(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/20 20060101AFI20240410BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240410BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20240410BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240410BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C08F220/20
C08F2/44 A
C08F290/12
G02B1/04
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2022516891
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011251
(87)【国際公開番号】W WO2021215155
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020074903
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋哉
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114962(JP,A)
【文献】特開2015-172176(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155013(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/203979(WO,A1)
【文献】特開2011-202127(JP,A)
【文献】特開2013-151609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
B29C
G02B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分
、下記(d)成分
及び下記(f)成分、並びに任意成分として下記(e)成分及び下記(h)成分を含
み、
(a)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の和100質量部に対し(a)成分の含有量は30質量部乃至90質量部であり、(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し(b)成分の含有量は0.1質量部乃至5質量部、(c)成分の含有量は5質量部乃至60質量部、(d)成分の含有量は1質量部乃至15質量部、(f)成分の含有量は0.05質量部乃至3質量部、(e)成分を含む場合該(e)成分の含有量は1質量部乃至15質量部、(h)成分を含む場合該(h)成分の含有量は0.5質量部乃至40質量部である、光硬化性組成物。
(a):(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ以上有する少なくとも
2種の多官能(メタ)アクリレート
であって、該少なくとも2種の多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ有する二官能(メタ)アクリレートであるか、又は該二官能(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に3つ有する三官能(メタ)アクリレート
(b):光ラジカル開始剤
(c):下記式(1)で表される少なくとも1種のシランカップリング剤で表面修飾された、一次粒子径が1nm乃至100nmのシリカ粒子
(但し、下記式(1)中のX
1
が水素原子であるシランカップリング剤のみで表面修飾されたシリカ粒子を除く。)
【化1】
(式中、X
1は水素原子、又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1又は2のアルキル基を表し、mは8乃至14の整数を表し、nは0乃至2の整数を表す。)
(d):下記式(2)で表される多官能チオール
【化2】
(式中、R
3は単結合、炭素原子数1乃至6の直鎖状アルキレン基又は炭素原子数3乃至6の分岐鎖状のアルキレン基を表し、X
2は単結合、エステル結合又はエーテル結合を表し、Q
1はヘテロ原子を少なくとも1つ含むもしくはヘテロ原子を含まない炭素原子数2乃至12の有機基、又はヘテロ原子を表し、pは2乃至6の整数を表す。)
(e):(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサン
(f):フェノール系酸化防止剤
(h):(メタ)アクリロイルオキシ基又はアリルオキシ基を1分子中に1つ有するモノマー
【請求項2】
さらに
、下記(g)成分を含む、請求項
1に記載の光硬化性組成物。
(g):スルフィド系酸化防止剤
【請求項3】
前記(a)成分は、下記(a1)成分及び下記(a2)成分を含む、請求項
1又は請求項2に記載の光硬化性組成物。
(a1):二官能ウレタン(メタ)アクリレート
(a2):下記式(3)で表される二官能(メタ)アクリレート
【化3】
(式中、R
4は水素原子又はメチル基を表し、Q
2は炭素原子数4乃至10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。)
【請求項4】
前記(c)成分は、前記式(1)におけるX
1が(メタ)アクリロイルオキシ基を表すシランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子である、請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物をインプリント成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項7】
光硬化性組成物の成形体の製造方法であって、支持体上に請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を塗布する工程、該光硬化性組成物と、目的とする成形体の形状の反転パターン及び遮光膜を有するモールドとを接触させるインプリント工程、該インプリント工程の後、該モールドを介して該光硬化性組成物を露光して光硬化部を形成する光硬化工程、該光硬化部と該モールドとを分離する離型工程、該離型工程の後、該光
硬化性組成物の未硬化部を現像液により除去して該光硬化部を露出させる現像工程、及び該現像工程の後、該光硬化部が形成された支持体をスピン乾燥させる乾燥工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項8】
前記光硬化工程の後、前記離型工程の前、中途又は後に、前記光硬化部を加熱する工程をさらに含む、請求項
7に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
前記現像工程の後、前記乾燥工程の前に、前記光硬化部に対してリンス液を用いてリンス処理するリンス工程をさらに含む、請求項
7又は請求項
8に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥工程の後、前記光硬化部の全面を露光するポスト露光工程をさらに含む、請求項
7乃至請求項
9のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記ポスト露光工程の後、前記光硬化部を加熱するポストベーク工程をさらに含む、請求項
10に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
前記ポスト露光工程の後、前記光硬化部の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに含む、請求項
10に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
前記ポストベーク工程の後、前記光硬化部の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに含む、請求項
11に記載の成形体の製造方法。
【請求項14】
前記成形体がカメラモジュール用レンズである、請求項
6乃至請求項
13のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート、光ラジカル開始剤、特定のシランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子及び多官能チオールを含む光硬化性組成物に関する。本発明の光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体は、高透明性を有し、支持体の反り量が小さく、有機溶剤を用いた現像工程を経てもクラックが発生しない。
【背景技術】
【0002】
樹脂レンズは、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、車載カメラなどの電子機器に用いられており、その樹脂レンズの使用用途に合わせて、高い透明性や耐熱性、並びに歩留まりよく成形できる高い生産性が求められている。このような要求を満たす樹脂レンズ用の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、メタクリル樹脂等の熱可塑性の透明樹脂が使用されてきた。
【0003】
高解像度カメラモジュールには複数枚のレンズが用いられる。そのレンズの製造にあたり、歩留まりや生産効率の向上、さらにはレンズ積層時の光軸ずれの抑制のために、熱可塑性樹脂の射出成型から、室温で液状の光硬化性樹脂を使用したウェハレベル成形への移行が盛んに検討されている。前記光硬化性樹脂としては、高透明性及びモールドからの離型性の観点から、ラジカル硬化性樹脂組成物が広く用いられている。また、ウェハレベル成形の種類としては、生産性の観点から、ガラス基板等の支持体上にレンズを形成するハイブリッドレンズ方式が一般的である。
【0004】
カメラモジュールの薄化に対する市場要求は年々増加しており、ハイブリッドレンズ方式に用いられる支持体の厚さも薄化が求められている。そのため、一般的なラジカル重合性樹脂組成物を使用した場合、レンズ等の成形体が形成された支持体が反り易くなり、カメラモジュールの精密な組立が困難となる虞がある。
【0005】
一方、樹脂レンズの耐熱性や光学特性等を向上させることを目的として、シリカ粒子やジルコニウム粒子等の無機微粒子を有機樹脂と複合させる技術が広く知られており、そのようなラジカル重合性樹脂組成物が既に報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。しかしながら、このような無機微粒子を含有した樹脂組成物から得られる硬化物は、インプリント工程後の有機溶剤を用いた現像工程においてクラックが生じやすいという課題を有している。このクラックは、無機微粒子と有機樹脂マトリクスとの界面に発生する歪みが原因と考えられる。すなわち、現像工程において有機溶剤が前記硬化物に接液し、内部へ浸入すると、有機樹脂マトリクスには一定の膨潤が発生する一方で、剛直な無機微粒子は殆ど膨潤しないため、両者の界面で膨潤量に差が生じ、歪みが発生する。この状態で、現像工程に続く乾燥工程において有機溶剤が放出される際、該有機溶剤の放出速度が速いと、歪みによる応力が急激に発散され、結果として前記硬化物にクラックが発生してしまう。特に、形状の急峻な成形体の裾部に応力が溜まり易く、該成形体の裾部においてクラックが発生し易い。この裾部のクラックは、外観不良となるだけでなく、成形体が支持体から剥がれる原因となり得るため、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-234458号公報
【文献】国際公開第2016/104039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
