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  • 特許-シェワネラ属細菌、及びその使用 図1
  • 特許-シェワネラ属細菌、及びその使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】シェワネラ属細菌、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240409BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240409BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20240409BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A23K10/16
A61K8/99
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023525927
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2022022593
(87)【国際公開番号】W WO2022255477
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2021094382
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-03460
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 史明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広顕
(72)【発明者】
【氏名】光増 遼太郎
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】THEBERGE, A. L.,AN INVESTIGATION CORRELATING BIOLUMINESCENCE AND METAL REDUCTION UTILIZING SHEWANELLA WOODYI.,OhioLINK Electronic Theses and Dissertations Center,2019年05月,http://rave.ohiolink.edu/etdc/view?acc_num=dayton1555331326931868
【文献】THEBERGE, A. L. et al.,Soluble electron acceptors affect bioluminescence from Shewanella woodyi.,Luminescence,35(3),2020年05月,pp. 427-433,doi: 10.1002/bio.3744.
【文献】KATO C., NOGI Y.,Correlation between phylogenetic structure and function: examples from deep-sea Shewanella.,FEMS Microbiol Ecol.,35(3),2001年05月,pp. 223-230,doi: 10.1111/j.1574-6941.2001.tb00807.x. PMID: 11311432.
【文献】Definition: Shewanella woodyi 16S ribosomal RNA gene, complete sequence.,Database GenBank [online],1997年10月31日,[retrieved on 2022.06.30], Retrieved from the internet: <URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AF003549.1/>,Accession No. AF003549
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A23L 33/135
A23K 10/16
A61K 8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェワネラ・ウーディイ GS001株(受託番号NITE BP-03460)、又は、
前記GS001株の全ゲノムに対する変異の割合が10%以下であり、且つ、グルコースを唯一の有機炭素源として含み、且つ0.5%(w/v)の塩化ナトリウムを含む培地で培養したときの比増殖速度が、同じ条件下で培養した前記GS001株の比増殖速度に0.7を乗じた値以上であるGS001変異株。
【請求項2】
シェワネラ・ウーディイ GS001株、又は、
前記GS001株の全ゲノムに対する変異の割合が10%以下であり、且つ、グルコースを唯一の有機炭素源として含み、且つ0.5%(w/v)の塩化ナトリウムを含む培地で培養したときの比増殖速度が、同じ条件下で培養した前記GS001株の比増殖速度に0.7を乗じた値以上であるGS001変異株を含む、組成物。
【請求項3】
食品、飼料、又は餌料、又は化粧料である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
シェワネラ・ウーディイ GS001株、又は、
前記GS001株の全ゲノムに対する変異の割合が10%以下であり、且つ、グルコースを唯一の有機炭素源として含み、且つ0.5%(w/v)の塩化ナトリウムを含む培地で培養したときの比増殖速度が、同じ条件下で培養した前記GS001株の比増殖速度に0.7を乗じた値以上であるGS001変異株の乾燥粉末。
【請求項5】
シェワネラ・ウーディイ GS001株、又は、
前記GS001株の全ゲノムに対する変異の割合が10%以下であり、且つ、グルコースを唯一の有機炭素源として含み、且つ0.5%(w/v)の塩化ナトリウムを含む培地で培養したときの比増殖速度が、同じ条件下で培養した前記GS001株の比増殖速度に0.7を乗じた値以上であるGS001変異株の抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェワネラ属細菌、及びその使用に関する。特に、シェワネラ・ウーディイの新規菌株に関する。また、前記新規菌株を含む組成物、乾燥粉末、及び抽出物に関する。
本願は、2021年6月4日に、日本に出願された特願2021-094382号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
エイコサペンタエン酸(EPA)は、抗肥満効果及び中性脂質低下効果等を有するオメガ3脂肪酸の一種である。EPAは、魚に多く含まれることが知られている。しかしながら、魚からEPAを製造する場合、魚に生物濃縮された重金属成分が含まれている可能性があり、重金属による健康被害が懸念される。また、限りある海洋資源である魚の乱獲にもつながる可能性がある。
【0003】
シェワネラ(Shewanella)属等の海洋細菌は、EPA等の脂肪酸を生産することが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1~3)。しかしながら、シェワネラ属細菌は、動物由来成分を含む培地を用いないと、良好に増殖しないことが多い(非特許文献3、4)。そのため、シェワネラ属細菌を用いたEPAの工業生産は実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平7-61272号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Masataka Satomi, Hiroshi Oikawa, Yutaka Yano, Shewanella marinintestina sp. nov., Shewanella schlegeliana sp. nov. and Shewanella sairae sp. nov., novel eicosapentaenoic-acid-producing marine bacteria isolated from sea-animal intestines. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2003),53,491-499.
