(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】食物繊維高配合グミ組成物
(51)【国際特許分類】
A23G 3/42 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A23G3/42
(21)【出願番号】P 2019139082
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-07-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】盛田 悠平
(72)【発明者】
【氏名】高宮 隆一
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029646(JP,A)
【文献】特開2011-177086(JP,A)
【文献】特開2017-079670(JP,A)
【文献】特表2013-539979(JP,A)
【文献】特表2013-539980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリデキストロースおよびイヌリン
を含む食物繊維を固形分あたり40質量%以上含有し、
破断荷重が0.2~3kgfであり、
弾性保持率が85%以上であり、
ブルーム値160以下のゼラチンを12質量%以上配合する、
グミ組成物
であって、
前記食物繊維が、固形分あたり前記ポリデキストロースと前記イヌリンを1:0.5~1.5の質量比率で含有することを特徴とする、グミ組成物。
【請求項2】
弾力値が1~20kgfであることを特徴とする、請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項3】
ポリデキストロースおよびイヌリン
を含む食物繊維を固形分あたり40質量%以上配合し、
かつブルーム値が160以下のゼラチンを12質量%以上配合する、
グミ組成物の製造方法
であって、
前記食物繊維として、固形分あたり前記ポリデキストロースと前記イヌリンを1:0.5~1.5の質量比率で配合することを特徴とする、グミ組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物繊維高配合グミ組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食物繊維には、糖や脂質の吸収を緩やかにしたり、血糖値の急激な上昇を穏やかにしたり、血中のコレステロールを下げたり、腸の調子を整えたりする等の効果があることが知られている。そのため、近年、食物繊維を多く摂取できるように、食物繊維を多く含む食品の需要が高まっている。
【0003】
なかでも、気軽に食すことができるという点で、食物繊維を多く含む菓子製品の開発が望まれている。そのため、これまでにも種々の菓子製品について検討が進められてきた。
【0004】
特許文献1には、歯に対する付着が防止された食物繊維を含有したソフトキャンディが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グミキャンディに食物繊維を多く添加することは、食物繊維がゼラチンのゲル化を阻害してしまうため、事実上不可能であった。
【0007】
本発明の目的は、食物繊維を多く含有するにも関わらず、製造適性、保形性、および食感に優れた食物繊維高配合グミ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ブルーム値の低いゼラチンを特定量以上使用することにより、食物繊維を多く配合してもゼラチンを適度な硬さにセット(固化)することができ、製造適性、保形性、および食感に優れたグミ組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は以下の構成からなる。
(1)食物繊維を固形分あたり28質量%以上含有し、
破断荷重が0.2~3kgfであり、
弾性保持率が85%以上であることを特徴とする、グミ組成物。
(2)弾力値が1~20kgfであることを特徴とする、前記(1)に記載のグミ組成物。
(3)ブルーム値160以下のゼラチンを含有することを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のグミ組成物。
(4)前記グミ組成物あたり前記ゼラチンを12質量%以上配合する、前記(3)に記載のグミ組成物。
(5)前記食物繊維が、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、果物由来食物繊維、野菜由来食物繊維の中から選択される一種、または二種以上である、(1)~(4)のいずれか1に記載のグミ組成物。
