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特許7469224化合物、潜在性添加剤、組成物、硬化物、硬化物の製造方法及び組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】化合物、潜在性添加剤、組成物、硬化物、硬化物の製造方法及び組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/10 20060101AFI20240409BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20240409BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 251/24 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 251/20 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 251/34 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 493/10 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 249/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08F20/10
C08F20/34
C07C69/96 Z CSP
C07D403/10
C07D251/24
C07D251/20
C07D405/14
C07D251/34 H
C07D493/10
C07D249/20 502
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020518274
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019017926
(87)【国際公開番号】W WO2019216266
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2018090259
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 有希子
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 哲千
(72)【発明者】
【氏名】末吉 孝
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-181031(JP,A)
【文献】特開2000-343836(JP,A)
【文献】特開2000-343828(JP,A)
【文献】特開2001-088446(JP,A)
【文献】特開2017-203161(JP,A)
【文献】特開2017-122221(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C07C 69/96
C07D249/20
C07D403/10
C07D251/24
C07D251/20
C07D405/14
C07D251/34
C07D493/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(B1)、(B2)、(B3)又は(C)で表される、重合性基含有基を有する化合物。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、シリル基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
ただし、R、R、R11及びR12のうち、水酸基であるのは2つ以下であり、
102 は、エチレン性不飽和基及び炭素-炭素二重結合を含まず、
m1は、1~10の整数を表し、
b1は、0~4の整数を表し、
b2は、0~2の整数を表し、
は、m1価の基又はm1価の重合性基含有基を表し、
前記R11、R12、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
が重合性基含有基である場合、前記b1が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b2が0でなく、
及びRが重合性基含有基である場合、重合性基含有基は、下記一般式(D)で表される基であり、
【化2】
は、直接結合又はd+1価の結合基を表し、
Dは、重合性基を表し、
dは、1~10の整数を表し、
*は、結合箇所を表し、
は、-O-を介して、又は-S-を介して結合箇所で結合している。)
(群1:エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基の塩、スルホ基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩)
(群2:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)、-S-S-、-SO-、酸素原子が隣り合わない条件でこれらを組み合わせた基)
【化3】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(B1)におけるR102と同じであり、
ただし、R、R、R21及びR22のうち、水酸基であるのは2つ以下であり、
m2は、1~10の整数を表し、
b3は、0~4の整数を表し、
b4は、0~3の整数を表し、
は、m2価の基又はm2価の重合性基含有基を表し、
前記R21、R22、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
が重合性基含有基である場合、前記b3が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b4が0でない。)
【化4】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31及びR32の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
33及びR34の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
102は、上記一般式(B1)におけるR102と同じであり、
ただし、R、R、R31、R32、R33及びR34のうち、水酸基であるのは2つ以下であり、
m3は、1~10の整数を表し、
m31は、1であり、
m32は、0~2の整数を表し、
m31及びm32の合計は、1~3の整数を表し、
b5は、0~2の整数を表し、
b6は、0~3の整数を表し、
b7は、0~[3-(m31+m32)]の整数を表し、
は、m3価の基又はm3価の重合性基含有基を表し、
前記R31、R32、R33、R34、R、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
が重合性基含有基である場合、前記b5が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b6及びm32が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b7が0でなく、
及びRが重合性基含有基である場合、重合性基含有基は、下記一般式(D)で表される基であり、
【化5】
は、直接結合又はd+1価の結合基を表し、
Dは、重合性基を表し、
dは、1~10の整数を表し、
*は、結合箇所を表す。
ただし、dが1のとき、Lは、2価の炭素原子数2~8の脂肪族炭化水素基又はその基のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-O-、-NR’-、-S-S-、-SO-又はこれらの組み合わせで置き換わっている基である。)
【化6】
(式中、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基又は重合性基含有基を表し、
44は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
102は、上記一般式(B1)におけるR102と同じであり、
m4は、1~10の整数を表し、
c1は、0~2の整数を表し、
は、m4価の基又はm4価の重合性基含有基を表し、
前記R42、R43、R44及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
44 が重合性基含有基である場合、前記c1が0でない。)
【請求項2】
前記一般式(B1)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
前記一般式(B2)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
前記一般式(B3)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
前記一般式(C)中のR44の少なくとも1つが、前記重合性基含有基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、前記一般式(B3)で表される化合物を含み、
前記一般式(B3)中のR31に対してメタ位のR、及びR33に対してメタ位のRの少なくとも1つが、重合性基含有基である請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R102が、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中の酸素原子側末端のメチレン基が-CO-O-で置換されている基である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
下記一般式(B1)、(B2)、(B3)又は(C)で表される、重合性基含有基を有する化合物を含む潜在性紫外線吸収剤又は潜在性酸化防止剤。
【化7】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、シリル基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
ただし、R、R、R11及びR12のうち、水酸基であるのは2つ以下であり、
102 は、エチレン性不飽和基及び炭素-炭素二重結合を含まず、
m1は、1~10の整数を表し、
b1は、0~4の整数を表し、
b2は、0~2の整数を表し、
は、m1価の基又はm1価の重合性基含有基を表し、
前記R11、R12、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
が重合性基含有基である場合、前記b1が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b2が0でない。)
(群1:エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基の塩、スルホ基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩)
(群2:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)、-S-S-、-SO-、酸素原子が隣り合わない条件でこれらを組み合わせた基)
【化8】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(B1)におけるR102と同じであり、
ただし、R、R、R21及びR22のうち、水酸基であるのは2つ以下であり、
m2は、1~10の整数を表し、
b3は、0~4の整数を表し、
b4は、0~3の整数を表し、
は、m2価の基又はm2価の重合性基含有基を表し、
前記R21、R22、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
が重合性基含有基である場合、前記b3が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b4が0でない。)
【化9】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31及びR32の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
33及びR34の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
102は、上記一般式(B1)におけるR102と同じであり、
ただし、R、R、R31、R32、R33及びR34のうち、水酸基であるのは2つ以下であり、
m3は、1~10の整数を表し、
m31は、1であり、
m32は、0~2の整数を表し、
m31及びm32の合計は、1~3の整数を表し、
b5は、0~2の整数を表し、
b6は、0~3の整数を表し、
b7は、0~[3-(m31+m32)]の整数を表し、
は、m3価の基又はm3価の重合性基含有基を表し、
前記R31、R32、R33、R34、R、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
が重合性基含有基である場合、前記b5が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b6及びm32が0でなく、
が重合性基含有基である場合、前記b7が0でない。)
【化10】
(式中、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基又は重合性基含有基を表し、
44は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
102は、上記一般式(B1)におけるR102と同じであり、
m4は、1~10の整数を表し、
c1は、0~2の整数を表し、
は、m4価の基又はm4価の重合性基含有基を表し、
前記R42、R43、R44及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、
44 が重合性基含有基である場合、前記c1が0でない。)
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の化合物を含む潜在性添加剤。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の化合物又は請求項5に記載の潜在性紫外線吸収剤若しくは潜在性酸化防止剤と、
樹脂と、
を含む組成物。
【請求項8】
前記樹脂が、重合性化合物を含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物に含まれる前記重合性化合物を重合する工程を有する硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項7又は請求項8に記載の組成物に含まれる前記化合物から前記R102を脱離する工程を有する組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な化合物及び潜在性添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物の硬化物に対して耐光性、耐熱性等の機能を付与するために、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を添加する方法が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-048382号公報
【文献】US9518031
【文献】特開2015-108649号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に記載の紫外線吸収剤等は硬化性組成物の硬化を阻害する場合があるという問題があった。この問題は、紫外線吸収剤が、硬化性組成物を硬化させるために照射された光を吸収する作用があることに起因し、このような作用を有するために、紫外線吸収剤を硬化性組成物に添加すると、硬化阻害を生じる場合がある。
【0005】
上記課題の解決手段として、硬化前の組成物では上述の光を吸収する作用が不活性化されており、硬化後に活性化することが可能な潜在性添加剤が検討されてきた。
しかしながら、潜在性添加剤を用いた場合でも、耐光性、耐熱性等の機能を十分に付与できない場合があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、硬化阻害を生じることなく、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な化合物及び潜在性添加剤を提供することを主目的とする。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の化合物を含む潜在性添加剤が、硬化性組成物の硬化を十分に進行させること、硬化物中で添加剤が安定的に保持されること、の両者を同時に満たし、耐光性、耐熱性等の効果を経時安定的に発揮できることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(A)で表される構造と、重合性基含有基と、を有する化合物(以下、化合物Aと称する場合がある。)である。
【0009】
【化1】
(式中、環Aは、五員環若しくは六員環の芳香環、又は五員環若しくは六員環の複素環を表し、
101は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、シリル基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
a1は、1以上の整数を表し、
a2は、1以上の整数を表す。)
(群1:エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基の塩、スルホ基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩)
(群2:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)、-S-S-、-SO-、酸素原子が隣り合わない条件でこれらを組み合わせた基)
【0010】
本発明においては、上記化合物Aが、下記一般式(B1)、(B2)、(B3)又は(C)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物B1、化合物B2及び化合物B3、化合物Cと称し、化合物B1~B3をまとめて化合物Bと称する場合がある。)であることが好ましい。
【0011】
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m1は、1~10の整数を表し、
b1は、0~4の整数を表し、
b2は、0~2の整数を表し、
は、m1価の基又はm1価の重合性基含有基を表し、
前記R11、R12、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0012】
【化3】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m2は、1~10の整数を表し、
b3は、0~4の整数を表し、
b4は、0~3の整数を表し、
は、m2価の基又はm2価の重合性基含有基を表し、
前記R21、R22、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0013】
【化4】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31及びR32の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
33及びR34の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m3は、1~10の整数を表し、
m31は、1であり、
m32は、0~2の整数を表し、
m31及びm32の合計は、1~3の整数を表し、
b5は、0~2の整数を表し、
b6は、0~3の整数を表し、
b7は、0~[3-(m31+m32)]の整数を表し、
は、m3価の基又はm3価の重合性基含有基を表し、
前記R31、R32、R33、R34、R、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0014】
【化5】
(式中、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基又は重合性基含有基を表し、
44は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m4は、1~10の整数を表し、
c1は、0~2の整数を表し、
は、m4価の基又はm4価の重合性基含有基を表し、
前記R42、R43、R44及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0015】
