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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズおよび顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20240409BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022555562
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037160
(87)【国際公開番号】W WO2022075410
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020170597
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】徳永 京也
(72)【発明者】
【氏名】冨松 圭
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 勝也
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212128(JP,A)
【文献】特開2006-194976(JP,A)
【文献】特開2018-066912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 19/00 - 21/36
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体からの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズであって、
光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に、もしくは前記第1レンズ群における最も像側のレンズの内部に、物体からの光が結像する中間結像面が形成され、
以下の条件式を満足する顕微鏡対物レンズ。
-0.2<f×NA/TL<-0.05
0.35<L1/TL<0.7
但し、f:前記顕微鏡対物レンズの焦点距離
NA:前記顕微鏡対物レンズの物体側開口数
TL:前記顕微鏡対物レンズにおける最も物体側のレンズ面から前記顕微鏡対物レンズにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
L1:前記第1レンズ群の光軸上の長さ
【請求項2】
前記第1レンズ群は、前記中間結像面に凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズを有し、
以下の条件式を満足する請求項1に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.1<WD/r1<2.0
但し、WD:物体面から前記顕微鏡対物レンズにおける最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離
r1:前記第1レンズ群の前記少なくとも一つのレンズのうち、前記凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける前記凹面形状のレンズ面の曲率半径
【請求項3】
以下の条件式を満足する請求項1または2に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.12<D1/TL<0.3
但し、D1:前記第1レンズ群の最大外径
【請求項4】
前記第1レンズ群および前記第2レンズ群のうち少なくとも一方に配置された、少なくとも一つの接合レンズを有し、
以下の条件式を満足する請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
νdif>50
但し、νdif:前記少なくとも一つの接合レンズにおける、前記接合レンズを構成するレンズ同士のアッベ数の差の最大値
【請求項5】
前記第1レンズ群は、前記中間結像面に凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズを有し、
前記第2レンズ群は、前記中間結像面に凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズを有し、
以下の条件式を満足する請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.01<r1/(-f)<1.0
0.01<r2/f<1.0
但し、r1:前記第1レンズ群の前記少なくとも一つのレンズのうち、前記凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける前記凹面形状のレンズ面の曲率半径
r2:前記第2レンズ群の前記少なくとも一つのレンズのうち、前記凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける前記凹面形状のレンズ面の曲率半径
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
0.2<D1/D2<2.0
但し、D1:前記第1レンズ群の最大外径
D2:前記第2レンズ群の最大外径
【請求項7】
前記第1レンズ群は、前記第1レンズ群の最も像側に配置されて像側に凹面を向けたメニスカスレンズを有し、
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群の最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けたメニスカスレンズを有し、
空気間隔を置いて向かい合わせに並んだ、前記第1レンズ群の前記メニスカスレンズにおける像側の凹面と、前記第2レンズ群の前記メニスカスレンズにおける物体側の凹面との間に、前記中間結像面が形成される請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項8】
前記第1レンズ群は、前記第1レンズ群の最も像側に配置された正レンズを有し、
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群の最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けたメニスカスレンズを有し、
空気間隔を置いて並んだ、前記第1レンズ群の前記正レンズと、前記第2レンズ群の前記メニスカスレンズとの間に、前記中間結像面が形成される請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項9】
前記第1レンズ群は、前記第1レンズ群の最も像側に配置されて物体側に凸面を向けたメニスカスレンズを有し、
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群の最も物体側に配置されて像側に凸面を向けたメニスカスレンズを有し、
前記第1レンズ群の前記メニスカスレンズおよび前記第2レンズ群の前記メニスカスレンズのうちいずれか一方の内部に、前記中間結像面が形成される請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズ。
【請求項10】
物体からの光を平行光にする無限遠補正型の第1の顕微鏡対物レンズと、物体からの光を平行光にする無限遠補正型の第2の顕微鏡対物レンズとを備え、前記第1の顕微鏡対物レンズもしくは前記第2の顕微鏡対物レンズを選択して用いることが可能な顕微鏡装置であって、
前記第1の顕微鏡対物レンズおよび前記第2の顕微鏡対物レンズのうち少なくとも一つが、請求項1~のいずれか一項に記載の顕微鏡対物レンズである顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡対物レンズおよび顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口径が大きい顕微鏡用の対物レンズが種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このような対物レンズでは、対物レンズを小径化しつつ収差を良好に補正することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-66912号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る顕微鏡対物レンズは、物体からの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズであって、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に、もしくは前記第1レンズ群における最も像側のレンズの内部に、物体からの光が結像する中間結像面が形成され、以下の条件式を満足する。
-0.2<f×NA/TL<-0.05
0.35<L1/TL<0.7
但し、f:前記顕微鏡対物レンズの焦点距離
NA:前記顕微鏡対物レンズの物体側開口数
TL:前記顕微鏡対物レンズにおける最も物体側のレンズ面から前記顕微鏡対物レンズにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
L1:前記第1レンズ群の光軸上の長さ
【0005】
本発明に係る顕微鏡装置は、物体からの光を平行光にする無限遠補正型の第1の顕微鏡対物レンズと、物体からの光を平行光にする無限遠補正型の第2の顕微鏡対物レンズとを備え、前記第1の顕微鏡対物レンズもしくは前記第2の顕微鏡対物レンズを選択して用いることが可能な顕微鏡装置であって、前記第1の顕微鏡対物レンズおよび前記第2の顕微鏡対物レンズのうち少なくとも一つが、上述の顕微鏡対物レンズである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】顕微鏡対物レンズの要部概略図である。
