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特許7468875米飯、その製造方法、炊飯用調味液、米飯改良剤及びその使用方法
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  • 特許-米飯、その製造方法、炊飯用調味液、米飯改良剤及びその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】米飯、その製造方法、炊飯用調味液、米飯改良剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240409BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240409BHJP
【FI】
A23L7/10 A
A23L7/10 B
A23L5/00 J
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022533843
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021022989
(87)【国際公開番号】W WO2022004402
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2020114281
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 旭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎平
(72)【発明者】
【氏名】大辻 吉彰
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181412(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189065(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/001722(WO,A1)
【文献】特表昭59-500398(JP,A)
【文献】国際公開第2000/059307(WO,A1)
【文献】岡田正通,マルトトリオシル転移酵素の開発とその産業利用,第18回酵素応用シンポジウム講演資料,2017年06月02日,p.18-19
【文献】大塚薬品工業株式会社,「炊飯革命」パンフレット,2018年05月31日,https://www.otsuka-ci.co.jp/pdf/products_suihankakumai.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ、(b)α-アミラーゼ及び(c)マルトトリオヒドロラーゼを、炊飯前又は炊飯時に添加することにより得られた米飯。
【請求項2】
前記(a)、(b)及び(c)を、同時に又は混合して添加する、請求項に記載の米飯。
【請求項3】
炊飯前が浸漬後炊飯前である、請求項又はに記載の米飯。
【請求項4】
前記(a)、(b)及び(c)を、炊飯時の温度上昇の過程で米の澱粉に作用させることにより得られた、請求項のいずれか1項に記載の米飯。
【請求項5】
前記(a)、(b)及び(c)を、炊飯工程において加熱調理が開始される前までに添加することで、前記酵素が失活する前に、米の澱粉に作用させることにより得られた、請求項のいずれか1項に記載の米飯。
【請求項6】
前記(a)、(b)及び(c)の合計添加量が、乾燥状態の生米に対して0.003質量%以上である、請求項のいずれか1項に記載の米飯。
【請求項7】
前記(a)、(b)及び(c)の合計添加量に占める前記(a)の割合が10質量%以上80質量%以下である、請求項のいずれか1項に記載の米飯。
【請求項8】
前記米飯が、白飯又はすし飯である、請求項1~のいずれか1項に記載の米飯。
【請求項9】
食酢を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の米飯。
【請求項10】
(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ、(b)α-アミラーゼ及び(c)マルトトリオヒドロラーゼを、炊飯前又は炊飯時に添加する、米飯の製造方法。
【請求項11】
炊飯時の温度上昇の過程で前記酵素を米の澱粉に作用させる、請求項10に記載の米飯の製造方法。
【請求項12】
(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ、(b)α-アミラーゼ及び(c)マルトトリオヒドロラーゼを含有する、炊飯前又は炊飯時に添加するための炊飯用調味液又は米飯改良剤。
【請求項13】
前記(a)、(b)及び(c)の合計添加量が、乾燥状態の生米に対して0.003質量%以上となるように添加される、請求項12に記載の炊飯用調味液又は米飯改良剤。
【請求項14】
前記(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める前記(a)の割合が10質量%以上80質量%以下である、請求項12又は13に記載の炊飯用調味液又は米飯改良剤。
【請求項15】
炊飯工程において加熱調理が開始される前までに添加される、請求項1214のいずれか1項に記載の炊飯用調味液又は米飯改良剤。
【請求項16】
請求項1215のいずれか1項に記載の炊飯用調味液又は米飯改良剤を、炊飯前又は炊飯時に添加する、米飯の製造方法。
【請求項17】
請求項1215のいずれか1項に記載の炊飯用調味液又は米飯改良剤を、炊飯前又は炊飯時に添加することにより得られた米飯。
【請求項18】
(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ、(b)α-アミラーゼ及び(c)マルトトリオヒドロラーゼを、炊飯前又は炊飯時に添加することによる、炊飯時の加熱ムラを改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、米飯、その製造方法、炊飯用調味液、米飯改良剤及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで惣菜や、弁当、寿司といった調理済み食品を、家庭に持ち帰って食べる「中食」と呼ばれる食事形態が増えている。中食用の食品は、製造してから消費者の口に入るまでに長時間(数時間~数十時間程度)経過しているものが多い。このため、中食用の食品においては、美味しさや安全性の観点はもちろん、食品ロスを削減する観点においても、長時間、出来立てに近い美味しさが保持された、ロングライフな調理済み食品が求められている。
【0003】
なかでも、米飯(白飯、おにぎり、すし飯等)においては、製造あるいは加工から喫食に至るまでの時間の経過にしたがい、表面のパサつきや、老化が生じ、出来立ての風味(炊き立ての米の味、美味しさや好ましい食感)が感じられない、という問題があった。
【0004】
このため、中食用の米飯の製造においては、長時間経過後にも、米飯の出来立ての風味を保持するため、加水量を多めに設定して炊飯する多加水炊飯が一般的に行われている。しかし、加水量を増やしたことで、米飯の表面がべちゃつき、互いに結着し、塊状になるため、喫食時に米飯のほぐれが悪くなるといった問題が生じてしまっていた。なお、「べちゃつく」とは、水分が多く、粘り気がある様を指す。
【0005】
すなわち、多加水炊飯によっては、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや、老化をある程度防ぐことはできても、米飯のほぐれが悪く、結果的に米飯の出来立ての風味を十分に感じることはできない。
【0006】
また、中食用の米飯は、スーパーやコンビニエンスストアに提供されるため、一般的に工業用の炊飯釜を用いて大量に(一釜あたり十キロ程度~数十キロ単位で)炊飯される。そのため、釜内部で原料(米や水や具材や調味液等)がうまく対流せず、釜内部での温度ムラ(釜上部、下部で温度差ができ、温度管理ができない状態)が生じてしまうため、炊き上がった米飯の固さや粒立ちが一律でなく、釜内部での位置によっては、米飯表面がべちゃついたり、糊状になるなど、喫食した際に満足な美味しさ(風味や食感)を感じられないといった問題があった。さらには、温度ムラによる釜の焦げつきが生じやすく、廃棄ロスによる収率の低下や、その後の釜洗浄時の作業負荷の増大や、炊飯釜自体の劣化、など生産性の上でも問題があった。
【0007】
米飯の食感劣化を抑制する技術として、炊飯時に酵素を含む米飯改良剤を添加する方法(例えば、特許文献1参照)などが知られている。
【0008】
特許文献1では、精白米の炊飯に際し、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素と、食塩及びサイクロデキストリンを添加することを特徴とする米飯の改良方法が開示されている。
【0009】
特許文献1の技術によれば、古米を用いた場合でも米の中心部まで十分に吸水し、十分に糊化されて米飯の物性(硬度、付着性、凝集性)が改善するとされている。しかし、当該技術によっても、長時間保管後の米飯のほぐれの悪さを改善することはできないため、長時間保管後には、炊き立ての米飯の美味しさを十分に感じることはできない問題があった。また、この技術では、釜内部の対流を改善することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭58-86050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有する米飯であって、以下の(A)~(D)のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を満たす米飯を提供することを課題とする。
(A)長時間経過後も、表面のパサつきが抑制される。
(B)長時間経過後も、老化が抑制される。
(C)長時間経過後も、ほぐれに優れる。
(D)長時間経過後も、出来立ての風味に優れる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前述した課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、米飯に4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有させることにより、前記米飯が得られることを見出し、これらの知見によって本開示を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本開示は、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有する米飯に関する。ここにおいて、前記米飯は、さらに(b)α-アミラーゼを含有するものであってもよい。また、前記米飯は、さらに(c)マルトトリオヒドロラーゼを含有するものであってもよい。
【0014】
また本開示は、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼを添加して炊飯することにより得られた米飯に関する。
【0015】
また本開示は、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼを炊飯前又は炊飯時に添加する、米飯の製造方法に関する。
【0016】
また本開示は、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有する、炊飯用調味液又は米飯改良剤に関する。
【0017】
また本開示は、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼを添加して炊飯することによる、長期保管後の米飯のほぐれ、劣化、及び風味のうち少なくとも1つを改善する方法に関する。
【0018】
また本開示は、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ及び(b)α-アミラーゼ、又は、前記(a)、(b)及び(c)マルトトリオヒドロラーゼを添加して炊飯することによる、長期保管後の米飯のほぐれ、劣化、風味、及び炊飯時の加熱ムラのうち少なくとも1つを改善する方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、以下の(A)~(D)のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を満たす、4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有する米飯が提供される。
(A)長時間経過後も、表面のパサつきが抑制される。
(B)長時間経過後も、老化が抑制される。
(C)長時間経過後も、ほぐれに優れる。
(D)長時間経過後も、出来立ての風味に優れる。
