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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02326 20210101AFI20240410BHJP
   H01S 5/02345 20210101ALI20240410BHJP
   H01S 5/02257 20210101ALI20240410BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20240410BHJP
【FI】
H01S5/02326
H01S5/02345
H01S5/02257
H01S5/0239
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019220036
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021089990
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 将太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 創一郎
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0057883(US,A1)
【文献】特開2019-129224(JP,A)
【文献】特開2015-119152(JP,A)
【文献】特開平08-018151(JP,A)
【文献】特開平05-291697(JP,A)
【文献】特開2017-085036(JP,A)
【文献】特開2012-009547(JP,A)
【文献】特開平06-302715(JP,A)
【文献】国際公開第2019/211943(WO,A1)
【文献】特開2008-166730(JP,A)
【文献】特開平05-206356(JP,A)
【文献】特開2011-138953(JP,A)
【文献】特開2017-201684(JP,A)
【文献】特開2019-212752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
H01L 21/54
H01L 23/00 - 23/26
H01L 23/50
H01L 27/14 - 27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面を囲い前記底面から上方に伸びる側面部を有する基部と、
前記底面に配される1以上の発光素子と、
前記底面に配され、前記発光素子から出射された光が照射される電子部品と、
前記発光素子と電気的に接続される1または複数の第1配線と、
前記電子部品と電気的に接続される1または複数の第2配線と、
を有し、
前記側面部は、内側面と上面とで構成される段差部として、第1段差部と、前記第1段差部よりも前記底面からの高さが大きい第2段差部と、を有し、
前記第1段差部には、1または複数の第1配線領域が設けられ、
前記第2段差部には、1または複数の第2配線領域が設けられ、
前記第1配線の一端は、前記第1配線領域および前記第2配線領域のうちの一方に接合され、前記第2配線の一端は、前記第1配線領域および前記第2配線領域のうちの他方に接合され、
前記第1配線および前記第2配線のうち、前記第1配線領域に接合された配線の他端は、前記第2配線領域に接合された配線の他端よりも、前記底面からの高さが低い位置で接合される発光装置。
【請求項2】
前記第1段差部の内側面は、前記底面と交わり、
前記第2段差部の内側面は、前記底面と交わる請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2段差部の内側面と前記底面とが交わる部分の長さの方が、前記第2段差部の内側面と前記第1段差部の上面とが交わる部分の長さよりも大きい、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基部は、前記底面を構成する底面部と、前記側面部とが一体となっている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記基部は、前記底面を構成する底面部と、前記側面部と、を有し、
前記底面部は、前記側面部よりも熱伝導率が高い請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記電子部品には、前記発光素子から出射された主要部分の光が全て照射される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記電子部品は、前記発光素子から所定の方向へと出射された前記主要部分の光の少なくとも80%以上を、前記所定の方向とは異なる方向へと進行させる請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記電子部品は、MEMSまたはフォトダイオードである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記底面に配され、上面視で前記発光素子と前記電子部品の間に位置し、前記発光素子から出射される光をコリメートする光学部品、をさらに有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1配線および前記第2配線のうち、前記第2配線領域に接合された配線の他端は、前記底面からの高さが、前記第1配線領域よりも高い位置に配置される請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1配線領域に前記1または複数の第1配線が接合され、
前記第2配線領域に前記1または複数の第2配線が接合される請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記1または複数の第1配線の他端は、前記発光素子の上面または前記発光素子が配されるサブマウントの上面に接合される請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第2段差部の内側面は、前記発光素子及び前記電子部品を直列に挟んで対向する2つの面領域のうち、前記発光素子までの距離よりも前記電子部品までの距離の方が短い方の面領域に形成される請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第1段差部の内側面は、前記発光素子及び前記電子部品を並列に挟んで対向する2つの面領域に形成される請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第1段差部の内側面は、前記発光素子及び前記電子部品を直列に挟んで対向する2つの面領域のうち、前記発光素子までの距離よりも前記電子部品までの距離の方が短い方の面領域には形成されない請求項14に記載の発光装置。
