(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】シートモールディングコンパウンド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240409BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20240409BHJP
B29K 307/04 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
B29B11/16
B29K307:04
(21)【出願番号】P 2023559059
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2022044318
(87)【国際公開番号】W WO2023120091
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021209184
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】人見 一迅
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189314(WO,A1)
【文献】特開2001-105431(JP,A)
【文献】国際公開第1993/024288(WO,A1)
【文献】特開2013-049751(JP,A)
【文献】特表2008-525241(JP,A)
【文献】特開平06-079742(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033740(WO,A1)
【文献】特開2002-339170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0349733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0226191(US,A1)
【文献】米国特許第04532169(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B29C 41/00-41/36
B29C 41/46-41/52
B29C 70/00-70/88
C08J 5/04-5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を強化繊維に含浸したシートモールディングコンパウンドであって、その端部から20mm以内の部分(A1)に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X1)が、28~90%であることを特徴とするシートモールディングコンパウンド。
【請求項2】
端部から20mmを超える部分(A2)に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X2)が、25~40%である請求項1に記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項3】
前記強化繊維が、炭素繊維である請求項1又は2記載のシートモールディングコンパウンド。
【請求項4】
前記樹脂組成物を前記強化繊維に含浸する前に、前記強化繊維を配向させる工程を有する請求項1
又は2記載のシートモールディングコンパウンドの製造方法。
【請求項5】
請求項1
又は2記載のシートモールディングコンパウンドを用いた成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートモールディングコンパウンド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂を強化繊維で補強したいわゆるFRPは、工業部品、住設部材、自動車部材等の多方面において使用されている。さらに、炭素繊維を強化繊維としてエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を強化した繊維強化樹脂複合材料は、軽量でありながら耐熱性や機械強度に優れる特徴が注目され、様々な構造体用途での利用が拡大している。また、強化繊維として、不連続繊維を使用するため、連続繊維に比べて、成形形状の適用範囲が広く、端材も再利用でき、異素材部材インサートができるなど、生産性や設計適用範囲広いことから、シートモールディングコンパウンド(以下、「SMC」と略記する場合がある。)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記SMCの成形方法の一つとして、加熱圧縮成形があり、例えば、110~180℃の金型内で、1~20MPaの圧力にて成形材料を賦型し、所定の時間これら成形条件を保持することで成形品を製造する方法がある。
【0004】
一方、SMCに使用される強化繊維は、ランダムな配向となるように散布され、強化繊維は等方性とすることが一般的であり、SMC端部の強化繊維も等方性となる。
【0005】
