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  • 特許-光学部材、複合光学部材、及び照明装置 図1
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  • 特許-光学部材、複合光学部材、及び照明装置 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光学部材、複合光学部材、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/00 20060101AFI20240410BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240410BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240410BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20240410BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240410BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240410BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240410BHJP
【FI】
G02B6/00 326
C09K11/64
F21V8/00 310
F21V33/00 400
A01G7/00 601C
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022007370
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023106192
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢介
(72)【発明者】
【氏名】黒田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】三賀 大輔
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181210(JP,A)
【文献】特開2019-061796(JP,A)
【文献】特開2010-094109(JP,A)
【文献】特開2018-060719(JP,A)
【文献】特開2018-205626(JP,A)
【文献】特開2011-012091(JP,A)
【文献】国際公開第2022/255221(WO,A1)
【文献】特開2012-074250(JP,A)
【文献】特開2006-100009(JP,A)
【文献】特開2013-039035(JP,A)
【文献】特開2005-093188(JP,A)
【文献】特開2012-089290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0021440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02
G02B 6/245-6/25
G02B 6/46-6/54
H01L 33/00
C09K 11/64
F21V 8/00
F21V 33/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状の第一導光部材であって、端面と前記端面から長手方向に延在する側面とを含む第一導光部材と、
前記第一導光部材の前記側面に配置された、蛍光体を含む波長変換層と、
を有し、
前記蛍光体は、Kを含むアルカリ金属と、Siと、Alと、Mnと、Fと、を含む第一の組成を有し、
前記第一の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下であり、
立方晶系の結晶構造を有し、格子定数が0.8138nm以上である、光学部材。
【請求項2】
前記蛍光体は、50°以上の安息角を有する、請求項に記載の光学部材。
【請求項3】
前記波長変換層は、前記第一導光部材の一端又はその近傍から他端又はその近傍までの領域に配置されている、請求項1又は2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記波長変換層は、前記第一導光部材の前記側面のうち一方向から視認される部分に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項5】
前記波長変換層は、前記第一導光部材の前記側面の全周にわたって配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項6】
前記第一導光部材は、円柱状である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項7】
前記第一導光部材の表面の表面粗さ(Ra)は、0.2~1.0の範囲にある、請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項8】
前記第一導光部材は、光拡散材を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項9】
前記第一導光部材は、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、及びポリノルボルネン樹脂から選択される樹脂材料を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材と、
前記光学部材とは異なる波長の光を出射する第二光学部材と、を有し、
前記第二光学部材は、長尺形状の第二導光部材であって、端面と前記端面から長手方向に延在する側面とを含む第二導光部材を有する、複合光学部材。
【請求項11】
前記第二導光部材の前記側面上に、波長変換層を有しない、請求項10に記載の複合光学部材。
【請求項12】
前記第一導光部材と、前記第二導光部材とは、平行に配置される、請求項10又は11に記載の複合光学部材。
【請求項13】
前記光学部材と、前記第二光学部材とは、接している、請求項12に記載の複合光学部材。
【請求項14】
前記第二導光部材は、前記第一導光部材と同じ樹脂材料から構成される、請求項10~13のいずれか1項に記載の複合光学部材。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載の光学部材、又は請求項10~14のいずれか1項に記載の複合光学部材と、
前記光学部材、又は前記複合光学部材の端面に対向して配置された光源と、
を有する、照明装置。
【請求項16】
前記光源は、380~485nmにピーク波長を有する光を発する、請求項15に記載の照明装置。
【請求項17】
前記第一導光部材の表面の表面粗さは、前記光源からの距離が大きいほど大きくなる、請求項15又は16に記載の照明装置。
【請求項18】
前記第一導光部材は、光拡散材を含み、前記第一導光部材中の前記光拡散材の含有量は、前記光源からの距離が大きいほど大きくなる、請求項15~17のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項19】
前記複合光学部材を有し、
前記光学部材は、610~650nmにピーク波長を有する光を出射し、
前記第二光学部材は、380~485nmにピーク波長を有する光を出射する、
請求項10~14のいずれか1項を引用する請求項15~18のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項20】
前記複合光学部材を有し、前記第一導光部材と前記第二導光部材は平行に配置され、
前記光源から出射される光の入射先を、前記第一導光部材又は前記第二導光部材のいずれかに切り替え可能な切替装置を有する、
請求項10~14のいずれか1項を引用する請求項15~19のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項21】
前記切替装置は、遮光板を有し、
前記遮光板が、前記第一導光部材又は前記第二導光部材のいずれかに入射される光を遮光することにより、前記光源から出射される光の入射先を切り替える、請求項20に記載の照明装置。
【請求項22】
前記切替装置は、前記光源を、前記第一導光部材の端面に対向する位置、又は前記第二導光部材の端面に対向する位置に移動させることにより、前記光源から出射される光の入射先を切り替える、請求項20に記載の照明装置。
【請求項23】
前記光学部材又は前記複合光学部材の一の端面に対して、一の前記光源が配置される、請求項15~22のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項24】
前記光源は、前記光学部材又は前記複合光学部材の両端面のそれぞれに対向して配置される、請求項15~23のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項25】