なお、ここでいう長時間とは、製造直後を0時間として6~48時間程度経過した状態をいう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】対流の評価「3」の時の釜内温度変化のイメージを説明する図である。
図2】対流の評価「2」の時の釜内温度変化のイメージを説明する図である。
図3】対流の評価「1」の時の釜内温度変化のイメージを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
第一の実施形態に係る米飯は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有することを特徴とするものである。
【0023】
「米飯」とは、後述する特定の酵素を含有する米飯であれば制限はなく、白飯、すし飯(酢飯)、赤飯、ピラフ、炒飯、炊き込みご飯、おこわなどが挙げられる。また、すし、おにぎりといった食品の一部に米飯を含むものについても、本実施の形態の「米飯」に含むものとする。
【0024】
なお、「すし飯」は一般的な製法で製造されたものであればよいが、特に酸度が0.15w/v%以上0.40w/v%以下であるものが好適である。酸度とは、有機酸(酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、アジピン酸、及びプロピオン酸の10種)の合計含有量のことであり、高速液体クロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0025】
原料米の種類にも限定はなく、ジャポニカ種でもインディカ種でも、粳米でももち米でも、軟質米でも硬質米でも、新米でも古米でも、どの種類の米であっても、精米歩合にかかわらず、用いることができる。
【0026】
4-α-グルカノトランスフェラーゼは、EC 2.4.1.25に分類され、澱粉を3糖単位で転移させることで、分岐鎖構造を有する澱粉へと構造変化させる反応を触媒する酵素である。本実施の形態で用いられる4-α-グルカノトランスフェラーゼは、その起源は限定されない。また、組み換え酵素であってもよい。具体的には、天野エンザイム株式会社製の「グライコトランスフェラーゼ「アマノ」L」、「グライコトランスフェラーゼ「アマノ」」などがあげられる。
【0027】
4-α-グルカノトランスフェラーゼを米飯に含有させることで、米飯の澱粉が分岐鎖構造を有する澱粉へと変化する。そうすると、分岐鎖や、分岐鎖間の空隙に水分が深く入り込むと同時に、澱粉中に水分が保持されるため、長時間保管後も米飯の表面のパサつきや、老化が抑制されるものと考えられる。また、澱粉が3糖単位で分解、転移されることにより、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)がある程度低減され、炊飯液の粘性が下がる。これにより、米粒同士の結着が緩和され、ほぐれやすくなるものと考えられる。さらに4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有量を調整することにより、これらの効果をより(場合によっては顕著に)向上させることができる。
【0028】
なお、本実施の形態において4-α-グルカノトランスフェラーゼは、酵素製剤として単体で含有させてもよく、後述する炊飯用調味液や、米飯改良剤として含有させてもよい。
【0029】
本実施の形態の米飯における(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有量は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上とすることができる。
【0030】
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下とすることができる。
【0031】
したがって、本実施の形態の米飯における(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.20質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.20質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.10質量%以下、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上0.10質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0032】
本実施の形態の米飯は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をさらに顕著に向上させ、さらに炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果も付与する観点から、上記した4-α-グルカノトランスフェラーゼと共に、α-アミラーゼを含有してもよい。
【0033】
(b)α-アミラーゼは、EC 3.2.1.1に分類され、澱粉やグリコーゲンなどのα-1,4グリコシド結合をランダムに加水分解する酵素である。本実施の形態で用いられるα-アミラーゼは、その起源は限定されず、組み換え酵素であってもよい。具体的には、天野エンザイム株式会社製の「クライスターゼ(登録商標)」、「クライスターゼ(登録商標)L1」、「クライスターゼ(登録商標)E5CC」、「ビヨザイムA」、「ビヨザイムLC」などがあげられる。
【0034】
α-アミラーゼを米飯に含有させることで、澱粉やグリコーゲンが多糖ないしはマルトース、オリゴ糖まで細かく分解されるため、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)が低減され、炊飯液の粘性が下がる。これにより、米粒同士の結着が緩和され、ほぐれがよくなるものと考えられる。また、米粒同士の結着が緩和され、炊飯液の粘性が下がることで、炊飯時の釜内部の温度ムラが生じにくく、対流がよくなるものと考えられる。さらにα-アミラーゼの含有量を調整することにより、これらの効果をより(場合によっては顕著に)向上させることができる。
【0035】
なお、本実施の形態においてα-アミラーゼは、酵素製剤として単体で、米飯に含有させてもよい。また、前記した4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼとを混合した酵素製剤として、米飯に含有させてもよい。さらには後述する炊飯用調味液や、米飯改良剤に、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを添加、混合して、それを米飯に含有させてもよい。
【0036】
本実施の形態の米飯がα-アミラーゼを含有する場合、米飯におけるα-アミラーゼの含有量は、4-α-グルカノトランスフェラーゼと同時に含有される限り特に制限されない。長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、α-アミラーゼの含有量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上とすることができる。
【0037】
また、α-アミラーゼの含有量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下とすることができる。
【0038】
したがって、米飯におけるα-アミラーゼの含有量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.10質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.05質量%以下、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上0.04質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0039】
本実施の形態の米飯は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果や、炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果をよりさらに顕著に向上させる観点から、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、さらにマルトトリオヒドロラーゼを含有してもよい。
【0040】
(c)マルトトリオヒドロラーゼは、EC 3.2.1.116に分類され、澱粉やグリコーゲンなどのα-1,4グリコシド結合を加水分解し、鎖の非還元末端から連続するマルトトリオース(3分子のグルコースがα1-4グリコシド結合した三糖)単位を除去する反応を触媒する酵素である。本実施の形態で用いられるマルトトリオヒドロラーゼは、その起源は限定されず、組み換え酵素であってもよい。具体的には、天野エンザイム株式会社製の「AMT-1.2L」などがあげられる。
【0041】
マルトトリオヒドロラーゼを米飯に含有させることで、澱粉が三糖であるマルトトリオースまで分解されるため、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)が低減され、炊飯液の粘性が下がる。これにより、米粒同士の結着が緩和され、ほぐれがよくなるものと考えられる。また、米粒同士の結着が緩和され、炊飯液の粘性が下がることで、炊飯時の釜内部の温度ムラが生じにくく、対流がよくなるものと考えられる。また、澱粉が分解して生成したマルトトリオースによって、水分が保持され老化が抑制されるものと考えられる。さらにマルトトリオヒドロラーゼの含有量を調整することにより、これらの効果をより(場合によっては顕著に)向上させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態においてマルトトリオヒドロラーゼは、酵素製剤として単体で含有させてもよい。また、前記した4-α-グルカノトランスフェラーゼ、α-アミラーゼとマルトトリオヒドロラーゼとを混合した酵素製剤として、米飯に含有させてもよい。さらには後述する炊飯用調味液や、米飯改良剤に、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、α-アミラーゼとマルトトリオヒドロラーゼを添加、混合して、それを米飯に含有させてもよい。
【0043】
本実施の形態の米飯がマルトトリオヒドロラーゼを含有する場合、米飯におけるマルトトリオヒドロラーゼの含有量は、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼと同時に含有される限り特に制限されない。長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、マルトトリオヒドロラーゼの含有量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上とすることができる。
【0044】
また、マルトトリオヒドロラーゼの含有量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下とすることができる。
【0045】
したがって、米飯におけるマルトトリオヒドロラーゼの含有量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.05質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.04質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0046】
本実施の形態の米飯における、上記(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ及び(b)α-アミラーゼ、又は、上記(a)、(b)及び(c)マルトトリオヒドロラーゼの合計含有量は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.003質量%以上、好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、よりさらに好ましくは0.006質量%以上、とりわけ好ましくは0.0065質量%以上、とりわけより好ましくは0.007質量%以上とすることができる。
【0047】
また、上記合計含有量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.12質量%以下とすることができる。
【0048】
したがって、米飯における上記合計含有量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.003質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.004質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上0.20質量%以下、よりさらに好ましくは0.006質量%以上0.20質量%以下、とりわけ好ましくは0.0065質量%以上0.15質量%以下、とりわけより好ましくは0.007質量%以上0.12質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0049】
