(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】自己修復性ポリマー材料
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20240409BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G18/32 025
C08L75/02
(21)【出願番号】P 2022521930
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017902
(87)【国際公開番号】W WO2021230241
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020083488
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 公開1 ▲1▼発行日: 令和1年(2019年)5月14日 ▲2▼刊行物: 第68回高分子学会年次大会予稿集 ▲3▼公開者: 藤澤雄太、イーリン ナン、柳沢佑、矢野慧一、相田卓三 ▲4▼公開された発明の内容: 藤澤雄太らが、第68回高分子学会年次大会予稿集にて、相田卓三、伊藤喜光、矢野慧一、藤澤雄太が発明した自己修復性ポリマー材料に関する研究の一部について公開した。 (2) 公開2 ▲1▼開催日: 令和1年(2019年)5月30日 ▲2▼集会名、開催場所: 第68回高分子学会年次大会、大阪府立国際会議場(大阪市北区中之島5丁目3番51号) ▲3▼公開者: 藤澤雄太、イーリン ナン、柳沢佑、矢野慧一、相田卓三 ▲4▼公開された発明の内容: 藤澤雄太らが、第68回高分子学会年次大会にて、相田卓三、伊藤喜光、矢野慧一、藤澤雄太が発明した自己修復性ポリマー材料に関する研究の一部について公開した。 (3) 公開3 ▲1▼ウェブサイトの掲載日: 令和2年(2020年)3月5日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス:https://www.csj.jp/nenkai/100haru/ ▲3▼公開者: 藤澤雄太、イーリン ナン、柳沢佑、矢野慧一、伊藤喜光、相田卓三 ▲4▼公開された発明の内容: 藤澤雄太らが、上記アドレスのウェブサイトで公開されている日本化学会第100回春季年会2020予稿集にて、相田卓三、伊藤喜光、矢野慧一、藤澤雄太が発明した自己修復性ポリマー材料に関する研究の一部について公開した。 (4) 公開4 ▲1▼開催日: 令和3年(2021年)3月20日 ▲2▼集会名、開催場所: 日本化学会第101春季年会(WEB開催;本春季年会のWebサイト(https://confit.atlas.jp/guide/event/csj101st/top)にアクセスし、本公開の発表が含まれるセッションに割り当てられたZoomのリンクからZoonミーティング会場に入室して発表) ▲3▼公開者: 藤澤雄太、イーリン ナン、柳沢佑、矢野慧一、伊藤喜光、相田卓三 ▲4▼公開された発明の内容: 藤澤雄太らが、日本化学会第101春季年会にて、相田卓三、伊藤喜光、矢野慧一、藤澤雄太が発明した自己修復性ポリマー材料に関する研究の一部について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】相田 卓三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 喜光
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 雄太
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110551274(CN,A)
【文献】国際公開第2017/170903(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003676(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105582020(CN,A)
【文献】国際公開第2017/047733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体
であって、共有結合型の架橋構造を有しない該共重合体。
(式(Ia)中、
R
c、R
dは、夫々独立に、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり;
xは、1以上の整数である。)
(式(IIa)中、R
3’は、各出現において、以下の(a)、(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)、(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基
(c)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択され;
ここで、R
3’が(a)、(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、当該2つ以上の基は、-C(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される);
sは、1以上の整数である。)
【請求項2】
式(Ia)で表される繰り返し単位が以下の式で表され、
式(IIa)で表される繰り返し単位が以下の式で表される繰り返し単位から選択される少なくとも1つの繰り返し単位である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
式(Ia)で表される繰り返し単位と、式(IIa)で表される繰り返し単位がランダムに重合している、請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含んでなる、自己修復性材料。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含んでなる、非共有結合型自己修復性材料。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体、及び、1以上の別の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項7】
以下の式(III):
(式(III)中、
R
c及びR
dは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基であり、
xは、1以上の整数である。)
で表される化合物、及び
以下の式(IV):
(式(IV)中、
R
3’は、各出現において、以下の(a)、(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)、(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基
(c)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択され
ここで、(a)、(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、当該2つ以上の基は、-C(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される):
sは、1以上の整数である)で表される化合物を含む原料を、
以下の化合物:
と反応させることを含む、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体の調製方法。
(R
c、R
d、xは、式(III)で規定するのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で規定するのと同様である。)
【請求項8】
以下の式(III)で表される化合物及び以下の式(IV)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料を;
(式(III)中、
R
c及びR
dは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基であり、
xは、1以上の整数である。)
(式(IV)中、
R
3’は、各出現において、以下の(a)、(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)、(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基
(c)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択され
ここで、(a)、(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、当該2つ以上の基は、-C(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される);
sは、1以上の整数である)
以下の式(V)で表される化合物及び以下の式(VI)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料;
(R
c、R
d、xは、式(III)で規定するのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で規定するのと同様である。)
と反応させることを含む(但し、式(IV)の化合物のみからなる原料と、式(VI)のみからなる原料を反応させる場合を除く)、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体
であって、共有結合型の架橋構造を有しない該共重合体の調製方法。
(R
c、R
d、xは、式(III)で規定するのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で規定するのと同様である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の自己修復性ポリマー材料に関わる。より詳しくは、本発明は、自己修復性、堅牢性及び耐湿性に優れる新規のポリマー材料に関わる。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、プラスチックは大量生産・大量消費を支える材料の一つであり、様々なプラスチック材料が広範囲に用いられている。しかしながら、近年、プラスチックにより発生する大量の廃棄物や、これにより引き起こされる海洋汚染の問題が深刻になってきている。
【0003】
この問題を解決する手段の一つとして、プラスチックのリサイクル技術があるが、実際には、リサイクルプロセスそのものは大量のエネルギーを消費する。
また、生分解性プラスチックは生物的プロセスにより分解されるため、これが普及するとエネルギー消費の問題を部分的に回避できるものの、生物的な分解性が第一の理由で選ばれた化学構造が、優れた材料特性を同時に提供するという保証はない。事実、実用化が進められているバイオプラスチックには強度や耐久性の問題が依然として存在し、それが生分解性プラスチックの普及を阻んでいる。
【0004】
一方、身の回りの材料とは異なり、人類を含むあらゆる生命体は損傷部位を自発的になおす自己修復機能を持つ。人間の身体の中ではDNAのように目では見えない大きさのもの(分子)から、細胞や組織に及ぶさまざまなスケールにおいて絶えず修復機能が働いている。すなわち、自己修復は生物が長期にわたって存続するためにあみだした究極の機能とも言える。
【0005】