【文献】Jinwei Zhang, J. Grant Burgess, Shewanella electrodiphila sp. nov., a psychrotolerant bacterium isolated from Mid-Atlantic Ridge deep-sea sediments. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2015),65,2882-2889.
【文献】鈴木信雄、矢澤一良、渡部和郎、赤堀結花里、石川千夏子、近藤聖、高田清克、エイコサペンタエン酸産生細菌SCRC-2738の大量培養条件の検討 Nippon Suisan Gakkaishi 58(2),323-328(1992).
【文献】Esra Ersoy Omeroglu, Ismail Karaboz, and Mert Sudagidan, Characteristics and genetic diversity of bioluminescent Shewanella woodyi strains isolated from the Gulf of Izmir, Turkey. Folia Microbiol (2014) 59(1), 79-92.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シェワネラ属細菌を用いてEPAを工業生産するためには、高いEPA生産能を有するシェワネラ属細菌が、グルコース等を唯一の有機炭素源として含む完全合成培地で、良好に増殖できることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、グルコースを唯一の有機炭素源として良好に増殖し、且つ高いEPA生産能を有するシェワネラ属細菌、前記シェワネラ属細菌を含む組成物、並びに前記シェワネラ属細菌の乾燥粉末及び抽出物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
[1]シェワネラ・ウーディイ GS001株(受託番号NITE BP-03460)又はその変異株。
[2]シェワネラ・ウーディイ GS001株又はその変異株を含む、組成物。
[3]食品、飼料、又は餌料、又は化粧料である、[2]に記載の組成物。
[4]シェワネラ・ウーディイ GS001株又はその変異株の乾燥粉末。
[5]シェワネラ・ウーディイ GS001株又はその変異株の抽出物。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、グルコースを唯一の有機炭素源として良好に増殖し、且つ高いEPA生産能を有するシェワネラ属細菌、前記シェワネラ属細菌を含む組成物、並びに前記シェワネラ属細菌の乾燥粉末及び抽出物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】100mL三角フラスコに入れた50mLの改変M9+グルコース(Glc)液体培地を用いて、シェワネラ・ウーディイ(Shewanella woodyi)の単離株(GS001株)を培養した結果を示す。
図2】16SrDNA配列に基づく、シェワネラ・ウーディイ GS001株の系統解析の結果を示す。
図3A】ジャーファーメンターを用いた、シェワネラ・ウーディイ GS001株の培養試験の結果を示す。
図3B】ジャーファーメンターを用いた、シェワネラ・ウーディイ GS001株の培養試験において、乾燥細胞重量当たりのEPA含有量を測定した結果を示す。
図4】GS001株の増殖に対するNaCl濃度の影響を調べた結果を示す。
図5】シェワネラ・ウーディイ GS001株又はシェワネラ・エレクトロディフィラ(Shewanella electrodiphila)ATCC BAA-2408を用いた改変M9+Glc液体培地での増殖試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「を含む」(comprise)という用語は、対象となる構成要素以外の構成要素を含んでいてもよいことを意味する。「からなる」(consist of)という用語は、対象となる構成要素以外の構成要素を含まないことを意味する。「から本質的になる」(consist essentially of)という用語は、対象となる構成要素以外の構成要素を特別な機能を発揮する態様(発明の効果を完全に喪失させる態様など)では含まないことを意味する。本明細書において、「を含む」(comprise)と記載する場合、「からなる」(consist of)態様、及び「から本質的になる」(consist essentially of)態様を包含する。
【0012】
細菌は、単離されたものであり得る。「単離された」とは、天然状態又は他の成分から分離された状態を意味する。「単離された」ものは、他の成分を実質的に含まないものであり得る。「他の成分を実質的に含まない」とは、単離された成分に含まれる他の成分の含有量が無視できる程度であることを意味する。単離された成分に含まれる他の成分の含有量は、例えば、10質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.1質量%以下であり得る。本明細書に記載される細菌は、単離された細菌であり得る。