図2】顕微鏡装置の一例である液浸顕微鏡を示す概略構成図である。
図3】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。
図4】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図5】第1実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図6】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。
図7】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図8】第2実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図9】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。
図10】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図11】第3実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図12】第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。
図13】浸液の屈折率が1.51の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図14】浸液の屈折率が1.51の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
図15】浸液の屈折率が1.40の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差図である。
図16】浸液の屈折率が1.40の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態の顕微鏡対物レンズおよび顕微鏡装置について、図を参照して説明する。本実施形態では、小径でありながら収差を良好に補正することが可能な顕微鏡対物レンズおよびこれを備えた顕微鏡装置について説明する。
【0008】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、図1に示すように、物体OBからの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成される。第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に、もしくは第1レンズ群G1における最も像側のレンズの内部に、物体OBからの光が結像する中間結像面MIが形成される。なお、図1等において、物体OBは物体面を示す。
【0009】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、以下の条件式(1)を満足する。
-0.2<f×NA/TL<-0.05 ・・・(1)
但し、f:顕微鏡対物レンズOLの焦点距離
NA:顕微鏡対物レンズOLの物体側開口数
TL:顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面から顕微鏡対物レンズOLにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
【0010】
本実施形態によれば、小径でありながら収差を良好に補正することが可能な顕微鏡対物レンズを得ることが可能になる。本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの具体例として、図3に示す顕微鏡対物レンズOL(1)でもよく、図6に示す顕微鏡対物レンズOL(2)でもよく、図9に示す顕微鏡対物レンズOL(3)でもよく、図12に示す顕微鏡対物レンズOL(4)でもよい。
【0011】
条件式(1)は、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離と、顕微鏡対物レンズOLの物体側開口数と、顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面から顕微鏡対物レンズOLにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離との関係を規定する条件式である。条件式(1)を満足することで、顕微鏡対物レンズOLの物体側開口数を大きくしつつ周辺領域のコマ収差を良好に補正することができる。
【0012】
条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、顕微鏡対物レンズOLの全長を小さくしつつ物体開口数を大きくするには、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離を短くする必要があり、コマ収差等の諸収差を補正することが困難になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の上限値を好ましくは-0.06としてもよい。
【0013】
条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、顕微鏡対物レンズOLの全長を小さくしつつ物体開口数を大きくしようとしても、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離が長くなりすぎるため、球面収差を補正することが困難になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を好ましくは-0.17としてもよい。
【0014】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1は、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズを有し、次の条件式(2)を満足してもよい。
0.1<WD/r1<2.0 ・・・(2)
但し、WD:物体面(OB)から顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離
r1:第1レンズ群G1の上記少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径
【0015】
条件式(2)は、物体面(OB)から顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離と、第1レンズ群G1の上記少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径との関係を規定する条件式である。本実施形態において、レンズ面の曲率半径は、物体側に凸のレンズ面の場合を正の値とする。条件式(2)を満足することで、顕微鏡対物レンズOLの物体側開口数を大きくしつつ球面収差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0016】
条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群G1において最も小さい、凹面形状のレンズ面の曲率半径に対して、物体面(OB)から顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離が長くなりすぎるため、球面収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の上限値を好ましくは1.80としてもよい。
【0017】
条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1において最も小さい、凹面形状のレンズ面の曲率半径が大きくなりすぎるため、像面湾曲の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(2)の下限値を好ましくは0.14としてもよい。
【0018】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、次の条件式(3)を満足してもよい。
0.35<L1/TL<0.7 ・・・(3)
但し、L1:第1レンズ群G1の光軸上の長さ
【0019】
条件式(3)は、第1レンズ群G1の光軸上の長さと、顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面から顕微鏡対物レンズOLにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離との関係を規定する条件式である。条件式(3)を満足することで、入射瞳(または射出瞳)の端を通る光線(すなわち、大きい開口数に対応する光線)によって生じる諸収差を良好に補正することができる。
【0020】
条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群G2における収差補正の負担が大きくなるため、入射瞳(または射出瞳)の端を通る光線によって生じる諸収差を補正することが困難になる。
【0021】
条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1における収差補正の負担が大きくなるため、入射瞳(または射出瞳)の端を通る光線によって生じる諸収差を補正することが困難になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(3)の下限値を好ましくは0.45としてもよい。
【0022】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、次の条件式(4)を満足してもよい。
0.12<D1/TL<0.3 ・・・(4)