硬化物が樹脂レンズとして使用し得る高い透明性を有し、ガラス基板などの支持体上に成形体を形成した際の支持体の反り量が小さく、有機溶剤を用いた現像工程を経ても成形体の裾部にクラックが発生しない、無機微粒子を含有する樹脂組成物は未だ無く、その開発が望まれていた。本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、前記課題を解決する光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、特定の多官能(メタ)アクリレート、特定のシランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子及び多官能チオールを、それぞれ光硬化性組成物に所定量配合することによって、該光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の透過率が高く、かつ支持体上に硬化物及び成形体を形成した際の支持体の反り量が小さく(0μm以上3.0μm未満)、さらには有機溶剤を用いた現像工程を経ても硬化物及び成形体の裾部にクラックが発生しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一態様は、下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分及び下記(d)成分を含む、光硬化性組成物である。
(a):(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ以上有する少なくとも1種の多官能(メタ)アクリレート
(b):光ラジカル開始剤
(c):下記式(1)で表される少なくとも1種のシランカップリング剤で表面修飾された、一次粒子径が1nm乃至100nmのシリカ粒子
【化1】
(式中、X
1は水素原子又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至2のアルキル基を表し、mは8乃至14の整数を表し、nは0乃至2の整数を表す。)
(d):下記式(2)で表される多官能チオール
【化2】
(式中、R
3は単結合又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、X
2は単結合、エステル結合又はエーテル結合を表し、Q
1はヘテロ原子を少なくとも1つ含むもしくはヘテロ原子を含まない炭素原子数2乃至12の有機基、又はヘテロ原子を表し、pは2乃至6の整数を表す。)
【0010】
本発明の光硬化性組成物はさらに、下記(e)成分を含有してもよい。
(e):(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサン
【0011】
本発明の光硬化性組成物はさらに、下記(f)成分及び/又は下記(g)成分を含有してもよい。
(f):フェノール系酸化防止剤
(g):スルフィド系酸化防止剤
【0012】
本発明の光硬化性組成物はさらに、下記(h)成分を含有してもよい。
(h):(メタ)アクリロイルオキシ基又はアリルオキシ基を1分子中に1つ有するモノマー
【0013】
前記(a)成分は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ有する二官能(メタ)アクリレートであるか、又は該二官能(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に3つ有する三官能(メタ)アクリレートである。
【0014】
前記(a)成分は、例えば、下記(a1)成分及び下記(a2)成分を含む。
(a1):二官能ウレタン(メタ)アクリレート
(a2):下記式(3)で表される二官能(メタ)アクリレート
【化3】
(式中、R
4は水素原子又はメチル基を表し、Q
2は炭素原子数4乃至10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を表す。)
【0015】
前記(c)成分は、例えば、前記式(1)におけるX1が(メタ)アクリロイルオキシ基のシランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子である。
【0016】
本発明の第二態様は、前記光硬化性組成物の硬化物である。
【0017】
本発明の第三態様は、前記光硬化性組成物をインプリント成形する工程を含む、成形体の製造方法である。
【0018】
本発明の第四態様は、光硬化性組成物の成形体の製造方法であって、支持体上に前記光硬化性組成物を塗布する工程、該光硬化性組成物と、目的とする成形体の形状の反転パターン及び遮光膜を有するモールドとを接触させるインプリント工程、該インプリント工程の後、該モールドを介して該光硬化性組成物を露光して光硬化部を形成する光硬化工程、該光硬化部と該モールドとを分離する離型工程、該離型工程の後、該光硬化性組成物の未硬化部を現像液により除去して該光硬化部を露出させる現像工程、及び該現像工程の後、該光硬化部が形成された支持体をスピン乾燥させる乾燥工程を含む、成形体の製造方法である。
【0019】
前記光硬化工程の後、前記離型工程の前、中途又は後に、前記光硬化部を加熱する工程をさらに含んでもよい。
【0020】
前記現像工程の後、前記乾燥工程の前に、前記光硬化部に対してリンス液を用いてリンス処理するリンス工程をさらに含んでもよい。
【0021】
前記乾燥工程の後、前記光硬化部の全面を露光するポスト露光工程をさらに含んでもよい。
【0022】
前記ポスト露光工程の後、前記光硬化部を加熱するポストベーク工程をさらに含んでもよい。
【0023】
前記ポスト露光工程の後、前記光硬化部の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0024】
前記ポストベーク工程の後、前記光硬化部の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0025】
前記成形体は、例えば、カメラモジュール用レンズである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光硬化性組成物は、必須成分として前記(a)成分乃至前記(d)成分を含み、任意で前記(e)成分を含み、さらに任意で前記(f)成分及び/又は前記(g)成分を含み、さらに任意で前記(h)成分を含む。前記(a)成分及び前記(b)成分の存在により、前記光硬化性組成物が露光された際に三次元架橋体が形成され、硬化物が得られる。また、前記(c)成分として前記式(1)で表されるようなシランカップリング剤、すなわち、炭素原子数が8乃至14の長鎖炭化水素基を有するシランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子を用いることで、該シリカ粒子の表面と有機樹脂との親和性・密着性を向上させる結果、前記硬化物及び成形体が有機溶剤で現像される際に発生するシリカ粒子/有機樹脂界面の歪みを軽減してクラックを防止でき、且つ該シリカ粒子の分散性を高めて該硬化物及び成形体の透明性を高くすることができる。
【0027】
さらに、前記(d)成分の多官能チオールを用いることで、前記光硬化性組成物が光硬化する際の収縮が抑制される結果、前記硬化物及び成形体が形成された支持体の反り量を低減できる。以上より、前記(a)成分乃至前記(d)成分を含む光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体が、樹脂レンズ、例えば、カメラモジュール用レンズとして望ましい高透過率を示し、また、支持体上に該硬化物及び成形体を形成した際の該支持体の反り量が小さく(0μm以上3.0μm未満)、さらには、有機溶剤を用いた現像工程を経ても該硬化物及び成形体の裾部にクラックが発生しないこと見出した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は基板の反り量の評価方法を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例15の光硬化性組成物15から作製された硬化物を条件Dの現像・リンス条件にて処理した際の裾部を示す、光学顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、比較例1の光硬化性組成物18から作製された硬化物を条件Dの現像・リンス条件にて処理した際の裾部を示す、光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の光硬化性組成物の各成分について、より詳細に説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、“CH2=C(CH3)-C(=O)O-”で表されるメタクリロイルオキシ基又は“CH2=CH-C(=O)O-”で表されるアクリロイルオキシ基を示し、アリルオキシ基とは、“CH2=CH-CH2-O-”を示す。
【0030】
[(a)成分:(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ以上有する少なくとも1種の多官能(メタ)アクリレート]
本発明の光硬化性組成物の(a)成分として使用可能な、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に3つ以上有する三官能以上の(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ有する二官能(メタ)アクリレートとに大別できる。本明細書では、前記二官能(メタ)アクリレートの内、“-NH-C(=O)O-”で表されるウレタン結合を少なくとも1つ有する化合物[二官能ウレタン(メタ)アクリレート]を(a1)成分と称し、前記式(3)で表される二官能(メタ)アクリレートを(a2)成分と称する。本発明の光硬化性組成物が(a1)成分を含むとき、該光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体は、支持体との密着性に優れる。本発明の光硬化性組成物が(a2)成分を含むとき、該光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体は、柔軟性に優れ、且つ後述の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンとの相溶性に優れる。
【0031】
前記三官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-6LPA、U-10HA、U-10PA、UA-1100H、U-15HA、UA-53H、UA-33H、UA-7100(以上、新中村化学工業(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H(以上、共栄社化学(株)製)、EBECRYL(登録商標)220、同8800、同294/25HD、同4220、同4513、同4738、同4740、同4820、同8311、同9260、同8701、同4265、同4587、同4666、同4680、同8210、同8405、同1290、同5129、同8301R、同4501、同2221、同8465、同1258、同4101、同4201、同8209、同1291、同8602、同225、KRM(登録商標)8667、同8296、同8528、同8200、同8200AE、同8530、同8904、同8531BA、同8452(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、UV-2750B、UV-7000B、UV-7510B、UV-1700B、UV-6300B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7620EA、UV-7630B、UV-7640B及びUV-7650B(以上、三菱ケミカル(株)製)等のウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