21世紀に入り、このような修復機能を持つ材料が報告されるようになってきた。特に10年ほど前から、破断しても温和な条件下で何度でも繰り返し修復するゲルやゴムなどの柔らかい材料が報告されている(非特許文献1及び2)。この性質は、もっぱら水素結合をはじめとした非共有結合的相互作用を巧みに利用することで実現している。自己修復性を有する高分子材料が破断した場合、二つの破断面の間に高分子鎖が侵入し、互いに貫入し絡み合う結果、組織は元通りに再生する。ところが、ガラスなどの固い材料を構成する高分子鎖の運動は「凍結」と表現されるほど緩慢であるため、加熱・溶融しない限りそのような材料を修復させることはできない。
【0006】
本発明者らの研究室では、世界初の自己修復ガラスを開発し、この常識を覆した(非特許文献3)。開発されたガラスはポリエーテルチオ尿素系の高分子材料からなる。この高分子物質は、固く、さらさらした手触りの表面をしていながら、破断面を互いに押し付けているとそれらが融合する特別な性質を示す。この材料の弾性率は1GPaより大きく、力学強度が32MPaと、ともに著しく大きいことを考えると、この性質は驚くべきことである。
【0007】
このように、本発明者らが開発したポリエーテルチオ尿素系の高分子材料は、自己修復ガラスとして有望な材料であるものの、主鎖にエーテル結合を有することから、水分を吸い易く、その結果柔らかくなり、堅い材料としての特質が失われるという問題がある。従って、自己修復性、堅牢性及び耐湿性を兼ね備えた自己修復ガラスが要望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】I. Odoriozola et al.,“Catalyst-free room-temperature self-healing elastomers based on aromatic disulfide metathesis.”Mater. Horiz., 1, 237-240 (2014). DOI: 10.1039/C3MH00061C
【文献】L. Leibler et al.,“Self-healing and thermoreversible rubber from supramolecular assembly.”Nature, 451, 977-980 (2008). DOI: 10.1038/nature06669
【文献】Yanagisawa, Nan, Okuro, Aida Science 359, 72-76 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、自己修復性、堅牢性及び耐湿性に優れる新規のポリマー材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、かかるポリマー材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、自己修復性を有するポリマー鎖に、特定の構造を共重合により導入することにより、自己修復性を維持したままでの耐湿性の付与とそれによる堅牢性低下の抑制を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
[1]以下の式(I)で表される少なくとも1つの繰り返し単位と、以下の式(II)で表される少なくとも1つの繰り返し単位を含む共重合体。
(式(I)中、
Xは、各出現において、以下の基から選択され;
R
1、R
2は、各出現において、各々独立して、以下の基から選択され;
ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、
R
Hは、水素原子、又は、置換又は無置換の炭素数1~12のアルキル基であり;
kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、mは0以上の整数であり、
但し、Xが式(II)のR
3と同一の基である場合は、k、mの少なくとも1つは1以上である。)
(式(II)中、
R
3は、各出現において、以下の基から選択される1つの基であるか、または、以下の基から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよく;
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択される。)
ノルボルネン、アダマンタン又はナフタレンから選択される環状炭化水素骨格;
ここで、R及びR
Hは、式(I)で定義した通りであり;
R
3が
又は
の基が2つ以上連結した構造である場合は、当該(1)又は(2)の基は、-O-、-C(R
a)(R
b)-、-S(R
a)(R
b)-、-Si(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される);
sは、1以上の整数である。)
[2]式(I)で表される繰り返し単位と、式(II)で表される繰り返し単位がランダムに重合している、[1]に記載の共重合体。
[3]以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体。
(式(Ia)中、
R
c、R
dは、夫々独立に、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり;
xは、1以上の整数である。)
(式(IIa)中、
R
3’は、各出現において、以下の(a)~(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基
(b)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
(c)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択され;
ここで、R
3’が(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、当該2つ以上の基は、-O-、-C(R
a)(R
b)-、-S(R
a)(R
b)-、-Si(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される);
sは、1以上の整数である。)
[4]以下の式(I)で表される少なくとも1つの繰り返し単位を含む重合体。
(式(I)中、
Xは、各出現において、以下の基から選択され;
R
1、R
2は、各出現において、各々独立して、以下の基から選択され;
ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり;
R
Hは、水素原子、又は、置換又は無置換の炭素数1~12のアルキル基であり;
R’は、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基、炭素数5~10の置換又は無置換のシクロアルキレン基、又は、置換又は無置換のアリーレン基であり;
kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、mは0以上の整数であり;
但し、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位を重合してなる高分子化合物を除く。
(式(Ia)中、
R
c、R
dは、夫々独立に、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり;
xは、1以上の整数である。)
[5]以下の式(I)で表される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含む共重合体。
(式(I)中、
Xは、各出現において、以下の基から選択され;
R
1、R
2は、各出現において、各々独立して、以下の基から選択され;
ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、
R
Hは、水素原子、又は、置換又は無置換の炭素数1~12のアルキル基であり、
kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、mは0以上の整数である。)
[6][1]~[5]のいずれか1項に記載の重合体又は共重合体を含んでなる、自己修復性材料。
[7][1]~[5]のいずれか1項に記載の重合体又は共重合体を含んでなる、非共有結合型自己修復性材料。
[8][1]~[5]のいずれか1項に記載の重合体又は共重合体、及び、1以上の別の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物。
[9]以下の式(III):
(式(III)中、
R
c及びR
dは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基であり、
xは、1以上の整数である。)
で表される化合物、及び以下の式(IV):
(式(IV)中、
R
3’は、各出現において、以下の(a)~(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基
(b)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
(c)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択され
ここで、(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、-O-、-C(R
a)(R
b)-、-S(R
a)(R
b)-、-Si(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される):
sは、1以上の整数である)
で表される化合物を含む原料を、
以下の化合物:
と反応させることを含む、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体の調製方法。
(R
c、R
d、xは、式(III)で規定するのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で規定するのと同様である。)
[10]以下の式(III)で表される化合物及び以下の式(IV)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料を;
(式(III)中、
R
c及びR
dは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基であり、
xは、1以上の整数である。)
(式(IV)中、R
3’は、各出現において、以下の(a)~(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有しており;
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基
(b)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
(c)
(主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
R
4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択され
ここで、(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、-O-、-C(R
a)(R
b)-、-S(R
a)(R
b)-、-Si(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよく(ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される);
sは、1以上の整数である)
