(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】加圧装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240410BHJP
G01N 15/1429 20240101ALI20240410BHJP
G01N 15/1409 20240101ALI20240410BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240410BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N15/1429 200
G01N15/1409 100
G01N37/00 101
B81B1/00
(21)【出願番号】P 2020006236
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 耕児
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 真義
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/172428(WO,A1)
【文献】特開2018-141689(JP,A)
【文献】米国特許第07735652(US,B1)
【文献】富山県産業技術研究開発センター研究報,2018年07月30日,no. 32,p. 99
【文献】Lab Chip,2013年07月21日,vol. 13,pp. 2764-2772
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的粒子を含むサンプル液から前記標的粒子を分離するためのDLDマイクロ流路チップを備えた粒子分離装置に適用される加圧装置であって、
圧縮空気を生成して圧縮空気排出口から圧縮空気を排出する空気圧縮部と、
上流側接続口および下流側接続口を有し、前記上流側接続口が前記圧縮空気排出口に連通するように取り付けられたチューブと、
前記空気圧縮部から排出される前記圧縮空気の空気圧を計測する圧力計測部、および前記空気圧が所定の圧力範囲となるよう前記空気圧縮部の動作を制御する圧縮動作制御部を有する圧力スイッチと、
前記下流側接続口に連通するように取り付けられた第1管路、前記第1管路から二股に分岐した一方であって前記DLDマイクロ流路チップに導入される前記サンプル液を収容するサンプル液収容部に気密に連通される第2管路、および前記第1管路から二股に分岐した他方であって前記DLDマイクロ流路チップに導入されるバッファ液を収容するバッファ液収容部に気密に連通される第3管路を備える分岐管と、を有することを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
前記所定の圧力範囲を規定する上限圧力値および下限圧力値を記憶する圧力設定値記憶部を更に有し、
前記圧縮動作制御部は、前記圧力計測部で計測された前記空気圧の圧力値が前記下限圧力値を下回ったときに前記空気圧縮部から前記圧縮空気を排出させ、前記圧力計測部で計測された前記空気圧の圧力値が前記上限圧力値を上回ったときに前記空気圧縮部による前記圧縮空気の排出を停止させることを特徴とする請求項1に記載の加圧装置。
【請求項3】
外部通信機器と無線通信を行う無線通信部と、
当該加圧装置の動作条件を前記無線通信を介して前記外部通信機器から取得する条件取得部と、
前記条件取得部で取得した当該加圧装置の動作条件を記憶する条件記憶部と、を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の加圧装置。
【請求項4】
当該加圧装置の動作時間を計測するタイマと、
当該加圧装置の動作時間が前記条件記憶部に前記動作条件として記憶されている当該加圧装置の稼働停止時間を超えた場合、当該加圧装置の動作を停止させる動作制御部と、を更に有することを特徴とする請求項3に記載の加圧装置。
【請求項5】
前記空気圧縮部および前記圧力スイッチが筺体内に収容されており、前記チューブが前記筺体に設けられた貫通孔に内挿されて前記筺体の外部へ延出していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の加圧装置。
【請求項6】
当該加圧装置の動作開始を指示するスイッチボタンが前記筐体の外表面に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の加圧装置。
【請求項7】
前記筺体が略直方体形状であり、制振部材が前記筺体の外底面に設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の加圧装置。
【請求項8】
前記DLDマイクロ流路チップが、前記サンプル液収容部に収容された前記サンプル液が導入されるように前記サンプル液収容部の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部に収容された前記バッファ液が導入されるように前記バッファ液収容部の排出口に接続されるバッファ液導入口、前記圧縮空気が前記サンプル液収容部の内部および前記バッファ液収容部の内部を昇圧することにより、前記サンプル液導入口を介して導入された前記サンプル液と前記バッファ液導入口を介して導入された前記バッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、前記DLD流路部で前記サンプル液から前記バッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および前記DLD流路部で標的粒子が前記バッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口、を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の加圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的粒子を含む液体中から該標的粒子を分離する粒子分離装置に適用される加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から、腫瘍細胞が血中へ遊離して、血液と共に体内を循環することが知られている。