【0013】
「グルコースを唯一の有機炭素源として増殖する」とは、有機炭素源としてグルコースのみを含有する培地で、増殖することをいう。
「合成培地」とは、培地に含まれる化学成分が明確である培地をいう。合成培地は、化学物質名が明確である化学成分を混合して調製される。
「半合成培地」とは、合成培地に、化学的組成が不明確な物質の混合物である生物由来物質を添加した培地をいう。生物由来物質としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、肉エキス等が挙げられる。
【0014】
本明細書において、「エイコサペンタエン酸」又は「EPA」という用語は、エイコサペンタエン酸(遊離型)及びその誘導体を包含する。エイコサペンタエン酸の誘導体としては、エステル化型、リン脂質結合型、ホスファチジルグリセロール結合型、モノグリセリド型、ジグリセリド型、トリグリセリド型、これらの塩等が挙げられる。
【0015】
<シェワネラ・ウーディイの単離株>
一態様において、本発明は、シェワネラ・ウーディイ(Shewanella woodyi) GS001株(受託番号NITE BP-03460)又はその変異株を提供する。
【0016】
シェワネラ・ウーディイ GS001株(以下、「GS001株」という)は、深海魚であるニギスの腸管から単離された菌株である。GS001株は、16SrDNA配列に基づく系統解析により、シェワネラ・ウーディイと同定された(図2参照)。GS001株の16SrDNA配列を配列番号1に示す。
【0017】
GS001株は、グルコースを唯一の有機炭素源として良好に増殖することができるという特徴を有する。例えば、GS001株は、10%(w/v)グルコースを含む改変M9液体培地(改変M9+Glc液体培地)を50mL入れた100mLフラスコ用いて、15℃で振盪培養(150rpm)したとき、48時間で、OD600nmが5以上の菌密度に増殖することができる。
GS001株は、グルコース及び酵母エキスを含む半合成培地で良好に増殖することができるという特徴を有する。例えば、GS001株は、0.5%(w/v)の酵母エキスを含む改変M9+Glc液体培地を2L入れた3Lジャーファーメンター用いて、15℃で通気培養(1.0vvm air、150~750rpm)し、有機炭素源としてのグルコース溶液、窒素源としてのアンモニウム水溶液をそれぞれ適切な速度で流加したとき、75時間で、乾燥細胞重量が35g/L以上に増殖することができる。
GS001株は、EPA含有量が高いという特徴を有する。例えば、GS001株を、0.5%(w/v)の酵母エキスを含む改変M9+Glc液体培地を2L入れた3Lジャーファーメンター用いて、15℃で通気培養(1vvm air、150~750rpm)したとき、乾燥細胞重量当たりのEPA含有量は、0.5g/100g乾燥細胞重量以上に維持され得る。
GS001株は、0.5%(w/v)という低い塩化ナトリウム濃度で増殖可能であるという特徴を有する。例えば、GS001株は、塩化ナトリウム濃度を0.5%(w/v)に変更した改変M9+Glc培地を50mL入れた100mLフラスコ用いて、15℃で振盪培養(150rpm)したとき、48時間で、OD600nmが3以上の菌密度に増殖することができる。
GS001株は、上記のような特徴を有するため、EPAの工業生産に適している。
【0018】
GS001株は、2021年4月15日付で、受託番号NITE P-03460として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託され、受託番号NITE BP-03460として、2022年4月4日付で国際寄託に移管されている。
寄託者氏名:江原 岳
寄託者住所:日本国千葉県佐倉市坂戸631
寄託者は、本出願において寄託生物について言及する権限を出願人に与えている。寄託者は、寄託生物が公衆に利用可能となる旨の同意を出願人に与えている。
【0019】
「変異株」とは、元の菌株のゲノムに変異が生じた菌株をいう。変異は、自然発生的に生じたものであってもよく、人為的に生じたものであってもよい。人為的にゲノムに変異を生じさせる手法は、特に限定されない。人為的に変異を生じさせる手法としては、例えば、紫外線照射、放射線照射等の高エネルギー電磁波の照射;亜硝酸などによる化学的処理;遺伝子導入、ゲノム編集などの遺伝子工学的手法等が挙げられる。
変異株は、元の菌株の全ゲノムに対する変異の割合が、例えば、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.3%以下、又は0.1%以下であることが好ましい。変異株の16SrDNA配列は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を有してもよい。
【0020】
