IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サムズの特許一覧 ▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-有機性廃棄物のメタン発酵システム 図1
  • 特許-有機性廃棄物のメタン発酵システム 図2
  • 特許-有機性廃棄物のメタン発酵システム 図3
  • 特許-有機性廃棄物のメタン発酵システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】有機性廃棄物のメタン発酵システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/65 20220101AFI20240409BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240409BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20240409BHJP
【FI】
B09B3/65 ZAB
B09B3/70
B09B101:67
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022209891
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2020215482の分割
【原出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2023040111
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507394639
【氏名又は名称】株式会社サムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 公美
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 乾仁
(72)【発明者】
【氏名】阪田 光子
(72)【発明者】
【氏名】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】古賀 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴光
(72)【発明者】
【氏名】山口 大介
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124711(JP,A)
【文献】特許第4543504(JP,B2)
【文献】特開2021-65816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン発酵槽と、このメタン発酵槽に有機性廃棄物を供給する供給装置とを備えた有機性廃棄物のメタン発酵システムであって、
分離機で処理液とともに撹拌して使用済み紙おむつを構成する複数の素材に分解処理し、分解処理した後の排液を前記有機性廃棄物として前記メタン発酵槽内に供給する使用済み紙おむつの処理装置を備え、
前記使用済み紙おむつは、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から定期的に分別した状態で回収され、前記使用済み紙おむつを、回収された状態のまま破断、破砕することなく、前記処理液とともに前記分離機内に投入し、攪拌することで、前記使用済み紙おむつが、表面材、漏れ防止の立体ギャザー、吸水材、防水材、その他の部材に分解され、前記表面材、前記漏れ防止の立体ギャザー、前記吸水材、前記防水材、前記その他の部材に含まれるパルプ、プラスチックが各部材から分離され、
前記使用済み紙おむつの処理装置によって、前記使用済み紙おむつを分解処理された後に回収された前記パルプと、残留した前記パルプを含む排液とが、前記有機性廃棄物として前記メタン発酵槽内に供給されてメタン発酵に用いられることを特徴とする有機性廃棄物のメタン発酵システム。
【請求項2】