このような腫瘍細胞は、血中循環腫瘍細胞(CTC:Circulating Tumor Cells)と呼ばれ、末梢血中の血中循環腫瘍細胞の数を測定することにより、がんの進行状態や治療効果の把握、あるいは再発・転移の早期発見等のための情報が得られるものと期待されている。
【0003】
末梢血中の血中循環腫瘍細胞の数を測定する方法としては、例えば下記の特許文献1に記載されるような、細胞試料液中の細胞を蛍光標識抗体で染色したうえで、細胞試料液をセルソーターチップの流路に流し、画像処理型セルソーターを用いて回収すべき血中循環腫瘍細胞とそれ以外の細胞とを分離して、その分離された血中循環腫瘍細胞をカウントする手法が知られている。しかしながら、画像処理型セルソーターは、セルソーターチップ内の流れを観察するためのカメラ、カメラで撮影された画像中の細胞の種類を区別して認識するための画像認識システム、および区別された細胞を分別して異なる流路に移すために細胞に電圧等による外力を与える装置等を必須の構成要素とするものであるため、高価で大型な装置であり、簡便に使用できるものではないという問題があった。
【0004】
血中循環腫瘍細胞の数を測定するためにより簡便に使用できる方法としては、血中循環腫瘍細胞が血球細胞よりもサイズが大きい傾向があることを利用した、水力学的層流分離の一つである決定論的横置換(DLD:Deterministic Lateral Displacement)法を用いた方法が知られている(例えば下記の特許文献2、下記の非特許文献1参照)。この分離技術を利用した粒子分離装置として、下記の非特許文献2の
図2には、DLD法の基本的な構造に基づいて設計されたマイクロ流路チップにサンプル液を注入するシリンジおよびチューブを有するサンプル液注入系と、バッファ液を注入するシリンジおよびチューブを有するバッファ液注入系とを備えたものが実験系として図示されている。
【0005】
また、特許文献3には、DLD法による分離技術を利用した粒子分離装置が記載されている。以下、
図9を参照しながら、特許文献3に記載されている粒子分離装置の構成について説明する。
【0006】
図9に示すように、特許文献3に記載されている粒子分離装置300であるCTC分離装置は、圧力発生部としてのシリンジ302、分岐管を含む圧力分配部303、サンプル液収容部304、バッファ液収容部305、DLDマイクロ流路チップを含む分離部306、サンプル液回収部307、およびバッファ液回収部308を備えて構成されている。この粒子分離装置300では、シリンジ302において発生した気圧が圧力分配部303で二股に分岐されて、サンプル液収容部304内のサンプル液、およびバッファ液収容部305内のバッファ液を分離部306に排出するように作用し、サンプル液およびバッファ液が分離部306内を流れることで、サンプル液回収部307にはCTCが分離されたサンプル液が回収され、バッファ液回収部308にはCTCを含むバッファ液が回収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2011/105507号
【文献】米国特許第7,735,652号明細書
【文献】国際公開第2019/172428号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Huang et al.,"Continuous Particle Separation Through Deterministic Lateral Displacement",Science 304,p.987-990,2004
【文献】岡野弘聖、外6名、「血中循環腫瘍細胞捕捉のための寸法によるファーストスクリーニング-細胞の硬さの影響-」、2014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集、精密工学会、p.453-454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献2に記載の粒子分離装置では、サンプル液注入系のサンプル液およびバッファ液注入系のバッファ液がそれぞれシリンジ内に収容され、各シリンジに嵌入されているピストンを押し込むことでサンプル液およびバッファ液がチューブを通じてマイクロ流路からなる分離部に導入され、分離部から回収されるサンプル液およびバッファ液がそれぞれチューブを通じて排出される構成となっている。
【0010】
非特許文献2に記載の粒子分離装置では、サンプル液注入系とバッファ注入系とは互いに独立しており、各シリンジに嵌入されているピストンを同時に同量だけ押し込む必要があり、操作を一人で行う場合には両手により操作する必要がある等、操作が煩雑であるとともに、押し込む量を同量に揃えることが困難であるため、サンプル液とバッファ液の流量が相違してしまい、適切な分離を行うことができないおそれがあるという問題があった。
【0011】
一方、