本発明においては、上記一般式(B1)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、上記一般式(B2)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、上記一般式(B3)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、上記一般式(C)中のR44の少なくとも1つが、重合性基含有基であることが好ましい。
【0016】
本発明においては、上記化合物が、上記一般式(B3)で表される化合物を含み、上記一般式(B3)中のR31に対してメタ位のR及びR33に対してメタ位のRの少なくとも1つが、上記重合性基含有基であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、上記R102が、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中の酸素原子側末端のメチレン基が-CO-O-で置換されている基であることが好ましい。
【0018】
本発明は、上記化合物Aを含む潜在性添加剤である。
【0019】
本発明は、上記化合物Aと、樹脂と、を含む組成物である。
【0020】
本発明においては、上記樹脂が、重合性化合物を含むことが好ましい。
【0021】
本発明は、上述の組成物の硬化物である。
【0022】
本発明は、上述の組成物に含まれる上記重合性化合物を重合する工程を有する硬化物の製造方法である。
【0023】
本発明は、上述の組成物に含まれる上記化合物から上記R102を脱離する工程を有する組成物の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、化合物、潜在性添加剤、該化合物を含む組成物及びその硬化物並びに硬化物の製造方法及び組成物の製造方法に関するものである。
以下、本発明の化合物、潜在性添加剤、組成物、硬化物、硬化物の製造方法及び組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0025】
A.化合物及び潜在性添加剤
まず、本発明の化合物及び潜在性添加剤について説明する。
本発明の化合物は、下記一般式(A)で表される構造と、重合性基含有基と、を有する化合物(化合物A)である。
また、本発明の潜在性添加剤は、上記化合物Aを含むものである。
【0026】
【化6】
(式中、環Aは、五員環若しくは六員環の芳香環、又は五員環若しくは六員環の複素環を表し、
101は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はシリル基を表し、
a1は、1以上の整数を表し、
a2は、1以上の整数を表す。)
【0027】
より具体的には、上記一般式(A)中、環Aは、五員環若しくは六員環の芳香環、又は五員環若しくは六員環の複素環を表し、
101は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、シリル基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
a1は、1以上の整数を表し、
a2は、1以上の整数を表す。
(群1:エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基の塩、スルホ基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩)
(群2:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)、-S-S-、-SO-、酸素原子が隣り合わない条件でこれらを組み合わせた基)
【0028】
本発明の潜在性添加剤は、上記化合物Aを含むことにより、硬化阻害を生じることなく、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなる。その理由については、以下のように推察される。
【0029】
上記化合物Aは、重合性基含有基を有するため、硬化性組成物の硬化時に、上記化合物Aと、重合性化合物との共重合が起こる。その結果、上記化合物Aは重合体の一部となり、硬化物から昇華、析出等することを効果的に抑制できる。硬化物からの昇華、析出等の抑制は、上記化合物AからR102が脱離して、紫外線吸収能、酸化防止能等が発揮されるようになった後も維持される。
また、上記化合物Aは、フェノール性水酸基がR102で保護されているため、耐光性の機能を付与するための紫外線吸収能、及び耐熱性の機能を付与するための酸化防止能等が不活性化されている。その結果、上記化合物Aを含む潜在性添加剤は、硬化性組成物の硬化阻害を抑制でき、十分に硬化した硬化物を得ることができる。
さらに、上記化合物Aは、フェノール性水酸基を保護するR102及び重合性基含有基を有することにより、重合性化合物等の樹脂との相溶性に優れ、組成物内で均一に分散することが容易となる。その結果、上記化合物Aは、R102の脱離が容易であると共に、R102の脱離後に、紫外線吸収能、酸化防止能等を組成物又はその硬化物全体で発揮できる。また、このような優れた分散性により、上記化合物A及びそのR102脱離物の、硬化物からの析出等は、より少ないものとなる。
以上のことから、潜在性添加剤に含まれる化合物Aが、上述の構造と重合性基含有基とを有することで、上記潜在性添加剤は、紫外線吸収能、酸化防止能の経時変化が少ないものとなり、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成することが可能となるのである。
【0030】
本発明の潜在性添加剤は、紫外線吸収能、酸化防止能の経時変化が少ないため、従来要求される紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加量に対して、少量の添加で所望の紫外線吸収能、酸化防止能等を長期にわたって発揮し得る。
このため、上記潜在性添加剤は、光学部材等の薄膜部材のように添加剤等の添加量の増量が困難であり、少量の添加で所望の紫外線吸収能等の付与が要求される用途、より具体的には、カラーフィルタ等のディスプレイに用いられる光学部材用途等に対する紫外線吸収能等の付与に特に有用である。
【0031】
また、上記潜在性添加剤は、上述のような優れた分散性を有し、均一分散性に優れた組成物を得ることができる。
上記潜在性添加剤は、耐光性等の機能を所望のタイミングで発現可能である。このため、例えば、ポジ型樹脂等の感光性樹脂に用いた場合には、ポジ型樹脂の分解及び現像後に、残存したポジ型樹脂中で紫外線吸収能等を発現させて、耐光性等を付与することもできる。
このような観点から、上記潜在性添加剤は、重合性化合物を含まない組成物への耐光性等の付与にも有用である。
【0032】
以下、本発明の潜在性添加剤の各成分等について詳細に説明する。
【0033】
1.化合物A
上記潜在性添加剤に含まれる化合物Aは、上記一般式(A)で表される構造(以下、構造Aと称する場合がある。)と、重合性基含有基と、を有するものである。
【0034】
(1)重合性基含有基
上記化合物Aは、重合性基含有基を有するものである。
上記重合性基含有基の重合性基としては、上記化合物Aの種類、用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、アニオン重合性基等を挙げることができる。
本発明においては、例えば、上記潜在性添加剤がラジカル重合性化合物と共に用いられる場合には、上記重合性基がラジカル重合性基であることが好ましい。上記重合性基が上述の基であることで、上記潜在性添加剤は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物をより容易に形成可能なものとなるからである。
上記ラジカル重合性基としては、アクリロイル基(CH=CH-CO-)、メタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)、ビニル基((CH=CH-)又は(-CH=CH-))等のエチレン性不飽和二重結合基を挙げることができる。
本発明においては、上記ラジカル重合性基が、メタクリロイル基であることがより好ましい。メタクリロイル基は反応性に優れるため、上記潜在性添加剤は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物をより容易に形成可能なものとなるからである。
上記カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基、及びビニルエーテル基等を挙げることができる。
上記アニオン重合性基としては、エポキシ基、ラクトン基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を挙げることができる。
【0035】
上記重合性基含有基の結合箇所は、上記構造Aの任意の箇所とすることができる。
上記重合性基含有基は、上記構造A中の環Aに結合するもの、置換基R101の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基として結合するもの等とすることができる。
上記重合性基含有基は、重合性基を含むものであれば制限はなく、構造Aに対して、重合性基が直接結合するものであっても、重合性基が結合基を介して結合するものであっても構わない。
なお、後述する式(B-22)、(B-23)、(B-24)、(B-3)、(B-31)、(C-7)で表される化合物は、環Aに重合性基含有基が直接結合した化合物、すなわち、上記一般式(A)で表される構造中の環A中の水素原子の1つが、上記重合性基含有基で置換された構造を有する化合物である。また、後述する式(B-32)で表される化合物は、置換基R101の水素原子の1つが、上記重合性基含有基で置換された構造を有する化合物である。
【0036】
上記重合性基含有基の数は、上記化合物A中に1以上であればよいが、1以上10以下であることが好ましく、なかでも、1以上6以下であることが好ましく、特に、1以上3以下であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなり、また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0037】
このような重合性基含有基としては、例えば、下記一般式(D)で表される基(以下、重合性基含有基Dと称する場合がある。)を用いることができる。
本発明においては、上記重合性基含有基が、上記重合性基含有基Dであることにより、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなり、また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0038】
【化7】
(式中、Lは、直接結合又はd+n価の結合基を表し、
Dは、重合性基を表し、
dは、1~10の整数を表し、
nは、上記一般式(A)で表される構造との結合数であり、1~10の整数を表し、
d+nは、2~11の整数を表し、
*は、上記一般式(A)で表される構造との結合箇所を表す。)
【0039】
上記重合性基含有基Dにおけるdは、重合性基含有基Dに含まれる重合性基の数を表すものであり、1~10の整数であるが、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるという効果及び合成の容易さのバランスの観点から、1~3であることが好ましく、1であることが好ましい。
上記重合性基含有基Dにおけるnは、上記一般式(A)で表される構造との結合数であり、1~10の整数である。nが2以上の場合、Lは構造A同士を連結する架橋基である。上記nは、上記化合物Aの用途等に応じて適宜設定されるものであり、例えば、後述する「(3-1)第1実施態様」の項に記載されるm1~m3及び「(3-2)第2実施態様」の項に記載されるm4等と同様とすることができる。本発明においては、上記nが、1~6の整数であることが好ましく、なかでも、1~3の整数であることが好ましく、特に、1~2の整数であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなり、また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
上記重合性基含有基Dにおけるd+nは、2~11の整数であるが、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、2~6の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましく、2~4の整数であることが特に好ましい。
【0040】
上記重合性基含有基Dが、例えば、後述する「(3-1)第1実施態様」の項に記載される一般式(B1)~(B3)中のR11、R12、R21、R22、R31、R32、R33、R34、R、R、R、R、R、R及びR、並びに、後述する「(3-2)第2実施態様」の項に記載される一般式(C)中のR42、R43及びR44等の構造Aに結合する置換基である場合には、n=1となり、Lとして直接結合又はd+1価の結合基を用いることができる。
また、上記重合性基含有基Dが、例えば、後述する「(3-1)第1実施態様」の項に記載される一般式(B1)~(B3)中のm1~m3がそれぞれ1であるときのX~X、又は後述する「(3-2)第2実施態様」の項に記載される一般式(C)中のXである場合には、n=1となり、Lとして直接結合又はd+1価の結合基を用いることができる。
さらに、上記重合性基含有基Dが、例えば、後述する「(3-1)第1実施態様」の項に記載される一般式(B1)~(B3)中のm1~m3及び後述する「(3-2)第2実施態様」の項に記載される一般式(C)中のm4が、それぞれ2以上であるときのX~Xである場合には、n=m(=m1~m4のいずれか)となり、Lとして、d+m価の結合基を用いることができる。
【0041】
上記一般式(D)に用いられるLは、直接結合又はd+n価の結合基を表すものである。
本発明においては、上記Lは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、d+n価の結合基であることが好ましい。
【0042】
d+n価の結合基として用いられるLとしては、2価以上の基であれば差し支えないが、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、下記(II-a)若しくは(II-b)で表される基、>C=O、-NH-CO-、-CO-NH-、>NR53又はd+nと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基を挙げることができる。
上記R53は、水素原子、炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基である。
及びR53として用いられる上記炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、上記炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び上記炭素原子数2~35の複素環含有基のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-、-SO-、窒素原子又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合があり、上記芳香環又は複素環は、他の環と縮合されている場合もある。上記R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。また、前記組み合わせは、酸素原子が隣り合わないことを条件とする。
ただし、Lとして用いられる窒素原子、リン原子又は下記(II-a)若しくは(II-b)で表される結合基は、3価の結合基として用いられるものである。また、Lとして用いられる酸素原子又は硫黄原子、>C=O、-NH-CO-、-CO-NH-又は>NR53の結合基は、2価の結合基として用いられるものである。
【0043】
【化8】
(*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0044】
上記炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基中のメチレン基が置き換わっている場合の炭素数とは、メチレン基が置き換わった後の炭素原子数を指し、メチレン基が置換される前の炭素原子数を指すのではない。その他の基中のメチレン基が置換されている場合も同じである。
【0045】
53に用いられる炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1-メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n-オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1-メチルエテニル、2-メチルエテニル、2-プロペニル、1-メチル-3-プロペニル、3-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、イソブテニル、3-ペンテニル、4-ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基及びこれらの基が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0046】
53に用いられる炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0047】
53に用いられる炭素原子数2~35の複素環含有基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル、ベンゾトリアゾイル等及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0048】
上記結合基Lに用いられる炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基の構造は、上記化合物Aの用途等に応じて適宜設定することができる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、環状(脂環式炭化水素)及びこれらの組合せのいずれも用いることができる。
上記Lに用いられる2価以上の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基としては、上述のR53に用いられる1価の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基から水素原子を1つ又は2つ以上除いた構造である基が挙げられる。具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブチルジイル等のアルキレン;上記アルキレンのメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-で置き換えられたもの;エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオールの残基;エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール等のジチオールの残基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0049】
上記Lに用いられる3価の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、プロピリジン、1,1,3-ブチリジン等のアルキリジン及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0050】
上記炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基中の水素原子が置換基で置換されている場合の炭素原子数とは、水素原子が置換基で置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換基に置換される前の炭素原子数を指すのではない。その他の基中の水素原子が置換されている場合も同じである。
【0051】
上記Lに用いられる炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基の構造は、上記化合物Aの用途等に応じて適宜設定することができる。