前記処理液は、分解剤、消毒剤、石灰を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物のメタン発酵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵装置のメタン発酵槽内に有機性廃棄物を供給する有機性廃棄物のメタン発酵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物をメタン菌で発酵させるメタン発酵が特許文献1で提案されている。同文献においてメタン発酵を行うメタン発酵装置は、乾式メタン発酵槽と、混合装置(供給装置)とを備えている。乾式メタン発酵槽内には、混合装置にて生成された混合発酵原料と返送汚泥との混合物が供給される。乾式メタン発酵槽内では、メタンガスが発生し、メタン発酵槽内には残渣である汚泥が残る。この汚泥は再び混合装置に返送されて返送汚泥として繊維含有有機物と混合されて、再び乾式メタン発酵槽内に混合発酵原料とともに供給される。
【0003】
混合装置には、投入原料としての有機性廃棄物、繊維含有有機物、乾式メタン発酵槽内から引き抜かれた余剰汚泥である返送汚泥が投入されて混合される。また、混合装置では、混合された有機性廃棄物、繊維含有有機物、返送汚泥は所定の温度に加熱され、乾式メタン発酵槽内に供給される。
【0004】
メタン発酵は、有機性廃棄物の全固形物(TS)濃度により湿式メタン発酵と乾式メタン発酵に大別される。湿式メタン発酵では、メタン細菌を含むメタン汚泥が発酵槽内に保持され、有機性廃棄物は、TS濃度が4~10質量%程度の液状またはスラリ状態で発酵槽内に導入される。このように、湿式メタン発酵では液状化した有機性廃棄物を処理対象としているため、生ごみのような固形物濃度が高い有機性廃棄物を処理する場合、有機性廃棄物を可溶化する処理を行い、メタン発酵を促進する方法が提案されている。
【0005】
乾式メタン発酵では、有機性廃棄物は、TS濃度が25~60重量%程度というほぼ固体に近い状態で発酵槽に導入され、発酵槽内には、TS濃度が15~40質量%程度の固形状のメタン汚泥(乾式メタン汚泥)が保持される。このような固形状の有機性廃棄物を原料としてメタンガスを発生させるメタン発酵に注目が集まっており、生ごみ、家畜糞尿等の有機性廃棄物を発酵原料としてメタン発酵により発生するメタンガスは、新たなエネルギー源として近年注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4543504
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、湿式メタン発酵や湿式メタン発酵で用いられる有機性廃棄物としての生ごみ、家畜糞尿等は、その量を安定して得ることができないので、メタンガスを安定して発生させることができない。すなわち、生ごみ、家畜糞尿等は、ごみ収集の際に一定の量のごみとして収集することがないので、メタン発酵の原料として安定して得ることができない。
【0008】
また、生ごみ、家畜糞尿等には、収集した際にプラスチックや、砂等の発酵することができない部材も含まれることから、これらの発酵することができない部材は発酵槽内に残渣として残り、発酵槽内から定期的に取り除かなければならない。このため発酵槽の定期的なメンテナンスを必要とし、メタン発酵させる際にコストが高くなる。
【0009】
さらに、有機性廃棄物として生ごみ、家畜糞尿等を発酵原料として用いる場合で、発酵に寄与しない部材が多く含まれていると、メタン発酵処理する前に異物除去装置の設置が必要となり、コストが高くなる。
【0010】
そこで、本発明は、メタン発酵において発酵原料を安定して供給することができ、発酵に寄与しない部材が少なく、高い発酵効率でメタンガスの回収効率を向上することができる有機性廃棄物のメタン発酵システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、メタン発酵槽と、このメタン発酵槽に有機性廃棄物を供給する供給装置とを備えた有機性廃棄物のメタン発酵システムであって、分離機で処理液とともに撹拌して使用済み紙おむつを構成する複数の素材に分解処理し、分解処理した後の排液を前記有機性廃棄物として前記メタン発酵槽内に供給する使用済み紙おむつの処理装置を備え、前記使用済み紙おむつは、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から定期的に分別した状態で回収され、前記使用済み紙おむつを、回収された状態のまま破断、破砕することなく、前記処理液とともに前記分離機内に投入し、攪拌することで、前記使用済み紙おむつが、表面材、漏れ防止の立体ギャザー、吸水材、防水材、その他の部材に分解され、前記表面材、前記漏れ防止の立体ギャザー、前記吸水材、前記防水材、前記その他の部材に含まれるパルプ、プラスチックが各部材から分離され、前記使用済み紙おむつの処理装置によって、前記使用済み紙おむつを分解処理された後に回収された前記パルプと、残留した前記パルプを含む排液とが、前記有機性廃棄物として前記メタン発酵槽内に供給されてメタン発酵に用いられることを特徴とする。