【請求項16】
前記第1段差部の内側面は、前記発光素子及び前記電子部品を直列に挟んで対向する2つの面領域のうち、前記発光素子までの距離よりも前記電子部品までの距離の方が長い方の面領域に形成される請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記基部の底面に配され、前記底面に対して傾いた傾斜面を有する支持台、をさらに有し、
前記電子部品は、前記支持台の傾斜面の上に配される請求項1乃至16のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記第2段差部よりも上方に位置する前記基部の上面に接合され、前記発光素子が配置される空間を気密封止する蓋部材、をさらに有する請求項1乃至17のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、凹部が形成された基体に段差を設け、この段差部分にボンディングワイヤを接続する光学モジュールが既に知られている。また、特許文献1の光学モジュールでは、凹部内に、発光素子の他、受光素子が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-157873
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光学モジュールは、発光素子、及び、受光素子のそれぞれを配線により電気的に接続させる形態ではない。したがって、発光素子と、受光素子などの電子部品と、のそれぞれに配線が接合される形態において、これらの配線の接合を容易にすることについては開示がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発光装置は、底面を囲い前記底面から上方に伸びる側面部を有する基部と、前記底面に配される1以上の発光素子と、前記底面に配され、前記発光素子から出射された光が照射される電子部品と、前記発光素子と電気的に接続される1または複数の第1配線と、前記電子部品と電気的に接続される1または複数の第2配線と、を有し、前記側面部は、内側面と上面とで構成される段差部として、第1段差部と、前記第1段差部よりも前記底面から高い位置にある第2段差部と、を有し、前記第1段差部には、1または複数の第1配線領域が設けられ、前記第2段差部には、1または複数の第2配線領域が設けられ、前記第1配線の一端は、前記第1配線領域および前記第2配線領域のうちの一方に接合され、前記第2配線の一端は、前記第1配線領域および前記第2配線領域のうちの他方に接合され、前記第1配線および前記第2配線のうち、前記第1配線領域に接合された配線の他端は、前記第2配線領域に接合された配線の他端よりも、前記底面からの高さが低い位置で接合される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発光素子および電子部品が配置される発光装置において、発光素子および電子部品に係る配線の接合を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る発光装置から蓋部材を除いた状態の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る発光装置から蓋部材を除いた状態の上面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線における断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図6図6は、第2実施形態に係る発光装置から蓋部材を除いた状態の斜視図である。
図7図7は、第2実施形態に係る発光装置から蓋部材を除いた状態の上面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線における断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る電子部品の上面図である。
図10図10は、第3実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図11図11は、第3実施形態に係る発光装置から蓋部材を除いた状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形や四角形などの多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶものとする。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書及び特許請求の範囲で記載される“多角形”の解釈に含まれるものとする。
【0009】
また、多角形に限らず、台形や円形や凹凸など、特定の形状を表す言葉についても同様である。また、その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、“辺”の解釈には加工された部分も含まれる。なお、部分的な加工のない“多角形”や“辺”を、加工された形状と区別する場合は“厳密な”を付して、例えば、“厳密な四角形”などと記載するものとする。
【0010】
また、本明細書または特許請求の範囲において、ある構成要素に関し、これに該当するものが複数あり、それぞれを区別して表現する場合に、その構成要素の頭に“第1”、“第2”と付記して区別することがある。また、本明細書と特許請求の範囲とで区別する対象や観点が異なる場合、本明細書と特許請求の範囲との間で、同一の付記が、同一の対象を指さない場合がある。
【0011】
例えば、本明細書において“第1”、“第2”、“第3”と付記されて区別される対象があり、本明細書の“第1”及び“第3”のみを対象として特許請求の範囲を記載する場合に、特許請求の範囲において“第1”、“第2”と付記された対象が、本明細書において“第1”“第3”と付記された対象を指すことがある。