(6)前記食物繊維が、固形分あたりポリデキストロースとイヌリンを1:0.5~1.5の質量比率で含有することを特徴とする、前記(1)~(5)のいずれか1に記載のグミ組成物。
(7)食物繊維を固形分あたり40質量%以上配合し、かつブルーム値が160以下のゼラチンを12質量%以上配合することを特徴とする、グミ組成物の製造方法。
(8)前記食物繊維として、固形分あたりポリデキストロースとイヌリンを1:0.5~1.5の質量比率で配合することを特徴とする、前記(7)に記載のグミ組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食物繊維を多く含むにも関わらずゼラチンのセットが可能であり、製造適性、保形性、および食感に優れたグミ組成物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明においてグミ組成物とは、グミキャンディを含む、ゼラチンを主なゲル化剤とし、ゴム様の食感をもつ経口用の組成物のことをいう。
【0013】
本発明のグミ組成物に用いることのできる原料としては以下のものが挙げられるが、下記原料に限定されるものではない。
【0014】
食物繊維とは、栄養学的に「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義され、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類される。本発明における食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とを問わず、目的に応じて任意に使用できる。
【0015】
本発明における食物繊維としては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン、レジスタントスターチ等が挙げられる。
食物繊維を含有する原料としては、例えば、果物由来食物繊維含有原料や野菜由来食物繊維含有原料が挙げられる。果物由来食物繊維含有原料としては、例えば、果汁濃縮物、果実乾燥物、果実粉砕物、果汁抽出物等が挙げられる。また、野菜由来食物繊維含有原料としては、例えば、野菜汁濃縮物、野菜乾燥物、野菜粉砕物、野菜汁抽出物等が挙げられる。
本発明のグミ組成物は、これらの食物繊維を一種、または二種以上混合して用いてもよい。
【0016】
本発明における食物繊維は、好ましくは、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、果物由来食物繊維、野菜由来食物繊維の中から選択される一種、または二種以上である。
【0017】
本発明のグミ組成物は、食物繊維を固形分あたり28質量%以上含有する。好ましくは固形分あたり32質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは43質量%以上であり、特に好ましくは45質量%以上である。また好ましくは固形分あたり80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0018】
本発明のグミ組成物を製造する際には、例えば食物繊維の配合量は固形分あたり40質量%以上配合してもよく、好ましくは固形分あたり45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。また好ましくは固形分あたり90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0019】
本発明における食物繊維のうち、ポリデキストロースとイヌリンの併用が、ゼラチンのセットおよび食感を向上させることができるため、好ましい。より好ましくは、固形分あたり、ポリデキストロース:イヌリン=1:0.5~1.5の質量比で配合し、さらに好ましくは、固形分あたり、ポリデキストロース:イヌリン=1:0.7~1.3の質量比で配合し、特に好ましくは、固形分あたり、ポリデキストロース:イヌリン=1:0.8~1.1の質量比で配合して製造する。製造されたグミ組成物においても同様の含有比であることが好ましい。
【0020】
グミ組成物における固形分あたりの食物繊維の含有量は、例えば、酵素-重量法、酵素-HPLC法またはその組み合わせ等にて分析することができる。
【0021】
本発明のグミ組成物は、ゲル化剤としてブルーム値が160以下のゼラチンを用いる。
グミキャンディ等のグミ組成物には、通常、ブルーム値200~300程度のゼラチンを用いることが一般的で、少ない配合率で弾力を有する特有の食感を付与するために適当である。しかしながら、食物繊維を多く添加した場合、通常グミに用いる上記ブルーム値のゼラチンを通常量配合しても固化しないという不具合が生じる。すなわち、通常グミに用いるブルーム値のゼラチンでは、製品としての品質を保持する適度な硬さに調整することが困難であることが課題であった。
