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特許7469725金属含有CHA型ゼオライト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】金属含有CHA型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240410BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240410BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240410BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/76 A
B01D53/86 222
B01D53/86 ZAB
B01D53/94 222
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023080208
(22)【出願日】2023-05-15
(62)【分割の表示】P 2018189726の分割
【原出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2023099653
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2017197491
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前浜 誠司
(72)【発明者】
【氏名】青山 英和
(72)【発明者】
【氏名】中村 総
(72)【発明者】
【氏名】楢木 祐介
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518251(JP,A)
【文献】国際公開第2017/100384(WO,A1)
【文献】特表2015-529608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90
B01D 53/94
B01D 53/73
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IRスペクトルにおいて、1820cm-1以上1860cm1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する3480cm-1以上3520cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.6未満であり、少なくとも下表のXRDピークを有し、金属を少なくともCHA構造の骨格構造外に金属イオンとして含有し、前記金属が鉄又は銅の少なくともいずれかである、金属含有CHA型ゼオライト。
【表1】
【請求項2】
IRスペクトルにおいて、1820cm-1以上1860cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する、3710cm-1以上3735cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.5未満である請求項1に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
【請求項3】
IRスペクトルにおいて、1820cm-1以上1860cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する、3640cm-1以上3670cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が7.0未満である請求項1又は2に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
【請求項4】
アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上31.5以下である請求項1又は2に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
【請求項5】
前記金属が銅である請求項1又は2に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
【請求項6】
アルミニウムに対する銅のモル比が0.10以上0.50以下である請求項5に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の金属含有CHA型ゼオライトを含む窒素酸化物還元触媒。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の金属含有CHA型ゼオライトを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属含有CHA型ゼオライト及びその製造方法に関する。特に、窒素酸化物還元触媒として、なおかつ、工業的な利用に適した金属含有CHA型ゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CHA型ゼオライト(チャバザイト型ゼオライト)は、3.8×3.8Åの細孔を形成した酸素8員環を含み、三次元細孔構造を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは天然にも存在するが、アルミナに対するシリカのモル比が高いCHA型ゼオライトは人工的に合成されたものしかない(例えば、特許文献1乃至4、非特許文献1及び2)。
【0003】
アルミナに対するシリカのモル比が高いCHA型ゼオライトは各種の触媒として使用されている。触媒用途の中でも選択的接触還元による窒素酸化物還触媒として広く使用されている(特許文献5乃至8)。
【0004】
例えば、特定の構造指向剤としてN,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム水酸化物と種晶を併用して得られたCHA型ゼオライトが、従来のSSZ-62と比べ、SCR触媒に適したCHA型ゼオライトとなることが開示されている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許4,544,538号
【文献】米国特許4,665,110号
【文献】米国特許公開2007/0100185号
【文献】米国特許公報2011/0251048号
【文献】米国特許公開2003/0069449号
【文献】米国特許公開2011/0182790号
【文献】米国特許公開2010/0092362号
【文献】国際公開2013/182974号
【非特許文献】
【0006】
【文献】J.Phys.Chem.C,114(2010)1633-1640
【文献】ZEOLITES,Vol.8(1988)166-174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、窒素酸化物還元特性に優れ、従来とは異なる金属含有CHA型ゼオライト及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、窒素酸化物還元触媒として適した金属含有CHA型ゼオライトについて検討した。その結果、従来のCHA型ゼオライトと異なるIRスペクトルを有する金属含有CHA型ゼオライト、及び、このような金属含有CHA型ゼオライトが窒素酸化物還元特性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] IRスペクトルにおいて、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する3685cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.5未満であること、を特徴とする金属含有CHA型ゼオライト。
[2] IRスペクトルにおいて、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する、3450cm-1以上3545cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.6未満である上記[1]に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
[3] IRスペクトルにおいて、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する、3550cm-1以上3680cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が7.0未満である上記[1]又は[2]に記載の金属含有CHA型ゼオライト。
[4] 少なくとも下表のXRDピークを有する上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライト。
【0010】
【表1】
【0011】
[5] アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上55.0以下である上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライト。
[6] アルミナに対するシリカのモル比が10.0以上31.5以下である上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライト。
[7] 前記金属が鉄又は銅の少なくともいずれかである上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライト。
[8] アルミニウムに対する銅のモル比が0.10以上0.50以下である上記[1]乃至[7]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライト。
[9] 金属源と、IRスペクトルにおける1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する3665cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の強度比が1.5未満であるCHA型ゼオライトと、を混合する金属含有工程、を有することを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライトの製造方法。
[10] 前記CHA型ゼオライトが、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する、3450cm-1以上3545cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.6未満である上記[9]に記載の製造方法。
[11] 前記CHA型ゼオライトが、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する上記[9]又は[10]に記載の製造方法。
【0012】
【表2】
【0013】
[12] 前記CHA型ゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比が10.0以上55.0以下である上記[9]乃至[11]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[13] 前記CHA型ゼオライトのケイ素に対するシラノール基のモル比が0.15×10-2以上1.80×10-2以下である上記[9]乃至[12]のいずれかひとつに記載の製造方法。
[14] 上記[1]乃至[8]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライトを含む触媒。
[15] 上記[1]乃至[8]のいずれかひとつに記載の金属含有CHA型ゼオライトを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、窒素酸化物還元特性に優れ、従来とは異なる金属含有CHA型ゼオライト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】CHA型ゼオライトの骨格端部を示す模式図 (a)骨格構造のネットワーク構造中の末部を示す模式図 (b)骨格構造のネットワーク構造中の端部を示す模式図
図2】CHA型ゼオライトの結晶粒子を示す模式図 (a)一次結晶粒子示す模式図 (b)凝集結晶粒子を示す模式図
図3】実施例及び比較例の窒素酸化物還元率(相対値)を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施態様はCHA型ゼオライトに係る。本実施態様において、CHA型ゼオライトは、国際ゼオライト学会で定義される構造コードでCHA構造となる結晶構造(以下、単に「CHA構造」ともいう。)を有する結晶性アルミノシリケートである。CHA構造は、粉末X線回折(以下、「XRD」という。)パターンによって確認することができる。
【0017】
本実施態様におけるXRD測定の条件として、以下の条件を挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 0.04°/秒