【0013】
本発明の第の態様は、前記処理液は、分解剤、消毒剤、石灰を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、有機性廃棄物として使用済み紙おむつを分解処理した後の排液を用いているので、メタン発酵の発酵原料として安定して供給することができる。すなわち、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等で廃棄される使用済み紙おむつは、定期的に交換され廃棄されるので、これらの介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から排出され破棄される使用済み紙おむつの廃棄量はほぼ一定である。このため、これらの介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から廃棄処分される使用済み紙おむつを収集し、使用済み紙おむつの処理装置によって分解処理した後の排液は安定して排出される。この使用済み紙おむつを分解処理した後の排液を有機性廃棄物としてメタン発酵に用いることにより、メタン発酵の発酵原料として安定して供給することができる。
【0015】
また、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から廃棄される使用済み紙おむつを分解処理した後の排液には、プラスチックや砂等の発酵に寄与することのない部材が少ないので、発酵槽内の残渣が少なくなり、残渣を取り除くためのメンテナンスの回数を少なくすることができるので、コストを低減することができる。
【0016】
さらに、使用済み紙おむつを処理した後の排液を有機性廃棄物として発酵槽内に供給することにより、メタン発酵に寄与することのない部材が排液中に少ないので、その分メタン発酵に寄与する発酵材料の量が発酵槽内で多いので、より多くのメタンガスを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る有機性廃棄物のメタン発酵システムを示す説明図。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る有機性廃棄物のメタン発酵システムにおいて使用される紙おむつの構成を示す断面図。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る有機性廃棄物のメタン発酵システムに用いられる使用済み紙おむつの処理装置の構成を示す説明図。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る有機性廃棄物のメタン発酵システムに用いられるメタン発酵装置の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の有機性廃棄物のメタン発酵システムの実施の形態について説明する。
[本実施の形態の有機性廃棄物のメタン発酵システム]
図1に示すように、本実施の形態の有機性廃棄物のメタン発酵システム1は、メタン発酵装置2と、使用済み紙おむつの処理装置4と、を備えている。図2に示すように、メタン発酵装置2は、メタン発酵槽11と、このメタン発酵槽11に有機性廃棄物7、22を供給する供給装置3とを備えている。また、図3に示すように、使用済み紙おむつの処理装置4は、分離機12で処理液とともに撹拌して使用済み紙おむつを構成する複数の素材に分解処理し、分解処理した後の排液5を有機性廃棄物22としてメタン発酵槽11内に供給する。
【0019】
[メタン発酵装置2]
メタン発酵装置2は、図2に示すように、供給装置3と、供給装置3から発酵原料10が供給されるメタン発酵槽11とで構成されている。供給装置3は、混合槽8と、投入ポンプ9とで構成されている。混合槽8は、使用済み紙おむつの分解処理によって、使用済み紙おむつの処理装置4で回収したパルプ6と、残留したパルプを含む排液5と、その他の有機性廃棄物7とが投入されて混合する。混合槽8内で混合されたパルプ6、パルプを含む排液5、その他の有機性廃棄物7からなる発酵原料を所定のC/N比、TS濃度に設定する。その際に希釈水を混合槽8内に注入して調整することも可能である。調整された発酵原料10は投入ポンプ9によりメタン発酵槽11内に供給される。投入ポンプ9の型式は有機性廃棄物(発酵原料)が移送できるものであれば特に限定しない。