以下の式(V)で表される化合物及び以下の式(VI)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料;
(R
c、R
d、xは、式(III)で規定するのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で規定するのと同様である。)
と反応させることを含む(但し、式(IV)の化合物のみからなる原料と、式(VI)のみからなる原料を反応させる場合を除く)、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体の調製方法。
(R
c、R
d、xは、式(III)で規定するのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で規定するのと同様である。)
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、自己修復性、堅牢性及び耐湿性に優れる新規のポリマー材料を提供することができる。
特に、本発明により、自己修復性を有するポリマー鎖に耐湿性を付与することで自己修復性を維持したまま堅牢性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】TUEG
3-rand-TUC
8(30mol%:70mol%)のガラス転移点の測定結果を示す。
【
図2】TUEG
3-rand-TUC
8(75mol%:25mol%)のガラス転移点の測定結果を示す。
【
図3】TUEG
3-rand-TUC
8(30mol%:70mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図4】TUEG
3-rand-TUC
8(75mol%:25mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図5】TUEG
3-rand-TUC
6(50mol%:50mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図6】TUEG
3-rand-TUC
8(90mol%:10mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図7】TUEG
3-rand-TUC
8(80mol%:20mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図8】TUEG
3-rand-TUC
8(70mol%:30mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図9】TUEG
3-rand-TUC
8(20mol%:80mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図10】TUEG
3-rand-TUC
6(30mol%:70mol%)の自己修復特性(吸湿前)の測定結果を示す。
【
図11】TUEG
3-rand-TUC
8のせん断弾性率(吸湿前)を示す。
【
図12】TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%)のせん断クリープ特性(吸湿前)を示す。
【
図13】TUEG
3-rand-TUC
8系共重合体の吸湿特性を示す。
【
図14】TUEG
3-rand-TUCy
2系共重合体の吸湿特性を示す。
【
図15】TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%)の吸湿前と吸湿後の自己修復特性を示す。
【
図16】TUEG
3-rand-TUCy
2(80mol%:20mol%)の吸湿前と吸湿後の自己修復特性を示す。
【
図17】TUEG
3-rand-TUCy
2の吸湿前と吸湿後のせん断弾性率を示す。
【
図18】TUEG
3-rand-TUCy
1m、TUEG
3-rand-TUCy
1pの吸湿前と吸湿後のせん断弾性率を示す。
【
図19】TUEG
3-rand-TUCy
2のせん断クリープ特性(吸湿後)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施態様1の共重合体
本発明の1つの実施態様は、以下の式(I)で表される少なくとも1つの繰り返し単位と、以下の式(II)で表される少なくとも1つの繰り返し単位を含む共重合体である(以下「実施態様1の共重合体」ともいう)。
【0015】
【0016】
理論に拘束されることを意図するものではないが、実施態様1の共重合体においては、式(I)で表される繰り返し単位は自己修復性に寄与し、式(II)で表される繰り返し単位を導入することにより耐湿性を付与することにより、自己修復性と耐湿性の両立を図ることができる。
【0017】
式(I)において、Xは、各出現において、以下の基から選択される。
【0018】
【0019】
式(I)において、R
1、R
2は、各出現において、各々独立して、以下の基から選択される。
【0020】
R
1、R
2として、好ましくは、以下の構造のアルキレン基である。
【0021】
上記のX、R1、R2において、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
アルキレン基が有することができる置換基としては、例えば、直鎖アルキル基、シクロへキシル基、フェニル基が挙げられる。
【0022】
上記のX、R1、R2において、RHは、水素原子、又は、置換又は無置換の炭素数1~12、好ましくは1~6のアルキル基である。
アルキル基が有することができる置換基としては、例えば、メチル基、フェニル基が挙げられる。
【0023】
式(I)において、kは0以上の整数である。
また、lは1以上の整数である。
また、mは0以上の整数である。
ここで、Xが式(II)のR3と同一の基である場合は、k、mの少なくとも1つは1以上である。
【0024】
上記式(II)において、R
3は、各出現において、以下の基から選択される1つの基であるか、または、以下の基から選択される2つ以上の基が連結した構造を有するものである。
【0025】
((1)、(2)の基において、主鎖結合部は、一方の結合部を1位とすると、他方の結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい。)
ノルボルネン、アダマンタン又はナフタレンから選択される環状炭化水素骨格
【0026】
R3における、R及びRHは、式(I)で定義した通りである。
【0027】
R3において、「2つ以上の基が連結した構造を有する」とは、R3として上記した基の内、異なる2つ以上の基が連結した構造を有することを意味する。「2つ以上の基が連結した構造を有する」場合には、例えば、Rとして異なるアルキレン基を有する2種類の-(R-S-R)-、例えば、-(CH2-S-CH2)-とー(C2H4-S-C2H4)-が連結した構造を有する場合も含まれる。
【0028】
(1)、(2)の基において、R4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基である。当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択される。
【0029】
R
3が
、又は、
が2つ以上連結した構造である場合は、当該(1)又は(2)の基は、-O-、-C(R
a)(R
b)-、-S(R
a)(R
b)-、-Si(R
a)(R
b)-を介して連結していてもよい。
ここで、R
a、R
bは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される。
【0030】
sは、1以上の整数である。
【0031】
実施態様1の共重合体の1つの側面においては、式(1)の基は以下で表される
【0032】
実施態様1の共重合体の1つの側面においては、式(2)の基は以下で表される
【0033】
実施態様1の共重合体の1つの側面においては、R
3は、2つのアルキレン基と式(1)の基とが連結した以下の構造を有する。ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
実施態様1の共重合体の1つの好ましい側面において、式(1b)において、いずれのRもメチレン基である。
【0034】
実施態様1の共重合体の1つの側面においては、R
3は、2つのアルキレン基と式(2)の基とが連結した以下の構造を有する。ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
実施態様1の共重合体の1つの好ましい側面において、式(2b)において、いずれのRもメチレン基である。
【0035】
実施態様1の共重合体においては、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位は、ランダムに重合していてもよく、交互に(alternating)重合していてもよいが、ランダムに重合していることが好ましい。式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位を交互に共重合させると、自己修復性が低下する傾向にある。式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位をランダムに重合した共重合体では、自己修復性と耐湿性の両立を図ることができ好ましい。
【0036】
実施態様1の共重合体においては、式(I)で表される繰り返し単位と式(II)で表される繰り返し単位の比率は、モル比として、100:0~0:100の間(但し、100:0と0:100は含まない)で任意に選択することができるが、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは30:70~50:50である。
【0037】
実施態様1の共重合体の分子量としては、例えば2,000~20,000の数平均分子量(MN:g/モル)を有し、例えば20℃~100℃のガラス転移点温度を有するものとできる。
【0038】
実施態様1の共重合体の1つの好ましい側面は、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体である(以下「実施態様1aの共重合体」ともいう)。
【0039】
【0040】
理論に拘束されることを意図するものではないが、実施態様1aの共重合体においては、式(Ia)で表される繰り返し単位は自己修復性に寄与し、式(IIa)で表される繰り返し単位を導入することにより耐湿性を付与することにより、自己修復性と耐湿性の両立を図ることができる。
【0041】
式(Ia)において、Rc、Rdは、夫々独立に、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは置換又は無置換の炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは置換又は無置換の炭素数1~2のアルキレン基である。
1つの好ましい態様において、Rc、Rdは、それぞれ独立にメチレン基(-CH2-)又はエチレン基(-CH2-CH2-)であり、特に好まし態様においては、Rc、Rdはメチレン基(-CH2-)である。
【0042】
式(Ia)において、xは、1以上の整数である。xは、例えば1~5、好ましくは1~4、特に好ましくは1~3の整数である。
【0043】
【0044】
式(IIa)において、R3’は、各出現において、以下の(a)~(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有するものである。
【0045】
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基、好ましくは置換又は無置換の炭素数2~12のアルキレン基、より好ましくは置換又は無置換の炭素数4~8のアルキレン基。