【0012】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、示される形態は、本発明の技術思想が具体化されたものではあるが、本発明を限定するものではない。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略することがある。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、理解の便宜を図るために誇張していることがある。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る発光装置1を説明する。図1乃至図4は、発光装置1の例示的な一形態を説明するための図面である。図1は、発光装置1の斜視図である。図2は、発光装置1から蓋部材80を除いた状態の斜視図である。図3は、図2と同様の状態の上面図である。図4は、図3のIV-IV断面線における断面図である。
【0014】
発光装置1は、構成要素として、基部10、3つの半導体レーザ素子20、サブマウント30、電子部品40、支持台50、光学部品60、複数の配線70、及び、蓋部材80を有する(支持台50については、特に図4を参照)。
【0015】
発光装置1では、基部10と蓋部材80とで囲まれた空間内に、3つの半導体レーザ素子20、サブマウント30、電子部品40、支持台50、光学部品60、及び、複数の配線70が配置されている。また、発光装置1では、空間内に配置された3つの半導体レーザ素子20からの光が出射される。まずは、各構成要素について説明する。
【0016】
(基部10)
基部10は、他の構成要素を配置するための領域である配置領域と、配置領域を囲う側壁と、を有する。また基部は、この配置領域及び側壁を含んだ凹部を有する。凹部は、基部10の上面から下面の方向に向かって窪んでいる。ここでは、凹部の窪みの底となる面を底面と呼ぶものとする。底面は、配置領域の主要な部分となり得る。
【0017】
上面視で、基部10の外形は矩形である。また、上面視で、凹部の窪み部分の外形は矩形である。また、上面視で、基部10の底面の外形は矩形であり、窪み部分の外形よりも小さい。なお、これらの外形は、いずれも矩形でなくてもよい。
【0018】
基部10は、底面部11と、側面部12と、を有する。底面部11は、基部10の底面を構成する部分である。また、底面部11には、基部10の底面、及び、下面が含まれる。側面部12は、基部10の側壁を構成する部分である。したがって、側面部12は、基部10の底面を囲い、かつ、底面から上方に向かって伸びている。また、側面部12には、基部10の1以上の外側面、1以上の内側面、及び、外側面と内側面とに交わる上面が含まれる。
【0019】
ここで、基部10の内側面あるいは外側面の面数は、底面を囲う形状による。例えば、底面を囲う形状が矩形ならば、矩形の4辺のそれぞれに対応した内側面が形成され、内側面の数は複数になる。また例えば、底面を囲う形状が円形ならば、1つの円に対応した内側面が形成され、内側面の数は1つになる。外側面についても同様である。
【0020】
基部10は、複数の段差部を有する。ここで、段差部は、上面及びこの上面と交わり下方に伸びる内側面のみで構成される部分を指すものとする。複数の段差部は、基部10の側面部12に含まれる。また、複数の段差部のそれぞれは、基部10の底面から上面に達するまでの間に設けられる。また、上面視で、基部10の窪み部分の外形と底面の外形との間に形成される。
【0021】
複数の段差部は、基部10の上面と交わる内側面に沿って形成される。そのため、複数の段差部の上面は、基部10の上面と交わる内側面と交わる。また、複数の段差部によって形成される段差は、基部10の配置領域を囲う1以上の内側面の全周に亘る。なお、段差は全周に亘って形成されなくてもよい。
【0022】
複数の段差部には、第1段差部13と、第2段差部15と、が含まれる。図示される発光装置1の例では、複数の段差部は、第1段差部13と第2段差部15のみで構成されているが、この他に段差部を有していてもよい。
【0023】
第1段差部13と、第2段差部15とは、高さが異なる。つまり、第1段差部13と第2段差部15とは、基部10の底面から段差部の上面までの高さが異なる。図示される発光装置1の例では、第2段差部15の方が第1段差部13よりも基部10の底面からの高さが大きい。なお、第1段差部13の方が第2段差部15よりも高さの大きな基部であってもよい。
【0024】
第1段差部13の上面及び第2段差部15はそれぞれ、基部10の上面と交わる1以上の内側面の一部分に沿って形成される。そのため、第1段差部13の上面は、基部10の上面と交わる1以上の内側面の一部と交わり、第2段差部15の上面は、基部10の上面と交わる1以上の内側面の一部であって第1段差部13の上面が交わる部分とは異なる部分と交わる。
【0025】
上面視で、基部10の上面と交わる1以上の内側面に対して、第1段差部13が沿う長さの方が、第2段差部15が沿う長さよりも長い。また、この1以上の内側面の全周に対して、第2段差部15が全周の一部に沿って形成され、第1段差部13が全周の残りの部分に沿って形成される。
【0026】
また、図示される発光装置1の例において、上面視でこの4つの内側面により矩形の外形が形成されているが、第1段差部13が沿う部分の長さは、矩形の長辺二辺の合計の長さ以上であり、矩形の長辺二辺と短辺一辺の合計の長さ以下である。また、第2段差部15が沿う部分の長さは、矩形の短辺一辺の長さ以上であり、長辺一辺の長さ以下である。
【0027】
第1段差部13の1以上の内側面は、基部10の底面と交わる下辺を有する。また、第2段差部15の内側面は、基部10の底面と交わる下辺を有する。段差部が底面から立ち上がるようにして設けられるため、段差部を配置領域に近い位置に設けることができる。第1段差部13が基部10の底面と交わる部分の長さの方が、第2段差部15が基部10の底面と交わる部分の長さよりも大きい。
【0028】
また、第1段差部13の内側面における下辺は、この辺の端点を除けば、第2段差部15とは交わらない。なお、この端点において、基部10の底面と第2段差部15の内側面とが交わっている。
【0029】
また、第2段差部15の内側面は、基部10の底面と交わる下辺、及び、第1段差部13の上面と交わる下辺を有する。第2段差部15の内側面と基部10の底面とが交わる部分の長さの方が、第2段差部15の内側面と第1段差部13の上面とが交わる部分の長さよりも大きい。これにより、底面を広く確保することができ、十分な配置領域を確保することができる。
【0030】
第2段差部15における基部10の底面からの高さは、第1段差部13における基部10の底面からの高さの、1.2倍以上3.0倍以下の範囲にあるのが好ましい。また、第1段差部13の高さは、基部10の底面から上面までの高さの半分より小さく、かつ、第2段差部15の高さは、基部10の底面から上面までの高さの半分より大きいのが好ましい。
【0031】