本実施の形態の米飯において、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果や、炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果の観点等との観点から、4-α-グルカノトランスフェラーゼに加え、α-アミラーゼを含有させることが好ましい。この場合の米飯に対する4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼの各含有量、および合計含有量は、上記のとおりである。
【0050】
また、本実施の形態の米飯が(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼを含有する場合、(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をよりさらに顕著にする観点等から、例えば3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上とすることができる。
【0051】
また、上記合計含有量に占める(a)の割合の上限は、特に限定されないが、ほぐれ方の好ましさ(米粒同士の結着が弱すぎて、崩れるようなほぐれ方は好ましくない)や、美味しさの観点等から、例えば97質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下とすることができる。
【0052】
したがって、(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合は、例えば3質量%以上97質量%以下、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは10質量%以上90質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0053】
4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを米飯に含有させた場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制が改善され、ほぐれも向上し、出来立ての風味保持効果が奏されることは前記したとおりである。4-α-グルカノトランスフェラーゼに加え、さらにα-アミラーゼを、上記記載の所定の含有量で、かつ、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを上記記載の所定の含有比で、米飯に含有させることで、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制や、ほぐれの向上や、出来立ての風味保持効果がさらに顕著に奏されるばかりか、炊飯時の加熱ムラが抑えられ、対流を向上させる効果がより顕著に奏される。
【0054】
これは、α-アミラーゼをさらに含有させることで、4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを含有させた場合に比べ、α-アミラーゼが澱粉を加水分解することで生じた「澱粉分解物」が多数存在することにより、4-α-グルカノトランスフェラーゼが転移させる3糖の基質が増加するためと考えられる。これにより、より多くの分岐鎖構造が形成されるため、分岐鎖間に保持しうる水分のトータル量が増えることとなり、長時間保管後の米飯の表面のパサつきや老化が、より顕著に抑制されるものと考えられる。また、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼによる澱粉の加水分解が相乗して進むことで、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)がより低減され、炊飯液の粘性がさらに下がることにより、米粒同士の結着が緩和され、米飯がよりほぐれやすくなるものと考えられる。
【0055】
なお、米飯における(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合は、上記した範囲にあれば特に限定されないが、上記範囲を外れると、ほぐれには優れるが、米粒同士の結着が弱くなりすぎ、崩れるようにほぐれる場合がある。
【0056】
また、本実施の形態の米飯において、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果や、炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果の観点等から、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、さらにマルトトリオヒドロラーゼを含有させることが好ましい。この場合の米飯に対する4-α-グルカノトランスフェラーゼ、α-アミラーゼ、及びマルトトリオヒドロラーゼの各含有量、および合計含有量は、上記のとおりである。
【0057】
本実施の形態の米飯が(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼと(c)マルトトリオヒドロラーゼを含有する場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をよりさらに顕著にする観点から、上記(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合は、例えば10質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることができる。
【0058】
また、上記(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合の上限は、特に限定されないが、ほぐれ方の好ましさ(米粒同士の結着が弱すぎて、崩れるようなほぐれ方は好ましくない)や、美味しさの観点等から、例えば80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下とすることができる。
【0059】
したがって、(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合は、例えば10質量%以上80質量%以下、好ましくは15質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上70質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0060】
4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを米飯に含有させた場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制が改善され、ほぐれも向上し、出来立ての風味保持効果が奏されることは前記したとおりである。4-α-グルカノトランスフェラーゼに加え、さらにα-アミラーゼを、上記記載の所定の含有量で、かつ、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを上記記載の所定の含有比で、米飯に含有させることで、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制や、ほぐれの向上や、出来立ての風味保持効果がさらに顕著に奏されるばかりか、炊飯時の加熱ムラが抑えられ、対流を向上させる効果がより顕著に奏されることも前記のとおりである。また、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、さらにマルトトリオヒドロラーゼを含有させることで、前記効果がよりさらに顕著に向上されて奏される。
【0061】
これは、各酵素の機能が異なることによるものと考えられるが、4-α-グルカノトランスフェラーゼは澱粉を3糖に分解、分岐鎖として転移させるが、α-アミラーゼを同時に含有させることで、4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを含有させた場合に比べ、α-アミラーゼが澱粉を加水分解することで生じた「澱粉分解物」が多数存在することにより、4-α-グルカノトランスフェラーゼが転移させる3糖の基質が増加するためと考えられる。一方で、マルトトリオヒドロラーゼは澱粉を3糖単位に加水分解するが、α-アミラーゼが共存することで、α-アミラーゼによる加水分解で生じた「澱粉分解物」が多数存在することにより、より3糖が多く形成されるものと考えられる。
【0062】
つまり、4-α-グルカノトランスフェラーゼが転移させる3糖の基質が、α-アミラーゼのみを含有させた場合に比べ、α-アミラーゼとマルトトリオヒドロラーゼの両方を含有させることでさらに増えることとなり、分岐鎖構造がより形成されやすくなるものと考えられる。これらが複合的にあわさり、より多くの分岐鎖構造が形成されるため、分岐鎖間に保持しうる水分のトータル量がさらに増えることとなり、長時間保管後の米飯の表面のパサつきや老化が、さらにより顕著に抑制されるものと考えられる。
【0063】
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、マルトトリオヒドロラーゼによる加水分解が相乗して進むことで、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)がより低減され、炊飯液の粘性がさらに下がることにより、米粒同士の結着が緩和され、よりさらにほぐれやすくなるものと考えられる。
【0064】
なお、上記(a)、(b)及び(c)の合計量に占める(a)の割合は、上記した範囲にあれば特に限定されないが、上記範囲を外れると、ほぐれには優れるが、米粒同士の結着が弱くなりすぎ、崩れるようにほぐれる場合がある。また、上記範囲を外れると、喫食した際の米の味や、美味しさといった風味改善の効果の観点からも、好ましくない場合がある。
【0065】
本実施の形態の米飯は、上述の効果を妨げない限り、上記3種類の酵素以外の任意の酵素を含有していてもよい。具体的には、プロテアーゼ、グルコアミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、グルコースオキシダーゼ、キシラナーゼ、リボ核酸分解酵素、トランスグルタミナーゼ、α-グルコシダーゼ、プルラナーゼ、細胞壁分解酵素等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0066】
また、本実施の形態の米飯は、上記酵素のほか、その効果を阻害しない範囲で、通常の米飯において用いられる調味等のための原料や、具材など「一般に食品に配合される他の原料」を含有させることができる。なお、このように本実施の形態の米飯に、調味等のための原料(調味原料)や具材など「一般に食品に配合される他の原料」を含有させたものも、本実施の形態の「米飯」に含まれ得る。
【0067】
「一般に食品に配合される他の原料」としては、例えば、水、食塩、食酢、糖類(高甘味度甘味料を含む)、油脂類、有機酸、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、果汁、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、フレーバー等の呈味・風味成分、ガム類や澱粉等の粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等の添加剤といった、調味等のための原料(調味原料)を配合することができる。
【0068】
また、本実施の形態の米飯には、これら原料に加え、野菜(ニンジン、ゴボウ、大根等)や、穀類(小豆、大豆等)、肉類、魚類といった具材を配合してもよい。これらの原料や具材の含有量は、特に限定はされず、本実施の形態の米飯の用途に応じて適宜決定することができる。
【0069】
「食塩」としては、そのものでもよいが、食塩を含有する食品でも良い。食塩を含有する食品は特に限定されないが、例として、醤油、味噌、出汁等が挙げられる。
【0070】
上記醤油としては特に限定されるものではないが、例えば濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜り醤油、再仕込み醤油等が挙げられる。これらの醤油は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0071】