但し、D1:第1レンズ群G1の最大外径
【0023】
条件式(4)は、第1レンズ群G1の最大外径と、顕微鏡対物レンズOLにおける最も物体側のレンズ面から顕微鏡対物レンズOLにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離との関係を規定する条件式である。本実施形態において、第1レンズ群G1の最大外径は、第1レンズ群G1を構成する各レンズの有効径のうち最大の有効径を示す。条件式(4)を満足することで、顕微鏡対物レンズOLの物体側開口数を大きくしつつ球面収差を良好に補正することができる。
【0024】
条件式(4)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群G1の最大外径が大きくなり、光線高が高くなりすぎるため、球面収差等の諸収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の上限値を好ましくは0.26としてもよい。
【0025】
条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、球面収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(4)の下限値を好ましくは0.13としてもよい。
【0026】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2のうち少なくとも一方に配置された、少なくとも一つの接合レンズを有し、次の条件式(5)を満足してもよい。
νdif>50 ・・・(5)
但し、νdif:上記少なくとも一つの接合レンズにおける、接合レンズを構成するレンズ同士のアッベ数の差の最大値
【0027】
条件式(5)は、上記少なくとも一つの接合レンズにおける、接合レンズを構成するレンズ同士のアッベ数の差の最大値について、適切な範囲を規定する条件式である。本実施形態において、接合レンズを構成するレンズ同士のアッベ数の差は、接合レンズが2つのレンズからなる場合、当該2つのレンズのアッベ数の差を示し、接合レンズが3つ以上のレンズからなる場合、当該3つ以上のレンズのうち2つのレンズのアッベ数の差を示す。条件式(5)を満足することで、1次の色収差を良好に補正することができる。
【0028】
条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、1次の色収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(5)の下限値を好ましくは60としてもよい。
【0029】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLにおいて、第1レンズ群G1は、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズを有し、第2レンズ群G2は、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズを有し、次の条件式(6)および条件式(7)を満足してもよい。
0.01<r1/(-f)<1.0 ・・・(6)
0.01<r2/f<1.0 ・・・(7)
但し、r1:第1レンズ群G1の上記少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径
r2:第2レンズ群G2の上記少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径
【0030】
条件式(6)は、第1レンズ群G1の上記少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径と、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離との関係を規定する条件式である。条件式(6)を満足することで、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0031】
条件式(6)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群G1において最も小さい、凹面形状のレンズ面の曲率半径が大きくなりすぎるため、像面湾曲の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(6)の上限値を好ましくは0.60としてもよい。
【0032】
条件式(6)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1において最も小さい、凹面形状のレンズ面の曲率半径が小さくなりすぎるため、中間結像面MIで発生する球面収差を補正するためにリレー系の倍率を小さくする必要があり、像面湾曲等の諸収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(6)の下限値を好ましくは0.015としてもよい。
【0033】
条件式(7)は、第2レンズ群G2の上記少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径(絶対値)が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径と、顕微鏡対物レンズOLの焦点距離との関係を規定する条件式である。条件式(7)を満足することで、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0034】
条件式(7)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群G2において最も小さい、凹面形状のレンズ面の曲率半径(絶対値)が大きくなりすぎるため、像面湾曲の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(7)の上限値を好ましくは0.50としてもよい。
【0035】
条件式(7)の対応値が下限値を下回ると、第2レンズ群G2において最も小さい、凹面形状のレンズ面の曲率半径(絶対値)が小さくなりすぎるため、中間結像面MIで発生する球面収差を補正するためにリレー系の倍率を小さくする必要があり、像面湾曲等の諸収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(7)の下限値を好ましくは0.02としてもよい。
【0036】
本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、次の条件式(8)を満足してもよい。
0.2<D1/D2<2.0 ・・・(8)
但し、D1:第1レンズ群G1の最大外径
D2:第2レンズ群G2の最大外径
【0037】
条件式(8)は、第1レンズ群G1の最大外径と、第2レンズ群G2の最大外径との関係を規定する条件式である。本実施形態において、第2レンズ群G2の最大外径は、第2レンズ群G2を構成する各レンズの有効径のうち最大の有効径を示す。条件式(8)を満足することで、顕微鏡対物レンズOLの全長を小さくしつつ球面収差等の諸収差を良好に補正することができる。
【0038】
条件式(8)の対応値が上限値を上回ると、第1レンズ群G1の最大外径が第2レンズ群G2の最大外径に対して大きくなりすぎるため、第2レンズ群G2における諸収差の補正が困難になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(8)の上限値を好ましくは1.70としてもよい。
【0039】
条件式(8)の対応値が下限値を下回ると、第1レンズ群G1の最大外径が第2レンズ群G2の最大外径に対して小さくなりすぎるため、入射瞳(または射出瞳)の端を通る光線(すなわち、大きい開口数に対応する光線)によって生じる球面収差の補正が不十分になる。本実施形態の効果を確実にするために、条件式(8)の下限値を好ましくは0.50としてもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。顕微鏡装置の一例として、液浸顕微鏡100を図2に基づいて説明する。液浸顕微鏡100は、スタンド101と、スタンド101のベース部102に取り付けられたステージ111と、スタンド101のアーム部103に取り付けられた鏡筒121と、鏡筒121に連結された撮像部131とを有して構成される。ステージ111上には、例えば、スライドガラス(図示せず)とカバーガラス(図示せず)との間に保持された試料SAが載置される。また、ステージ111上には、浸液とともに試料容器(図示せず)に収容された試料SAが載置されてもよい。ステージ111の下側には、透過照明装置116を構成するコンデンサレンズ117が取り付けられる。なお、スタンド101のベース部102には、ステージ111の他、上述の透過照明装置116と、透過照明用光源118等が取り付けられる。
【0041】
鏡筒121の下方に設けられたレボルバ126に、第1の対物レンズ122Aと、第2の対物レンズ122Bが取り付けられる。ステージ111上に、スライドガラス(図示せず)とカバーガラス(図示せず)との間に保持された試料SAが載置される場合、第1の対物レンズ122A(もしくは第2の対物レンズ122B)の先端部とカバーガラスとの間に、浸液が満たされるようになっている。ステージ111上に、浸液とともに試料容器(図示せず)に収容された試料SAが載置される場合、第1の対物レンズ122A(もしくは第2の対物レンズ122B)の先端部と試料容器内の試料SAとの間に、浸液が満たされるようになっている。レボルバ126に取り付けられる第1の対物レンズ122Aおよび第2の対物レンズ122Bとして、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLが用いられる。鏡筒121には、結像レンズ123と、プリズム124が設けられる。なお、鏡筒121には、落射蛍光装置127と、落射蛍光用光源128と、接眼レンズ129等が取り付けられる。撮像部131には、撮像素子132が設けられる。