上記Lに用いられる2価以上の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上述のR53に用いられる1価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基から水素原子を1つ又は2つ以上除いた構造である基が挙げられる。具体的には、フェニレン、ナフチレン等のアリーレン基;カテコール、ビスフェノール等の二官能フェノールの残基;2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0052】
上記Lに用いられる3価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、フェニル-1,3,5-トリメチレン及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0053】
上記Lに用いられる炭素原子数2~35の複素環含有基の構造は、上記化合物の用途等に応じて適宜設定することができる。
上記Lに用いられる2価以上の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、例えば、上述のR53に用いられる1価の炭素原子数2~35の複素環含有基から水素原子を1つ又は2つ以上除いた構造である基が挙げられる。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、インドール環等を有する基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0054】
上記Lに用いられる3価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、イソシアヌル環を有する基、トリアジン環を有する基及びこれらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0055】
上記の脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等は、置換基を有していても差し支えなく、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換であるもの又は置換基を有しているものとすることができる。上記置換基としては、後述する「(2)構造A」の項に記載のR101等に用いられるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同様のものを挙げることができる。
【0056】
上記Lとしては、d+nが2、3、4、5、6であるときには、それぞれ、特開2017-001184号公報中のnが2であるときに用いることができる一般式(1)、nが3であるときに用いることができる一般式(2)、nが4であるときに用いることができる一般式(3)、nが5であるときに用いることができる一般式(4)、nが6であるときに用いることができる一般式(5)として記載される基も挙げることができる。
【0057】
上記Lは、2価の結合基である場合には、>C=O、-NH-CO-、-CO-NH-、>NR53又は2価の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも、2価の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、2価の炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、特に、2価の炭素原子数2~8の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、なかでも特に、2価の炭素原子数3~6の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
上記Lは、3価~6価の結合基である場合には、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記Lは、3価の結合基である場合には、3価の炭素原子数2~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも、3価の炭素原子数3~8の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0058】
上記Lは、炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基である場合には、これらの基のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-O-、-NR’-、-S-S-、-SO-又はこれらの組み合わせで置き換わっていることが好ましく、なかでも、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-で置き換わっていることが好ましく、特に、-O-、-O-CO-である二価の置換基で置き換わっていることが好ましい。
また、上記Lに用いられる基は、その基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-で置き換わっていることが好ましく、特に、-O-、-S-、-O-CO-で置き換わっているものも好ましい。
上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
上記Lにおいて、上記の脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基中の-O-等の二価の置換基で置き換わっているメチレン基の数は、1以上10以下であることが好ましく、なかでも、1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが好ましい。
上記Lは、構造A側の末端のメチレン基が-O-で置き換わっていること、すなわち、Lが-O-を介して構造Aに結合していることが好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
上記Lは、構造A側の末端のメチレン基が-S-で置き換わっていること、すなわち、Lが-S-を介して構造Aに結合しているものも好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
また、上記Lは、重合性基側の末端のメチレン基が-O-で置き換わっていること、すなわち、Lが-O-を介して重合性基に結合していることが好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能ものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0059】
上記Lとしては、d+nが2であるとき、下記一般式(1)で表される基を好ましく用いることができる。
上記Lは、d+nが3であるとき、下記一般式(2)で表される基を好ましく用いることができる。
上記Lは、d+nが4であるとき、下記一般式(3)で表される基を好ましく用いることができる。
上記Lは、d+nが5であるとき、下記一般式(4)で表される基を好ましく用いることができる。
上記Lは、d+nが6であるとき、下記一般式(5)で表される基を好ましく用いることができる。
【0060】
【化9】
(上記一般式(1)中、Yは、単結合、-NR57-、2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-NH-又はこれらの組み合わせの結合基で置き換わっている場合もあり、
及びZは、それぞれ独立に、直接結合、-O-、-S-、>CO、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-SS-、-SO-、>NR58又は>PR58を表し、
57及びR58は、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0061】
【化10】
(上記一般式(2)中、Y11は、三価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
、Z及びZは、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ~Zで表される基と同じ範囲の基を表し、
該脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、炭素一炭素二重結合、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-又は-SO-で置き換わっている場合もある。)
【0062】
【化11】
(上記一般式(3)中、Y12は、炭素原子又は四価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置き換わっている場合もあり、
~Zは、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ~Zで表される基と同じ範囲の基である。)
【0063】
【化12】
(上記一般式(4)中、Y13は、五価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~30の複素環含有基を表し、
該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置き換わっている場合もあり、
~Zは、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ~Zで表される基と同じ範囲の基である。)
【0064】
【化13】
(上記一般式(5)中、Y14は、単結合、六価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
該脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置き換わっている場合もあり、
~Zは、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ~Zで表される基と同じ範囲の基である。)
【0065】
上記一般式(1)で表される基におけるYに用いられる2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、上記Lに用いられる2価の脂肪族炭化水素基のうち、該当する炭素原子数の基が挙げられる。
上記2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、より具体的には、メタン、エタン、プロパン、iso-プロパン、ブタン、sec-ブタン、tert-ブタン、iso-ブタン、ヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、iso-ヘプタン、tert-ヘプタン、1-メチルオクタン、iso-オクタン、tert-オクタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,4-ジメチルシクロブタン、4-メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素の水素原子が、Z及びZで置換された2価の基が挙げられる。
また、上記脂肪族炭化水素基としては、シクロオクタン、シクロデカン、アダマンタン、ノルボルネン等の脂環族炭化水素の水素原子が、Z及びZで置換された2価の基が挙げられる。
これらの基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0066】
上記一般式(1)で表される基におけるYに用いられる2価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上記Lに用いられる2価の芳香環含有炭化水素基が挙げられる。
上記2価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、より具体的には、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル等の芳香環含有炭化水素の水素原子が、Z及びZで置換された2価の基等が挙げられる。
【0067】
上記一般式(1)で表される基におけるYに用いられる2価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記Lに用いられる2価の複素環含有基が挙げられる。
上記2価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、より具体的には、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン、フラン、テトラヒドロフラン、クロマン、キサンテン、チオフェン、チオラン等の複素環含有化合物の水素原子が、Z及びZで置換された2価の基が挙げられる。
【0068】
上記一般式(1)で表される基におけるYで用いられる脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の各官能基は、置換基を有していても差し支えなく、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換であるもの又は置換基を有しているものとすることができる。
このような脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の水素原子を置換する置換基としては、後述する「(2)構造A」の項に記載のR101等に用いられるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同様のものを挙げることができ、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は炭素原子数1~8のアルコキシ基が挙げられる。
【0069】
上記一般式(1)で表される基におけるR57及びR58に用いられる炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述したR53及びR54に用いられる基と同様の基が挙げられる。
【0070】
上記一般式(2)で表される基におけるY11に用いられる三価の炭素原子数3~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるYの説明で例示した脂肪族炭化水素、芳香環含有炭化水素及び複素環含有化合物の水素原子が、Z、Z及びZで置換された三価の基が挙げられる。
これらの基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0071】
上記一般式(3)で表される基におけるY12に用いられる四価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるYの説明で例示した脂肪族炭化水素、芳香環含有炭化水素及び複素環含有化合物の水素原子が、Z、Z、Z及びZで置換された四価の基が挙げられる。
これらの基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0072】
上記一般式(4)で表される基におけるY13に用いられる五価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるYの説明で例示した脂肪族炭化水素、芳香環含有炭化水素及び複素環含有化合物の水素原子が、Z、Z、Z、Z及びZで置換された五価の基が挙げられる。
これらの基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0073】
上記一般式(5)におけるY14に用いられる六価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記一般式(1)におけるYの説明で例示した脂肪族炭化水素、芳香環含有炭化水素及び複素環含有化合物の水素原子が、Z、Z、Z、Z、Z及びZで置換された六価の基が挙げられる。
これらの基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられている場合がある。
【0074】
上記一般式(1)中のYは、2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基であることが最も好ましく、なかでも特に、炭素原子数2~8の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数3~6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
上記一般式(2)~(5)中のY11、Y12、Y13及びY14は、それぞれの価数の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~30の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基であることが最も好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
なかでも本発明においては、上記一般式(3)中のY12が、炭素原子数2~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数3~8の脂肪族炭化水素基であることが最も好ましい。上記Lがこのような構造であることで、上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0075】
上記一般式(1)~(5)中のY、Y11、Y12、Y13及びY14は、それぞれの価数の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基である場合、それらのメチレン基の1つ又は2つ以上が-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換わっていることが好ましく、なかでも、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-で置き換わっていることが好ましく、特に、-O-、-O-CO-で置き換わっていることが好ましい。また、Y、Y11、Y12、Y13及びY14に用いられる脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基若しくは複素環含有基が、-O-、-S-で置き換わっているものも好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。
上記一般式(1)~(5)中における上記Y、Y11、Y12、Y13及びY14において、上述の-O-等で置き換わっているメチレン基の数としては、1以上10以下であることが好ましく、なかでも、1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。
【0076】
上記一般式(1)~(5)における、Z~Zは、-O-であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。
本発明においては、Z~Zのうち、重合性基含有基と結合する基が、-O-であることが好ましい。また、本発明においては、Z~Zのうち、重合性基含有基と結合するもの以外の基が、-O-、-S-であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
なお、重合性基含有基と結合するもの以外の基としては、具体的には、上記構造A中の環Aに結合する基、置換基R101の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基としてR101に結合する基等があげられる。
【0077】
上記重合性基含有基の数としては、化合物A中に1以上であれば制限はないが、なかでも、1以上10以下であることが好ましく、特に、1以上5以下であることが好ましく、なかでも特に、1以上3以下であることが好ましい。上記数が上述の範囲であることで、上記化合物Aを含む潜在性添加剤は、耐光性、耐熱性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0078】
上記重合性基含有基の種類は、化合物A中に2以上含まれる場合には、1種類であっても、2種類以上であっても構わない。
本発明においては、上記重合性基含有基の種類が1種類であることが好ましい。上記化合物Aを含む潜在性添加剤は、耐光性、耐熱性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易となるからである。
【0079】
(2)構造A
上記化合物Aは、上述の一般式(A)で表される構造(構造A)を含むものである。
【0080】
上記一般式(A)における環Aは、五員環若しくは六員環の芳香環、又は五員環若しくは六員環の複素環である。
五員環の芳香環としては、芳香族性を有する五員環であり、五員環の環構造が炭素原子のみを含むものであれば制限はなく、シクロペンタジエン、フェロセン等が挙げられる。
