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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-08
(45)【発行日】2024-04-16
(54)【発明の名称】マニピュレーター
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023514745
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2021115292
(87)【国際公開番号】W WO2022052827
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】202010952374.9
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510182294
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING NAURA MICROELECTRONICS EQUIPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.8 Wenchang Avenue Beijing Economic-Technological Development Area, Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】グゥォ ハオ
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-67345(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145986(WO,A1)
【文献】特開2004-266202(JP,A)
【文献】特開2004-140058(JP,A)
【文献】特開2016-167531(JP,A)
【文献】特開2011-119347(JP,A)
【文献】特表2022-522420(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113113340(CN,A)
【文献】中国実用新案第211907410(CN,U)
【文献】国際公開第2011/077678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを搬送するためのマニピュレーターであって、
指構造及び複数の支持部材を備え、複数の前記支持部材は前記指構造に設置され、且つ同一円周上に間隔をあけて配置され、各前記支持部材は前記ウエハを支持するように前記ウエハのエッジに接触し、且つ前記ウエハを前記指構造に接触させることを回避するためのものであり、
各前記支持部材はいずれも前記ウエハを支持するための支持面を備え、前記支持面が水平面に対して傾斜する斜面であり、前記支持面を前記ウエハのエッジにのみ接触させるように、前記水平面に対する前記斜面の高さは前記円周の径方向において前記円周の中心から離れる方向に沿って徐々に大きくなり、
各前記支持部材はいずれも支持本体と、前記支持本体に設置される滑り止め用可撓性部材とを備え、前記滑り止め用可撓性部材に前記支持面が形成され、
前記滑り止め用可撓性部材が環状を呈し、且つ前記滑り止め用可撓性部材の横断面形状が前記支持面と前記ウエハとを点接触させることを満たすことを特徴とするマニピュレーター。
【請求項2】
前記斜面は平面であり、且つ前記水平面との夾角が1°~60°であることを特徴とする請求項に記載のマニピュレーター。
【請求項3】
前記夾角が5.75°であることを特徴とする請求項に記載のマニピュレーター。
【請求項4】
ウエハを搬送するためのマニピュレーターであって、
指構造及び複数の支持部材を備え、複数の前記支持部材は前記指構造に設置され、且つ同一円周上に間隔をあけて配置され、各前記支持部材は前記ウエハを支持するように前記ウエハのエッジに接触し、且つ前記ウエハを前記指構造に接触させることを回避するためのものであり、
各前記支持部材はいずれも前記ウエハを支持するための支持面を備え、前記支持面が水平面に対して傾斜する斜面であり、前記支持面を前記ウエハのエッジにのみ接触させるように、前記水平面に対する前記斜面の高さは前記円周の径方向において前記円周の中心から離れる方向に沿って徐々に大きくなり、
各前記支持部材はいずれも支持本体と、前記支持本体に設置される滑り止め用可撓性部材とを備え、前記滑り止め用可撓性部材に前記支持面が形成され、
前記支持本体に取付溝が形成され、前記滑り止め用可撓性部材は一部が前記取付溝の内部に設置され、残りの部分が前記取付溝の外部に設置されることを特徴とするマニピュレーター。
【請求項5】