図9に示すように、特許文献3に記載の粒子分離装置では、シリンジがサンプル液収容部およびバッファ液収容部の両方に接続されており、シリンジに嵌入されているピストンを押し込んでシリンジ内の空気を押し出すことによりサンプル液収容部内のサンプル液およびバッファ液収容部内のバッファ液がそれぞれチューブを通じてDLDマイクロ流路チップを含む分離部に導入され、分離部から回収されるサンプル液およびバッファ液がそれぞれチューブを通じてサンプル液回収部およびバッファ液回収部へ排出される構成となっている。
【0012】
特許文献3に係る粒子分離装置によれば、ピストンを片手で押し込むことで、DLDマイクロ流路内に均等な量のサンプル液およびバッファ液を同一タイミングで導入することができるため、簡易な操作が実現されている。しかしながら、特許文献3に係る粒子分離装置においては、DLDマイクロ流路内に一定量のサンプル液およびバッファ液を導入し続ける必要があることから、操作者は、DLDマイクロ流路内に導入されるサンプル液およびバッファ液の量を確認しながら、ピストンの押し込み操作を適切なタイミングで断続的に行う必要があり、粒子分離を行っている間はサンプル液およびバッファ液の導入量を常に確認しなければならず、粒子分離装置のそばから離れることができないという問題があった。
【0013】
また、特許文献3には、
図9に示した粒子分離装置のシリンジに代えて、電動ロータリーポンプ等のポンプを用いた粒子分離装置も記載されている。この電動ロータリーポンプを用いた粒子分離装置では、操作者が操作しなくともDLDマイクロ流路内にサンプル液およびバッファ液を導入することが可能であるものの、DLDマイクロ流路内に一定量のサンプル液およびバッファ液を導入し続けるためには、依然として粒子分離を行っている間はサンプル液およびバッファ液の導入量を常に確認しなければならず、やはり粒子分離装置のそばから離れることができないという問題があった。
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、簡便に利用できるとともに操作の負担を大幅に軽減し、かつ適切に粒子を分離し得る粒子分離装置を実現することを可能とする、粒子分離装置に適用される加圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る加圧装置は、標的粒子を含むサンプル液から前記標的粒子を分離するためのDLDマイクロ流路チップを備えた粒子分離装置に適用される加圧装置であって、
圧縮空気を生成して圧縮空気排出口から圧縮空気を排出する空気圧縮部と、
上流側接続口および下流側接続口を有し、前記上流側接続口が前記圧縮空気排出口に連通するように取り付けられたチューブと、
前記空気圧縮部から排出される前記圧縮空気の空気圧を計測する圧力計測部、および前記空気圧が所定の圧力範囲となるよう前記空気圧縮部の動作を制御する圧縮動作制御部を有する圧力スイッチと、
前記下流側接続口に連通するように取り付けられた第1管路、前記第1管路から二股に分岐した一方であって前記DLDマイクロ流路チップに導入される前記サンプル液を収容するサンプル液収容部に気密に連通される第2管路、および前記第1管路から二股に分岐した他方であって前記DLDマイクロ流路チップに導入されるバッファ液を収容するバッファ液収容部に気密に連通される第3管路を備える分岐管と、を有することを特徴とする。
【0016】
この構成により、簡便に利用できるとともに操作の負担を大幅に軽減し、かつ適切に粒子を分離し得る粒子分離装置を実現することを可能とする、粒子分離装置に適用される加圧装置を提供することが可能となる。本発明に係る加圧装置をサンプル液収容部およびバッファ液収容部に接続するだけで、粒子分離装置を簡単に組み立てることが可能となる。
【0017】
また、操作者が空気圧縮部による圧縮空気の排出を開始させる簡単な操作を行うだけで、空気圧縮部から排出された圧縮空気の空気圧を、分岐管を経てサンプル液収容部およびバッファ液収容部の両方に同時かつ同圧に作用させることができるようになり、適量のサンプル液および適量のバッファ液をDLDマイクロ流路チップに導入して適切に粒子を分離することができるようになる。
【0018】
さらに、圧力スイッチがサンプル液収容部およびバッファ液収容部の両方に作用させる空気圧を所定の圧力範囲に維持するよう制御するため、空気圧縮部から排出された圧縮空気の空気圧が常に所定の圧力範囲内に自動的に維持されるようになり、サンプル液収容部に収容されたサンプル液およびバッファ液収容部に収容されたバッファ液の両方に対して、所定の圧力範囲内に維持された同一の空気圧を常に作用させ続けることができる。したがって、操作者は、サンプル液およびバッファ液をDLDマイクロ流路チップに導入するための操作や監視等を行う必要がなく、粒子分離装置のそばに居続けなければならないという制約から解放される。
【0019】
本発明に係る加圧装置は、前記所定の圧力範囲を規定する上限圧力値および下限圧力値を記憶する圧力設定値記憶部を更に有し、
前記圧縮動作制御部は、前記圧力計測部で計測された前記空気圧の圧力値が前記下限圧力値を下回ったときに前記空気圧縮部から前記圧縮空気を排出させ、前記圧力計測部で計測された前記空気圧の圧力値が前記上限圧力値を上回ったときに前記空気圧縮部による前記圧縮空気の排出を停止させてもよい。この構成により、空気圧縮部から排出された圧縮空気の空気圧が常に所定の圧力範囲内、すなわち下限圧力値以上であって上限圧力値以下の範囲に自動的かつ確実に維持されるようになり、サンプル液収容部に収容されたサンプル液およびバッファ液収容部に収容されたバッファ液の両方に対して、所定の圧力範囲内に維持された同一の空気圧を常に作用させ続けることができる。
【0020】
本発明に係る加圧装置は、外部通信機器と無線通信を行う無線通信部と、
当該加圧装置の動作条件を前記無線通信を介して前記外部通信機器から取得する条件取得部と、