【0020】
混合槽8によって所定のC/N比、TS濃度に設定された発酵原料10は、メタン発酵槽11内に供給され、加温装置23により所定の温度に加温されて発酵する。この発酵により発生したメタンガスは、ガス発電装置24に送られる。ガス発電装置24では、メタンガスを燃料として発電を行う。また、メタン発酵槽11から排出される排水は、排水処理装置25により処理されて下水または河川に放流される。
【0021】
混合槽8内には、使用済み紙おむつを分解処理した後のパルプ6と、使用済み紙おむつを分解処理した後の排液5とが有機性廃棄物22として供給される。また、混合槽8内には、その他の有機性廃棄物7として生ごみ、家畜糞尿等が供給される。さらに混合槽8内のTS濃度が設定よりも高い場合に、希釈水を供給することも可能である。
【0022】
[使用済み紙おむつの処理装置4]
使用済み紙おむつの処理装置4は、図3に示すように、分離機12と、選別機13と、分離機12から排出された排液5中からパルプ6を回収する第1パルプ回収装置14と、選別機13から排出される乾燥風内のパルプ6を回収する第2パルプ回収装置15と、分離機12内からの排液5を回収する排液回収槽16とで形成されている。なお、第1パルプ回収装置14は設置しなくても良い。つまり、分離機12から排出された排液5は排液回収装置16を経由して混合槽8に送ることも可能である。
【0023】
分離機12は、筒状の外胴分離槽と、この外胴分離槽内に回転自在に配置され、外周に多数の小孔が形成された内胴分離槽とで形成されている。内胴分離槽内には、所定の重さに計量された使用済み紙おむつが投入される。また、外胴分離槽、内胴分離槽内には、分解剤と消毒剤を含む処理液が供給される。
【0024】
分解剤、消毒剤を含む処理液、使用済み紙おむつが投入された状態で内胴分離槽が回転することで内胴分離槽内で、使用済み紙おむつが分解剤によって紙おむつを構成する複数種の素材に分解され、消毒剤によって消毒される。内胴分離槽内で複数種の素材に分離された使用済み紙おむつは、パルプ6が分解剤や消毒剤とともに第1パルプ回収装置14に排出され内胴分離槽内には、内胴分離槽の外周に設けられた小孔を通過しなかったパルプ、プラスチック、その他の部材が固形物として残る。
【0025】
なお、分離機の内胴分離槽の外周に設けた小孔の孔径を大きくすることによってこの小孔を通過するパルプの量が増え、排液5中のパルプの量を多くすることができるとともに、選別機に送られるパルプの量が減る。また、選別機においても選別機の内胴選別槽に設けた小孔の孔径を大きくすることにより、選別機の効率(乾燥効率)向上に資する。
【0026】
内胴分離槽内に残ったパルプ、プラスチック、その他の部材は、選別機13に送られて乾燥されることでパルプ、プラスチック、その他の部材に選別され、第2パルプ回収装置によってパルプが回収され、プラスチック、その他の部材が内胴選別槽内に残ることで分離される。ここで第2パルプ回収装置により回収されたパルプは、メタン発酵装置2の混合槽8に送られる。また、プラスチック(プラパルプ)は、固形燃料製造装置17により製造される固形燃料の原料として再利用される。また、回収されたプラスチックのみでも固形燃料の原料として再利用される。なお、固形燃料は、RPF(Refuse Paper &Plastic Fuel)であり、発熱量が調整され、塩素含有分も低い(基準が0.3%に対し平均0.03%)、また一般細菌数も衛生上問題なく、大腸菌群、黄色ブドウ球菌も検出されない取り扱いが容易な固形燃料である。
【0027】
内胴分離槽内から排出された排液5は、第1パルプ回収装置14によって排液5中のパルプが回収され、パルプ6が回収された後の排液5は排液回収槽16に貯留される。内胴分離槽内から排出された排液5中から回収したパルプ6、パルプが回収された後の排液5は、メタン発酵装置2の混合槽8内に送られる。
【0028】
上記内胴分離槽内に投入される使用済み紙おむつは、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から定期的に分別した状態で回収される。この場合、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から定期的に分別した状態で回収される使用済み紙おむつの量はほぼ一定量であり、一定量の使用済み紙おむつが定期的に収集・回収される。これにより、メタン発酵を行う場合の発酵原料を安定して得ることができる。
【0029】