各前記支持部材の前記支持面に少なくとも1つの表示線が設置され、各前記表示線がその中の1つのサイズのウエハエッジの前記支持面上での位置を表示するためのものであることを特徴とする請求項1又は4に記載のマニピュレーター。
【請求項6】
前記指構造は水平面に平行する方向において間隔をあけて設置される2つの指を備え、2つの前記指の間の間隔が前記ウエハを前記指に接触させることを回避するように設定されることを特徴とする請求項1又は4に記載のマニピュレーター。
【請求項7】
前記マニピュレーターはさらに位置決め部材及び締結部材を備え、前記位置決め部材は前記指構造に設置され、前記支持部材の前記指構造上での位置を制限するためのものであり、前記締結部材は前記支持部材を前記指構造に固定して接続するためのものであることを特徴とする請求項1又は4に記載のマニピュレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は半導体加工の技術分野に関し、具体的には、本発明の実施例はマニピュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体プロセスを行う過程において、ウエハを大気環境からプロセスチャンバーに徐々に搬送してプロセス処理を行う必要がある。この過程において、ウエハの搬送は一連の大気装置及び真空装置などで構成される搬送モジュールによって実現される必要がある。搬送モジュールには一般的に、伸縮や昇降などの運動によってウエハの搬送を実現するためのマニピュレーターが設置される。
【0003】
ウエハの裏面を処理する必要があるいくつかのプロセス、例えばウエハの裏面に金属を蒸着するプロセスの場合には、それはウエハの裏面にアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)などの金属を蒸着することであり、このようなプロセスはウエハを、裏面が上向きで表面が下向きである状態でプロセスチャンバーに搬送してプロセスを行う必要がある。しかしながら、従来のマニピュレーターはウエハの搬送過程においてウエハの表面に接触することとなり、これは表面が下向きであるウエハにとってウエハの表面に擦り傷又は接触痕跡が発生しやすく、また、ウエハの裏面に金属を蒸着するプロセスを行ったウエハは大きく反る場合が多く、これもウエハとマニピュレーターとの接触面積を増加させてウエハの表面の擦った程度が高くなることとなり、このため、後続のプロセスに悪影響を及ぼし、製品の歩留まりを大幅に低下させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は従来方式の欠点に対してマニピュレーターを提供し、ウエハの表面と指構造との接触を回避することができ、これによりウエハの表面に擦り傷及び接触痕跡が発生することを回避する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例はウエハを搬送するためのマニピュレーターを提供し、指構造及び複数の支持部材を備え、複数の前記支持部材は前記指構造に設置され、且つ同一円周上に間隔をあけて配置され、各前記支持部材は前記ウエハを支持するように前記ウエハのエッジに接触し、且つ前記ウエハを前記指構造に接触させることを回避するためのものである。
【0006】
選択肢として、各前記支持部材はいずれも前記ウエハを支持するための支持面を備え、前記支持面が水平面に対して傾斜する斜面であり、且つ前記水平面に対する前記斜面の高さは前記円周の径方向において前記円周の中心から離れる方向に沿って徐々に大きくなる。
【0007】
選択肢として、前記斜面は平面であり、且つ前記水平面との夾角が1°~60°である。
【0008】
選択肢として、前記夾角が5.75°である。
【0009】
選択肢として、各前記支持部材はいずれも支持本体と、前記支持本体に設置される滑り止め用可撓性部材とを備え、前記滑り止め用可撓性部材に前記支持面が形成される。
【0010】
選択肢として、前記滑り止め用可撓性部材が環状を呈し、且つ前記滑り止め用可撓性部材の横断面形状が前記支持面と前記ウエハとを点接触させることを満たす。
【0011】
選択肢として、前記支持本体に取付溝が形成され、前記滑り止め用可撓性部材は一部が前記取付溝の内部に設置され、残りの部分が前記取付溝の外部に設置される。
【0012】
選択肢として、各前記支持部材の前記支持面に少なくとも1つの表示線が設置され、各前記表示線がその中の1つのサイズのウエハエッジの前記支持面上での位置を表示するためのものである。
【0013】
選択肢として、前記指構造は水平面に平行する方向において間隔をあけて設置される2つの指を備え、2つの前記指の間の間隔が前記ウエハを前記指に接触させることを回避するように設定される。
【0014】