(b)
(主鎖結合部は、一方の結合部を1位とすると、他方の結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
(c)
(主鎖結合部は、一方の結合部を1位とすると、他方の結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
【0046】
(b)、(c)の基において、R4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択される。
【0047】
(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合はこれら2つ以上の基は、-O-、-C(Ra)(Rb)-、-S(Ra)(Rb)-、-Si(Ra)(Rb)-を介して連結していてもよい。
Ra、Rbは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される。
【0048】
(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有するとは、(a)~(c)として上記した基の内、同一又は異なる2つ以上の基が連結した構造を有することを意味する。
【0049】
実施態様1aの共重合体の1つの側面においては、(b)の基は以下で表される。
【0050】
実施態様1aの共重合体の1つの側面においては、(c)の基は以下で表される。
【0051】
実施態様1aの共重合体の1つの側面においては、R
3’は、2つのアルキレン基と式(1)の基とが連結した構造を有し、以下の式で表される。ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
【0052】
また、上記の式(1b)の基においては、Rはより好ましくはメチレン基であり、この場合、R
3’は、以下の式で表される。
【0053】
実施態様1aの共重合体の1つの側面においては、R
3’は、2つのアルキレン基と式(2)の基とが連結した構造を有し、以下の式で表される。ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
【0054】
また、上記の式(2b)の基においては、Rはより好ましくはメチレン基であり、この場合、R
3’は、以下の式で表される。
【0055】
上記の式(1b)~(1c)、(2b)~(2c)で表される基において、主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよいが、3位又は4位が好ましい。
【0056】
(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有する場合の非限定的例として、以下が挙げられる。
上記の基において、主鎖結合部は、各々のベンゼン環又はシクロヘキサン環において、2位、3位、4位のいずれであってもよいが、4位が好ましい。
【0057】
式(IIa)において、sは、1以上の整数であり、好ましくは1~2の整数である。
【0058】
実施態様1aの共重合体においては、式(Ia)で表される繰り返し単位と式(IIa)で表される繰り返し単位は、ランダムに重合していてもよく、交互に(alternating)重合していてもよいが、ランダムに重合していることが好ましい。式(Ia)で表される繰り返し単位と式(IIa)で表される繰り返し単位を交互に共重合させると、自己修復性が低下する傾向にある。式(Ia)で表される繰り返し単位と式(IIa)で表される繰り返し単位をランダムに重合した共重合体では、自己修復性と耐湿性の両立を図ることができ好ましい。
【0059】
実施態様1aの共重合体においては、式(Ia)で表される繰り返し単位と式(IIa)で表される繰り返し単位の比率は、モル比として、100:0~0:100の間(但し、100:0と0:100は含まない)で任意に選択することができる。
R3’が(a)の置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基である場合は、式(Ia)で表される繰り返し単位と式(IIa)で表される繰り返し単位の比率は、モル比として、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは30:70~50:50である。
また、R3’が式(1b)~(1c)、(2b)~(2c)で表される基である場合、あるいは、(b)又は(c)の2つ以上の基が連結した構造を有する場合(例えば、上記で示した非限定的例の場合)には、式(Ia)で表される繰り返し単位と式(IIa)で表される繰り返し単位の比率は、モル比として、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは90:10~70:30である。R3’がこれらの基である場合は、ポリマー鎖の安定性(剛直性)が高く、Tgが高くなる傾向があるが、上記の範囲では自己修復性が良好であると共に、耐湿性の向上効果が大きい。
【0060】
実施態様1aの共重合体の分子量としては、例えば2,000~20,000の数平均分子量(MN:g/モル)を有し、例えば20℃~100℃のガラス転移点温度を有するものとできる。
【0061】
2.実施態様2の重合体
本発明のもう1つの実施態様は、以下の式(I)で表される少なくとも1つの繰り返し単位を含む重合体である(以下「実施態様2の重合体」ともいう)。
【0062】
実施態様2の重合体は、式(I)で表される少なくとも1つの繰り返し単位を含む重合体である。当該重合体には式(I)で表される1種類の繰り返し単位からなるホモポリマーも含まれる。実施態様2の重合体は、本発明者らの研究室で従前に開発したポリエーテルチオ尿素系の自己修復性ポリマーとは異なる構造を有する新規の重合体であり、優れた自己修復性を有する。
【0063】
式(I)において、Xは、各出現において、以下の基から選択される。
【0064】
Xとして、好ましくは、以下の基である。
(但し、後述するR
1、R
2の両方は、以下で表される基(R’はアルキレン基である)ではない。)
【0065】
式(I)において、R
1、R
2は、各出現において、各々独立して、以下の基から選択される。
【0066】
R
1、R
2として、好ましくは、以下の基である。
R’は、後述する通りである。但し、Xが、以下の基:
である場合は、R
1、R
2の両方は、R’がアルキレン基である構造を有さない。
【0067】
上記のX、R1、R2において、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~3のアルキレン基である。
アルキレン基が有することができる置換基としては、例えば、直鎖アルキル基、シクロへキシル基、フェニル基が挙げられる。
【0068】
上記のR1、R2において、R’は、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基(好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~3のアルキレン基)、炭素数5~10 の置換又は無置換のシクロアルキレン基(好ましくは、シクロヘキシレン基)、置換又は無置換のアリーレン基(好ましくは、フェニレン基)である。アルキレン基が有することができる置換基としては、上記Rについて記載したのと同様である。
【0069】
上記のX、R1、R2において、RHは、水素原子、又は、置換又は無置換の炭素数1~12、好ましくは1~6のアルキル基である。
アルキル基が有することができる置換基としては、例えば、メチル基、フェニル基が挙げられる。
【0070】
式(I)において、kは0以上の整数である。
また、lは1以上の整数である。
また、mは0以上の整数である。
【0071】
実施態様2の重合体からは、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位を重合してなる高分子化合物は除かれる。
【0072】
Rc、Rd、xは、実施態様1aの共重合体について説明したのと同様である。
【0073】
3.実施態様3の共重合体
本発明のもう1つの実施態様は、以下の式(I)で表される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含む共重合体である(以下「実施態様3の共重合体」ともいう)。
【0074】
式(I)において、Xは、各出現において、以下の基から選択される。
【0075】
【0076】
式(I)において、R
1、R
2は、各出現において、各々独立して、以下の基から選択される。
【0077】
R
1、R
2として、好ましくは、以下の構造のアルキレン基である。
【0078】
上記のX、R1、R2において、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~3のアルキレン基である。
アルキレン基が有することができる置換基としては、例えば、直鎖アルキル基、シクロへキシル基、フェニル基が挙げられる。
【0079】
上記のX、R1、R2において、RHは、水素原子、又は、置換又は無置換の炭素数1~12、好ましくは1~6のアルキル基である。
アルキル基が有することができる置換基としては、例えば、メチル基、フェニル基が挙げられる。
【0080】
式(I)において、kは0以上の整数である。
また、lは1以上の整数である。
また、mは0以上の整数である。
【0081】
実施態様3の共重合体は、式(I)で表される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むものである。ここで、実施態様3の共重合体には、例えば、Xの基が同じであっても、-(R1)k-(X)l-(R2)m-の部分が全体として異なる繰り返し単位を2以上含む場合も含まれる。
【0082】
4.自己修復性材料
本発明のもう1つの態様は、実施態様1の共重合体、実施態様1aの共重合体、実施態様2の重合体又は実施態様3の共重合体(以下総称して「本発明の重合体又は共重合体」ともいう)を含んでなる自己修復性材料である。
【0083】
この自己修復性材料は、大気中においても水中においても溶解することなく使用できる材料であり、そして、大気中においても水中においても自己修復の特性を発揮する。本明細書において、自己修復とは、材料が、切断等の損傷を受けても外部から補助剤を添加することなく、損傷部位の修復がなされることをいう。損傷部位の修復は、繰り返し可能であることが好ましい。本発明の重合体又は共重合体を用いた自己修復には化学反応を伴わず、非共有結合の架橋構造のみによると考えられ、すなわち非共有結合型自己修復性材料であり、繰り返しての自己修復が可能である。
【0084】
即ち、本発明の1つの側面は、実施態様1の共重合体、実施態様1aの共重合体、実施態様2の重合体又は実施態様3の共重合体を含んでなる非共有結合型自己修復性材料である。
【0085】
本発明の重合体又は共重合体の自己修復性は、切断面を再接触させて、自己修復した後に、例えば12時間後に切断前の95%以上にまで引っ張り強度が回復するという、高い自己修復性を示す。また、実施例に示すように、例えば12時間後からさらに6時間後(再接触から18時間後)まで回復させることで100%まで回復させることも可能なものであって、一般に、自己修復性のある材料は、柔らかい材料であることが多いが、本発明の重合体又は共重合体は、それ自身が機械的強度を要する部材として使用できるほどに、十分な機械的強度を備えている。
【0086】
本発明の自己修復性材料は、自己修復性材料の切断面を再接触させて固定する工程、を含む方法によって、自己修復することができる。好適な実施の態様において、この固定による保持は、例えば20秒~12時間、1分~6時間の間、行うことができ、これを越えて保持して、再接合を強固なものとしてもよい。この工程は、常温で行うこともできる、
