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特許7468701ウレタン化反応触媒、ウレタン化合物、硬化性組成物、硬化物及びウレタン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ウレタン化反応触媒、ウレタン化合物、硬化性組成物、硬化物及びウレタン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/22 20060101AFI20240409BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240409BHJP
   C08G 18/54 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G18/22
C08G18/10
C08G18/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022566810
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041445
(87)【国際公開番号】W WO2022118624
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020200870
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】桑田 康介
(72)【発明者】
【氏名】谷本 洋一
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308580(JP,A)
【文献】特開2020-189833(JP,A)
【文献】特開2010-235921(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0010810(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0272752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム化合物(A)と、前記ジルコニウム化合物(A)以外のその他の金属化合物(B)とを含有し、前記ジルコニウム化合物(A)中のジルコニウムの総質量100質量部に対する、その他の金属化合物(B)中のその他の金属の総質量が10~80質量部の範囲であり、
ウレタン化反応の原料として、少なくともフェノール性水酸基含有化合物(Y-2)を用いるウレタン化反応触媒であって、
前記その他の金属化合物(B)が、亜鉛化合物、チタン化合物、鉄化合物のいずれか一種類以上であることを特徴とするウレタン化反応触媒。
【請求項2】
ウレタン化反応の原料として、少なくともアルコール性水酸基含有化合物(Y-1)と、フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)とを用いる、請求項1記載のウレタン化反応触媒。
【請求項3】
請求項1記載のウレタン化反応触媒を用いたウレタン化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のウレタン化反応触媒の存在下、ポリイソシアネート化合物と、アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)とを反応させてイソシアネート基含有中間体を得、次いで、前記中間体とフェノール性水酸基含有化合物(Y-2)とを反応させる、ウレタン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応原料の種類によらず、高い触媒能を有するウレタン化反応触媒、前記ウレタン化反応触媒を用いて得られるウレタン化合物、硬化性組成物、硬化物、及び前記ウレタン化触媒を用いたウレタン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂は、一般に、高い柔軟性や伸び、耐衝撃性等に優れる特徴を有することから、塗料や接着剤、電子材料等、様々な分野で広く利用されている。ウレタン樹脂を製造する際に用いるウレタン化触媒としては、有機スズ化合物の他、亜鉛やマグネシウム、アルミニウム等の金属化合物が利用できることが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1には、ウレタン化触媒として、亜鉛やマグネシウム、アルミニウム等のアセチルアセトン化合物を用いる技術が記載されているが、これらのウレタン化反応触媒は触媒能が十分ではなく、特に、ウレタン化反応原料としてフェノール性水酸基を有する化合物を用いる場合には、反応系中にイソシアネート基が残存する、反応系に濁りが生じるなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-136678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、反応原料の種類によらず、高い触媒能を有するウレタン化反応触媒、前記ウレタン化反応触媒を用いて得られるウレタン化合物、硬化性組成物、硬化物、及び前記ウレタン化触媒を用いたウレタン化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ウレタン化触媒としてジルコニウム化合物と、その他の金属化合物とを併用し、かつ、ジルコニウム化合物中のジルコニウムと、その他の金属化合物中のその他の金属との質量比をある一定の割合とすることにより、反応原料の種類によらず、高効率でウレタン化反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ジルコニウム化合物(A)と、前記ジルコニウム化合物(A)以外のその他の金属化合物(B)とを含有し、前記ジルコニウム化合物(A)中のジルコニウムの総質量100質量部に対する、その他の金属化合物(B)中のその他の金属の総質量が10~80質量部の範囲であることを特徴とするウレタン化反応触媒に関する。
【0008】
本発明は更に、前記ウレタン化反応触媒を用いて得られるウレタン化合物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記ウレタン化合物を含有する硬化性組成物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性組成物の硬化物に関する。
【0011】
本発明は更に、前記ウレタン化反応触媒を用いたウレタン化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反応原料の種類によらず、高い触媒能を有するウレタン化反応触媒、前記ウレタン化反応触媒を用いて得られるウレタン化合物、硬化性組成物、硬化物、及び前記ウレタン化触媒を用いたウレタン化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のウレタン化反応触媒は、ジルコニウム化合物(A)と、前記ジルコニウム化合物(A)以外のその他の金属化合物(B)とを含有し、前記ジルコニウム化合物(A)中のジルコニウムの総質量100質量部に対する、その他の金属化合物(B)中のその他の金属の総質量が10~80質量部の範囲であるこことを特徴とする。