前記条件取得部で取得した当該加圧装置の動作条件を記憶する条件記憶部と、を更に有してもよい。この構成により、例えばスマートフォン等の外部通信機器を用いて加圧装置の動作条件を設定することができるようになり、加圧装置本体に動作条件を設定するための操作ボタンや表示パネル等を設置する必要がなく、加圧装置の部品点数を減らしてコンパクトな加圧装置を実現することができるとともに、加圧装置のコストを大幅に低減することができる。
【0021】
本発明に係る加圧装置は、当該加圧装置の動作時間を計測するタイマと、
当該加圧装置の動作時間が前記条件記憶部に前記動作条件として記憶されている当該加圧装置の稼働停止時間を超えた場合、当該加圧装置の動作を停止させる動作制御部と、を更に有してもよい。この構成により、加圧装置の動作時間が、例えばスマートフォン等の外部通信機器を用いて設定した加圧装置の稼働停止時間を超えた場合には、加圧装置の動作を停止させて粒子分離に係る動作を自動的に終了させることができ、粒子分離が完了してもなお加圧装置が動作し続けることを防止し、操作者は安心して粒子分離装置のそばを離れることができるようになる。
【0022】
本発明に係る加圧装置は、前記空気圧縮部および前記圧力スイッチが筺体内に収容されており、前記チューブが前記筺体に設けられた貫通孔に内挿されて前記筺体の外部へ延出していてもよい。この構成により、部品点数が少なくかつコストが大幅に低減された、圧縮空気の排出に特化した簡素でコンパクトな加圧装置を実現することができる。
【0023】
本発明に係る加圧装置は、当該加圧装置の動作開始を指示するスイッチボタンが前記筐体の外表面に設けられていてもよい。この構成により、部品点数が少なくかつコストが大幅に低減された、圧縮空気の排出に特化した簡素でコンパクトな加圧装置を実現することができる。
【0024】
本発明に係る加圧装置は、前記筺体が略直方体形状であり、制振部材が前記筺体の外底面に設けられていてもよい。この構成により、空気圧縮部等の振動源から発生する振動や音を大幅に低減することができる静音かつ低振動の加圧装置を実現することができる。
【0025】
本発明に係る加圧装置は、前記DLDマイクロ流路チップが、前記サンプル液収容部に収容された前記サンプル液が導入されるように前記サンプル液収容部の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部に収容された前記バッファ液が導入されるように前記バッファ液収容部の排出口に接続されるバッファ液導入口、前記圧縮空気が前記サンプル液収容部の内部および前記バッファ液収容部の内部を昇圧することにより、前記サンプル液導入口を介して導入された前記サンプル液と前記バッファ液導入口を介して導入された前記バッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、前記DLD流路部で前記サンプル液から前記バッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および前記DLD流路部で標的粒子が前記バッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口、を備えていてもよい。この構成により、空気圧縮部から排出された圧縮空気の空気圧がサンプル液収容部に収容されたサンプル液およびバッファ液収容部に収容されたバッファ液の両方に同時かつ同圧に作用し、適量のサンプル液および適量のバッファ液をDLDマイクロ流路チップ内に導入することができる。さらに、圧縮空気の空気圧は常に所定の圧力範囲内に維持されるので、常に適量のサンプル液および適量のバッファ液をDLDマイクロ流路チップ内に導入し続けることができ、適切に粒子を分離することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態における加圧装置を含む粒子分離装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るDLDマイクロ流路チップの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すDLDマイクロ流路チップの粒子分離の原理を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態における加圧装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態において、外部通信機器のタッチパネル式ユーザインタフェースにおける表示画面上に表示されたウェブページの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態における加圧装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態における加圧装置の動作を停止する割込処理を含む動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態における加圧装置を含む粒子分離装置の別の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、特許文献3に開示されている粒子分離装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
本発明の実施の形態における加圧装置は粒子分離装置に適用されるものであり、粒子分離装置は、標的粒子および該標的粒子と異なるサイズの非標的粒子が分散したサンプル液から該標的粒子を分離するための装置である。本明細書では、本発明の実施の形態における加圧装置が、非標的粒子である血球および標的粒子である血中循環腫瘍細胞(CTC)を含む血液由来の液をサンプル液とし、該サンプル液から血中循環腫瘍細胞を分離するCTC分離装置に適用された場合について説明する。