植物の育成に用いられる、請求項15~24のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材、複合光学部材、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある一定の範囲に光を照射する場合、一般的には、複数の光源が用いられる。例えば、植物の育成には、特許文献1に記載のような発光装置が用いられるが、特許文献1に記載の発光装置による照射は、スポット照射であることから、大量の植物を育成する場合には、複数の発光装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-163053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、照射ムラが軽減された照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一態様において、光学部材は、長尺形状の第一導光部材であって、端面と前記端面から長手方向に延在する側面とを含む第一導光部材と、前記第一導光部材の前記側面に配置された、蛍光体を含む波長変換層と、を有する。
【0006】
本開示の第二態様において、複合光学部材は、上記光学部材と、前記光学部材とは異なる波長の光を出射する第二光学部材と、を有し、前記第二光学部材は、長尺形状の第二導光部材であって、端面と前記端面から長手方向に延在する側面とを含む第二導光部材を有する。
【0007】
本開示の第三態様において、照明装置は、上記光学部材、又は上記複合光学部材と、前記光学部材、又は前記複合光学部材の端面に対向して配置された光源と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、照射ムラが軽減された照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る光学部材の模式斜視図である。
図2A】実施形態1に係る光学部材における、波長変換層の配置を示す模式斜視図である。
図2B】実施形態1に係る光学部材における、波長変換層の配置を示す模式斜視図である。
図3】フッ化物蛍光体の製造方法の工程順序を示すフローチャートである。
図4A】実施形態1の変形例1に係る光学部材の模式斜視図である。
図4B】実施形態1の変形例1に係る光学部材の模式断面図である。
図4C】実施形態1の変形例1の一態様である光学部材の模式斜視図である。
図4D】実施形態1の変形例1の一態様である光学部材の照射範囲を示す模式断面図である。
図5】実施形態2に係る複合光学部材の模式斜視図である。
図6A】実施形態3に係る照明装置の模式斜視図である。
図6B】実施形態3に係る照明装置の模式平面図である。
図7】実施形態3の変形例3に係る照射装置の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する光学部材、複合光学部材、及び照明装置は、本開示に係る発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示に係る発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態に分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。また、断面図として切断面のみを示す端面図を用いる場合もある。
【0011】
<光学部材>
本開示に係る光学部材は、長尺形状の第一導光部材であって、端面と前記端面から長手方向に延在する側面とを含む第一導光部材と、前記第一導光部材の前記側面に配置された、蛍光体を含む波長変換層と、を有する。
【0012】
通常、広範囲に光を照射する場合、照射対象に対向する位置に複数の照明を設置することになるため、照射ムラが生じうる。本開示に係る光学部材は、光を端面から取り込み、面積の大きな側面から出射することから、照射ムラの軽減された光を広範囲に照射することができる。
【0013】
(実施形態1)
本開示に係る実施形態1は、光学部材101に関する。本開示に係る実施形態1の光学部材101を、図1を用いて説明する。図1は、光学部材101の模式斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本開示に係る実施形態1の光学部材101は、
長尺形状の第一導光部材1であって、端面2と端面2から長手方向に延在する側面3とを含む第一導光部材1と、
第一導光部材1の側面3に配置された、蛍光体を含む波長変換層4と、
を有する。
【0015】
第一導光部材
第一導光部材1は、長尺形状であって、端面2と、端面2から長手方向に延在する側面3と、を含む。
【0016】
本明細書において、長尺形状とは、その長手方向の長さが、当該長手方向に直交する任意の方向の長さよりも長い形状をいい、長手方向と短手方向とが区別できる形状であれば特に限定されず、例えば、円柱状、角柱状等を含む。典型的には、長尺形状において、その長手方向の長さは、当該長手方向に直交するいずれの方向の長さよりも2倍以上長い。
【0017】
本明細書において、端面とは、長尺形状の長手方向における両端に位置する面をいう。
【0018】
本明細書において、側面とは、端面から長手方向に延在する面をいう。換言すれば、側面とは、上記長手方向に沿った面をいう。尚、「長手方向に沿った」とは、長手方向に厳密に平行である場合に限定されず、ある程度のずれは許容される。例えば、長手方向からのずれが、20°程度あってもよい。
【0019】
第一導光部材1は、好ましくは、円柱状である。尚、第一導光部材1は、長尺形状であれば円柱状に限定されず、例えば、角柱状、より具体的には板状等であってもよい。第一導光部材1を円柱状とすることにより、導光された光を均一に出射することが容易になる。
【0020】
第一導光部材1の長さは、特に限定されず、例えば5cm以上、10cm以上、50cm以上、100cm以上、150cm以上、又は200cm以上であってもよい。第一導光部材1の長さを大きくすることにより、より広範囲に光を照射することができる。また、第一導光部材1の長さは、例えば1,000cm以下、500cm以下、300cm以下、200cm以下、100cm以下、又は50cm以下であってもよい。第一導光部材1の長さを小さくすることにより、第一導光部材1から出射される単位面積あたりの光の強度を強くすることができる。第一導光部材1の長さは、端面から入射する光の強度、側面から出射させる光の強度を考慮して適宜設定することができる。
【0021】
第一導光部材1の長さは、例えば5~1,000cm、10~500cm、50~300cm、50~200cm、50~100cm、100~300cm、又は100~200cmであってもよい。
【0022】
第一導光部材1の長さとは、長手方向の長さをいう。
【0023】
第一導光部材1の円相当径に対する長さの比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上、例えば、30以上、50以上、又は100以上であってもよい。第一導光部材1の円相当径に対する長さの比をより大きくすることにより、第一導光部材1は細くなり、端面2から離れた位置においても、端面2から入射した光の減衰を抑制することができる。また、第一導光部材1の円相当径に対する長さの比は、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは300以下、例えば200以下、100以下、又は50以下であってもよい。第一導光部材1の円相当径に対する長さの比をより小さくすることにより、第一導光部材1は太くなり、幅方向に広く光りを照射することができる。また、入射面である端面2の面積が大きくなり、入射する光量を増やすことが容易になる。第一導光部材1の円相当径に対する長さの比は、端面2から入射する光の強度、側面3から出射させる光の強度を考慮して適宜設定することができる。
【0024】
第一導光部材1の円相当径に対する長さの比は、例えば5~1,000、10~500、20~300、20~200、20~100、30~300、30~200、又は30~100であってもよい。
【0025】
上記円相当径とは、第一導光部材1の断面積と等しい正円の直径をいう。
【0026】
第一導光部材1の表面は、好ましくは、導光された光を拡散できる程度の粗さを有する。第一導光部材1の表面は、好ましくは、第一導光部材1の側面3である。第一導光部材1の表面を荒らすことにより、端面2から入射した光が、第一導光部材1の側面3から外部に出射しやすくなる。
【0027】
第一導光部材1の表面の表面粗さ(Ra)は、好ましくは0.2~1.0、より好ましくは0.2~0.9の範囲にある。第一導光部材1の表面の表面粗さ(Ra)を上記の範囲とすることにより、端面2から入射した光が第一導光部材1の外部に出射しやすくなる。
【0028】
第一導光部材1の表面の表面粗さは、好ましくは、光を入射させる端面2からの距離が大きいほど大きくなる。換言すれば、第一導光部材1の表面の表面粗さは、光源からの距離が大きいほど大きくなる。第一導光部材1の表面の表面粗さが大きいほど、端面2から入射した光を第一導光部材1の外部に出射しやすくなる。端面2から入射した光は、端面2から離れるほど減衰し、側面3から出射する光も弱くなるが、第一導光部材1の表面の表面粗さを端面2から離れるほど大きくすることにより、端面2ら離れた位置において側面3から出射する光の割合が大きくなり、第一導光部材1からの出射光の、長手方向における強度の差を小さくすることができる。
【0029】
第一導光部材1を構成する材料は、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、及びポリノルボルネン樹脂から選択される樹脂材料を含む。また、第一導光部材1を構成する材料には、例えば、石英ガラス等のガラス材料を含むこともできる。
【0030】
波長変換層
波長変換層4は、蛍光体を含み、第一導光部材1の側面3に配置される。
【0031】