前記三官能以上の(メタ)アクリレートの他の例としては、ビスコート#295、同#300、同#802(以上、大阪有機化学工業(株)製)、A-9300、A-9300-1CL、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、TMPT、A-TMPT、AD-TMP、ATM-35E、A-TMMT、A-9550、A-DPH(以上、新中村化学工業(株)製)、ファンクリル(登録商標)FA-731A、FA-137M(以上、日立化成(株)製)、ライトエステルTMP、ライトアクリレート(登録商標)TMP-A、同PE-3A、同PE-4A、同DPE-6A(以上、共栄社化学(株)製)、PETIA、PETRA、TMPTA、OTA480、EBECRYL(登録商標)160S、同40、同EBECRYL(登録商標)140、同1142、PETA、DPHA(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、TMPTM、TMPT、TMP-2P、TMP-3P、TMP-3、PET-3、PETA-4、TEICA、MF-001、MF-101(以上、第一工業製薬(株)製)、M-305、M-306、M-309、M-310、M-313、M-315、M-321、M-350、M-360、M-400、M-402、M-403、M-404、M-405、M-406、M-408、M-450、M-460及びM-471(以上、東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0033】
前記三官能以上の(メタ)アクリレートは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
前記二官能(メタ)アクリレートの内、前記(a1)成分及び前記(a2)成分いずれにも該当しない二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
前記(a1)成分及び前記(a2)成分いずれにも該当しない二官能(メタ)アクリレートとして市販品を用いてもよく、具体的には、ビスコート#310HP、ビスコート#335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)、DCP、A-DCP、A-DOG、2G、3G、4G、9G、14G、23G、A-200、A-400、A-600、A-1000、APG-100、APG-200、APG-400、APG-700、3PG、9PG、A-1206PE、A-0612PE、A-0412PE、A-1000PER、A-3000PER、A-PTMG-65、ABE-300、A-BPE-4、A-BPE-10、A-BPE-20、A-BPE-30、A-BPP-3(以上、新中村化学工業(株)製)、FA-222A、FA-220M、FA-240M、FA-240A、FA-P240A、FA-P270A、FA-023M、FA-PTG9M、FA-PTG9A、FA-320M、FA-321M、FA-3218M、FA-321A、FA-324A(以上、日立化成(株)製)、ライトエステル2EG、同3EG、同4EG、同9EG、同14EG、同BP-2EMK、ライトアクリレート(登録商標)DCP-A、同3EG-A、同4EG-A、同9EG-A、同14EG-A、同PTMGA-250、同BP-4EAL、同BP-4PA、同HPP-A(以上、共栄社化学(株)製)、DPGDA、TPGDA、IRR 214-K、EBECRYL(登録商標)11、同130、同145、同150(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、PE-200、PE-300、PE-400、PE-600、PEM-1000、BPEM-4、BPE-4、BPEM-10、BPE-10、BPE-20、HBPE-4、HBPEM-10及びHPN(第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0036】
前記(a1)成分及び前記(a2)成分いずれにも該当しない二官能(メタ)アクリレートは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
[(a1)成分:二官能ウレタン(メタ)アクリレート]
前記(a1)成分としては、例えば、U-2PPA、U-200PA、U-160TM、U-290TM、UA-4200、UA-4400、UA-122P、UA-W2A(以上、新中村化学工業(株)製)、AH-600、UF-8001G(以上、共栄社化学(株)製)、EBECRYL(登録商標)210、同230、同270、同280/15IB、同284、同4491、同4683、同4858、同8307、同8402、同8411、同8413、同8804、同8807、同9270、同246/20HEMA、同1271、同286、同4859、同8409、同8809、同8810、同8811、KRM(登録商標)7735、同8961、同8191、(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、M-1100、M-1200(以上、東亞合成(株)製)、UV-2000B、UV-3000B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3310B、UV-3500BA、UV-3520EA、UV-3700B、UV-6640B及びUV-6630B(以上、三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0038】
前記(a1)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
[(a2)成分:前記式(3)で表される二官能(メタ)アクリレート]
前記(a2)成分としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル―2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、が挙げられる。
【0040】
前記(a2)成分として市販品を用いてもよく、具体的には、ビスコート#195、ビスコート#230、ビスコート#260(以上、大阪有機化学工業(株)製)、BD、NPG、A-NPG、HD-N、A-HD-N、NOD-N、A-NOD-N、A-IND、DOD-N、A-DOD-N(以上、新中村化学工業(株)製)、FA-121M、FA-124M、FA-125M、FA-129AS(以上、日立化成(株)製)、ライトエステル1.4BG、ライトエステルNP、ライトエステル1.6HX、ライトエステル1.9ND、ライトアクリレート1.6HX-A、ライトアクリレート1.9ND-A、ライトアクリレートNP-A、ライトアクリレートMPD-A(以上、共栄社化学(株)製)、HDDA(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、HDDA、L-C9A及びND-DA(以上、第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0041】
前記(a2)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
本発明の光硬化性組成物の(a)成分の含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の和100質量部に対して、30質量部乃至90質量部、好ましくは35質量部乃至85質量部、より好ましくは40質量部乃至80質量部である。前記(a)成分の含有量が30質量部より少ないと、前記光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体が、十分な架橋密度を有する有機樹脂マトリクスを形成できず、また該硬化物及び成形体が、架橋密度が小さいため脆性化する虞がある。前記(a)成分の含有量が90質量部より多いと、前記光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の耐熱性が悪化する虞がある。
【0043】
前記(a)成分として(a1)成分及び(a2)成分を含む場合、その含有量は、本発明の光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、下記式(4)乃至下記式(6)で表される関係をすべて満たし、好ましくは下記式(4´)乃至(6´)の関係をすべて満たし、より好ましくは下記式(4´´)乃至(6´´)の関係をすべて満たす。ここで、前記(a1)成分の含有量をY質量部、前記(a2)成分の含有量をZ質量部とする。
式(4):30質量部≦(Y+Z)≦90質量部
式(5):0質量部≦Y≦80質量部
式(6):0質量部≦Z≦70質量部
式(4´):35質量部≦(Y+Z)≦85質量部
式(5´):0質量部≦Y≦75質量部
式(6´):0質量部≦Z≦65質量部
式(4´´):40質量部≦(Y+Z)≦80質量部
式(5´´):0質量部≦Y≦70質量部
式(6´´):0質量部≦Z≦60質量部
【0044】
前記(a1)成分の含有量が80質量部より多いと、前記光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の耐熱性が悪化する虞がある。前記(a2)成分の含有量が70質量部以下であると、前記光硬化性組成物の粘度が著しく低下することはなく、該光硬化性組成物をインプリントする工程におけるハンドリング性が良好である。
【0045】
[(b)成分:光ラジカル開始剤]
本発明の光硬化性組成物の(b)成分として使用可能な光ラジカル開始剤として、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、ジベンゾイル類、アントラキノン類、アシルホスフィンオキシド類、ベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類及びチオキサントン類が挙げられ、特に、分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。前記光ラジカル開始剤として市販品を用いてもよく、例えば、OMNIRAD(登録商標)127、同184、同369、同369E、同379EG、同500、同651、同819、同784、同907、同1173、同2959、同TPO H(以上、IGM Resins社製)、IRGACURE(登録商標)OXE01、同OXE02、同OXE03、同OXE04、CGI1700、同CGI1750、同CGI1850、同CG24-61(以上、BASFジャパン(株)製)、ESACURE KIP150、同KIP65LT、同KIP100F、同KT37、同KT55、同KTO46及び同KIP75(以上、Lamberti社製)が挙げられる。
【0046】
本発明の光硬化性組成物の(b)成分の含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、0.1質量部乃至5質量部、好ましくは0.5質量部乃至3質量部である。前記(b)成分の含有量が0.1質量部より少ないと、前記光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の強度が低下する虞がある。前記(b)成分の含有量が5質量部より多いと、該硬化物及び成形体の耐熱性が悪化する虞がある。
【0047】
前記(b)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
[(c)成分:前記式(1)で表される少なくとも1種のシランカップリング剤で表面修飾された、一次粒子径が1nm乃至100nmのシリカ粒子]
本発明の光硬化性組成物の(c)成分のシリカ粒子の表面を修飾する、前記式(1)で表されるシランカップリング剤は、該式(1)中のmが8乃至14の整数であること、すなわち炭素原子数8乃至14の直鎖状炭化水素基を分子内に有することが特徴である。具体的には、炭素原子数8乃至14の直鎖状アルキル基がケイ素原子と結合したアルコキシシラン化合物、又は炭素原子数8乃至14の直鎖状アルキレン基を介して(メタ)アクリロイルオキシ基がケイ素原子と結合したアルコキシシラン化合物である。前記式(1)中のmが8乃至14であるシランカップリング剤を用いることで、該シランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子の表面と有機樹脂との親和性・密着性を向上させることができる。前記式(1)中のmが7以下のシランカップリング剤の場合、有機樹脂との親和性・密着性が不十分となり、本発明の光硬化性組成物の硬化物及び成形体の透過率が低下したり、有機溶剤を用いた現像工程後に該硬化物及び成形体の裾部にクラックが発生したりする虞がある。前記式(1)中のmが15以上のシランカップリング剤の場合、直鎖状炭化水素基の結晶性が顕著となり、該シランカップリング剤で表面修飾されたシリカ粒子が凝集する虞がある。