好適な実施の態様において、自己修復の促進のために、固定する工程の後に、高分子化合物のガラス転移点の温度以上へと加熱する工程を設けてもよい。例えばガラス転移点よりも40℃、30℃、20℃、10℃高い温度以上に加熱することができる。温度の上限は特にないが、操作の便宜から、例えば200℃以下、100℃以下とすることができる。あるいは、加熱する工程に代えて、超音波処理する工程を設けて、自己修復を促進することもできる。超音波処理の条件としては、例えば接着方法において上述した超音波処理の条件を使用することができる。
【0087】
5.樹脂組成物
本発明の重合体又は共重合体は、上述した繰り返し単位を備えることによって、上述の優れた特性を発揮しているので、これらの優れた特性を損なわない範囲において、公知の手段を使用して、その他の繰り返し単位を導入し、あるいは側鎖を修飾した場合にも、それらの重合体又は共重合体は、本発明の範囲内にある。また、本発明の重合体又は共重合体は、単体として使用しても、接着剤及び自己修復性材料として優れた特性を発揮するので、これらの優れた特性を損なわない範囲内において、公知の手段を使用して、特性を制御するために、所望の添加剤を添加した場合にも、添加剤が添加された組成物は、本発明の範囲内にある。
【0088】
本発明のもう1つの態様は、実施態様1の共重合体、実施態様1aの共重合体、実施態様2の重合体又は実施態様3の共重合体、及び、1以上の別の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物である。ここで、別の熱可塑性樹脂は、特に限定されず、ポリプロピレン等の汎用の熱可塑性樹脂や、ポリカーボネートやポリアミド(ナイロン等)等のエンジニアリング・プラスチックと称される熱可塑性樹脂を用いることができる。別の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン及びこれらの2以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
かかる本発明の樹脂組成物は、耐疲労性材料・応力緩和性材料の用途がある。
この耐疲労性材料は、大気中においても水中においても溶解することなく使用できる材料であり、そして、大気中においても水中においても耐疲労性の特性を発揮する。本明細書において、耐疲労性とは、材料が、引き延ばし等の応力を繰り返し受けても、速やかに応力緩和が生じて、同時に応力を受ける以前のヤング率を速やかに回復できることをいう。このような条件では、通常の樹脂であれば、繰り返される応力によって、疲労が蓄積して、ヤング率等の回復を示すことなく、破断等してしまう。したがって、本発明の耐疲労性材料は、応力緩和性材料でもある。本発明の重合体又は共重合体を用いた耐疲労性及び応力緩和は化学反応を伴わず、非共有結合の架橋構造のみによると考えられ、繰り返しての応力緩和及び耐疲労性の発揮が可能である。
【0090】
6.本発明の共重合体の調製方法
本発明の共重合体の製造方法について、主として実施態様1aの共重合体に関して以下で詳細に説明する。本発明のその他の重合体又は共重合体の製造方法も実施態様1aの共重合体の製造方法に準じて製造することができる。
【0091】
本発明のもう1つの実施態様は、以下の式(III):
で表される化合物、及び
以下の式(IV):
で表される化合物を含む原料を、
以下の化合物:
と反応させることを含む、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体の調製方法である(以下「本発明の調製方法1」ともいう)。
【0092】
Rc、Rd、xは、実施態様1aの共重合体について説明したのと同様である。
【0093】
R
3’及びsは、実施態様1aの共重合体について説明したのと同様である。
【0094】
式(III)において、Rc及びRdは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基であり、好ましくは置換又は無置換の炭素数1~3のアルキレン基、より好ましくは置換又は無置換の炭素数1~2のアルキレン基である。
1つの好ましい態様において、Rc、Rdは、それぞれ独立にメチレン基(-CH2-)又はエチレン基(-CH2-CH2-)であり、特に好まし態様においては、Rc、Rdはメチレン基(-CH2-)である。
【0095】
式(III)において、xは、1以上の整数である。xは、例えば1~5、好ましくは1~4、特に好ましくは1~3の整数である。
【0096】
式(IV)において、R
3’は、各出現において、以下の(a)~(c)から選択される1つの基であるか、または、以下の(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有している。
(a)置換又は無置換の炭素数が1~16のアルキレン基、好ましくは置換又は無置換の炭素数2~12のアルキレン基、より好ましくは置換又は無置換の炭素数4~8のアルキレン基。
(b)
(主鎖結合部は、一方の結合部を1位とすると、他方の結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
(c)
(主鎖結合部は、一方の結合部を1位とすると、他方の結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよい)
【0097】
(b)、(c)の基において、R4は、水素原子、または、1~4個の一価の同一又は異なる置換基であり、当該置換基は、置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基から選択される。
【0098】
ここで、(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造である場合は、これら2つ以上の基は、-O-、-C(Ra)(Rb)-、-S(Ra)(Rb)-、-Si(Ra)(Rb)-を介して連結していてもよい。ここで、Ra、Rbは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基から選択される。
【0099】
本発明の調製方法1の1つの側面においては、(b)の基は以下で表される。
【0100】
本発明の調製方法1の1つの側面においては、(c)の基は以下で表される。
【0101】
本発明の調製方法1の1つの側面においては、R
3’は、以下の式で表される。ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
【0102】
本発明の調製方法1の1つの好ましい側面においては、R
3’は、以下の式で表される。
【0103】
本発明の調製方法1の1つの側面においては、R
3’は、以下の式で表される。ここで、Rは、置換又は無置換の炭素数1~16のアルキレン基であり、好ましくは、置換又は無置換の炭素数1~13のアルキレン基である。
【0104】
本発明の調製方法1の1つの好ましい側面においては、R
3’は、以下の式で表される。
【0105】
上記の式(1b)~(1c)、(2b)~(2c)で表される基において、主鎖結合部は、2位、3位、4位のいずれであってもよいが、3位又は4位が好ましい。
【0106】
(a)~(c)から選択される2つ以上の基が連結した構造を有する場合の非限定的例として、以下が挙げられる。
上記の基において、主鎖結合部は、各々のベンゼン環又はシクロヘキサン環において、2位、3位、4位のいずれであってもよいが、4位が好ましい。
【0107】
sは、1以上の整数であり、好ましくは1~2の整数である。
【0108】
式(III)で表される化合物と式(IV)表される化合物を含む混合物における両化合物のモル比は、最終生成物である共重合体の式(Ia)と式(IIa)の繰り返し単位の所望のモル比に応じて適宜定めることができる。
【0109】
式(III)で表される化合物と式(IV)で表される化合物を有機溶媒(例えば、DMF等)に溶解した反応溶液を調製し、式(III)で表される化合物と式(IV)表される化合物の合計モル量と等モル量の以下の構造のジイミダゾールを有機溶媒(例えば、DMF等)に溶解した溶液を当該反応溶液に滴下して、室温付近で24~72時間攪拌して反応を行う。その後、貧溶媒(例えば、HFIP/MeOH(容積比=1/20)を添加し、遠心分離を行い、残渣を減圧乾燥することにより共重合体を得ることができる。
【0110】
本発明のもう1つの実施態様は、以下の式(III)で表される化合物及び以下の式(IV)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料を;
(R
c、R
d、xは、本発明の調製方法1で説明したのと同様である。)
(R
3’及びsは、本発明の調製方法1で説明したのと同様である。)
以下の式(V)で表される化合物及び以下の式(VI)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料;
(R
c、R
d、xは、式(III)で説明したのと同様である。)
(R
3’及びsは、式(IV)で説明したのと同様である。)
と反応させることを含む、以下の式(Ia)で表される繰り返し単位と、以下の式(IIa)で表される繰り返し単位を含む共重合体の調製方法(以下「本発明の調製方法2」ともいう)。
(R
c、R
d、xは、実施態様1aの共重合体について説明したのと同様である。)
(R
3’及びsは、実施態様1aの共重合体について説明したのと同様である。)
【0111】
本発明の調製方法2には、(i)式(III)で表される化合物と式(VI)で表される化合物とを反応させる方法、(ii)式(IV)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを反応させる方法、(iii)式(III)で表される化合物と式(V)で表される化合物とを反応させる方法、(iv)式(III)で表される化合物と式(IV)で表される化合物を含む原料と、式(V)で表される化合物とを反応させる方法、(v)式(III)で表される化合物と式(IV)で表される化合物を含む原料と、式(VI)で表される化合物とを反応させる方法、(vi)式(III)で表される化合物と、式(V)で表される化合物と式(VI)で表される化合物を含む原料とを反応させる方法、(vii)式(IV)で表される化合物と、式(V)で表される化合物と式(VI)で表される化合物を含む原料とを反応させる方法、が含まれる。但し、本発明の調製方法2には、式(IV)の化合物のみからなる原料と、式(VI)のみからなる原料を反応させる場合を除く。
【0112】
式(III)で表される化合物及び以下の式(IV)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料を有機溶媒(例えば、DMF等)に溶解した反応溶液を調製し、当該原料の合計モル量と等モル量の式(V)で表される化合物及び以下の式(VI)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む原料を当該反応溶液に滴下して、室温付近で24~72時間攪拌して反応を行う。その後、貧溶媒(例えば、HFIP/MeOH(容積比=1/20)を添加し、遠心分離を行い、残渣を減圧乾燥することにより共重合体を得ることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0114】
以下の実施例における各記号は以下の通りである。
・rand:ランダム共重合体を意味する。
例えば、TUEG
3-rand-TUC
8(30mol%:70mol%)は、モノマー単位(繰り返し単位)として、TUEG
3及びTUC