図1に示す光学部材101においては、波長変換層4は、第一導光部材1の一端から他端までの領域、即ち、第一導光部材1の長手方向全体にわたって配置されているが、波長変換層4の配置はこれに限定されない。
【0032】
波長変換層4は、第一導光部材1の一端又はその近傍から他端又はその近傍までの領域に配置され得る。尚、近傍とは、第一導光部材の端を含まず、当該端から所定の距離までの領域をいう。上記端から所定の距離とは、例えば10cm以下、5cm以下、3cm以下、又は1cm以下であり得る。
【0033】
例えば、波長変換層4は、(i)第一導光部材1の一端から他端までの領域(図1)、(ii)第一導光部材1の一端から他端の近傍までの領域(図2A)、又は(iii)第一導光部材1の一端の近傍から他端の近傍までの領域(図2B)に、配置され得る。
【0034】
実施形態1に係る光学部材101において、波長変換層4は、第一導光部材1の側面3の全周にわたって配置されている。換言すれば、波長変換層4は、その配置箇所において、第一導光部材1を囲むように配置されている。
【0035】
波長変換層4は、蛍光体そのものが第一導光部材1の側面3に配置された層であってもよく、蛍光体が分散された樹脂等が側面3に配置された層であってもよい。層形成の容易さの観点から、波長変換層4は、蛍光体が分散された樹脂等の層が好ましい。
【0036】
波長変換層4に用いられる樹脂は、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、及びポリノルボルネン樹脂から選択される樹脂であってもよい。
【0037】
上記蛍光体が分散された樹脂の層における蛍光体の含有量は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、さらにより好ましくは80体積%以上であってもよい。蛍光体の含有量をより多くすることにより、第一導光部材1から出射する光の波長をより確実に変換することができる。また、上記蛍光体が分散された樹脂の層における蛍光体の含有量は、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、例えば、80体積%以下、70体積%以下、又は60体積%以下であってもよい。蛍光体の含有量をより少なくすることにより、波長変換層4の取り扱いが容易になり、第一導光部材1の側面3への配置が容易になる。
【0038】
上記蛍光体が分散された樹脂の層における蛍光体の含有量は、例えば30~95体積%、50~95体積%、70~95体積%、50~90体積%、70~90体積%、50~80体積%であってもよい。
【0039】
蛍光体
上記蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(POCl:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、SrAl1425:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、CaMgSi16Cl:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)若しくはαサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)等の酸窒化物系蛍光体、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(Kを含むアルカリ金属と、Siと、Alと、Mnと、Fとを含む蛍光体、例えば、KSi0.99Al0.015.99:Mn)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I))、又は、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInS又はAgInSe)等を用いることができる。蛍光体としては、1種類の蛍光体を用いてもよく、複数種類の蛍光体を用いてもよい。
【0040】
上記蛍光体は、好ましくはフッ化物蛍光体、より好ましくはKSAF系蛍光体である。
【0041】
上記KSAF系蛍光体は、カリウム(K)を含むアルカリ金属と、ケイ素(Si)と、アルミニウム(Al)と、マンガン(Mn)と、フッ素(F)とを含む。
【0042】
上記フッ化物蛍光体は、好ましくは、Kを含むアルカリ金属と、Siと、Alと、Mnと、Fと、を含む第一の組成を有し、立方晶系の結晶構造を有し、格子定数が0.8138nm以上である。上記第一の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である。KSAF系蛍光体が含むMnは4価のMnイオンを含んでいてもよい。フッ化物蛍光体は、例えば、後述するフッ化物蛍光体の製造方法で製造することができる。
【0043】
上記フッ化物蛍光体は、SiとAlと含み、Alが特定の含有比である組成を有し、格子定数が所定値以上である立方晶系の結晶構造を有することで、より高い輝度を示すことができる。これは例えば、以下のように考えることができる。フッ化物蛍光体の結晶構造を構成するSiの一部がAlに置換されることで、結晶構造中のF欠損が補償され、結晶構造が安定化するためと考えることができる。また、フッ化物蛍光体の結晶構造中のSiの一部がAlに置換されることで、所定値以上の格子定数を示す。さらにフッ化物蛍光体は、Alを結晶構造中に含むため、例えば赤外吸収スペクトルにおいて、Al-F結合に由来するピークを示す。
【0044】
上記フッ化物蛍光体の第一の組成は、組成に含まれるアルカリ金属の総モル数2に対して、SiとAlとMnの総モル数の比が、例えば0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下である。また、アルカリ金属の総モル数2に対するAlのモル数の比は、例えば0を超えて0.1以下であってよく、好ましくは0を超えて0.03以下、0.002以上0.02以下、又は0.003以上0.015以下である。また、アルカリ金属の総モル数2に対するMnのモル数の比は、例えば0を超えて0.2以下であってよく、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。さらに、アルカリ金属の総モル数2に対するFのモル数の比は、例えば5.9以上6.1以下であってよく、好ましくは5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下である。第一の組成において、アルカリ金属の総モル数2に対するSiのモル数の比は、例えば0.7以上1.1以下であってよく、好ましくは0.8以上1.03以下0.85以上1.01以下、又は0.92以上0.95未満である。第一の組成において、Siのモル数に対するAlのモル数の比は、例えば0.001以上0.14以下であってよく、好ましくは0.002以上0.04以下、又は0.003以上0.015以下である。
【0045】
上記フッ化物蛍光体は、第一の組成として下記式(I)で表される組成を有していてもよい。
[SiAlMn] (I)
【0046】
上記式(I)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。p、q、rおよびsは、0.9≦p+q+r≦1.1、0<q≦0.1、0<r≦0.2、5.9≦s≦6.1を満たしていてよい。好ましくは、0.95≦p+q+r≦1.05又は0.97≦p+q+r≦1.03、0<q≦0.03、0.002≦q≦0.02又は0.003≦q≦0.015、0.005≦r≦0.15、0.01≦r≦0.12又は0.015≦r≦0.1、5.92≦s≦6.05又は5.95≦s≦6.025であってよい。
【0047】
上記フッ化物蛍光体並びに後述する第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子の組成におけるアルカリ金属は、少なくともKを含み、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するKのモル数の比は、例えば0.90以上であってよく、好ましくは0.95以上、又は0.97以上である。Kのモル数の比の上限は、例えば1又は0.995以下であってよい。第一の組成においては、アルカリ金属の一部がアンモニウムイオン(NH4+)に置換されていてもよい。アルカリ金属の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0048】
上記フッ化物蛍光体は、立方晶系の結晶構造を含んでいてもよく、立方晶系の結晶構造に加えて六方晶系等の他の結晶系の結晶構造を含んでいてもよく、実質的に立方晶系の結晶構造のみから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは立方晶系以外の結晶構造の含有率が0.5%未満であることを意味する。フッ化物蛍光体が立方晶系の結晶構造を含む場合、その格子定数は例えば、0.8138nm以上であってよく、好ましくは0.8140nm以上、又は0.8143nm以上であってよい。格子定数の上限は例えば、0.8150nm以下であってよい。フッ化物蛍光体が立方晶系の結晶構造を含むこと、及びその格子定数はフッ化物蛍光体のX線回折パターンを測定することで評価することができる。X線回折パターンは例えば、X線源としてCuKα線(λ=0.15418nm、管電圧40kV、管電流40mA)を用いて測定される。
【0049】
上記フッ化物蛍光体は、赤外吸収スペクトルにおいて、例えば、590cm-1以上610cm-1以下の波数範囲に吸収ピークを有してよく、好ましくは593cm-1以上607cm-1以下、又は595cm-1以上605cm-1以下の波数範囲に吸収ピークを有していてよい。所定の波数範囲における吸収ピークは、例えば、立方晶系の結晶構造におけるAl-F結合に由来すると考えられる。赤外吸収スペクトルは例えば、全反射(ATR)法によって測定される。