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=5°から43°
【0018】
本実施態様において、CHA型ゼオライトは、CHA構造を有する、結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)を骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)とし、T原子が酸素(O)を介して結合した三次元のネットワーク構造からなる骨格構造を有する結晶からなる。本実施態様において、CHA型ゼオライトは、T原子としてリン(P)を含有するシリコアルミノホスフェート(SAPO)やアルミノホスフェート(AlPO)など、ゼオライト類縁物質を含まない。具体的なCHA構造を有するゼオライト類縁物質としてSAPO-34が例示できる。
【0019】
概念的又は理想的な結晶性アルミノシリケートはネットワーク構造のみ、すなわち-O-Al-O-Si-O-構造の繰り返しのみ、から構成される。これに対し、現実的に存在する結晶性アルミノシリケートは、図1に示すように、ネットワーク構造の末端(図1(a))やネットワーク構造中の端部(図1(b))(以下、これらをまとめて「骨格端部」ともいう。)を有し、骨格端部はシラノール基(Si-OH)となる。本実施態様におけるCHA型ゼオライトは現実的に存在する結晶性アルミノシリケートである。そのため、結晶にはシラノール基が含まれる。
【0020】
以下、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトについて説明する。
【0021】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、IRスペクトルにおいて、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する3685cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.5未満であること、を特徴とする金属含有CHA型ゼオライトである。
【0022】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトのIRスペクトルの形状や、IRスペクトルに含まれる吸収ピークの数及び強度は特に限定されない。
【0023】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、IRスペクトルにおいて、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-1」ともいう。)の最大強度に対する、3685cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-2」ともいう。)の最大強度の比が1.5未満であり、1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることが更に好ましい。Peak-1の最大強度に対するPeak-2の最大強度の比(以下、「P2/P1比」ともいう。)は、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトがPeak-2を有さない場合に最小となり、その値は0(ゼロ)である。
【0024】
好ましくは、P2/P1比は0以上1.5未満、更に好ましくは0以上1.0以下、更に好ましくは0以上0.7以下、更に好ましくは0を超え0.7以下、更に好ましくは0を超え0.5以下である。
【0025】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいて、Peak-1の最大強度に対する、3450cm-1以上3545cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-3」ともいう。)の最大強度の比が1.6未満である。Peak-1の最大強度に対するPeak-3の最大強度の比(以下、「P3/P1比」ともいう。)は、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトがPeak-3を有さない場合に最小となり、その値は0(ゼロ)である。
【0026】
好ましくは、P3/P1比は0以上1.6未満、更に好ましくは0以上1.5以下、また更に好ましくは0以上1.0以下、また更に好ましくは0以上0.5以下である。
【0027】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいて、Peak-1の最大強度に対する、3550cm-1以上3680cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-4」ともいう。)の最大強度の比が7.0未満である。Peak-1の最大強度に対するPeak-4の最大強度の比(以下、「P4/P1比」ともいう。)は、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトがPeak-4を有さない場合に最小となり、その値は0(ゼロ)である。
【0028】
好ましくは、P4/P1比は0以上7.0未満、好ましくは0以上5.0以下、より好ましくは0以上3.0未満、更に好ましくは0以上2.0以下、また更に好ましくは0以上1.8以下、また更に好ましくは0以上1.7以下、また更に好ましくは0を超え1.7以下、また更に好ましくは0を超え1.5以下である。
【0029】
好ましくは、Peak-1乃至Peak-4は、それぞれ、以下に示すいずれかの範囲の吸収ピークである。
Peak-1 : 1800cm-1以上1930cm-1以下、
好ましくは1800cm-1以上1900cm-1以下、
より好ましくは1820cm-1以上1860cm-1以下
Peak-2 : 3685cm-1以上3750cm-1以下、
好ましくは3685cm-1以上3740cm-1以下、
好ましくは3702cm-1以上3735cm-1以下、
より好ましくは3710cm-1以上3735cm-1以下
Peak-3 : 3450cm-1以上3545cm-1以下、
好ましくは3470cm-1以上3530cm-1以下、
より好ましくは3480cm-1以上3520cm-1以下
Peak-4 : 3550cm-1以上3680cm-1以下、
好ましくは3610cm-1以上3670cm-1以下、
より好ましくは3640cm-1以上3670cm-1以下
【0030】
本実施態様におけるIRスペクトルの測定条件として、以下の条件が挙げられる。
測定方法 :拡散反射法
測定波長範囲 :400~4000cm-1
分解能 :4cm-1
積算回数 :128回
【0031】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは結晶構造がCHA構造のみであり、更に好ましくはCHA型構造以外の結晶構造を含まず、CHA構造の単一相である。
【0032】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表のXRDピークを有する。
【0033】
【表3】
【0034】
より好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0035】
【表4】
【0036】
本実施態様のひとつとして、好ましくは、金属含有CHA型ゼオライトは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0037】
【表5】
【0038】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、2θ=9.44°~9.88°のピークの半価幅(以下、「FWHM」ともいう。)が0.150゜以上0.200゜以下であり、2θ=20.62°~21.30°のピークのFWHMが0.170゜以上0.250゜以下である。
【0039】
好ましくは、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al」又は「SAR」ともいう。)は10.0以上である。SARは、好ましくは12.0以上、より好ましくは15.0以上、より好ましくは20.0以上である。さらに、SARは55.0以下、好ましくは40.0以下、より好ましくは31.5以下、より好ましくは30.0以下、より好ましくは28.0以下である。
【0040】
好ましくは、SARの範囲は10.0以上55.0以下、好ましくは10.0以上40.0以下、より好ましくは10.0以上31.5以下、より好ましくは12.0以上30.0以下、より好ましくは12.0以上28.0以下、より好ましくは12.0以上25.0以下である。
【0041】
他の好ましいSARの範囲は18.0以上50.0以下、好ましくは20.0以上45.0以下、更に好ましくは20.0以上35.0以下、更に好ましくは23.0以上31.5以下である。
【0042】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、CHA型ゼオライトの表面、細孔、イオン交換サイトなど、少なくともCHA構造の骨格構造外に金属を金属イオンとして含有する。当該金属は細孔に含有されることが好ましい。
【0043】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトが含有する金属は遷移金属であり、好ましくは鉄又は銅の少なくともいずれか、更に好ましくは銅である。
【0044】
好ましくは、アルミニウムに対する金属のモル比(以下、「M/Al」ともいう。)は0.10以上1.00以下である。M/Alは、好ましくは0.20以上0.80以下である。
【0045】
好ましくは、金属が銅である場合、アルミニウムに対する銅のモル比(以下、「Cu/Al」ともいう。)は0.10以上0.50以下であり、より好ましくは0.20以上0.47以下、より好ましくは0.25以上0.45以下である。
【0046】
好ましくは、金属が鉄である場合、アルミニウムに対する鉄のモル比(以下、「Fe/Al」ともいう。)は0.10以上0.50以下であり、好ましくは0.15以上0.35以下、より好ましくは0.20以上0.33以下である。
【0047】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、個々の一次粒子がCHA構造の結晶形態を維持したまま成長した結晶粒子(以下、「一次結晶粒子」ともいう。)を含む。図2(a)の模式図に示すように、一次結晶粒子は、CHA構造の結晶子と同様な形状を有する結晶粒子である。一次結晶粒子は、電子顕微鏡観察において、六面体形状又は略六面体形状の少なくともいずれか、更には立方体形状又は略立方体形状、を有した結晶粒子として観察される。
【0048】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは一次結晶粒子からなることが好ましいが、複数の一次粒子の化学結合により形成された凝集粒子(アグリゲート:aggregate)からなる結晶粒子(以下、「凝集結晶粒子」ともいう。)を含んでいてもよい。凝集結晶粒子は、電子顕微鏡観察において、立方体の一部を含む結晶粒子として確認される場合もある。しかしながら、凝集結晶粒子は、複数の結晶が不規則に化学結合している。図2(b)の模式図で示すように、凝集結晶粒子は、独立した粒子として一次結晶粒子とは異なる形状を有する結晶粒子であり、個々の粒子としてCHA構造とは異なる形態を有している。電子顕微鏡観察において、凝集結晶粒子は双晶形状、多面体形状又は不定形状といった複晶形状を有する結晶粒子として観察される。凝集結晶粒子に粉砕などの物理的な力を加えた場合、凝集結晶粒子の結晶が破壊される。一度形成された凝集結晶粒子から六面体形状又は略六面体形状を有する一次結晶粒子を取り出すことはできない。
【0049】
一次結晶粒子や凝集結晶粒子は、ファン・デル・ワールス力等の物理的な力により凝集した凝集粒子(アグロメレート:agglomerate)、いわゆる二次粒子、を形成する場合もある。化学的な結合と異なり、アグロメレートの凝集は解砕や粉砕により、これを形成する個々の一次粒子を分離することができる場合がある。
【0050】
好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは体積分布による粒子径分布(D50)が1μm~10μmの範囲であり、より好ましくは2μm~9μmの範囲である。なお、D50は、体積分布による粒子径分布において、累積体積分布50%に対応する粒子径である。
【0051】
体積分布による粒子径分布の測定条件として、以下の条件が挙げられる。
測定方法 : レーザー回折散乱法
屈折率 : 測定粉末 1.66、分散媒 1.33
測定試料 : 測定粉末 1重量%、分散媒 99重量%からなるスラリー
分散媒 : 純水
前処理条件 : 測定試料(スラリー)を超音波ホモジナイザーで2分間処理