第1段差部13の上面には、1または複数の第1配線領域14が設けられる。図示される発光装置1の例では、複数の第1配線領域14が設けられている。この第1配線領域14は、基部10の内部を通って基部10の下面に設けられた配線領域と電気的に接続している。なお、第1配線領域14と電気的に接続する配線領域は、基部10の下面に限らず、基部10の外表面(上面、外側面、及び、下面)に設けることができる。
【0032】
第2段差部15の上面には、1または複数の第2配線領域16が設けられる。図示される発光装置1の例では、複数の第2配線領域16が設けられている。この第2配線領域16は、基部10の内部を通って基部10の下面に設けられた配線領域と電気的に接続している。なお、第2配線領域16と電気的に接続する配線領域は、基部10の下面に限らず、基部10の外表面(上面、外側面、及び、下面)に設けることができる。
【0033】
基部10は、セラミックを主材料として形成することができる。基部10に用いられるセラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。
【0034】
基部10は、底面部11と側面部12とが一体となって形成することができる。また、底面部11と側面部12とが異なる材料を主材料として別個に形成され、底面部11と側面部12を接合することで形成されてもよい。この場合、底面部11には金属を主材料として用いることができ、側面部12にはセラミックを主材料として用いることができる。
【0035】
また、この場合、底面部11に採用される金属は、側面部12に採用されるセラミックよりも放熱性に優れたもの(熱伝導率の高いもの)が好ましい。例えば、銅、アルミニウム、鉄など、あるいは、複合物として、銅モリブデン、銅-ダイヤモンド複合材料、銅タングステンなどを用いることができる。
【0036】
また、基部10の第1配線領域14およびこれと電気的に接続する配線領域、並びに、第2配線領域16およびこれと電気的に接続する配線領域に相当する箇所には、それぞれ金属膜が設けられる。また、電気的な接続のため内部を通る箇所にも金属が設けられ、これにより電気的な接続が図られている。
【0037】
(半導体レーザ素子20)
半導体レーザ素子20は、上面視で長方形の外形を有する。また、長方形の2つの短辺のうちの一辺と交わる側面が、半導体レーザ素子20から出射される光の出射端面となる。また、半導体レーザ素子20の上面及び下面は、出射端面よりも面積が大きい。
【0038】
また、半導体レーザ素子20は、2つのエミッターを有するマルチエミッターである。半導体レーザ素子20の上面または下面の一方に2つのエミッターに共通する1つの電極が、他方にそれぞれのエミッターに対応する2つの電極が設けられている。
【0039】
半導体レーザ素子20のそれぞれのエミッターから出射される光(レーザ光)は拡がりを有し、光の出射端面と平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。FFPとは、出射端面から離れた位置における出射光の形状や光強度分布である。
【0040】
ここで、FFPの楕円形状の中心を通る光、言い換えると、FFPの光強度分布においてピーク強度の光を、光軸を進む光、と呼ぶものとする。また、FFPの光強度分布において、ピーク強度値に対して1/e以上の強度を有する光を、主要部分の光と呼ぶものとする。
【0041】
半導体レーザ素子20から出射される光のFFPの形状は、活性層を含む複数の半導体層の層方向よりも、それに垂直な積層方向の方が長い楕円形状である。なお、層方向をFFPの水平方向、積層方向をFFPの垂直方向というものとする。
【0042】
また、FFPの光強度分布に基づき、光強度分布の半値全幅に相当する角度を、その半導体レーザ素子の光の拡がり角とする。FFPの垂直方向における光の拡がり角を垂直方向の拡がり角、FFPの水平方向における光の拡がり角を水平方向の拡がり角というものとする。
【0043】
半導体レーザ素子20として、例えば、青色の光を出射する半導体レーザ素子、緑色の光を出射する半導体レーザ素子、または、赤色の光を出射する半導体レーザ素子などを採用することができる。また、これら以外の光を出射する半導体レーザ素子を採用してもよい。
【0044】
ここで、青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光をいうものとする。緑色の光は、その発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光をいうものとする。赤色の光は、その発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光をいうものとする。
【0045】
青色の光を発する半導体レーザ素子、または、緑色の光を発する半導体レーザ素子として、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。赤色の光を発する半導体レーザ素子として、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。
【0046】
(サブマウント30)
サブマウント30は、対向する2つの接合面を有し、直方体の形状で構成される。また、サブマウント30は、対向する2つの接合面の間の距離が、他の対向する2面の間の距離よりも小さい。なお、サブマウント30の形状は直方体に限らなくてよい。サブマウント30は、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いて形成することができる。また、サブマウント30の上面には金属膜が設けられている。
【0047】
(電子部品40)
電子部品40は、接合面と、光照射面と、を有する。また、接合面と、光照射面とは対向している。また、電子部品40は、光照射面に照射される光を制御する光制御ユニットの一部を構成する。
【0048】
電子部品40としては、例えば、Micro Electro Mechanical Systems(以下、略称であるMEMSを使用する。)を採用することができる。また例えば、フォトダイオード(以下、略称であるPDを使用する)などの受光素子を採用することができる。また、電子部品40は、光照射面に照射された光の80%以上を反射することができる。
【0049】
(支持台50)
支持台50は、下面と、下面に対して傾斜した傾斜面51と、を有する。傾斜面51は、下面からみて垂直でも平行でもない。例えば、傾斜面51は、下面に対して45度の傾斜角を成す平面で構成される。なお、傾斜角は45度に限らなくてもよい。また、傾斜面51は、支持台50において、下面に対して傾斜する1または複数の傾斜面であって、かつ、傾斜面が複数ある場合は最も面積の大きな傾斜面である。
【0050】