8を、夫々、30mol%及び70mol%含有するランダム共重合体を表す。
【0115】
[合成実施例1]
TUEG3-rand-TUC8(30mol%:70mol%)の合成
ジメチルホルムアミド溶媒中に、1,8-ジアミノ-3、6-ジオキサオクタンと1,8-ジアミノオクタンをそれぞれ0.30等量、0.70等量加え、そこにジメチルホルムアルデヒドに溶かした1,1’-チオカルボニルジイミダゾールを1.00等量滴下し、室温にて48時間撹拌した。撹拌後、反応溶液を激しく撹拌しているジエチルエーテル中に滴下し、黄褐色ペースト状の沈殿物を得た。沈殿物を遠心分離により回収し、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに溶かして、激しく撹拌しているジエチルエーテル中に滴下した。この操作をもう一度繰り返し、最終的に黄褐色ガム状の沈殿物を得た。この沈殿物を160℃で24時間真空乾燥させ、黄褐色透明な樹脂として目的の共重合体を得た。
【0116】
[合成実施例2]
TUEG3-rand-TUC8(75mol%:25mol%)の合成
ジメチルホルムアミド溶媒中に、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタンと1,8-ジアミノオクタンをそれぞれ0.50等量ずつ加え、そこに1,8-ジイソチオシアネート-3,6-ジオキサオクタン1.00等量を溶かしたジメチルホルムアミド溶液を滴下し、室温にて48時間撹拌した。撹拌後、反応溶液を激しく撹拌しているメタノール中に滴下し、黄白色ペースト状の沈殿物を得た。沈殿物を遠心分離により回収し、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに溶かして、激しく撹拌しているメタノール中に滴下した。この操作をもう一度繰り返し、最終的に黄白色ペースト状の沈殿物を得た。この沈殿物を140℃で12時間真空乾燥させ、黄褐色透明な樹脂として目的の共重合体を得た。
【0117】
[合成実施例3]
TUEG3-rand-TUC6(50mol%:50mol%)の合成
ジメチルホルムアミド溶媒中に、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタンと1,6-ジアミノヘキサンをそれぞれ1.00等量ずつ加え、そこに1,8-ジイソチオシアネート-3,6-ジオキサオクタンと1,6-ジイソチオシアネートヘキサンを1.00等量ずつ混合したジメチルホルムアミド溶液を滴下し、室温にて48時間撹拌した。撹拌後、反応溶液を激しく撹拌しているメタノール中に滴下し、黄白色ペースト状の沈殿物を得た。沈殿物をデカンテーションにより回収し、2,2,2-トリフルオロエタノールに溶かして、激しく撹拌しているメタノール中に滴下した。得られた黄味がかった透明ペースト状沈殿物を60℃で12時間真空乾燥させ、無色透明な樹脂として目的の共重合体を得た。
【0118】
[合成実施例4~13]
合成実施例4:TUEG3-rand-TUC8(90mol%:10mol%)の合成
合成実施例5:TUEG3-rand-TUC8(80mol%:20mol%)の合成
合成実施例6:TUEG3-rand-TUC8(70mol%:30mol%)の合成
合成実施例7:TUEG3-rand-TUC8(50mol%:50mol%)の合成
合成実施例8:TUEG3-rand-TUC8(20mol%:80mol%)の合成
合成実施例9:TUEG3-rand-TUC8(10mol%:90mol%)の合成
合成実施例10:TUEG3-rand-TUCy1m(70mol%:30mol%)の合成
合成実施例11:TUEG3-rand-TUCy1m(50mol%:50mol%)の合成
合成実施例12:TUEG3-rand-TUCy1p(70mol%:30mol%)の合成
合成実施例13:TUEG3-rand-TUCy1p(50mol%:50mol%)の合成
これらのポリマーは合成実施例1と同様の方法で合成した。
【0119】
[合成実施例14~21]
合成実施例14:TUEG3-rand-TUC6(70mol%:30mol%)の合成
合成実施例15:TUEG3-rand-TUC6(30mol%:70mol%)の合成
合成実施例16:TUEG3-rand-TUC6(20mol%:80mol%)の合成
合成実施例17:TUEG3-rand-TUC6(10mol%:90mol%)の合成
合成実施例18:TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%)の合成
合成実施例19:TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%)の合成
合成実施例20:TUEG3-rand-TUCy2(70mol%:30mol%)の合成
合成実施例21:TUEG3-rand-TUCy2(50mol%:50mol%)の合成
これらのポリマーは合成実施例3と同様の方法で合成した。
【0120】
[合成したポリマーの特定]
合成実施例1~21で合成したポリマーの化学構造を、1HNMR(JNM-ECA 500 II)を用いて確認した。測定には10mgのサンプルを0.75mLのジメチルスルホキシド-d6に溶解させたものを用いた。測定はすべて室温で行った。結果を以下に記載する。
【0121】
・TUEG3-rand-TUC8(30mol%:70mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):1.25(br. CH2), 1.45(br. C(S)NHCH2), 3.48-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.28-7.53(br. C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(75mol%:25mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):1.26(br. CH2), 1.45(br. C(S)NHCH2), 3.50-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.31-7.52(br. C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC6(50mol%:50mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):1.26(br. CH2), 1.45(br. C(S)NHCH2), 3.49-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.34-7.54(br. C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(90mol%:10mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.26(br.CH2),1.45(br.C(S)NHCH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.29-7.54(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(80mol%:20mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.26(br.CH2),1.45(br.C(S)NHCH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.36-7.56(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(70mol%:30mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.26(br.CH2),1.45(br.C(S)NHCH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.33-7.57(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(50mol%:50mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.26(br.CH2),1.45(br.C(S)NHCH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.29-7.53(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(20mol%:80mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.26(br.CH2),1.45(br.C(S)NHCH2),3.48-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.30-7.54(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC8(10mol%:90mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.26(br.CH2),1.45(br.C(S)NHCH2),3.48-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.29-7.47(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy1m(70mol%:30mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.50-1.82(br.CH,CH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.36-7.54(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy1m(50mol%:50mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.54-1.82(br.CH,CH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.35-7.53(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy1p(70mol%:30mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.83-1.71(br.CH,CH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.33-7.58(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy1p(50mol%:50mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.85-1.71(br.CH,CH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.34-7.55(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC6(70mol%:30mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):1.27(br.CH2),1.46(br.C(S)NHCH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.31-7.52(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC6(30mol%:70mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):1.26(br. CH2), 