【0042】
このような液浸顕微鏡100では、レボルバ126を回転させることにより、第1の対物レンズ122Aもしくは第2の対物レンズ122Bを選択して用いることが可能である。図2の例では、レボルバ126を回転させて第1の対物レンズ122Aを選択した場合を示す。試料SAからの光は、第1の対物レンズ122A(もしくは第2の対物レンズ122B)と、結像レンズ123およびプリズム124を透過して、撮像素子132へ到達する。結像レンズ123により、試料SAの像が撮像素子132の撮像面上に結像され、撮像素子132が試料SAの像を撮像する。撮像素子132により撮像取得された試料SAの画像は、外部のコンピュータPCを介してモニターMTに表示される。外部のコンピュータPCは、撮像素子132により撮像取得された試料SAの画像データに対して種々の画像処理を行うことができる。このような構成によれば、小径でありながら収差を良好に補正することが可能な、上記実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLを搭載することにより、レボルバ126等が大型化することなく、口径が大きくて収差が良好に補正された顕微鏡を得ることができる。
【0043】
上述の液浸顕微鏡100において、レボルバ126に取り付けられる第1の対物レンズ122Aおよび第2の対物レンズ122Bとして、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLが用いられているが、これに限られるものではない。例えば、第1の対物レンズ122Aのみが、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLであってもよく、第2の対物レンズ122Bのみが、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLであってもよい。すなわち、第1の対物レンズ122Aおよび第2の対物レンズ122Bのうち少なくとも一つが、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLであればよい。
【0044】
上述の液浸顕微鏡100において、レボルバ126に、第1の対物レンズ122Aと、第2の対物レンズ122Bが取り付けられているが、これに限られるものではなく、さらに第3の対物レンズ(図示せず)が取り付けられてもよい。なおこの場合、第3の対物レンズは、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLであってもよく、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLでなくてもよい。
【0045】
本実施形態に係る顕微鏡装置の一例として、液浸顕微鏡100について説明したが、これに限られるものではない。例えば、本実施形態に係る顕微鏡装置は、浸液を用いずに、第1の対物レンズ122A(および第2の対物レンズ122B)の先端部と試料SAとの間の媒質を空気とした顕微鏡装置であってもよい。また、液浸顕微鏡100は、正立顕微鏡であってもよく、倒立顕微鏡であってもよい。
【実施例
【0046】
以下、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの実施例を図面に基づいて説明する。図3図6図9図12は、第1~第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL{OL(1)~OL(4)}の構成を示す光路図である。これら図3図6図9図12において、各レンズ群を符号Gと数字(もしくはアルファベット)の組み合わせにより、各レンズを符号Lと数字(もしくはアルファベット)の組み合わせにより、それぞれ表している。この場合において、符号、数字の種類および数が大きくなって煩雑化するのを防止するため、実施例毎にそれぞれ独立して符号と数字の組み合わせを用いてレンズ等を表している。このため、実施例間で同一の符号と数字の組み合わせが用いられていても、同一の構成であることを意味するものでは無い。
【0047】
以下に表1~表4を示すが、この内、表1は第1実施例、表2は第2実施例、表3は第3実施例、表4は第4実施例における各諸元データを示す表である。各実施例では収差特性の算出対象として、d線(波長λ=587.6nm)、g線(波長λ=435.8nm)、C線(波長λ=656.3nm)、F線(波長λ=486.1nm)を選んでいる。
【0048】
[全体諸元]の表において、βは、顕微鏡対物レンズの倍率を示す。fは、顕微鏡対物レンズの焦点距離を示す。NAは、顕微鏡対物レンズの物体側開口数を示す。WDは、物体面から顕微鏡対物レンズにおける最も物体側のレンズ面までの光軸上の距離を示す、f1は、第1レンズ群の焦点距離を示す。f2は、第2レンズ群の焦点距離を示す。r1は、第1レンズ群において中間結像面に凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径を示す。r2は、第2レンズ群において中間結像面に凹面形状のレンズ面を向けた少なくとも一つのレンズのうち、凹面形状のレンズ面の曲率半径が最も小さいレンズにおける凹面形状のレンズ面の曲率半径を示す。D1は、第1レンズ群の最大外径を示す。D2は、第2レンズ群の最大外径を示す。L1は、第1レンズ群の光軸上の長さを示す。TLは、顕微鏡対物レンズにおける最も物体側のレンズ面から顕微鏡対物レンズにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離を示す。TLTは、物体面から顕微鏡対物レンズにおける最も像側のレンズ面までの光軸上の距離を示す。
【0049】
[レンズデータ]の表において、面番号は物体側からのレンズ面の順序を示し、Rは各面番号に対応する曲率半径(物体側に凸のレンズ面の場合を正の値としている)、Dは各面番号に対応する光軸上のレンズ厚もしくは空気間隔、Dmは面番号に対応する有効径、ndは各面番号に対応する光学材料のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdは各面番号に対応する光学材料のd線を基準とするアッベ数を、それぞれ示す。曲率半径の「∞」は平面又は開口を示す。また、空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。
【0050】
第4実施例における[可変間隔データ]の表には、[レンズデータ]の表において面間隔が(Di)となっている面番号iでの面間隔を示す。[可変間隔データ]の表において、ndimは、[レンズデータ]の表において(可変)となっている浸液のd線に対する屈折率を示す。νdimは、[レンズデータ]の表において(可変)となっている浸液のd線を基準とするアッベ数を示す。[可変間隔データ]の表において、「オイル」は、浸液がオイルの場合を示し、「シリコンオイル」は、浸液がシリコンオイルの場合を示す。
【0051】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0052】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での重複する説明は省略する。
【0053】
(第1実施例)
第1実施例について、図3図5および表1を用いて説明する。図3は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)は、物体OBからの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に、物体OBからの光が結像する中間結像面MIが形成される。第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)の先端部と物体OBを覆うカバーガラスCVとの間は、浸液(オイル)で満たされている。カバーガラスCVと物体OBとの間も、浸液(オイル)で満たされている。なお、浸液のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.515とする。カバーガラスCVのd線に対する屈折率は1.524とする。
【0054】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL101および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL102を接合してなる第1接合レンズCL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL103と、両凹形状の負レンズL104および両凸形状の正レンズL105を接合してなる第2接合レンズCL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL106および両凸形状の正レンズL107を接合してなる第3接合レンズCL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL108および両凸形状の正レンズL109を接合してなる第4接合レンズCL14と、両凸形状の正レンズL110および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL111を接合してなる第5接合レンズCL15と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL112と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL113と、から構成される。正メニスカスレンズL112と、負メニスカスレンズL113は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0055】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL202と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL203と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL204と、両凹形状の負レンズL205および両凸形状の正レンズL206を接合してなる第1接合レンズCL21と、両凸形状の正レンズL207、両凹形状の負レンズL208、および両凸形状の正レンズL209を接合してなる第2接合レンズCL22と、両凸形状の正レンズL210と、から構成される。負メニスカスレンズL201と、正メニスカスレンズL202と、負メニスカスレンズL203と、第1接合レンズCL21の負レンズL205は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0056】