SMCの端部の樹脂は空気や水分などの影響により、増粘が不足しており、上記の圧縮成形時に、強化繊維より先に金型中を流動し、強化繊維のみとなる場合があった。このようなSMC端部から得られる成形品は、強度や外観が不十分であり、利用が制限される問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、圧縮成形時の端部における樹脂流動性を制御することが可能であり、かつ、延伸性に優れるシートモールディングコンパウンド及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、強化繊維を特定配向したシートモールディングコンパウンドが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、樹脂組成物を強化繊維に含浸したシートモールディングコンパウンドであって、その端部から20mm以内の部分(A1)に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X1)が、28~90%であることを特徴とするシートモールディングコンパウンドに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明から得られるシートモールディングコンパウンド及びその成形品は、炭素繊維の含浸性等に優れることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の外装や構造体等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシートモールディングコンパウンドは、樹脂組成物を強化繊維に含浸したシートモールディングコンパウンドであって、その端部から20mm以内の部分(A1)に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X1)が、28~90%であるものである。この特定の配向性により、等方性では得られない樹脂流動性及び延伸性のバランスに優れるシートモールディングコンパウンド得られる。なお、本発明における強化繊維の割合とは、繊維束数の割合とする。
【0012】
本発明において、SMCの繊維の配向は、MD方向(SMCの製造流れ方向)と平行な方向を0°とし、垂直な方向を90°とする。なお、右方向へ30°傾いている場合も、左方向へ30°傾いている場合も、30°とし、繊維が折れ曲がっている場合は、繊維の両先端を結ぶ線を繊維方向とみなし計測するものとする。
【0013】
また、SMCの端部とは、樹脂と強化繊維とが両方存在する部分であって、最も外側の部分をいう。端部から20mm以内の部分(A1)とは、端部から、MD方向に対し垂直な方向へ20mmまでの領域をいい、端部から20mmを超える部分(A2)とは、前記部分(A1)以外の領域をいう。
【0014】
前記部分(A1)に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X1)は、樹脂流動性及び延伸性のバランスがより向上ことから、30~88%が好ましく、34~86%がよりに好ましく、40~80%がさらに好ましい。
【0015】
前記部分(A2)に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X2)は、成形後の繊維は等方性であることが好ましいことから、25~40%が好ましい。
【0016】
前記強化繊維の割合(X1)は、前記部分(A1)の領域から左右各50の測定箇所(20mm×50mm)を選定し、その範囲にある繊維束を1束ずつ分度器にて角度を計測することで算出ものとする。なお、前記部分(A1)の領域に、一部でも入っている繊維束についても計測することとする。
【0017】
前記強化繊維の割合(X2)は、前記部分(A2)の領域から50の測定箇所(20mm×50mm)を選定し、その範囲にある繊維束を1束ずつ分度器にて角度を計測することで算出ものとする。
【0018】
本発明のSMCの製造方法としては、例えば、樹脂組成物を上下に設置されたキャリアフィルムに均一な厚さになるように塗布し(塗布工程)、強化繊維を一方の樹脂組成物塗布面に散布し(添加工程)、前記上下に設置されたキャリアフィルム上の樹脂組成物で挟み込み、次いで、全体を含浸ロールの間に通して、圧力を加えて強化繊維に樹脂組成物を含浸させ(含浸工程)、ロール状に巻き取る又はつづら折りに畳む方法が挙げられる。
【0019】
本発明のSMCの端部における繊維の配向は、前記添加工程において、例えば、炭素繊維を厚みが均一になるよう空中から均一落下させる直前に、両端から圧縮空気を吹き付けることにより制御することができる。
【0020】
圧縮空気の吹き出し口数を多く(ピッチを狭く)、圧縮空気圧力を高くすることなどにより、MD方向(SMCの製造流れ方向)への繊維配向性を高くすることができる。一方、圧縮空気の吐出口数を少なく、圧縮空気圧力を低くすることなどにより、MD方向への繊維配向性を低くすることができる。
【0021】
その他の方法として、キャリアフィルム上の樹脂に触れないような板を両端に設置し、炭素繊維が落下した後に調整する方法、炭素繊維の切断装置の内部構造や吹きだす空気の流れを調整する方法、キャリアフィルム上の樹脂に落下する途中(前)に一定の方向に空気を当てる方法、落下途中に板等に炭素繊維を当てる方法等によっても繊維の配向は制御することができる。
【0022】
本発明のSMCに用いられる樹脂組成物中の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられるが、成形後の強度などの機械物性の点からエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及びビニルウレタン樹脂がより好ましい。なお、これらの樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
前記樹脂組成物の粘度は、SMCの含浸性がより向上することから、20℃における粘度V20(m・Pas)と30℃における粘度V30(m・Pas)との粘度比(V30/V20)が0.5~0.9であることが好ましい。
【0024】
前記樹脂組成物中には、樹脂以外の成分として、例えば、希釈剤、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤、充填剤、低収縮剤、熱可塑性樹脂粒子、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、保存安定剤、補強材、光硬化剤等を含有することができる。
【0025】