選択肢として、前記マニピュレーターはさらに位置決め部材及び締結部材を備え、前記位置決め部材は前記指構造に設置され、前記支持部材の前記指構造上での位置を制限するためのものであり、前記締結部材は前記支持部材を前記指構造に固定して接続するためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例の有益な効果は以下のとおりである。
本発明の実施例に係るマニピュレーターについては、それは指構造には同一円周上に間隔をあけて配置される複数の支持部材が設置され、各支持部材はウエハを支持するようにウエハのエッジに接触し、且つ該ウエハを指構造に接触させることを回避するためのものである。複数の支持部材がウエハのエッジのみに接触するため、ウエハを支持することが確保される上で、支持部材がウエハの表面に接触することを回避することができ、これによりマニピュレーターがウエハの表面に接触することでウエハの表面に擦り傷及び接触痕跡が発生することを回避することができる。それと同時に、上記複数の支持部材はさらにウエハを指構造に接触させることを回避することができ、これによりウエハが反ることで指構造に接触摩擦して擦り傷が生じることをある程度低減することができる。これにより、本発明の実施例に係るマニピュレーターはウエハの表面に擦り傷が生じることによる後続のプロセスへの影響を低減して製品の歩留まりを向上させることができ、それによりウエハの裏面に金属を蒸着するプロセスなどのウエハの表面を保護するプロセスを必要とする半導体プロセス装置に応用され得る。
【0016】
本発明の上記及び/又は追加の態様及び利点は以下に図面を参照して実施例を説明することによって明らかになって理解されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の実施例に係るウエハを支持するときのマニピュレーターの平面図である。
図1B】本発明の実施例に係るウエハの位置を表示するときのマニピュレーターの平面図である。
図1C】本発明の実施例に係るマニピュレーターの平面図である。
図2A】本発明の実施例に係るマニピュレーターの部分断面図である。
図2B】本発明の実施例に係るマニピュレーターの別の部分断面図である。
図3A】本発明の実施例に使用される指構造の部分拡大図である。
図3B】本発明の実施例に使用される支持部材がウエハのエッジに係合するときの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を詳しく説明し、本発明の実施例の例は図面に示され、全明細書を通して同一又は類似の符号は同一又は類似の部材、或いは同一又は類似の機能を有する部材を示す。また、公知技術の詳細な説明は示される本発明の実施例の特徴にとって不要なものである場合、省略する。以下の図面を参照して説明した実施例は例示的なものであり、単に本発明を解釈するためのものであり、本発明を制限するものと解釈すべきではない。
【0019】
当業者であれば理解されるように、特に定義しない限り、ここで使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は当業者の一般的な理解と同じ意味を有する。さらに理解されるように、汎用辞書に定義されたそれらの用語などは、従来技術の文脈における意味と一致する意味を有すると理解すべきであり、且つここのように特別に定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されることがない。
【0020】
以下に具体的な実施例によって本発明の技術案及び本発明の技術案を用いて上記技術的問題をどのように解決するかを詳しく説明する。
【0021】
本発明の実施例はウエハを搬送するためのマニピュレーターを提供し、図1A図1Cに示すように、マニピュレーターは指構造2を備え、該指構造2はマニピュレーターアーム1に接続され、且つマニピュレーターアーム1の一方側に位置し、カンチレバー構造を構成し、該指構造2はウエハ100の搬送を実現するようにマニピュレーターアーム1の駆動によって伸縮や昇降などの運動をすることができる。マニピュレーターアーム1及び指構造2はいずれも金属材質で製造されてもよく、又はセラミックや石英材質で製造されてもよい。また、指構造2とマニピュレーター本体1とが一体構造を用いてもよく、又は分離構造を用いてもよい。
【0022】
指構造2の構造は様々あってもよく、例えば、本実施例では、指構造2は水平面に平行する方向において間隔をあけて設置される2つの指22を備え、2つの指22の間の間隔が中空部21を構成し、該中空部21はさらに指22がウエハ100に接触することを回避することができ、特に反りが生じたウエハの場合、一般的にその中心領域がエッジ領域に対して指22に近接する側に向かって湾曲し、即ち、ウエハは中心が下向きに凹むが、エッジが上向きに反り、このような状況に対して、2つの指22の間に中空部21を形成することで、ウエハの下向きに凹んだ中心部分を避けることができ、これにより指22がウエハ100の表面に接触することを回避することができ、さらにウエハ100が指22に接触摩擦して擦り傷が生じることをある程度低減することができる。