第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(1)において、第1レンズ群G1は、第1レンズ群G1の最も像側に配置されて像側に凹面を向けた負メニスカスレンズL113を有し、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2の最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201を有している。空気間隔を置いて向かい合わせに並んだ、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL113における像側の凹面と、第2レンズ群G2の負メニスカスレンズL201における物体側の凹面との間に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との境界が設けられ、中間結像面MIが形成される。
【0057】
以下の表1に、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。中間結像面MIは、第24面から像側へ1.083[mm]の位置にある。
【0058】
(表1)
[全体諸元]
β=40倍
f=-7.605
NA=1.40 WD=0.305
f1=7.430 f2=13.302
r1=1.357 r2=-1.456
D1=10.739 D2=14.363
L1=34.174 TL=64.695
TLT=65.000
[レンズデータ]
面番号 R D Dm nd νd
1 ∞ 0.100 0.000 1.515 41.33
2 ∞ 0.170 0.986 1.524 54.24
3 ∞ 0.035 1.576 1.515 41.33
4 ∞ 0.400 1.701 1.540 59.46
5 -1.381 1.699 1.850 2.001 29.12
6 -2.000 0.100 3.821
7 -8.911 1.474 5.828 1.595 67.73
8 -4.263 0.123 6.487
9 -122.669 1.024 8.044 1.613 44.46
10 11.397 2.620 9.313 1.595 67.73
11 -9.265 1.303 9.510
12 53.956 0.500 10.436 1.738 32.26
13 9.999 3.715 10.613 1.434 95.16
14 -8.572 0.100 10.739
15 23.544 0.500 10.587 1.757 47.82
16 8.893 3.013 10.236 1.434 95.16
17 -12.565 5.419 10.244
18 11.764 2.080 8.052 1.439 94.94
19 -7.901 0.500 7.939 1.917 31.60
20 -53.268 5.224 7.978
21 4.909 1.664 7.374 2.001 25.46
22 9.316 0.100 6.724
23 3.502 2.617 5.573 2.001 29.12
24 1.357 1.582 2.184
25 -1.456 1.646 1.878 2.001 29.12
26 -2.844 0.100 3.824
27 -16.538 1.222 4.709 1.849 43.79
28 -3.819 4.476 5.053
29 -3.563 0.502 5.417 1.923 18.90
30 -6.255 0.100 6.329
31 13.239 0.770 7.701 1.923 18.90
32 74.777 8.972 7.732
33 -17.359 0.533 10.201 1.734 51.51
34 29.196 2.413 10.991 1.439 94.94
35 -10.601 0.100 11.177
36 19.614 3.302 12.189 1.434 95.16
37 -10.180 0.500 12.206 1.673 38.26
38 18.802 2.893 13.142 1.439 94.94
39 -16.351 0.100 13.271
40 53.358 1.312 14.306 1.664 27.35
41 -48.931 10.000 14.363
【0059】
図4は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図5は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。なお、各収差図は、像側の無限遠物体からの光線による逆光線追跡により求めた諸収差を示す。図4および図5の各収差図において、dはd線(波長λ=587.6nm)、gはg線(波長λ=435.8nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)に対する諸収差をそれぞれ示す。球面収差図において、縦軸は入射瞳半径の最大値を1として規格化して示した値を示し、横軸は各光線における収差の値[mm]を示す。像面湾曲を示す収差図においては、実線は各波長に対するメリジオナル像面を示し、破線は各波長に対するサジタル像面を示す。また、像面湾曲を示す収差図において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の値[mm]を示す。歪曲収差図(ディストーション)において、縦軸は像高[mm]を示し、横軸は収差の割合を百分率(%値)で示す。各コマ収差図は、像高比RFH(Relative Field Height)が0.00~1.00のときの収差の値を示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0060】
各収差図より、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズは、小径でありながら諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0061】
(第2実施例)
第2実施例について、図6図8および表2を用いて説明する。図6は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)は、物体OBからの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に、物体OBからの光が結像する中間結像面MIが形成される。第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)の先端部と物体OBを覆うカバーガラスCVとの間は、浸液(オイル)で満たされている。カバーガラスCVと物体OBとの間も、浸液(オイル)で満たされている。なお、浸液のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.515とする。カバーガラスCVのd線に対する屈折率は1.524とする。
【0062】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL101および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL102を接合してなる第1接合レンズCL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL103と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL104および両凸形状の正レンズL105を接合してなる第2接合レンズCL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL106および両凸形状の正レンズL107を接合してなる第3接合レンズCL13と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL108および両凸形状の正レンズL109を接合してなる第4接合レンズCL14と、両凸形状の正レンズL110および両凹形状の負レンズL111を接合してなる第5接合レンズCL15と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL112と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL113と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL114と、両凸形状の正レンズL115と、から構成される。第5接合レンズCL15の負レンズL111と、正メニスカスレンズL112と、負メニスカスレンズL113は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0063】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL202と、両凹形状の負レンズL203および両凸形状の正レンズL204を接合してなる第1接合レンズCL21と、両凸形状の正レンズL205と、両凹形状の負レンズL206および物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL207を接合してなる第2接合レンズCL22と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL208と、から構成される。負メニスカスレンズL201と、正メニスカスレンズL202と、第1接合レンズCL21の負レンズL203と、第2接合レンズCL22の負レンズL206は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0064】