五員環の複素環としては、芳香族性を有する五員環であり、五員環の環構造が炭素原子以外の原子を含むものであれば制限はなく、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリジン、ピラゾリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリジン、オキサゾール、イソキサゾール、イソオキサゾリジン、チアゾール、イソチアゾール、イソチアゾリジン等が挙げられる。
六員環の芳香環としては、芳香族性を有する六員環であり、六員環の環構造が炭素原子のみを含むものであれば制限はなく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ペリレン、ピレン等が挙げられる。
六員環の複素環としては、芳香族性を有する六員環であり、六員環の環構造が炭素原子以外の原子を含むものであれば制限はなく、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等が挙げられる。
これらの環は、他の環と縮合されていたり置換されていたりしていても差し支えなく、例えば、キノリン、イソキノリン、インドール、ユロリジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、アズレン等を構成していても構わない。
本発明において、上記環Aは、五員環および六員環の両者を含むものは六員環に該当するものとする。
また、上記環Aは、芳香環及び複素環の両者を含むものは複素環に該当するものとする。
本発明においては、耐光性、耐熱性等の機能に優れた硬化物を得られるとの観点から、六員環の芳香環又は複素環であることが好ましく、なかでも、六員環の芳香環のみを含むものであることが好ましく、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン等であることが好ましい。
【0081】
上記一般式(A)におけるR101は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であり、R102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はシリル基である。
【0082】
上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0083】
上記炭素原子数1~40のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、アミル、iso-アミル、tert-アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、1-オクチル、iso-オクチル、tert-オクチル、アダマンチル等が挙げられる。
上記炭素原子数6~20のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル等が挙げられる。
上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
上記炭素原子数2~20の複素環含有基としては、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル等が挙げられる。
【0084】
上記炭素原子数2~20のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、2-ペンテニル、2-オクテニル等が挙げられる。
【0085】
上記シリル基としては、水素原子が未置換のシリル基、水素原子が他の置換基で置換された置換シリル基を用いることができる。
上記置換シリル基としては、モノアルキルシリル基、モノアリールシリル基、ジアルキルシリル基、ジアリールシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、モノアルキルジアリールシリル基、ジアルキルモノアリールシリル基といったシリル基が挙げられる。
上記モノアルキルシリル基としては、モノメチルシリル基、モノエチルシリル基、モノブチルシリル基、モノイソプロピルシリル基、モノデカンシリル、モノイコサンシリル基、モノトリアコンタンシリル基等が挙げられる。
上記モノアリールシリル基としては、モノフェニルシリル基、モノトリルシリル基、モノナフチルシリル基、モノアンスリルシリル基等が挙げられる。
上記ジアルキルシリル基としては、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジイソプロピルシリル基、ジブチルシリル基、ジオクチルシリル基、ジデカンシリル基等が挙げられる。
上記ジアリールシリル基としては、ジフェニルシリル基、ジトリルシリル基等が挙げられる。
上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリオクチルシリル基等が挙げられる。
上記トリアリールシリル基としては、トリフェニルシリル基、トリトリルシリル基等が挙げられる。
上記モノアルキルジアリールシリル基としては、メチルジフェニルシリル基、エチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
上記ジアルキルモノアリールシリル基としては、ジメチルフェニルシリル基、メチルエチルフェニル基等が挙げられる。
【0086】
上記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環含有基、アルケニル基及びシリル基中のメチレン基の1つ又は2つ以上は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-、-S-S-若しくは-SO-から選ばれた基、又は酸素原子が隣り合わない条件でこれらを組み合わせた基で置き換えることができる。R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
【0087】
上記アルキル基は、末端のメチレン基が-O-で置き換えられ、アルコキシ基となっている場合がある。
上記アルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、iso-プロピルオキシ、ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、iso-ブチルオキシ、アミルオキシ、iso-アミルオキシ、tert-アミルオキシ、ヘキシルオキシ、2-ヘキシルオキシ、3-ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、4-メチルシクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、2-ヘプチルオキシ、3-ヘプチルオキシ、iso-ヘプチルオキシ、tert-ヘプチルオキシ、1-オクチルオキシ、iso-オクチルオキシ、tert-オクチルオキシ等が挙げられる。
【0088】
上記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環含有基、アルケニル基及びシリル基等は、置換基を有していても差し支えない。これらの基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2-クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、n-オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2-エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N-メチル-アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2-ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t-ブトキシカルボニルアミノ、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基若しくはリン酸基の塩等が挙げられる。
すなわち、アリール基、アリールアルキル基、複素環含有基、アルケニル基及びシリル基の水素原子の1つ又は2つ以上を置換する置換基としては、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基若しくはリン酸基又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基若しくはリン酸基の塩等が挙げられる。
【0089】
上記R101は、複数のR101同士が結合して、ベンゼン環又はナフタレン環等の環を形成していても構わない。
【0090】
上記R101は、潜在性紫外線吸収剤として耐光性等に優れる観点からは、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であることが好ましく、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であることがより好ましい。特に、環A側の末端のメチレン基が-CO-に置き換えられている炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であることが好ましい。このような基としては、例えば、ベンゾイミダゾリル基、フェニルケトン基、トリアジン基等を挙げることができる。
上記R101は、潜在性酸化防止剤として耐熱性等に優れる観点からは、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、置換基を有していない無置換の炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましい。特に、Cで表される基であることが好ましく、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
【0091】
上記R101の結合箇所は、上記環Aの任意の箇所とすることができるが、上記R102に隣接する箇所に結合していることが好ましい。耐光性、耐熱性等の付与が容易だからである。
【0092】
上記R102は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基である場合、酸素原子側の末端のメチレン基が-CO-O-に置き換えられているもの、すなわち、酸素原子側の末端に-CO-O-が結合しているものであることが好ましい。
上記R102は、具体的には酸素原子側の末端のメチレン基が-CO-O-に置き換えられている、炭素原子数1~40のアルキル基又は炭素原子数2~20のアルケニル基であることが好ましく、なかでも、酸素原子側の末端のメチレン基が-CO-O-に置き換えられている炭素原子数1~40のアルキル基であること、すなわち、-CO-O-R’’(R’’は置換基を有している場合がある炭素原子数1~40のアルキル基)で表される基であることが好ましい。R’’は炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましく、置換基を有していない無置換の炭素原子数1~8のアルキル基であることがより好ましい。特に、R’’がCで表される基であることが好ましく、tert-ブチル基であることが最も好ましい。潜在性酸化防止加剤として効率的に耐光性、耐熱性等の機能を発現可能となるからである。
【0093】
上記一般式(A)におけるa1は、1以上の整数である。
上記a1は、環Aに結合するR101の数を示すものであり、適宜設定できるものである。
上記a1は、上記化合物Aが、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなる観点、合成の容易さの観点からは、1~3の整数であることが好ましく、1~2の整数であることがより好ましい。
上記一般式(A)におけるa2は、1以上の整数である。
上記a2は、環Aに結合する-O-R102の数を示すものであり、上記潜在性添加剤の用途等に応じて適宜設定できるものである。
例えば、環Aが五員環である場合には、上記a2は、1~4の整数とすることができ、環Aが六員環である場合には、1~5の整数とすることができる。
上記a2は、上記化合物Aが、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなる観点、合成の容易さの観点からは、1~3の整数であることが好ましく、1~2の整数であることがより好ましい。
上記a1及びa2の合計は、環Aが取り得る置換基の数以下である。
ここで、環Aが取り得る置換基の数以下であるとは、環Aが有する置換可能な水素原子の数以下であることを意味し、例えば、環Aがピロリジン等の五員環1つのみの複素環である場合には、上記a1及びa2の合計は5以下であり、環Aがベンゼン環である場合には、上記a1及びa2の合計は6以下である。
【0094】
上記化合物Aは、上記構造Aを少なくとも1つ有するものであるが、2以上有することもでき、例えば、1以上10以下の上記構造Aを有することができる。
【0095】
(3)化合物A
上記化合物Aは、上記一般式(A)で表される構造(構造A)と、重合性基含有基と、を有するものである。
上記化合物Aの具体的な構造は、上記化合物Aを含む潜在性添加剤の用途等に応じて適したものを選択できる。例えば、上記潜在性添加剤を潜在性紫外線吸収剤として用いる場合に適した構造(第1実施態様)、上記潜在性添加剤を潜在性酸化防止剤として用いる場合に適した構造(第2実施態様)等を挙げることができる。
以下、本発明に用いられる化合物Aのより具体的な構造について、上記の各実施態様に分けて説明する。
【0096】
(3-1)第1実施態様
上記化合物Aの第1実施態様は、上記潜在性添加剤を潜在性紫外線吸収剤として用いる場合に適した構造を有するものである。
このような構造有するものとしては、例えば、下記一般式(B1)、(B2)又は(B3)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物B1、化合物B2及び化合物B3と称する場合がある。また、これらの化合物B1~B3をまとめて化合物Bと称する場合がある。)を挙げることができる。
本発明の潜在性添加剤においては、化合物B1又は化合物B3を用いることが好ましく、特に、化合物B3を用いることが好ましい。上述の化合物を用いることで、上記潜在性添加剤は、耐光性により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。
【0097】
【化14】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又は重合性基含有基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102又は重合性基含有基を表し、
11及びR12の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m1は、1~10の整数を表し、
b1は、0~4の整数を表し、
b2は、0~2の整数を表し、
は、m1価の基又はm1価の重合性基含有基を表し、
前記R11、R12、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0098】
より具体的には、上記一般式(B1)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
11及びR12の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m1は、1~10の整数を表し、
b1は、0~4の整数を表し、
b2は、0~2の整数を表し、
は、m1価の基又はm1価の重合性基含有基を表し、
前記R11、R12、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。
【0099】
【化15】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又は重合性基含有基を表し、
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102又は重合性基含有基を表し、
21及びR22の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m2は、1~10の整数を表し、
b3は、0~4の整数を表し、
b4は、0~3の整数を表し、
は、m2価の基又はm2価の重合性基含有基を表し、
前記R21、R22、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0100】
より具体的には、上記一般式(B2)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
21及びR22の少なくとも一方は、上記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m2は、1~10の整数を表し、
b3は、0~4の整数を表し、
b4は、0~3の整数を表し、
は、m2価の基又はm2価の重合性基含有基を表し、
前記R21、R22、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0101】
【化16】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又は重合性基含有基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102又は重合性基含有基を表し、
31及びR32の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
33及びR34の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m3は、1~10の整数を表し、
m31は、1であり、
m32は、0~2の整数を表し、
m31及びm32の合計は、1~3の整数を表し、
b5は、0~2の整数を表し、
b6は、0~3の整数を表し、
b7は、0~[3-(m31+m32)]の整数を表し、
は、m3価の基又はm3価の重合性基含有基を表し、
前記R31、R32、R33、R34、R、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0102】
より具体的には、上記一般式(B2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、-O-R102、重合性基含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が前記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が前記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
31及びR32の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
33及びR34の少なくとも一方は、前記-O-R102であり、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m3は、1~10の整数を表し、
m31は、1であり、
m32は、0~2の整数を表し、
m31及びm32の合計は、1~3の整数を表し、
b5は、0~2の整数を表し、
b6は、0~3の整数を表し、
b7は、0~[3-(m31+m32)]の整数を表し、
は、m3価の基又はm3価の重合性基含有基を表し、
前記R31、R32、R33、R34、R、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。
【0103】
上記化合物B1~B3は、それぞれX~Xで表されるm1価の基(m1価の特定の原子又は基)、m2価の基(m2価の特定の原子又は基)及びm3価の基(m3価の特定の原子又は基)に、m1~m3個の特定の基が結合した構造を有する。
このm1~m3個の基は、互いに同じであっても、異なっていても構わない。
m1、m2及びm3は、それぞれ独立に1~10の整数であるが、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるという効果及び合成の容易さのバランスの観点から、1~6であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、特に、1~4であることが好ましい。
なかでも本発明においては、m1が、1~3であることが好ましく、特に、1~2であることが好ましい。
なかでも本発明においては、m2が、1~3であることが好ましく、特に、1~2であることが好ましい。
なかでも本発明においては、m3が、1~3であることが好ましく、特に、1~2であることが好ましく、1であることが好ましい。
上記m1~m3が上述の範囲であることで、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるという効果及び合成の容易さのバランスに優れたものとなるからである。