【0014】
本発明において前記ジルコニウム化合物(A)は、ジルコニウム原子を有する化合物であれば特に限定なく、多種多様なものを用いることができる。また、本発明では前記ジルコニウム化合物(A)として、一種類を単独で用いて良いし、二種類以上を併用してもよい。
【0015】
前記ジルコニウム化合物のうち、無機ジルコニウム化合物としては、例えば、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム等が挙げられる。
【0016】
前記ジルコニウム化合物のうち、有機ジルコニウム化合物としては、例えば、下記一般式(1)~(6)のいずれかで表される化合物等が挙げられる。
Zr(OR ・・・一般式(1)
Zr(RCOHCOR ・・・一般式(2)
Zr(OR(RCOCHCOR ・・・一般式(3)
Zr(OR(RCOCHCOOR ・・・一般式(4)
Zr(OR(OCOR ・・・一般式(5)
ZrO(OCOR ・・・一般式(6)
[上記一般式(1)~(6)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。R、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。m及びnはそれぞれ1~3の整数であり、mとnとの和は4である。]
【0017】
上記一般式(1)~(6)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数3~6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、R、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0018】
前記ジルコニウム化合物(A)の中でも、触媒能により優れることから、前記一般式(1)~(4)のいずれかで表される化合物が好ましく、前記一般式(2)又は(4)で表される化合物がより好ましい。
【0019】
前記ジルコニウム化合物(A)以外のその他の金属化合物(B)は、特に限定なく、多種多様なものを用いることができる。また、本発明では前記その他の金属化合物(B)として、一種類を単独で用いて良いし、二種類以上を併用してもよい。前記その他の金属化合物(B)の具体例としては、例えば、亜鉛化合物、チタン化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物等が挙げられる。中でも、触媒能により優れることから、亜鉛化合物、チタン化合物、鉄化合物のいずれか一種類以上が好ましく、亜鉛化合物が特に好ましい。更に、より好ましい態様としては、ウレタン化反応触媒の総質量100質量部中、前記ジルコニウム化合物(A)、亜鉛化合物、チタン化合物、及び鉄化合物の合計質量が、80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、95質量部以上であることが特に好ましい。
【0020】
前記亜鉛化合物のうち、無機亜鉛化合物としては、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられる。
【0021】
前記亜鉛化合物のうち、有機亜鉛化合物としては、例えば、下記一般式(7)~(10)のいずれかで表される化合物や、これら以外の亜鉛錯体等が挙げられる。
Zn(OR ・・・一般式(7)
Zn(RCOCHCOR ・・・一般式(8)
Zn(R10COCHCOOR11 ・・・一般式(9)
Zn(OCOR12 ・・・一般式(10)
[上記一般式(7)~(10)中、R及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。R、R、R10、R11はそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。]
【0022】
上記一般式(7)~(10)中、R及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数3~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、R、R、R10、R11はそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0023】
前記亜鉛錯体について、配位子の具体例としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール型配位子;ピリジン、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン等のピリジン型配位子;トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン配位子等が挙げられる。
【0024】
前記亜鉛錯体を用いる場合、予め錯体として調整したものを用いてもよいし、ウレタン化反応の反応系中に、前記一般式(7)~(10)のいずれかで表される化合物と、配位子となる化合物とを添加し、反応系中で錯体を生じさせてもよい。
【0025】
前記亜鉛化合物の中でも、触媒能により優れることから、前記一般式(8)又は(10)で表される化合物或いはイミダゾール型配位子を有する亜鉛錯体が好ましく、前記一般式(10)で表される化合物又はイミダゾール型配位子を有する亜鉛錯体がより好ましい。
【0026】
前記チタン化合物のうち、無機チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、水酸化亜鉛、塩化チタン等が挙げられる。
【0027】
前記チタン化合物のうち、有機チタン化合物としては、例えば、下記一般式(11)~(15)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
Ti(OR13 ・・・一般式(11)
Ti(R14COHCOR15 ・・・一般式(12)
Ti(OR13(R14COCHCOR15 ・・・一般式(13)
Ti(OR13(R16COCHCOOR17 ・・・一般式(14)
(R13O)Ti-O-Ti(OR13 ・・・一般式(15)
[上記一般式(11)~(15)中、R13は炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。R14、R15、R16、R17はそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。]
【0028】
上記一般式(11)~(15)中、R13は炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。また、R14、R15、R16、R17はそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0029】