【0049】
前記式(1)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルメチルジメトキシシラン、n-オクチルエチルジメトキシシラン、n-オクチルメチルジエトキシシラン、n-オクチルエチルジエトキシシラン、n-オクチルジメチルメトキシシラン、n-オクチルジエチルメトキシシラン、n-オクチルジメチルエトキシシラン、n-オクチルジエチルエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-テトラデシルトリメトキシシラン、n-テトラデシルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルエチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルエチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジメチルメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジエチルメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジメチルエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジエチルエトキシシラン、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルトリエトキシシラン、14-(メタ)アクリロイルオキシテトラデシルトリメトキシシラン、及び14-(メタ)アクリロイルオキシテトラデシルトリエトキシシランが挙げられる。
【0050】
前記式(1)で表されるシランカップリング剤として市販品を用いてもよく、具体的には、KBM-5803、KBM-3103C及びKBE-3083(以上、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0051】
前記式(1)で表されるシランカップリング剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
また、前記式(1)で表されるシランカップリング剤と該式(1)で表されないその他のシランカップリング剤とを併用してもよく、該その他のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p-トリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、 [3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、8-(2-アミノエチルアミノ)オクチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-トリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ-p-トリルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジ-p-トリルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン類、及び多官能基型シランカップリング剤が挙げられる。
【0053】
前記その他のシランカップリング剤として市販品を用いてもよく、具体的には、KBM-1003、KBE-1003、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBM-573、KBM-6803、KBE-9007、KBM-9659、KBE-9659、KBM-802、KBM-803、KBM-13、KBE-13、KBM-22、KBE-22、KBM-103、KBE-103、KBM-202SS、KBM-3033、KBE-3033、KBM-3063、KBE-3063、X-12-1048、X-12-1050、X-12-1154、X-12-1156、X-12-972F、X-12-1159L、X-40-9296、KR-503、KR-511、KR-513、KR-518、KR-519及びKPN-3504(以上、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0054】
前記その他のシランカップリング剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
前記式(1)で表されるシランカップリング剤を用い、さらに任意で前記式(1)で表されないその他のシランカップリング剤を併用してシリカ粒子を表面修飾する際、これらシランカップリング剤の使用量は、該シリカ粒子1g当たり、下記式(7)及び下記式(8)で表される関係を全て満たし、好ましくは下記式(7)´及び下記式(8)´で表される関係をすべて満たし、さらに好ましくは下記式(7)´´及び下記式(8)´´で表される関係をすべて満たす。ここで、前記式(1)で表されるシランカップリング剤の使用量をyミリモル、前記式(1)で表されないその他のシランカップリング剤の使用量をzミリモルとする。
式(7):0.1ミリモル≦(y+z)≦2ミリモル
式(8):0.1ミリモル≦y
式(7´):0.2ミリモル≦(y+z)≦1.5ミリモル
式(8´):0.2ミリモル≦y
式(7´´):0.3ミリモル≦(y+z)≦1ミリモル
式(8´´):0.3ミリモル≦y
【0056】
前記式(1)で表されるシランカップリング剤の使用量が0.1ミリモルより少ないと、シリカ粒子の表面と有機樹脂との親和性・密着性が不十分となり、本発明の光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の透過率が低下したり、有機溶剤を用いた現像工程後に該硬化物及び成形体の裾部にクラックが発生したりする虞がある。前記式(1)で表されるシランカップリング剤及び前記式(1)で表されないその他のシランカップリング剤の合計使用量が2ミリモルより多いと、該シランカップリング剤がシリカ粒子に対して過剰となり、該シリカ粒子の表面修飾に消費されない該シランカップリング剤が顕著に生じることで、前記硬化物及び成形体の保存安定性や機械特性が悪化する虞がある。
【0057】
本発明の光硬化性組成物の(c)成分のシリカ粒子は、一次粒子径が1nm乃至100nmである。ここで、一次粒子とは、粉体を構成する粒子であり、この一次粒子が凝集した粒子を二次粒子という。前記一次粒子径は、ガス吸着法(BET法)により測定される前記シリカ粒子の比表面積(単位質量あたりの表面積)S、該シリカ粒子の密度ρ、及び一次粒子径Dとの間に成り立つ関係式:D=6/(ρS)から算出することができる。前記関係式から算出される一次粒子径は、平均粒子径であり、一次粒子の直径である。一次粒子径が1nmより小さいと、シリカ粒子が凝集しやすくなり、保存安定性が悪化する虞がある。一次粒子径が100nmより大きいと、硬化物の及び成形体の透明性が損なわれる虞がある。
【0058】
前記(c)成分のシリカ粒子は、表面修飾されていないシリカ粒子と前記シランカップリング剤とを、各種公知の方法により反応させたものを用い得る。前記表面修飾されていないシリカ粒子としては、例えば、該シリカ粒子を有機溶媒に分散させたもの(オルガノシリカゾル)を用いることが好ましい。
【0059】
前記オルガノシリカゾルとして市販品を用いてもよく、例えば、CHO-ST-M、DMAC-ST、DMAC-ST-ZL、EAC-ST、EG-ST、EG-ST-ZL、EG-ST-XL30、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、IPA-ST-UP、メタノールシリカゾル、MA-ST-M、MA-ST-L、MA-ST-ZL、MA-ST-UP、MEK-ST、MEK-ST-40、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MEK-ST-UP、MIBK-ST、MIBK-ST-L、NMP-ST、NPC-ST-30、PMA-ST、PGM-ST、PGM-ST、PGM-ST-UP、及びTOL-ST(以上、日産化学(株)製)が挙げられる。
【0060】
前記オルガノシリカゾルとして、市販の水分散シリカゾルを減圧蒸留や限外濾過といった公知の方法で水を有機溶媒に置換したもの、市販の粉末状シリカ粒子を有機溶媒に分散させたものを用いてもよい。
【0061】
前記オルガノシリカゾル中のシリカ固形分濃度は特に限定されないが、一般に60質量%以下が好ましい。
【0062】
本発明の光硬化性組成物の(c)成分の含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、5質量部乃至60質量部、好ましくは8質量部乃至45質量部、より好ましくは10質量部乃至30質量部である。前記(c)成分の含有量が5質量部より少ないと、前記光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の耐熱性が悪化する虞がある。前記(c)成分の含有量が60質量部より多いと、前記硬化物及び成形体にヘイズが生じ、透過率が低下する虞がある。
【0063】
前記(c)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。例えば、一次粒子径の異なる複数のシリカ粒子を組み合わせてもよいし、表面修飾に用いたシランカップリング剤の種類や量が異なる複数のシリカ粒子を組み合わせてもよい。
【0064】
[(d)成分:前記式(2)で表される多官能チオール]
本発明の光硬化性組成物の(d)成分として使用可能な、前記式(2)で表される多官能チオールとしては、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、及びペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピル)エーテルが挙げられる。
【0065】
前記式(2)で表される多官能チオール化合物として市販品を用いてもよく、例えば、カレンズMT(登録商標)PE1、同NR1、同BD1、TPMB、TEMB(以上、昭和電工(株)製)、TMMP、TEMPIC、PEMP、EGMP-4、DPMP、TMMP II-20P、PEMP II-20P及びPEPT(以上、SC有機化学(株)製)が挙げられる。
【0066】
本発明の光硬化性組成物の(d)成分の含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し、1質量部乃至15質量部、好ましくは3質量部乃至10質量部である。前記(d)成分の含有量が1質量部より少ないと、前記光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体が形成された支持体の反り量が大きくなる虞がある。前記(d)成分の含有量が15質量部より多いと、前記硬化物及び成形体が高湿・高温環境下に晒された際にヘイズが生じる等、信頼性が悪化する虞がある。
【0067】
前記(d)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
[(e)成分:(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサン]
本発明の光硬化性組成物の(e)成分として使用可能な(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包接された擬ポリロタキサンの両端に前記環状分子が脱離しないように封鎖基を配置され、該環状分子が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。前記ポリロタキサンの構成要素である、環状分子、直鎖状分子及び封鎖基について、説明する。
【0069】
<e-1.環状分子>