【0104】
上記化合物B1において、上記R11、R12、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。なかでも、上記R及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であることが好ましく、少なくともRが、重合性基含有基であることがより好ましい。特に、上記R11、R12、R、R及びXのうちRのみが、重合性基含有基であることが好ましい。
また、上記化合物B1において、b2が2の場合、2つのRのうち、1つのRのみが、重合性含有基であることが好ましい。
また、本発明においては、上記R11、R12、R、R及びXのうちRのみが、重合性基含有基であるものも好ましい。
また、上記化合物B1において、b1が2~4の場合、2つ~4つのRのうち、1つのRのみが、重合性含有基であることが好ましい。
【0105】
上記化合物B2において、上記R21、R22、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。なかでも、上記R及びRの少なくとも1つが重合性基含有基であることが好ましく、R及びRの両者が、重合性基含有基であることがより好ましい。
【0106】
上記化合物B3において、上記R31、R32、R33、R34、R、R、R及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。なかでも、上記R及びRの少なくとも1つが重合性基含有基であることが好ましく、上記R及びRの両者が、重合性基含有基であることがより好ましい。
上記化合物B3においては、上記R及びRの何れか一方のみが、重合性基含有基であることも好ましい。
上記化合物B3中のトリアジン環に結合するベンゼン環に重合性基含有基が結合している場合、1つのベンゼン環に結合する重合性基含有基の数は、2以下であることが好ましく、なかでも、1つであることが好ましい。
例えば、上記化合物B3中のトリアジン環に結合するベンゼン環が2以上のRを有し、重合性基含有基であるRを含む場合、1つのRのみが重合性基含有基であることが好ましい。
また、上記化合物B3においてm32が2であり、トリアジン環に結合する2つのベンゼン環のそれぞれが、2以上のRを有し、重合性基含有基であるRを含む場合、それぞれのベンゼン環において、1つのRのみが重合性基含有基であることが好ましい。
また、上記化合物B3において、R31に対してメタ位(トリアジン環に対してパラ位)のR及びR33に対してメタ位(トリアジン環に対してパラ位)のRの少なくとも1つが、重合性基含有基であることが好ましい。
【0107】
上記重合性基含有基が、上記化合物B1~B3において上述のように含まれることで、上記化合物Bを含む潜在性添加剤は、耐光性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Bは、合成容易となるからである。
【0108】
上記化合物B1におけるR11、R12、R及びRの少なくとも1つ、上記化合物B2におけるR21、R22、R及びRの少なくとも1つ、上記化合物B3におけるR31、R32、R33、R34、R、R及びRの少なくとも1つが重合性基含有基である場合、上記重合性基含有基としては、例えば、上記一般式(D)で表される基のうち、d+nが2~6の整数であるものを好ましく用いることができ、なかでも、d+nが2~4の整数であるものを好ましく用いることができる。上記化合物Bを含む潜在性添加剤は、耐光性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Bは、合成容易となるからである。
【0109】
本発明においては、上記化合物B3中のトリアジン環に結合するベンゼン環の全てに、重合性基含有基が結合しているものであってもよく、トリアジン環に結合するベンゼン環の一部にのみ、重合性基含有基が結合しているものであってもよい。上記ベンゼン環の全てに重合性基含有基が結合している場合には、析出等のより少ないものとすることが容易だからである。上記ベンゼン環の一部にのみ重合性基含有基が結合している場合には、重合性基含有基が結合していない上記ベンゼン環に、例えば、アルコキシ基等を結合し、例えば、基材等との接着性等を向上することが容易となる等、他の機能を付与することが容易だからである。
なお、後述する式(B-22)、(B-23)、(B-24)で表される化合物は、トリアジン環に結合するベンゼン環の全てに、重合性基含有基が結合している化合物の例である。
また、後述する式(B-31)で表される化合物は、トリアジン環に結合するベンゼン環の一部にのみ、重合性基含有基が結合している化合物の例である。
【0110】
本発明においては、上記化合物B1が1分子中に有する重合性基含有基の数は、1以上であればよいが、1以上2×m1以下であることが好ましく、なかでも、1以上m1以下であることが好ましい。すなわち、m1が2である場合、上記化合物B1が1分子中に有する重合性基含有基は、1個以上4個以下であることが好ましく、なかでも、1個以上2個以下であることが好ましい。また、m1が1である場合、1個以上2個以下であることが好ましく、なかでも、1個であることが好ましい。上記化合物B1は、耐光性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物B1は、合成容易となるからである。
また、上記化合物B1は、上述のようにm1個の基がXで結合した構造を有するが、m1個の基のそれぞれが有する重合性基含有基の数は、2以下であることが好ましく、1であることが好ましい。上記化合物B1は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物B1は、合成容易となるからである。
【0111】
なお、後述する式(B-3)で表される化合物は、化合物B1に該当する化合物であり、その1分子中に有する重合性基含有基が、1個である化合物の例である。
また、後述する式(B-3)で表される化合物は、上記化合物B1においてm1が1である化合物であり、m1個の基が有する重合性基含有基の数が、1である化合物の例である。
【0112】
本発明においては、上記化合物B2が1分子中に有する重合性基含有基の数は、1以上であればよいが、1以上2×m2以下であることが好ましく、なかでも、1以上m2以下であることが好ましい。すなわち、m2が2である場合、上記化合物B2が1分子中に有する重合性基含有基は、1個以上4個以下であることが好ましく、なかでも、1個以上2個以下であることが好ましく、なかでも、2個であることが好ましい。また、上記化合物B2が1分子中に有する重合性基含有基の数は、m2が1である場合、1個以上2個以下であることが好ましく、なかでも、1個であることが好ましい。上記化合物B2は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物B2は、合成容易となるからである。
また、上記化合物B2は、上述のようにm2個の基がXで結合した構造を有するが、m2個の基のそれぞれが有する重合性基含有基の数は、2以下であることが好ましく、1であることが好ましい。上記化合物B2は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物B2は、合成容易となるからである。
【0113】
本発明においては、上記化合物B3が1分子中に有する重合性基含有基の数は、1以上であればよいが、1以上6×m3以下であることが好ましく、なかでも、1以上3×m3以下であることが好ましい。すなわち、m3が1である場合、上記化合物B3が1分子中に有する重合性基含有基は、1個以上6個以下であることが好ましく、なかでも、1個以上3個以下であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物B3は、合成容易となるからである。
また、上記化合物B3は、上述のようにm3個の基がXで結合した構造を有するが、m3個の基のそれぞれが有する重合性基含有基の数は、6以下であることが好ましく、1以上3以下であることが好ましい。上記化合物B3は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物B3は、合成容易となるからである。
なお、後述する式(B-22)、(B-23)、(B-24)で表される化合物は、化合物B3に該当する化合物であり、1分子中に有する重合性基含有基の数が、3である化合物の例である。
また、後述する式(B-31)で表される化合物は、化合物B3に該当する化合物であり、1分子中に有する重合性基含有基の数が、1である化合物の例である。
【0114】
上記R11、R12、R21、R22、R31、R32、R33、R34、R、R、R、R、R、R及びRとして用いられる炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基については、上記R101として用いられる基と同様とすることができる。
上記R、R、R、R、R及びRは、複数のR同士、複数のR同士、複数のR同士、複数のR同士、複数のR同士及び複数のR同士が、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成することができる。
上記化合物BにおけるR102は、上記一般式(A)におけるR102と同じである。
上記R11、R12、R21、R22、R31、R32、R33、R34、R、R、R、R、R、R及びRとして用いられる重合性基含有基は、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
上記R11、R12、R21、R22、R31、R32、R33及びR34は、R11及びR12の少なくとも一方、R21及びR22の少なくとも一方、R31及びR32の少なくとも一方並びにR33及びR34の少なくとも一方が、上記-O-R102である。
すなわち、上記R11とR12との組合せ、R21とR22との組合せ、R31とR32との組合せ及びR33とR34との組合せは、それぞれ少なくとも一方が、上記-O-R102である。
上記組合せにおいて、上記化合物Bを、潜在性解除前後の紫外線吸収能の変化を大きいものとする観点、及び上記化合物Bの合成容易の観点からは、一方が上記-O-R102であることが好ましい。
上記組合せにおいて、潜在性解除前後の紫外線吸収能の変化を大きいものとする観点からは、両者が上記-O-R102であることが好ましい。
上記組合せにおいて、一方のみが上記-O-R102である場合、他方は、水素原子、水酸基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~40のアルキル基であることがより好ましい。
上記組合せの他方が、上記官能基であることで、上記化合物Bは、紫外線吸収能の変化が大きいものとなるからである。また、上記化合物Bは、硬化阻害の少ないものとなるからである。
また、上記アルキル基及びアリールアルキル基等としては、例えば、メチレン基が-O-、-CO-等により置換されているものも好ましく用いることができる。
【0116】
上記R、R、R、R、R、R及びRは、重合性基含有基以外の基である場合、それぞれ独立に、シアノ基、水酸基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基であることが好ましく、シアノ基、水酸基、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数7~10のアリールアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数3~10のアルキル基であることがより好ましい。
また、Rは、炭素原子数1~10のアルキル基も好ましく用いることができ、なかでも、炭素原子数1~5のアルキル基をより好ましく用いることができる。
上記R、R、R、R、R、R及びRが、上述の基であることで、上記化合物Bの合成が容易となり、化合物Bは保護基R102の脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
また、上記R、R、R、R、R、R及びRに用いられる上記アルキル基及び上記アリールアルキル基としては、メチレン基が-O-、-CO-等により置換されているものも好ましく用いることができる。
【0117】
本発明においては、R及びRが、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~20のアルキル基の基中のメチレン基が-O-、-CO-により置換されている基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~10のアルキル基の基中のメチレン基が-O-、-CO-により置換されている基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数3~8のアルキル基の基中のメチレン基が-O-、-CO-により置換されている基であることが好ましい。
上記R、R、R、R、R、R及びRが、上述の基であることで、上記化合物Bの合成が容易となり、化合物Bは保護基R102の脱離後に優れた紫外線吸収能を発揮するからである。
【0118】
上記m31は、1であり、m32は、0~2の整数を表し、m31及びm32の合計は、1~3の整数を表す。
化合物Bの潜在性解除前後で紫外線吸収能の変化が大きいものとなる観点から、上記m31及びm32の合計は2~3の整数であることが好ましく、3であることが特に好ましい。
【0119】
上記b1は、0~4の整数を表す。耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、上記b1は、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1の整数であることが特に好ましい。
上記b2は、0~2の整数の整数を表す。溶解性の観点から、上記b2は1~2の整数であることが好ましい。
上記b3は、0~4の整数を表す。耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、上記b3は、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0~1の整数であることが特に好ましい。
上記b4は、0~3の整数を表す。耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、上記b4は0~2の整数であることが好ましく、1~2の整数であることが特に好ましい。
上記b5は、0~2の整数を表す。耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、上記b5は1~2の整数であることが特に好ましい。
上記b6は、0~3の整数を表す。耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができるとの効果及び合成の容易さのバランスの観点から、上記b6は0~2の整数であることが好ましく、1~2の整数であることが特に好ましい。
上記b7は、0~[3-(m31+m32)]の整数を表す。合成の容易さの観点から、0~1の整数であることが好ましく、0であることが好ましい。
【0120】
上記X、X及びX(以下、X~XをまとめてXと称する場合がある。)は、それぞれ、m1価~m3価の基(以下、m1~m3をまとめてmと称する場合がある。また、m1価~m3価の基をまとめてm価の基と称する場合がある。)又はm価の重合性基含有基である。
【0121】
上記Xとして用いられるm価の重合性基含有基は、重合性基を有するものであれば特に制限されず、例えば、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0122】
上記Xとして用いられるm価の基は、直接結合、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、下記(III-a)若しくは(III-b)で表される基、>C=O、>NR153、-OR153、-SR153、-NR153154又はmと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基であり、R153及びR154は、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、該脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基のメチレン基の1つ又は2つ以上は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-O-、-NR’-、-S-S-、-SO-、窒素原子又はこれらの組み合わせで置き換わっている場合もあり、上記芳香環又は複素環は、他の環と縮合されている場合もある。上記メチレン基を置換する組み合わせは、酸素原子が隣り合わないことを条件とする。
上記Xが窒素原子、リン原子又は下記(III-a)若しくは(III-b)で表される結合基の場合、mは3であり、Xが直接結合、酸素原子、硫黄原子、>C=O、-NH-CO-、-CO-NH-又は>NR153の場合、mは2であり、Xが水素原子、-OR153、-SR153又は-NR153154の場合、mは1である。
【0123】
【化17】
(*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0124】
上記m価の基として用いられるmと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基の構造は、潜在性添加剤の用途等に応じて適宜設定することができる。
1価~3価の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載のR53として用いられる炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、及びLとして用いられる2価~3価の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0125】
上記m価の基に用いられる、mと同数の価数を有する炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基の構造は、潜在性添加剤の用途等に応じて適宜設定することができる。
1価~3価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、具体的には、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載のR53として用いられる炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基、及びLとして用いられる2価~3価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基が挙げられる。
【0126】
上記m価の基に用いられる、mと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基の構造は、潜在性添加剤の用途等に応じて適宜設定することができる。
1価~3価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、具体的には、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載のR53として用いられる炭素原子数2~35の複素環含有基、及びLとして用いられる2価~3価の炭素原子数2~35の複素環含有基が挙げられる。
【0127】
153及びR154については、それぞれ、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載のR53及びR54の内容と同様とすることができる。
【0128】
上記m価の基は、mが2、3、4、5、6であるときには、それぞれ、特開2017-001184号公報中のnが2であるときに用いることができる一般式(1)、nが3であるときに用いることができる一般式(2)、nが4であるときに用いることができる一般式(3)、nが5であるときに用いることができる一般式(4)、nが6であるときに用いることができる一般式(5)として記載される基も用いることができる。
具体的には、上記m価の基としては、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載のLとして用いられる一般式(1)~(5)で表される基が挙げられる。
【0129】
上記m価の基は、mが2である場合、炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基又はジオール残基であることがより好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基又は炭素原子数1~10のジオール残基であることが好ましい。化合物Bの製造が容易だからである。