GS001株の変異株(以下、「GS001変異株」という)は、グルコースを唯一の有機炭素源として培養したときの比増殖速度が、同じ条件で培養したGS001株と同等程度又は同等以上であることが好ましい。例えば、同じ培養条件下で培養したとき、GS001変異株の比増殖速度は、GS001株の比増殖速度に0.7(又は、0.75、0.8、0.85、0.9.0.95、0.97、0.98、0.99、若しくは1)を乗じた値以上であることが好ましい。例えば、GS001変異株は、10%グルコースを含む改変M9液体培地(改変M9+Glc培地)を30mL入れた100mLフラスコ用いて、15℃で振盪培養(150rpm)したとき、48時間で、OD600nmが5以上の菌密度に増殖することが好ましい。
【0021】
GS001変異株は、グルコース及び酵母エキスを含む半合成培地で培養したときの比増殖速度が、同じ条件で培養したGS001株と同等程度又は同等以上であることが好ましい。例えば、同じ培養条件下で培養したとき、GS001変異株の比増殖速度は、GS001株の比増殖速度に0.7(又は、0.75、0.8、0.85、0.9.0.95、0.97、0.98、0.99、若しくは1)を乗じた値以上であることが好ましい。例えば、GS001変異株は、0.5%(w/v)の酵母エキスを含む改変M9+Glc液体培地を2L入れた3Lジャーファーメンター用いて、15℃で通気培養(1vvm air、150~750rpm)したとき、75時間で、乾燥細胞重量が30g/L以上に増殖することが好ましい。
【0022】
GS001変異株は、グルコースを唯一の有機炭素源として培養したときの乾燥細胞重量当たりのEPA含有量が、同じ条件で培養したGS001株と同等程度であることが好ましい。例えば、同じ培養条件下で培養したとき、GS001変異株の乾燥細胞重量当たりのEPA含有量が、GS001株のEPA含有量に0.7(又は、0.75、0.8、0.85、0.9.0.95、0.97、0.98、0.99、若しくは1)を乗じた値程度であることが好ましい。
【0023】
GS001変異株は、グルコース及び酵母エキスを含む半合成培地で培養したときの乾燥細胞重量当たりのEPA含有量が、同じ条件で培養したGS001株と同等程度であることが好ましい。例えば、同じ培養条件下で培養したとき、GS001変異株の乾燥細胞重量当たりのEPA含有量が、GS001株のEPA含有量に0.7(又は、0.75、0.8、0.85、0.9.0.95、0.97、0.98、0.99、若しくは1)を乗じた値程度であることが好ましい。例えば、GS001変異株を、0.5%(w/v)の酵母エキスを含む改変M9+Glc液体培地を2L入れた3Lジャーファーメンター用いて、15℃で通気培養(1vvm air、150~750rpm)したとき、乾燥細胞重量当たりのEPA含有量は、0.5g/100g乾燥細胞重量程度に維持されることが好ましい。
【0024】
GS001変異株は、0.5%(w/v)の塩化ナトリウムを含む培地で増殖できることが好ましい。例えば、グルコースを唯一の有機炭素源として含み、且つ0.5%(w/v)の塩化ナトリウムを含む培地で培養したときの比増殖速度が、同じ条件で培養したGS001株と同等以上であることが好ましい。例えば、同じ培養条件下で培養したとき、GS001変異株の比増殖速度は、GS001株の比増殖速度に0.7(又は、0.75、0.8、0.85、0.9.0.95、0.97、0.98、0.99、若しくは1)を乗じた値以上であることが好ましい。例えば、GS001変異株は、塩化ナトリウム濃度を0.5%(w/v)に変更した改変M9+Glc培地を50mL入れた100mLフラスコ用いて、15℃で振盪培養(150rpm)したとき、48時間で、OD600nmが3以上の菌密度に増殖することが好ましい。
【0025】
GS001株及びGS001変異株は、従属栄養細菌の培養に通常用いられる培地を用いて、培養することができる。培地としては、例えば、有機炭素源、窒素源、リン源、微量元素(亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガン、モリブデン、鉄、ニッケルなど)等を含む培地が挙げられる。有機炭素源としては、例えば、グルコース、デキストラン、スターチ、酵母エキス等が挙げられる。窒素源としては、例えば、アンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩、アミノ酸、ペプトン等が挙げられる。リン源としては、例えば、リン酸塩等が挙げられる。培地は、例えば、M9培地、M9培地の改変培地(改変M9培地等)等の最小培地に有機炭素源を添加したものであってもよい。
【0026】
合成培地を用いる場合、好ましい有機炭素源としては、グルコースが挙げられる。半合成培地を用いる場合、好ましい有機炭素源としては、酵母エキスが挙げられる。半合成培地は、有機炭素源として、グルコース及び酵母エキスを含んでもよい。
【0027】
培地は、0.5~5%(w/v)の塩化ナトリウムを含むことが好ましい。培地の塩化ナトリウム濃度は、0.5~3%(w/v)がより好ましい。
【0028】
培地は、固体培地であってもよく、液体培地であってもよい。維持のためには、固体培地を用いることが好ましい。増殖させる場合には、液体培地を用いることが好ましい。
【0029】
培地のpHとしては、例えば、pH6~9が挙げられる。培地のpHは、例えば、pH7~8.5が好ましく、pH7.5~8.5がより好ましい。
【0030】
培養温度としては、0~30℃が挙げられる。培養温度は、10~30℃が好ましく、12~20℃がより好ましく、15~18℃がさらに好ましい。