上記味噌としては特に限定されるものではないが、例えば麦味噌、米味噌、豆味噌、調合味噌などに加えて、その製法に起因する色の違いによって命名される赤味噌・白味噌・淡色味噌等が挙げられる。これらの味噌は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0072】
「食酢」としては、例えば、米や麦などの穀物や果汁を原料として生産される醸造酢と、氷酢酸や酢酸の希釈液に砂糖等の調味料を加えるか、又はそれに醸造酢を加えた合成酢と、があり、何れも使用することができる。醸造酢としては、例えば、米酢、穀物酢(玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(リンゴ酢、ブドウ酢、白ブドウ酢、柑橘(レモン、柚子、カボス、オレンジ、ミカン、シークワーサー、グレープフルーツ、カラマンシー等)酢、マンゴー酢、イチゴ酢、ブルーベリー酢、ザクロ酢、モモ酢、ウメ酢、パイナップル酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢などが挙げられる。また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸を水で適宜希釈したものなどが挙げられる。なお、これらの食酢は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
「糖類」としては、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、黒糖、はちみつ、水あめ、デキストリン、ラクトース、ガラクトース等の他に、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0074】
「高甘味度甘味料」としては、例えばアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、甘草抽出物、ステビアやその酵素処理物等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0075】
「油脂類」としては、例えば、大豆油、大豆胚芽油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、へーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、オリーブ油、小麦胚芽油、パーム油、藻類油、米油、アーモンドオイル、アボカドオイル等が挙げられる。これらの油脂類は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0076】
「有機酸」としては、例えば乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フィチン酸、フマル酸、リン酸等が挙げられる。これらの有機酸は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0077】
「アミノ酸系調味料」としては、例えばL-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸系調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0078】
「核酸系調味料」としては、例えば5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸系調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0079】
「有機酸系調味料」としては、例えばクエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸系調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。2種以上の有機酸系調味料を併用することで、双方の呈味が相乗的に高まるため好ましい。
【0080】
「風味原料」としては、例えば鰹だし、昆布だし、野菜エキス、鰹エキス、昆布エキス、魚介エキス、蓄肉エキス等が挙げられる。これらの風味原料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0081】
「旨味調味料」としては、例えば、たん白加水分解物、酵母エキス等が挙げられる。「酵母エキス」としては、例えばビール酵母、パン酵母、トルラ酵母、酒酵母、ワイン酵母、醤油酵母等を原料として、酵母体を自己消化や酵素添加等により分解してエキス化したものを挙げることができる。これらの旨味調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0082】
「酒類」としては、例えば清酒、合成清酒、みりん、焼酎、ワイン、リキュール、紹興酒等が挙げられる。これらの酒類は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0083】
「香辛料」とは特有の香り、刺激的な呈味、色調を有し、香り付け、消臭、調味、着色等の目的で飲食品に配合する植物体の一部(植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎など)をいい、香辛料にはスパイス又はハーブが含まれる。これらの香辛料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0084】
スパイスとは、香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものをいい、例えば、胡椒(黒胡椒、白胡椒、赤胡椒)、ニンニク、ショウガ、ごま(ごまの種子)、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、ケシノミ、ゆず、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパー、オリーブの実などが挙げられる。
【0085】
また、ハーブとは、香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものをいい、例えば、クレソン、コリアンダー、シソ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉などが挙げられる。
【0086】
「香辛料抽出物」としては、一般的に「香辛料」又は「スパイス」と表示される食品の抽出物であれば何でもよく、その例としては、唐辛子抽出物、マスタード抽出物(カラシ抽出物)、ショウガ抽出物(ジンジャー抽出物)、ワサビ抽出物、ペパー抽出物、ニンニク抽出物(ガーリック抽出物)、オニオン抽出物、サンショウ抽出物等が挙げられる。これらの香辛料抽出物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0087】
「香味オイル」としては、例えば、ジンジャーオイル、ガーリックオイル、マスタードオイル、オニオンオイル、ゴマ油、ねぎオイル、ニラオイル、セリオイル、シソオイル、わさびオイル、レモンオイル、魚介オイル、蓄肉オイル等が挙げられる。これらの香味オイルは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0088】
「フレーバー」としては、例えば、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー、マスタードフレーバー、オニオンフレーバー、ゴマフレーバー、ねぎフレーバー、ニラフレーバー、シソフレーバー、わさびフレーバー、レモンフレーバー等が挙げられる。これらのフレーバーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0089】
「粘度調整剤」としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、カラヤガム、寒天、セルロース、タマリンドシードガム、プルラン、ペクチン、キチン、キトサン、澱粉、加工澱粉、澱粉分解物等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0090】
澱粉とは、例えば小麦粉澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等を挙げることができる。
【0091】
また、加工澱粉とは、例えば上記澱粉に、架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理などの処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等を挙げることができる。
【0092】
また、澱粉分解物とは、例えば上記澱粉又は加工澱粉を分解して得られるデキストリン、マルトデキストリン等を挙げることができる。
【0093】
また、米飯は、酵素の代わりに、後述する第三、第四の実施形態に係る炊飯用調味液又は米飯改良剤を、含有していてもよい。
【0094】
本実施の形態において、上記した酵素を米飯に含有させるには、後に詳述するように、炊飯前又は炊飯時に、生米に対して酵素を添加すればよい。炊飯することにより、最終的には上記酵素はそのほとんどが失活するが、温度上昇の過程で酵素が米の澱粉に部分的に作用することで、上述の作用効果が発揮されるものと推測される。
【0095】
このようにして、第一の実施形態に係る米飯は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを含む酵素を含有させたものとなっており、これにより長期保管後においても、米飯のほぐれ、劣化、及び風味のうち少なくとも1つが改善された米飯となっている。また、得られた米飯をすし酢と酢合わせし、すし飯とする場合には、しゃもじにかかる負荷を軽くすることができる米飯となっている。
【0096】
ここで「ほぐれの改善」とは、炊き上がり(米飯を含む加工食品については、その製造)から6~48時間保管後においても、飯粒同士の結着が弱く、ほぐれやすさが向上していることを意味する。
【0097】
「劣化の改善」とは、炊き上がり(米飯を含む加工食品については、その製造)から6~48時間保管後においても、米飯の劣化(パサつき、老化)が、改善(又は抑制)されていることを意味する。「パサつき」とは、飯粒表面の乾燥を意味する。「老化」とは、米飯全体の粉状感があるボソボソとした食感を指す。
【0098】
「風味の改善」とは、炊き上がり(米飯を含む加工食品については、その製造)から6~48時間保管後においても、米の味や美味しさ、といった米飯の好ましい風味の低下が抑えられ、出来立ての風味が保持されていることを意味する。また、米飯がすし飯(酢飯)である場合は、味の利き(食酢の酸味がほどよく感じられ、酸味がボケていない状態)も「風味」に含まれる。
【0099】
上記の如き第一の実施形態の米飯を、その製法により定義したものが、第二の実施形態に係る米飯である。すなわち、第二の実施形態に係る米飯は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを添加して炊飯することにより得られたものであることを特徴とするものである。ここで、「米飯」、「4-α-グルカノトランスフェラーゼ」、「α-アミラーゼ」及び「マルトトリオヒドロラーゼ」については、上記で説明した通りである。
【0100】
第二の実施形態において、4-α-グルカノトランスフェラーゼを添加して炊飯することで、米飯の澱粉が分岐鎖構造を有する澱粉へと変化する。そうすると、分岐鎖や、分岐鎖間の空隙に水分が深く入り込むと同時に、澱粉中に水分が保持されるため、長時間保管後も米飯の表面のパサつきや、老化が抑制されるものと考えられる。また、澱粉が3糖単位で分解、転移されることにより、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)がある程度低減され、炊飯液の粘性が下がる。これにより、米粒同士の結着が緩和され、ほぐれやすくなるものと考えられる。さらに4-α-グルカノトランスフェラーゼの添加量を調整することにより、これらの効果をより(場合によっては顕著に)向上させることができる。
【0101】
なお、4-α-グルカノトランスフェラーゼは、酵素製剤として単体で添加して炊飯してもよく、後述する炊飯用調味液や、米飯改良剤として添加して炊飯してもよい。
【0102】
第二の実施形態における(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼの添加量は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上とすることができる。
【0103】
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼの添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下とすることができる。
【0104】