【0029】
ただし、本発明に係る加圧装置が適用される粒子分離装置は、血中循環腫瘍細胞を分離するCTC分離装置に限定されず、血中循環腫瘍細胞以外の細胞または粒子を標的粒子として含み、標的粒子とサイズの異なる細胞または粒子を非標的粒子として含む液体から標的粒子を分離する粒子分離装置であってもよい。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態における加圧装置を含む粒子分離装置の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態における加圧装置100が適用される粒子分離装置1は、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5に対して圧縮空気を排出する加圧装置100、サンプル液収容部4、バッファ液収容部5、DLDマイクロ流路チップ60を含む分離部6、サンプル液回収部7、ならびにバッファ液回収部8を備えて構成されている。
【0031】
加圧装置100は、圧縮空気を生成および排出するよう構成されている。加圧装置100から排出された圧縮空気は、圧縮空気流通管120、分岐管121、チューブ141およびチューブ142を通じてサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5に送られるようになっている。なお、本明細書では、圧縮空気の排出方向に基づいて加圧装置100側を上流側とし、サンプル液収容部4側およびバッファ液収容部5側を下流側として説明する。
【0032】
加圧装置100は、例えば略直方体形状の筺体を有している。筺体内に収容される構成要素の寸法にもよるが、筺体の寸法は概ね数十cm程度(例えば、20~30cm程度)である。また、加圧装置の重量は、筺体内に収容される構成要素の重量も合わせて例えば約1.4kgであり、軽量化かつコンパクトに設計されている。加圧装置100の筺体の材質は特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、スチール、アルミ等の金属であってもよく、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の合成樹脂であってもよい。
【0033】
筺体の外底面には、例えばテーブル等の載置面と筺体との間に介在するように制振部材(不図示)が設けられている。制振部材は、加圧装置100が圧縮空気を生成および排出する際に駆動する空気圧縮部110の振動がテーブル等の載置面に伝わりにくくなるよう振動や駆動音を緩衝するための部材であり、テーブル等の載置面を傷つけることなく筺体を載置できるようにする台座としての役割も有している。制振部材の材質は、例えば伸縮性や弾力に富んだゴム等であることが好ましいが、特に限定されない。また、筺体内に収容される振動源となる空気圧縮部110(
図4参照)等の周囲に同様の制振部材を配置して、振動源から発生する振動や駆動音が外部に伝わりにくくなるようにしてもよい。
【0034】
加圧装置100の筺体の外表面、例えば筺体上面には、加圧装置100による圧縮空気の排出動作の開始および停止を指示するスイッチボタン101が設けられている。スイッチボタン101は、例えば空気圧縮部110(
図4参照)等の加圧装置100の構成要素に係る電気スイッチであり、スイッチボタン101が押下されたときには圧縮空気の排出動作を開始し、スイッチボタン101が長押しされたときには圧縮空気の排出動作を停止するようになっている。なお、スイッチボタン101が長押しされるとは、スイッチボタン101が所定の時間以上、例えば2秒間以上押下され続けることを意味する。
【0035】
加圧装置100の筺体の外表面、例えば筺体側面には、筺体の内外を貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔には中空の管状構造を有する圧縮空気流通管(チューブ)120が内挿されている。後述するように、圧縮空気流通管120の上流側接続口は、加圧装置100の筺体内部に設けられている空気圧縮部110の圧縮空気排出口111に連通するように取り付けられている(
図4参照)。圧縮空気流通管120の下流側接続口は、筺体の外部へ延出して分岐管121に連通するように取り付けられている。
【0036】
分岐管121は、圧縮空気流通管120を二股に分岐し、二股に分岐する一方にはチューブ141が接続されており、二股に分岐する他方にはチューブ142が接続されている。
【0037】
図1に示す例では、チューブ141には、流路変更用レバーを備える三方活栓143が介装されている。三方活栓143は外部に開放された開放口を備えており、流路変更用レバーを回動させることで、三方活栓143より上流側のチューブ141内の空間を外部に開放した状態、三方活栓143より下流側のチューブ141内の空間を外部に開放した状態、外部に開放せずに三方活栓143の上流側および下流側のチューブ141内の空間を連通させた状態とすることができる。また、チューブ142にも、同様の機能を有する三方活栓144が介装されている。
【0038】
チューブ141の下流側端部には、アダプタ128が取り付けられている。アダプタ128は、サンプル液収容部4のバレル41の注入口41aに着脱可能に装着される。チューブ142の下流側端部には、アダプタ129が取り付けられている。アダプタ129は、バッファ液収容部5のバレル51の注入口51aに着脱可能に装着される。
【0039】