第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(2)において、第1レンズ群G1は、第1レンズ群G1の最も像側に配置された正レンズL115を有し、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2の最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201を有している。空気間隔を置いて並んだ、第1レンズ群G1の正レンズL115と、第2レンズ群G2の負メニスカスレンズL201との間に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との境界が設けられ、中間結像面MIが形成される。
【0065】
以下の表2に、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。中間結像面MIは、第29面から像側へ0.927[mm]の位置にある。
【0066】
(表2)
[全体諸元]
β=100倍
f=-3.042
NA=1.45 WD=0.305
f1=-1.554 f2=14.473
r1=1.606 r2=-1.057
D1=10.313 D2=6.131
L1=44.934 TL=64.695
TLT=65.000
[レンズデータ]
面番号 R D Dm nd νd
1 ∞ 0.100 0.000 1.515 41.33
2 ∞ 0.170 0.652 1.524 54.24
3 ∞ 0.035 1.601 1.515 41.33
4 ∞ 0.400 1.818 1.540 59.46
5 -1.387 1.596 1.912 2.001 29.12
6 -1.869 0.100 3.676
7 -7.768 1.060 5.814 1.595 67.73
8 -4.354 0.100 6.254
9 84.740 0.500 8.032 1.613 44.46
10 11.198 3.331 8.837 1.434 95.16
11 -5.936 0.102 9.097
12 84.368 0.615 9.939 1.720 34.71
13 11.607 3.323 10.192 1.434 95.16
14 -8.130 0.877 10.313
15 53.055 0.501 10.012 1.757 47.82
16 7.990 3.316 9.744 1.434 95.16
17 -9.510 3.876 9.798
18 9.422 2.089 8.249 1.498 82.57
19 -11.572 2.210 8.054 1.917 31.60
20 33.927 12.083 7.475
21 7.655 1.871 6.012 1.893 20.36
22 29.921 0.364 5.402
23 3.515 2.388 4.631 1.902 25.26
24 1.606 1.973 2.323
25 -1.280 1.650 1.785 1.834 37.18
26 -2.193 0.104 2.714
27 60.427 0.504 2.633 1.741 52.64
28 -4.561 3.928 2.604
29 -1.057 0.705 1.955 1.959 17.47
30 -1.553 1.874 2.791
31 -3.559 0.942 3.777 1.850 27.03
32 -3.203 6.500 4.298
33 -7.095 0.865 4.747 1.917 31.60
34 20.915 1.145 5.277 1.658 50.83
35 -5.852 0.110 5.424
36 8.451 1.181 5.572 1.439 94.94
37 -9.747 0.100 5.586
38 -10.022 0.500 5.564 1.731 40.51
39 6.449 0.929 5.770 1.595 67.73
40 81.334 0.363 5.840
41 14.172 0.620 6.112 1.667 48.33
42 364.344 10.000 6.131
【0067】
図7は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図8は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。各収差図より、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズは、小径でありながら諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0068】
(第3実施例)
第3実施例について、図9図11および表3を用いて説明する。図9は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)は、物体OBからの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第1レンズ群G1における最も像側のレンズ(後述の負メニスカスレンズL110)の内部に、物体OBからの光が結像する中間結像面MIが形成される。第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)の先端部と物体OBとの間は、空気で満たされている。
【0069】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凹形状の負レンズL101と、両凸形状の正レンズL102と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL103と、両凸形状の正レンズL104と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL105と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL106と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL107と、両凸形状の正レンズL108と、両凸形状の正レンズL109と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL110と、から構成される。負レンズL101と、正メニスカスレンズL103と、負メニスカスレンズL105は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0070】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL202と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL203および物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL204を接合してなる第1接合レンズCL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL205、両凹形状の負レンズL206、および両凸形状の正レンズL207を接合してなる第2接合レンズCL22と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL208と、から構成される。負メニスカスレンズL201と、第1接合レンズCL21の負メニスカスレンズL203と、第2接合レンズCL22の正メニスカスレンズL205と、正メニスカスレンズL208は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0071】
第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(3)において、第1レンズ群G1は、第1レンズ群G1の最も像側に配置されて物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL110を有し、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2の最も物体側に配置されて像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL201を有している。第1レンズ群G1の最も像側に配置された負メニスカスレンズL110の内部に、中間結像面MIが形成される。なお、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との収差補正バランスによっては、第2レンズ群G2の最も物体側に配置された負メニスカスレンズL201の内部に、中間結像面MIを形成することも可能である。従って、第1レンズ群の最も像側に配置されて物体側に凸面を向けたメニスカスレンズおよび、第2レンズ群の最も物体側に配置されて像側に凸面を向けたメニスカスレンズのうちいずれか一方の内部に、中間結像面が形成される構成とすることも可能である。
【0072】
以下の表3に、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。中間結像面MIは、第19面から像側へ1.277[mm]の位置にある。