【0050】
上記フッ化物蛍光体は、その粒子表面に凹凸、溝等を有していてもよい。フッ化物蛍光体がその結晶構造中にAlを取り込むことで、結晶構造が変化し、その粒子表面に凹凸、溝等が形成されると考えられる。粒子表面の状態は、例えば、フッ化物蛍光体からなる粉体の安息角を測定することで評価することができる。フッ化物蛍光体からなる粉体の安息角は例えば、60°以下であってよく、好ましくは55°以下であってよい。安息角の下限は、例えば30°以上、好ましくは40°以上、より好ましくは50°以上である。安息角が大きいフッ化物蛍光体の粉体を用いることにより、粉体の凝集が抑制され、樹脂中により均一に分散させることができる。このため、フッ化物蛍光体を、第一導光部材1の側面3に、より均一に配置することができ、光学部材101から照射ムラの軽減された光を出射することができる。粉体の安息角は、例えば、粉体特性測定器(例えば、A.B.D粉体特性測定器、筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定することができる。
【0051】
また、上記フッ化物蛍光体の粒子表面の状態は、例えば、フッ化物蛍光体からなる粉体の分散度、嵩密度等を測定することで評価することもできる。所定の分散度または所定の嵩密度を有するフッ化物蛍光体は、フッ化物蛍光体からなる粉体の凝集が抑制されることで、粉体が取り扱い易くなり、樹脂中に分散さえる等の加工工程における作業性が向上する。また、波長変換層においてフッ化物蛍光体の充填密度を大きくすることができる。フッ化物蛍光体からなる粉体の分散度は、例えば、2.0%以上であってよく、好ましくは5.0%以上、15%以上、又は20%以上であってよい。分散度の上限は、例えば75%以下、60%以下、又は50%以下であってよい。粉体の分散度は、例えば、粉体特性測定器(例えば、A.B.D粉体特性測定器、筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、ホッパーから分散度用受け皿に試料を落下させ、落下させた試料の重量から受け皿に残った試料の重量を差し引いた値を落下させた試料の重量で除して百分率として分散度が算出される。
【0052】
上記フッ化物蛍光体からなる粉体の嵩密度は、例えば、1.00g・cm-3以上であってよく、好ましくは1.05g・cm-3以上、1.10g・cm-3以上、又は1.15g・cm-3以上であってよい。嵩密度の上限は、例えば1.50g・cm-3以下、1.40g・cm-3以下、又は1.30g・cm-3以下であってよい。嵩密度は、例えば、メスシリンダーを用いる通常の測定方法により測定される。以下、嵩密度について具体的に説明する。一般に、粉体の嵩密度は、メスシリンダーに入れた既知重量の粉体試料の体積を測定するか、又はボリュメーターを通して容器内に入れた既知体積の粉体試料の重量を測定するか、若しくは専用の測定用容器を用いることによって求める。
【0053】
以下、例えば、メスシリンダーを用いる方法について説明する。まず、測定するのに十分な量の試料を準備し、必要に応じて、篩に通す。次に、乾いた一定容量のメスシリンダーに必要量の試料を入れる。ここで、必要に応じて、試料の上面を均す。これらの操作は試料の物性に影響を与えないように静かに行う。そして、体積を最小目盛単位まで読み取り、単位体積当たりの試料の重量を算出することによって嵩密度を求める。この嵩密度は、繰り返し測定することが好ましく、複数回測定し、それら測定値の算術平均値として求められることがより好ましい。
【0054】
上記フッ化物蛍光体の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、10μm以上90μm以下であってよく、好ましくは15μm以上70μm以下、又は20μm以上50μm以下であってよい。フッ化物蛍光体の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよく、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。
【0055】
上記フッ化物蛍光体は、例えば、4価のMnで賦活された蛍光体であり、可視光の短波長域の光を吸収して赤色発光する。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。610nm以上650nm以下の波長範囲の光は、植物の発芽後の成長期に必要な光であることから、上記フッ化物蛍光体による発光は、植物の育成に有用である。また、フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよく、植物の発芽後の成長期に必要な光を効率よく照射することができるため好ましい。
【0056】
フッ化物蛍光体の製造方法
図3は、フッ化物蛍光体の製造方法の工程の一例を示すフローチャートである。フッ化物蛍光体の製造方法は、第一のフッ化物粒子を準備すること(S101)と、第二のフッ化物粒子を準備すること(S102)と、第一の熱処理すること(S103)とを含んでいてよい。第一のフッ化物粒子を準備すること(S101)と、第二のフッ化物粒子を準備すること(S102)とはどちらを先におこなってもよく、同時に行ってもよい。また、フッ化物蛍光体の製造方法は、第一の熱処理すること(S103)の後に、洗浄すること(S104)を含んでいてよく、さらに洗浄すること(S104)の後に、第二の熱処理すること(S105)を含んでいてよい。
【0057】
フッ化物蛍光体の製造方法は、第一のフッ化物粒子を準備する第一準備工程と、第二のフッ化物粒子を準備する第二準備工程と、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度範囲で第一の熱処理をして第一熱処理物を得る第一熱処理工程と、を含む。第一のフッ化物粒子は、Kを含むアルカリ金属と、Siと、Mnと、Fとを含む第二の組成を有する。第二の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である。第二のフッ化物粒子は、Kを含むアルカリ金属と、Alと、Fとを含む第三の組成を有する。第三の組成は、Alのモル数を1とする場合に、アルカリ金属の総モル数が2以上3以下であり、Fのモル数が5以上6以下である。
【0058】
賦活元素となるMnを含む第一のフッ化物粒子と、Alを含む第二のフッ化物粒子との混合物を特定の温度で熱処理することで、第一のフッ化物粒子の組成にAlが導入されて、高い輝度を示すフッ化物蛍光体を製造することができる。これは例えば以下のように考えることができる。第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を比較的高い温度で熱処理することで、第一のフッ化物粒子に第二のフッ化物粒子が取り込まれ、第一のフッ化物粒子の結晶構造に含まれるSiの一部がAlに置換されることで、フッ化物蛍光体の結晶構造中のF欠損が補償されて結晶構造が安定化され、輝度が向上すると考えられる。
【0059】
第一準備工程
第一準備工程では、第二の組成を有する第一のフッ化物粒子を準備する。第二の組成は、アルカリ金属の総モル数2に対して、SiとMnの総モル数の比が0.9以上1.1以下であり、Mnのモル数の比が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数の比が5.9以上6.1以下であってよい。SiとMnの総モル数の比は、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。また、Mnのモル数の比は、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下であってよい。さらにFのモル数の比は、好ましくは5.95以上6.05以下、又は5.97以上6.03以下であってよい。
【0060】
第一のフッ化物粒子は、第二の組成として下記式(III)で表される組成を有していてよい。
[SiMn] (III)
【0061】
式(III)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。b、c及びdは、0.9≦b+c≦1.1、0<c≦0.2、5.9≦d≦6.1を満たしていてよい。好ましくは、0.95≦b+c≦1.05又は0.97≦b+c≦1.03、0.005≦c≦0.15、0.01≦c≦0.12又は0.015≦c≦0.1、5.95≦d≦6.05又は5.97≦d≦6.03であってよい。
【0062】
第一のフッ化物粒子の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、10μm以上90μm以下であってよく、好ましくは15μm以上70μm以下、又は20μm以上50μm以下であってよい。第一のフッ化物粒子の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよい。好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。具体的には、体積基準の粒径分布において、小径側からの体積累積10%に対応する粒径をD10、体積累積90%に対応する粒径をD90とすると、D10に対するD90の比(D90/D10)が、3.0以下であってよい。
【0063】