また、定期的に一定量で回収される使用済み紙おむつは、破断、破砕を行うことなく、収集され回収された状態のまま内胴分離槽内に投入される。内胴分離槽内に投入された使用済み紙おむつは、紙おむつを構成する部材に分解すると共に、各部材に含まれるパルプ6が各部材から分離する。
【0030】
[紙おむつ]
すなわち、紙おむつは、図4に示すように、表面材18、漏れ防止の立体ギャザー19、吸水材20、防水材21、その他で構成されている。表面材18は、ポリエステルやポリプロピレンの不織布などが使用されている。漏れ防止の立体ギャザーは不織布と伸縮性素材が使用されている。吸水材20は吸水紙、綿状パルプ、高分子吸収体などの組み合わせで構成されている。防水材21は紙おむつの外側を覆う防水シートで合成繊維等からなる不織布が使用されている。その他に紙おむつを止める粘着テープ、止着材等が使用されている。
【0031】
このような紙おむつを使用した後の使用済み紙おむつを、収集され回収された状態のまま内胴分離槽内に処理液とともに投入し、内胴分離槽を回転させることで撹拌すると、表面材18、漏れ防止の立体ギャザー19、吸水材20、防水材21、その他の部材が分解され、表面材18、漏れ防止の立体ギャザー19、吸水材20、防水材、その他の部材に含まれるパルプやプラスチックが各部材から分離する。この場合、本実施の形態では、使用済み紙おむつを破断、破砕していないので、プラスチックやその他の部材が細かく砕かれることがないので、内胴分離槽の外周に設けた小孔から排水とともに排出されることがなく、排水中には小孔を通過したパルプのみが存在する。小孔を通過することのないプラスチック、パルプ、その他の部材は、固形物として内胴分離槽内に残る。
【0032】
次に本実施の形態の有機性廃棄物のメタン発酵システム1によりメタンガスを発生させる手順について説明する。一般家庭、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から分別収集された使用済み紙おむつは、回収業者等により定期的に収集される。分別され回収された使用済み紙おむつは使用済み紙おむつの処理装置4の分離機12内に投入される。分離機12内には分解剤、消毒剤等からなる処理液も投入される。
【0033】
次に、使用済み紙おむつと処理液が投入された内胴分離槽を回転させる。内胴分離槽を回転させると、使用済み紙おむつを構成する表面材18、漏れ防止の立体ギャザー19、吸水材20、防水材21、その他の部材が分解すると共に表面材18、漏れ防止の立体ギャザー19、吸水材20、防水材21、その他の部材に含まれているパルプ、プラスチックが処理液中に分離される。
【0034】
内胴分離槽を所定時間回転させた後に、内胴分離槽内の処理液を第1パルプ回収装置14に排出させて排液5中に含まれるパルプ6を回収する。パルプ6を回収した後の排液5は排液回収槽16に回収される。排液回収槽16に排出された排液5もメタン発酵装置2の混合槽8内に送られる。また、第1パルプ回収装置14により排液5から回収されたパルプ6もメタン発酵装置2の混合槽8内に送ることもできる。
【0035】
処理液が排液5として排出された分離機12内には、固形物としてプラスチック、その他の部材が残る。これらのプラスチック、その他の部材は選別機13に送られて乾燥される。この場合、乾燥されたプラスチック、その他の部材の表面には、処理液中に混ざらなかったパルプが付着している。プラスチック、その他の部材を乾燥させることで乾燥する際に放出される乾燥風の中にパルプが含まれている。このパルプは第2パルプ回収装置15によって回収される。第2パルプ回収装置15により回収されたパルプは、メタン発酵装置2の分離機12の内胴分離槽内に送られる。また、選別機13によって選別されたプラスチック、その他の部材は、固形燃料製造装置17によって固形燃料が製造される。
【0036】
使用済み紙おむつの処理装置4によって分解処理され回収されたパルプ、パルプを含む廃液は有機性廃棄物22として混合槽8内でその他の有機性廃棄物7である生ごみ、家畜糞尿等と混合され発酵原料が生成される。混合槽8では、所定のC/N比、TS濃度に設定される。所定のC/N比、TS濃度に設定された発酵原料はメタン発酵槽11内に送られる。メタン発酵槽11内に送られた発酵原料は、加温装置により所定の温度に加熱されて発酵し、メタンガスを発生させる。
【0037】
混合槽8にて設定されるC/N比は10~100、TS濃度は10質量%程度とされ、加温装置23によりメタン発酵槽11内で約35℃に設定される。本実施の形態におけるメタン発酵は、湿式メタン発酵である。
【0038】