【0052】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは触媒として使用することができ、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、これを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法に適している。好ましくは、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは窒素酸化物還元触媒として使用することができ、好ましくは窒素酸化物の選択還元触媒として使用することができ、より好ましくは尿素を還元剤とする窒素酸化物の選択還元触媒として使用することができる。
【0053】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトを含む触媒(以下、「本実施態様の触媒」ともいう。)は、粉末又は成形体のいずれの形状でも使用することができる。本実施態様の触媒を粉末状で使用する場合、これをハニカム等の基材に塗布又はウォシュコートした触媒部材としてもよい。本実施態様の触媒を成形体として使用する場合、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、多面体状、不定形状及び花弁状の群から選ばれる少なくとも1種の形状、その他用途に適した形状とすればよい。
【0054】
また、本実施態様の触媒を成形体とする場合、本実施態様の触媒に加え、シリカ、アルミナ、カオリン、アタパルガイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン及びセ
ピオライトの群から選ばれる少なくとも1種の粘土を含んでいてもよい。
【0055】
特に本実施態様の触媒は、窒素酸化物還元触媒として、更には内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物還元触媒として使用することが好ましい。
【0056】
窒素酸化物還元は、本実施態様の触媒と、窒素酸化物含有気体とを接触させればよい。窒素酸化物含有気体と、本実施態様の触媒とを接触させる場合の空間速度は任意であり、体積基準で500~50万時間-1、更は2000~30万hr-1であることが挙げられる。
【0057】
本実施態様の触媒が還元する窒素酸化物として、例えば、一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素及び一酸化二窒素の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、一酸化窒素、二酸化窒素及び一酸化二窒素の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0058】
窒素酸化物含有気体は窒素酸化物以外の成分を含んでいてもよく、窒素酸化物含有気体として炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物及び水の群から選ばれる少なくとも1種と窒素酸化物とを含む気体を挙げることができる。具体的な窒素酸化物含有気体として、内燃機関の排ガス、更にはディーゼル自動車、ガソリン自動車、ボイラー、ガスタービン等の排ガスを挙げることができる。
【0059】
本実施態様の触媒を使用した窒素酸化物の還元方法は、特に、還元剤の存在下で窒素酸化物を還元する方法であることが好ましい。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン、炭化水素、アルコール、ケトン、一酸化炭素及び水素の群から選ばれる少なくとも1つが挙げられ、アンモニア、尿素及び有機アミンの群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。また、窒素酸化物含有気体が炭化水素、一酸化炭素及び水素の群から選ばれる少なくとも1種などの還元性物質を含む場合、これも還元剤とみなすことができる。
【0060】
次に、本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0061】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、金属源と、IRスペクトルにおける1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する3665cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.5未満であるCHA型ゼオライトと、を混合する金属含有工程、を有することを特徴とする金属含有CHA型ゼオライトの製造方法、により得ることができる。
【0062】
金属含有工程における混合方法は任意であり、CHA型ゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかに金属が含有される方法であればよい。具体的な混合方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、含浸担持法、更には金属源を含む水溶液とCHA型ゼオライトとを混合する方法であることが好ましい。
【0063】
金属含有工程に供する金属源は、金属又は金属化合物の少なくともいずれかであり、遷移金属又は遷移金属化合物であることが好ましい。好ましくは、金属源は、遷移金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物及び酢酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは硫酸塩、硝酸塩、塩化物及び酢酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは硝酸塩である。
【0064】
好ましくは、金属源が含む金属は鉄又は銅の少なくともいずれかであり、より好ましくは銅である。
【0065】
金属含有工程に供するCHA型ゼオライト(以下、「原料CHA」ともいう。)は、IRスペクトルにおける1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度に対する3665cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピークの最大強度の比が1.5未満であるCHA型ゼオライトである。
【0066】
原料CHAのIRスペクトルの形状や、IRスペクトルに含まれる吸収ピークの数及び強度は特に限定されない。
【0067】
好ましくは、原料CHAは、IRスペクトルにおいて、1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-1’」ともいう。)の最大強度に対する、3665cm-1以上3750cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-2’」ともいう。)の最大強度の比が1.5未満、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下である。Peak-1’の最大強度に対するPeak-2’の最大強度の比(以下、「P2’/P1’比」ともいう。)は、原料CHAがPeak-2’を有さない場合に最小となり、その値は0(ゼロ)である。
【0068】
好ましくは、P2’/P1’比は0以上1.5未満、更に好ましくは0以上1.0以下、更に好ましくは0以上0.5以下、更に好ましくは0を超え0.5以下、更に好ましくは0を超え0.2以下である。
【0069】
好ましくは、原料CHAは、IRスペクトルにおいて、Peak-1’の最大強度に対する、3450cm-1以上3545cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-3’」ともいう。)の最大強度の比が1.6未満である。Peak-1’の最大強度に対するPeak-3’の最大強度の比(以下、「P3’/P1’比」ともいう。)は、原料CHAがPeak-3’を有さない場合に最小となり、その値は0(ゼロ)である。
【0070】
好ましくは、P3’/P1’比は0以上1.6未満、更には0以上1.5以下、また更には0以上1.0以下、また更には0以上0.5以下、また更には0以上0.05以下である。
【0071】
好ましくは、原料CHAは、そのIRスペクトルにおいて、Peak-1’の最大強度に対する、3550cm-1以上3670cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「Peak-4’」ともいう。)の最大強度の比が13.0未満である。Peak-1’の最大強度に対するPeak-4’の最大強度の比(以下、「P4’/P1’比」ともいう。)は、原料CHAはPeak-4’を有さない場合に最小となり、その値は0(ゼロ)である。
【0072】
好ましくは、P4’/P1’比は0以上13.0未満、好ましくは0以上3.0未満、更に好ましくは0以上1.0以下、更に好ましくは0以上0.5以下、更に好ましくは0以上0.1以下、更は0を超え0.1以下である。
【0073】
好ましくは、Peak-1’乃至Peak-4’は、それぞれ、以下に示すいずれかの範囲の吸収ピークである。
Peak-1’ : 1800cm-1以上1930cm-1以下、
好ましくは1800cm-1以上1860cm-1以下、
より好ましくは1820cm-1以上1858cm-1以下
Peak-2’ : 3665cm-1以上3750cm-1以下、
好ましくは3665cm-1以上3740cm-1以下、
好ましくは3665cm-1以上3735cm-1以下、
好ましくは3705cm-1以上3735cm-1以下、
より好ましくは3710cm-1以上3735cm-1以下、
より好ましくは3710cm-1以上3730cm-1以下
Peak-3’ : 3450cm-1以上3545cm-1以下、
好ましくは3450cm-1以上3495cm-1以下、
より好ましくは3450cm-1以上3480cm-1以下
Peak-4’ : 3550cm-1以上3670cm-1以下、
好ましくは3550cm-1以上3660cm-1以下、
より好ましくは3560cm-1以上3615cm-1以下、
より好ましくは3560cm-1以上3600cm-1以下
【0074】
好ましくは、原料CHAは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0075】
【表6】
【0076】
より好ましくは、原料CHAは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0077】
【表7】
【0078】
本実施態様において、好ましくは、原料CHAは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0079】
【表8】
【0080】
原料CHAは、その製造に使用した有機構造指向剤を含有する場合や、金属を含有する場合と、これらを含有しない場合にXRDパターンやIRスペクトルが変化する場合がある。そのため、有機構造指向剤の有無や、原料CHAと金属含有CHA型ゼオライトとで、XRDパターンやIRスペクトルなどの物性が異なることがある。上記の原料CHAのIRスペクトル及びXRDパターンは、有機構造指向剤、及び、金属含有工程で含有させる金属を含有しない状態のものである。
【0081】
好ましくは、原料CHAのSiO/Alは10.0以上である。SiO/Alは、好ましくは12.0以上、より好ましくは15.0以上、より好ましくは20.0以上である。さらに、SiO/Alは55.0以下、好ましくは40.0以下、より好ましくは31.5以下、より好ましくは30.0以下、より好ましくは28.0以下である。
【0082】
好ましくは、SiO/Alの範囲は10.0以上55.0以下、好ましくは10.0以上40.0以下、より好ましくは10.0以上31.5以下、より好ましくは12.0以上30.0以下、より好ましくは12.0以上28.0以下、より好ましくは12.0以上25.0以下である。
【0083】
他の好ましいSiO/Alの範囲は18.0以上50.0以下、好ましくは20.0以上45.0以下、更に好ましくは20.0以上35.0以下、更に好ましくは23.0以上31.5以下を挙げることができる。
【0084】
原料CHAは、現実的な結晶性アルミノシリケートであるため、その結晶にシラノール基を含む。好ましくは、原料CHAのケイ素に対するシラノール基のモル比(以下、「SiOH/Si比」ともいう。)は0.15×10-2以上1.80×10-2以下であり、好ましくは0.15×10-2以上1.50×10-2以下、より好ましくは0.15×10-2以上1.10×10-2以下、より好ましくは0.15×10-2以上1.00×10-2未満である。シラノール基の含有量は、骨格構造中のケイ素量の増加に伴って増加する傾向がある。そのため、ハイシリカゼオライトはシラノール基の含有量が多くなりやすい。
【0085】
好ましくは、原料CHAのSiO/AlとSiOH/Si比とは、一定の関係を満たす。より好ましくは、原料CHAは下表に示すSiO/Al範囲において、下表に示すいずれかのSiOH/Si比の上限及び下限を有する。
【0086】
【表9】
【0087】