したがって、第二の実施形態における(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼの添加量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.20質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.20質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.10質量%以下、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上0.10質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0105】
第二の実施形態において、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をさらに顕著に向上させ、さらに炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果も付与する観点から、上記した4-α-グルカノトランスフェラーゼと共に、あるいは、4-α-グルカノトランスフェラーゼとは別途に、α-アミラーゼを添加してもよい。
【0106】
(b)α-アミラーゼを米飯に添加して炊飯することで、澱粉やグリコーゲンが多糖ないしはマルトース、オリゴ糖まで細かく分解されるため、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)が低減され、炊飯液の粘性が下がる。これにより、米粒同士の結着が緩和され、ほぐれがよくなるものと考えられる。また、米粒同士の結着が緩和され、炊飯液の粘性が下がることで、炊飯時の釜内部の温度ムラが生じにくく、対流がよくなるものと考えられる。さらにα-アミラーゼの添加量を調整することにより、これらの効果をより(場合によっては顕著に)向上させることができる。
【0107】
なお、α-アミラーゼは、酵素製剤として単体で添加して炊飯してもよい。また、前記した4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを混合した酵素製剤として、生米に添加して炊飯してもよい。さらには後述する炊飯用調味液や、米飯改良剤に、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを添加、混合して、それを炊飯前の生米に添加してもよい。
【0108】
第二の実施形態においてα-アミラーゼを添加して炊飯する場合、その添加量は、4-α-グルカノトランスフェラーゼと併用して添加される限り特に制限されない。長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、α-アミラーゼの添加量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上とすることができる。
【0109】
また、α-アミラーゼの添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下とすることができる。
【0110】
したがって、第二の実施形態におけるα-アミラーゼの添加量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.10質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.05質量%以下、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上0.04質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0111】
第二の実施形態において、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果や、炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果をよりさらに顕著に向上させる観点から、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、さらにマルトトリオヒドロラーゼを添加してもよい。
【0112】
(c)マルトトリオヒドロラーゼを添加して炊飯することで、澱粉が三糖であるマルトトリオースまで分解されるため、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)が低減され、炊飯液の粘性が下がる。これにより、米粒同士の結着が緩和され、ほぐれがよくなるものと考えられる。また、米粒同士の結着が緩和され、炊飯液の粘性が下がることで、炊飯時の釜内部の温度ムラが生じにくく、対流がよくなるものと考えられる。また、澱粉が分解して生成したマルトトリオースによって、水分が保持され老化が抑制されるものと考えられる。さらにマルトトリオヒドロラーゼの添加量を調整することにより、これらの効果をより(場合によっては顕著に)向上させることができる。
【0113】
なお、マルトトリオヒドロラーゼは、酵素製剤として単体で生米に添加して炊飯してもよい。また、前記した4-α-グルカノトランスフェラーゼ、α-アミラーゼとマルトトリオヒドロラーゼとを混合した酵素製剤として、生米に添加して炊飯してもよい。さらには後述する炊飯用調味液や、米飯改良剤に、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、α-アミラーゼとマルトトリオヒドロラーゼを添加、混合して、それを炊飯前の生米に添加してもよい。
【0114】
第二の実施形態においてマルトトリオヒドロラーゼを添加して炊飯する場合、その添加量は、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼと併用して添加される限り特に制限されない。長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、マルトトリオヒドロラーゼの添加量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上とすることができる。
【0115】
また、マルトトリオヒドロラーゼの添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下とすることができる。
【0116】
したがって、第二の実施形態におけるマルトトリオヒドロラーゼの添加量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.05質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.04質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0117】
第二の実施形態における、上記(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ及び(b)α-アミラーゼ、又は、上記(a)、(b)及び(c)マルトトリオヒドロラーゼの合計添加量は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.003質量%以上、好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、よりさらに好ましくは0.006質量%以上、とりわけ好ましくは0.0065質量%以上、とりわけより好ましくは0.007質量%以上とすることができる。
【0118】
また、上記合計添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.12質量%以下とすることができる。
【0119】
したがって、第二の実施形態における上記合計添加量は、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.003質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.004質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上0.20質量%以下、よりさらに好ましくは0.006質量%以上0.20質量%以下、とりわけ好ましくは0.0065質量%以上0.15質量%以下、とりわけより好ましくは0.007質量%以上0.12質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0120】
また、第二の実施形態において(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼを添加して炊飯する場合、(a)及び(b)の合計添加量に占める(a)の割合は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をよりさらに顕著にする観点等から、例えば3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上とすることができる。
【0121】
また、上記合計添加量に占める(a)の割合の上限は、特に限定されないが、ほぐれ方の好ましさ(米粒同士の結着が弱すぎて、崩れるようなほぐれ方は好ましくない)や、美味しさの観点等から、例えば97質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下とすることができる。
【0122】
したがって、(a)及び(b)の合計添加量に占める(a)の割合は、例えば3質量%以上97質量%以下、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは10質量%以上90質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0123】
4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを添加して炊飯した場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制が改善され、ほぐれも向上し、出来立ての風味保持効果が奏されることは前記したとおりである。4-α-グルカノトランスフェラーゼに加え、さらにα-アミラーゼを、上記記載の所定の添加量で、かつ、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを上記記載の所定の比率で、添加することで、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制や、ほぐれの向上や、出来立ての風味保持効果がさらに顕著に奏されるばかりか、炊飯時の加熱ムラが抑えられ、対流を向上させる効果がより顕著に奏される。
【0124】
これは、α-アミラーゼをさらに添加することで、4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを添加した場合に比べ、α-アミラーゼが澱粉を加水分解することで生じた「澱粉分解物」が多数存在することにより、4-α-グルカノトランスフェラーゼが転移させる3糖の基質が増加するためと考えられる。これにより、より多くの分岐鎖構造が形成されるため、分岐鎖間に保持しうる水分のトータル量が増えることとなり、長時間保管後の米飯の表面のパサつきや老化が、より顕著に抑制されるものと考えられる。また、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼによる澱粉の加水分解が相乗して進むことで、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)がより低減され、炊飯液の粘性がさらに下がることにより、米粒同士の結着が緩和され、米飯がよりほぐれやすくなるものと考えられる。
【0125】
なお、(a)及び(b)の合計添加量に占める(a)の割合は、上記した範囲にあれば特に限定されないが、上記範囲を外れると、ほぐれには優れるが、米粒同士の結着が弱くなりすぎ、崩れるようにほぐれる場合がある。
【0126】
第二の実施形態において(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼと(c)マルトトリオヒドロラーゼを添加する場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をよりさらに顕著にする観点から、上記(a)、(b)及び(c)の合計添加量に占める(a)の割合は、例えば10質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることができる。
【0127】
また、上記(a)、(b)及び(c)の合計添加量に占める(a)の割合の上限は、特に限定されないが、ほぐれ方の好ましさ(米粒同士の結着が弱すぎて、崩れるようなほぐれ方は好ましくない)や、美味しさの観点等から、例えば80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下とすることができる。