【0031】
培養は、静置培養であってもよく、通気培養であってもよく、振盪培養であってもよい。酸素不足を防ぐ観点から、通気培養又は振盪培養することが好ましい。
【0032】
培養期間中、GS001株又はGS001変異株は、適宜継代してもよい。固体培地で維持培養する場合、継代の間隔としては、例えば、半月~1カ月が挙げられる。液体培地で増殖させる場合、継代の間隔としては、例えば、2日~10日、又は2~5日が挙げられる。
【0033】
GS001株及びGS001変異株は、細胞内に、高い含有量でEPAを含む。そのため、GS001株又はGS001変異株は、EPAの製造に用いることができる。GS001株又はGS001変異株からのEPAの抽出は、公知の方法で行うことができる。例えば、GS001株及びGS001変異株の培養液から遠心分離又はろ過等により細胞を回収し、クロロホルム、メタノール、トルエン等の有機溶媒により細胞から全脂質を抽出する。細胞に対して使用する抽出溶媒の量は、特に限定されない。抽出溶媒の量は、例えば、細胞に対して、1~1000倍量程度(好ましくは5~200倍量程度)とすることができる。抽出操作は、通常、常圧下、常温~溶媒の沸点の範囲で行うことができる。抽出操作は、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。例えば、1度抽出操作を行った細胞残渣に再度新鮮な抽出溶媒を添加しても再度抽出操作を行ってもよい。抽出操作後、必要に応じて、遠心分離、ろ過、限外ろ過等により細胞残渣を除去してもよい。また、加熱、エバポレーター等を用いた減圧蒸留により、抽出溶媒を除去してもよい。さらに、各種精製処理を行い、EPAを精製してもよい。精製処理としては、例えば、塩析、透析、再結晶、再沈殿、溶媒抽出、吸着、濃縮、ろ過、ゲルろ過、限外ろ過、各種クロマトグラフィ(薄層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、吸着クロマトグラフィなど)等が挙げられるが、これらに限定されない。
GS001株又はGS001変異株からのEPA抽出方法の具体例としては、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0034】
EPAは、栄養補助食品、食品添加物等として、使用することができる。
【0035】
<組成物>
一態様において、本発明は、シェワネラ・ウーディイ GS001株又はその変異株を含む、組成物を提供する。
【0036】
GS001株及びGS001変異株は、EPA等の有用成分を含有する。そのため、GS001株又はGS001変異株を、各種組成物に利用することができる。
【0037】
GS001株又はGS001変異株を含む組成物の種類は、特に限定されない。組成物としては、例えば、食品、飼料、餌料、化粧料等が挙げられる。
【0038】
食品としては、例えば、菓子類(キャラメル、キャンディー等)、氷菓類(アイスクリーム等)、乳製品(ヨーグルト等)、各種加工食品、各種調味料、各種飲料、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント等が挙げられる。
飼料としては、例えば、各種ペットフードが挙げられる。
餌料としては、例えば、観賞魚用の餌料、養殖魚用の餌料等が挙げられる。
化粧料としては、例えば、皮膚化粧料(化粧水、乳液、美容液、クリーム等)、頭髪化粧料(整髪料、シャンプー、リンス、コンディショナー等)、メーキャップ用化粧料(ファンデーション、チーク、アイシャドウ、口紅等)が挙げられる。
【0039】
GS001株又はGS001変異株は、上記のような各種組成物に、添加剤として添加することができる。また、他の成分と混合し、食品、飼料、餌料、化粧料等として、調製してもよい。他の成分は、組成物の用途に応じて、適宜選択可能である。
【0040】
例えば、組成物が食品、飼料、又は餌料である場合、食品、飼料、又は餌料に使用可能な成分を特に制限なく用いることができる。食品、飼料、又は餌料に使用可能な成分としては、例えば、魚肉類、野菜類、穀類、乳製品、発酵製品、香辛料、タンパク質、アミノ酸、糖類、各種調味料、甘味剤、矯味剤、香料、油脂類、ビタミン類、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、着色剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
例えば、組成物が化粧料である場合、化粧料に使用可能な成分を特に制限なく用いることができる。化粧料に使用可能な成分としては、例えば、炭化水素、脂質類(動植物性油脂や鉱物油等の油脂、ロウ、脂肪酸エステル、脂肪酸、セラミド等)、アルコール類(高級アルコール、低級アルコールや多価アルコール等)のアルコール類、タンパク質類(コラーゲン等)、多糖類(ヒアルロン酸、キトサン、セルロース、キサンタンガム等)、各種高分子化合物(ポリエチレングリコール、シリコーン等)、動植物や微生物由来成分、アミノ酸、無機鉱物、各種界面活性剤、紫外線吸収剤、美白剤、抗炎症剤、血行促進剤、抗老化剤、保湿剤、ビタミン類、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、粉体、香料、着色剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