第一のフッ化物粒子は、例えば、4価のMnイオンで賦活された蛍光体であってよく、可視光の短波長域の光を吸収して赤色に発光してよい。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。第一のフッ化物粒子の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。第一のフッ化物粒子の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよい。
【0064】
第一のフッ化物粒子は、購入して準備してもよく、以下のような製造方法で製造して準備してもよい。以下ではアルカリ金属がカリウムである場合の製造方法について説明するが、アルカリ金属がカリウム以外のアルカリ金属を含む場合でも同様にして製造することができる。
【0065】
第一のフッ化物粒子の製造方法は、例えば、カリウムイオン及びフッ化水素を少なくとも含む第一の溶液と、4価のMnイオンを含む第一の錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第二の溶液と、ケイ素とフッ素イオンを含む第二の錯イオンを少なくとも含む第三の溶液と、を混合する工程を含む。第一の溶液と、第二の溶液と、第三の溶液と、を混合することで、所望の組成を有し、蛍光体として機能するフッ化物粒子を、生産性に優れる簡便な方法で製造することができる。
【0066】
第一の溶液は、カリウムイオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第一の溶液は、例えば、カリウムイオンを含む化合物のフッ化水素酸の水溶液として得られる。第一の溶液を構成するカリウムイオンを含む化合物としては、カリウムイオンを含むハロゲン化物、フッ化水素化物、水酸化物、酢酸塩、炭酸塩等の水溶性の化合物が挙げられる。具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、CHCOOK、KCO等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHFが好ましい。第一の溶液を構成するカリウムイオンを含む化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
第一の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、第一の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。また、第一の溶液におけるカリウムイオン濃度の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、第一の溶液におけるカリウムイオン濃度の上限値は、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。カリウムイオン濃度が5質量%以上であると、第一のフッ化物粒子の収率が向上する傾向がある。
【0068】
第二の溶液は、4価のMnイオンを含む第一の錯イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第二の溶液は、例えば、4価のマンガン源を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。マンガン源は例えば、4価のMnイオンを含む化合物である。第二の溶液を構成するマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、結晶格子を歪ませて不安定化させる傾向にある塩素を含まないことと、賦活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができることから、KMnFが好ましい。なお、マンガン源のうち、カリウムイオンを含むものは、第一溶液に含まれるカリウムイオン源を兼ねることができる。第二の溶液を構成するマンガン源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
第二の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、第二の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。第二の溶液における第一の錯イオン濃度の下限値は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、第二の溶液における第一の錯イオン濃度の上限値は、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0070】
第三の溶液は、ケイ素とフッ素イオンとを含む第二の錯イオンを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第三の溶液は、例えば、第二の錯イオン源を含む水溶液として得られる。第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ化物イオンを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として、具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第三の溶液を構成する第二の錯イオン源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
第三の溶液における第二の錯イオン濃度の下限値は、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、第三の溶液における第二の錯イオン濃度の上限値は、通常60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0072】
第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合方法として例えば、第一の溶液を撹拌しながら第二の溶液及び第三の溶液を添加して混合してもよく、第三の溶液を撹拌しながら第一の溶液及び第二の溶液を添加して混合してもよい。また、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液をそれぞれ容器に投入して撹拌混合してもよい。
【0073】
第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液を混合することにより、第一の錯イオンと、カリウムイオンと、第二の錯イオンとが反応して目的の第一のフッ化物粒子の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。また過酸化水素水などの還元剤を加えてもよく、エタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下で実施すればよい。乾燥時間としては、第一のフッ化物粒子に付着した水分を除去することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
【0074】
なお、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合に際しては、蛍光体原料の仕込み組成と得られる第一のフッ化物粒子の組成とのずれを考慮して、生成物としての第一のフッ化物粒子の組成が目的の組成となるように、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合割合を適宜調整することが好ましい。
【0075】
第一のフッ化物粒子の製造方法は、乾燥処理後に解砕、粉砕、分級操作等の処理を組合せて行う整粒工程を含んでいてもよい。整粒工程により所望の粒径の粉末を得ることができる。
【0076】
第二準備工程
第二準備工程では、第三の組成を有する第二のフッ化物粒子を準備する。第三の組成は、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が1以上3以下であり、Fのモル数の比が4以上6以下であってよい。一態様において、第三の組成は、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が2以上3以下であり、Fのモル数の比が5以上6以下であってよい。
【0077】
第二のフッ化物粒子は、第三の組成として下記式(IV)で表される組成を有していてよい。
Me[AlF] (IV)
【0078】
式(IV)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。e及びfは、2≦e≦3、5≦f≦6を満たしていてよい。
【0079】
第二のフッ化物粒子は、下記式(IVa)又は(IVb)で表される組成を有していてよく、両方の組成を含んでいてもよい。
[AlF] (IVa)
[AlF] (IVb)
【0080】
第二のフッ化物粒子の比表面積は、例えば、第一のフッ化物粒子との反応性の観点から、0.3m・g-1以上であってよく、好ましくは1m・g-1以上、又は3m・g-1以上であってよい。第二のフッ化物粒子の比表面積の上限は、例えば30m・g-1以下であってよい。比表面積は、例えば、BET法により測定される。
【0081】
第二のフッ化物粒子は、購入して準備してもよく、公知の製造方法で製造して準備してもよい。
【0082】
第一熱処理工程