【0022】
本発明では、グミ組成物に食物繊維を多く配合する場合には、ブルーム値の低いゼラチンを用いることにより、食物繊維を多く配合してもゼラチンのゲル化の阻害を防止することができ、製造適性、保形性、および食感に優れたグミ組成物が製造可能となることを見出した。本発明に用いるゼラチンのブルーム値は160以下であり、好ましくは150以下、より好ましくは120以下のゼラチンを用いる。また、グミ組成物として適した食感を実現する観点から、ブルーム値は80以上であることが好ましい。
【0023】
ゼラチンのブルーム値は、ゼラチンのゼリー強度を表す数値であり、例えば、JIS K6503(2001)に記載された試験方法にて測定することができる。具体的には、テクスチャーアナライザーまたはレオメータを用い、ゼラチンの6.67%溶液から調製されたゼリーを、10℃において、径12.7mmのプランジャーを用いて、測定条件を、侵入距離4mm、侵入速度毎秒1mmに設定し、測定した応力数値(g)をゼリー強度とする。すなわち、ブルーム値は高いほど硬く、低いほど軟らかい。
【0024】
本発明では、グミ組成物に対し、上記ゼラチンを12質量%以上配合する必要があり、15質量%以上配合することが好ましい。また、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは22質量%以下である。これにより、製造適性、保形性、および食感に優れたグミ組成物が製造可能となる。
【0025】
また、本発明のグミ組成物においては、製造時に使用するゼラチンのブルーム値に応じて、当該ゼラチンの配合量を調整することにより、ゼラチンのゲル化の阻害を防ぎ、セットが可能となる。例えば、ゼラチンのブルーム値が160以下の場合は、ゼラチンを12質量%~22質量%含有することが特に好ましい。ゼラチンのブルーム値が150以下の場合は、ゼラチンを12質量%~20質量%含有することが特に好ましい。ゼラチンのブルーム値が80以上120以下の場合は、ゼラチンを12質量%~20質量%含有することが特に好ましい。
【0026】
ゼラチン以外のゲル化剤としては、たとえばペクチン、寒天、カラギーナン等を混合してもよく、目的とする品質を得られるものであればこれらに限定されない。
【0027】
本発明のグミ組成物は、上記原料以外にも必要に応じて、果汁、乾燥果実、野菜汁、乾燥野菜、増粘多糖類、酸味料、乳化剤、香料、着色料、甘味料等を含有することができる。
【0028】
果汁や乾燥果実における果実としては、例えば、りんご、ぶどう、いちご、キウイ、もも、みかん、マンゴー等、およびこれらの混合物が挙げられる。野菜汁や乾燥野菜における野菜としては、例えば、にんじん、ほうれん草、セロリ、ピーマン、ケール、キャベツ、クレソン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
増粘多糖類としては、例えば、ペクチン、グアガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドガム、タラガム、コンニャクマンナン、ジェランガム、キサンタンガム、加工デンプン等が挙げられる。
【0030】
酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フマル酸、アスコルビン酸等、通常のグミキャンディに用いられるものであれば特に制限されず、それらの一種、または二種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0032】
香料としては、例えば、フルーツ系、ミント系、スパイス系、ナッツ系、フローラル系、リカー系等、天然もしくは合成、油系もしくは水性、液体もしくは乳化物または粉末を問わず、単独または混合して用いることができる。
【0033】
着色料としては、例えば、カロチン色素、アナトー色素、パプリカ色素、コチニール色素、クチナシ色素、ベニバナ色素、ベニコウジ色素、ビートレッド、アカネ色素、スピルリナ色素、アントシアニン色素、カラメル、銅クロロフィル等の天然色素の他、食用タール色素等が挙げられる。
【0034】
甘味料は必要に応じて添加してもよく、例えば、グラニュー糖、上白糖等の砂糖、その他の二糖類、ソルビトール等の糖アルコール、還元水あめ、酸糖化水あめ、酵素分解水あめ、単糖、三糖類、オリゴ糖、トレハロース、イソマルツロース等、通常のグミキャンディの製造に用いるものであれば特に制限されず、それらの一種、または二種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明のグミ組成物は、ブルーム値が160以下のゼラチンを12質量%以上含有することにより、食物繊維を多く含有するにも関わらず、製造適性、保形性、および食感に優れたグミ組成物が製造可能となる。すなわち、本発明のグミ組成物は、破断荷重が0.2~3kgfであり、かつ、弾性保持率が85%以上である。