SiOH/Si比は、CHA型ゼオライトのケイ素の含有量に対するH MAS NMRスペクトルから求まるシラノール量、から求めることができる。CHA型ゼオライトのケイ素の含有量は蛍光X線分析その他の組成分析により求めることができる。蛍光X線分析によるケイ素の含有量の測定方法として、検量線法による測定方法を挙げることができる。検量線法で使用する検量線は、8~15点の、ケイ素含有量が既知であるケイ素含有化合物について、ケイ素(Si)に相当する蛍光X線ピークの強度を測定し、当該強度-ケイ素含有量とで検量線を引くことで作成すること、が挙げられる。測定試料であるCHA型ゼオライトの蛍光X線パターンのケイ素(Si)に相当する蛍光X線ピークの強度を測定し、当該強度と検量線とを対比すること、でCHA型ゼオライトのケイ素の含有量を測定することができる。
【0088】
H MAS NMRスペクトルから求まるシラノール量は、脱水処理をしたCHA型ゼオライトをH MAS NMR測定し、得られたH MAS NMRスペクトルから検量線法により、算出することができる。
【0089】
より具体的なシラノール量の測定方法として、CHA型ゼオライトを真空排気下にて350~400℃で5±2時間保持して脱水処理し、脱水処理後のCHA型ゼオライトを窒素雰囲気下で採取し秤量し、H MAS NMR測定をすることが挙げられる。当該測定により得られるH MAS NMRスペクトルのシラノール基に帰属されるピーク(2.0±0.5ppmのピーク)の面積強度から、検量線法によりCHA型ゼオライト中のシラノール量を求めることが挙げられる。
【0090】
好ましくは、原料CHAは、SiO/Alが10.0以上20.0未満及びSiOH/Si比が0.15×10-2以上0.50×10-2以下のCHA型ゼオライト、SiO/Alが20.0以上35.0以下及びSiOH/Si比が0.15×10-2以上1.10×10-2以下のCHA型ゼオライト、SiO/Alが35.0を超え45.0以下及びSiOH/Si比が0.15×10-2以上1.65×10-2以下のCHA型ゼオライト、及び、SiO/Alが45.0を超え55.0以下及びSiOH/Si比が0.15×10-2以上1.80×10-2以下のCHA型ゼオライト、の群から選ばれるいずれかのCHA型ゼオライト、である。
【0091】
原料CHAのカチオンタイプは、プロトン型又はアンモニウム型の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0092】
好ましくは、原料CHAは耐熱性が高く、高温雰囲気に曝露された後であっても、骨格からのT原子の脱離などの骨格構造の崩壊が進行しにくい。原料CHAの耐熱性の指標として、大気中、600℃で5時間処理した原料CHAのd値として4.30~4.17Åに相当するXRDピークの強度(I600)に対する、大気中、1000℃で5時間処理した原料CHAの当該XRDピークの強度(I1000)の比(I1000/I600;以下、「I比」ともいう。)が挙げられる。I比が高いほど、耐熱性が高くなる。
【0093】
好ましくは、上記の処理における大気は水分含有量が少ない大気であり、より好ましくは露点-20℃以下の大気、より好ましくは露点-50℃以下の大気である。
【0094】
例えば、原料CHAのI比は0.10以上1.00未満であり、より好ましくは0.30以上0.95以下であり、より好ましくは0.50以上0.90以下である。
【0095】
本実施態様の製造方法において、金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程又は活性化工程のいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0096】
洗浄工程は、不純物等が除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属含有工程後に、得られた金属含有CHA型ゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0097】
乾燥工程は、金属含有CHA型ゼオライトに吸着した水分を除去できる方法であればよく、大気中で、100℃以上200℃以下で処理することが例示できる。
【0098】
活性化工程は、金属含有CHA型ゼオライトに残存する有機物を除去する。活性化方法として金属含有CHA型ゼオライトを、大気中、200℃を超え、600℃以下で処理することが例示できる。
【0099】
好ましくは、原料CHAは合成CHA型ゼオライトである。以下、原料CHAの好ましい製造方法について説明する。
【0100】
好ましい原料CHAの製造方法(以下、「原料CHA製法」ともいう。)として、アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、水、及び、以下の一般式を有するN,N,N-トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオン源を含む組成物を結晶化させる結晶化工程、を含むCHA型ゼオライトの製造方法、を挙げることができる。
【0101】
【化1】
【0102】
(Rはメチル基又はエチル基のいずれかであり、メチル基であることが好ましい。) 特に好ましい原料CHA製法として、アルミナ源、シリカ源、アルカリ源、水及びN,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン源を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化させる結晶化工程、を有し、該アルカリ源が少なくともナトリウムを含み、なおかつ、該組成物のシリカに対するナトリウムのモル比が0を超え0.1未満であること特徴とするCHA型ゼオライトの製造方法、を挙げることができる。
【0103】
N,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン(以下、「DMECHA」ともいう。)源は、DMECHAを含む化合物であり、DMECHAとそのカウンターアニオンとを含む化合物である。DMECHAは以下の一般式で示される四級アンモニウムカチオンであり、CHA構造を指向する有機構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)として機能する。
【0104】
【化2】
【0105】
具体的なN,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHA」ともいう。)カチオン源としてDMECHA塩、好ましくはDMECHAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、より好ましくはDMECHAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩及び硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはDMECHAの水酸化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物の群から選ばれる少なくとも1種、また更に好ましくはDMECHAの水酸化物、塩化物及び臭化物の群から選ばれる少なくともいずれかである。
【0106】
好ましくは、DMECHAカチオン源は、DMECHAの水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくとも2種以上であり、好ましくは水酸化ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHAOH」ともいう。)及びフッ化物以外のジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウムハロゲン化物である。フッ化物以外のジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウムハロゲン化物として、臭化ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHABr」ともいう。)、塩化ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHACl」ともいう。)及びヨウ化ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHAI」ともいう。)の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。特に好ましいDMECHAカチオン源はDMECHAOH及びDMECHABrである。
【0107】
原料組成物は、SDAとしてDMECHAを含んでいればよく、SDAとしてDMECHAのみを含んでいてもよい。一方、CHA構造の指向性をより強くするため、DMECHA以外の有機構造指向剤源(以下、「exSDA源」ともいう。)をDMECHAカチオン源以下の量含んでいてもよい。
【0108】
好ましくは、exSDA源は環状構造を有する四級アンモニウムカチオンであり、好ましくはN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムカチオン(以下、「TMAdA」ともいう。)である。好ましくは、exSDA源は、TMAdAを含む化合物であり、より好ましくはN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム(以下、「TMAdA」ともいう。)の水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸モノエステル塩、硫酸モノエステル塩、硝酸塩及び硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはTMAdAの水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩及び硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはTMAdAの水酸化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物の群から選ばれる少なくとも1種である。
【0109】
好ましくは、原料組成物は環状構造を有さない四級アンモニウムカチオンを含まず、より好ましくはテトラメチルアンモニウムカチオン(以下、「TMA」ともいう。)を含まない。
【0110】
アルミナ源は、アルミナ(Al)又はその前駆体となるアルミニウム化合物であり、例えば、アルミナ、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、非晶質アルミノシリケート、金属アルミニウム及びアルミニウムアルコキシドの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0111】
シリカ源は、シリカ(SiO)又はその前駆体となるケイ素化合物であり、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、沈殿法シリカ、ヒュームドシリカ、非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0112】
非晶質アルミノシリケートは、アルミナ源及びシリカ源として機能する化合物(以下、「シリカアルミナ源」ともいう。)である。そのため、原料組成物はシリカアルミナ源として非晶質アルミノシリケートを含むことが好ましい。
【0113】
アルカリ源は、少なくともナトリウムを含み、好ましくはリチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれるいずれか1種とナトリウムとを含み、より好ましくはカリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれるいずれか1種とナトリウムとを含み、より好ましくはカリウム及びナトリウムを含む。
【0114】
好ましくは、ナトリウムを含むアルカリ源(以下、「ナトリウム源」ともいう。)はナトリウムを含む水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくともいずれかであり、好ましくはナトリウムの水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくともいずれか、より好ましくはナトリウムの水酸化物、塩化物及び臭化物の群から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはナトリウムの水酸化物である。
【0115】
好ましくは、ナトリウム以外のアルカリ金属を含むアルカリ源は、リチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれるいずれかの水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはリチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれるいずれかの水酸化物、塩化物及び臭化物からなる少なくともいずれかであり、より好ましくはリチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれるいずれかの水酸化物である。
【0116】