【0130】
上記Xのベンゼン環との結合位置は、任意の位置とすることできるが、例えば、上記R102-O-の結合位置に対して、オルト位又はメタ位であることが好ましい。
【0131】
上記化合物Bは、フェノール性水酸基を有するもの、すなわち、保護基R102により保護されていないフェノール性水酸基を有するものであっても構わないが、該フェノール性水酸基の数は2個以下であることが好ましく、0個であることがより好ましい。上記化合物Bは、硬化阻害が少ないものとなるからである。
【0132】
上記化合物B1~B3の具体例としては、例えば、下記で表される化合物を挙げることができる。
【0133】
【化18】
【0134】
【化19】
【0135】
【化20】
【0136】
【化21】
【0137】
(3-2)第2実施態様
上記化合物Aの第2実施態様は、潜在性添加剤を潜在性酸化防止剤として用いるのに適した構造を有するものである。
このような化合物Aとしては、例えば、下記一般式(C)で表される化合物(以下、化合物Cと称する場合がある。)を好ましく用いることができる。
【0138】
【化22】
(式中、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基又は重合性基含有基を表し、
44は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又は重合性基含有基を表し、
102は、上記一般式(A)におけるR102と同じであり、
m4は、1~10の整数を表し、
c1は、0~2の整数を表し、
は、m4価の基又はm4価の重合性基含有基を表し、
前記R42、R43、R44及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。)
【0139】
上記化合物Cは、Xで表されるm4価の基(m4価の特定の原子又は基)に、m4個の特定の基が結合した構造を有する。このm4個の基は、互いに同じであっても、異なっていても構わない。
m4の値は、1~10の整数であり、合成の容易さの点から、1~6であることが好ましく、なかでも、1~5であることが好ましく、特に、1~4であることが好ましく、なかでも特に、1~3であることが好ましく、なかでも特に、1~2であることが好ましい。上記化合物Cは、耐光性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
【0140】
上記化合物Cにおいて、R42、R43、R44及びXの少なくとも1つが、重合性基含有基である。
上記化合物Cにおいて、R44の少なくとも1つが、重合性基含有基であることが好ましく、少なくとも-O-R102に対してメタ位のR44が、重合性基含有基であることがより好ましく、-O-R102に対してメタ位のR44のみが、重合性基含有基であることが特に好ましい。
上記重合性基含有基が上述の基として含まれることで、上記化合物Cを含む潜在性添加剤は、耐熱性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
上記化合物CにおけるR42、R43及びR44の少なくとも1つが重合性基含有基である場合、上記重合性基含有基としては、例えば、上記一般式(D)で表される基のうち、d+nが2~6の整数であるものを好ましく用いることができ、なかでも、d+nが2~4の整数であるものを好ましく用いることができる。上記化合物Cは、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
【0141】
本発明においては、上記化合物Cが1分子中に有する重合性基含有基の数は、1以上であればよいが、1以上2×m4以下であることが好ましく、なかでも、1以上m4以下であることが好ましい。すなわち、m4が2である場合、上記化合物Cが1分子中に有する重合性基含有基は、1個以上4個以下であることが好ましく、なかでも、1個以上2個以下であることが好ましい。また、m4が1である場合、1個以上2個以下であることが好ましく、なかでも、1個であることが好ましい。上記化合物Cは、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
また、上記化合物Cは、上述のようにm4個の基がXで結合した構造を有するが、m4個の基のそれぞれが有する重合性基含有基の数は、2以下であることが好ましく、1であることが好ましい。上記化合物Cは、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
【0142】
上記R42、R43及びR44に用いられる炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基については、上記R101として用いられる基と同様とすることができる。
上記R44は、複数のR44同士が、それぞれ結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成していていても構わない。
上記R102については、上記一般式(A)におけるR102と同じである。
上記R42、R43及びR44に用いられる重合性基含有基は、上記「(1)重合性基含有基」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0143】
上記R42及びR43は、上記重合性基含有基以外の基である場合、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、置換基を有していない無置換の炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましい。なかでも、Cで表される基であることが好ましく、特にtert-ブチル基であることが好ましい。
上記R42及びR43は、少なくとも一方が、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、R42及びR43の両者が、炭素原子数1~40のアルキル基であることがより好ましく、なかでも、R42及びR43の両者が、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましい。
上記R42及びR43の両者は、例えば、tert-ブチル基等の置換基を有していない無置換の炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましい。
上記R42及びR43が、上述の基であることで、上記化合物Cを含む潜在性添加剤は、耐熱性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
【0144】
上記R44は、上記重合性基含有基以外の基である場合、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましい。
上記R44が、上述の基であることで、上記化合物Cを含む潜在性添加剤は、耐熱性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
【0145】
上記c1は、0~2の整数であるが、合成の容易さの観点から、0~1であることが好ましい。
【0146】
上記Xは、m4価の基又はm4価の重合性基含有基である。このようなXとしては、上記「(3-1)第1実施態様」に記載のXと同様の内容とすることができる。
【0147】
上記結合基Xのベンゼン環との結合位置は、任意の位置とすることできるが、例えば、上記R102-O-の結合位置に対して、パラ位であることが好ましい。
上記結合位置が、上述の位置であることで、上記化合物Cを含む潜在性添加剤は、耐熱性等により優れた硬化物を形成可能なものとなるからである。また、上記化合物Cは、合成容易となるからである。
【0148】
化合物Cの具体例としては、例えば、下記で表される化合物等を挙げることができる。
【0149】
【化23】
【0150】
【化24】
【0151】
(3-3)その他
上記化合物Aの製造方法は、所望の構造を得ることができる方法であれば特に限定されない。上記製造方法は、例えば、国際公開第2000/61685号に記載の方法と同様の方法により、環構造Aを有する化合物に対して重合性基含有基を導入し、次いで、国際公開第2014/021023号に記載の方法と同様の方法により、R102によりフェノール性水酸基が保護された化合物を合成する方法等を挙げることができる。
【0152】
上記化合物Aの種類は、潜在性添加剤中に1種類のみであっても、2種類以上であっても差し支えない。上記潜在性添加剤は、例えば、2種類以上5種類以下の化合物Aを含むことができる。
例えば、上記化合物Aとして、化合物B1~B3と、化合物Cと、を組み合わせて用いることができる。この場合、紫外線吸収能及び酸化防止能の両者に優れた硬化物を得ることが容易となる。
【0153】
上記化合物Aの含有量は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤を得ることができれば制限はなく、潜在性添加剤の種類等に応じて適宜設定されるものである。
上記化合物Aの含有量は、例えば、上記潜在性添加剤の固形分100質量部中に、100質量部、すなわち、上記潜在性添加剤が上記化合物Aであるものとすることができる。
また、上記含有量は、潜在性添加剤の固形分100質量部中に、100質量部未満、すなわち、潜在性添加剤が上記化合物A及びその他の成分を含む組成物とすることもでき、例えば、10質量部より多く99.99質量部以下とすることができる。
本発明においては、組成物に添加することによる耐光性、耐熱性等の機能向上が容易となることから、上記含有量の下限が、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、特に、90質量部以上であることが好ましい。
また、粒径制御等が容易になること等から、上記含有量の上限は、99質量部以下であることが好ましく、なかでも、95質量部以下であることが好ましく、特に、90質量部以下であることが好ましい。
なお、固形分とは、溶剤以外のすべての成分を含むものである。
また、上記化合物Aの含有量は、化合物Aとして2種類以上を含む場合には、それらの合計量を示すものである。
【0154】
上記化合物Aは、加熱により保護基R102が脱離するものであることが好ましい。
上記保護基R102が脱離する温度としては、例えば、100℃以上300℃以下とすることができ、120℃以上250℃以下であることが好ましく、150℃以上230℃以下であることがより好ましい。
脱離温度は、示差熱分析法により5重量%の熱減量を示した温度とすることができる。
測定方法としては、例えば、STA(示差熱熱重量同時測定装置)を用い、試料約5mg、窒素200mL/min雰囲気下、常圧下で、昇温開始温度30℃、昇温終了温度500℃、昇温速度10℃/minで昇温した際における、試料についての熱減量を測定し、30℃時点の試料重量に対して5%減量した時点の温度を5%重量減少温度とすることができる。
示差熱熱重量同時測定装置としては、STA7000((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いることができる。
【0155】
2.その他の成分
上記潜在性添加剤は、上記化合物A以外のその他の成分を含むことができる。
上記その他の成分としては、例えば、後述する「B.組成物」の「2.樹脂」、「3.その他の成分」の項に記載の内容を挙げることができる。
上記潜在性添加剤は、上記その他の成分として、上記「2.樹脂」の項に記載の非感光性樹脂を含むことが好ましい。
上記その他の成分の含有量は、上記潜在性添加剤の用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、潜在性添加剤の固形分100質量中に、50質量部以下とすることができ、10質量部以下であることが好ましい。上記潜在性添加剤は、化合物Aの含有割合を大きいものとすることが容易となり、組成物の耐光性、耐熱性等の機能向上が容易となるからである。
【0156】
3.潜在性添加剤
上記潜在性添加剤の製造方法は、上記化合物A及び必要に応じてその他の成分を所望の配合量で含むものとすることができる方法であれば制限はない。
上記潜在性添加剤が、化合物A及びその他の成分を含む場合には、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。
【0157】
上記潜在性添加剤の用途としては、樹脂等を含む組成物への添加用途を挙げることができ、なかでも、耐光性、耐熱性等が要求される用途、組成物中に潜在性添加剤が均一に分散することが要求される用途等が好ましい。
【0158】
上記潜在性添加剤が添加される組成物の用途としては、熱硬化性塗料、光硬化性塗料或いはワニス、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、フォトスペーサ、ブラックカラムスペーサ、プラズマ表示パネル用の電極材料、タッチパネル、タッチセンサー、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、歯科用組成物、光造形用樹脂、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、液状及び乾燥膜の双方、はんだレジスト、種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料、3D実装用フォトレジスト材料或いは保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
また、上記用途としては、上記潜在性添加剤が潜在性紫外線吸収剤として用いる場合には、製品としての使用時等に耐久性が要求される用途に限定されず、例えば、製造過程において紫外線照射等を受ける部材にも好適に用いることができる。
製造過程において紫外線照射等を受ける部材としては、例えば、表面の濡れ性向上、密着性向上等の表面改質を図るために、紫外線等の照射を受ける部材を挙げることができる。
上述の濡れ性向上、密着性向上等が要求される部材としては、他の部材と積層される部材を挙げることができ、例えば、プラズマ表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等の各種画像表示、タッチパネル等の各種センサ、回路基板等を構成する部材としてカラーフィルタ、フォトスペーサ、輝度向上板、導光板、TFT基板、配向膜、液晶層、絶縁膜、スピーカーなどの音響素子、撮像用レンズ、キーパッド、HDD用磁気ヘッドなどの製造過程での表面改質や部材の劣化防止が要求される部材が挙げられる。
上述の製造過程での表面改質や部材の劣化防止が要求される部材としては、接着剤を介して他の部材と積層される部材、塗料等により他の部材により被覆される部材も挙げることができ、例えば、自動車、航空機の内外装部材等の運搬機器、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品、住宅建材等の各種用途の構成部材も挙げることができる。
また、基材上にパターン状の部材を形成した後、露出する基材の表面改質等のために基材と共に上記部材に対して紫外線照射等を実施する場合がある。上記用途としては、このような製造過程において表面改質等が要求される部材と共に用いられる部材にも好ましく用いることができる。上記用途としては、例えば、プラスチックフィルムやガラス、シリコンウエハー、各種エンジニアリングプラスチック、光学レンズ、金属表面、めっき、セラミック、金型などの表面洗浄や表面改質などが要求される部材と共に用いられる部材が挙げられる。
【0159】
B.組成物
次に、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、下記一般式(A)で表される構造及び重合性基含有基を有する化合物(化合物A)と、樹脂と、を含むものである。
【0160】
【化25】
(式中、環Aは、五員環若しくは六員環の芳香環、又は五員環若しくは六員環の複素環を表し、
101は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はシリル基を表し、
a1は、1以上の整数を表し、
a2は、1以上の整数を表す。)
【0161】
より具体的には、上記一般式(A)中、環Aは、五員環若しくは六員環の芳香環、又は五員環若しくは六員環の複素環を表し、
101は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
102は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基、シリル基、
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基の水素原子の1つ又2つ以上が下記群1から選ばれる基で置換された基、
又は
前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基若しくは複素環含有基中のメチレン基の1つ又2つ以上が下記群2から選ばれる二価の基で置換された基を表し、
a1は、1以上の整数を表し、
a2は、1以上の整数を表す。
(群1:エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基の塩、スルホ基の塩、ホスホン酸基の塩、リン酸基の塩)
(群2:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)、-S-S-、-SO-、酸素原子が隣り合わない条件でこれらを組み合わせた基)
【0162】
本発明の組成物は、上記化合物Aを含むことで、耐光性、耐熱性等に優れたものとなる。また、上記潜在性添加剤が均一に分散した組成物を得ることができる。
【0163】
以下、本発明の組成物の各成分について詳細に説明する。
【0164】
1.化合物A
上記化合物Aの含有量としては、上記組成物の用途等に応じて適宜設定されるものである。例えば、組成物の固形分100質量部中、0.01質量部以上20質量部以下とすることができ、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましい。組成物に耐光性、耐熱性等を安定的に付与可能となるからである。
【0165】
上記化合物Aについては、上記「A.化合物及び潜在性添加剤」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0166】
2.樹脂
上記樹脂としては、重合性基を有する重合性化合物、重合性基を有しない重合体のいずれも用いることができる。
上記樹脂は、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能なものとなるという効果をより効果的に発揮可能となる観点からは、重合性化合物を含むことが好ましい。
上記樹脂は、耐光性、耐熱性等を付与するタイミングの自由度に優れるという観点からは、重合性化合物に限らず、重合性基を有しない重合体も好ましく用いることができる。
【0167】
(1)重合性化合物
上記重合性化合物は、重合性基を有するものである。
上記重合性化合物は、重合性基の種類、すなわち、重合反応の種類により特性が異なるものであり、例えば、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性基を有するカチオン重合性化合物、アニオン重合性基を有するアニオン重合性化合物等を挙げることができる。
本発明においては、上記重合性化合物は、上記化合物Aが有する重合性基と同一種類の重合性基を有することが好ましい。
具体的には、上記化合物Aが重合性基としてラジカル重合性基を有する場合には、上記重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。
化合物Aと重合性化合物とが同一種類の重合性基を有することで、これらの間で容易に重合が起こる。そして、硬化物において、化合物A及びそのR102脱離物の析出、昇華等を抑制することができるからである。また、その結果、耐光性等に優れた硬化物を形成することが容易となるからである。
【0168】
(1-1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するものである。
上記ラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合可能なものであれば制限はなく、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基等を挙げることができる。
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を1以上有するものであり、ラジカル重合性基を1つ有する単官能化合物又はラジカル重合性基を2以上有する多官能化合物のいずれでも構わない。
【0169】
上記ラジカル重合性化合物は、酸価を有する化合物又は酸価を有しない化合物のいずれでも構わない。