<乾燥粉末>
一態様において、本発明は、GS001株又はGS001変異株の乾燥粉末を提供する。
【0043】
「GS001株の乾燥粉末」とは、GS001株の細胞を乾燥し、粉末状にしたものをいう。「GS001変異株の乾燥粉末」とは、GS001変異株の細胞を乾燥し、粉末状にしたものをいう。GS001株又はGS001変異株の乾燥粉末は、公知の方法により製造することができる。例えば、GS001株又はGS001変異株を培養し、遠心分離等により細胞を回収する。次いで、細胞を乾燥し、粉末状とすることにより、乾燥粉末を得ることができる。細胞の乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。乾燥した細胞は、物理的に粉砕して、粉末状としてもよい。細胞は、乾燥する前に、洗浄処理、殺菌処理等を行ってもよい。洗浄処理には、例えば、水、緩衝液等の洗浄液を用いることができる。殺菌処理の方法としては、例えば、次亜塩素酸等の殺菌による処理、紫外線処理、オゾン処理、加熱処理等が挙げられる。
【0044】
乾燥粉末とすることにより、GS001株又はGS001変異株が含有するEPA等の有用成分が濃縮される。そのため、GS001株又はGS001変異株の乾燥粉末は、食品、飼料、又は餌料として用いることができる。また、GS001株又はGS001変異株の乾燥粉末は、添加剤として、食品、飼料、餌料、又は化粧料に使用することができる。
【0045】
<抽出物>
一態様において、本発明は、GS001株又はGS001変異株の抽出物を提供する。
【0046】
「GS001株の抽出物」とは、GS001株の細胞から細胞成分を抽出したものをいう。「GS001変異株の抽出物」とは、GS001変異株の細胞から細胞成分を抽出したものをいう。GS001株又はGS001変異株の抽出物は、GS001株又はGS001変異株の細胞を破壊した細胞破壊物であってもよい。細胞の破壊方法としては、例えば、ホモジナイザー等による機械的破砕処理、超音波処理、凍結融解処理等が挙げられる。また、GS001株又はGS001変異株の抽出物は、GS001株又はGS001変異株の細胞を溶解した細胞溶解物であってもよい。細胞の溶解方法としては、例えば、プロテアーゼ、リゾチーム等の酵素を用いた酵素処理、界面活性剤処理等が挙げられる。
GS001株又はGS001変異株の抽出物は、GS001株又はGS001変異株の細胞、細胞破壊物、又は細胞溶解物に対して、抽出溶媒を添加して、抽出処理を行ったものであってもよい。抽出溶媒は、上記と同様のものを用いることができる。
【0047】
抽出物とすることにより、GS001株又はGS001変異株が含有するEPA等の有用成分が濃縮される。そのため、GS001株又はGS001変異株の抽出物は、食品、飼料、又は餌料として用いることができる。また、GS001株又はGS001変異株の抽出物は、添加剤として、食品、飼料、餌料、又は化粧料に使用することができる。
【0048】
一実施形態において、本開示は、GS001株又はGS001変異株を培養することを含む、EPAの製造方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、GS001株又はGS001変異株を、グルコースを有機炭素源として含む培地で培養することを含む、EPAの製造方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、GS001株又はGS001変異株を、グルコースを有機炭素源として含む培地で培養すること、GS001株又はGS001変異株の菌体を回収すること、及び前記菌体からEPAを抽出すること、を含む、EPAの製造方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、GS001株又はGS001変異株を、グルコースを有機炭素源として含む培地で培養することを含む、GS001株又はGS001変異株の培養方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、GS001株又はGS001変異株を、グルコースを有機炭素源として含む培地で培養することを含む、GS001株又はGS001変異株の製造方法を提供する。
【実施例
【0049】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<グルコース資化能の高いシェワネラ属細菌の単離>
深海魚であるニギスの腸管から、Marine Broth培地(Difco社製)を用いて、細菌を単離した。Marine Broth寒天培地に出現したコロニーを、100mL三角フラスコに入れた50mLの改変M9+Glc液体培地に接種して培養した。培養温度15℃とし、バイオシェーカーを用いて振盪培養(回転数:150rpm)した。培地のOD600が4~5に達した時点で、500μLの培養液を採取し、新しい50mLの改変M9+Glc液体培地に接種した。前記の継代培養を6カ月程度行い、改変M9+Glc液体培地での増殖が良好で、EPA含量が高い菌株を選抜した。その結果、改変M9+Glc液体培地での増殖が良好で、EPA含量が高い菌株として、GS001株を取得した。表1~3に、改変M9+Glc液体培地の組成を示す。改変M9+Glc培地は、M9最小培地に、Fe solution(表2)、Trace Metal solution(表3)、及びグルコースを添加したものである。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