前記チタン化合物の中でも、触媒能により優れることから、前記一般式(11)~(14)のいずれかで表される化合物が好ましく、前記一般式(14)で表される化合物がより好ましい。
【0030】
前記鉄化合物のうち、無機鉄化合物としては、例えば、酸化鉄、水酸化鉄、塩化鉄等が挙げられる。
【0031】
前記鉄化合物のうち、有機鉄化合物としては、例えば、下記一般式(16)で表される化合物が挙げられる。
Fe(R18COHCOR19 ・・・一般式(16)
[上記一般式(16)中、R18、R19はそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。]
【0032】
上記一般式(16)中、R18、R19はそれぞれ独立して炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基である。中でも、触媒能により優れることから、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0033】
本発明では、前記ジルコニウム化合物(A)中のジルコニウムの総質量100質量部に対する、前記その他の金属化合物(B)中のその他の金属の総質量は、10~80質量部の範囲である。両金属の比率が当該範囲内であることにより、特に優れた触媒能を発揮する。更に、前記ジルコニウム化合物(A)中のジルコニウムの総質量100質量部に対する、前記その他の金属化合物(B)中のその他の金属の総質量が10~70質量部の範囲であることが好ましく、15~50質量部の範囲であることがより好ましい。
【0034】
本発明のウレタン化反応触媒は、反応原料の種類によらず高い触媒能を有する。したがって、本発明のウレタン化反応触媒を用いたウレタン化合物の製造方法においては、反応原料は特に限定なく、多種多様なものを用いることができる。また、本発明のウレタン化反応触媒は、あらゆるウレタン化反応用の触媒として、広く利用することができる。本願発明のウレタン化反応を用いて製造されるウレタン化合物は、例えば、重合性不飽和結合等の反応性基を有する硬化性ウレタン樹脂や、水酸基或いはイソシアネート基を有する2液硬化型ウレタン樹脂、高分子量の熱可塑性ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0035】
本発明のウレタン化合物の製造方法において利用できる反応原料としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(X)、アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)、フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)等が挙げられる。
【0036】
ウレタン化反応触媒として従来から知られていたジルコニウム化合物や亜鉛化合物、チタン化合物は、特に、前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)を反応原料とする場合に触媒活性が低い傾向にあったが、本願発明のウレタン化反応触媒は、前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)を反応原料とする場合であっても、高い触媒能を示す。
【0037】
前記ポリイソシアネート化合物(X)は、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記構造式(17)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0038】
【化1】
[式中、R20はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。R21はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、又は構造式(1)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。mは0又は1~3の整数であり、lは1以上の整数である。]
【0039】
前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)は、例えば、モノオールモノマー、ジオールモノマー、3官能以上のポリオールモノマー、ポリオレフィンポリオール化合物、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ラクトン変性ポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物等が挙げられる。前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
前記モノオールモノマーは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の低級アルコール化合物;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール当の高級アルコール化合物;シクロヘキサノール等の脂環構造含有モノオール化合物等が挙げられる。
【0041】
前記ジオールモノマーは、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖の脂肪族ジオール化合物;プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチルブタン-14-ブタンジオール、2,3-ジメチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチルペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-プロピルペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジエチル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジエチル-1,6-ヘキサンジオール等の分岐鎖を有する脂肪族ジオール化合物;シクロヘキサンジオールやシクロヘキサンジメタノール等の脂環構造含有ジオール化合物等が挙げられる。
【0042】
前記3官能以上のポリオールモノマーは、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の3官能以上の脂肪族ポリオール化合物等が挙げられる。
【0043】
前記ポリオレフィンポリオール化合物としては、例えば、ポリオレフィン構造やポリジエン構造を有するポリオール化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。ポリオレフィンポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0044】