前記ポリロタキサンの環状分子は、環状であり且つ開口部を有し、直鎖状分子によって串刺し状に包接されるものであれば、特に限定されない。前記(メタ)アクリロイルオキシ基は、前記環状分子に直接結合していても、スペーサーを介して結合していてもよい。前記スペーサーとしては、特に限定されないが、例えば、アルキレン基、(ポリ)アルキレングリコール基、ヒドロキシアルキレン基、ウレタン結合[-NH-C(=O)O-]、エステル結合[-C(=O)O-]及びカーボネート結合[-O-C(=O)O-]からなる群から選択される1つ又は2つ以上を組み合わせたものが挙げられる。前記環状分子として、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンからなる群から選択するのが好ましい。
【0070】
<e-2.直鎖状分子>
前記ポリロタキサンの直鎖状分子は、用いる環状分子の開口部に串刺し状に包接され得るものであれば、特に限定されない。前記直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選択されるポリマーが好ましく、特にポリエチレングリコールが好ましい。
【0071】
前記直鎖状分子は、その重量平均分子量が1,000以上、好ましくは3,000~100,000、より好ましくは6,000~50,000である。前記ポリロタキサンにおいて、(環状分子、直鎖状分子)の組合せが、(α-シクロデキストリン由来、ポリエチレングリコール由来)であるのが特に好ましい。
【0072】
<e-3.封鎖基>
前記ポリロタキサンの封鎖基は、擬ポリロタキサンの両端に配置され、用いる環状分子が脱離しないように作用する基であれば、特に限定されない。前記封鎖基として、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンチル基類、トリチル基類、フルオレセイン類、シルセスキオキサン類、及びピレン類からなる群から選ばれる封鎖基が好ましく、より好ましくはアダマンチル基類又はシクロデキストリン類である。前記封鎖基は、例えば[-NH-C(=O)-]を介して、前記直鎖状分子と結合している。
【0073】
前記ポリロタキサンとして市販品を用いてもよく、具体的には、セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P、同SA1305P、同SA1305P-10、同SA1305P-20、同SA2403P、同SA2405P-10、同SA2405P-20、同SA3403P、同SM1303P、同SM1305P-20、同SM2403P、同SM2405P-20及び同SM3403P[以上、(株)ASM(旧アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株))製]が挙げられる。
【0074】
本発明の光硬化性組成物が(e)成分を含む場合、該(e)成分の含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対して、1質量部乃至15質量部、好ましくは3質量部乃至10質量部である。前記(e)成分を配合することで、前記光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体に靭性を付与させ、機械特性や耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0075】
前記(e)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
[(f)成分:フェノール系酸化防止剤]
本発明の光硬化性組成物の(f)成分として使用可能なフェノール系酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)245、同1010、同1035、同1076、同1135(以上、BASFジャパン(株)製)、SUMILIZER(登録商標)GA-80、同GP、同MDP-S、同BBM-S、同WX-R(以上、住友化学(株)製)、アデカスタブ(登録商標)AO-20、同AO-30、同AO-40、同AO-50、同AO-60、同AO-80及び同AO-330(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0077】
本発明の光硬化性組成物が(f)成分を含有する場合、その含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し、0.05質量部乃至3質量部、好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。
【0078】
前記(f)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
[(g)成分:スルフィド系酸化防止剤]
本発明の光硬化性組成物の(g)成分として使用可能なスルフィド系酸化防止剤としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)AO-412S、同AO-503(以上、(株)ADEKA製)、IRGANOX(登録商標)PS802、同PS800(以上、BASFジャパン(株)製)、及びSUMILIZER(登録商標)TP-D(住友化学(株)製)が挙げられる。
【0080】
本発明の光硬化性組成物が(g)成分を含む場合、その含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し、0.05質量部乃至3質量部、好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。
【0081】
前記(g)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
[(h)成分:(メタ)アクリロイルオキシ基又はアリルオキシ基を1分子中に1つ有するモノマー]
本発明の光硬化性組成物の(h)成分として使用可能な、(メタ)アクリロイルオキシ基又はアリルオキシ基を1分子中に1つ有するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、及び8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジエトキシシランが挙げられる。
【0083】
前記モノマーとして市販品を用いてもよく、例えば、AIB、TBA、NOAA、IOAA、LA、STA、ISTA、IBXA、1-ADA、1-ADMA、ビスコート#150、ビスコート#155、ビスコート#160、ビスコート#190、ビスコート#192、ビスコート#MTG、ビスマー#MPE400A、ビスマー#MPE500A、HEA、4-HBA(以上、大阪有機化学工業(株)製)、FA-BZM、FA-BZA、FA-511AS、FA-512M、FA-512MT、FA-512AS、FA-513M、FA-513AS(以上、日立化成(株)製)、LMA、LA、S、A-S、S-1800M、S-1800A、IB、A-IB、PHE-1G、AMP-10G、PHE-2G、AMP-20GY、M-20G、M-30G、AM-30G、M-40G、M-90G、AM-90G、M-130G、AM-130G、M-230G、AM-230G、M-30PG、AM-30PG、702A(以上、新中村化学工業(株)製)、ライトエステルM、ライトエステルE、ライトエステルNB、ライトエステルIB、ライトエステルTB、ライトエステルEH、ライトエステルL、ライトエステルS、ライトエステルCH、ライトエステルIB-X、ライトエステルBZ、ライトエステルPО、ライトエステルTHF(1000)、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルDM、ライトエステルDE、ライトアクリレートL-A、ライトアクリレートS-A、ライトアクリレートIB-XA、ライトアクリレートPO-A、ライトアクリレートTHF-A、ライトアクリレートMTG-A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM-A、ライトアクリレートEC-A、エポキシエステルM-600A、(以上、共栄社化学(株)製)、FX-AO-MA、VEEM、VEEA((株)日本触媒)、KBM-5103、KBM-503、KBM-502、KBE-503、KBE-502及びKBM-5803(以上、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0084】
本発明の光硬化性組成物が(h)成分を含有する場合、該(h)成分の含有量は、該光硬化性組成物に含まれる(a)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分及び(h)成分の和100質量部に対し0.5質量部乃至40質量部、好ましくは1質量部乃至30質量部、さらに好ましくは5質量部乃至15質量部である。本発明の光硬化性組成物が(h)成分を上記含有量で含有することにより、(h)成分の種類に応じて、該光硬化性組成物の低粘度化、該光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体のガラス転移温度の上昇、該硬化物及び成形体の耐熱性の向上、該硬化物及び成形体の柔軟性の向上、該硬化物及び成形体の支持基板との密着性の向上等の効果を付与することができる。
【0085】
前記(h)成分は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
<その他添加剤>
さらに本発明の光硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、単官能アクリレート、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、消泡剤などの添加剤を含有することができる。
【0087】
<光硬化性組成物の調製方法>
本発明の光硬化性組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分、並びに必要により(e)成分、(f)成分及び/又は(g)成分、及び(h)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法が挙げられる。
【0088】
また、溶液に調製した本発明の光硬化性組成物は、孔径が0.1μm乃至10μmのフィルターなどを用いてろ過した後、使用することが好ましい。
【0089】
<硬化物>
本発明の光硬化性組成物を、露光(光硬化)して、硬化物を得ることができ、本発明は該硬化物も対象とする。露光する光線としては、前記硬化物を得ることができる限り特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線及びX線が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及びUV-LEDが使用できる。また、露光後、前記硬化物の物性を安定化させるためにポストベークを施してもよい。前記ポストベークの方法としては、特に限定されないが、通常、ホットプレート、オーブン等を使用して、50℃乃至260℃、1分間乃至24時間の範囲で行われる。
【0090】
本発明の光硬化性組成物を光硬化することにより得られる硬化物は、波長410nmにおいて透過率が90%以上と高いものである。そのため、本発明の光硬化性組成物は、樹脂レンズ形成用として好適に使用することができる。
【0091】
<成形体>
本発明の光硬化性組成物は、例えばインプリント成形法を使用することによって、硬化物の形成と並行して各種成形体を容易に製造することができる。以下、成形体の製造に関して詳細なプロセスを記載する。
【0092】
<塗布工程>
本発明の成形体の製造方法は、支持体上に本発明の光硬化性組成物を塗布する工程を有する。前記支持体は、開口部を有するパターンを有していてもよく、該パターンは、ネガ型感光性樹脂組成物又はポジ型感光性樹脂組成物をパターニングして形成され、その形状は例えば格子状である。前記支持体は、例えば、酸化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む)、ITO膜が形成されたガラス基板が挙げられる。その上に、ディスペンサー、スピナー等の適当な塗布方法により、前記光硬化性組成物を塗布する。
【0093】