また、傾斜面51は、上面視でみたときに、支持台50の60%以上の面積を占める。また、上面視でみたときに、傾斜面51の上端から下端までの幅は、同じ方向における支持台50の幅の60%以上である。つまり、支持台50は、この方向に関して、傾斜面51が主要な割合を占める構造を有している。
【0051】
支持台50は、例えば、セラミック、ガラス、または金属などを用いて形成することができる。例えば、窒化アルミニウムなどのセラミック、石英若しくは硼珪酸ガラスなどのガラス、アルミニウムなどの金属を用いることができる。またあるいは、Siなどを用いて形成することもできる。
【0052】
(光学部品60)
光学部品60は、接合面と、レンズ面61と、を有する。レンズ面61は、レンズの形状を有する面である。接合面とレンズ面61との配置関係は、接合面を下面とした場合に、レンズ面61が側面となる関係である。
【0053】
レンズ面61は、複数のレンズが連なった形状を有する。ここでは、側面視で、3つのレンズが連続して繋がった形状で、レンズ面61が形成される。光学部品60は、例えば、BK7等のガラスを用いて形成することができる。
【0054】
(配線70)
配線70は、両端を接合部とする線状の形状で構成される。つまり、線状部分の両端に、他の構成要素と接合する接合部を有する。配線70は、例えば、金属のワイヤである。金属には、例えば、金、アルミニウム、銀、銅などを用いることができる。
【0055】
(蓋部材80)
蓋部材80は、下面と、上面と、を有し、直方体の平板形状で構成される。なお、直方体でなくてもよい。また、蓋部材80は、光を透過する透光性を有する。そのため、蓋部材80は、透光性部材ということもできる。なお、蓋の役割を有さない透光性部材を用いてもよい。
【0056】
ここで、透光性とは、光に対する透過率が80%以上であることとする。なお、全ての波長の光に対して80%以上の透過率を有していなくてもよい。また、蓋部材80は、一部に非透光性の領域(透光性を有していない領域)を有していてもよい。
【0057】
蓋部材80は、サファイアを用いて形成することができる。サファイアは透光性を有しており、また、比較的屈折率が高く、比較的強度も高い材料である。なお、サファイアの他に、例えばガラス等を用いることもできる。
【0058】
(発光装置1)
次に、発光装置1について説明する。発光装置1は、基部10、基部10に配される3つの半導体レーザ素子20、基部10に配される電子部品40、複数の配線70のうちの3つの半導体レーザ素子20を電気的に接続するための複数の第1配線71、及び、複数の配線70のうちの電子部品40を電気的に接続するための複数の第2配線72、を有する。
【0059】
また、発光装置1において、3つの半導体レーザ素子20は、サブマウント30を介して基部10に配される。なお、サブマウント30を介さずに直接基部10の底面に配されてもよい。この場合、出射端面における光の出射位置(高さ)を調整するために半導体レーザ素子20の外形の形状が変更されることがある。
【0060】
また、電子部品40は、支持台50を介して基部10に配される。なお、支持台50を介さずに直接基部10の底面に配されてもよい。この場合、光照射面41の位置(高さ)や向き(傾き)を調整するために電子部品40の外形の形状が変更されることがある。
【0061】
また、発光装置1は、基部10に配される光学部品60を有する。また、発光装置1は、基部10と接合し、3つの半導体レーザ素子20が配置される空間を封止する蓋部材80を有する。
【0062】
3つの半導体レーザ素子20は、基部10の底面に配される。そのため、基部10の底面部11に配されるといえる。また、3つの半導体レーザ素子20は、出射端面が同じ方向を向くようにして、並べて配置される。また、隣り合う半導体レーザ素子20の間で、それぞれの出射端面と交わる側面同士が対向する。
【0063】
3つの半導体レーザ素子20は、例えば、青色の光を放射する半導体レーザ素子、緑色の光を放射する半導体レーザ素子、及び、赤色の光を放射する半導体レーザ素子で構成することができる。また、同じ色の光を放射する半導体レーザ素子を複数有する構成としてもよく、他の色の光を放射する半導体レーザ素子を有する構成としてもよい。
【0064】
なお、発光装置1に配される半導体レーザ素子20の数は3つでなくてもよい。3つを超える数でもよく、3つより少ない数でもよい。また、半導体レーザ素子20に代えて、LEDなどの他の発光素子を用いてもよい。発光装置1は、少なくとも1以上の発光素子を有する。
【0065】
サブマウント30は、一方の接合面において3つの半導体レーザ素子20と接合する。また、対向する他方の接合面において、基部10の底面と接合する。そのため、基部10の底面部11に配されるといえる。
【0066】
なお、発光装置1は、複数のサブマウント30を有していてもよい。このとき、1つのサブマウント30に接合される半導体レーザ素子20の数は3つでなくてもよい。2つであってもよいし、1つであってもよい。つまり、発光装置1において、1または複数のサブマウント30のそれぞれは、少なくとも1以上の半導体レーザ素子20と接合する。
【0067】
電子部品40は、MEMSである。また、電子部品40は、基部10の底面に配される。そのため、基部10の底面部11に配されるといえる。また、電子部品40は、半導体レーザ素子20から出射された光が、光照射面41に照射される向きで配置される。また、光照射面41には、3つの半導体レーザ素子20のそれぞれから出射された主要部分の光が全て照射される。
【0068】
光照射面41は、半導体レーザ素子20から側方に向かって出射された光を上方に反射する。そのため、光照射面41は、出射端面および光軸に対して傾いている。光照射面41は、基部10の底面に対して10度以上80度以下の角度で傾いている。
【0069】
支持台50は、傾斜面51において電子部品40と接合する。また、傾斜面51が半導体レーザ素子20の方を向くようにして、支持台50は配置される。そのため、電子部品40は、傾斜面51の上に配されるといえる。支持台50を介して電子部品40を配することで、電子部品40を複雑な形状で形成せずに済む。支持台50には、電子部品40よりも形状加工の容易な材料が用いられるのが好ましい。
【0070】
また、支持台50は、下面において、基部10の底面と接合する。そのため、基部10の底面部11に配されるといえる。支持台50の下面が基部10の底面に接合されることで、傾斜面51は、底面に対して傾く。
【0071】