第一熱処理工程は、準備した第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子を混合して混合物を得ることと、得られた混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度範囲で第一の熱処理をして第一熱処理物を得ることとを含んでいてよい。第一熱処理物は目的とするフッ化物蛍光体を含んでいる。
【0083】
第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子は、例えば、通常行われる乾式混合によって混合すればよい。乾式混合は、例えば、高速流動混合機等を用いて実施することができる。混合物における第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の割合は、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子のモル数の比が、例えば0を超えて0.1未満であってよい。好ましくは、0.05未満又は0.03モル未満であってよい。第二のフッ化物粒子のモル数の比の下限は、好ましくは0.003以上又は0.005以上であってよい。
【0084】
第一熱処理工程における熱処理温度(以下、第一熱処理温度ともいう)は、例えば600℃以上であればよい。熱処理温度は、好ましくは625℃以上、650℃以上、又は675℃以上であってよい。熱処理温度が600℃以上であれば、第一のフッ化物粒子が第二のフッ化物粒子を効率的に取り込むことができ、第一のフッ化物粒子の結晶構造中のSiの一部がAlに置換されて輝度が高いフッ化物蛍光体を得ることができる。また、第一熱処理工程における熱処理温度は、例えば800℃未満であってよい。熱処理温度は、好ましくは780℃以下、770℃以下、760℃以下、又は750℃以下であってよい。熱処理温度が800℃未満であれば、フッ化物粒子の熱分解を効果的に抑制することができる。一態様において第一の熱処理における第一熱処理温度は、650℃以上750℃以下であってよい。
【0085】
第一熱処理工程における熱処理時間は、例えば、1時間以上40時間以内であってよく、好ましくは2時間以上30時間以内であってよい。熱処理時間が前記範囲であると、第一のフッ化物粒子の結晶構造に含まれるSiのAlへの置換がより効率的に進行して、輝度が高いフッ化物蛍光体が得られる傾向がある。ここで、第一熱処理工程における熱処理時間は、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を、第一熱処理温度において保持する時間を意味する。第一熱処理工程における第一熱処理温度までの昇温速度は、例えば、1℃/分以上であってよい。
【0086】
第一熱処理工程では、不活性ガス雰囲気中で混合物の熱処理を実施してよい。不活性ガス雰囲気は、例えば、アルゴン、ヘリウム等の希ガス、窒素などの不活性ガスを主成分とする雰囲気を意味する。不活性ガス雰囲気中の主成分は、アルゴン、ヘリウム、窒素等から選択される少なくとも1種であればよく、少なくとも窒素を含んでいてよい。不活性ガス雰囲気中の不活性ガス、例えば窒素ガスの濃度は、例えば70体積%以上であってよく、好ましくは80体積%以上、85体積%以上、90体積%以上、又は95体積%以上であってよい。不活性ガスは不可避的不純物として酸素等の活性ガスを含むことがある。第一熱処理工程における雰囲気に含まれる活性ガス濃度は15体積%以下であればよく、好ましくは5体積%未満、1体積%未満、0.3体積%未満、又は0.1体積%未満であってよい。不活性ガス雰囲気は、酸素等の活性ガスを含まなくてもよい。不活性ガス雰囲気中の活性ガス濃度が前記範囲であると、混合物に含まれる4価のMnの酸化を充分に抑制することができる。
【0087】
第一熱処理工程における熱処理時の圧力は、例えば、大気圧(0.101MPa)であってよい。熱処理時の圧力は、0.101MPaを超えて1MPa以下でもよく、大気圧(0.101MPa)よりも低い圧力の減圧であってもよい。
【0088】
洗浄工程フッ化物蛍光体の製造方法は、第一熱処理工程で得られる第一熱処理物を液媒体と接触させる洗浄工程をさらに含んでいてもよい。洗浄工程は、例えば、第一熱処理物を液媒体と接触させることと、液媒体と接触させた第一熱処理物を固液分離することと、を含んでいてよく、必要に応じて固液分離後の第一熱処理物を乾燥処理することをさらに含んでいてもよい。
【0089】
第一熱処理物を液媒体と接触させることで、例えば、第一熱処理工程で生成した不純物(例えば、フッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物)の少なくとも一部を除去することができる。これにより得られるフッ化物蛍光体の組成変化を抑制することができ、組成変化に起因する輝度の低下を効果的に抑制することができると考えられる。
【0090】
第一熱処理物と接触させる液媒体としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン等のケトン溶剤、水などが挙げられる。不純物除去の観点から、液媒体は少なくとも水を含んでいてよく、水は、脱イオン水、蒸留水であってよく、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜等で精製された精製水であってもよい。
【0091】
液媒体は、過酸化水素等の還元剤を含んでいてもよい。液媒体が還元剤を含むことで、第一の熱処理によってフッ化物蛍光体中の賦活剤である4価のMnイオンが酸化した場合であっても、洗浄液中の還元剤によって還元され、得られるフッ化物蛍光体の発光特性をより高くすることができる。液媒体が還元剤を含む場合、その含有率は例えば、0.01質量%以上5質量%以下であってよく、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下であってよい。第一熱処理物との接触に用いる液媒体の量は、第一熱処理物の総質量に対して、例えば2倍以上20倍以下であってよい。
【0092】
第一熱処理物と液媒体の接触は、第一熱処理物と液媒体とを混合した後、液媒体を除去することで実施してもよく、漏斗等に保持した第一熱処理物に液媒体を通液して実施してもよい。第一熱処理物と液媒体の接触時間は、例えば1時間以上20時間以下であってよい。また第一熱処理物と液媒体の接触温度は、例えば10℃以上50℃以下であってよい。
【0093】
液媒体と接触させた第一熱処理物には乾燥処理を実施してもよい。乾燥処理における乾燥温度は、例えば50℃以上であってよく、好ましくは55℃以上又は60℃以上であってよく、また例えば110℃以下であってよく、好ましくは105℃以下又は100℃以下であってよい。乾燥時間としては、液媒体との接触によって第一熱処理物に付着した液媒体(例えば、水分)の少なくとも一部を蒸発することができる時間であり、例えば、10時間程度である。
【0094】
第二熱処理工程
フッ化物蛍光体の製造方法は、液媒体と接触させた後の第一熱処理物を、フッ素含有物質と接触させた状態で、400℃以上の第二熱処理温度で第二の熱処理をして第二熱処理物を得る第二熱処理工程をさらに含んでいてよい。第二熱処理物は目的とするフッ化物蛍光体を含んでいる。
【0095】
液媒体と接触させた後の第一熱処理物を、フッ素含有化合物と接触させた状態で熱処理することで、フッ化物蛍光体の結晶構造中でフッ素原子が不足している領域にフッ素原子が供給されて、結晶構造の欠陥がより低減されると考えられる。これにより輝度がより向上されると考えられる。またフッ化物蛍光体の耐久性がより向上すると考えられる。
【0096】
第二熱処理工程で用いられるフッ素含有物質は、常温で固体状態、液体状態又は気体状態のいずれであってもよい。固体状態又は液体状態のフッ素含有物質としては、例えば、NHF等が挙げられる。また、気体状態のフッ素含有物質としては、例えば、F、CHF、CF、NHHF、HF、SiF、KrF、XeF、XeF、NF等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよく、好ましくはF及びHFからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0097】
フッ素含有物質が、常温で固体状態又は液体状態のものである場合、液媒体との接触させた後の第一熱処理物とフッ素含有物質と混合することで、これらを接触させた状態とすることができる。第一熱処理物は、例えば、第一熱処理物とフッ素含有物質の合計量100質量%に対して、フッ素原子の質量換算で1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上10質量%以下のフッ素含有物質と混合してよい。
【0098】
第一熱処理物とフッ素含有物質を混合する際の温度は、例えば、室温(20℃±5℃)から第二熱処理温度よりも低い温度でもよく、第二熱処理温度でもあってもよい。具体的には、20℃以上400℃未満の温度でもよく、400℃以上の温度であってもよい。第一熱処理物と常温で固体状態又は液体状態のフッ素含有物質とを接触させる温度が20℃以上400℃未満の場合は、第一熱処理物とフッ素含有物質とを接触させてから400℃以上の温度で第二の熱処理を行なう。
【0099】
フッ素含有物質が気体である場合には、フッ素含有物質を含む雰囲気中に第一熱処理物を配置して接触させてもよい。フッ素含有物質を含む雰囲気は、フッ素含有物質に加えて希ガス、窒素等の不活性ガスを含んでいてもよい。この場合、雰囲気中のフッ素含有物質の濃度は、例えば、3体積%以上35体積%以下であってよく、好ましくは5体積%以上又は10体積%以上であってよく、また好ましくは30体積%以下又は25体積%以下であってよい。
【0100】