サンプル液収容部4は、注入口41aおよび排出口41bを有する筒状のバレル41を備えている。バレル41には、標的粒子および標的粒子と異なるサイズの非標的粒子を含むサンプル液が収容される。サンプル液は、例えば血液を濃度4mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含有するPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2倍希釈したものであり、標的粒子として血中循環腫瘍細胞を含み、非標的粒子として血球を含む。
【0040】
バレル41は、注入口41aが上方に、排出口41bが下方に位置するように、その長手方向が略鉛直に設定された状態で、不図示のスタンド等に支持されている。サンプル液は、バレル41の注入口41aからアダプタ128を取り外した状態で注入され、注入後にバレル41の注入口41aにアダプタ128が気密に装着される。
【0041】
バッファ液収容部5は、注入口51aおよび排出口51bを有する筒状のバレル51を備えている。バレル51にはバッファ液が収容される。バッファ液としては、等張液を一種または複数種混合したものを用いることができ、例えばPBSまたはグリセリン含有PBS等を用いることができる。
【0042】
バレル51は、バレル41と同様に、注入口51aが上方に、排出口51bが下方に位置するように、その長手方向が略鉛直に設定された状態で、不図示のスタンド等に支持されている。バッファ液は、バレル51の注入口51aからアダプタ129を取り外した状態で、例えばサンプル液と同量だけ注入され、注入後にバレル51の注入口51aにアダプタ129が気密に装着される。
【0043】
チューブ141のアダプタ128がバレル41に気密に装着され、チューブ142のアダプタ129がバレル51に気密に装着されると、圧縮空気流通管120の一方向弁125(
図4参照)から分岐管121を介してバレル41およびバレル51まで連通する内部空間は等圧かつ気密な状態となる。加圧装置100から圧縮空気が排出されると上記の気密な状態となっている内部空間内の空気圧が一様に高くなる。これにより、チューブ141を介してサンプル液収容部4のバレル41内に収容されたサンプル液に空気圧が作用し、サンプル液収容部4のバレル41内に収容されたサンプル液が排出口41bから排出される。同様に、チューブ142を介してバッファ液収容部5のバレル51内に収容されたバッファ液に空気圧が作用し、バッファ液収容部5のバレル51内に収容されたバッファ液が排出口51bから排出される。
【0044】
分離部6は、DLDマイクロ流路チップ60および漏れ防止用のチップホルダを備えて構成されている。DLDマイクロ流路チップ60は、
図2に示すように、サンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、サンプル液排出口61c、バッファ液排出口61d、DLD流路部62を備えて構成されている。
【0045】
サンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、サンプル液排出口61c、バッファ液排出口61dはそれぞれDLD流路部62に連通されている。サンプル液導入口61aは、サンプル液をDLD流路部62に流入させるための導入口である。バッファ液導入口61bは、バッファ液をDLD流路部62に流入させるための導入口である。サンプル液排出口61cは、DLD流路部62内を流れて移動したサンプル液をDLD流路部62から流出させるための排出口である。バッファ液排出口61dは、DLD流路部62内を流れて移動したバッファ液をDLD流路部62から流出させるための排出口である。
【0046】
サンプル液導入口61aには、チューブ41cを介して、サンプル液収容部4のバレル41の排出口41bが接続される。バッファ液導入口61bには、チューブ51cを介して、バッファ液収容部5のバレル51の排出口51bが接続される。DLD流路部62は、複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えている。なお、DLD流路部62と、サンプル液収容部4のバレル41の排出口41bから、チューブ41c、サンプル液導入口61a、DLD流路部62までの流路と、バッファ液収容部5のバレル51の排出口51bから、チューブ51c、バッファ液導入口61b、DLD流路部62までの流路とは、予めバッファ液で満たしておくことが望ましい。
【0047】
加圧装置100による圧縮空気の排出により昇圧された空気圧が作用して、サンプル液収容部4のバレル41内のサンプル液が、排出口41b、チューブ41cおよびサンプル液導入口61aを介してDLD流路部62に導入されるとともに、バッファ液収容部5のバレル51内のバッファ液が、排出口51b、チューブ51cおよびバッファ液導入口61bを介してDLD流路部62に導入される。
【0048】
DLD流路部62は、例えば、非特許文献1に記載されているようなDLD法の原理に基づいて配設された複数の微細なピラー(マイクロピラー)を有している。サンプル液導入口61aから導入されたサンプル液と、バッファ液導入口61bから導入されたバッファ液とは、互いに接しながらそれぞれ層流として並行してDLD流路部62内を流れ、サンプル液排出口61cおよびバッファ液排出口61dの方向に移動する。このとき、DLD流路部62に配設された複数の微細なピラーにより、サンプル液中に含まれる標的粒子をサンプル液から分離することができる。
【0049】
DLD法によれば、