光学部品60は、上面視で、半導体レーザ素子20の出射端面と、電子部品40の光照射面41との間に配される。また、レンズ面61が光照射面41の方を向くようにして配置される。3つのレンズは、3つの半導体レーザ素子20のそれぞれから出射される光に対応している。それぞれのレンズが、それぞれの半導体レーザ素子20からの光をコリメートする。従って、コリメートされた光が、電子部品40としてのMEMSに照射される。
【0072】
MEMSは、照射された光を上方に反射する。半導体レーザ素子20から電子部品40に向けて所定の方向に出射された主要部分の光は、これと異なる方向へと進む。また、MEMSは、照射された光のうち、必要な光のみを反射する。
【0073】
電子部品40には、半導体レーザ素子20から出射されて拡がった光が、光学部品60によってコリメートされて照射される。そのため、半導体レーザ素子20の光の出射点よりも高い位置にまで光照射面41を設ける必要がある。そのため、電子部品40の高さは半導体レーザ素子20よりも高くなる。
【0074】
光照射面41は、中央部分の方が底面に垂直な方向の長さが長く、中央から離れるほどに小さい。そのため、3つに並べて配置される半導体レーザ素子20のうち光の垂直方向の拡がり角が最も大きい半導体レーザ素子20を中央に配置する。こうすることで効率的に光照射面41を活用することができる。なお、半導体レーザ素子20の配置はこれに限らない。
【0075】
また、図示される発光装置1の例では、配線が接合される接合箇所についても半導体レーザ素子20より電子部品40の方が高い。そこで、図の発光装置1では、低い位置にある半導体レーザ素子20への配線接続に低い方の第1段差部13を、高い位置にある電子部品40への配線接続に高い方の第2段差部15を用いて、配線接合の利便を図っている。
【0076】
基部10の底面にサブマウント30が配された状態で、基部10の底面からサブマウント30の半導体レーザ素子20が接合される接合面までの高さは、基部10の第1段差部13の高さと同じか、それ以下となるのが好ましい。また、基部10の底面から半導体レーザ素子20の上面までの高さは、基部10の第1段差部13の高さを超えるか、それ以上となるのが好ましい。こうすることで、第1配線71の接続がしやすくなる。
【0077】
基部10の底面に電子部品40が配された状態で、電子部品40の高さは、第1段差部13の高さを超える。また、電子部品40における第2配線72の接合箇所の高さは、第1段差部13の高さを超える。また、電子部品40における第2配線72の接合箇所の高さは、光照射面41に照射される主要部分の光の上端よりも高い位置にある。
【0078】
また、電子部品40における光照射面41の最大高さ(上端における高さ)は、第1段差部13の高さ、及び、半導体レーザ素子20の高さを超える。一方で、光照射面41の最小高さ(下端における高さ)は、第1段差部13の高さ、及び、半導体レーザ素子20の高さを下回る。
【0079】
基部10の内側面は、半導体レーザ素子20及び電子部品40が基部10に配された状態で、半導体レーザ素子20及び電子部品40を直列に挟んで対向する2つの面領域と、半導体レーザ素子20及び電子部品40を並列に挟んで対向する2つの面領域と、に分けることができる。発光装置1のように、上面視で凹部の窪んだ部分の外形が矩形であれば、矩形の4辺のそれぞれに対応した内側面が、各面領域となる。
【0080】
このとき、第1段差部13の内側面は、半導体レーザ素子20及び電子部品40を並列に挟んで対向する2つの面領域に形成される。これにより、主要部分の光の光路上を避ける位置に第1配線領域14を設けやすくなる。
【0081】
また、第2段差部15の内側面は、半導体レーザ素子20及び電子部品40を直列に挟んで対向する2つの面領域のうち、半導体レーザ素子20までの距離よりも電子部品40までの距離の方が短い方の面領域に形成される。第2段差部15が電子部品40の光照射面41の背面に位置することで、電子部品40から反射された光の光路上に段差部が侵入することを回避させやすくなる。
【0082】
また、第1段差部13の内側面は、半導体レーザ素子20及び電子部品40を直列に挟んで対向する2つの面領域のうち、半導体レーザ素子20までの距離よりも電子部品40までの距離の方が長い方の面領域に形成される。これにより、半導体レーザ素子20の出射端面から、光が進行する方向とは逆の方向に進む領域に第1配線領域14を設けることができ、主要部分の光の光路上を避けて配線70を接合しやすくなる。
【0083】
図3の発光装置1の例では、第1段差部13は、並列に挟んで対向する2つの内側面、及び、直列に挟んで対向する2つの内側面のうち、半導体レーザ素子20までの距離よりも電子部品40までの距離の方が長い方の内側面を有する。また、第2段差部15は、直列に挟んで対向する2つの内側面のうち、半導体レーザ素子20までの距離よりも電子部品40までの距離の方が短い方の内側面を有する。
【0084】
第1配線71の両端のうちの一端の接合部は、第1配線領域14に接合される。また、両端のうちの他端の接合部は、半導体レーザ素子20の上面またはサブマウント30の上面に接合される。半導体レーザ素子20の上面またはサブマウント30の上面には、第1配線71との接合のために接合領域が設けられている。
【0085】
なお、複数の第1配線71の全て、つまり、3つの半導体レーザ素子20の電気的な接続に用いる全ての配線が、第1配線領域14に接合されなくてもよい。1または複数の第1配線71の一端の接合部が、第1配線領域14に接合される。
【0086】
第2配線72の両端のうちの一端の接合部は、第2配線領域16に接合される。また、両端のうちの他端の接合部は、電子部品40に接合される。電子部品40には、第2配線72との接合のために接合領域が設けられている。
【0087】
なお、複数の第2配線72の全て、つまり、電子部品40の電気的な接続に用いる全ての配線が、第2配線領域16に接合されなくてもよい。1または複数の第2配線72の一端の接合部が、第2配線領域16に接合される。
【0088】
電子部品40の接合領域は、光照射面41の中心よりも上方にある。また、電子部品40の接合領域の高さは、半導体レーザ素子20及びサブマウント30の接合領域の高さよりも高い。電子部品40の接合領域は、好ましくは、光照射面41が設けられる面の上端の近傍にある。このような位置に設けることで、第2配線72を接合しやすくなる。
【0089】
また、電子部品40における第2配線72との接合領域は、光照射面41からは離れた位置にあるのが好ましい。光照射面41の外側に設けることで、半導体レーザ素子20からの光を遮らないように第2配線72を張りやすくなる。
【0090】
図示される発光装置1の例では、半導体レーザ素子20の電気的な接続に係る配線の数の方が、電子部品40の電気的な接続に係る配線の数よりも多い。従って、第1配線71の方が第2配線72よりも多く、これに起因して第1配線領域14の方が第2配線領域16よりも多く設けられている。