100mL三角フラスコに入れた50mLの改変M9+Glc液体培地を用いて、上記と同様の培養条件で、GS001株を増殖させた結果を図1に示す。GS001株は、培養開始から48時間程度で、OD600が5~6程度に達し、良好な増殖を示した。
【0055】
<GS001株の同定>
GS001株の懸濁液を鋳型として、以下のプライマーセットを用いてPCRを行い、16SrDNAを増幅した。
フォワードプライマー:GTTTGATCCTGGCTCA(配列番号2)
リバースプライマー:TACCAGGGTATCTAATCC(配列番号3)
【0056】
増幅断片の配列解析を行い、GS001株の16SrDNA配列(配列番号1)を決定した。GS001株の16SrDNA配列をクエリー配列としてBLAST検索を行った。BLAST検索の結果から、GS001株は、シェワネラ・ウーディイと同定された。図2に、16SrDNA配列に基づく、GS001株の系統解析の結果を示す。
系統解析は、Satoiら(Masataka Satoi et al., International Journal of Systematicand Evolutionary Microbiology(2003),53,491-499.)及びZhangら(Jinwei Zhang, et al., International Journal of Systematicand Evolutionary Microbiology(2015),65,2882-2889.)に記載の方法を参考にして行った。シェワネラ・ウーディイを含む19種類のシェワネラ属細菌と近縁種の16SrRNA配列をDDBJデータベースから収集し、それらの配列とGS001株の16srRNA配列について、解析用ソフトウェア「CLC Genomics Workbench」(CLC bio社製)を用いて系統樹を作成した(クラスタ解析法はNJメソッド、遺伝距離はKimuraモデルに基づいて行った)。
【0057】
<半合成培地によるGS001株の培養>
半合成培地として、0.5%(w/v)の酵母エキスを含む改変M9+Glc液体培地(M9+Glc+Y.E.液体培地)を用いた。3Lのジャーファーメンターに入れた2Lの改変M9+Glc+Y.E.液体培地に、GS001株を接種して培養した。培養温度は15℃とし、通気培養(1vvm air、150~750rpm)した。培養は、2台のジャーファーメンターを使用して行った。
【0058】
(乾燥細胞重量の測定)
任意の容積の培養液を、10000×g、4℃で5~10分間遠心分離し、沈殿を得た。これを1%(w/v)酢酸アンモニウム水溶液で洗浄し、再度遠心分離する工程を2度行った。沈殿を少量の1%(w/v)酢酸アンモニウム水溶液に再懸濁し、予め秤量した樹脂チューブに移した。-80℃で凍結後、凍結乾燥を行い、乾燥細胞を得た。細胞を含む樹脂チューブを再度秤量し、容積当たりの乾燥細胞重量を得た。
【0059】
(EPAの測定)
ねじ口試験管に乾燥細胞を30mg程度とり、抽出溶媒を0.5mL添加した。抽出溶媒はトルエン:メタノール=52:48(v/v)の割合で混合した混合溶剤を用いた。
抽出溶媒と乾燥細胞を混合した溶液に0.5M水酸化ナトリウム-メタノール溶液を1mL添加した。キャップを固く締め、ヒートブロックなどで試験管を100℃、5分間加熱した。その後、試験管を十分に放冷した。
試験管内に三フッ化ホウ素-メタノール溶液(三フッ化ホウ素濃度12~15%(w/v))を1mL添加した。キャップを固く締め、ヒートブロックなどで試験管を100℃、5分間加熱した。その後、再び試験管を十分に放冷した。
試験管にヘキサン1mLおよび飽和食塩水を加え、十分に混和した。前記飽和食塩水との混合試料溶液を1450×g、室温で5分間遠心分離し、得られた上層(有機層)をバイアルに適量とり、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を行った。
【0060】
図3Aに、OD600及び乾燥細胞重量の変化を示す。図3Bに、乾燥細胞重量当たりのEPA含有量を示す。
図3A中、OD J1及びDCW J1は、1台目のジャーファーメンターにおけるOD600及び乾燥細胞重量をそれぞれ示す。図3A中、OD J2及びDCW J2は、2台目のジャーファーメンターにおけるOD600及び乾燥細胞重量をそれぞれ示す。GS001株は、いずれのジャーファーメンターにおいても、乾燥細胞重量が35g/L以上に達しており良好な増殖を示した。なお、従来報告されているシェワネラ属細菌が到達する乾燥細胞重量は、10.3~10.5g/L程度である。(鈴木信雄ら、Nippon Suisan Gakkaishi 58(2),323-328(1992).)