前記充填剤としては、無機化合物、有機化合物があり、成形品の強度、弾性率、衝撃強度、疲労耐久性等の物性を調整するために使用できる。
【0026】
前記無機化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、石こう、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉等が挙げられる。
【0027】
前記有機化合物としては、セルロース、キチン等の天然多糖類粉末や、合成樹脂粉末等があり、合成樹脂粉末としては、硬質樹脂、軟質ゴム、エラストマーまたは重合体(共重合体)などから構成される有機物の粉体やコアシェル型などの多層構造を有する粒子を使用できる。具体的には、ブタジエンゴムおよび/またはアクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等からなる粒子、ポリイミド樹脂粉末、フッ素樹脂粉末、フェノール樹脂粉末などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0028】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、フッ素系化合物などが挙げられる。好ましくは、フッ素化合物、パラフィンワックスが挙げられる。これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0029】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物など、アクリル樹脂系微粒子などが挙げられ、本発明の繊維強化成形材料の取り扱い性によって適宜選択できる。これらの増粘剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0030】
前記樹脂組成物は、通常のミキサー、インターミキサー、プラネタリーミキサー、ロールミル、ニーダー、押し出し機などの混合機を用いて、上記した各成分を混合・分散することにより得られる。
【0031】
本発明のSMCに用いられる強化繊維は、2.5~50mmの長さにカットした繊維が用いられるが、成形時の金型内流動性、成形品の外観及び機械的物性がより向上することから、5~40mmにカットした繊維がより好ましい。
【0032】
前記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、パルプ、麻、綿、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリイミド、あるいはケブラー、ノーメックス等のアラミド等からなるポリアミド繊維等が挙げられる。これらの中でも高強度の成形品が得られることから炭素繊維が好ましい。
【0033】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系等の各種のものが使用できるが、これらの中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0034】
また、前記炭素繊維として使用される繊維束のフィラメント数は、樹脂含浸性及び成形品の機械的物性がより向上することから、1,000~60,000が好ましい。
【0035】
本発明のSMCの成分中の、前記繊維強化材の含有率は、得られる成形品の機械的物性がより向上することから、25~80質量%の範囲が好ましく、40~70質量%の範囲がより好ましく、45~65質量%が特に好ましい。繊維含有率が低すぎる場合、高強度な成形品が得られない可能性があり、炭素繊維含有率が高すぎる場合、繊維への樹脂含浸性が不十分で、成形品に膨れが生じ、高強度な成形品が得られない可能性がある。
【0036】
本発明の成形品は、前記SMCを成形することにより得られるが、成形方法としては、生産性に優れる点とデザイン多様性に優れる観点から加熱圧縮成形が好ましい。
【0037】
前記加熱圧縮成形としては、例えば、前記SMCを所定量計量し、予め110~180℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、成形材料を賦型させ、0.1~30MPaの成形圧力を保持することによって、成形材料を硬化させ、その後成形品を取り出し成形品を得る製造方法が用いられる。具体的な成形条件としては、金型内で金型温度120~160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1~5分間、1~20MPaの成形圧力を保持する成形条件が好ましく、生産性がより向上することから、金型温度140~160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1~3分間、1~20MPaの成形圧力を保持する成形条件がより好ましい。
【0038】
本発明のSMCは、生産性、成形性等に優れ、得られる成形品は、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、水酸基価は、樹脂試料1gをJIS K-0070の規定の方法に基づきアセチル化剤を用いて、規定温度及び時間で反応させた時に生成した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を測定した。酸価は、JIS K-0070の規定の方法に基づき樹脂試料1g中に含有する遊離脂肪酸,樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を測定した。
【0040】