前記ポリエーテルポリオール化合物は、前記ジオールモノマーや3官能以上のポリオールモノマーと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるものが挙げられる。ポリエーテルポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0045】
前記ポリエステルポリオール化合物は、前記ジオールモノマーや3官能以上のポリオールモノマーと、多塩基酸化合物とを反応原料とするものが挙げられる。前記多塩基酸化合物は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;トラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;1,2,5-ヘキサントリカルボン酸等の3官能以上の脂肪族ポリカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸等の3官能以上の脂環族ポリカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸等の3官能以上の芳香族ポリカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。これら多塩基酸化合物はそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。ポリエステルポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0046】
前記ラクトン変性ポリオール化合物は、例えば、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン等のラクトン化合物の開環重合物や、前記ジオールモノマーや3官能以上のポリオールモノマーと前記ラクトン化合物との重合物等が挙げられる。ラクトン変性ポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~4,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0047】
前記ポリカーボネートポリオール化合物は、例えば、前記ジオールモノマーや3官能以上のポリオールモノマーと、カルボニル化剤とを反応原料とするものが挙げられる。前記カルボニル化剤は、例えば、ホスゲン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0048】
前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)は、例えば、芳香族モノヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物、3官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物、フェノール樹脂、ポリエーテルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物等が挙げられる。前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
前記芳香族モノヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ナフトール等が挙げられる。
【0050】
前芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF
、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0051】
前記3官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物は、例えば、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシトリフェニルメタン、トリヒドロキシトリフェニルエタン等が挙げられる。
【0052】
前記フェノール樹脂は、例えば、前記芳香族モノヒドロキシ化合物、前記芳香族ジヒドロキシ化合物、前記3官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物の1種乃至複数種を原料とする各種のノボラック樹脂や、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂等が挙げられる。ラフェノール樹脂の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が300~3,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0053】
前記ポリエーテルポリオール化合物は、例えば、前記芳香族モノヒドロキシ化合物、前記芳香族ジヒドロキシ化合物、前記3官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物の1種乃至複数種と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるものが挙げられる。ポリエーテルポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0054】
前記ポリエステルポリオール化合物は、例えば、前記芳香族モノヒドロキシ化合物、前記芳香族ジヒドロキシ化合物、前記3官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物の1種乃至複数種と、多塩基酸化合物とを反応原料とするものが挙げられる。前記多塩基酸化合物は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;トラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;1,2,5-ヘキサントリカルボン酸等の3官能以上の脂肪族ポリカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸等の3官能以上の脂環族ポリカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体;トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸等の3官能以上の芳香族ポリカルボン酸化合物、及びこれらの酸無水物や酸ハロゲン化物、アルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。これら多塩基酸化合物はそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。ポリエステルポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0055】