【0091】
また、図示される発光装置1の例では、第1段差部13の周に沿う部分の長さが、第2段差部15の周に沿う部分の長さよりも長くなっており、より多くの配線領域を設ける段差部をより長く設けることにより、配線接合の利便を図っている。従って、第1配線領域の数と第2配線領域の数の大小関係と、第1段差部13の周に沿う部分の長さと第2段差部15の周に沿う部分の長さの大小関係は一致する。
【0092】
蓋部材80は、基部10の上面に配される。そのため、基部10の側面部12に配されるといえる。また、蓋部材80は、第2段差部15よりも上方に位置する基部10の上面に接合される。また、蓋部材80が接合されることで、基部10と蓋部材80によって囲まれる閉空間が生まれる。この空間は、半導体レーザ素子20は配される空間である。
【0093】
また、所定の雰囲気下で蓋部材80を基部10に接合することで、気密封止された閉空間が作り出される。半導体レーザ素子20が配される空間を気密封止することで、集塵による品質劣化を抑制することができる。
【0094】
発光装置1では、電子部品40として用いられるMEMSにより、蓋部材80を透過して発光装置1から出射する光を制御することができる。また、蓋部材80は、半導体レーザ素子20から出射される光に対して透光性を有する。光制御ユニットは、発光装置1の外に設けられる制御機構と電子部品40とが、基部10の配線領域を介して電気的に接続して実現される。
【0095】
以上、開示されるように、発光装置1は、電気的な接続のための半導体レーザ素子20の接合位置と電子部品40の接合位置とが異なる高さにあることから、基部10においても異なる高さの段差部を形成して配線70の接続を図っている。このようにすることで、配線の接合を容易にすることができる。
【0096】
なお、このような技術思想に基づけば、本発明に係る発光装置は、第1実施形態に限定されなくてもよい。発光装置1では、半導体レーザ素子20の電気的な接続に係る第1配線71を低い方の段差部である第1段差部13に、電子部品40の電気的な接続に係る第2配線72を高い方の段差部である第2段差部15に接合した。これは、半導体レーザ素子20の接合位置よりも電子部品40の接合位置の方が高いためであるが、電子部品40の接合位置よりも半導体レーザ素子20の接合位置の方が高い場合は、第1配線71を第2段差部15に、第2配線72を第1段差部13に接合する方がよい。
【0097】
つまり、第1配線71の一端は、第1配線領域14および第2配線領域16のうちの一方に接合され、第2配線72の一端は、第1配線領域14および第2配線領域16のうちの他方に接合される。その上で、第1配線71および第2配線72のうち、第1配線領域14に接合された配線の他端は、第2配線領域16に接合された配線の他端よりも、基部10の底面からの高さが低い位置で接合されることとなる。また、第1配線71および第2配線72のうち、第2配線領域16に接合された配線の他端は、基部10の底面からの高さが、第1配線領域14よりも高い位置に配置される。
【0098】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る発光装置2を説明する。図5乃至図9は、発光装置2の例示的な一形態を説明するための図面である。図5は、発光装置2の斜視図である。図6は、発光装置2から蓋部材80を除いた状態の斜視図である。図7は、図6と同様の状態の上面図である。図8は、図7のVIII-VIII断面線における断面図である。図9は、第2実施形態に係る電子部品40を光照射面からみた上面図である。図9に記される楕円は、半導体レーザ素子20からの主要部分の光が照射される領域を示している。また、楕円の長径を破線で記している。
【0099】
発光装置2は、構成要素として、基部10、3つの半導体レーザ素子20、サブマウント30、電子部品40、支持台50、複数の配線70、及び、蓋部材80を有する。第2実施形態の発光装置2は、光学部品60を有さない点で、第1実施形態の発光装置1と異なる。また、電子部品が、PDである点で、第1実施形態の発光装置1と異なる。
【0100】
図示される発光装置2の例では、図3に示される発光装置1よりも第1配線71の数が多い。第2実施形態に係る発光装置2では、3つの半導体レーザ素子20を個別に電気接続させ、個別に出力を調整できるようにしている。なお、いずれの半導体レーザ素子20も2つのエミッターを有するマルチエミッターである。
【0101】
発光装置2では、電子部品40の光照射面241において、3つの半導体レーザ素子20から出射される光のそれぞれに対応した受光領域242が設けられる。受光領域242に照射された光は一部が受光され、残りが上方に反射される。多くの光を出射させるには、90%以上の光を反射させるのが好ましい。発光装置2の例では、3つの半導体レーザ素子20が並ぶ方向と同じ方向に、3つの受光領域242が並ぶようにして設けられる。
【0102】
また、1の受光領域242は1の半導体レーザ素子20に対応し、それぞれの受光領域242は区切られている。つまり、それぞれの受光領域242は離れており、重ならない。また、それぞれの受光領域242に対応して、電気的な接続のための第2配線72との接合領域が設けられる。
【0103】
図9に示すように、電子部品40における第2配線72との接合領域は、受光領域のそれぞれに対応した第1接合領域243と、複数の受光領域に共通して利用される1の第2接合領域244と、を有する。
【0104】
第1接合領域243及び第2接合領域244のいずれも、半導体レーザ素子20からの主要部分の光が照射される領域よりも上方に設けられる。言い換えると、発光装置2において、主要部分の光が照射される領域よりも半導体レーザ素子20から遠ざかる位置に設けられる。
【0105】
また上面視で、受光領域242はそれぞれ、上端において側方の幅が狭くなる部分を有する。具体的には、上端の角に切欠きを設けた形状を有する。側方の幅を狭くする部分の形状および位置は、それぞれの受光領域242で共通している。
【0106】
また、第1接合領域243は、幅が狭くなったことで空いた領域に設けられる。1の受光領域242に係る1の第1接合領域243は、その受光領域242から側方に突出する。この突出方向に隣の受光領域242が並んでいる場合、この突出部分は、隣の受光領域242の幅が狭くなったことで空いた領域に設けられる。
【0107】