1.45(br. C(S)NHCH2), 3.48-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.34-7.54(br. C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC6(20mol%:80mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):1.26(br. CH2), 1.46(br. C(S)NHCH2), 3.49-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.30-7.54(br. C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUC6(10mol%:90mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):1.26(br. CH2), 1.45(br. C(S)NHCH2), 3.48-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.31-7.54(br. C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.89-1.90(br.CH,CH2),3.49-3.53(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.22-7.52(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.89-1.90(br.CH,CH2),3.49-3.54(br.CH2O,C(S)NHCH2),7.02-7.54(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy2(70mol%:30mol%)
1HNMR(500MHz,DMSO-d6,δ):0.85-1.91(br.CH,CH2),3.48-3.54(br.CH2O,C(S)NHCH2),6.99-7.53(br.C(S)NH)
・TUEG3-rand-TUCy2(50mol%:50mol%)
1HNMR(500 MHz, DMSO-d6, δ):0.89-1.89(br. CH2), 3.49-3.53(br. CH2O, C(S)NHCH2), 7.06-7.59(br. C(S)NH)
【0122】
合成実施例1~11、13~15、18~20のポリマーについてガラス転移温度を、示差走査熱量測定を用いて測定した。アルミニウム製のパンに4mgのサンプルをのせ-20℃から200℃まで10℃/minで昇降温を3サイクル繰り返した。ガラス転移温度はそれぞれ以下の通りである。
・TUEG
3-rand-TUC
8(30mol%:70mol%):36.8℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(75mol%:25mol%):28.3℃
・TUEG
3-rand-TUC
6(50mol%:50mol%):42.1℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(90mol%:10mol%):27.3℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(80mol%:20mol%):30.0℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(70mol%:30mol%):30.1℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(50mol%:50mol%):31.1℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(20mol%:80mol%):40.1℃
・TUEG
3-rand-TUC
8(10mol%:90mol%):41.5℃
・TUEG
3-rand-TUCy
1m(70mol%:30mol%):53.8℃
・TUEG
3-rand-TUCy
1m(50mol%:50mol%):83.3℃
・TUEG
3-rand-TUCy
1p(50mol%:50mol%):77.0℃
・TUEG
3-rand-TUC
6(70mol%:30mol%):33.3℃
・TUEG
3-rand-TUC
6(30mol%:70mol%):50.6℃
・TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%):41.0℃
・TUEG
3-rand-TUCy
2(80mol%:20mol%):55.8℃
・TUEG
3-rand-TUCy
2(70mol%:30mol%):67.5℃
図1にTUEG
3-rand-TUC
8(30mol%:70mol%)のガラス転移点の測定結果を、
図2にTUEG
3-rand-TUC
8(75mol%:25mol%)のガラス転移点の測定結果を示す。
【0123】
[実施例1]
自己修復性試験(吸湿前)
合成実施例1~6、8、14、18、19のポリマーについて、吸湿前の自己修復性を評価するための試験をレオメーター(Anton Paar model MCR-302)を用いて行った。
[サンプルの調製]
乾燥させたガラス状のサンプルをホットプレート上で直径8mm、厚さ1mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
円盤状サンプルを2枚用意し、1枚は直径8mmの治具に、もう1枚はステージ上に固着させた。2枚の円盤状サンプル間には10mm四方、厚さ0.1mmで中央に直径1mmの穴を開けたテフロンシートを挟んだ。初めに、2枚の円盤状サンプルを加熱しながら(この時の温度をTaとする)押し付け、テフロンシートの穴を通して溶融させ、その後24℃まで冷やした。次に、治具を33μm/sの速度で引き上げ、穴を通して溶融させた円盤状サンプルを破断した。続けて、所定の温度に設定して1時間、1MPaの圧力で2枚の円盤状サンプルを押し付け、その後24℃に戻した。次に、治具を33μm/sの速度で引き上げ、治具にかかった応力を測定した。
【0124】
[試験結果]
・TUEG3-rand-TUC8(30mol%:70mol%):Ta=160℃
24℃:0.5MPa、28℃:0.4MPa、32℃:3.0MPa、36℃:1.4MPa、40℃:42.9MPa、44℃:44.4MPa、48℃:41.0MPa
・TUEG3-rand-TUC8(75mol%:25mol%):Ta=140℃
16℃:0.6MPa、20℃:3.5MPa、24℃:9.0MPa、28℃:26.1MPa、32℃:41.3MPa
・TUEG3-rand-TUC6(50mol%:50mol%):Ta=140℃
40℃:0.0MPa、48℃:0.1MPa、56℃:2.3MPa、60℃:5.2MPa、64℃:6.5MPa、68℃:8.0MPa、72℃:10.0MPa、76℃:10.9MPa、80℃:13.7MPa、84℃:14.1MPa、88℃:16.6MPa、92℃:26.1MPa
・TUEG3-rand-TUC8(90mol%:10mol%):Ta=70℃
12℃:0.8MPa、16℃:4.2MPa、20℃:8.8MPa、24℃:22.1MPa、28℃:44.4MPa、32℃:46.8MPa、36℃:48.3MPa
・TUEG3-rand-TUC8(80mol%:20mol%):Ta=90℃
16℃:0.8MPa、20℃:5.9MPa、24℃:14.6MPa、28℃:36.1MPa、32℃:46.3MPa、36℃:47.6MPa
・TUEG3-rand-TUC8(70mol%:30mol%):Ta=110℃
20℃:0.7MPa、24℃:9.6MPa、28℃:19.8MPa、32℃:37.4MPa、36℃:46.0MPa、40℃:49.3MPa
・TUEG3-rand-TUC8(20mol%:80mol%):Ta=110℃
36℃:0.2MPa、40℃:3.8MPa、44℃:12.5MPa、48℃:13.9MPa、52℃:26.5MPa、56℃:45.7MPa
・TUEG3-rand-TUC6(70mol%:30mol%):Ta=80℃
16℃:0.0MPa、24℃:14.3MPa、32℃:31.1MPa、48℃:47.4MPa、52℃:46.5MPa
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%):Ta=120℃
44℃:0.1MPa、48℃:7.3MPa、52℃:21.9MPa、56℃:43.2MPa、64℃:49.6MPa
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%):Ta=140℃
80℃:0.0MPa、88℃:0.8MPa、92℃:14.5MPa、96℃:47.7MPa、100℃:48.7MPa
【0125】
図3~10に、夫々、TUEG
3-rand-TUC
8(30mol%:70mol%)、TUEG
3-rand-TUC
8(75mol%:25mol%)、TUEG
3-rand-TUC
6(50mol%:50mol%)、TUEG
3-rand-TUC
8(90mol%:10mol%)、TUEG
3-rand-TUC
8(80mol%:20mol%)、TUEG
3-rand-TUC
8(70mol%:30mol%)、TUEG
3-rand-TUC
8(20mol%:80mol%)、TUEG
3-rand-TUC
6(30mol%:70mol%)の自己修復特性のグラフを示す。
【0126】
合成実施例1、2で得られたポリマーはどちらも室温付近で自己修復性を示し、それぞれ40℃、32℃であれば1時間の圧着だけで高い自己修復性を示している。
また、合成実施例3、14で得られたTUEG3-rand-TUC6系共重合体も室温付近での自己修復性が見られた。耐湿性を担う繰り返し単位の比率が大きくなると、自己修復挙動が高温側に遷移するが、TUEG3-rand-TUC6系共重合体ではTUEG3-rand-TUC8系共重合体よりもそれが顕著であった。
また、TUEG3-rand-TUCy2系共重合体については、合成実施例18で得られたTUCy2の比率が10mol%であるポリマーは室温付近での自己修復性が見られたが、合成実施例19で得られたTUCy2の比率が20mol%であるポリマーは自己修復に80℃以上の高温が必要であった。
【0127】
[実施例2]
せん断試験(吸湿前)
合成実施例4~6、18~20のポリマーについて、吸湿前のせん断弾性率を測定するための試験をレオメーター(Anton Paar model MCR-302)を用いて行った。
[サンプルの調製]
乾燥させたガラス状のサンプルをホットプレート上で直径8mm、厚さ2mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
1枚の円盤状サンプルを、直径8mmの治具とステージの間に固着させた後、24℃で20分待機した。その後、0.01%のせん断歪みを1rad/sの角周波数で与えて、せん断弾性率を測定した。
【0128】
[試験結果]
・TUEG3-rand-TUC8(90mol%:10mol%):0.55GPa