本発明のグミ組成物において「破断荷重」とは、グミの特有の食感である「噛み切りにくさ」の指標であって、下記(1)で表される試験方法で測定した値を意味する。また「弾性保持率」とは、グミの特有の食感である「噛みごたえ」の指標であって、下記(2)で表される試験方法で測定した値を意味する。
【0036】
(1)破断荷重
本発明のグミ組成物を縦28.5mm、横18.5mm、高さ12.5mmの角に丸みをもたせたシリコン型に流し込みすり切って調製し、サンプル調製後24時間~48時間内に型から取り出して、テクスチャーアナライザーTA.XTPlus(英弘精機株式会社)で以下の条件として貫入試験を行い、プローブ進入時の荷重ピークの値を測定し、その平均値を破断荷重とする。
・測定モード:通常圧縮試験
・プローブ:SMSP/3(円柱プローブ、直径3mm、ステンレス製)
・進入距離:30mm
・進入速度:1mm/s
・サンプル温度:常温(25℃)
【0037】
(2)弾性保持率
本発明のグミ組成物を縦28.5mm、横18.5mm、高さ12.5mmの角に丸みをもたせたシリコン型に流し込みすり切って調製し、サンプル調製後24時間~48時間内に型から取り出して、テクスチャーアナライザーTA.XTPlus(英弘精機株式会社)により、以下の条件で2回のサイクル試験を行い、1回目の荷重ピークの値に対する2回目の荷重ピークの値を%で表し、その平均値を弾性保持率とする。
・測定モード:サイクル試験(一定位置まで圧縮後、測定開始位置まで戻り再度圧縮、を指定回数繰り返す)
・プローブ:SMSP/75(円形平板プローブ、底面の直径75mm、アルミニウム製)
・進入距離:試料の高さの50%
・進入速度:1mm/s
・戻り速度:1mm/s
・繰り返し回数:2回
・サンプル温度:常温(25℃)
【0038】
本発明のグミ組成物は、破断荷重が0.2~3kgfであり、好ましくは0.5~2.5kgfである。破断荷重が0.2kgfより小さいと噛み切り易過ぎてグミ特有の食感が感じられない。破断荷重が0.5kgfより小さいとグミの食感としてややもの足りなく感じる。破断荷重が3kgfを超えると噛み切りにく過ぎる。
また、本発明のグミ組成物は、弾性保持率が85%以上であり、好ましくは87~100%であり、より好ましくは87~99%である。弾性保持率が85%より小さいとグミ特有の噛みごたえがないと感じる。
【0039】
また、本発明のグミ組成物は、弾力値が1~20kgfであることが好ましく、1~15kgfがより好ましい。弾力値が1より小さいとグミ特有の弾力がないと感じる。弾力値が20kgfより大きいと硬くて食すのが困難である。弾力値が15kgfより大きいとやや硬く、顎の弱い人だと噛み疲れる。
本発明のグミ組成物において「弾力値」とは、グミの特有の食感である「弾力」の指標であって、下記(3)で表される試験方法で測定した値を意味する。
(3)弾力値
本発明のグミ組成物を縦28.5mm、横18.5mm、高さ12.5mmの角に丸みをもたせたシリコン型に流し込みすり切って調製し、サンプル調製後24時間~48時間内に型から取り出して、テクスチャーアナライザーTA.XTPlus(英弘精機株式会社)により、以下の条件で弾力を測定し、1回目の荷重ピークの値を測定し、その平均値を「弾力値」とする。
・測定モード:サイクル試験(一定位置まで圧縮後、測定開始位置まで戻り再度圧縮、を
指定回数繰り返す)
・プローブ:SMSP/75(円形平板プローブ、底面の直径75mm、アルミニウム製)
・進入距離:試料の高さの50%
・進入速度:1mm/s
・サンプル温度:常温(25℃)
【0040】
本発明のグミ組成物は、例えば以下の方法で製造することができる。
まず、糖質と仕込水を加熱して溶解した後、煮詰めを行い煮飴を得る。そこに予め60℃前後の温水にゼラチンと乳化剤を溶かしておいたものを加え、さらに必要に応じて果汁、香料等の副原料を添加し、十分に混合してグミキャンディ生地を得る。混合した生地は、スターチモールド等の通常のグミキャンディ成型方法を用い、所望の形状となるよう成型する。型から取り出した後は、必要に応じて表面に油脂や光沢剤、グラニュー糖、酸味料、粉末オブラート等を塗布することもできる。
【0041】