(合成例1:ビニルエステル樹脂(1)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量 188) 677質量部、メタクリル酸 310質量部、及びt-ブチルハイドロキノン 0.29質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2-メチルイミダゾール 0.60質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価217mgKOH/gのビニルエステル樹脂(1)を得た。
【0041】
(合成例2:ビニルエステル樹脂(2)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)656質量部、ビスフェノールA 147質量部、及び2-メチルイミダゾール0.4質量部を仕込み、120℃に昇温して3時間反応させ、エポキシ当量を測定した。エポキシ当量が設定通り365になったことを確認後、60℃付近まで冷却した後、メタクリル酸185質量部、及びt-ブチルハイドロキノン0.29質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2-メチルイミダゾール0.18質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価209mgKOH/gのビニルエステル樹脂(2)を得た。
【0042】
(調製例1:樹脂組成物(1)の調製)
ビニルエステル樹脂(1)48.1質量部、ビニルエステル樹脂(2)11.9質量部をフェノキシエチルメタクリレート40.0質量部に溶解させた樹脂溶液に、ポリイソシアネート(三井化学SKCポリウレタン社製「コスモネートLL」、芳香族ポリイソシアネート)22.0質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「カヤカルボンAIC-75」、有機過酸化物)1.2質量部、及び重合禁止剤(パラベンゾキノン;以下、重合禁止剤(1)と略記する。)0.035質量部を混合し、樹脂組成物(1)を得た。
【0043】
(実施例1:SMC(1)の製造及び評価)
上記で得た樹脂組成物(1)を、ポリエチレンとポリプロピレンのラミネートフィルム上に塗布量が平均860g/m2となるよう塗布し、この上に、炭素繊維ロービング(東レ株式会社製「T700SC-12000-50C」)を12.5mmにカットした炭素繊維(以下、炭素繊維(1)と略記する。)を炭素繊維含有率が55質量%になるように、表1に記載の所定の条件で空中から落下させ、同様に樹脂組成物(1)を塗布したフィルムで挟み込み炭素繊維(1)に樹脂を含浸させた後、25±5℃中に4時間静置し、SMC(1)を得た。このSMCの目付け量は、2kg/m2であった。
圧縮空気の圧力は、各圧縮空気吐出口(内部直径4mm、長さ80mm)毎に取り付けたレギュレーターにて調整した。切断装置の炭素繊維落下領域幅方向1000mm、流れ方向1200mmにおいて、流れ方向に対して、200mmのピッチにて、圧縮空気吐出口を配設した。なお、ピッチとは、吐出口断面の中心間の距離のことを示す。吐出口断面の中心は、キャリアフィルムから3mmの高さとした。
【0044】
(実施例2~6:SMC(2)~(7)の製造及び評価)
表1の繊維添加条件とした以外は実施例1と同様にして、SMC(2)~(7)を得た後、各評価を行った。
【0045】
(比較例1~4:SMC(R1)~(R4)の製造及び評価)
表2の繊維添加条件とした以外は実施例1と同様にして、SMC(R1)~(R4)を得た後、各評価を行った。
【0046】
[配向繊維の計測]
上記で得たSMCの端部から20mmの範囲において、左右各50の測定箇所(20mm×50mm)を選定し、その範囲内にある繊維束を1束ずつ分度器にて角度を計測した。なお、範囲内に一部でも入っている繊維束についても計測した。測定した繊維束全数中の30°以下の繊維配向の割合を算出して、30°以下の配向繊維割合とした。
【0047】
[樹脂流動性評価]
上記で得たSMC(1)のシート端部に接する100mm×100mmの領域3つを任意に選定して、カットし、フィルムから剥離したものを3枚重ね、30cm×30cmの平板金型(金型クリアランス2.5mm)の中央部にセットし、プレス金型温度150℃、プレス時間5分間、プレス圧力12MPaで成形し、成形品の強化繊維より分離し、樹脂のみが流出した部分の長さの最大値を測定し、下記の基準により、樹脂流動性を評価した。
○:SMC成形品端部における樹脂のみの流出が5mm未満
△:SMC成形品端部における樹脂のみの流出が5mm以上10mm未満
×:SMC成形品端部における樹脂のみの流出が10mm以上
【0048】
[延伸性評価]
上記で得たSMC(1)のシート端部に接する100×100mmの領域3つを任意に選定して、カットし、フィルムから剥離したものを3枚重ね、30cm×30cmの平板金型(金型クリアランス2.5mm)の中央部にセットし、プレス金型温度150℃、プレス時間5分間、プレス圧力12MPaで成形した。その際、金型内の表面積(900cm2)に対する成形品が延伸されて金型内に広がった成形品の面積を測定し、下記の基準により、延伸性を評価した。
○:SMC成形品の金型内占有面積100%
△:SMC成形品の金型内占有面積95%以上100%未満
×:SMC成形品の金型内占有面積95%未満
【0049】
【0050】
【0051】
実施例1~7の本発明のシートモールディングコンパウンド(SMC)は、樹脂流動性及び延伸性のバランスに優れることが確認された。
【0052】
一方、比較例1、2、及び4は、端部から20mm以内の部分に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X)が、本発明の下限である28%より低い例であるが、樹脂流動性の制御ができないことが確認された。
【0053】
比較例3は、端部から20mm以内の部分に含まれる強化繊維中の30°以下の配向となる強化繊維の割合(X)が、本発明の上限である90%より高い例であるが、延伸性が不十分であることが確認された。