<インプリント工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記光硬化性組成物と、目的のレンズ形状の反転パターン及び遮光膜を有するモールドとを接触させるインプリント工程を有する。ここで、前記目的のレンズ形状が凹レンズである場合、前記反転パターンは凸レンズパターンである。前記モールドの材料は、後述する光硬化工程で使用する紫外線等の光を透過する材料である限り限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、石英、硼珪酸ガラス及びフッ化カルシウムが挙げられる。前記モールドの材料が樹脂である場合、非感光性樹脂、感光性樹脂いずれであってもよい。前記感光性樹脂として、例えば、国際公開第2019/031359号に開示されているインプリント用レプリカモールド材料が挙げられる。また、前記遮光膜の材料は、後述する光硬化工程で使用する紫外線等の光を透過しない材料である限り限定されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、タンタル、タングステン及びモリブデンが挙げられる。前記モールドは、後述する離型工程のために、離型剤を塗布し乾燥することで離型処理した後に使用することが望ましい。前記離型剤は、市販品として入手が可能であり、例えば、Novec(登録商標)1700、同1710、同1720(以上、スリーエムジャパン(株)製)、フロロサーフ(登録商標)FG-5084、同FG-5093(以上、(株)フロロテクノロジー製)、デュラサーフ(登録商標)DP-500、同DP-200、同DS-5400、同DH-100、同DH-405TH、同DH-610、同DS-5800、同DS-5935(以上、(株)ハーベス製)、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7105GN、同PTFE TC-7109BK、同PTFE TC-7113LB、同PTFE TC-7400CR、同PTFE TC-7405GN、同PTFE TC-7408GY、同PTFE TC-7409BK、同PTFE TC-7609M1、同PTFE TC-7808GY、同PTFE TC-7809BK、同PTFE TD-7139BD、オプツール(登録商標)DAC-HP、同DSX-E、オプトエース(登録商標)WP-140、ダイフリー(登録商標)GW-4000、同GW-4010、同GW-4500、同GW-4510、同GW-8000、同GW-8500、同MS-175、同GF-700、同GF-750、同MS-600、同GA-3000、同GA-9700、同GA-9750(以上、ダイキン工業(株)製)、メガファック(登録商標)F-553、同F-555、同F-558、同F-561(以上、DIC(株)製)、SFE-DP02H、SNF-DP20H、SFE-B002H、SNF-B200A、SCV-X008、SFEX008、SNF-X800、SR-4000A、S-680、S-685、MR F-6441-AL、MR F-6711-AL、MR F-6758-AL、MR F-6811-AL、及びMR EF-6521-AL(以上、AGCセイミケミカル(株)製)が挙げられる。前記離型剤として、上記市販品以外に、例えば国際公開第2019/031312号に開示されているモールド用離型剤が挙げられる。
【0094】
<光硬化工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記インプリント工程の後、前記モールドを介して前記光硬化性組成物を露光して光硬化部を形成する光硬化工程を有する。露光する光線としては、前記光硬化部を形成することができる限り特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線及びX線が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及びUV-LEDが使用できる。前記光硬化部の膜厚は、好ましくは100μm乃至1000μmであり、より好ましくは300μm乃至700μmである。前記モールドは、紫外線等の光を透過する材料から作製され、且つ該紫外線等の光を透過しない遮光膜を有するため、本工程ではマスクとして使用される。
【0095】
<離型工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記光硬化部と前記モールドとを分離する離型工程を有する。離型方法は、前記光硬化部が損傷及び変形することなく、前記モールドから完全に分離することができる限り、特に限定されない。前記モールドは、前記離型剤を塗布し乾燥する離型処理によって、前記光硬化部と該モールドとの分離が容易となる。前記光硬化工程の後、本離型工程の前、中途又は後に、前記光硬化部を加熱する工程をさらに有してもよく、その場合、該光硬化部の加熱条件は、例えば、50℃乃至260℃、1分乃至24時間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、ホットプレート及びオーブンが挙げられる。
【0096】
<現像工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記離型工程の後、前記光硬化性組成物の未硬化部を現像液により除去して前記光硬化部を露出させる現像工程を有する。現像方法は特に限定されないが、例えば、ディップ法、パドル法、スプレー法、ダイナミックディスペンス法及びスタティックディスペンス法が挙げられる。現像の条件は、例えば、現像温度5℃乃至50℃、現像時間10秒乃至300秒の範囲から適宜選択される。
【0097】
前記現像液としては、前記光硬化性組成物の未硬化部を除去することができる限り特に限定されないが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコール、γ-ブチロラクトン等の有機溶剤が好ましい。前記現像液は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
<リンス工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記現像工程の後、後述する乾燥工程の前に、前記光硬化部に対してリンス液を用いてリンス処理するリンス工程を有してもよい。リンス処理方法は特に限定されないが、例えば、ディップ法、パドル法、スプレー法、ダイナミックディスペンス法及びスタティックディスペンス法が挙げられる。リンス処理の条件は、リンス温度5℃乃至50℃、リンス時間10秒乃至300秒の範囲から適宜選択される。
【0099】
前記リンス液としては、前記光硬化部にダメージを与えることなく、前記現像液を洗い流すことができる限り特に限定されない。前記リンス液としては、例えば、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、乳酸エチル、シクロヘキサノール及びメチルシクロヘキサンが挙げられる。前記リンス液は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
本発明の成形体の製造方法において使用する現像液及びリンス液は、前記光硬化部に対する濡れ性を向上させて現像及びリンスを効率的に進行させる目的で、添加剤として界面活性剤をさらに含有することもできる。前記界面活性剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記界面活性剤が使用される場合、前記現像液又はリンス液におけるその含有量は、該現像液又リンス液100質量部に対して、0.001質量部乃至5質量部であり、好ましくは0.01質量部乃至3質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部乃至1質量部である。本発明の成形体の製造方法において使用する現像液及びリンス液は、必要に応じて、酸化防止剤をその他添加剤として含むことができる。前記酸化防止剤としては、例えば、前記(f)成分のフェノール系酸化防止剤、前記(g)成分のスルフィド系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤が挙げられる。
【0101】
<乾燥工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記現像工程の後、前記光硬化部が形成された支持体をスピン乾燥させる乾燥工程を有する。前記支持体をスピナー、コーター等のスピン乾燥可能な装置により回転させることにより、本工程を実施することができる。乾燥条件は特に限定されないが、例えば、回転数200rpm乃至3000rpm、10秒乃至10分の範囲から適宜選択される。
【0102】
<ポスト露光工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記乾燥工程の後、前記光硬化部の全面を露光するポスト露光工程を有してもよい。本工程において露光する光線は、前記光硬化工程で使用可能な光線を使用することができる。
【0103】
<ポストベーク工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記ポスト露光工程の後、前記光硬化部を加熱するポストベーク工程を有してもよい。ポストベークの条件は、例えば、50℃乃至260℃、1分乃至24時間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、ホットプレート及びオーブンが挙げられる。
【0104】
<反射防止膜形成工程>
本発明の成形体の製造方法は、前記ポスト露光工程の後、又は前記ポストベーク工程を行う場合は該ポストベーク工程の後、前記光硬化部の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに有してもよい。前記反射防止膜は、前記光硬化物に入射する光の反射を抑制し、透過率を向上させるために、該光硬化物の表面に形成される。前記反射防止膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、ミスト法、スピンコート法、ディップコート法及びスプレーコート法が挙げられる。また、前記反射防止膜として、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素等の無機膜、及びオルガノポリシロキサン等の有機膜が挙げられる。
【0105】
このような方法によって製造された成形体は、カメラモジュール用レンズとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0107】
(1)撹拌脱泡
装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサーあわとり練太郎(登録商標)ARE-310
(2)UV露光
装置1:シーシーエス(株)製 バッチ式UV-LED照射装置(波長365nm)
装置2:岩崎電気(株)製 UV-LED照射装置LHPUV365/2501
(3)現像
装置:アクテス京三(株)製 小型現像装置ADE-3000S
(4)裾部クラック観察
装置:オリンパス(株)製 光学顕微鏡MX61A
条件:明視野、対物10倍
(5)透過率測定
装置:日本分光(株)製 紫外可視近赤外分光光度計V-670
リファレンス:空気
(6)基板反り量測定
装置:三鷹光器(株)製 非接触表面性状測定装置PF-60
【0108】
各製造例、実施例及び比較例において使用した化合物の供給元は以下の通りである。
A-DOG:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル A-DOG
APG-100:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル APG-100
APG-400:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル APG-400
A-TMPT:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル A-TMPT
UA-4200:新中村化学工業(株)製 商品名:NKオリゴ UA-4200
V#195:大阪有機化学工業(株)製 商品名:ビスコート#195