本発明におけるグミ組成物の製造方法において、食物繊維は、固形分あたり40質量%以上配合することが好ましい。食物繊維は上述したものを使用できる。食物繊維は、食物繊維の種類、加熱温度や加熱時間等の製造条件や酸味料や果汁等の配合条件によっては、製造工程中に分解され、減少することがあるため、製品中の食物繊維量は配合量の約60~100%となる。添加する食物繊維の種類によっては、溶液のpHが低く、加熱温度105℃を超えた加熱条件でグミキャンディを製造した場合、食物繊維量は配合量の70%程度に低下することがある。
加熱温度105℃以下に保つように短時間加熱に制御することで分解を抑制することができる。
【0042】
また、本発明におけるグミ組成物の製造方法において、ゼラチンは、ブルーム値が160以下のゼラチンを12質量%以上配合することが重要である。
【0043】
その他、上述のとおり、果汁、乾燥果実、野菜汁、乾燥野菜、増粘多糖類、酸味料、乳化剤、香料、着色料、甘味料等を適宜配合させることも可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、一般的なグミキャンディの製造方法を用いることができる。
【0045】
(評価)
充填時の製造適性、ないし製造したグミキャンディの保形性、および食感につき、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練されたグミ専門パネルが以下の基準に基づき評価を行った。
【0046】
<製造適性の評価基準>
3:型に流し込む際に適した原料液粘度である
2:型に流し込む際には原料液粘度がやや高かったが製造可能な範囲である
1:型に流し込む際には原料液粘度が高過ぎ、製造不可能である
【0047】
<保形性の評価基準>
3:包装、流通に適した保形性がある
2:包装、流通に耐えうる保形性がある
1:軟らかすぎて包装、流通できず、保形性がない
【0048】
<食感の官能評価基準>
4:グミとして特に適した食感である
3:グミとして適した食感である
2:グミとしてやや硬い、あるいはやや軟らかいが、許容できる食感である
1:グミとして硬すぎる、あるいは軟らかすぎて、許容できる食感ではない
【0049】
<食感の機器測定>
実施例および比較例で製造したグミキャンディにつき、「噛み切りにくさ」、「噛みごたえ」、および「弾力」について、客観的に数値化するために、分析機器(テクスチャーアナライザーTA.XTPlus(英弘精機株式会社))を用いて以下の条件で測定した。
各サンプルは、縦28.5mm、横18.5mm、高さ12.5mmの角に丸みをもたせたシリコン型に流し込みすり切って調製し、サンプル調製後24時間~48時間内に型から取り出して測定した。
【0050】
1)噛み切りにくさ(破断荷重)
次の条件にて、破断荷重を貫入試験により測定し、プローブ進入時の荷重ピークの値をn=3サンプルで測定し、その平均値を「噛み切りにくさ(破断荷重)」とした。
・測定モード:通常圧縮試験
・プローブ:SMSP/3(円柱プローブ、直径3mm、ステンレス製)
・進入距離:30mm
・進入速度:1mm/s
・サンプルn数:n=3
・サンプル温度:常温(25℃)
【0051】
2)噛みごたえ(弾性保持率)
次の条件にて、2回のサイクル試験を行い、1回目の荷重ピークの値に対する2回目の荷重ピークの値を%で表し、n=5サンプルの平均値を「噛みごたえ(弾性保持率)」とした。
・測定モード:サイクル試験(一定位置まで圧縮後、測定開始位置まで戻り再度圧縮、を指定回数繰り返す)
・プローブ:SMSP/75(円形平板プローブ、底面の直径75mm、アルミニウム製)
・進入距離:試料の高さの50%
・進入速度:1mm/s
・戻り速度:1mm/s
・繰り返し回数:2回
・サンプルn数:n=5
・サンプル温度:常温(25℃)
【0052】
3)弾力(弾力値)
次の条件にて、弾力を測定し、1回目の荷重ピークの値をn=5サンプルで測定し、その平均値を「弾力値」とした。
・測定モード:サイクル試験(一定位置まで圧縮後、測定開始位置まで戻り再度圧縮、を指定回数繰り返す)
・プローブ:SMSP/75(円形平板プローブ、底面の直径75mm、アルミニウム製)
・進入距離:試料の高さの50%
・進入速度:1mm/s
・サンプルn数:n=5
・サンプル温度:常温(25℃)
【0053】
<総合評価>
実施例および比較例で製造したグミキャンディについて、製造適性、保形性、食感の結果から、以下の基準で総合評価を行った。
3:製造適性、保形性、食感全てがグミに適した範囲であり、総合的にグミに適している
2:製造適性、保形性、食感がグミとして許容できる範囲であり、総合的にグミとして許容できる
1:製造適性、保形性、食感のいずれか1項目以上がグミに適していない範囲であり、総合的にグミに適していない
【0054】
[実施例1]