【0073】
(表3)
[全体諸元]
β=2倍
f=-100.000
NA=0.10 WD=3.391
f1=-69.007 f2=35.307
r1=1.942 r2=-2.077
D1=15.101 D2=20.044
L1=29.042 TL=62.279
TLT=65.670
[レンズデータ]
面番号 R D Dm nd νd
1 ∞ 3.391 0.000
2 ∞ 1.000 13.567 1.755 27.51
3 16.500 1.284 13.888
4 26.964 3.053 14.890 1.861 37.10
5 -24.265 0.100 15.101
6 19.374 1.773 14.917 1.861 37.10
7 51.391 9.171 14.587
8 8.391 2.321 9.313 1.498 82.57
9 -85.753 0.100 8.694
10 2.793 1.730 5.433 1.883 40.76
11 1.942 2.299 3.478
12 -2.801 1.486 2.946 1.883 40.76
13 -2.621 0.100 4.240
14 -14.658 1.564 5.055 1.569 71.34
15 -4.451 0.100 5.582
16 23.958 1.490 5.815 1.498 82.57
17 -8.600 0.100 5.848
18 7.302 1.371 5.492 1.498 82.57
19 -94.513 0.100 5.115
20 3.751 2.878 4.500 1.883 40.76
21 2.404 2.986 2.822
22 -2.077 3.848 3.971 1.498 82.57
23 -3.982 0.100 7.870
24 11.320 2.210 11.347 1.738 32.33
25 16.759 3.626 11.106
26 -9.461 1.488 11.320 1.738 32.33
27 -25.301 3.279 13.182 1.498 82.57
28 -8.784 0.100 13.807
29 -125.539 4.852 14.079 1.434 95.25
30 -8.016 0.800 14.153 1.738 32.33
31 91.448 3.682 17.448 1.434 95.25
32 -17.827 0.100 17.732
33 -14867.000 3.188 19.758 1.762 26.52
34 -22.197 10.000 20.044
【0074】
図10は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図11は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。各収差図より、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズは、小径でありながら諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0075】
(第4実施例)
第4実施例について、図12図16および表4を用いて説明する。図12は、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図である。第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)は、物体OBからの光を平行光にする無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に、物体OBからの光が結像する中間結像面MIが形成される。第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)の先端部と物体OBを覆うカバーガラスCVとの間は、浸液(オイルまたはシリコンオイル)で満たされている。カバーガラスCVと物体OBとの間も、浸液(オイルまたはシリコンオイル)で満たされている。なお、浸液がオイルの場合、浸液のd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率は1.51とする。浸液がシリコンオイルの場合、浸液のd線に対する屈折率は1.40とする。カバーガラスCVのd線に対する屈折率は1.524とする。また、図12は、浸液の屈折率が1.51の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)の構成を示す。
【0076】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に平面を向けた平凸形状の正レンズL101および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL102を接合してなる第1接合レンズCL11と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL103と、両凸形状の正レンズL104と、両凹形状の負レンズL105および両凸形状の正レンズL106を接合してなる第2接合レンズCL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL107および両凸形状の正レンズL108を接合してなる第3接合レンズCL13と、両凹形状の負レンズL109および両凸形状の正レンズL110を接合してなる第4接合レンズCL14と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL111および両凸形状の正レンズL112を接合してなる第5接合レンズCL15と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL113と、両凸形状の正レンズL114と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL115と、から構成される。負メニスカスレンズL113と、負メニスカスレンズL115は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0077】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL202と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL203と、両凸形状の正レンズL204と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL205と、両凹形状の負レンズL206および物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL207を接合してなる第1接合レンズCL21と、両凹形状の負レンズL208および両凸形状の正レンズL209を接合してなる第2接合レンズCL22と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL210および両凸形状の正レンズL211を接合してなる第3接合レンズCL23と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL212および両凸形状の正レンズL213を接合してなる第4接合レンズCL24と、から構成される。負メニスカスレンズL201と、正メニスカスレンズL202と、負メニスカスレンズL203と、第1接合レンズCL21の負レンズL206と、第2接合レンズCL22の負レンズL208は、本実施形態における、中間結像面MIに凹面形状のレンズ面を向けたレンズに該当する。
【0078】
第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL(4)において、第1レンズ群G1は、第1レンズ群G1の最も像側に配置されて像側に凹面を向けた負メニスカスレンズL115を有し、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2の最も物体側に配置されて物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL201を有している。空気間隔を置いて向かい合わせに並んだ、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL115における像側の凹面と、第2レンズ群G2の負メニスカスレンズL201における物体側の凹面との間に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との境界が設けられ、中間結像面MIが形成される。
【0079】
また、第1レンズ群G1は、光軸に沿って移動可能な第1補正群GP1を有する。第2レンズ群G2は、光軸に沿って移動可能な第2補正群GP2を有する。第1補正群GP1および第2補正群GP2は、光軸に沿って移動させることで所謂補正環として機能し、浸液の屈折率に応じて変化する収差を補正することができる。
【0080】
第1補正群GP1は、第1レンズ群G1における、第5接合レンズCL15の負メニスカスレンズL111および正レンズL112と、負メニスカスレンズL113とから構成される。第1補正群GP1は、浸液の種類がオイルからシリコンオイルに変更される際(すなわち、浸液の屈折率が相対的に高い屈折率から相対的に低い屈折率に変更される際)、光軸に沿って像側へ移動するようになっている。
【0081】
第2補正群GP2は、第2レンズ群G2における、正レンズL204と、正メニスカスレンズL205と、第1接合レンズCL21の負レンズL206および正メニスカスレンズL207とから構成される。第2補正群GP2は、浸液の種類がオイルからシリコンオイルに変更される際(すなわち、浸液の屈折率が相対的に高い屈折率から相対的に低い屈折率に変更される際)、光軸に沿って物体側へ移動するようになっている。