メタン発酵槽11内でのメタンガスの発生量が少なくなった場合、あるいは定期的にメンテナンスを行う場合には、メタン発酵槽11内の固形物として残る残渣26を取り出すとともに、メタン発酵槽11内に残った液体物の汚泥は、混合槽8内に返送汚泥として回収する。また、通常運転中でも、残渣26(消化液)やその一部は、定期的に混合槽8に返送し、混合してメタン発酵槽11に投入する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態の有機性廃棄物のメタン発酵システムによれば、有機性廃棄物22として使用済み紙おむつを分解処理した後のパルプ6及び排液5を用いているので、メタン発酵の発酵原料として安定して供給することができる。
【0040】
すなわち、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等で廃棄される使用済み紙おむつは、定期的に交換され廃棄されるので、これらの介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から排出され破棄される使用済み紙おむつの廃棄量はほぼ一定である。このため、これらの介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から廃棄処分される使用済み紙おむつを収集し、使用済み紙おむつの処理装置4によって分解処理した後のパルプ及び排液5を安定して得ることができる。この使用済み紙おむつを分解処理した後の排液5を有機性廃棄物22としてメタン発酵に用いることにより、メタン発酵の発酵原料として安定して供給することができる。
【0041】
また、介護施設、老人ホーム、病院、保育施設、障害者施設等から廃棄される使用済み紙おむつを分解処理した後のパルプ6及び排液5には、プラスチックや砂等の発酵に寄与することのない部材の量が少ないので、発酵槽内の残渣26が少なくなり、残渣26を取り除くためのメンテナンスの回数を少なくすることができる。これにより、メンテナンスコストを低減することができる。
【0042】
なお、使用済み紙おむつの処理装置4によって分解処理する際に、処理液中に石灰を用いているため、排液5は石灰が混在した状態で混合槽8内に送られる。混合槽8内に送られた排液5中に石灰が含まれていてもメタン発酵槽11内でのメタン発酵には支障はなく、必要であれば、石灰を含むことによるアルカリ性の排液5を混合槽8内で中和剤を投入することで中和しても良い。
【0043】
さらに、使用済み紙おむつを処理した後のパルプ6及び排液5を有機性廃棄物22として発酵槽内に供給することにより、メタン発酵に寄与することのない部材がメタン発酵槽11に供給され難くなる。その分メタン発酵に寄与する発酵材料の割合が発酵槽内で高くなるため、より多くのメタンガスを発生させることができる。
【0044】
また、本実施の形態における有機性廃棄物のメタン発酵システムによれば、使用済み紙おむつの処理装置4によって使用済み紙おむつを分解処理する際に、分別回収した使用済み紙おむつを分離機12内に投入する前に破断、破砕を行うことがない。これにより、プラスチック、その他の部材が小さな小片(マイクロプラスチック)になることがなく、内胴分離槽の外周の小孔をプラスチック、その他の部材が通過することが少ないので、分離機12から排出された排液5中のプラスチック、その他の部材の小片の量が少ない。
【0045】
また、本実施の形態によれば、使用済み紙おむつの分解によるメタン発酵との組み合わせにより使用済み紙おむつの処理装置の能力向上、処理量アップ、水処理コストの削減などの効果が得られる。
【0046】
なお、上記実施の形態のメタン発酵では、湿式メタン発酵の例について記載したが、湿式メタン発酵以外の乾式メタン発酵、嫌気性メタン発酵によるメタン発酵に使用済み紙おむつを分解処理した後の排液5、回収したパルプを用いてもよい。
【0047】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る有機性廃棄物の処理システムは、乾式メタン発酵、湿式メタン発酵、嫌気性メタン発酵、好気性メタン発酵に利用することができ、有機性廃棄物22を発酵原料としてエネルギーの創出する方法に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 有機性廃棄物のメタン発酵システム
3 供給装置
4 使用済み紙おむつの処理装置
5 排液
7 その他の有機性廃棄物
11 メタン発酵槽
12 分離機
22 有機性廃棄物
図1
図2
図3
図4