前記ポリカーボネートポリオール化合物は、例えば、前記芳香族モノヒドロキシ化合物、前記芳香族ジヒドロキシ化合物、前記3官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物の1種乃至複数種と、カルボニル化剤とを反応原料とするものが挙げられる。前記カルボニル化剤は、例えば、ホスゲン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオール化合物の分子量は特に限定されないが、一般には、数平均分子量(Mn)が500~5,000の範囲であるものが広く利用されている。
【0056】
本発明のウレタン化触媒は、従来公知のウレタン化触媒と同様に用いることができ、本発明のウレタン化触媒を用いたウレタン化反応は、一般的なウレタン化反応と同様の条件で行うことができる。具体的には、反応原料を40~160℃程度に加熱し、1~20時間程度反応させる方法が挙げられる。
【0057】
本発明のウレタン化触媒の添加量は、十分な触媒活性が得られることから、ウレタン化合物の反応原料の総質量に対し、0.01~0.09質量%の範囲であることが好ましく、0.03~0.07質量%の範囲であることが好ましい。
【0058】
ウレタン化合物の製造は、必要に応じて溶媒中で行ってもよい。ここで用いる溶媒は、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトンなどの極性有機溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン-プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;および共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類;酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族および脂環族溶媒等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、複数種の混合溶媒として用いてもよい。溶媒の使用量は特に限定されないが、反応原料の総質量に対し、20~300質量%の範囲であることが好ましい。
【0059】
ウレタン化合物の反応原料において、反応原料中のイソシアネート基と水酸基とのモル比は、得られるウレタン化合物における所望の性能や、用途等に応じて適宜調整されるが、一般的には(イソシアネート基のモル比)/(水酸基のモル比)=1/0.95~1/5.0の範囲であることが好ましい。
【0060】
ウレタン化合物の反応原料の仕込み順は、得られるウレタン化合物における所望の性能や、用途等に応じて、反応原料を一括で仕込む方法、原料の一部を分割で仕込む方法、多段反応とする方法などが挙げられる。前述の通り、本発明のウレタン化触媒は、特に、前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)を反応原料とする場合に、従来公知のウレタン化触媒と比較して高い触媒能を示す。このような特性を生かしたウレタン化合物の製造例の一例として、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(X)と、前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)とを反応させてイソシアネート基含有中間体を得(工程1)、次いで、前記中間体とフェノール性水酸基含有化合物(Y-2)とを反応させる(工程2)ウレタン化合物の製造方法(以下製造方法(1)と略記する)が挙げられる。
【0061】
前記製造方法(1)のような多段反応にてウレタン化合物を製造する場合、前記ウレタン化触媒は、第一工程にて全量を添加してもよいし、複数の工程において分割添加してもよい。いずれの場合においても、ウレタン化触媒の添加量は、前述の通り、ウレタン化合物の反応原料の総質量に対し、0.01~0.09質量%の範囲であることが好ましく、0.03~0.07質量%の範囲であることが好ましい。
【0062】
前記製造方法(1)の工程1において、前記ポリイソシアネート化合物(X)と、前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)との反応割合は、前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)中の水酸基に対し、前記ポリイソシアネート化合物(X)中のイソシアネート基が過剰となる条件であればよく、具体的な比率は、得られるウレタン化合物における所望の性能や、用途等に応じて適宜調整される。中でも、得られるウレタン化合物を硬化性組成物用に用いた際の硬化物物性に優れることから、前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)中の水酸基1モルに対し、前記ポリイソシアネート化合物(X)中のイソシアネート基が1.2~2.3モルとなる割合であることが好ましい。
【0063】
前記工程1の反応温度は、用いる前記ポリイソシアネート化合物(X)及び前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)の種類等に応じて適宜変更されるが、反応が効率よく進行することから、40~80℃の範囲であることが好ましい。また、反応時間は、1~10時間の範囲であることが好ましく、1~6時間の範囲であることがより好ましい。
【0064】
前記製造方法(1)の工程2において、前記工程1で得た中間体と、前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)との反応割合は、得られるウレタン化合物における所望の性能や、用途等に応じて適宜調整される。中でも、得られるウレタン化合物を硬化性組成物用に用いた際の硬化物物性に優れることから、前記中間体中のイソシアネート基1モルに対し、前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)中の水酸基が2.0~7.0モルとなる割合であることが好ましい。
【0065】
前記工程1の反応温度は、前記ポリイソシアネート化合物(X)、前記アルコール性水酸基含有化合物(Y-1)及び前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)の種類等に応じて適宜変更されるが、反応が効率よく進行することから、100~160℃の範囲であることが好ましい。また、反応時間は、1~10時間の範囲であることが好ましい。
【0066】
前記製造方法(1)にて得られるウレタン化合物の具体構造や分子量等は、反応原料の種類や、ウレタン化合物における所望の性能、用途等に応じて適宜調整される。中でも、得られるウレタン化合物を硬化性組成物用に用いた際の硬化物物性に優れることから、重量平均分子量(Mw)が5,000~50,000の範囲であることが好ましい。本発明においてウレタン化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0067】
