発分を測定すると10質量%であり、反応が進行していることを確認した。そこへ協和化学工業社製キョーワード500SHを0.55g((a1-1)と(a2-1)の合計量に対して3,600ppm)加え、50℃で2時間加熱撹拌した(中和工程)。キョーワード500SHを濾過により除去した後、反応物をセパラブルフラスコに入れ、150℃、5mmHgにて3時間減圧ストリッピングすることで、25℃における粘度190mPa・sを有する、下記平均組成式で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-9)を得た。重量平均分子量は12,100であり、ビニル基の割合は0.026モル/100g(理論値0.026モル/100g)であった。
(A-9)
【化38】
【0087】
上記実施例1~7に示す通り、本発明の製造方法では非常に短時間で目的とするアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを得ることができる。
それに対して、比較例1に示す通り、末端源となる直鎖状オルガノポリシロキサンとして高重合度のものを使用すると、該直鎖状オルガノポリシロキサンの反応性が低いために反応が進行しなかった。また比較例2に示す通り、ウェットタイプの陽イオン交換樹脂を触媒として使用した場合も、該陽イオン交換樹脂の触媒としての効果が低いためか反応が進行しなかった。更に比較例3では、反応物の設定粘度が1,500mPa・sとなるように原料を特定割合で配合して仕込んだところ、反応物の粘度が高くなりすぎたために連続製造に不適な製造方法となってしまった。
比較例4及び5では、従来から触媒として使用されているKOH及びトリフルオロメタンスルホン酸を用いて反応を行ったが、これらは平衡化に達するまでに時間がかかることから、短時間の反応では目的物を得ることができなかった。そこで、比較例6及び7において、比較例4及び5の反応時間を長くすることにより、目的物(A-8)及び(A-9)を得ることができた。得られた(A-8)及び(A-9)と、触媒のみが異なる実施例1の製造方法で得られた(A-1)とを比較すると物性的に差異はないため、本発明の製造方法により強酸や強塩基物質を触媒とした従来の製造方法に比べ、非常に短時間で従来品と同等の性能を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の製造方法は、低粘度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを非常に短時間で得ることができる。更に得られたアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは低粘度であることから、特に無溶剤型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に好適に利用することができ、該組成物からなる硬化皮膜は良好な剥離シートとして利用可能である。