【0023】
いくつかの選択的な実施例では、2つの指22の間の間隔の数値範囲は100ミリメートル~290ミリメートルであり、具体的に120ミリメートル、150ミリメートル、180ミリメートル、182ミリメートル、200ミリメートル、240ミリメートル又は280ミリメートルなどであってもよい。実際の応用では、ウエハ100の異なる仕様に応じて対応する数値を選択してもよく、具体的には、ウエハ100の直径が大きければ大きいほど、該間隔の数値が大きくなり、その逆に、数値が小さくなる。
【0024】
なお、実際の応用では、指構造2はほかのいかなる構造、例えば上記中空部21を構成できる環状構造、又は指構造2にはウエハの下向きに凹んだ中心部分を避けることができる凹部を用いてもよく、これも指22がウエハ100の表面に接触することを回避することができる。
【0025】
上記マニピュレーターはさらに複数の支持部材31を備え、例えば図1A図1Cに4つの支持部材31が示され、当然ながら、実際の応用では、支持部材31の数は3つ又は5つ以上であってもよく、ウエハ100を均一に安定して支持するように保持することができればよい。
【0026】
複数の支持部材31は指構造2に設置され、且つ同一円周方向に沿って間隔をあけて配置され、該円周が位置する平面は例えば水平面に互いに平行する。そして、各支持部材31はウエハ100を支持するようにウエハ100のエッジに接触するためのものである。複数の支持部材31がウエハ100のエッジのみに接触するため、ウエハを安定して支持することが確保される上で、ウエハの表面に接触することを回避することができ、これによりマニピュレーターがウエハの表面に接触することでウエハの表面に擦り傷及び接触痕跡が発生することを回避することができる。それと同時に、上記複数の支持部材31はさらにウエハが指構造2に接触することを回避することができ、これによりウエハが反ることで指構造2に接触摩擦して擦り傷が生じることをある程度低減することができる。
【0027】
これにより、本発明の実施例に係るマニピュレーターはウエハの表面に擦り傷が生じることによる後続のプロセスへの影響を低減して製品の歩留まりを向上させることができ、それによりウエハの裏面に金属を蒸着するプロセスなどのウエハの表面を保護するプロセスを必要とする半導体プロセス装置に応用され得る。
【0028】
なお、上記複数の支持部材31を用いる上で、指構造2はさらに平板構造を用いてもよく、即ち、上記中空部21を設置せずに複数の支持部材31のみにより指構造2がウエハ100の表面に接触することを回避する。
【0029】
いくつかの選択的な実施例では、図2A図2Bに示すように、各支持部材31はいずれもウエハ100を支持するための支持面32を備え、該支持面32が水平面に対して傾斜する斜面であり、且つ水平面に対する該斜面の高さが支持部材31の位置する円周の径方向において該円周の中心から離れる方向に沿って徐々に大きくなる。換言すれば、複数の支持部材31がその内側で凹部を構成し、且つ複数の支持部材31の支持面32が共同で該凹部の側面を構成し、該側面が円周方向において連続しない環状テーパ面であり、ウエハ100のエッジがウエハ100に対する支持を実現するように該環状テーパ面に接触する。そして、該環状テーパ面の開口サイズが凹部の底部から離れる方向に沿って徐々に大きくなり、このように設定すれば、各支持面32がウエハ100の表面に接触することなくウエハ100のエッジのみに接触することが確保されるだけでなく、ウエハ100自体の重力の作用によりウエハの位置を自動的に校正し、且つウエハ100のエッジと各支持面32との接触位置が同じ高さにあることが確保されることもでき、これによりウエハ100を水平に置くことができるように確保することができる。
【0030】
いくつかの選択的な実施例では、図1Bに示すように、X軸の一方側に位置する2つの支持面32とX軸の他方側に位置する2つの支持面32とが対称に設置され、且つY軸の一方側に位置する2つの支持面32とY軸の他方側に位置する2つの支持面32とが対称に設置され、このようにして、4つの支持部材31とウエハ100との接触位置をより均一に配置することができ、これにより支持安定性を向上させることができる。
【0031】
いくつかの選択的な実施例では、図2A及び図2Bに示すように、各支持部材31はいずれも支持本体311と、該支持本体311に設置される滑り止め用可撓性部材312とを備え、上記支持本体311がウエハを支持するために必要な剛性を確保するように金属又は非金属材質で製造されてもよく、例えば支持本体311がステンレス、アルミニウム、石英又はセラミックなどの材質で製造されてもよいが、本発明の実施例はこれに限定されるものではない。上記支持本体311の設置によって、ウエハ100と指構造2との間隔を増加させることができ、それによりウエハ100と指構造2との接触をさらに回避し、特に反りが生じたウエハの場合、増加した間隔によってウエハ100と指構造2とを接触しないことをより容易に実現できる。実際の応用では、具体的な必要に応じて支持本体311の形状及びサイズを自由に設定することができ、ウエハが指構造2に接触しないことが確保されればよい。