好ましくは、アルカリ源はナトリウムの水酸化物、塩化物、臭化物、及び、ヨウ化物の群から選ばれる少なくともいずれかと、カリウムの水酸化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物の群から選ばれる少なくともいずれかと、を含み、より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含む。
【0117】
アルミナ源、シリカ源、DMECHAカチオン源等の他の原料がアルカリ金属を含む場合、これらの原料に含まれるアルカリ金属もアルカリ源として機能する。
【0118】
原料組成物に含まれる水は、脱イオン水や、純水を挙げることができる。また、アルミナ源、シリカ源、DMECHAカチオン源、アルカリ源等の他の原料が含水物、水和物又は水溶液である場合、これらの原料に含まれる水も、原料組成物に含まれる水とみなす。
【0119】
フッ素は腐食性が特に高いため、原料組成物はフッ素(F)含有化合物を含まないことが好ましい。好ましくは、原料組成物はフッ素を含有せず、好ましくは原料組成物のフッ素含有量は1ppm以下である。
【0120】
フッ素含有化合物として、フッ化水素、四級アンモニウムのフッ化物又はアルカリ金属フッ化物などが例示できる。四級アンモニウムのフッ化物塩としてフッ化ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(以下、「DMECHAF」ともいう。)が例示できる。アルカリ金属フッ化物としてフッ化ナトリウム又はフッ化カリウムのいずれかが例示できる。
【0121】
好ましくは、原料組成物のシリカに対するDMECHAのモル比(以下、「DMECHA/SiO」ともいう。)は0.03以上であり、好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.06以上である。SDAを必要以上に多くする必要はなく、SDA/SiOは0.30以下、好ましくは0.20以下、更に好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.10以下である。
【0122】
好ましくは、DMECHA/SiOの範囲は0.03以上0.3以下、好ましくは0.03以上0.2以下、より好ましくは0.04以上0.15以下、より好ましくは0.04以上0.12以下、より好ましくは0.06以上0.12以下、0.06以上0.10以下である。
【0123】
好ましくは、原料組成物のシリカに対するTMAdAのモル比(以下、「TMAdA/SiO」ともいう。)は0.1以下であり、より好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.02以下であり、より好ましくは0.01以下である。
【0124】
好ましくは、原料組成物のアルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al)は10以上100以下であり、好ましくは10以上60以下、更に好ましくは10以上40以下、更に好ましくは10以上35以下である。
【0125】
原料組成物のシリカに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/SiO」ともいう。)は0を超え0.10未満であり、好ましくは0を超え0.095以下、更に好ましくは0を超え0.09以下、更に好ましくは0.02以上0.09以下、更に好ましくは0.02以上0.08以下である。Na/SiOが0.10以上であると、CHA型ゼオライトが単一相で結晶化するために長時間を要する。
【0126】
原料組成物がリチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる少なくとも1種(以下、「Madd」ともいう。)を含む場合、好ましくは、原料組成物のシリカに対する、リチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる少なくとも1種のモル比(以下、「Madd/SiO」ともいう。)は0を超え0.15未満であり、好ましくは0.02を超え0.15未満、より好ましくは0.03以上0.13以下である。
【0127】
原料組成物がアルカリ金属としてナトリウム及びカリウムを含有する場合、カリウムに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/K」ともいう。)は0.05以上20.0以下、更には0.065以上5.0以下、また更には0.1以上2.0以下であることが挙げられる。
【0128】
好ましくは、原料組成物のシリカに対するアルカリ金属の合計モル比(以下、「Mtotal/SiO」ともいう。)は0.10以上0.50以下であり、更に好ましくは0.10以上0.30以下、更に好ましくは0.10以上0.15以下、更に好ましくは0.10以上0.13以下である。
【0129】
好ましくは、原料組成物のシリカに対する水(HO)のモル比(以下、「HO/SiO」ともいう。)は5.0以上50.0以下であり、好ましくは6.5以上20.0以下、更に好ましくは10.0以上20.0以下、更に好ましくは10.0以上19.0以下、更に好ましくは11.0以上18.5以下である。
【0130】
好ましくは、原料組成物のシリカに対する水酸基アニオン(OH)のモル比(以下、「OH/SiO」ともいう。)は0.05以上1.0以下、好ましくは0.1以上0.5以下である。より好ましくは、OH/SiOは0.30以下、更に好ましくは0.24以下、また更に好ましくは0.20以下、また更に好ましくは0.17以下、更に好ましくはOH/SiOが0.15以下である。
【0131】
原料CHA製法においては、原料組成物が種晶を含まなくとも、十分に短い時間で高い収率でCHA型ゼオライトが得られる。そのため、原料組成物は種晶を含まないこと、すなわち、種晶の含有量が0重量%であってもよい。
【0132】
しかしながら、原料組成物は種晶を含んでもよい。種晶はCHA型ゼオライト、更にはSSZ-13であることが好ましい。
【0133】
種晶を含む場合、以下の式を満たす含有量(重量%)とすればよい。
【0134】
0重量%<{(w3+w4)/(w1+w2)}×100≦30重量% 上記式において、w1は原料組成物中のAlをAlに換算した重量、w2は原料組成物中のSiをSiOに換算した重量、w3は種晶中のAlをAlに換算した重量、及び、w4は種晶中のSiをSiOに換算した重量である。
【0135】
種晶を含む場合、種晶は以下の式を満たす含有量であることが更に好ましい。
【0136】
0重量%<{(w3+w4)/(w1+w2)}×100≦5重量%、 更には、
1.5重量%≦{(w3+w4)/(w1+w2)}×100≦5重量%
原料組成物の好ましい組成として以下のものをあげることができる。
【0137】
SiO/Al= 10以上100以下、
好ましくは10以上60以下
DMECHA/SiO= 0.03以上0.30以下、
好ましくは0.06以上0.15以下
Na/SiO= 0を超え0.095以下、
好ましくは0を超え0.09以下、
より好ましくは0.02以上0.09以下
total/SiO= 0.05以上1.0以下、
好ましくは0.10以上0.30以下
OH/SiO= 0.05以上1.0以下、
好ましくは0.10以上0.50以下
O/SiO= 5.0以上50.0以下、
好ましくは8.0以上20.0以下、
より好ましくは10.0以上20.0以下
種晶= 0.0重量%以上30.0重量%以下、
好ましくは0.0重量%以上5.0重量%以下、
より好ましくは1.0重量%以上5.0重量%以下、
より好ましくは1.2重量%以上5.0重量%以下
但し、Mtotalのアルカリ金属はNa及びKである。
【0138】
原料組成物を結晶化する方法は、水熱合成であることが好ましい。水熱合成は、原料混合物を密閉容器に充填し、これを密封した上で加熱すればよい。結晶化は、静置又は撹拌のいずれの状態で行ってもよい。
【0139】
好ましくは、結晶化温度は130℃以上200℃以下であり、更に好ましくは140℃以上180℃以下、更に好ましくは140℃以上170℃以下である。結晶化温度が130℃以上160℃以下、好ましくは130℃以上155℃以下であっても、48時間以内に高い結晶性のCHA型ゼオライトを得ることができる。
【0140】
上記の範囲であれば、結晶化中に結晶化温度を変更してもよい。例えば、130℃以上160℃以下で結晶化を開始し、その後、結晶化温度を160℃超200℃以下に変更して結晶化してもよい。
【0141】
結晶化時間は、原料組成物からCHA型ゼオライトが結晶化するのに要する時間であり、これは結晶化温度に依存する。結晶化温度の高温化に伴い、結晶化時間は短くなる傾向がある。結晶化工程における結晶化時間として、5時間以上、更には10時間以上、更には24時間(1日)以上が挙げられる。好ましくは、結晶時間は5時間以上72時間(3日)未満、更には5時間以上50時間以下である。
【0142】
好ましくは、原料CHA製法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれかを含む。
【0143】
洗浄工程は、結晶化後のCHA型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるCHA型ゼオライトを脱イオン水で洗浄すればよい。
【0144】
乾燥工程は、結晶化工程後又は洗浄工程後のCHA型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後のCHA型ゼオライトを、大気中、50℃以上150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0145】
結晶化後のCHA型ゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。イオン交換工程では、これをアンモニウムイオン(NH )や、プロトン(H)等の非金属カチオンにイオン交換する。アンモニウムイオンへのイオン交換は、CHA型ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換は、CHA型ゼオライトをアンモニウムイオンでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0146】
原料CHA製法により、CHA構造以外の構造を有するゼオライトや非晶質アルミノシリケートを含まないCHA型ゼオライト、すなわち、単一相のCHA型ゼオライトが得られる。
【0147】
原料CHA製法では、工業的な製造に適した十分に高い収率でCHA型ゼオライトを得ることができる。
【0148】
原料CHA製法におけるゼオライトの収率は、原料組成物のSiO/Alに対する、結晶化後に得られる生成物中のSiO/Alの比率(%)から求めることができる。
【0149】
原料CHA製法におけるゼオライトの収率は70%以上、更には80%以上、また更には90%以上であることが挙げられる。このような高い収率を示すため、原料CHA製法は工業的なCHA型ゼオライトの製造方法として特に適している。
【0150】
原料CHA製法は、CHA型ゼオライトの製造方法として使用することができ、特に工業的なCHA型ゼオライトの製造方法など、大規模なCHA型ゼオライトの製造方法に適用することができる。特に、触媒担体用のCHA型ゼオライトや吸着剤用のCHA型ゼオライトの工業的な製造方法として使用することができる。
【実施例
【0151】
以下、実施例及び比較例に基づき本実施態様をさらに具体的に説明する。しかしながら、本実施態様は以下の実施例に制限されるものではない。以下、評価方法及び評価条件を示す。
(IRスペクトル)
IRスペクトルは加熱拡散反射装置(装置名:ST900℃加熱拡散反射装置、エス・ティ・ジャパン社製)付きFT-IR装置(装置名:660-IR、Varian社製)を使用し、以下の条件で測定した。
測定方法 :拡散反射法
前処理 :真空排気下で300℃、3時間保持し、室温まで降温後に測定
測定波長範囲 :400~4000cm-1
分解能 :4cm-1
積算回数 :128回
【0152】
(結晶の同定)
粉末X線回折装置(装置名:UltimaIV、株式会社リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
測定範囲 :2θ=5°~43°
得られたXRDパターンと、特許文献1のTable.2で示されたCHA型ゼオライトのXRDパターンとを比較することで、試料の構造を同定した。
【0153】
(I比)
結晶化したCHA型ゼオライトを大気中、600℃での熱処理、及び、塩化アンモニウム水溶液によるイオン交換をした後、大気中、110℃で3時間乾燥した。
乾燥後のCHA型ゼオライトを2つに分け、一方を600℃、他方を1000℃で熱処理した。熱処理条件を以下に示す。
雰囲気 : 露点-50℃の大気中
熱処理時間 : 5時間
結晶の同定と同様な方法で熱処理後のCHA型ゼオライトのXRDパターンを測定し、d値として4.30~4.17Å(2θ=20.62~21.30゜)に相当するXRDピークの強度及びI比を求めた。
【0154】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。ICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Alの測定値から、試料のSiO/Alを求めた。