上記酸価を有する化合物としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基等を有するアクリレート化合物、メタクリレート化合物等を挙げることができる。
上記酸価を有しない化合物としては、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタンメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシメタクリレート樹脂、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル等のカルボキシル基等を有しないアクリレート化合物、メタクリレート化合物を挙げることができる。
上記ラジカル重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。例えば、ラジカル重合性化合物として、エチレン性不飽和基を有し、酸価を有する化合物とエチレン性不飽和基を有し、酸価を有しない化合物とを組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合性化合物を2種以上混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用することができる。
このようなラジカル重合性化合物等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるラジカル重合性化合物等を挙げることができる。
【0170】
(1-2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基を有するものである。
上記カチオン重合性基としては、カチオンにより重合可能なものであれば制限はなく、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基等を挙げることができる。
カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ基を有するエポキシ化合物及びオキセタン基を有するオキセタン化合物等の環状エーテル基を有する化合物、並びにビニルエーテル基を有するビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
このようなカチオン重合性化合物等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるカチオン重合性化合物等を挙げることができる。
上記カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基を1以上有するものであり、カチオン重合性基を1つ有する単官能化合物又はカチオン重合性基を2以上有する多官能化合物のいずれでも構わない。
上記カチオン重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。カチオン重合性化合物を2種以上混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用することができる。
カチオン重合性化合物は、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤等のカチオン開始剤と共に用いることができる。
【0171】
(1-3)アニオン重合性化合物
アニオン重合性化合物は、アニオン重合性基を有するものである。
上記アニオン重合性基としては、アニオンにより重合可能なものであれば制限はなく、エポキシ基、ラクトン基等を挙げることができる。
上記アニオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ基を有するエポキシ化合物、ラクトン基を有するラクトン化合物、アクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物等を挙げることができる。
上記ラクトン化合物としては、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトン等を挙げることができる。
上記エポキシ化合物としては、上記カチオン重合性化合物として例示したエポキシ化合物を挙げることができる。また、アクリロイル基、メタクリロイル基等を有する化合物としては、上記ラジカル重合性化合物として例示したものを挙げることができる。
上記アニオン重合性化合物は、アニオン重合性基を1以上有するものであり、上記重合性基を1つ有する単官能化合物又は上記重合性基を2以上有する多官能化合物のいずれでも構わない。
上記アニオン重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。アニオン重合性化合物を2種以上混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用することができる。
【0172】
(1-4)その他の重合性化合物
上記重合性化合物としては、高分子量化が可能な官能基を有するものであれば制限はなく、例えば、特許4932070号公報に記載のフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等の熱硬化性樹脂も挙げることができる。
上記ポリイミドとしては、加熱硬化して高分子量化することでポリイミドとなるものを用いることができ、具体的には、ポリイミド前駆体を含むものを挙げることができる。上記ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸等を含むものを挙げることができる。
上記ポリアミドイミド樹脂の市販品としては、例えば、HI406(日立化成社製、商品名)などを挙げることができる。
上記ポリイミドとしては、例えば、Uイミド(ユニチカ社製、商品名)、U-ワニス(宇部興産社製、商品名)、HCIシリーズ(日立化成社、商品名)、オーラム(三井化学社製、商品名)などを挙げることができる。
【0173】
(2)重合性基を有しない重合体
上記重合体は、重合性基を有しないものである。
このような重合体としては、繰り返し構造を含むものであれば制限はなく、感光性を有する感光性樹脂、感光性を有しない非感光性樹脂等を挙げることができる。
【0174】
(2-1)感光性樹脂
上記感光性樹脂は、感光性を有するものであり、例えば、酸発生剤と共に用いられ、酸の作用でエステル基又はアセタール基等の化学結合の切断等、現像液に対する溶解性が増加する方向に変化するポジ型樹脂を挙げることができる。
このようなポジ型樹脂としては、例えば、特開2016-89085号公報に記載のレジストベース樹脂又は化合物等を挙げることができる。
【0175】
(2-2)非感光性樹脂
上記非感光性樹脂としては、感光性を有しないものであれば制限はなく、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0176】
上記非感光性樹脂としては、上述の熱可塑性樹脂以外にも、国際公開2016/159103号公報に記載のポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド樹脂(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリエステル等の熱可塑性樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム等のエラストマーを挙げることができる。
上記非感光性樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂等も挙げることができる。
【0177】
上記非感光性樹脂としては、上記重合性化合物の重合物も用いることができる。すなわち、上記組成物は、重合性化合物と、化合物Aとを含む組成物の硬化物であっても構わない。
【0178】
(2-3)重合体
上記重合体の重量平均分子量(Mw)は、組成物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、1500以上とすることができ、1500以上300000以下とすることができる。
なお、上記重量平均分子量Mwは、例えば、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として測定して得ることができる。
また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0179】
3.その他の成分
上記組成物は、上記化合物A及び樹脂以外に、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
上記その他の成分としては、ラジカル重合性化合物と共に用いるラジカル重合開始剤、カチオン重合性化合物と共に用いる、又は感光性化合物と共に酸発生剤として用いるカチオン重合開始剤、アニオン重合性化合物と共に用いるアニオン重合開始剤等の重合開始剤等を挙げることができる。
このようなラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるラジカル重合開始剤及びカチオン開始剤等を挙げることができる。
また、上記アニオン重合開始剤等としては、より具体的には、特開2017-073389号公報に記載される光アニオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤等を挙げることができる。
上記その他の成分は、重合開始剤以外にも、上記各成分を分散又は溶解する溶剤、着色剤、無機化合物、着色剤及び無機化合物等を分散させる分散剤、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン等の添加剤を挙げることができる。
上記添加剤は、公知の材料を用いることができ、例えば、国際公開第2014/021023号公報に記載のものを用いることができる。
【0180】
上記その他の成分の合計の含有量は、組成物の固形分100質量部中に30質量部以下とすることができる。
【0181】
C.硬化物
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、上述の組成物の硬化物である。上述の組成物を用いることで、硬化が容易となる。
【0182】
本発明の硬化物は、上述の組成物を用いるものである。
以下、本発明の硬化物について詳細に説明する。
【0183】
1.組成物
上記組成物は、樹脂として重合性化合物を含むものである。
このような組成物の内容については、上記「B.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0184】
2.硬化物
上記硬化物は、重合性化合物の重合物を含むものである。
上記硬化物に含まれる未反応の重合性化合物の残存率としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、硬化物100質量部に対して10質量部以下であり、1質量部以下であることが好ましい。
【0185】
上記硬化物は、化合物Aを含むものである。
上記硬化物に含まれる化合物Aは、化合物Aに含まれる重合性基を介して重合性化合物等と重合していることが好ましい。硬化物は、耐光性、耐熱性等に優れたものとなるからである。
【0186】
上記硬化物は、上記組成物の硬化物であり、硬化物に含まれる上記化合物Aは、不活性化状態である場合があり、活性状態である場合もあるが、活性状態であることが好ましい。上記硬化物は、耐光性、耐熱性等に優れたものとなるからである。
不活性化状態及び活性状態については、上記化合物A中の保護基R102が脱離していない状態であれば不活化状態と判断でき、保護基R102が脱離している状態であれば活性状態と判断できる。
上記不活性化状態は、より具体的には、化合物Aに含まれる保護基R102が脱離した後の化合物(以下、化合物Fと称する場合がある。)の割合(化合物F/化合物A+化合物F)が、20/100以下であることが好ましく、10/100以下であることがより好ましく、5/100以下であることが特に好ましく、0/100であることが最も好ましい。上記割合が上述の範囲であることで、潜在性添加剤の保存安定性に優れるという効果をより効果的に発揮できるからである。
保護基R102が脱離している場合、上記硬化物は、化合物Aから保護基R102が脱離した化合物を含み、さらに、上記R102由来の脱離物を含む。
【0187】
上記硬化物は、溶剤を実質的に含まないものとすることができる。
上記硬化物に含まれる溶剤の含有量としては、例えば、硬化物100質量部に対して、1質量部以下とすることができ、0.5質量部以下とすることができる。
【0188】
上記硬化物の平面視形状については、上記硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、例えば、ドット状、ライン状等のパターン状とすることができる。
【0189】
上記硬化物の用途等については、上記「A.化合物及び潜在性添加剤」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0190】
上記硬化物の製造方法としては、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「D.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0191】
D.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の組成物に含まれる上記重合性化合物を重合する工程を有するものである。
【0192】
上述の工程を有することで、上記重合性化合物同士を重合できると共に、上記化合物Aは、化合物A同士及び/又は重合性化合物と重合できる。その結果、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を得ることができる。
【0193】
本発明の製造方法は、重合する工程を含むものである。
以下、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
なお、上述の組成物については、上記「B.組成物」の項に記載の内容と同様の内容であるため、ここでの記載は省略する。
【0194】
1.重合する工程
上記重合する工程は、上述の組成物に含まれる上記重合性化合物を重合する工程である。
上記重合方法は、重合性化合物及びこれと共に含まれる重合開始剤等の硬化剤の種類に応じて異なるものである。
例えば、上記組成物が、重合性化合物と共に重合開始剤として光重合開始剤を含む場合には、組成物に対して光照射を行い、重合性化合物同士を重合する方法を用いることができる。
組成物に照射される光としては、例えば、波長300nm~450nmの光を含むものを挙げることができる。
上記光照射の光源としては、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を挙げることができる。
上記照射される光としては、レーザー光を用いることができる。レーザー光としては、波長340~430nmの光を含むものを挙げることができる。
レーザー光の光源としては、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、及び半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものを挙げることができる。
なお、これらのレーザーを使用する場合には、上記組成物は、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素を含むことができる。
【0195】
上記重合方法として、例えば、組成物が、重合性化合物と共に重合開始剤として熱重合開始剤を含む場合には、組成物に対して加熱処理を行い、重合性化合物同士を重合する方法を用いることができる。
加熱温度は、上記組成物を安定的に硬化できれば制限はなく、60℃以上、好ましくは100℃以上300℃以下とすることができる。加熱温度は、組成物の塗膜表面の温度とすることができる。
加熱時間としては、10秒~3時間程度行うことができる。
【0196】
上記重合方法の種類は、1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を含むものであってもよい。
【0197】
2.その他の工程
上記硬化物の製造方法は、上記重合する工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を含むものであってもよい。
上記その他の工程としては、上記重合する工程前に、上記組成物に含まれる上記化合物Aから上記R102を脱離する工程、上記重合する工程後の組成物、すなわち、上述の組成物の硬化物に含まれる上記化合物Aから上記R102を脱離する工程、上記組成物を基材上に塗布する工程等を挙げることができる。
【0198】
上記脱離する工程における化合物Aから上記R102を脱離する方法については、後述する「E.第2組成物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0199】
上記塗布する工程における組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を挙げることができる。
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いることができ、基材から他の被着体に転写して用いることもできる。
【0200】
E.第2組成物の製造方法
次に、第2組成物の製造方法について説明する。
本発明の第2組成物の製造方法は、上述の組成物に含まれる上記化合物(化合物A)から上記R102を脱離する工程を有するものである。
【0201】
上述の工程を有することで、上記化合物A中のR102により保護されていたフェノール性水酸基が、保護されていないフェノール性水酸基となり、紫外線吸収能、酸化防止能等を発揮することが可能となる。その結果、耐光性、耐熱性等に優れた組成物を得ることができる。
【0202】
本発明の第2組成物の製造方法は、保護基を脱離する工程を有するものである。
以下、本発明の第2組成物の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0203】
1.保護基を脱離する工程
本工程は、上述の組成物に含まれる上記化合物Aから、保護基である上記R102を脱離する工程である。
上記化合物Aから上記R102を脱離する方法としては、上記保護基R102を安定的に脱離できる方法であれば差し支えなく、例えば、上記組成物に対して加熱処理を行う方法を挙げることができる。
上記加熱処理における加熱温度は、保護基R102が脱離する温度であれば制限はなく、例えば、保護基R102の脱離温度以上の温度とすることができる。
また、上記加熱温度は、上記組成物が酸触媒、塩基触媒等を含む場合には、保護基R102単独で観察される脱離温度以下とすることができる。
上記加熱処理の温度は、例えば、50℃以上250℃以下とすることができ、なかでも60℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上200℃以下であることがより好ましい。上記加熱処理の温度であることで、樹脂の劣化等を抑制できるからである。上記組成物の温度は、組成物表面の温度とすることができる。
【0204】
本工程により、上記化合物Aから保護基R102が脱離した化合物が得られる。
上記保護基R102が脱離した化合物は、潜在性が解除された状態であり、紫外線吸収剤としての機能を発揮するものとなる。
なお、上述の組成物については、上記「B.組成物」の項に記載の内容と同様の内容であるため、ここでの記載は省略する。
【0205】
2.その他の工程
上記製造方法は、保護基を脱離する工程以外に、必要に応じてその他の工程を含むことができる。
上記その他の工程としては、例えば、上記組成物を基材上に塗布する工程、上記組成物が樹脂として重合性化合物を含むものである場合には、上記重合性化合物を重合する工程、上記組成物が樹脂として感光性樹脂を含む場合には、感光性樹脂を現像する工程等を挙げることができる。
上記塗布する工程及び重合する工程については、上記「D.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができる。
上記現像する工程における感光性樹脂の現像方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、酸の作用で現像液に対する溶解性を増加し、次いで、現像液で現像する方法等を挙げることができる。
【0206】
F.その他
1.上記一般式(A)で表される構造と、重合性基含有基と、を有する化合物を含む潜在性添加剤。
2.上記化合物が、上記一般式(B1)、(B2)、(B3)又は(C)で表される化合物である1に記載の潜在性添加剤。