【0128】
したがって、(a)、(b)及び(c)の合計添加量に占める(a)の割合は、例えば10質量%以上80質量%以下、好ましくは15質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上70質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0129】
4-α-グルカノトランスフェラーゼに加え、さらにα-アミラーゼを、上記記載の所定の添加量で、かつ、上記記載の所定の比率で、添加することで、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制や、ほぐれの向上や、出来立ての風味保持効果がさらに顕著に奏されるばかりか、炊飯時の加熱ムラが抑えられ、対流を向上させる効果がより顕著に奏されることは、前記のとおりである。4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、さらにマルトトリオヒドロラーゼを、上記記載の所定の添加量で、かつ、上記記載の所定の比率で、添加することで、前記効果がよりさらに顕著に向上されて奏される。
【0130】
これは、各酵素の機能が異なることによるものと考えられるが、4-α-グルカノトランスフェラーゼは澱粉を3糖に分解、分岐鎖として転移させるが、α-アミラーゼを同時に添加することで、4-α-グルカノトランスフェラーゼのみを添加した場合に比べ、α-アミラーゼが澱粉を加水分解することで生じた「澱粉分解物」が多数存在することにより、4-α-グルカノトランスフェラーゼが転移させる3糖の基質が増加するためと考えられる。一方で、マルトトリオヒドロラーゼは澱粉を3糖単位に加水分解するが、α-アミラーゼが共存することで、α-アミラーゼによる加水分解で生じた「澱粉分解物」が多数存在することにより、より3糖が多く形成されるものと考えられる。
【0131】
つまり、4-α-グルカノトランスフェラーゼが転移させる3糖の基質が、α-アミラーゼのみを添加させた場合に比べ、α-アミラーゼとマルトトリオヒドロラーゼの両方を添加することでさらに増えることとなり、分岐鎖構造がより形成されやすくなるものと考えられる。これらが複合的にあわさり、より多くの分岐鎖構造が形成されるため、分岐鎖間に保持しうる水分のトータル量がさらに増えることとなり、長時間保管後の米飯の表面のパサつきや老化が、さらにより顕著に抑制されるものと考えられる。
【0132】
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼに加え、マルトトリオヒドロラーゼによる加水分解が相乗して進むことで、米粒の表面を覆っている澱粉由来の粘液状の物質(オネバ)がより低減され、炊飯液の粘性がさらに下がることにより、米粒同士の結着が緩和され、よりさらにほぐれやすくなるものと考えられる。
【0133】
なお、上記(a)、(b)及び(c)の合計添加量に占める(a)の割合は、上記した範囲にあれば特に限定されないが、上記範囲を外れると、ほぐれには優れるが、米粒同士の結着が弱くなりすぎ、崩れるようにほぐれる場合がある。また、上記範囲を外れると、喫食した際の米の味や、美味しさといった風味改善の効果の観点からも、好ましくない場合がある。
【0134】
なお、酵素は、上述の効果を妨げない限り、上記3種類の酵素以外の任意の酵素を添加してもよい。「任意の酵素」としては特に限定されないが、上記で説明した通りである。
【0135】
第二の実施形態において、炊飯方法は、上記した酵素を添加して炊飯すること以外は、基本的に従来実施されている方法を採用すればよい。
【0136】
例えば、当該炊飯方法は、原料米を洗米する工程、ザル等で米の水切りをする工程、米を水に浸漬する工程、上記酵素を米に添加する工程、及び、適切な加水量に調整した後に、通常の方法で加熱調理する炊飯工程を含むものであってもよい。また、上記浸漬工程を省略することもできる。原料米として物理的処理により予め糠が除去されている無洗米を用いる場合は、上記した洗米工程、水切り工程は必要ない。
【0137】
また、米飯がすし飯(酢飯)である場合は、上記のようにして炊飯した後の米飯を用いて、常法によりすし飯を製造することができる。例えば、当該すし飯の製造方法は、炊飯後の米飯を蒸らす工程、食酢、ショ糖、食塩等を含む調味酢(すし酢)を米飯に添加(酢合わせ)する工程、米飯を撹拌してほぐす工程、出来上がったすし飯を冷却する工程、を含むものであってもよい。なお、すし飯の酸度は特に限定されないが、0.15w/v%以上0.40w/v%以下であるものが好適である。ここで、「酸度」については上記で説明した通りである。
【0138】
なお、第二の実施形態においては、炊飯時における加水量を一般的な量よりも多くする多加水炊飯を行ってもよい。加水量を多くして米飯に水分を多く含ませることによって、米飯に含まれる澱粉の老化抑制が期待できるが、通常は、米飯がべちゃついてほぐれが悪くなってしまう。しかし、上記酵素を米飯に添加して、炊飯することで、米飯のほぐれが改善され、べちゃつきも抑制されるため、より一層の老化抑制効果を得ることができる。
【0139】
したがって、米飯が白飯である場合は、一般的な加水量が、生米に対する乾燥質量比で、1.3倍以上1.5倍未満程度であるのに対して、本実施の形態においては、生米に対する乾燥質量比で、1.5倍以上1.8倍以下程度の加水量としてもよい。
【0140】
また、米飯がすし飯である場合は、一般的な加水量が、生米に対する乾燥質量比で、1.2倍以上1.3倍未満程度であるのに対して、本実施の形態においては、生米に対する乾燥質量比で、1.3倍以上1.7倍以下程度の加水量としてもよい。
【0141】
酵素を添加する時期は、「炊飯前」又は「炊飯時」である。具体的には、洗米後の水切りが終了した時点から、炊飯工程において実質的に加熱調理が開始される前までの間の任意の時期とすることができる。ここで、「実質的に加熱調理が開始される」とは、水温が40℃以上に達することを意味する。なお、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果や、炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果等の観点から、酵素の添加は、水温が、酵素の至適温度に達する前までに行うのが好ましい。特には、上記した加水量の水を加える前に、又は、それと同時に、米に対して酵素を添加するのが好ましい。
【0142】
第二の実施形態において、米飯には、上記酵素のほか、その効果を阻害しない範囲で、通常の米飯において用いられる調味等のための原料や、具材など「一般に食品に配合される他の原料」を添加することができる。なお、このように、米飯に、調味等のための原料(調味原料)や具材など「一般に食品に配合される他の原料」を含有、添加させたものも、第二の実施形態の「米飯」に含まれ得る。ここで、「一般に食品に配合される他の原料」については、上記で説明した通りである。
【0143】
また、酵素の代わりに、後述する第四、第五の実施形態に係る炊飯用調味液又は米飯改良剤を、添加してもよい。
【0144】
なお、第二の実施形態に係る米飯は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを添加して炊飯する、という製法により定義されたものである。ここで、一般に酵素は、特に高い耐熱性を有するもの以外は、炊飯により失活してしまうため、最終製品における酵素活性等によりその構造を特定することは不可能である。また、酵素を添加することにより、無添加の場合と比べて、米飯に与える構造又は特性上の変化について、出願時にすべて解析し、数値的に表現することは非常に困難であり、かつ、過大な経済的支出を伴うものであり、その結果を特許請求の範囲において包括的に表現することも不可能である。よって、第二の実施形態の米飯を、その構造又は特性により直接特定することは不可能又は非実際的であると言える。
【0145】
次に、第三の実施形態に係る米飯の製造方法は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを、炊飯前又は炊飯時に添加することを特徴とするものである。ここで、「米飯」、「4-α-グルカノトランスフェラーゼ」、「α-アミラーゼ」、「マルトトリオヒドロラーゼ」及びこれら酵素の添加量、その比率、当該酵素による作用効果については、上記で説明した通りである。
【0146】
第三の実施形態において、米飯の製造方法は、上記した酵素を炊飯前又は炊飯時に添加すること以外は、基本的に従来実施されている米飯の製造方法を採用すればよく、具体的には第二の実施形態で説明した通りである。
【0147】
第三の実施形態において、上記酵素のほか、その効果を阻害しない範囲で、通常の米飯において用いられる調味等のための原料や、具材など「一般に食品に配合される他の原料」を添加することができる。なお、このように、米飯に、調味等のための原料(調味原料)や具材など「一般に食品に配合される他の原料」を含有させたものも、第三の実施形態における「米飯」に含まれ得る。ここで、「一般に食品に配合される他の原料」については、上記で説明した通りである。
【0148】
また、酵素の代わりに、後述する第四、第五の実施形態に係る炊飯用調味液又は米飯改良剤を、添加してもよい。
【0149】
このようにして、第三の実施形態に係る製造方法により製造される米飯は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを含有または添加させた、第一または第二の実施形態に係る米飯となる。
【0150】
次に、第四の実施形態に係る炊飯用調味液は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを有効成分として含有するものである。ここで、「4-α-グルカノトランスフェラーゼ」、「α-アミラーゼ」、「マルトトリオヒドロラーゼ」及びこれら酵素による作用効果については、上記で説明した通りである。
【0151】
第四の実施形態に係る調味液は、第一または第二の実施形態に係る米飯の製造のために用いられるものである。すなわち、この調味液は、長期保管後の米飯についてのほぐれ、劣化、及び風味のうち少なくとも1つの改善作用を有するものであって、米飯に含有させた場合には、いわば長期保管後の米飯用のほぐれ改善剤、劣化改善剤、又は風味改善剤、として機能するものである。
【0152】
第四の実施形態の調味液における酵素の合計含有量については、特に限定されない。なお、調味液が(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼを含有する場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制や、ほぐれの向上や、出来立ての風味保持効果、さらには、炊飯時の加熱ムラが抑えられ、対流を向上させる効果等の観点から、(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合は、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をよりさらに顕著にする観点等から、例えば3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上とすることができる。
【0153】
また、上記合計含有量に占める(a)の割合の上限は、特に限定されないが、ほぐれ方の好ましさ(米粒同士の結着が弱すぎて、崩れるようなほぐれ方は好ましくない)や、美味しさの観点等から、例えば97質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下とすることができる。
【0154】
したがって、(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合は、例えば3質量%以上97質量%以下、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは10質量%以上90質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0155】
調味液における(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合は、上記した範囲にあれば特に限定されないが、上記範囲を外れると、ほぐれには優れるが、米粒同士の結着が弱くなりすぎ、崩れるようにほぐれる場合がある。
【0156】
第四の実施形態の調味液が(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼと(c)マルトトリオヒドロラーゼを含有する場合、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果をよりさらに顕著にする観点から、(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合は、例えば10質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることができる。