図3に示すように、所定の規則に従って配設された複数のピラーPからなるピラー群に粒子の分散液を流した場合には、小さい粒子は流れの方向に沿って進み、大きい粒子はピラーPの存在によって流れの方向に沿う進行を妨げられる結果として、流れの方向に対して斜めに進む。ピラーPの間隔Gとシフト量dとで決まるしきい値を適宜設定することにより、しきい値未満の径の粒子としきい値以上の径の粒子とを分離することができる。
【0050】
DLD流路部62内において、サンプル液に含まれる比較的大きい径のCTC(例えば12~15μm程度)は、サンプル液の流れ方向に対して斜めに進み、サンプル液に接しながら層流として並行して流れるバッファ液に移動する。その結果、サンプル液からバッファ液に移動したCTCを含むバッファ液が、バッファ液排出口61dから排出される。一方、DLD流路部62内において、サンプル液に含まれる比較的小さい径の血球(例えば8μm程度)は、サンプル液の流れ方向に沿って進み、CTCが移動および分離された後のサンプル液とともに、サンプル液排出口61cから排出される。すなわち、サンプル液に比較的大きい径のCTCが含まれている場合には、DLD流路部62内を通過した際にCTCはサンプル液から分離されて、バッファ液とともに排出される。
【0051】
なお、DLD流路部62内において、サンプル液とバッファ液とは、互いに接しながら層流として並行して流れる際に互いに僅かに混入し合うため、サンプル液排出口61cから排出されるサンプル液にはバッファ液の一部が含まれ、バッファ液排出口61dから排出されるバッファ液にはサンプル液の一部が含まれる場合がある。
【0052】
DLDマイクロ流路チップ60は、例えば、流路加工チップにサンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、サンプル液排出口61c、バッファ液排出口61d、DLD流路部62を形成し、サンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、サンプル液排出口61c、バッファ液排出口61dのそれぞれに対応する位置に液体が流通するための穴が設けられた平面チップを流路加工チップの上に貼り合わせた層状の構造を有している。すなわち、DLDマイクロ流路チップ60は、DLDマイクロ流路チップ60の一方の面に設けられた穴を介して、サンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、サンプル液排出口61c、バッファ液排出口61dのそれぞれにおいて、サンプル液またはバッファ液が流通可能なようになっている。なお、DLDマイクロ流路チップ60は既知のものであり、DLDマイクロ流路チップ60単体として市販されている製品を用いてもよい。
【0053】
サンプル液排出口61cには、サンプル液回収部7のチューブ71を介してサンプル液回収容器72が接続されており、CTCが分離された後のサンプル液がサンプル液回収容器72に回収される。バッファ液排出口61dには、バッファ液回収部8のチューブ81を介してバッファ液回収容器82が接続されており、サンプル液から移動して分離されたCTCを含むバッファ液がバッファ液回収容器82に回収される。
【0054】
次に、本発明の実施の形態における加圧装置100の構成について説明する。
図4は、本発明の実施の形態における加圧装置100の構成の一例を示す図である。
図4に示す加圧装置100は、電気的な構成要素として、空気圧縮部110、圧力スイッチ130、制御回路150を有している。
【0055】
空気圧縮部110は、圧縮空気を生成して、圧縮空気排出口111から圧縮空気流通管120内へ圧縮空気を排出する空気圧縮機である。空気圧縮部110には任意の方式の空気圧縮機を用いることができ、例えばモータおよびシリンダを備えた往復運動式の空気圧縮機であってもよく、回転式、遠心式、軸流式等の空気圧縮機であってもよい。
【0056】
空気圧縮部110は、加圧装置100の筺体に設けられたスイッチボタン101が押下されたとき、または圧縮動作制御部135から圧縮空気の排出開始を指示する制御信号を受信したとき、圧縮空気の排出動作を開始するようになっている。また、空気圧縮部110は、圧縮空気の排出動作を開始すると圧縮空気を排出し続け、スイッチボタン101が長押しされたとき、または圧縮動作制御部135から圧縮空気の排出停止を指示する制御信号を受信したとき、圧縮空気の排出動作を停止するようになっている。
【0057】
圧縮空気流通管120は中空のチューブであり、一例として、圧縮空気流通管120の途中に介装された一方向弁125およびT型チューブコネクタ126とを備えて構成されている。一方向弁125およびT型チューブコネクタ126は、加圧装置100の筺体内部に収容されており、T型チューブコネクタ126の下流側のチューブが筐体外部へ延出している。圧縮空気流通管120は、上流側の端部である上流側接続口が空気圧縮部110の圧縮空気排出口111に連通するように取り付けられており、下流側の端部である下流側接続口が分岐管121に連通するように取り付けられている。
【0058】
圧縮空気流通管120の途中に介装されている一方向弁125は、圧縮空気排出口111側が分岐管121側に対して、すなわち上流側が下流側に対して陽圧時に開放し、陰圧時に閉塞するように設けられた逆流防止用の弁である。一方向弁125は必須の構成要素ではないが、一方向弁125を設けることにより、空気圧縮部110から排出された圧縮空気が圧縮空気排出口111へ逆流することを防止できるようになっている。一方向弁125としては、ダイヤフラム式チェックバルブを用いることができる。
【0059】
圧縮空気流通管120の途中であって一方向弁125より下流側に介装されているT型チューブコネクタ126は、圧縮空気流通管120を分岐する部材である。T型チューブコネクタ126により圧縮空気流通管120から分岐された管路は、圧力スイッチ130に接続されている。