V#260:大阪有機化学工業(株)製 商品名:ビスコート#260
I184:IGM Resins社製 商品名:OMNIRAD(登録商標)184
OTES:東京化成工業(株)製 商品名:n-オクチルトリエトキシシラン
MOTMS:信越化学工業(株)製 商品名:KBM-5803
MPTMS:信越化学工業(株)製 商品名:KBM-503
シリカゾルi:日産化学(株)製 商品名:MA-ST-M
シリカゾルii:日産化学(株)製 商品名:メタノールシリカゾル
NR1:昭和電工(株)製 商品名:カレンズMT(登録商標)NR1
PEPT:SC有機化学(株)製 商品名:PEPT
SA1303P:(株)ASM(旧アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株))製 商品名:セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P
I245:BASFジャパン(株)製 商品名:IRGANOX(登録商標)245
AO503:(株)ADEKA製 商品名:アデカスタブ(登録商標)AO-503
IBXA:大阪有機化学工業(株)製 商品名:IBXA
AOMA:(株)日本触媒製 商品名:FX-AO-MA
【0109】
A-DOG、APG-100、APG-400、A-TMPT、UA-4200、V#195及びV#260は、前記(a)成分として使用可能な、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートである。これらの内、A-DOG、APG-100、APG-400、UA-4200、V#195及びV#260は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に2つ有する二官能(メタ)アクリレートであり、さらにこれらの内、UA-4200は前記(a1)成分の二官能ウレタン(メタ)アクリレートであり、V#195及びV#260は前記(a2)成分の前記式(3)で表される二官能(メタ)アクリレートである。
【0110】
I184は、前記(b)成分として使用可能な、光ラジカル開始剤である。
【0111】
OTES及びMOTMSは、前記(c)成分のシリカ粒子の表面を修飾する、前記式(1)で表されるシランカップリング剤であり、前記MPTMSは、前記式(1)で表されないその他のシランカップリング剤である。
【0112】
シリカゾルi(メタノール分散シリカゾル、一次粒子径20nm乃至25nm、シリカ粒子の濃度40質量%)及び前記シリカゾルii(メタノール分散シリカゾル、一次粒子径10nm乃至15nm、シリカ粒子の濃度30質量%)は、前記(c)成分のシリカ粒子の原料である、一次粒子径が1nm乃至100nmの表面修飾されていないシリカ粒子を含むオルガノシリカゾルである。
【0113】
NR1及びPEPTは、前記(d)成分として使用可能な、前記式(2)で表される多官能チオールである。
【0114】
SA1303P(環状分子がシクロデキストリン、直鎖状分子がポリエチレングリコール鎖、封鎖基がアダマンチル基からなり、該環状分子の側鎖にスペーサーを介してアクリルロイルオキシ基を有するポリロタキサンのメチルエチルケトン分散液、固形分濃度50質量%)は、前記(e)成分として使用可能な、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリロタキサンである。
【0115】
I245は、前記(f)成分として使用可能な、フェノール系酸化防止剤である。前記AO503は、前記(g)成分として使用可能な、スルフィド系酸化防止剤である。
【0116】
IBXA及びAOMAは、前記(h)成分として使用可能な、(メタ)アクリロイルオキシ基又はアリルオキシ基を1分子中に1つ有するモノマーである。
【0117】
[製造例1]
100mLナスフラスコに、シリカゾルiを50g、MOTMSを5g(シリカ粒子1g当たり0.8ミリモル)秤量し、65℃のオイルバスにて計6時間、加水分解縮合反応を行った。続いて、200mLナスフラスコに、得られたMOTMS修飾シリカ粒子のメタノール分散液(固形分濃度45質量%)を40g、UA-4200を15g秤量し、撹拌して均一化した後、エバポレーターを用いて、60℃、減圧度133.3Pa以下の条件でメタノールを留去し、MOTMS修飾シリカ粒子のUA-4200分散液(該MOTMS修飾シリカ粒子の濃度55質量%)を得た。
【0118】
[製造例2]
UA-4200の代わりにAPG-100を使用する以外は製造例1と同様の手順にて、MOTMS修飾シリカ粒子のAPG-100分散液(該MOTMS修飾シリカ粒子の濃度55質量%)を得た。
【0119】
[製造例3]
MOTMSの使用量が3.5g(シリカ粒子1g当たり0.5ミリモル)である以外は製造例1と同様の手順にて、MOTMS修飾シリカ粒子のUA-4200分散液(該MOTMS修飾シリカ粒子の濃度55質量%)を得た。
【0120】
[製造例4]
100mLナスフラスコに、シリカゾルiを50g、MOTMSを2.5g(シリカ粒子1g当たり0.4ミリモル)、MPTMSを2g(シリカ粒子1g当たり0.4ミリモル)秤量し、65℃のオイルバスにて計6時間加水分解縮合反応を行った。続いて、200mLナスフラスコに、得られたMOTMS及びMPTMS修飾シリカ粒子のメタノール分散液(固形分濃度45質量%)を40g、UA-4200を15g秤量し、撹拌して均一化した後、エバポレーターを用いて、60℃、減圧度133.3Pa以下の条件でメタノールを留去し、MOTMS及びMPTMS修飾シリカ粒子のUA-4200分散液(該MOTMS及びMPTMS修飾シリカ粒子の濃度55質量%)を得た。
【0121】
[製造例5]
MPTMSの代わりにOTESを2.2g(シリカ粒子1g当たり0.4ミリモル)使用する以外は製造例4と同様の手順にて、MOTMS及びOTES修飾シリカ粒子のUA-4200分散液(該MOTMS及びOTES修飾シリカ粒子の濃度55質量%)を得た。
【0122】
[製造例6]
100mLナスフラスコに、シリカゾルiiを50g、MOTMSを4g(シリカ粒子1g当たり0.8ミリモル)秤量し、65℃のオイルバスにて計6時間加水分解縮合反応を行った。続いて、200mLナスフラスコに、得られたMOTMS修飾シリカ粒子のメタノール分散液(固形分濃度36質量%)を34g、UA-4200を15g秤量し、撹拌して均一化した後、エバポレーターを用いて、60℃、減圧度133.3Pa以下の条件でメタノールを留去し、MOTMS修飾シリカ粒子のUA-4200分散液(該MOTMS修飾シリカ粒子の濃度45質量%)を得た。
【0123】
[製造例7]
MOTMSを5g使用する代わりに、MPTMSを4g(シリカ粒子1g当たり0.8ミリモル)使用する以外は製造例1と同様の手順にて、MPTMS修飾シリカ粒子のUA-4200分散液(該MPTMS修飾シリカ粒子の濃度55質量%)を得た。
【0124】
前記製造例1乃至製造例7で得られた表面修飾シリカ粒子について、シリカ粒子の種類、シランカップリング剤の種類及び使用量を、下記表1に示す。
【表1】
【0125】
[製造例8]
100mLナスフラスコに、V#260を20g、SA1303Pを40g秤量し、撹拌して均一化した後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でメチルエチルケトンを留去し、前記ポリロタキサンのV#260分散液(該ポリロタキサンの濃度50質量%)を得た。
【0126】
後述する実施例及び比較例の光硬化性組成物の調製において、前記(c)成分の表面修飾されたシリカ粒子を配合する際は、前記製造例1乃至製造例7で得られたUA-4200分散液又はAPG-100分散液として配合し、前記(e)成分のポリロタキサンを配合する際は、前記製造例8で得られたV#260分散液として配合した。
【0127】
[実施例1]
前記(a)成分としてUA-4200を1.0g及びV#260を4.3g、前記(b)成分としてI184を0.1g、前記(c)成分として製造例1で得たUA-4200分散液を4.2g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)、前記(f)成分としてI245を0.07g、それぞれ配合し、50℃で15時間振とうさせ混合した後、前記(d)成分としてPEPTを0.5g添加し、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、光硬化性組成物1を調製した。
【0128】
[実施例2]
前記(a)成分としてUA-4200を2.0g及びV#195を3.3g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物2を調製した。
【0129】
[実施例3]
前記(a)成分としてUA-4200を2.0g及びA-DOGを3.3g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物3を調製した。
【0130】
[実施例4]
前記(a)成分としてUA-4200を2.6g及びA-TMPTを2.7g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物4を調製した。
【0131】
[実施例5]
前記(a)成分としてAPG-400を4.2g及びAPG-100を1.1g使用し、前記(c)成分として製造例2で得たAPG-100分散液を4.2g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)使用し、前記(d)成分としてNR1を0.5g使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物5を調製した。
【0132】
[実施例6]
前記(c)成分として製造例3で得たUA-4200分散液を4.2g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物6を調製した。
【0133】
[実施例7]
前記(c)成分として製造例4で得たUA-4200分散液を4.2g(MOTMS及びMPTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物7を調製した。
【0134】
[実施例8]
前記(c)成分として製造例5で得たUA-4200分散液を4.2g(MOTMS及びOTES修飾シリカ粒子換算で2.3g)使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物8を調製した。
【0135】
[実施例9]
前記(a)成分としてUA-4200を1.7g及びV#260を5.1g使用し、前記(c)成分として製造例6で得たUA-4200分散液を2.7g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で1.2g)使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物9を調製した。
【0136】
[実施例10]
前記(a)成分としてUA-4200を1.2g及びV#260を5.0g、前記(b)成分としてI184を0.1g、前記(c)成分として製造例1で得たUA-4200分散液を3.3g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で1.8g)、前記(f)成分としてI245を0.07g、前記(g)成分としてAO-503を0.05g、それぞれ配合し、50℃で15時間振とうさせ混合した後、前記(d)成分としてPEPTを0.5g添加し、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、光硬化性組成物10を調製した。
【0137】
[実施例11]
前記(d)成分としてNR1を使用する以外は実施例1と同様の手順にて、光硬化性組成物11を調製した。
【0138】
[実施例12]