第1接合領域243は、受光領域242に照射される主要部分の光の長径を通る直線上には設けられない。つまり、第1接合領域243は、この直線上を避けた位置に設けられる。図7及び図8に示すように、第1接合領域243に接合された第2配線72は、そこから上方に伸びて第2配線領域16に接合される。光の長径を通る直線上を避けることで、電子部品40によって反射された光を第2配線72が遮ることを回避しやすくなる。
【0108】
2つの受光領域242の間に挟まれて配置される第1接合領域243は、2つの受光領域242のそれぞれに照射される主要部分の光の長径を通る直線の間に設けられる。つまり、第1接合領域243はこの2つの直線を超えない。これにより、隣の受光領域242に照射されて反射された光を第2配線72が遮ることを回避しやすくなる。
【0109】
また、隣り合う2つの受光領域242の対向する2つの辺であって最も近接する2辺のうち、一方の辺から第1接合領域243は突出し、かつ、他方の辺を通る直線が第1接合領域243を通る。このような位置関係により、受光領域242を近付けて配置しつつ第1接合領域243を設けることができ、発光装置2の小型化に貢献することができる。
【0110】
また上面視で、第2接合領域244は、電子部品40の上端近傍で、かつ、側方の2辺のうち第1接合領域243の突出方向とは逆の方向にある側辺の近傍に設けられる。第2接合領域244は、第2接合領域244から最も近い位置にある受光領域242に照射される主要部分の光の長径を通る直線上には設けられない。
【0111】
なお、1の半導体レーザ素子20に1の受光領域が対応する形態に限らず、複数の半導体レーザ素子20に1の受光領域を対応させてもよい。光照射面241には、1または複数の受光領域が設けられる。
【0112】
発光装置2では、電子部品40として用いられるPDにより、光照射面241に照射される光のうちの所定の割合を受光することができる。光制御ユニットは、この受光結果に基づいて、発光装置2から出射する光の光量、及び、電子部品40によって反射される光の光量を算出することができる。また、算出結果に基づいて、半導体レーザ素子20から出射される光の強弱を調整するなどの制御が可能となる。
【0113】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係る発光装置3の斜視図である。図11は、図10で示した発光装置3から蓋部材80を除いた状態の上面図である。
【0114】
発光装置3は、構成要素として、基部310、3つの半導体レーザ素子20、サブマウント30、電子部品40、支持台50、複数の配線70、及び、蓋部材80を有する。第3実施形態の発光装置3は、第1実施形態および第2実施形態の基部10と比べて、段差部が形成される部分が異なる。また、発光装置3では、発光装置1や発光装置2と比べて、確保する必要のある第1配線領域14の数が少ない。
【0115】
確保する第1配線領域14の数は、例えば、半導体レーザ素子20の数の影響を受け得る。半導体レーザ素子20を個別に駆動させたい場合、半導体レーザ素子20の数が増えれば、必要な配線領域の数も増える。上述した第1段差部にこの配線領域を設けるとすれば、第1配線領域14の数が増えることになる。
【0116】
また例えば、確保する第1配線領域14の数は、1の半導体レーザ素子20が有するエミッターの数の影響を受け得る。半導体レーザ素子20をエミッター単位で駆動させたい場合、エミッターの数が増えれば、必要な配線領域の数も増える。第1段差部にこの配線領域を設けるとすれば、第1配線領域14の数が増えることになる。
【0117】
図示される発光装置3の例では、3つの半導体レーザ素子20のそれぞれが、エミッターが1つのみのシングルエミッターで構成される。なお、第1配線領域の数は、これに限らず、他の要因によっても変化し得る。例えば、半導体レーザ素子20を保護するためにツェナーダイオードなどの保護素子を設ける場合などがある。
【0118】
設ける必要のある第1配線領域の数によって、第1段差部として確保しなければならない領域も変わる。第1段差部を形成する領域を適当に設計し、基部の大きさを小さくできれば、発光装置の小型化に繋がる。
【0119】
発光装置3では、側面部312において、第1段差部313の内側面は、半導体レーザ素子20及び電子部品40を直列に挟んで対向する2つの面領域のうち、半導体レーザ素子20までの距離よりも電子部品40までの距離の方が短い方の面領域には形成されない。これにより、発光装置を小型に設計することができる。
【0120】
図示される発光装置3の例では、第1段差部313は、並列に挟んで対向する2つの内側面を有する。また、直列に挟んで対向する2つの内側面のうち、半導体レーザ素子20までの距離よりも電子部品40までの距離の方が長い方の内側面を有する段差部はない。
【0121】
また、発光装置3では、第1段差部313は、上面視で、3つの半導体レーザ素子20の全てに関して、半導体レーザ素子20の出射端面に垂直な直線であって、半導体レーザ素子20を通るいかなる直線とも交わらない領域に形成される。
【0122】
以上、実施形態に係る発光装置を説明してきたが、本発明に係る発光装置は、実施形態の発光装置に厳密に限定されるものではない。つまり、本発明は、実施形態により開示された発光装置の外形や構造に限定されなければ実現できないものではない。また、全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずに適用され得るものである。例えば、特許請求の範囲に、実施形態により開示された発光装置の構成要素の一部が記載されていなかった場合、その一部の構成要素については、代替、省略、形状の変形、材料の変更などの当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを特定するものである。
【産業上の利用可能性】
【0123】
各実施形態に記載の発光装置は、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタ、車載ヘッドライト、照明、ディスプレイ等に使用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1、2、3 発光装置
10、310 基部
11 底面部
12、312 側面部
13、313 第1段差部
14 第1配線領域
15 第2段差部
16 第2配線領域
20 半導体レーザ素子
30 サブマウント
40 電子部品
41、241 光照射面
242 受光領域
243 第1接合領域
244 第2接合領域
50 支持台
51 傾斜面
60 光学部品
61 レンズ面
70 配線
71 第1配線
72 第2配線
80 蓋部材
図1
図2
図3
図4
図5
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図11