図3B中、J1は、1台目のジャーファーメンターにおける乾燥細胞重量当たりのEPA含有量を示す。図3B中、J2は、2台目のジャーファーメンターにおける乾燥細胞重量当たりのEPA含有量を示す。いずれのジャーファーメンターにおいても、GS001株は、高いEPA含有量を示した。
【0061】
<GS001株の増殖に対するNaCl濃度の影響>
NaCl濃度を0.5~10%(w/v)に変更した改変M9+Glc液体培地を用いて、GS001株の増殖に対するNaCl濃度の影響を検討した。100mL三角フラスコに入れた50mLの改変M9+Glc液体培地を用いて、15℃で、振盪培養(150rpm)した。培養開始から48時間後に、培養液を採取し、波長600nmのODを測定した。
【0062】
結果を図4に示す。GS001株は、0.5~5%(w/v)のNaCl濃度範囲で、増殖することができた。GS001株は、特に、0.5~3%(w/v)のNaCl濃度範囲では、増殖が良好であった。
【0063】
表4及び表5に、以前に報告されたシェワネラ・ウーディイの菌株(Esra Ersoy Omeroglu et al., Folia Microbiol (2014) 59:79-92)及びGS001株の増殖に対するNaCl濃度の影響をまとめた。表4及び表5において、GS001株以外のデータは、Esra Ersoy Omeroglu et al., Folia Microbiol (2014) 59:79-92にTable 2から引用した。「+」は生育可、「-」は生育不可、「N.D.」は非実施を示す。
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
GS001株は、0.5%(w/v)のNaCl濃度でも生育可能である。一方、他のシェワネラ・ウーディイ菌株で0.5%(w/v)のNaCl濃度で生育可能なものは報告されていない。この結果から、GS001株は、従来報告されていたシェワネラ・ウーディイ菌株よりも、低塩濃度で生育可能であることが確認された。
【0067】
<グルコースを唯一の有機炭素源とする合成培地での増殖試験>
GS001株又はシェワネラ・エレクトロディフィラ(Shewanella electrodiphila)ATCC BAA-2408(以下、「ATCC BAA-2408」)を、改変M9+Glc液体培地で48時間前培養した(培養温度15℃、振盪培養(回転数:150rpm)。
前培養したGS001株又はATCC BAA-2408を、100mLフラスコに入れた50mLの改変M9+Glc液体培地に接種して培養した。培養温度15℃とし、バイオシェーカーを用いて振盪培養(回転数:150rpm)した。
シェワネラ・エレクトロディフィラは、グルコースを唯一の有機炭素源として良好に生育することが報告されているシェワネラ属細菌である(Jinwei Zhang, and J. Grant Burgess. PLoS One. 2017 Nov 27;12(11):)。グルコースを唯一の有機炭素源としたときのシェワネラ・エレクトロディフィラの増殖速度は、グルコース資化能の指標となる。
【0068】
結果を図5に示す。GS001株は、ATCC BAA-2408と比較して、誘導期が短く、増殖速度が速かった。この結果から、GS001株は、ATCC BAA-2408と比較して、グルコースの資化能力が高いことが確認された。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明および図示してきたが、これらは本発明を例示するものであり、限定的なものとみなされるべきではないことを理解すべきである。本発明の精神または範囲から逸脱することなく、追加、省略、置換、およびその他の変更を行うことができる。したがって、本発明は、前述の説明によって限定されるものとはみなされず、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【配列表】
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