前記(a)成分としてUA-4200を0.8g及びV#260を4.3g、前記(b)成分としてI184を0.1g、前記(c)成分として製造例1で得たUA-4200分散液を4.2g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)、前記(e)成分として製造例8で得た分散液を0.2g(ポリロタキサン換算で0.1g)、前記(f)成分としてI245を0.07g、それぞれ配合し、50℃で15時間振とうさせ混合した後、前記(d)成分としてPEPTを0.5g添加し、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、光硬化性組成物12を調製した。
【0139】
[実施例13]
前記(a)成分としてUA-4200を0.5g及びV#260を4.0g使用し、前記(e)成分として製造例8で得た分散液を0.8g(ポリロタキサン換算で0.4g)使用する以外は実施例12と同様の手順にて、光硬化性組成物13を調製した。
【0140】
[実施例14]
前記(a)成分としてUA-4200を0.3g及びV#260を3.6g使用し、前記(e)成分として製造例8で得た分散液を1.4g(ポリロタキサン換算で0.7g)使用する以外は実施例12と同様の手順にて、光硬化性組成物14を調製した。
【0141】
[実施例15]
前記(a)成分としてUA-4200を0.2g及びV#260を3.3g使用し、前記(e)成分として製造例8で得たV#260分散液を1.8g(ポリロタキサン換算で0.9g)使用する以外は実施例12と同様の手順にて、光硬化性組成物15を調製した。
【0142】
[実施例16]
前記(a)成分としてV#260を4.7g、前記(b)成分としてI184を0.1g、前記(c)成分として製造例1で得たUA-4200分散液を3.3g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で1.8g)、前記(f)成分としてI245を0.07g、前記(h)成分としてIBXAを1.5g、それぞれ配合し、50℃で15時間振とうさせ混合した後、前記(d)成分としてPEPTを0.5g添加し、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、光硬化性組成物16を調製した。
【0143】
[実施例17]
前記(a)成分としてUA-4200を1.7g及びV#260を5.1g使用し、前記(c)成分として製造例1で得たUA-4200分散液を2.2g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で1.2g)使用し、前記(h)成分としてAOMAを0.5g使用する以外は実施例16と同様の手順にて、光硬化性組成物17を調製した。
【0144】
[比較例1]
前記(a)成分としてUA-4200を0.2g及びV#260を3.3g使用し、前記(c)成分の代わりに製造例7で得たUA-4200分散液を4.2g(MPTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)を使用し、前記(e)成分として製造例8で得たV#260分散液を1.8g(ポリロタキサン換算で0.9g)使用する以外は実施例12と同様の手順にて、光硬化性組成物18を調製した。
【0145】
[比較例2]
前記(a)成分としてUA-4200を1.2g及びV#260を4.6g、前記(b)成分としてI184を0.1g、前記(c)成分として製造例1で得たUA-4200分散液を4.2g(MOTMS修飾シリカ粒子換算で2.3g)、前記(f)成分としてI245を0.07g、それぞれ配合し、50℃で15時間振とうさせ混合した後、前記撹拌脱泡機を用いて10分間撹拌脱泡することで、光硬化性組成物19を調製した。
【0146】
[比較例3]
前記(a)成分としてUA-4200を2.2g及びV#195を3.6g使用する以外は比較例2と同様の手順にて、光硬化性組成物20を調製した。
【0147】
前記実施例1乃至実施例17及び比較例1乃至比較例3で調製した光硬化性組成物1乃至光硬化性組成物20の成分を、下記表2に示す。なお、下記表2中、「部」は「質量部」を表す。また、下記表2中、(c)成分の質量部は、前記製造例1乃至製造例7で得られたUA-4200分散液又はAPG-100分散液中の表面修飾されたシリカ粒子成分のみを表し、(e)成分の質量部は、前記製造例8で得られたV#260分散液中のポリロタキサン成分のみを表す。
【0148】
【0149】
[透過率測定]
実施例1乃至実施例17及び比較例1乃至比較例3で調製した各光硬化性組成物を、Novec(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したガラス基板2枚で、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して挟み込んだ。その後、前記離型処理したガラス基板2枚に挟まれた光硬化性組成物を、前記UV-LED照射装置を用いて30mW/cm2で200秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、直径3cm、500μm厚の硬化物を作製した。前記硬化物の波長410nmにおける透過率を、前記分光光度計を用いて測定した。その結果を下記表4に示す。
【0150】
[基板反り量測定]
Novec(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したガラス基板上に、実施例1乃至実施例17及び比較例1乃至比較例3で調製した光硬化性組成物を0.01g滴下した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、無アルカリガラス基板(1cm角、700μm厚)で挟み込んだ。前記無アルカリガラス基板は、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-503)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで5質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで、密着処理したものである。続いて、前記光硬化性組成物を、UV-LED照射装置を用いて30mW/cm2で200秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、前記密着処理した無アルカリガラス基板上に、直径0.5cm、500μm厚の硬化物を作製した。さらに、175℃のホットプレートで2分30秒間加熱した。
【0151】
前記硬化物が作製された無アルカリガラス基板を、前記非接触表面性状測定装置のステージ上に、該無アルカリガラス基板が上面になるよう配置した。前記無アルカリガラス基板の中心を測定開始点とし、該無アルカリガラス基板の4つの頂点に向け、前記ステージに対して垂直方向(Z軸)の変位を測定した。測定データから、前記無アルカリガラス基板の中心と該無アルカリガラス基板の各頂点との間の垂直方向(Z軸)の変位量を算出し、それらの平均値を反り量と定義した。
図1にガラス基板の反り量の評価方法を模式図で示す。得られた結果を下記表4に示す。
【0152】
[裾部クラック評価]
Novec(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したフォトマスク基板(開口部1cm角)上に、実施例1乃至実施例17及び比較例1で調製した各光硬化性組成物を適量滴下した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、無アルカリガラス基板(10cm角、700μm厚)で挟み込んだ。前記無アルカリガラス基板は、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-5803)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで10質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで、密着処理したものである。続いて、前記光硬化性組成物を、前記岩崎電気(株)製UV-LED照射装置を用いて、前記離型処理したフォトマスク基板を介して50mW/cm2で9秒間UV露光し、光硬化部を形成した。前記光硬化部が密着した無アルカリガラス基板を、前記離型処理したフォトマスク基板から剥離した後、前記現像装置を用いて、現像のみを、又は現像及びリンスを行った。用いた現像液及び現像時間、並びにリンス液及びリンス時間は、下記表3に記載の現像・リンス条件の条件A乃至条件Eのいずれかである。現像時の前記無アルカリガラス基板の回転数は300rpm、リンス時の前記無アルカリガラス基板の回転数は200rpm、現像液及びリンス液の吐出流量は200mL/分である。前記現像後、又はリンスを行ったものについてはリンス後、前記現像装置を用いて3000rpmで前記無アルカリガラス基板を30秒間回転し、乾燥を行った。次いで、23℃の温度条件下にて2時間静置した後、前記シーシーエス(株)製UV-LED装置を用いて50mW/cm2で111秒間UV露光し、さらに100℃のホットプレートで10分間加熱することで、前記密着処理した無アルカリガラス基板上に、1cm角、500μm厚の硬化物を作製した。作製した1cm角、500μm厚の硬化物の天面は、平面形状である。
【0153】
さらに、実施例1で調製した光硬化性組成物1を用いて、以下の手順にてレンズ形状を有する硬化物も作製した。すなわち、前記離型処理したフォトマスク基板を、離型処理した遮光膜付き樹脂製モールド(約100μm厚の反転レンズ形状)に変更し、前記500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを600μm厚のシリコーンゴム製スペーサーに変更した以外は、前記1cm角、500μm厚の硬化物の作製方法と同様の方法で、レンズ形状を有する硬化物を作製した。作製したレンズ形状を有する硬化物の天面は、曲面形状である。前記遮光膜付き樹脂製モールドの離型処理方法は、前記フォトマスク基板の離型処理方法と同様である。
【0154】
【表3】
上記表3において、PGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、PGMEはプロピレングリコールモノメチルエーテルを、GBLはγ-ブチロラクトンを、ELは乳酸エチルを、THFAはテトラヒドロフルフリルアルコールを、CHAはシクロヘキサノールを、MCHはメチルシクロヘキサンを表す。条件Cの現像液、並びに条件Eの現像液及びリンス液は混合溶剤であり、その成分及び混合比率を表3に質量比で表す。
【0155】
前記天面が平面形状の硬化物及び前記天面が曲面形状の硬化物の裾部について、それぞれ前記光学顕微鏡を用いて観察した。これらの硬化物の裾部にクラックが確認される場合を“×”と判定し、該硬化物の裾部にクラックが確認されない場合を“○”と判定した。その結果を下記表4に示す。
【表4】
【0156】
実施例1乃至実施例17で調製した光硬化性組成物から作製された硬化物においては、高い透過率(90%以上)及び低い基板反り量(3.0μm未満)を示し、さらに条件A乃至条件Eいずれの現像・リンス条件、あるいは平面、曲面いずれの天面形状であっても裾部にクラックが観察されなかった。
図2は、実施例15で調製した光硬化性組成物15から作製された硬化物を、条件Dの現像・リンス条件にて処理した際の裾部を示す。
【0157】
一方、前記(c)成分の代わりに、前記式(1)で表されないその他のシランカップリング剤(MPTMS)で表面修飾されたシリカ粒子を使用した比較例1で調製した光硬化性組成物から作製された硬化物においては、透過率が90%を下回り、さらに裾部にクラックが観察された。
図3は、比較例1で調製した光硬化性組成物18から作製された硬化物を、条件Dの現像・リンス条件にて処理した際の裾部を示す。
図3中の複数の矢印は、クラック発生箇所を示す。また、前記(d)成分を使用しなかった比較例2及び比較例3で調製した光硬化性組成物から作製された硬化物においては、基板反り量が3.0μm以上となった。
【0158】
以上より、本発明の前記(a)成分乃至前記(d)成分を含む光硬化性組成物から得られる硬化物(成形体)は、高い透過率を示し、支持体上に該硬化物(成形体)を形成した際の該支持体の反り量が小さく、さらには、有機溶剤を用いた現像工程を経ても該硬化物(成形体)の裾部にクラックが発生しない、高解像度カメラモジュール用のレンズとして望ましい特性を有することが示された。