3.上記一般式(B1)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、上記一般式(B2)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、上記一般式(B3)中のR及びRの少なくとも1つが、重合性基含有基であり、上記一般式(C)中のR44の少なくとも1つが、上記重合性基含有基である2に記載の潜在性添加剤。
4.上記化合物が、上記一般式(B3)で表される化合物を含み、
上記一般式(B3)中のR31に対してメタ位のR、及びR33に対してメタ位のRの少なくとも1つが、重合性基含有基である2又は3に記載の潜在性添加剤。
5.上記R102が、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であり、上記アルキル基、上記アルケニル基、上記アリール基、上記アリールアルキル基及び上記複素環含有基が、酸素原子側末端のメチレン基が-CO-O-に置き換えられているものである1から4までのいずれかに記載の潜在性添加剤。
6.上記一般式(A)で表される構造及び重合性基含有基を有する化合物と、樹脂と、を含む組成物。
7.上記樹脂が、重合性化合物を含む6に記載の組成物。
8.7に記載の組成物の硬化物。
9.7に記載の組成物に含まれる上記重合性化合物を重合する工程を有する硬化物の製造方法。
10.6又は7に記載の組成物に含まれる上記化合物から上記R102を脱離する工程を有する組成物の製造方法。
【0207】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0208】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0209】
[実施例1]
4,4’,4’’-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリル)トリス(2-メチルベンゼン-1,3-ジオール)(60mmol)、炭酸カリウム(180mmol)、ジメチルアセトアミド(DMAc)(120mL)を反応容器に仕込み、135℃まで昇温した。昇温後、3-クロロ-1-プロパノール(200mmol)を滴下し、10時間撹拌した。反応終了後、トルエン(300mL)と水(300mL)を入れ、油相を分離し、水洗を3回行った。油相を減圧下で脱溶媒した後、晶析(DMF 800mL)した。
得られた固体(1当量)、パラトルエンスルホン酸(PTS)/HO(0.1当量)、パラメトキシフェノール(0.05当量)、トルエン(800mL)を反応容器に仕込み、110℃まで昇温した。昇温後、メタクリル酸(6当量)を滴下し、10時間撹拌した。反応終了後、反応液を水洗し、減圧下で脱溶媒した後、晶析(ジメチルホルムアミド(DMF)/酢酸ブチル=100/300)した。
さらに、得られた固体(1当量)、二炭酸ジ-tert-ブチル(5当量)、ピリジン(300mL)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、室温で4-ジメチルアミノピリジン(0.25当量)を入れ、60℃で3時間撹拌した。反応終了後、トルエン(500mL)と水(500mL)を入れ、油相を分離し、水洗を3回行った。油相を減圧下で脱溶媒した後、晶析(メタノール 300mL)を行い、下記一般式(B-22)で表される化合物からなる潜在性添加剤(潜在性紫外線吸収剤)を得た。
得られた化合物のH-NMR及びIRの測定結果を下記表1及び表2に示す。
【0210】
[実施例2~3]
3-クロロ-1-プロパノールに代えて6-クロロ1-ヘキサノール又は2-(2-クロロエトキシ)エタノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、下記一般式(B-23)及び(B-24)で表される化合物を合成し、この化合物からなる潜在性添加剤(潜在性紫外線吸収剤)を得た。得られた化合物のH-NMR及びIRの測定結果を下記表1及び表2に示す。
【0211】
[実施例4]
2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(50mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(75mmol)、ピリジン(200mL)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、室温で4-ジメチルアミノピリジン(12mmol)を入れ、60℃で3時間撹拌した。反応終了後、トルエン(500mL)と水(500mL)を入れ、油相を分離し、水洗を3回行った。油相を減圧下で脱溶媒した後、晶析(メタノール 300mL)を行い、下記一般式(B-3)で表される化合物からなる潜在性添加剤(潜在性紫外線吸収剤)を得た。得られた化合物のH-NMR及びIRを測定し、構造を確認した。
【0212】
【化26】
【0213】
[実施例5]
2-(4-(4,6-ビス(4-(ヘキサオキシ)-2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒロドキシ-2-メチルフェノキシ)エチルメタクリレート(50mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(200mmol)、ピリジン(200mL)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、室温で4-ジメチルアミノピリジン(12mmol)を入れ、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(500mL)と水(500mL)を入れ、油相を分離し、水洗を3回行った。油相を減圧下で脱溶媒した後、シリカカラム精製し、メタノールで晶析し、下記一般式(B-31)で表される化合物からなる潜在性添加剤(潜在性紫外線吸収剤)を得た。得られた化合物のH-NMR及びIRの測定結果を下記表1及び表2に示す。
【0214】
【化27】
【0215】
[実施例6]
2-(tert-ブチル)-6-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール(60mmol)、炭酸カリウム(75mmol)、2-メルカプトエタノール(75mmol)、DMF(60mL)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、110℃で4時間撹拌した。反応終了後、トルエン(500mL)と水(500mL)を入れ、油相を分離し、水洗を3回行った。油相を60mLまで濃縮し、そこにp-トルエンスルホン酸(3mmol)、メタクリル酸(60mmol)を入れ、ディーン・スターク装置を用いて、脱水縮合反応を行った。反応終了後、トルエン(100mL)を追加し、水洗を3回行った。油相を濃縮し、二炭酸ジ-tert-ブチル(75mmol)、ピリジン(100mL)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、室温で4-ジメチルアミノピリジン(12mmol)を入れ、40℃で2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル(500mL)と水(500mL)を入れ、油相を分離し、水洗を3回行った。油相を減圧下で脱溶媒した後、シリカカラム精製し、下記一般式(B-32)で表される化合物からなる潜在性添加剤(潜在性紫外線吸収剤)を得た。得られた化合物のH-NMR及びIRの測定結果を下記表1及び表2に示す。
【0216】
【化28】
【0217】
【表1】
【0218】
【表2】
【0219】
[実施例7]
3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(50mmol)、ペンタエリスリトール(50mmol)、トルエン(300mL)を反応容器に仕込み、パラトルエンスルホン酸(PTS)/HO(5mmol)を入れ、110℃に昇温した。昇温後、3時間反応させた後、アクリル酸(150mmol)を滴下し、8時間撹拌した。反応終了後、反応液を水洗し、油相を減圧下で脱溶媒して、下記一般式(C-7)で表される化合物からなる潜在性添加剤(潜在性酸化防止剤)を得た。得られた化合物のH-NMR及びIRを測定した。
【0220】
【化29】
【0221】
[実施例2-1~2-17及び比較例2-1~2-12]
下記表3~5に記載の配合に従って、実施例で得た潜在性添加剤(潜在性紫外線吸収剤及び潜在性酸化防止剤)、紫外線吸収剤及び酸化防止剤、樹脂(酸価を有する重合性化合物、酸価を有しない重合性化合物)、光重合開始剤、添加剤(シランカップリング剤、レベリング剤)、溶剤及び着色剤を配合して組成物を得た。
また、各成分は以下の材料を用いた。
なお、表中の配合量は、各成分の質量部を表すものである。
【0222】
[製造例1]樹脂No.1の製造
1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕インダンの30.0g、アクリル酸7.52g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.080g、テトラブチルアンモニウムクロリド0.183g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)11.0gを反応容器に仕込み、90℃で1時間、105℃で1時間及び120℃で17時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、無水コハク酸8.11g、テトラブチルアンモニウムクロリド0.427g及びPGMEA11.1gを加えて、100℃で5時間撹拌した。さらに、1,1-ビス〔4-(2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニル〕インダン12.0g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.080g及びPGMEA0.600gを加えて、90℃で90分、120℃で5時間撹拌後、PGMEA24.0gを加えて、PGMEA溶液として樹脂No.1を得た(Mw=4900、Mn=2250、酸価(固形分)47mg・KOH/g、固形分45.0質量%)。
【0223】
(潜在性紫外線吸収剤)
B-1:上記一般式(B-22)で表される化合物(実施例1で得られた潜在性添加剤)
B-2:上記一般式(B-23)で表される化合物(実施例2で得られた潜在性添加剤)
B-3:上記一般式(B-24)で表される化合物(実施例3で得られた潜在性添加剤)
B-4:上記一般式(B-3)で表される化合物(実施例4で得られた潜在性添加剤)
B-5:上記一般式(B-31)で表される化合物(実施例5で得られた潜在性添加剤)
B-6:上記一般式(B-32)で表される化合物(実施例6で得られた潜在性添加剤)
【0224】
(紫外線吸収剤)
B’-1:下記一般式(B’-1)で表される化合物
B’-2:下記一般式(B’-2)で表される化合物
B’-3:下記一般式(B’-3)で表される化合物
B’-4:下記一般式(B’-4)で表される化合物
【0225】
【化30】
【0226】
(潜在性酸化防止剤)
C-1:上記一般式(C-7)で表される化合物(実施例7で得られた潜在性添加剤)
【0227】
(酸化防止剤)
C’-1:下記一般式(C’-1)で表される化合物
C’-2:下記一般式(C’-2)で表される化合物
【0228】
【化31】
【0229】
(酸価を有する重合性化合物)
D-1:ラジカル重合性化合物(昭和電工社製リポキシSPC-1000 固形分29質量%PGMEA溶液)
D-2:製造例1で製造した樹脂No.1
【0230】
(酸価を有しない重合性化合物)
E-1:ラジカル重合性化合物(東亜合成社製アロニックスM-450(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート3~4の混合物)
E-2:ラジカル重合性化合物(日本化薬社製カヤラッドDPHA(ジペンタエリスリトール ペンタ及びヘキサアクリレートの混合物))
E-3:ラジカル重合性化合物(新中村化学工業社製NKオリゴEA-1020(ビスフェノールA型エポキシアクリレート)
E-4:ラジカル重合性化合物(根上工業社製アートレジンUN-3320(ウレタンアクリレート))
【0231】
(光重合開始剤)
F-1:下記式(F1)で表される化合物(オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤)
F-2:下記式(F2)で表される化合物(オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤)
F-3:BASF社製イルガキュアTPO(ホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤)
F-4:下記式(F3)で表される化合物(アミノアセトフェノン系ラジカル重合開始剤)
【0232】
【化32】
【0233】
(添加剤)
G-1:信越化学工業社製シランカップリング剤KBE-403(シランカップリング剤)
G-2:FZ-2122(東レ・ダウコーニング社製、固形分1%のPGMEA溶液 レベリング剤)
【0234】
(溶剤)
H-1:PGMEA
H-2:メチルエチルケトン(MEK)
H-3:ジメチルアセトアミド(DMAc)
【0235】
(着色剤)
I-1:Acid Red52
I-2:下記式(I-2)で表されるペンタメチンシアニン
【0236】
【化33】
【0237】
[評価]
実施例及び比較例の組成物について、下記評価を行った。
【0238】
1.感度評価1
各実施例及び比較例で調製した組成物のうち、酸価を有する重合性化合物を含む実施例2-1~2-9、2-13~2-17及び比較例2-1~2-12の組成物の感度評価として、下記線幅感度の評価を行った。
まず、上記実施例及び比較例の各組成物を、ガラス基板上にスピンコート(500rpm、2秒間、900rpm、5秒間)し、乾燥後(プリベーク後)の膜厚が10μmとなる塗膜を形成した。
次いで、塗膜に対して、ホットプレートを用いて、90℃で90秒間プリベークを行い、光源として高圧水銀ランプを用いてマスク(開口部の線幅20μm)を介して露光(40mJ/cm)し、硬化物を得た。
次いで、現像液として2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、よく水洗した後、オーブンを用いて、230℃で30分ポストベークを行い、パターンを定着させた。
得られたパターンの線幅を電子顕微鏡で測定し、以下の基準で線幅感度の評価を行った。結果を下記表3~5に示す。
また、得られたパターンの膜厚を、触針式表面形状測定器を使用して測定し、以下の基準で残膜感度の評価を行った。結果を下記表3~5に示す。
【0239】
(線幅感度)
〇:硬化物の線幅/20μmが1.0以上である。
×:硬化物の線幅/20μmが1.0未満である。
なお、線幅感度が「〇」であると、組成物は硬化阻害の発生が抑制され、十分に硬化したことを示す。
【0240】
(残膜感度)
〇:硬化物の膜厚/10μmが0.75以上である。
×:硬化物の膜厚/10μmが0.75未満である。
なお、残膜感度が「〇」であると、組成物の硬化阻害の発生が抑制され、十分に硬化したことを示す。
【0241】
2.感度評価2
実施例及び比較例で調製した組成物のうち、酸価を有する重合性化合物を含まない実施例18~20及び比較例17~19の組成物の感度評価として、ステップタブレットを用いて評価を行った。
具体的には、上記組成物を、PETフィルムにバーコーターで約3μmの厚さに塗布した。
次いで、80℃で3分間プリベークを行った後、光源として超高圧水銀ランプ(UL750)を用いて露光した(20mW/cm)。なお、露光は、露光光量が、400mJとなるように行った。
この際、光感度を測定できるように、光透過率が段階的に少なくなるように作られたネガフィルム(光学密度0.05を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を用いた。
次いで、PGMEAを用いて、25℃の環境下、10秒間かけ洗いを行って現像した。
次いで、80℃で30分間乾燥した。
次いで、PETフィルム上に形成された硬化物のステップタブレットの段数を測定することにより光感度を評価した。その結果を下記表3~5に示す。
なお、ステップタブレットの段数が高いほど光感度が高いことを示す。
また、ステップタブレットの段数が、10以上であると、組成物は硬化阻害の発生が抑制され、十分に硬化したことを示す。
【0242】
3.耐熱性
現像処理及び水洗を行わなかった以外は、「1.感度評価1」と同様にして評価用サンプルを得た。
次いで、オーブンを用いて、評価用サンプルを200℃で2時間熱処理する耐熱性試験を行った。
評価用サンプルの耐熱性試験前後の波長430nmでの透過率(%)の差((耐熱性試験前の透過率(%)-耐熱性試験前の透過率(%))を測定し、以下の基準で耐熱性評価を行った。
〇:透過率差(%)が耐熱性試験前の透過率に対して1%未満である。
△:透過率差(%)が耐熱性試験前の透過率に対して1%以上3%未満である。
×:透過率差(%)が耐熱性試験前の透過率に対して3%以上である。
なお、耐熱性評価が「〇」であると、硬化物は、耐熱性に優れ、次いで、「△」、「×」の順で、耐熱性に優れることを示す。
【0243】
4.耐光性
現像処理及び水洗を行わなかった以外は、「1.感度評価1」と同様にして評価用サンプルを得た。
次いで、スガ試験機製キセノン耐光性試験機テーブルサンXT-1500Lを用いて、評価用サンプルに対して96時間耐光性試験を実施した。
評価用サンプルの耐光性試験前後の波長430nmでの透過率(%)の差((耐光性試験前の透過率(%)-耐光性試験後の透過率(%))を測定し、以下の基準で耐光性評価を行った。
〇:透過率差(%)が耐光性試験前の透過率に対して3%未満である。
△:透過率差(%)が耐光性試験前の透過率に対して3%以上5%未満である。
×:透過率差(%)が耐光性試験前の透過率に対して5%以上である。
なお、耐光性評価が「〇」であると、硬化物は、耐光性に優れ、次いで、「△」、「×」の順で、硬化物は、耐光性に優れることを示す。
【0244】
5.HAZE評価
現像処理及び水洗を行わなかった以外は、「1.感度評価1」と同様にして評価用サンプルを得た。
次いで、評価用サンプルについて、ヘイズメーターを用いてヘイズ測定を行った。測定には日本電色製ヘイズメーターNDH5000を使用し、判定基準は下記の通りとした。
〇:HAZEが2未満
×:HAZEが2以上
なお、HAZEが大きいほど、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤の析出が多いことを示す。したがって、評価が〇であるほど、添加剤等の析出が少なく良好であることを示す。
【0245】
6.昇華性試験
実施例2-5、比較例2-2、比較例2-3で得られた組成物の昇華性試験として、以下の評価を行った。
まず、ガラス基板上に上記組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて90℃で90秒間プリベークを行った。
次いで、光源として高圧水銀ランプを用いて露光(100mJ/cm)して硬化膜を得た。この硬化膜の上に0.7mmのスペーサーとガラス基板を設置し、ホットプレートを用いて230℃2時間加熱した。
加熱後、硬化膜の上に設置したガラス基板の吸収スペクトルを測定した。結果を下記表6に示す。
なお、365nmの吸光度が低いほど、添加剤の昇華が少ないことを示す。
【0246】
【表3】
【0247】
【表4】
【0248】
【表5】
【0249】
【表6】
【0250】
[まとめ]
表3~5より、実施例の組成物は、本発明の潜在性添加剤を含むことで、硬化阻害を生じることなく、耐光性又は耐熱性に優れた硬化物を得られることが確認できた。
特に、実施例2-1と、比較例2-1との結果から、本発明の潜在性添加剤は、十分に硬化した硬化物を得られること、重合性基を介して樹脂と重合され、硬化物からの析出、昇華が少ないものとなること等により、紫外線吸収能、酸化防止能の経時変化の少ない硬化物が得られると推察される。
実施例2-2のHAZE評価結果を、比較例2-2及び比較例2-3の結果と比較すると、本発明の潜在性添加剤は、重合性基を有することで、硬化物からの析出が抑制されることが確認できた。
実施例2-2の感度評価結果を、比較例2-2~比較例2-4の結果と比較すると、本発明の潜在性添加剤は、フェノール性水酸基がR102により保護されていることで、感度に優れた組成物が得られることが確認できた。
表6の結果から、本発明の潜在性添加剤は、硬化物からの昇華性が低いことが確認できた。また、比較例2-2及び比較例2-3の結果から、フェノール性水酸基がR102により保護されていることで、十分に硬化した硬化物が得られる結果、添加剤の昇華が抑制されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明によれば、耐光性、耐熱性等に優れた硬化物を形成可能な潜在性添加剤及び組成物を提供することができる。