【0157】
また、上記(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合の上限は、特に限定されないが、ほぐれ方の好ましさ(米粒同士の結着が弱すぎて、崩れるようなほぐれ方は好ましくない)や、美味しさの観点等から、例えば80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下とすることができる。
【0158】
したがって、(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合は、例えば10質量%以上80質量%以下、好ましくは15質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上70質量%以下とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0159】
第四の実施形態の調味液は、上述の効果を妨げない限り、上記3種類の酵素以外の任意の酵素を含有していてもよい。「任意の酵素」については、上記で説明した通りである。
【0160】
第四の実施形態の調味液は、酵素の他に「一般に食品に配合される他の原料」を含有してもよく、好ましくは「調味原料」を含有する。「調味原料」として具体的には、例えば、水、食塩、食酢、糖類(高甘味度甘味料を含む)、油脂類、有機酸、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、果汁、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、フレーバー等の呈味・風味成分、ガム類や澱粉等の粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等の添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
また、第四の実施形態の調味液には、これら原料に加え、野菜(ニンジン、ゴボウ、大根等)や、穀類(小豆、大豆等)や、肉類や、魚類といった具材を配合してもよい。これらの原料や具材の含有量は、特に限定はされず、第一又は第二の実施形態の米飯の用途に応じて適宜決定することができる。なお、これらの各種調味原料や具材といった「一般に食品に配合される他の原料」については、上記で説明した通りである。
【0162】
第四の実施形態の調味液は、炊飯前又は炊飯時に添加するための炊飯用調味液である。その添加時期は、洗米後の水切りが終了した時点から、炊飯工程において実質的に加熱調理が開始される前までの間の任意の時期とすることができる。ここで、「実質的に加熱調理が開始される」とは、水温が40℃以上に達することを意味する。なお、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果や、炊飯時の加熱ムラを抑制し、対流を向上させる効果の観点等から、調味液の添加は、水温が、酵素の至適温度に達する前までに行うのが好ましい。
【0163】
第四の実施形態の炊飯用調味液の米飯に対する添加量は、特に限定されない。長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、出来立ての風味保持効果の観点等から、米飯に含有、添加される(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ及び(b)α-アミラーゼ、又は、(a)、(b)及び(c)マルトトリオヒドロラーゼの合計量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対し、例えば0.003質量%以上、好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、よりさらに好ましくは0.006質量%以上、とりわけ好ましくは0.0065質量%以上、とりわけより好ましくは0.007質量%以上となるような添加量とすることができる。
【0164】
該添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、米飯に含有、添加される上記(a)及び(b)、又は、(a)、(b)及び(c)の合計量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対し、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.12質量%以下となるような添加量とすることができる。
【0165】
したがって、調味液の米飯に対する添加量は、米飯に含有、添加される(a)及び(b)、又は、(a)、(b)及び(c)の合計量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対し、例えば0.003質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.004質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上0.20質量%以下、よりさらに好ましくは0.006質量%以上0.20質量%以下、とりわけ好ましくは0.0065質量%以上0.15質量%以下、とりわけより好ましくは0.007質量%以上0.12質量%以下となるような添加量とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0166】
また、第四の実施形態の調味液の米飯に対する添加量は、特に限定されないが、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上となるような添加量とすることができる。
【0167】
また、上記添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下となるような添加量とすることができる。
【0168】
したがって、調味液の米飯に対する添加量は、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.20質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.20質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.10質量%以下、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上0.10質量%以下となるような添加量とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0169】
第四の実施形態の調味液が4-α-グルカノトランスフェラーゼと共にα-アミラーゼを含有する場合、当該調味液の米飯に対する添加量は、特に限定されないが、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有又は添加量が上記範囲内であり、かつ、米飯におけるα-アミラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上となるような添加量とすることができる。
【0170】
また、上記添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有又は添加量が上記範囲内であり、かつ、米飯におけるα-アミラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下となるような添加量とすることができる。
【0171】
したがって、調味液の米飯に対する添加量は、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼの含有又は添加量が上記範囲内であり、かつ、米飯におけるα-アミラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.10質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.05質量%以下、とりわけより好ましくは0.0015質量%以上0.04質量%以下となるような添加量とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0172】
第四の実施形態の調味液が4-α-グルカノトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼと共にマルトトリオヒドロラーゼを含有する場合、当該調味液の米飯に対する添加量は、特に限定されないが、長時間経過後の米飯の表面のパサつきや老化の抑制、ほぐれの改善、及び出来立ての風味保持効果の観点等から、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼの含有又は添加量が上記範囲内であり、かつ、米飯におけるマルトトリオヒドロラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上、好ましくは0.0006質量%以上、さらに好ましくは0.0007質量%以上、よりさらに好ましくは0.001質量%以上、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上となるような添加量とすることができる。
【0173】
また、上記添加量の上限は、特に限定されないが、炊飯時に加水する水や調味液等の他原料との溶解混合性の観点等から、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼの含有又は添加量が上記範囲内であり、かつ、米飯におけるマルトトリオヒドロラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.20質量%以下、好ましくは0.10質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.04質量%以下となるような添加量とすることができる。
【0174】
したがって、調味液の米飯に対する添加量は、米飯における4-α-グルカノトランスフェラーゼ及びα-アミラーゼの含有又は添加量が上記範囲内であり、かつ、米飯におけるマルトトリオヒドロラーゼの含有又は添加量が、水洗、浸漬を行う前の乾燥状態の生米に対して、例えば0.0005質量%以上0.20質量%以下、好ましくは0.0006質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.0007質量%以上0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以上0.05質量%以下、とりわけ好ましくは0.0013質量%以上0.04質量%以下となるような添加量とすることができる。上記の上限及び下限を任意に組合わせてなる範囲も、本願明細書において例示される。
【0175】
次に、第五の実施形態に係る米飯改良剤は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを有効成分として含有するものである。ここで、「米飯」、「4-α-グルカノトランスフェラーゼ」、「α-アミラーゼ」、「マルトトリオヒドロラーゼ」及びこれら酵素による作用効果については、上記で説明した通りである。
【0176】
本実施の形態に係る米飯改良剤は、第一又は第二の実施形態に係る米飯の製造のために用いられるものである。すなわち、この米飯改良剤は、米飯に含有させることによって、長期保管後の米飯についてのほぐれ、劣化、及び風味のうち少なくとも1つを改善する作用を有するものである。
【0177】
米飯改良剤における酵素の合計含有量については、特に限定されない。なお、米飯改良剤が(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼを含有する場合における、(a)及び(b)の合計含有量に占める(a)の割合、並びに、米飯改良剤が(a)、(b)及び(c)マルトトリオヒドロラーゼを含有する場合における、(a)、(b)及び(c)の合計含有量に占める(a)の割合については、第四の実施形態で説明した通りである。
【0178】
第五の実施形態の米飯改良剤は、上述の効果を妨げない限り、上記3種類の酵素以外の任意の酵素を含有していてもよい。「任意の酵素」については、上記で説明した通りである。
【0179】
第五の実施形態の米飯改良剤は、酵素の他に、調味原料などの一般に食品に配合される他の原料を含有していてもよい。ここで、「一般に食品に配合される他の原料」については、上記で説明したとおりである。
【0180】