本発明のウレタン化反応触媒を用いて得られるウレタン化合物は、一般的なウレタン化合物同様、様々な用途に用いることができる。このうち、ウレタン化合物の反応原料として前記フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)を用いて得られるウレタン化合物(或いはウレタン樹脂)は、フェノール性水酸基とイソシアネート基とによるウレタン結合が高温条件下において解離することから、フェノール性水酸基或いはイソシアネート基と反応し得る化合物と組み合わせることにより、硬化性組成物として用いることができる。
【0068】
前記フェノール性水酸基或いはイソシアネート基と反応し得る化合物の一例としては、エポキシ樹脂が挙げられる。前記エポキシ樹脂はどのような具体構造を有するものであってもよく、特に限定なく用いることができる。具体例の一部としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0069】
前記ウレタン化合物と、前記エポキシ樹脂との配合割合は、所望の硬化物物性等に応じて適宜調整される。特に、硬化物における機械物性等に優れることから、ウレタン化合物100質量部に対し、エポキシ樹脂が10~1000質量部となる範囲であることが好ましい。
【0070】
前記硬化性組成物は、必要に応じて、その他の化合物又は樹脂成分や、硬化促進剤、溶剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0071】
前記その他の化合物又は樹脂成分としては、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリアリレーン樹脂等のバインダー樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルコキシシラン系硬化剤、多塩基酸無水物、シアネート化合物等の反応性化合物等が挙げられる。
【0072】
前記硬化促進剤としては、本発明のウレタン化反応触媒や、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)等の第3級アミン、イミダゾール化合物、4-ジメチルアミノピリジン等のピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これら高加促進剤は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これら硬化促進剤の添加量は、硬化性組成物中の溶剤を除く成分の合計100質量部に対し、0.001~5質量%の範囲であることが好ましい。
【0073】
前記溶剤は、例えば、前記製造方法(1)の反応溶媒として例示した各種の溶剤が挙げられる。溶剤の使用量は、硬化性組成物の不揮発分が10~80質量%となる割合であることが好ましい。
【0074】
前記硬化性組成物は、加熱することにより硬化物を得ることができる。加熱温度は、150~220℃の範囲であることが好ましい。硬化性組成物が溶剤を使用する場合には、予め溶剤を乾燥させるための加熱乾燥時間を設けてもよい。加熱乾燥の温度は用いる溶剤によって適宜調整されるが、50~120℃の範囲であることが好ましい。
【0075】
前記硬化性組成物の用途は限定されず、一般的な熱硬化性樹脂材料と同様に用いることができる。前記製造方法(1)にて得られるウレタン化合物は、ウレタン樹脂としての柔軟性或いは靱性と、フェノール性水酸基含有化合物(Y-2)に起因する耐熱性等を兼備することから、特に、電子材料向けの耐熱材料等に好適に用いることができる。
【実施例
【0076】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
イソシアネート基含有率の測定方法
フラスコにウレタンプレポリマー2g、酢酸エチル20ml、ジノルマルブチルアミン10%酢酸エチル溶液10mlを加えて、室温で20分間撹拌する。その後、ブロモフェノールブルー指示薬を2滴加えて、0.5mol/L(0.0005mol/mL)塩酸で滴定を行う。滴定した量(V2[ml])を下記の計算式に代入し、イソシアネート基含有率[質量%]を算出する。
イソシアネート基含有量[質量%]=42.02×(V1-V2)×0.0005×100/2
(式中の記号及び数字の説明)
V1:ウレタンプレポリマーを加えず、ブランクで測定した際の塩酸の滴定量[ml]
0.0005:塩酸の濃度[mol/ml]
42.02:イソシアネート基の分子量[g/mol]
【0078】
赤外線吸収スペクトル(IR)の測定
ウレタン樹脂をKBr板上に薄く塗布し、日本分光社製「FT/IR-4100」を用いて、赤外線吸収スペクトルを測定した。イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の位置にピークが存在するか否かで、残存するイソシアネート基の有無を確認した。
【0079】
実施例1 ウレタン樹脂(1)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスZC-580」)0.0985g、亜鉛錯体(楠本化成株式会社製「K-KAT XK-614」)0.0295gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(1)を得た。ウレタンプレポリマー(1)のイソシアネート基含有率は、0.892質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、4時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(1)を得た。
実施例1において、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)中のジルコニウムの総質量に対する、亜鉛錯体中の亜鉛の総質量の割合は、31%であった。
【0080】
実施例2 ウレタン樹脂(2)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスZC-580」)0.0985g、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスTC-750」)0.0295gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(2)を得た。ウレタンプレポリマー(2)のイソシアネート基含有率は、0.899質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、7時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(2)を得た。
実施例2において、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)中のジルコニウムの総質量に対する、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)中のチタンの総質量の割合は、25%であった。
【0081】