ポリデキストロース原料43重量部、イヌリン原料27重量部に水35重量部を加え、よく撹拌し原料を溶解させた後、105℃以下を保つよう加熱し、溶解液をBrix85~95程度になるまで煮詰めた。そこに予め適量の65℃の温水に溶かしておいたブルーム値100(JIS K6503(2001))のゼラチン原料15重量部を加え混合し、さらに酸味料1重量部、濃縮果汁14重量部を加え、よく混合した。得られた原料液はpH3.2~4程度であった。得られた原料液を常法に従ってスターチの成形型に流し込んで室温(15~35℃)にて冷却、固化、乾燥させた。原料液を成形型に流し込んでから約22時間経過後には、固化、乾燥していた。成形型に流し込んでから24時間経過後に型から取り出し、グミキャンディを得た。得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。
ポリデキストロース原料(固形分)、イヌリン原料(固形分)、および濃縮果汁(固形分)中の食物繊維含有量を合計した値を、グミキャンディが含有する食物繊維量とした。なお、ポリデキストロース原料(固形分)、およびイヌリン原料(固形分)中の食物繊維含有率は、ポリデキストロース原料(固形分):75質量%、イヌリン原料(固形分):94.7質量%であった。また、得られたグミキャンディ中の食物繊維量を酵素-HPLC法にて分析したところ、99.5%の食物繊維が残存していた。
得られたグミキャンディの評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
調製時のポリデキストロース原料を39.9重量部、イヌリン原料を25.1重量部、ゼラチン原料を20重量部となるように変更した点を除いては、実施例1と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。評価、分析結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
実施例3は、用いたゼラチン原料をブルーム値150(JIS K6503(2001))のゼラチンに変更した点を除いては、実施例1と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
実施例4は、用いたゼラチン原料をブルーム値150(JIS K6503(2001))のゼラチンに変更した点を除いては、実施例2と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例5]
実施例5は、加熱条件を変えた以外は実施例1と同様にグミキャンディを調製した。すなわち、ポリデキストロース原料43重量部、イヌリン原料27重量部、酸味料1重量部、濃縮果汁14重量部に水35重量部を加え、加熱し、よく撹拌し、原料を溶解させ、120℃に達した後、溶解液をBrix92程度になるまで煮詰めた。そこに予め適量の65℃の温水に溶かしておいたブルーム値100(JIS K6503(2001))のゼラチン原料15重量部を加え混合し、よく混合した。得られた原料液はpH3.2~4程度であった。得られたグミキャンディの水分値は19.2質量%であった。得られた各グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分量(質量%)は表1のとおりであった。得られたグミキャンディ中の食物繊維量を酵素-HPLC法にて分析したところ、72.9%の食物繊維が残存していた。すなわち、得られたグミキャンディ中の食物繊維量は固形分あたり43.4質量%であった。
評価結果を表1に示す。
【0059】
[製造例1、2]
調製時のゼラチン量を製造例1は20重量部、製造例2は15重量部となるようにし、ポリデキストロース原料を製造例1は48.1重量部、製造例2は51.2重量部となるようにし、イヌリン原料を製造例1は30.2重量部、製造例2は32.1重量部となるようにし、さらに、製造例1および製造例2ともに酸味料を1.5重量部、濃縮果汁を0重量部、香料を0.2重量部に変更した点を除いては、実施例1と同様にグミキャンディを調製した。得られたグミキャンディの水分値は製造例1:19~24質量%、製造例2:19~24質量%であった。得られた各グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分量(質量%)は表2のとおりであった。また、評価結果を表2に示す。
【0060】
[比較例1]
調製時のポリデキストロース原料を46重量部、イヌリン原料を29重量部、ゼラチン原料を10重量部となるように変更した点を除いては、実施例1と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。官能評価および機器測定を行った結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