第五の実施形態の米飯改良剤は、炊飯前又は炊飯時に添加することにより用いられる。その添加時期については、上記で説明した通りである。
【0181】
また、第五の実施形態の米飯改良剤の米飯に対する添加量については、第四の実施形態と同様とすることができる。
【0182】
次に、第六の実施形態に係る長期保管後の米飯の品質改善方法は、4-α-グルカノトランスフェラーゼを添加して炊飯することによるものである。ここで、「米飯」、「4-α-グルカノトランスフェラーゼ」、「α-アミラーゼ」、「マルトトリオヒドロラーゼ」及びこれら酵素による作用効果については、上記で説明した通りである。
【0183】
第六の実施形態においては、第三の実施形態に係る米飯の製造方法と同様にして、酵素を添加して炊飯することにより、長期保管後の米飯についての品質の改善(ほぐれ、劣化、及び風味のうち少なくとも1つの改善)を達成することができる。なお、「ほぐれの改善」、「劣化の改善」及び「風味の改善」については、上記で説明した通りである。
【0184】
また、酵素として、少なくとも4-α-グルカノトランスフェラーゼとα-アミラーゼを添加する場合は、上記の品質改善効果に加えて、炊飯時の加熱ムラを抑制する効果も得られる。
【0185】
「加熱ムラ」とは、加熱調理により炊飯釜内部の原料(米や水や具材や調味液等)に含まれる成分(澱粉、糖など)が変化し、粘度が上昇するため、釜内部の原料がうまく対流せず、釜内で温度勾配(温度ムラ)が生じ、炊き上がりの米飯の品質(固さや粒立ち等)が一律でなく、べちゃつきや、糊状になるなど、ムラができることを指す。酵素の添加量を、米飯に対し前記した所定の範囲となるよう調整し、炊飯することで、対流が改善するため、加熱ムラが改善されるものと推測される。なお、各酵素の作用については、前述したとおりと考えられる。
【0186】
第六の実施形態における(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼ、(b)α-アミラーゼ及び(c)マルトトリオヒドロラーゼの各添加量並びに合計添加量については、第二の実施形態で説明した通りである。
【0187】
また、(a)4-α-グルカノトランスフェラーゼと(b)α-アミラーゼを添加して炊飯する場合における、(a)及び(b)の合計添加量に占める(a)の割合、並びに、(a)、(b)と共に(c)マルトトリオヒドロラーゼを添加して炊飯する場合における、(a)、(b)及び(c)の合計添加量に占める(a)の割合については、第二の実施形態で説明した通りである。
【0188】
なお、酵素の代わりに、第四、第五の実施形態に係る炊飯用調味液又は米飯改良剤を、添加してもよい。
【0189】
第六の実施形態において、炊飯方法は、上記した酵素を添加して炊飯すること以外は、基本的に従来実施されている方法を採用すればよく、具体的には上記で説明した通りである。
【0190】
酵素を添加する時期は、「炊飯前」又は「炊飯時」である。添加時期については、上記で説明した通りである。
【実施例
【0191】
以下に、実施例を示して本開示の実施形態を説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0192】
評価試験1(酵素の組合せによる効果の検証)
酵素として、α-アミラーゼ(A1:至適温度は約70℃)、マルトトリオヒドロラーゼ(A2:至適温度は約50℃)及び4-α-グルカノトランスフェラーゼ(A3:至適温度は約50℃)の各種酵素製剤を用いて、これら酵素を単独で米飯に含有させた場合と2種以上を併用して含有させた場合とで、長期保管後の米飯についての品質改善効果並びに炊飯時の対流改善効果を比較した。
【0193】
令和1年富山県産コシヒカリ精米を450g計量し、洗米、浸漬(室温1時間)を行った。浸漬後の米に対し、加水倍率1.40倍(水総重量630g)になるように加水し、表1に示す組成の酵素を、生米当たり0.0195w/w%(合計添加量87.75mg)となるように加え、IH炊飯器(タイガー魔法瓶(株)製:JKT-G101)の早炊きモードで炊飯した。炊き上がった白飯を、真空冷却機(三浦工業(株)製「CMJ-20QE」)にて45℃に冷却した後、シャリ玉成型機(鈴茂器工(株)製:SSN-FRA)で各20gのシャリ玉を成形した(実施例1~9)。
【0194】
上記のようにして作製したシャリ玉を、中食を想定して20℃で24時間、及び48時間保管した後に、以下の官能評価試験に供した。官能評価は、10名の専門パネリストにより、ほぐれ、飯粒表面の状態(パサつき)、老化(ボソボソ感)、風味(炊き立ての米の味、美味しさ)、について、以下の基準で評価し、平均点を求めた。なお、対照として、炊飯後2時間経過した出来立ての白飯を用いた。
【0195】
<ほぐれ(口に含んで舌、前歯、上顎で感じる米粒同士の結着の強さが弱い様)>
7:対照より非常に良い
6:対照より良い
5:対照よりやや良い
4:対照と同等
3:対照よりやや悪い
2:対照より悪い
1:対照より非常に悪い
【0196】
<劣化抑制:パサつき(口に含んで舌に届くまでに感じる米粒表面の感触として乾いている様)>
4:対照と同等
3:対照よりややパサつく
2:対照よりパサつく
1:対照より非常にパサつく
【0197】
<劣化抑制:老化(咀嚼中に感じるご飯全体の食感として粉状感があるボソボソとした様)>
4:対照と同等
3:対照よりややボソボソしている
2:対照よりボソボソしている
1:対照より非常にボソボソしている
【0198】
<米の味、美味しさ>
4:対照と同等
3:対照よりやや劣る
2:対照より劣る
1:対照より非常に劣る
【0199】
また、対流測定器(DATATRACE(記憶式温度計)MicropackIII)を用いて、炊飯釜の上部と底部の温度をモニターすることで、炊飯時の対流を評価した。評価基準のイメージを図1図3に示す。図1は対流評価「3」、図2は対流評価「2」、図3は対流評価「1」、の時の釜内温度履歴のイメージを示す。図1のように、釜上釜底ともスムーズに温度上昇している場合は評価3とした。図2の丸で囲んだ箇所のように、昇温中に温度上昇の停滞が見られる場合は評価2とした。図3の丸で囲んだ箇所のように、昇温中に温度の急激な低下(5℃以上)が見られる場合は評価1とした。
【0200】
<炊飯時の対流>
3:釜上釜底ともスムーズに温度上昇している(図1のイメージ)
2:昇温中に温度上昇の停滞が見られる(図2のイメージ)
1:昇温中に温度の急激な低下(5℃以上)が見られる(図3のイメージ)
【0201】
【表1】
表中、各酵素の含有量は、生米当たりの質量%を示す。
【0202】
20℃で24時間保管した場合の結果を表1に示す。表1より、α-アミラーゼ又はマルトトリオヒドロラーゼを単独で含有する米飯は、対照(炊き上がりの米飯)と比べて明らかな品質改善効果は認められなかった。一方、4-α-グルカノトランスフェラーゼを単独で含有する米飯については、長期保管後においても、ほぐれ改善、劣化(表面のパサつき、老化)抑制、風味改善(出来立ての風味保持)といった品質改善効果が認められた。
【0203】
また、マルトトリオヒドロラーゼと4-α-グルカノトランスフェラーゼを併用した米飯は、ほぐれ改善に一定の効果が見られたものの、劣化抑制、風味改善について明らかな効果は認められなかった。これに対して、α-アミラーゼと4-α-グルカノトランスフェラーゼを併用した場合は、長期保管後においても品質改善効果が認められ、加熱ムラ抑制(対流改善)についても有効であった。
【0204】
さらに、α-アミラーゼ、マルトトリオヒドロラーゼ及び4-α-グルカノトランスフェラーゼの各酵素を1:1:1の質量比で含有する酵素組成物(実施例9)が、最も優れた品質改善効果及び対流改善効果を奏することが分かった。なお、20℃で48時間保管した場合の結果においても、同様の効果が確認された。
【0205】
評価試験2(酵素の含有量による効果の検証)
本試験では、評価試験1において最も高い効果が示された、3種の酵素を1:1:1の比率で含有する場合について、表2のように含有量を変化させた白飯を作製し、効果を比較した。
【0206】
酵素として、実施例9と同じ組成の酵素組成物を用い、生米当たりの合計添加量を0.0039w/w%~0.1170w/w%まで変化させたこと以外は、評価試験1と同様にして、白飯のシャリ玉を作製し、20℃で24時間、及び48時間保管後に官能評価を行った(実施例10~15)。
【0207】
【表2】
表中、各酵素の含有量は、生米当たりの質量%を示す。
【0208】
20℃で24時間保管した場合の結果を表2に示す。表2より、酵素を生米当たり一定量以上含有させることで、長期保管後の米飯についてのほぐれ改善、劣化(表面のパサつき、老化)抑制、風味改善(出来立ての風味保持)といった優れた品質改善効果が得られ、炊飯時における対流改善においても優れた効果が得られることが分かった。なお、20℃で48時間保管した場合の結果においても、同様の効果が確認された。
【0209】
評価試験3(酵素の含有割合による効果の検証)
本試験では、3種の酵素を全て含有する場合において、各酵素の比率を表3のように変化させた白飯を作製し、効果を比較した。
【0210】

生米当たりの酵素の合計添加量を表3記載のとおり調整し、それぞれの合計添加量に占める各酵素の比率を変化させたこと以外は、評価試験1と同様にして、白飯のシャリ玉を作製し、20℃で24時間、及び48時間保管後に官能評価を行った(実施例16~25)。なお、参考のために、酵素を添加せずに同様にして白飯のシャリ玉を作製し、同様に評価した結果を、比較例1として示す。
【0211】
【表3】
表中、各酵素の含有量は、生米当たりの質量%を示す。
【0212】
表3より、酵素の合計含有量に占める4-α-グルカノトランスフェラーゼの割合を調整することで、長期保管後の米飯についてのほぐれ改善、劣化(表面のパサつき、老化)抑制、風味改善(出来立ての風味保持)といった優れた品質改善効果が得られ、炊飯時における対流改善においても優れた効果が得られることが分かった。また、実施例16、21、22、及び25においては、ほぐれはよいが、崩れるようにほぐれる傾向がみられた。なお、20℃で48時間保管した場合の結果においても、同様の効果が確認された。
【0213】
評価試験4(酢飯における効果の検証)
精米450gと表4に示す含有割合の酵素を用いて、評価試験1と同様にして炊飯した。炊き立ての白飯に、すし酢(酸度2.87w/v%)を99ml(生米当たり220ml/kg)添加して酢合わせを行うことで、酢飯(酸度0.26w/v%)を得た。なお、すし酢の組成は、醸造酢(酢酸酸度6.46w/v%)36%、ショ糖55%、食塩9%(いずれも質量比)とした。
【0214】
次に、評価試験1と同様にしてシャリ玉を作製し、20℃で24時間、及び48時間保管後に官能評価を行った(実施例26~31)。官能評価は、10名の専門パネリストにより、ほぐれ、飯粒表面の状態(パサつき)、老化(ボソボソ感)、風味(炊き立ての米の味、美味しさ)、味の利き、について評価し、平均点を求めた。対照として、酢合わせ後2時間経過した出来立ての酢飯を用いた。
【0215】
味の利きについては、以下の評価基準を用いた。
<味の利き(食酢の酸味がほどよく感じられ、酸味がボケていない様)>
4:対照と同等
3:対照よりやや劣る
2:対照より劣る
1:対照より非常に劣る
【0216】
また、酢合わせ時に、しゃもじで混ぜた時の軽さ、についても、以下の評価基準により評価を行った。対照は、炊飯後の白飯(酵素無添加)に対して、上記すし酢を添加して酢合わせした場合の評価(比較例2)とした。
【0217】
<しゃもじで混ぜた時の軽さ>
3:対照より非常にかき混ぜやすい
2:対照よりかき混ぜやすい
1:対照よりややかき混ぜやすい
【0218】
【表4】
表中、各酵素の含有量は、生米当たりの質量%を示す。
【0219】
20℃で24時間保管した場合の結果を表4に示す。表4より、酢飯の場合でも、白飯と同様に、酵素を含有させることで、長期保管後の米飯についての優れた品質改善効果(ほぐれ改善、劣化(表面のパサつき、老化)抑制、風味改善(出来立ての風味保持))が奏されることが分かった。中でも、α-アミラーゼと4-α-グルカノトランスフェラーゼを併用した場合に高い品質改善効果が認められ、とりわけ3種の酵素を全て併用した場合の効果が顕著であった。なお、20℃で48時間保管した場合の結果においても、同様の効果が確認された。また、酢飯の酸度を0.2w/v%、0.4w/v%として評価した結果も同様であった。
【0220】
以上、本開示の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、これらに限らず、本開示の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本開示に含まれる。
【関連出願の相互参照】
【0221】
本出願は、2020年7月1日に日本国特許庁に出願された特願2020-114281に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
図1
図2
図3