【0032】
滑り止め用可撓性部材312に上記支持面32が形成され、即ち、該滑り止め用可撓性部材312はウエハ100を支持するようにウエハ100のエッジに接触し、それと同時に、滑り止め用可撓性部材312はさらに、ウエハが滑ることを回避するようにウエハのエッジに接触する摩擦力を増加させる役割を果たす。滑り止め用可撓性部材312はシリコン又はゴムなどの摩擦係数が比較的大きな滑り止め材質で製造されてもよいが、本発明の実施例はこれに限定されるものではない。
【0033】
滑り止め用可撓性部材312の構造は様々あってもよく、例えば滑り止め用可撓性部材312が環状を呈し、且つ滑り止め用可撓性部材312の横断面形状が支持面32とウエハとを点接触させることを満たし、該横断面形状が円形、楕円形などである。滑り止め用可撓性部材312が環状を呈するため、ウエハのエッジが滑り止め用可撓性部材312に接触する接触点(即ち、ウエハのエッジと環状滑り止め用可撓性部材312との交点)が多くとも2つであり、これは滑り止め用可撓性部材312とウエハとの接触面積を大幅に減少させ、これによりウエハに擦り傷が生じる可能性をさらに低下させることができる。上記滑り止め用可撓性部材312は例えばゴムシールリングであり、材料を取ることが容易であるだけでなく、応用及びメンテナンスコストを効果的に削減することもできる。
【0034】
なお、本発明の実施例は環状の滑り止め用可撓性部材312を用いることに限定されるものではなく、これに加えて、滑り止め用可撓性部材312はさらにほかのいかなる形状を用いてもよく、ウエハを支持するとともにウエハが滑ることを防止する役割を果たすことができればよい。
【0035】
いくつかの選択的な実施例では、図2A図2Bに示すように、支持本体311に取付溝313が形成され、滑り止め用可撓性部材312は一部が該取付溝313の内部に設置され、残りの部分が取付溝313の外部に設置され、これにより滑り止め用可撓性部材312を支持本体311に固定することを実現する。具体的には、環状の滑り止め用可撓性部材312の場合、該取付溝313が環状凹溝として対応して設置され、当然ながら、異なる形状の滑り止め用可撓性部材312に基づいて取付溝313の形状を適応的に調整することができる。そして、選択肢として、滑り止め用可撓性部材312が取付溝313から脱出することを回避するために、取付溝313を「蟻溝」又は開口部のサイズが比較的小さなほかの凹溝構造とする。
【0036】
なお、本発明の実施例は滑り止め用可撓性部材312の取付方式を限定せず、例えば滑り止め用可撓性部材312が支持本体311に直接貼り付けられてもよいが、本発明の実施例はこれに限定されるものではなく、当業者は実際の状況に応じて自ら調整して設置してもよい。
【0037】
いくつかの選択的な実施例では、支持面32を斜面に形成させる方式は様々あってもよく、例えば、図2A図2Bに示すように、支持本体311に斜面311aを形成し、滑り止め用可撓性部材312を該取付溝313に取り付ける際にも傾斜させるように該斜面311aに形成された取付溝313を同様に傾斜させ、これにより滑り止め用可撓性部材312上の支持面32を斜面に形成させることを実現する。図2Bに示すように、支持本体311の下表面が水平面に互いに平行し、支持面32が支持本体311上の斜面311aに互いに平行することを例として、斜面311aは平面であり、且つ支持本体311の下表面との夾角Aが支持面32と水平面との夾角に等しく、該夾角Aが1°~60°であってもよく、例えば5.75°であり、このように設定すれば、ウエハを安定して支持することができ、ウエハが滑ることを回避することが確保されるだけでなく、支持本体311の加工難度及び加工コストを低減することもできる。実際の応用では、上記夾角Aの具体的な数値は1°、15°、28°、35°、45°、50°又は55°などであってもよく、異なる仕様のウエハに基づいて夾角Aの大きさを自由に選択してもよい。
【0038】
なお、本実施例では、斜面311aは平面であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、実際の応用では、上記斜面311aはさらに円弧凸面又はほかのいかなる形状の斜面であってもよく、本発明の実施例はこれに限定されるものではなく、当業者は実際の状況に応じて自ら調整して設置してもよい。
【0039】