第二の熱処理は、第一熱処理物とフッ素含有物質とを接触させた状態で、第二熱処理温度を所定時間に亘って保持することで実施してよい。第二熱処理温度は、例えば400℃以上であってよく、好ましくは400℃より高い温度、425℃以上、450℃以上又は480℃以上であってよい。第二熱処理温度の上限は、例えば600℃未満であってよく、好ましくは580℃以下、550℃以下又は520℃以下であってよい。第二熱処理温度は、第一熱処理温度よりも低い温度であってよい。
【0101】
第二熱処理温度が前記下限値以上であると、第一熱処理物に充分にフッ素原子が供給され、得られるフッ化物蛍光体の輝度がより向上する傾向がある。また第二熱処理温度が前記上限値以下であると、得られるフッ化物蛍光体の分解がより効果的に抑制され、得られるフッ化物蛍光体の輝度がより向上する傾向がある。
【0102】
第二の熱処理における熱処理時間、すなわち、第二熱処理温度を保持する時間は、例えば、1時間以上40時間以下であってよく、好ましくは2時間以上又は3時間以上であってよく、また好ましくは30時間以下、10時間以下又は8時間以下であってよい。第二熱処理温度での熱処理時間が前記範囲内であれば、液媒体と接触後の第一熱処理物に、十分にフッ素原子を供給することができる。これによりフッ化物蛍光体の結晶構造がより安定となり、輝度が高いフッ化物蛍光体が得られる傾向がある。
【0103】
第二熱処理温度での熱処理時間は、第一熱処理温度での熱処理時間と同じであるか、又は第一熱処理温度での熱処理時間よりも長時間であってよい。すなわち、第二熱処理温度での熱処理時間は、第一熱処理温度での熱処理時間の1倍以上の時間であってよい。これにより、液媒体との接触後の第一熱処理物にフッ素原子が十分に供給され、得られるフッ化物蛍光体の輝度をより向上させることができる傾向がある。
【0104】
第二熱処理工程における圧力は、大気圧(0.101MPa)であってもよく、大気圧を超えて5MPa以下でもよく、大気圧を超えて1MPa以下でもよい。
【0105】
フッ化物蛍光体の製造方法は、第二熱処理工程後に得られる第二熱処理物に解砕、粉砕、分級操作等の処理を組合せて行う整粒工程を含んでいてもよい。整粒工程により所望の粒径の粉末を得ることができる。
【0106】
(変形例1)
変形例1の光学部材102において、波長変換層4は、第一導光部材1の側面3のうち、一方向から視認される部分に配置される。
【0107】
例えば、図4A及び図4Bは、下方から視認される場合の、変形例1の光学部材102を示す。図示されるように、波長変換層4は、下方から視認される領域、即ち、第一導光部材1の側面3のうち、下半分の領域に配置されている。尚、本変形例1は、視認されない領域に、波長変換層4を配置することを除外しない。即ち、図4A及び図4Bに示す光学部材102において、波長変換層4は、さらに上方まで存在してもよい。換言すれば、波長変換層4は、第一導光部材1の断面において、側面3の半分を超える領域に存在してもよい。
【0108】
波長変換層4を、第一導光部材1の側面3のうち一方向から視認される部分に配置することにより、照射対象に、所望の波長域を有する光を効率的に照射することができる。
【0109】
図4A及び図4Bには、波長変換層4が、第一導光部材1の側面3のうち、下半分の領域に配置されている形態を示したが、変形例1はこれに限定されるものではない。例えば、図4C及び図4Dに示される光学部材103のように、下半分より狭い、より具体的には、外周の1/n(nは2より大きい数)の範囲に波長変換層4を配置することもできる。このような構成によれば、第一導光部材1の中心線21(即ち、第一導光部材1の軸)、及び波長変換層4の長手方向に沿った一の端辺22を含む第一照射側面24と、第一導光部材1の中心線21、及び波長変換層4の長手方向に沿った一の端辺23を含む第二照射側面25と、に挟まれた領域26を選択的に照射することができる。即ち、長手方向に沿って、所望の幅を有する細長い領域に、所望の波長域を有する光を照射することが可能になる。例えば、植物を育成する畝の部分に対して、効率的に照射可能になる。
【0110】
波長変換層4が配置されない第一導光部材1の側面3は、露出していてもよく、他の部材、例えば光反射性部材により覆われていてもよい。
【0111】
波長変換層4が配置されない第一導光部材1の側面3に光反射性部材を配置することにより、光学部材から出射する光を目的の方向に集中させることができ、照射光の強度が高くなる。
【0112】
上記光反射性部材は、例えば、樹脂中に光拡散材を含有させた部材、又は金属層であり得る。
【0113】
上記樹脂中に光拡散材を含有させた部材において、樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はアクリル樹脂等が用いられ、光拡散材としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛等が用いられる。
【0114】
上記金属層において、金属としては、例えば、白金、銀、ロジウム、又はアルミニウム等が用いられる。
【0115】
(変形例2)
変形例2の光学部材において、第一導光部材1は、光拡散材を含む。第一導光部材1が光拡散材を含むことにより、端面2から入射した光が、第一導光部材1の側面3から外部に出射しやすくなる。
【0116】
第一導光部材1中の光拡散材の含有量は、好ましくは、光を入射させる端面2からの距離が大きいほど大きくなる。換言すれば、第一導光部材1中の光拡散材の含有量は、光源からの距離が大きいほど大きくなる。第一導光部材1中の光拡散材の含有量が大きいほど、端面2から入射した光を第一導光部材1の外部に出射しやすくなる。端面2から入射した光は、端面2から離れるほど減衰するが、第一導光部材1中の光拡散材の含有量を、端面2から離れるほど大きくすることにより、端面2から離れた位置において側面3から出射する光の割合が大きくなり、第一導光部材1からの出射光の、長手方向における強度の差を小さくすることができる。
【0117】
上記光拡散材は、例えば、ジルコニア、又はチタニア等を含む。
【0118】
第一導光部材1に入射する光が紫外光である場合は、上記光拡散材は、好ましくは、紫外波長域の光吸収の少ないジルコニアであり得る。上記光拡散材に用いられるジルコニアは、ジルコニア単体であってもよく、ジルコニアの表面にシリカ、アルミナ、亜鉛、有機材料等のうちいずれか1又は2以上で構成される被覆膜が被覆されたものであってもよい。また、上記光拡散材に用いられるジルコニアは、カルシウム、マグネシウム、イットリウム、アルミニウム等が添加された安定化ジルコニアや、部分安定化ジルコニアであってもよい。
【0119】
上記光拡散材に用いられるチタニアは、チタニア単体であってもよく、チタニアの表面に、シリカ、アルミナ、ジルコニア、亜鉛、有機材料等のうちいずれか1又は2以上で構成される被覆膜が被覆されたものであってもよい。
【0120】
<複合光学部材>
本開示に係る複合光学部材は、
上記した本開示に係る光学部材と、
前記光学部材とは異なる波長の光を出射する第二光学部材と、を有し、
前記第二光学部材は、長尺形状の第二導光部材であって、端面と前記端面から長手方向に延在する側面とを含む第二導光部材を有する。
【0121】
本開示に係る複合光学部材は、2種の光学部材、即ち光学部材と、当該光学部材とは異なる波長の光を出射する第二光学部材とを有することから、1つの複合光学部材で、波長の異なる2種の光を出射することができる。
【0122】
(実施形態2)
本開示に係る実施形態2は、複合光学部材201に関する。実施形態2の複合光学部材201を、図5を用いて説明する。図5は、複合光学部材201の模式斜視図である。
【0123】
図5に示すように、本開示に係る実施形態2の複合光学部材201は、本開示に係る光学部材111と、光学部材111とは異なる波長の光を出射する第二光学部材112と、を有し、第二光学部材112は、長尺形状の第二導光部材11であって、端面12と端面12から長手方向に延在する側面13とを含む第二導光部材11を有する。
【0124】
光学部材111は、例えば、上記した光学部材101、又は光学部材102であり得る。
【0125】
第二導光部材11は、長尺形状であって、端面12と、端面12から長手方向に延在する側面13と、を含む。第二導光部材11は、上記第一導光部材1に関して記載した特徴と同様の特徴を有し得る。
【0126】
第二導光部材11は、第一導光部材1と、形状及び組成が同じものであってもよく、異なるものであってもよい。好ましくは、第二導光部材11は、第一導光部材1と同じ形状及び組成を有する。例えば、第二導光部材11は、円柱状である。また、第二導光部材11は、第一導光部材1と同じ樹脂材料から構成される。
【0127】
第二導光部材11は、側面13上に波長変換層を有していても、有していなくてもよく、好ましくは、第二導光部材11は、側面13上に波長変換層を有しない。第二導光部材11の側面13上に波長変換層を有しない第二光学部材112は、端面12から入射した光と、側面13から出射する光の波長特性が同じであり得る。
【0128】
第一導光部材1と第二導光部材11とは、互いの長手方向が平行となるように配置され得る。尚、平行とは、厳密に平行である場合に限定されず、ある程度のずれ、例えば10°程度のずれがあってもよい。
【0129】
光学部材111と第二光学部材112とは、互いに近接して配置される。例えば、光学部材111と第二光学部材112とは、互いの側面が接するように配置されてもよく、互いに近傍に配置されてもよい。好ましくは、光学部材111と第二光学部材112とは、互いの側面が接するように配置される。光学部材111と第二光学部材112とを、互いに近接するように、好ましくは互いに接するように配置することにより、1つの複合光学部材を用いて、照射対象に異なる2種の波長特性を有する光を照射することができる。