【0155】
(ゼオライトの収率)
組成分析により原料組成物及び結晶化物のSiO/Alを求めた。原料組成物のSiO/Alに対する結晶化物のSiO/Alの割合を求めゼオライトの収率(%)とした。
【0156】
(シラノール基の含有量)
H MAS NMRにより、CHA型ゼオライトのシラノール基の含有量を測定した。
測定に先立ち、試料を真空排気下にて400℃で5時間保持し脱水することで前処理とした。前処理後、室温まで冷却した試料を窒素雰囲気下で採取し秤量した。測定装置は一般的なNMR測定装置(装置名:VXR-300S、Varian製)を使用した。測定条件は以下のとおりとした。
共鳴周波数 :300.0MHz
パルス幅 :π/2
測定待ち時間 :10秒
積算回数 :32回
回転周波数 :4kHz
シフト基準 :TMS
得られたH MAS NMRスペクトルから2.0±0.5ppmのピークをシラノール基に帰属されるピークとした。当該ピークを波形分離し、その面積強度を求めた。得られた面積強度から検量線法により試料中のシラノール量を求めた。
【0157】
(SiOH/Si比)
蛍光X線分析によりCHA型ゼオライトのケイ素含有量(mol/g)に対する、H MAS NMRにより測定されたCHA型ゼオライトのシラノール基の含有量(mol/g)の比を求め、これをSiOH/Si比とした。
【0158】
合成例1(DMECHABrの合成)
N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン 50.0g、臭化エチル42.8gおよびエタノール100mLをナスフラスコに入れ、60℃で3時間反応させた。反応終了後、70℃で未反応物および溶媒を減圧留去することで臭化N,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(DMECHABr)を得た。当該DMECHABrを脱イオン水に溶解することで25.0重量%DMECHABr水溶液とした。
【0159】
合成例2(DMECHAOHの合成)
合成例1で得られたDMECHABr20.0gを脱イオン水180.0gに溶解させた。この水溶液を陰イオン交換樹脂(製品名:ダイヤイオンSA-10A、三菱化学株式会社製)を充填したカラムに通してイオン交換し、水酸化N,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(DMECHAOH)の水溶液を得た。当該水溶液を50℃でロータリーエバポレータを用いて濃縮し、25重量%DMECHAOH水溶液とした。
【0160】
実施例1
25重量%DMECHABr水溶液、25重量%DMECHAOH水溶液、48%水酸化ナトリウム水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、純水、非晶質アルミノシリケート(SiO/Al=18.5)、及び、種晶を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。種晶にはSSZ-13を使用し、かつ、原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は1/7とした。
【0161】
SiO/Al =18.5
DMECHA/SiO =0.08
K/SiO =0.11
Na/SiO =0.04
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.16
種晶 =1.0重量%
原料組成物を密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転攪拌しながら150℃で48時間反応させた。得られた結晶化物を固液分離し、脱イオン水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥した。当該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが18.1、SiOH/Si比が0.39×10-2及びI比が0.16であった。また、ゼオライトの収率は98%であった。
【0162】
実施例2
SiO/Al=24.3の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は1/1とした。
【0163】
SiO/Al =24.3
DMECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.04
K/SiO =0.08
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.16
種晶 =1.0重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが23.0、SiOH/Si比が0.69×10-2及びI比が0.58であった。また、ゼオライトの収率は95%であった。大気中、600℃で2時間焼成後のCHA型ゼオライト(SDAを含まないCHA型ゼオライト)のXRDパターンを下表に示す。
【0164】
【表10】
【0165】
該CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1’、Peak-2’及びPeak-4’がそれぞれ1856cm-1、3729cm-1及び3593cm-1であり、Peak-3’を有していなかった。また、P2’/P1’が0.07、P3’/P1’が0、及び、P4’/P1’が0.07であった。
(銅の含有)
硝酸銅三水和物1.05gを純水3.4gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、焼成後のCHA型ゼオライト10.0gに滴下し、乳鉢で10分間含浸混合した。混合に供した焼成後のCHA型ゼオライトは、塩化アンモニウム水溶液でイオン交換された、カチオンタイプがアンモニウム型のCHA型ゼオライトである。混合後のCHA型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅含有ゼオライトを得、これを本実施例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0166】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトは、SARが23.0、銅含有量が3.0重量%、及び、Cu/Al比が0.36であった。
【0167】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0168】
【表11】
【0169】
銅含有CHA型ゼオライトのXRDパターンより、原料CHAに銅を含有させることで2θ=20.62~21.30°に相当するXRDピークの相対強度が1.2倍以上となり、その強度が著しく強くなることが確認できた。
【0170】
該銅含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1、Peak-2及びPeak-4がそれぞれ1856cm-1、3731cm-1及び3659cm-1であり、Peak-3を有していなかった。また、P2/P1が0.25、P3/P1が0、及び、P4/P1が1.63であった。
【0171】
実施例3
SiO/Al=38.3の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は3/1とした。
【0172】
SiO/Al =38.3
DMECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.06
K/SiO =0.04
O/SiO =17.0
OH/SiO =0.16
種晶 =1.5重量%
該原料組成物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化して結晶化物を得た。該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが35.5、SiOH/Si比が1.20×10-2及びI比が0.76であった。また、ゼオライトの収率は93%であった。
【0173】
実施例4
SiO/Al=51.4の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと、及び、反応温度を170℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は1/1とした。
【0174】
SiO/Al =51.4
DMECHA/SiO =0.10
Na/SiO =0.08
K/SiO =0.03
O/SiO =17.0
OH/SiO =0.16
種晶 =1.5重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが49.0、SiOH/Si比が1.72×10-2及びI比が0.50であった。また、ゼオライトの収率は95%であった。
【0175】
実施例5
SiO/Al=24.3の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は3/1とした。
【0176】
SiO/Al =24.3
DMECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.04
K/SiO =0.10
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.20
種晶 =1.0重量%
該原料組成物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化して結晶化物を得た。該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが22.9及びI比が0.34であった。また、ゼオライトの収率は94%であった。
【0177】
実施例6
25重量%DMECHABr水溶液を使用しなかったこと、及び、SiO/Al=24.3の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。
【0178】
SiO/Al =24.3
DMECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.04
K/SiO =0.12
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.24
種晶 =1.0重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが21.3及びI比が0.16であった。また、ゼオライトの収率は88%であった。
【0179】
実施例7
非晶質アルミノシリケートの代わりに、シリカゲル(製品名:Nipsil-VN3、日本シリカ工業社製)及びアルミニウムイソプロポキシド(キシダ化学株式会社製)を使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと、並びに、反応温度を170℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得た。原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は3/13とした。
【0180】
SiO/Al =35.0
DMECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.060
K/SiO =0.045
O/SiO =17.0
OH/SiO =0.12
種晶 =1.5重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが29.5及びI比が0.51であった。また、ゼオライトの収率は84%であった。
った。
【0181】
これらの実施例から、原料CHA製法によって、原料組成物のHO/SiOが15.0以上と高い水分含有率の原料組成物であるにもかかわらず、CHA型ゼオライトの単一相が得られることが確認できた。
【0182】
また、これらの実施例は原料組成物のOH/Siは等しいが、得られたCHA型ゼオライトのSiOH/Si比が異なっていた。これより、原料組成物中の水酸化物イオンの含有量と、CHA型ゼオライト中のシラノール量とは直接的な相関がないことが確認できた。
【0183】
また、これらの実施例で開示した原料CHA製法では、反応温度が150℃低くとも48時間という短時間で単一相のCHA型ゼオライトが得られることが確認できると共に、反応温度が150℃を超えた温度であっても、CHA型ゼオライトの単一相が得られることが確認できた。
【0184】
さらに、原料CHA製法は、SDAとしてDMECHAのみを含み、なおかつ、DMECHA/SiOが0.10以下と少ないSDA含有量の原料組成物からCHA型ゼオライトの単一相が得られることが確認できた。これは、原料CHA製法は、高コストの原因となるSDAを使用しないことに加え、SDAの使用量を削減できるという、工業的な観点からも好ましい効果を有するCHA型ゼオライトの製造方法であることが確認できた。
【0185】
比較例1