【0082】
以下の表4に、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸元の値を掲げる。なお、第1面は物体面(OB)である。中間結像面MIは、第28面から像側へ0.795[mm]の位置にある。
【0083】
(表4)
[全体諸元]
β=40倍
f=-7.605
NA=1.40 WD=0.305
f1=-5.175 f2=14.366
r1=1.816 r2=-1.540
D1=8.908 D2=15.701
L1=32.308 TL=64.695
TLT=65.000
[レンズデータ]
面番号 R D Dm nd νd
1 ∞ 0.100 0.630 (可変) (可変)
2 ∞ 0.170 1.083 1.524 54.24
3 ∞ 0.035 1.764 (可変) (可変)
4 ∞ 0.400 1.915 1.540 59.46
5 -1.370 1.685 1.928 2.001 29.12
6 -2.009 0.100 3.881
7 -6.234 1.043 5.576 1.849 43.79
8 -3.927 0.100 6.014
9 22.288 1.354 7.657 1.498 82.57
10 -10.860 0.100 7.790
11 -29.342 0.500 7.947 1.720 34.71
12 9.524 2.936 8.439 1.434 95.16
13 -6.444 0.100 8.613
14 20.841 0.500 8.908 1.917 31.60
15 9.318 2.280 8.766 1.498 82.57
16 -11.404 0.100 8.807
17 -211.242 0.500 8.603 1.553 55.07
18 6.424 2.098 8.343 1.456 91.37
19 -33.630 (D19) 8.336
20 15.877 0.500 8.200 1.553 55.07
21 5.172 2.092 7.772 1.456 91.37
22 -227.278 0.543 7.734
23 6.859 1.666 7.402 1.808 22.74
24 5.415 (D24) 6.403
25 5.417 1.651 6.659 1.623 57.10
26 -25.671 0.100 6.495
27 3.689 2.637 4.965 2.001 29.12
28 1.816 0.920 2.009
29 -1.840 0.500 1.790 1.959 17.47
30 -62.717 0.239 2.084
31 -4.709 0.746 2.338 1.883 40.69
32 -1.912 0.471 2.762
33 -1.540 1.735 2.854 1.456 91.37
34 -2.404 (D34) 4.575
35 13.919 1.180 6.810 1.456 91.37
36 -13.262 0.100 6.900
37 6.555 1.116 7.221 1.595 67.73
38 23.790 3.499 7.113
39 -192.253 0.500 5.885 1.917 31.60
40 4.878 0.694 5.664 1.847 23.80
41 7.995 (D41) 5.631
42 -4.625 3.000 6.242 1.855 24.80
43 281.721 2.603 10.608 1.498 82.57
44 -7.869 0.100 11.024
45 25.144 0.501 15.040 1.859 22.73
46 12.618 5.194 15.448 1.664 27.35
47 -14.594 0.100 15.582
48 457.933 0.500 15.439 1.731 40.51
49 12.625 5.154 15.575 1.434 95.16
50 -15.312 10.000 15.701
[可変間隔データ]
浸液 オイル シリコンオイル
ndim 1.51 1.40
νdim 41.33 51.96
D19 0.500 6.639
D24 8.824 2.685
D34 1.545 0.500
D41 1.991 3.036
【0084】
図13は、浸液のd線に対する屈折率ndimが1.51の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図14は、浸液のd線に対する屈折率ndimが1.51の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。図15は、浸液のd線に対する屈折率ndimが1.40の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズの諸収差(球面収差、像面湾曲、および歪曲収差)を示す図である。図16は、浸液のd線に対する屈折率ndimが1.40の場合における、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズのコマ収差(メリジオナルコマ収差およびサジタルコマ収差)を示す図である。各収差図より、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズは、浸液の種類(屈折率)が異なっても、小径でありながら諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0085】
次に、[条件式対応値]の表を下記に示す。この表には、各条件式(1)~(8)に対応する値を、全実施例(第1~第4実施例)について纏めて示す。
条件式(1) -0.2<f×NA/TL<-0.05
条件式(2) 0.1<WD/r1<2.0
条件式(3) 0.35<L1/TL<0.7
条件式(4) 0.12<D1/TL<0.3
条件式(5) νdif>50
条件式(6) 0.01<r1/(-f)<1.0
条件式(7) 0.01<r2/f<1.0
条件式(8) 0.2<D1/D2<2.0
【0086】
[条件式対応値]
条件式 第1実施例 第2実施例 第3実施例 第4実施例
(1) -0.165 -0.068 -0.161 -0.165
(2) 0.225 0.190 1.746 0.168
(3) 0.528 0.695 0.466 0.499
(4) 0.166 0.159 0.242 0.138
(5) 62.90 60.45 62.92 60.45
(6) 0.178 0.528 0.019 0.239
(7) 0.191 0.347 0.021 0.203
(8) 0.748 1.682 0.753 0.567
【0087】
上記各実施例によれば、小径でありながら収差を良好に補正することが可能な顕微鏡対物レンズを実現することができる。
【0088】
ここで、上記各実施例は本実施形態の一具体例を示しているものであり、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0089】
また、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に、もしくは第1レンズ群G1における最も像側のレンズの内部に、物体からの光が結像する中間結像面MIが形成される構成となっているが、レンズ群の構成の捉え方として以下のように、中間結像面MIを含む中間レンズ群を有すると解釈することも可能である。すなわち、顕微鏡対物レンズは、最も物体側の正レンズ群と最も像側のレンズ群との間に配置された中間レンズ群を有し、当該中間レンズ群の中に、物体からの光が結像する中間結像面が形成される構成とすることも可能である。ここで、最も物体側の正レンズ群と中間レンズ群との空気間隔および最も像側のレンズ群と中間レンズ群との空気間隔が、顕微鏡対物レンズ全体の中で最大の空気間隔または2番目に大きな空気間隔となるようにすることも可能である。
【0090】
具体的には、前述の実施例1に係る顕微鏡対物レンズ(図3を参照)では、接合レンズCL14(正レンズL109)と接合レンズCL15(正レンズL110)との空気間隔が、顕微鏡対物レンズ全体の中で2番目に大きな空気間隔であり、物体側レンズ群と中間レンズ群との空気間隔となる。また、正メニスカスレンズL204と接合レンズCL21(負レンズL205)との空気間隔が、顕微鏡対物レンズ全体の中で最大の空気間隔であり、中間レンズ群と像側レンズ群との空気間隔となる。前述の実施例2に係る顕微鏡対物レンズ(図6を参照)では、接合レンズCL15(負レンズL111)と正メニスカスレンズL112との空気間隔が、顕微鏡対物レンズ全体の中で最大の空気間隔であり、物体側レンズ群と中間レンズ群との空気間隔となる。また、正メニスカスレンズL202と接合レンズCL21(負レンズL203)との空気間隔が、顕微鏡対物レンズ全体の中で2番目に大きな空気間隔であり、中間レンズ群と像側レンズ群との空気間隔となる。前述の実施例3に係る顕微鏡対物レンズ(図9を参照)では、正メニスカスレンズL103と正レンズL104との空気間隔が物体側レンズ群と中間レンズ群との空気間隔となり、正メニスカスレンズL202と接合レンズCL21(負メニスカスレンズL203)との空気間隔が中間レンズ群と像側レンズ群との空気間隔となる。前述の実施例4に係る顕微鏡対物レンズ(図12を参照)では、負メニスカスレンズL113と正レンズL114との空気間隔が物体側レンズ群と中間レンズ群との空気間隔となり、正メニスカスレンズL205と接合レンズCL21(負レンズL206)との空気間隔が中間レンズ群と像側レンズ群との空気間隔となる。これらは、各実施例に係る顕微鏡対物レンズの構成を示す光路図や、各実施例における各諸元データを示す表からも明らかである。
【符号の説明】
【0091】
G1 第1レンズ群 G2 第2レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16