【0130】
実施形態2の複合光学部材201において、光学部材111及び第二光学部材112として実施形態1の変形例1に係る光学部材を用いてもよい。このようにすると、光学部材111及び第二光学部材112から下方又は下方の所定の範囲に照射することができる。尚、波長変換層を有しない第二光学部材112を用いる場合には、例えば、第二光学部材112において、光学部材111の波長変換層4が設けられた領域に対応する領域を除く側面3に光反射層を配置すればよい。
【0131】
<照明装置>
本開示に係る照明装置は、本開示に係る光学部材又は複合光学部材と、前記光学部材、又は前記複合光学部材の端面に対向して配置された光源と、を有する。
【0132】
本開示に係る照明装置は、上記した本開示に係る光学部材又は複合光学部材を用いていることから、照射ムラの軽減された光を広範囲に照射することができる。また、本開示に係る複合光学部材を用いる場合には、1つの照明装置で、波長の異なる2種の光を照射することができる。
【0133】
本開示に係る照明装置は、好ましくは、第一導光部材と第二導光部材とが平行に配置された複合光学部材を有し、さらに、光源から出射される光の入射先を、上記複合光学部材の第一導光部材又は第二導光部材のいずれかに切り替え可能な切替装置を有し得る。
【0134】
上記照明装置において、光源が発する光は、第一導光部材又は第二導光部材の端面から第一光学部材又は第二光学部材に入射し、第一光学部材又は第二光学部材の側面から出射する。上記切替装置は、光源から出射される光の入射先を、上記複合光学部材の第一導光部材又は第二導光部材のいずれかに切り替えることができることから、上記照明装置は、2種の光を選択的に照射することができる。
(実施形態3)
【0135】
本開示に係る実施形態3は、照明装置301に関する。実施形態3の照明装置301を、図6A及び図6bを用いて説明する。図6Aは、照明装置301の模式斜視図であり、図6Bは、照明装置301の模式平面図である。
【0136】
図6A及び図6bに示すように、本開示に係る実施形態3の照明装置301は、複合光学部材201と、複合光学部材201の端面に対向して配置された光源31と、を有する。さらに、光源31から出射される光の入射先を、上記複合光学部材201の第一導光部材1又は第二導光部材11のいずれかに切り替え可能な遮光板32を有し得る。
【0137】
光源
光源31は、複合光学部材201の端面に対向して配置される。光源31から出射される光は、複合光学部材201の第一導光部材1又は第二導光部材11のいずれかに入射する。
【0138】
光源31は、好ましくは、複合光学部材201の一の端面に対して、一の光源31が配置される。本開示に係る照明装置301は、複合光学部材201の一の端面に対して、一の光源31しか有しない場合であっても、切替装置としての遮光板32により入射先を選択できることから、第一導光部材1又は第二導光部材11のいずれにも選択的に光を導光できる。
【0139】
図示する例において、光源31は、複合光学部材201の一方の端面側にのみ配置されているが、これに限定されず、複合光学部材201の両方の端面側に配置されていてもよい。例えば、複合光学部材201の各端面に対してそれぞれ1つ、合計2つの光源31を配置してもよい。複合光学部材201の両方の端面側に光源31を配置することにより、照明装置301から出射される光の強度を高めることができ、また、より均一な照射が可能になる。
【0140】
光源31としては、好ましくは、発光ダイオード(LED)、又はレーザダイオード(LD)が用いられる。LED又はLDを用いる場合、有用ではない波長域の光の照射を回避しつつ、有用な波長域の光の照射が容易に実現可能となる。また、LED又はLDの使用は、低発熱性、低消費電力や長寿命に起因して、エネルギー効率及び経済性の観点からも好ましい。加えて、照度又は照射量の制御若しくは管理が容易になる。
【0141】
光源31は、好ましくは、380~485nmにピーク波長を有する光を発する。植物の発芽期に必要とされる光の波長範囲は380~485nmであることから、光源31から発せられた380~485nmにピーク波長を有する光を、波長変換層4を介することなく直接出射させることができ、植物の育成に有用である。
【0142】
複合光学部材
複合光学部材201において、好ましくは、光学部材111は、610~650nmにピーク波長を有する光を出射し、第二光学部材112は、380~485nmにピーク波長を有する光を出射し得る。
【0143】
植物の発芽期に必要とされる光の波長範囲は、380~485nmであり、植物の発芽後の成長期に必要な光の波長範囲は、610~650nmであることから、上記のようなピーク波長を有する光を出射し得る照明装置301は、植物の育成用の照明として有用である。
【0144】
複合光学部材201において、第一導光部材1の表面の表面粗さ(Ra)は、好ましくは、光源31からの距離が大きいほど大きくなる。同様に、第二導光部材11の表面の表面粗さは、好ましくは、光源31からの距離が大きいほど大きくなる。例えば、光源31が複合光学部材201の一方の端面側にのみ配置されている場合、第一導光部材1及び第二導光部材11の表面の表面粗さは、光源31側の端面から、他方の端面に向かって大きくなる。また、光源31が複合光学部材201の両方の端面側に配置されている場合、第一導光部材1及び第二導光部材11の表面の表面粗さは、両方の端面から、長手方向中央に向かって大きくなる。このように第一導光部材1及び第二導光部材11の表面の表面粗さを、光源31から離れるほど大きくすることにより、光源31から離れた位置において側面から出射する光の割合が大きくなり、照明装置301からの出射光の、長手方向における強度の差を小さくすることができる。
【0145】
複合光学部材201において、好ましくは、第一導光部材1は、光拡散材を含み、第一導光部材1中の光拡散材の含有量は、光源31からの距離が大きいほど大きくなる。同様に、好ましくは、第二導光部材11は、光拡散材を含み、第二導光部材11中の光拡散材の含有量は、光源31からの距離が大きいほど大きくなる。例えば、光源31が複合光学部材201の一方の端面側にのみ配置されている場合、第一導光部材1及び第二導光部材11中の光拡散材の含有量は、光源31側の端面から、他方の端面に向かって大きくなる。また、光源31が複合光学部材201の両方の端面側に配置されている場合、第一導光部材1及び第二導光部材11中の光拡散材の含有量は、両方の端面から、長手方向中央に向かって大きくなる。このように第一導光部材1及び第二導光部材11中の光拡散材の含有量を、光源31から離れるほど大きくすることにより、光源31端面から離れた位置において側面から出射する光の割合が大きくなり、照明装置301からの出射光の、長手方向における強度の差を小さくすることができる。
【0146】
遮光板
上記遮光板32は、光源31から出射される光の入射先を、第一導光部材1又は第二導光部材11のいずれかに切り替え可能である切替装置の一部であり得る。遮光板32は、光源31と、第一導光部材1又は第二導光部材11との間に位置し、第一導光部材1又は第二導光部材11のいずれか一方への光の入射を遮断するように移動可能である。例えば、図6Aに示すように、遮光板32が第一導光部材1の端面に対向する場所に位置する場合には、第一導光部材1への光の入射が遮断され、第二光学部材112のみから光が出射される。また、遮光板32が第二導光部材11の端面に対向する場所に位置する場合には、第二導光部材11への光の入射が遮断され、光学部材111のみから光が出射される。
【0147】
尚、上記切替装置は、第一導光部材1と第二導光部材11との間で光の入射先を切り替えることができるものであれば、特に限定されない。
【0148】
(変形例3)
図7に示すように、変形例3の照明装置302において、切替装置33は、光源31を、第一導光部材1の端面に対向する位置、又は第二導光部材11の端面に対向する位置に移動させることにより、光源31から出射される光の入射先を切り替える。具体的には、切替装置33は、光源31を、光学部材111の端面に対向する位置(図7中、実線で示す)から第二光学部材112の端面に対向する位置(図7中、破線で示す)に、或いはその逆に移動させる。
【0149】
尚、実施形態3において、照明装置が本開示の複合光学部材を有する場合について説明したが、本開示に係る照明装置においては、複合光学部材は本開示の光学部材に置換可能である。
【0150】
本開示に係る照明装置は、種々の用途に用いることができ、特に植物の育成用の照明として好適に用いられる。
【0151】
植物の育成用の照明として用いる場合、光学部材111及び第二光学部材112として実施形態1の変形例1に係る光学部材を用い、下方の所定の範囲、すなわち植物を育成する畝の部分に主として照射可能な照明装置とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0152】
101,102,103…光学部材、
1…第一導光部材、2…端面、3…側面、4…波長変換層、
201…複合光学部材、111…光学部材、112…第二光学部材、
11…第二導光部材、12…端面、13…側面、
21…第一導光部材1の中心線、22、23…波長変換層の端辺、
24…第一照射側面、25…第二照射側面、26…照射領域、
301…照明装置、31…光源、32…遮光板、33…切替装置
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7