SiO/Al=24.6の非晶質アルミノシリケートを使用したこと、種晶を使用しなかったこと、及び、DMECHAカチオン源の代わりに25重量%ヨウ化N,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム(TMCHAI)水溶液及び25重量%水酸化N,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム(TMCHAOH)水溶液を使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化した。原料組成物のTMCHAIに対するTMCHAOHのモル割合は1/1とした。
【0186】
SiO/Al =24.6
TMCHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.04
K/SiO =0.08
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.16
種晶 =0.0重量%
しかしながら、本比較例の原料組成物は結晶化せず、アモルファスしか得られなかった。
【0187】
比較例2
SiO/Al=24.6の非晶質アルミノシリケートを使用したこと、DMECHAカチオン源の代わりにトリエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン源として25重量%ヨウ化N,N,N-トリエチルシクロヘキシルアンモニウム(TECHAI)水溶液及び25重量%水酸化N,N,N-トリエチルシクロヘキシルアンモニウム(TECHAOH)水溶液を使用し、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化した。原料組成物のTECHAIに対するTECHAOHのモル割合は1/1とした。
【0188】
SiO/Al =24.6
TECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.04
K/SiO =0.08
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.16
種晶 =2.0重量%
しかしながら、本比較例の原料組成物は結晶化せず、アモルファスしか得られなかった
【0189】
これらの比較例から、トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオンの一種である、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムカチオン及びトリエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオンのみをSDAとする原料組成物を使用した場合、48時間の結晶化時間ではCHA型ゼオライトが結晶化しないことが確認できた。また、DMECHAをSDAとする製造方法においては150℃という低温下であっても短時間でCHA型ゼオライトが結晶化するのに対し、同じアルキル基を3つ有するトリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオンをSDAとする製造方法では、低温下ではCHA型ゼオライトが結晶化しないことが確認できた。これより、原料CHA製法では、従来の製造方法と比べて低い温度であっても短時間でCHA型ゼオライトが結晶化し、エネルギーコストも低減できるという効果も有することが確認できた。
【0190】
比較例3
25重量%DMECHAOH水溶液を使用しなかったこと、及び、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化した。
【0191】
SiO/Al =24.6
DMECHA/SiO =0.08
Na/SiO =0.125
K/SiO =0.08
O/SiO =15.0
OH/SiO =0.205
種晶 =2.0重量%
しかしながら、本比較例の原料組成物は結晶化せず、アモルファスしか得られなかった。
【0192】
これより、DMECHAを含む原料組成物であっても、Na/SiOが原料CHA製法の範囲を超える場合、48時間ではCHA型ゼオライトが結晶化しないことが確認できた。
【0193】
実施例8
25重量%DMECHABr水溶液、25重量%TMAdACl水溶液、48%水酸化ナトリウム水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、純水、及び、非晶質アルミノシリケート(SiO/Al=24.6)を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0194】
SiO/Al =24.6
DMECHA/SiO =0.06
TMAdA/SiO =0.02
K/SiO =0.06
Na/SiO =0.06
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.12
種晶 =0.0重量%
原料組成物を密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転攪拌しながら150℃で48時間反応させた。得られた結晶化物を固液分離し、脱イオン水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥した。
【0195】
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが23.9、SiOH/Si比が0.74×10-2及びI比が0.57であった。また、ゼオライトの収率は97%であった。
【0196】
実施例9
以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例8と同様な方法で結晶化物を得た。
【0197】
SiO/Al =24.6
DMECHABr/SiO =0.075
TMAdACl/SiO =0.005
K/SiO =0.06
Na/SiO =0.06
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.12
種晶 =0.0重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが23.9、SiOH/Si比が0.72×10-2及びI比が0.57であった。また、ゼオライトの収率は97%であった。
(銅の含有)
硝酸銅三水和物1.05gを純水3.4gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、焼成後のCHA型ゼオライト(カチオンタイプ:アンモニウム型)10.0gに滴下し、乳鉢で10分間含浸混合した。混合後のCHA型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅含有ゼオライトを得、これを本実施例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0198】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトは、SARが23.9、銅含有量が3.0重量%、及び、Cu/Al比が0.37であった。
【0199】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0200】
【表12】
【0201】
該銅含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1、Peak-2及びPeak-4がそれぞれ1859cm-1、3730cm-1及び3659cm-1であり、Peak-3を有していなかった。また、P2/P1が0.22、P3/P1が0、及び、P4/P1が1.44であった。
【0202】
実施例10
25重量%TMAdACl水溶液の代わりに25重量%TMAdAOH水溶液を使用したこと、及び、SiO/Al=30.3の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例8と同様な方法で結晶化物を得た。
【0203】
SiO/Al =30.3
DMECHA/SiO =0.06
TMAdA/SiO =0.02
K/SiO =0.04
Na/SiO =0.06
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.12
種晶 =0.0重量%
該原料組成物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化して結晶化物を得た。該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが29.7、SiOH/Si比が0.98×10-2及びI比が0.59であった。また、ゼオライトの収率は98%であった。
【0204】
実施例11
25重量%DMECHABr水溶液に加えて25重量%DMECHAOH水溶液を使用したこと、25重量%TMAdACl水溶液の代わりに25重量%TMAdAOH水溶液を使用したこと、及び、SiO/Al=30.3の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例8と同様な方法で結晶化物を得た。原料組成物のDMECHABrに対するDMECHAOHのモル割合は3/15とした。
【0205】
SiO/Al =30.3
DMECHA/SiO =0.06
TMAdA/SiO =0.005
K/SiO =0.04
Na/SiO =0.06
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.12
種晶 =0.0重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが29.7及びI比が0.62であった。また、ゼオライトの収率は98%であった。
【0206】
実施例12
25重量%TMAdACl水溶液の代わりに25重量%TMAdAOH水溶液を使用したこと、及び、SiO/Al=24.6の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例8と同様な方法で結晶化物を得た。
【0207】
SiO/Al =24.6
DMECHA/SiO =0.06
TMAdA/SiO =0.02
K/SiO =0.12
Na/SiO =0.08
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.22
種晶 =0.0重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが24.0、及び、SiOH/Si比が0.88×10-2であった。また、ゼオライトの収率は98%であった。大気中、600℃で2時間焼成後のCHA型ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0208】
【表13】
【0209】
該CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1’、Peak-2’及びPeak-4’がそれぞれ1856cm-1、3729cm-1及び3594cm-1であり、Peak-3’を有していなかった。また、P2’/P1’が0.42、P3’/P1’が0、及び、P4’/P1’が0.08であった。
(銅の含有)
硝酸銅三水和物1.05gを純水3.4gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、焼成後のCHA型ゼオライト(カチオンタイプ:アンモニウム型)10.0gに滴下し、乳鉢で10分間含浸混合した。混合後のCHA型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅含有ゼオライトを得、これを本実施例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0210】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトは、SARが24.0、銅含有量が3.0重量%、及び、Cu/Al比が0.37であった。
【0211】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0212】
【表14】
【0213】
該銅含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1、Peak-2及びPeak-4がそれぞれ1859cm-1、3730cm-1及び3657cm-1であり、Peak-3を有していなかった。また、P2/P1が0.63、P3/P1が0、及び、P4/P1が1.38であった。
【0214】
実施例13
25重量%TMAdACl水溶液の代わりに25重量%TMAdAOH水溶液を使用したこと、及び、SiO/Al=23.1の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例8と同様な方法で結晶化物を得た。
【0215】
SiO/Al =23.1
DMECHA/SiO =0.06
TMAdA/SiO =0.02
K/SiO =0.12
Na/SiO =0.08
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.22