比較例2は、用いたゼラチン原料をブルーム値150(JIS K6503(2001))のゼラチンに変更した点を除いては、比較例1と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。官能評価および機器測定を行った結果を表1に示す。
【0062】
[比較例3]
比較例3は、用いたゼラチン原料をブルーム値200(JIS K6503(2001))のゼラチンに変更した点を除いては、比較例1と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。官能評価および機器測定を行った結果を表1に示す。
【0063】
[比較例4]
比較例4は、用いたゼラチン原料をブルーム値200(JIS K6503(2001))のゼラチンに変更した点を除いては、実施例2と同様にグミキャンディを調製した。グミキャンディ中における、固形分あたりの各成分配合量(質量%)は表1のとおりであった。また、得られたグミキャンディの水分値は19~24質量%であった。官能評価および機器測定を行った結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
実施例1、2、3のグミキャンディの食感の官能評価結果では、グミとして特に適した硬さおよび弾力であり、保形性については、包装、流通に適した保形性を有していた。
噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)、弾力(弾力値)の測定結果においても、グミに適した値であり、食感の官能評価結果とも合致していた。
実施例4のグミキャンディの食感の官能評価結果ではグミとしてやや硬いが許容できる弾力があり、保形性については、包装、流通に適した保形性を有していた。噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)の測定結果においてはグミに適した値であったが、弾力(弾力値)は値がやや大きく、食感の官能評価結果と合致していた。
実施例5のグミキャンディの食感は、グミとして特に適した硬さおよび弾力であり、保形性については、包装、流通に適した保形性を有していた。
噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)、弾力(弾力値)の測定結果においても、グミに適した値であり、食感の官能評価結果とも合致していた。
【0067】
製造例1のグミキャンディの食感は、グミとして特に適した硬さおよび弾力であり、保形性については、包装、流通に適した保形性を有していた。
製造例2のグミキャンディの食感の官能評価結果では、グミとしてやや軟らかいが許容できる弾力があり、保形性については、包装、流通に耐えうる保形性があった。
【0068】
比較例1のグミキャンディの食感の官能評価結果では、グミとして軟らかすぎて許容できる噛みごたえではなく、保形性については、軟らかすぎて包装、流通できる保形性ではなかった。噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)、弾力(弾力値)の測定結果において、弾力はグミに適した値であったが、噛み切りにくさはやや値が小さく、噛みごたえは値が低く、食感の官能評価結果と合致していた。
比較例2のグミキャンディの食感の官能評価結果では、グミとして軟らかすぎて許容できる噛みごたえではなく、保形性については、軟らかすぎて包装、流通できる保形性ではなかった。噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)、弾力(弾力値)の測定結果において、弾力はグミに適した値であったが、噛み切りにくさはやや値が小さく、噛みごたえは値が低く、食感の官能評価結果と合致していた。
【0069】
比較例3のグミキャンディの食感の官能評価結果では、グミとして軟らかすぎて許容できる噛みごたえではなく、保形性については、軟らかすぎて包装、流通できる保形性ではなかった。噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)、弾力(弾力値)の測定結果において、噛み切りにくさ、弾力はグミに適した値であったが、噛みごたえは値が低く、食感の官能評価結果と合致していた。
比較例4のグミキャンディの官能評価結果では、保形性については、包装、流通に適した保形性を有していたが、食感はグミとして硬く、噛み切りにくかった。噛み切りにくさ(破断荷重)、噛みごたえ(弾性保持率)、弾力(弾力値)の測定結果において、噛み切りにくさの値が大きく、弾力の値もやや大きく、食感の官能評価結果と合致していた。