いくつかの選択的な実施例では、図3A及び図3Bに示すように、各支持部材31の支持面32に少なくとも1つの表示線314が設置され、各表示線314がその中の1つのサイズのウエハエッジの支持面32上での位置を表示するためのものである。対応するサイズのウエハが支持部材31に正確に置かれる場合、該表示線314がウエハのエッジと重なる。上記表示線314は支持面32に描かれた二次元マークであってもよく、又は支持面32に設置された三次元構造で構成されてもよく、例えば、支持面32に円弧状の溝又はボスが設置される。
【0040】
いくつかの選択的な実施例では、図2A及び図2Bに示すように、マニピュレーターはさらに位置決め部材4及び締結部材5を備え、位置決め部材4は指構造2に設置され、支持部材31の指構造2上での位置を制限するためのものであり、該位置決め部材4は例えば位置決めピンであり、該位置決めピンの両端がそれぞれ支持部材31及び指構造2上の同軸の2つの位置決め孔内に位置し、締結部材5は支持部材31を指構造2に固定して接続するためのものであり、該締結部材5が例えば締め付けねじである。
【0041】
本発明の実施例に係るマニピュレーターについては、それは指構造には同一円周上に間隔をあけて配置される複数の支持部材が設置され、各支持部材はウエハを支持するようにウエハのエッジに接触し、且つ該ウエハを指構造に接触させることを回避するためのものである。複数の支持部材がウエハのエッジのみに接触するため、ウエハに対する支持を確保する上で、支持部材がウエハの表面に接触することを回避することができ、これによりマニピュレーターがウエハの表面に接触することでウエハの表面に擦り傷及び接触痕跡が発生することを回避することができる。それと同時に、上記複数の支持部材はさらにウエハを指構造に接触させることを回避することができ、これによりウエハが反ることで指構造に接触摩擦して擦り傷が生じることをある程度低減することができる。これにより、本発明の実施例に係るマニピュレーターはウエハの表面に擦り傷が生じることによる後続のプロセスへの影響を低減して製品の歩留まりを向上させることができ、それによりウエハの裏面に金属を蒸着するプロセスなどのウエハの表面を保護するプロセスを必要とする半導体プロセス装置に応用され得る。
【0042】
理解されるように、以上の実施形態は単に本発明の原理を説明するために用いた例示的な実施形態であるが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び本質を逸脱せずに種々の変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良も本発明の保護範囲として見なされる。
【0043】
本発明の説明において、理解する必要があることは、用語「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などで指示される方位又は位置関係は図面に示される方位又は位置関係であり、単に本発明を説明し及び説明を簡略化することを容易にするためのものであり、指す装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを明示又は暗示するものではなく、従って、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0044】
用語「第1」、「第2」は単に説明のためのものであり、相対重要性を明示又は暗示し、又は指示される技術的特徴の数を暗示するものと理解すべきではない。これにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は1つ以上の該特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本発明の説明において、特に説明しない限り、「複数」の意味は2つ以上である。
【0045】
本発明の説明において、説明する必要があることは、特に明確に規定及び限定しない限り、用語「取付」、「連結」、「接続」は広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続、取り外し可能な接続又は一体接続であってもよく、直接連結、中間素子による間接連結又は2つの素子の内部の連通であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0046】
本明細書の説明において、具体的な特徴、構造、材料又は特性はいかなる1つ又は複数の実施例、又は例において適切な方式で組み合わせられることができる。
【0047】
以上の説明は単に本発明の一部の実施形態であり、指摘すべきことは、当業者であれば、本発明の原理を逸脱せずに種々の改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本発明の保護範囲として見なされるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B