種晶 =0.0重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であった。大気中、600℃で2時間焼成後のCHA型ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0216】
【表15】
【0217】
実施例14
25重量%TMAdACl水溶液の代わりに25重量%TMAdAOH水溶液を使用したこと、及び、SiO/Al=13.0の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例8と同様な方法で結晶化物を得た。
【0218】
SiO/Al =13.0
DMECHA/SiO =0.03
TMAdA/SiO =0.04
K/SiO =0.07
Na/SiO =0.11
O/SiO =18
OH/SiO =0.22
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが13.3であった。
【0219】
該CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1’、Peak-2’及びPeak-4’がそれぞれ1858cm-1、3738cm-1及び3666cm-1であり、Peak-3’を有していなかった。また、P2’/P1’が1.00、P3’/P1’が0、及び、P4’/P1’が11.33であった。
(銅の含有)
硝酸銅三水和物1.14gを純水3.8gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、焼成後のCHA型ゼオライト(カチオンタイプ:アンモニウム型)10.0gに滴下し、乳鉢で10分間含浸混合した。混合後のCHA型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅含有ゼオライトを得、これを本実施例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0220】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトは、SARが13.3、銅含有量が3.0重量%、及び、Cu/Al比が0.22であった。
【0221】
該銅含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1、Peak-2及びPeak-4がそれぞれ1857cm-1、3736cm-1及び3663cm-1であり、Peak-3を有していなかった。また、P2/P1が0.75、P3/P1が0、及び、P4/P1が6.25であった。
【0222】
実施例15
SiO/Al=13.4の非晶質アルミノシリケートを使用して以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例2と同様な方法で結晶化物を得た。
【0223】
SiO/Al =13.4
DMECHA/SiO =0.08
K/SiO =0.14
Na/SiO =0.04
O/SiO =18
OH/SiO =0.22
種晶 =0.5重量%
該結晶化物はCHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが13.5であった。
【0224】
該CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1’、Peak-2’及びPeak-4’がそれぞれ1852cm-1、3742cm-1及び3661cm-1であり、Peak-3’を有していなかった。また、P2’/P1’が0.25、P3’/P1’が0、及び、P4’/P1’が2.63であった。
(銅の含有)
硝酸銅三水和物0.45gを純水1.5gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、焼成後のCHA型ゼオライト(カチオンタイプ:アンモニウム型)4.0gに滴下し、乳鉢で10分間含浸混合した。混合後のCHA型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅含有ゼオライトを得、これを本実施例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0225】
本実施例の銅含有CHA型ゼオライトは、SARが13.5、銅含有量が3.0重量%、及び、Cu/Al比が0.22であった。
【0226】
該銅含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1、Peak-2及びPeak-4がそれぞれ1857cm-1、3740cm-1及び3656cm-1であり、Peak-3を有していなかった。また、P2/P1が0.75、P3/P1が0、及び、P4/P1が4.75であった。
【0227】
比較例4
特許文献4に準じた方法により、CHA型ゼオライトを合成した。すなわち、TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液、非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0228】
SiO/Al =32.3
TMAdA/SiO =0.08
K/SiO =0.08
Na/SiO =0.08
O/SiO =18.0
OH/SiO =0.25
該原料組成物を使用したこと以外は実施例1と同様な方法で結晶化物を得、これを本比較例のCHA型ゼオライトとした。
【0229】
本比較例のCHA型ゼオライトは、CHA型ゼオライトの単一相であり、SiO/Alが31.0、及び、SiOH/Si比が1.70×10-2であった。
【0230】
本比較例のCHA型ゼオライトのXRDパターンを示す。
【0231】
【表16】
【0232】
得られたCHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1’、Peak-2’、Peak-3’及びPeak-4’がそれぞれ1859cm-1、3733cm-1、3481cm-1、及び3597cm-1であり、P2’/P1’が1.67、P3’/P1’が0.07、及び、P4’/P1’が0.07であった。
【0233】
TMAdAのみをSDAとして含む原料組成物から得られたCHA型ゼオライトは、DMECHAを含む原料組成物から結晶化するCHA型ゼオライトと相対強度が相違し、異なるXRDパターンを有することが確認できた。
(銅の含有)
硝酸銅三水和物1.13gを純水3.75gに溶解して硝酸銅溶液を調製した。当該硝酸銅溶液を、焼成後のCHA型ゼオライト(カチオンタイプ:アンモニウム型)10.8gに滴下し、乳鉢で10分間含浸混合した。混合後のCHA型ゼオライトを110℃で一晩乾燥させた後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅含有ゼオライトを得、これを本比較例の銅含有CHA型ゼオライトとした。
【0234】
本比較例の銅含有CHA型ゼオライトは、SARが31.0、銅含有量が3.0重量%、及び、Cu/Al比が0.47であった。
【0235】
本比較例の銅含有CHA型ゼオライトのXRDパターンを下表に示す。
【0236】
【表17】
【0237】
該銅含有CHA型ゼオライトは、そのIRスペクトルにおいてPeak-1、Peak-2及びPeak-4がそれぞれ1861cm-1、3733cm-1及び3660cm-1であり、Peak-3を有していなかった。また、P2/P1が1.63、P3/P1が0、及び、P4/P1が1.13であった。
【0238】
比較例5
米国特許4,665,110号のExample1及び5の方法に準じた方法により、SSZ-13の合成を行った。すなわち、1-アダマンタンアミン(Sigma-Aldrich)17.5gにdimethyl formamide(Kishida Chemical)105mlを加えて溶解した。溶解後、トリブチルアミン(Kishida Chemical)50.8gを添加し、これを氷冷下で撹拌しながら、methyl iodide(Wako Pure Chemical)49.7gをゆっくり滴下した。
【0239】
methyl iodideの滴下後、これを5日間撹拌することで反応させ、白色沈殿を得た。当該白色沈殿物をdiethyl ether(Kishida Chemical)100mLで5回洗浄し、減圧乾燥することとで白色粉末を得た。
【0240】
得られた白色粉末の元素分析、及び、NMR測定の結果、当該白色粉末はN,N,N-trimethyladamantammonium iodide(以下、「Template A」とする。)であることが同定できた。
【0241】
水に、Ludox AS-30 13.6g、Template A 5.3gを混合して溶液1を得た。また、水に、Al(SO・18HO 1.1g、及び、solid potassium hydroxide 2.91gを混合して溶液2を得た。
【0242】
溶液1に溶液2を添加及び混合して均一な乳白色の溶液を得た。混合後の溶液を80mLのステンレス製の反応容器に充填及び密閉し、当該反応容器を30rpmで回転させながら、150℃で6日間加熱して生成物を得た。得られた生成物を水、メタノール、及び、アセトンの順で洗浄し、110℃で乾燥することで白色粉末を得た。
【0243】
得られた白色粉末はSSZ-13の単一相であり、SiO/Alは28.3であったることが確認できた。しかしながら、本比較例のSSZ-13は凝集結晶粒子のみからなるため、平均結晶径は評価できなかった。
【0244】
測定例
実施例9及び比較例4で得られた銅含有CHA型ゼオライトの窒素酸化物還元特性を測定した。条件は以下のとおりである。
(水熱耐久処理)
銅含有CHA型ゼオライトを成形及び粉砕し、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。銅含有CHA型ゼオライトの凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填した後、水分を10体積%含有する空気を流通させ、以下の条件で水熱耐久処理した。
空気の流通速度 : 300mL/min
処理温度 : 900℃
処理時間 : 3時間
【0245】
(窒素酸化物還元率(%)の測定方法)
水熱耐久処理前後の試料を成形及び破砕して、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。凝集粒子状の試料1.5mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、以下の測定温度で保持して窒素酸化物含有ガスを流通させ、常圧固定床流通式反応管の入口及び出口の窒素酸化物濃度を測定した。窒素酸化物含有ガスの流通条件は以下のとおりである。
窒素酸化物含有ガスの組成 : NO 200ppm
NH 200ppm
10容量%
O 3容量%
残部
窒素酸化物含有ガスの流量 : 1.5L/min
空間速度 : 60,000hr-1
測定温度 : 150℃
【0246】
得られた窒素酸化物濃度から以下の式により窒素酸化物還元率を求めた。
【0247】
窒素酸化物還元率(%)
={([NOx]in-[NOx]out)/[NOx]in}×100
[NOx]inは常圧固定床流通式反応管の入口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度であり、[NOx]outは常圧固定床流通式反応管の出口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度である。
【0248】
水熱耐久処理前の各銅含有CHA型ゼオライト(以下、「フレッシュ試料」ともいう。)の窒素酸化物還元率に対する、水熱耐久処理後の各銅含有CHA型ゼオライト(以下、「3h耐久試料」ともいう。)の窒素酸化物還元率を下表及び図3に示す。
【0249】
【表18】
【0250】
比較例4の銅含有CHA型ゼオライトは窒素酸化物還元率の低下が比較的少ない銅含有CHA型ゼオライトである。これに対し、本実施例の銅含有CHA型ゼオライトのフレッシュ試料は比較例4と同程度の窒素酸化物還元率を示したのみならず、長時間の熱負荷後であっても窒素酸化物還元率を維持できるという効果を有することが確認できた。これより、本実施態様の銅含有CHA型ゼオライトは優れた窒素酸化物還元特性を有するという効果に加え、窒素酸化物還元触媒として使用した場合に寿命が長い触媒として使用できることが確認できた。さらには、従来の銅含有CHA型ゼオライトと比べても高い耐熱性を有するということ、及び、150℃という低温下であっても窒素酸化物還元率の低下が極めて少ない窒素酸化物還元触媒として適用できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0251】
本実施態様の金属含有CHA型ゼオライトは、触媒として使用することができ、特に窒素酸化物還元触媒、更には尿素SCRにおける窒素酸化物の還元触媒として供することができる。更に、原料CHAは触媒担体や吸着剤担体として使用することができ、その製造方法は、工業的なCHA型ゼオライトの製造方法として適用することができる。
図1
図2
図3