・TUEG3-rand-TUC8(80mol%:20mol%):0.37GPa
・TUEG3-rand-TUC8(70mol%:30mol%):0.67GPa
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%):1.07GPa
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%):1.77GPa
・TUEG3-rand-TUCy2(70mol%:30mol%):2.02GPa
【0129】
図11に、TUEG
3-rand-TUC
8のせん断弾性率(吸湿前)を示す。TUEG
3-rand-TUC
8系共重合体は、非特許文献3で報告されている自己修復ガラスと同等のせん断弾性率(0.75GPa)を示した。
【0130】
[実施例3]
せん断クリープ試験(吸湿前)
合成実施例18のポリマーについて、吸湿前のせん断応力に対するクリープ挙動を測定するための試験をレオメーター(Anton Paar model MCR-302)を用いて行った。
[サンプルの調製]
乾燥させたガラス状のサンプルをホットプレート上で直径8mm、厚さ2mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
1枚の円盤状サンプルを、直径8mmの治具とステージの間に固着させた後、24℃で20分待機した。その後、0.01MPaのせん断応力を100分間与えて、生じたせん断歪みを測定した。
【0131】
[試験結果]
・TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%):0.020%
図12に、TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%)のせん断クリープ特性(吸湿前)を示す。TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%)はせん断応力の印加に対して、ほとんど変形しなかった。
【0132】
[実施例4]
吸湿性試験
合成実施例1、4~6、18~20のポリマーについて、吸湿性を評価するための試験を行った。
[サンプルの調製]
乾燥させたガラス状のサンプルを、型抜き機を用いて直径3mm、厚さ2mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
小型のドライオーブンの中に飽和塩化ナトリウム水溶液の入った容器を入れ、24℃に設定した。そのドライオーブンをバキュームポンプにつないで減圧することで飽和塩化ナトリウム水溶液から水が蒸発し、ドライオーブンの中が水蒸気で満たされる。このときの相対湿度は86%であった。この湿度環境下に成形した円盤状サンプルを120時間置き、乾燥時の質量に対する各時間の質量から吸収した水分の質量%を求めた。
【0133】
[試験結果(質量比wt%、開始時を100.0%とする)]
・TUEG3-rand-TUC8(30mol%:70mol%)
1時間後:100.2%、2時間後:100.3%、4時間後:100.4%、6時間後:100.5%、8時間後:100.6%、10時間後:100.6%、20時間後:100.8%、30時間後:101.0%、45時間後:101.1%、70時間後:101.3%、95時間後:101.7%、120時間後:101.6%
・TUEG3-rand-TUC8(90mol%:10mol%)
10時間後:102.0%、20時間後:103.6%、30時間後:105.2%、45時間後:106.1%、70時間後:106.5%、95時間後:106.6%、120時間後:106.7%
・TUEG3-rand-TUC8(80mol%:20mol%)
10時間後:101.7%、20時間後:103.5%、30時間後:104.6%、45時間後:105.5%、70時間後:106.0%、95時間後:106.1%、120時間後:106.0%
・TUEG3-rand-TUC8(70mol%:30mol%)
10時間後:101.5%、20時間後:102.5%、30時間後:103.6%、45時間後:104.8%、70時間後:105.6%、95時間後:105.6%、120時間後:105.7%
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%)
10時間後:102.0%、20時間後:103.0%、30時間後:103.7%、45時間後:104.4%、70時間後:105.4%、95時間後:105.4%、120時間後:105.4%
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%)
10時間後:101.8%、20時間後:102.7%、30時間後:103.5%、45時間後:104.1%、70時間後:104.2%、95時間後:104.2%、120時間後:104.2%
・TUEG3-rand-TUCy2(70mol%:30mol%)
10時間後:100.5%、20時間後:100.8%、30時間後:101.0%、45時間後:101.2%、70時間後:101.6%、95時間後:101.7%、120時間後:101.7%
【0134】
図13に、TUEG
3-rand-TUC
8系共重合体の吸湿特性を、
図14に、TUEG
3-rand-TUCy
2系共重合体の吸湿特性を示す。
TUEG
3-rand-TUC
8の共重合体では、TUC
8の含有量が多くなるほど吸湿性が低下し、合成実施例1で得られたポリマー(TUC
8の含有量が70mol%)のように、相対湿度86%の環境下に5日間サンプルを置いても吸湿量はごくわずかであった。
一方、TUEG
3-rand-TUCy
2の共重合体では、TUCy
2の含有量が少なくても吸湿性の低下は著しく、TUEG
3-rand-TUCy
2(70mol%:30mol%)のように、相対湿度86%の環境下に5日間サンプルを置いても吸湿量はごくわずかであった。
このように、自己修復性を有するポリマー鎖に、特定の構造を共重合により導入することにより、自己修復性を維持したままでの耐湿性の付与とそれによる堅牢性低下の抑制を図ることができる。
【0135】
[実施例5]
自己修復性試験(吸湿後)
合成実施例18、19のポリマーについて吸湿後の自己修復性を評価するための試験をレオメーター(Anton Paar model MCR-302)を用いて行った。
[サンプルの調製]
実施例1と同様の方法で、吸湿させたサンプルをホットプレート上で直径8mm、厚さ1mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
円盤状サンプルを2枚用意し、1枚は直径8mmの治具に、もう1枚はステージ上に固着させた。2枚の円盤状サンプル間には10mm四方、厚さ0.1mmで中央に直径1mmの穴を開けたテフロンシートを挟んだ。初めに、2枚の円盤状サンプルを加熱しながら(この時の温度をTaとする)押し付け、テフロンシートの穴を通して溶融させ、その後24℃まで冷やした。次に、治具を33μm/sの速度で引き上げ、穴を通して溶融させた円盤状サンプルを破断した。続けて、所定の温度に設定して1時間、1MPaの圧力で2枚の円盤状サンプルを押し付け、その後24℃に戻した。次に、治具を33μm/sの速度で引き上げ、治具にかかった応力を測定した。
【0136】
[試験結果]
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%):Ta=88℃
0℃:0.0MPa、8℃:3.9MPa、16℃:10.9MPa、24℃:17.1MPa、32℃:41.2MPa
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%):Ta=100℃
80℃:0.0MPa、88℃:22.8MPa、96℃:23.6MPa
【0137】
図15に、TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%)の吸湿前と吸湿後の自己修復特性を示す。
また、
図16に、TUEG
3-rand-TUCy
2(80mol%:20mol%)の吸湿前と吸湿後の自己修復特性を示す。
いずれの結果からも、吸湿後においても優れた自己修復特性を有することが示される。
TUEG
3-rand-TUCy
2(90mol%:10mol%)は吸湿によりさらに低い温度から自己修復性を示すようになったが、TUEG
3-rand-TUCy
2(80mol%:20mol%)は吸湿後も依然として自己修復には高温が必要であった。TUEG
3-rand-TUCy
2共重合体において、室温での自己修復性と耐湿性の両立の観点からは、TUCy
2を10mol%前後で含むのが適切である。
【0138】
[実施例6]
せん断試験(吸湿後)
合成実施例11、13、18~20のポリマーについて、吸湿後のせん断弾性率を測定するための試験をレオメーター(Anton Paar model MCR-302)を用いて行った。
[サンプルの調製]
実施例1と同様の方法で、吸湿させたサンプルをホットプレート上で直径8mm、厚さ2mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
1枚の円盤状サンプルを、直径8mmの治具とステージの間に固着させた後、24℃で20分待機した。その後、0.01%のせん断歪みを1rad/sの角周波数で与えて、せん断弾性率を測定した。
【0139】
[試験結果]
・TUEG3-rand-TUCy1m(50mol%:50mol%):1.31GPa
・TUEG3-rand-TUCy1p(50mol%:50mol%):1.11GPa
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%):0.87GPa
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%):1.72GPa
・TUEG3-rand-TUCy2(70mol%:30mol%):1.83GPa
【0140】
図17に、TUEG
3-rand-TUCy
2の吸湿前と吸湿後のせん断弾性率を示す。
また、
図18に、TUEG
3-rand-TUCy
1m、TUEG
3-rand-TUCy
1pの吸湿前と吸湿後のせん断弾性率を示す。
図17及び18から、TUEG
3-rand-TUCy
2、TUEG
3-rand-TUCy
1m、TUEG
3-rand-TUCy
1pのいずれの共重合体も、吸湿後も高いせん断弾性率を有しており、吸湿による堅牢性の低下が抑えられていることが示されている。
【0141】
[実施例7]
せん断クリープ試験(吸湿後)
合成実施例18~20のポリマーについて、吸湿後のせん断応力に対するクリープ挙動を測定するための試験をレオメーター(Anton Paar model MCR-302)を用いて行った。
[サンプルの調製]
実施例1と同様の方法で、吸湿させたサンプルをホットプレート上で直径8mm、厚さ2mmの円盤状に成形した。
[試験方法]
1枚の円盤状サンプルを、直径8mmの治具とステージの間に固着させた後、24℃で20分待機した。その後、0.01MPaのせん断応力を100分間与えて、生じたせん断歪みを測定した。
【0142】
[試験結果]
・TUEG3-rand-TUCy2(90mol%:10mol%):0.586%
・TUEG3-rand-TUCy2(80mol%:20mol%):0.014%
・TUEG3-rand-TUCy2(70mol%:30mol%):0.003%
【0143】
図19に、TUEG
3-rand-TUCy
2のせん断クリープ特性(吸湿後)を示す。
図19からも、TUEG
3-rand-TUCy
2の共重合体は、吸湿後もせん断応力に対する変形が非常に小さく、吸湿による堅牢性の低下が抑えられていることが示されている。