実施例3 ウレタン樹脂(3)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスZC-150」)0.0985g、鉄(III)アセチルアセトネート(日本化学産業株式会社製「ナーセム第二鉄」)0.0295gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(3)を得た。ウレタンプレポリマー(3)のイソシアネート基含有率は、0.883質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、6時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(3)を得た。
実施例3において、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート中のジルコニウムの総質量に対する、鉄(III)アセチルアセトネート中の鉄の総質量の割合は、23%であった。
【0082】
実施例4 ウレタン樹脂(4)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスZC-150」)0.0985g、2-エチルヘキサン酸亜鉛(和光純薬株式会社製)0.0200g、1-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)0.0095gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(4)を得た。ウレタンプレポリマー(4)のイソシアネート基含有率は、0.897質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、5時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(4)を得た。
実施例4において、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート中のジルコニウムの総質量に対する、2-エチルヘキサン酸亜鉛中の亜鉛の総質量の割合は、20%であった。
【0083】
比較例1 ウレタン樹脂(1’)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスZC-700」)0.1280gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(1’)を得た。ウレタンプレポリマー(1’)のイソシアネート基含有率は、0.940質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、11時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(1’)を得た。
【0084】
比較例2 ウレタン樹脂(2’)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、亜鉛錯体(楠本化成株式会社製「K-KAT XK-614」)0.1280gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(2’)を得た。ウレタンプレポリマー(2’)のイソシアネート基含有率は、0.962質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、11時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(2’)を得た。
【0085】
比較例3 ウレタン樹脂(3’)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価=32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、アルミニウム錯体(楠本化成株式会社製「K-KAT XK-5218」)0.1280gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(3’)を得た。ウレタンプレポリマー(3’)のイソシアネート基含有率は、1.455質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、11時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(3’)を得た。
【0086】
比較例4 ウレタン樹脂(4’)の製造
(工程1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート283.9g、イソホロンジイソシアネート23.6g(0.106mol)、ポリブタジエンジオール(水酸基価32.2mgKOH/g)185.0g(0.053mol)、チタンイソプロポキシトリスイソステアレート(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスTC-800」)0.1280gを加えた。60℃まで昇温した後、4時間攪拌し、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(4’)を得た。ウレタンプレポリマー(4’)のイソシアネート基含有率は、1.576質量%であった。
(工程2)次いで、反応溶液を80℃まで加熱し、オルソクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量668)75.3g(0.113mol)を加えた。140℃まで昇温した後、11時間攪拌し、粘度の上昇が収まったことを確認して、ウレタン樹脂(4’)を得た。
【0087】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率の評価
実施例1~4及び比較例1~4について、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率を表1にまとめた。実施例1~4及び比較例1~4のいずれも、ウレタンプレポリマーの製造に要した反応時間(工程1の反応時間)は4時間であり、また、反応終点における理論イソシアネート基含有率は0.906質量%である。実施例1~4はいずれもイソシアネート基含有量が理論値を下回っており、反応が十分に進行したことが分かる。他方、比較例1~4はいずれもイソシアネート基含有量が理論値を超えており、反応が十分に進行していないことが分かる。
【0088】
ウレタン樹脂製造時の反応時間と残存イソシアネート基の評価
実施例1~4及び比較例1~4について、ウレタンプレポリマーからウレタン樹脂を製造する際に要した反応時間(工程2の反応時間)を表1にまとめた。また、得られたウレタン樹脂中にイソシアネート基が残存するか否かを前記の条件で測定した赤外線吸収スペクトルにて確認した。
【0089】
ウレタン樹脂の外観評価
実施例1~4及び比較例1~4について、得られたウレタン樹脂の外観を目視観察し、濁りの有無を確認した。
【0090】
【表1】