【0060】
分岐管121は圧縮空気流通管120を分岐するために設けられており、第1管路、第2管路、第3管路の3つの管路が連通した部材である。分岐管121の第1管路は、圧縮空気流通管120の下流側接続口に連通するように取り付けられている。分岐管121の第2管路は、チューブ141に接続されており、分岐管121の第3管路は、チューブ142に連通するように接続されている。
【0061】
図1に示すように、分岐管121の第2管路に接続されているチューブ141の下流側端部は、アダプタ128を介してサンプル液収容部4の注入口41aに接続される。また、分岐管121の第3管路に接続されているチューブ142の下流側端部は、アダプタ129を介してバッファ液収容部5の注入口51aに接続される。チューブ141の下流側端部がサンプル液収容部4の注入口41aに接続され、チューブ142の下流側端部がバッファ液収容部5の注入口51aに接続されると、一方向弁125からバレル41およびバレル51まで連通する内部空間は等圧かつ気密な状態となる。
【0062】
圧力スイッチ130は、圧力計測部131、圧力設定値記憶部132、表示部133、操作部134、圧縮動作制御部135を含んで構成されている。
【0063】
圧力計測部131は、空気圧縮部110から排出される圧縮空気の空気圧を計測する機能を有している。本発明の実施の形態では、圧力計測部131は、T型チューブコネクタ126により圧縮空気流通管120から分岐された管路が圧力スイッチ130に接続されており、圧力計測部131は、圧縮空気流通管120内の圧縮空気の圧力、すなわち圧縮空気流通管120内の空気圧を計測することができるようになっている。なお、本発明の実施の形態では、T型チューブコネクタ126により分岐された管路が圧力計測部131に接続されているが、圧力計測部131は、例えば空気圧縮部110内やチューブ142の別の箇所等、空気圧縮部110から排出される圧縮空気の空気圧を計測することが可能な任意の箇所に設けられてもよい。
【0064】
圧力設定値記憶部132は、圧縮動作制御部135が加圧装置100の動作制御を行うために参照する設定値を記憶する機能を有している。本発明の実施の形態では、圧力設定値記憶部132には、所定の圧力範囲を規定する数値が設定値として記憶される。所定の圧力範囲を規定する数値は、例えば上限圧力値および下限圧力値であり、上限圧力値と下限圧力値との間の範囲が所定の圧力範囲となる。上限圧力値は、例えば2.2~2.4気圧に設定され、下限圧力値は上限圧力値より低い値であって、例えば、2.0~2.2気圧に設定される。なお、所定の圧力範囲は、上限圧力値または下限圧力値と、範囲幅を示す応差とによって規定されてもよい。
【0065】
表示部133は、操作者が圧力スイッチ130を設定する際に情報を表示する機能、および設定値や圧力計測部131による計測値等を表示する機能を有しており、例えば圧力スイッチ130に設けられた表示パネルである。操作部134は、操作者が圧力スイッチ130を操作または設定可能とする機能を有しており、例えば圧力スイッチ130に設けられた操作ボタンである。操作者は、表示部133に表示された情報を見ながら、操作部134を用いて所定の圧力範囲を規定する数値を入力し、圧力設定値記憶部132に設定値として記憶させることができるようになっている。
【0066】
圧縮動作制御部135は、圧力計測部131により計測された圧縮空気流通管120内の空気圧と、圧力設定値記憶部132に記憶された設定値とに基づいて空気圧縮部110へ制御信号を出力し、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作を制御する機能を有している。圧縮動作制御部135から出力される制御信号は、圧縮空気の排出開始を指示する制御信号および圧縮空気の排出停止を指示する制御信号であり、例えば空気圧縮部110の動作状態/停止状態(オン/オフ)を制御する接点信号である。
【0067】
圧縮動作制御部135は、圧縮空気流通管120内の空気圧が所定の圧力範囲となるように空気圧縮部110の動作を制御できるようになっている。具体的には、圧縮動作制御部135は、圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回ったときに空気圧縮部110による圧縮空気の排出を開始するよう制御し、圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値を上回ったときに空気圧縮部110による圧縮空気の排出を停止するよう制御できるようになっている。
【0068】
なお、上限圧力値を超えるまで昇圧された圧縮空気流通管120内の空気圧は、例えばサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5に収容されているサンプル液およびバッファ液をDLDマイクロ流路チップ60へ排出する作用によって徐々に低下する。より詳細には、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5に収容されているサンプル液およびバッファ液がDLDマイクロ流路チップ60へ排出されると、バレル41、51内のサンプル液およびバッファ液の液面が下がり、バレル41、51内部の空気容量が大きくなることで、空気圧が徐々に低下する。
【0069】
圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回った場合には、圧縮動作制御部135は再び空気圧縮部110から圧縮空気を排出させて、圧縮空気流通管120内の空気圧を上限圧力値まで昇圧することで、圧縮空気流通管120内の空気圧は、上限圧力値および下限圧力値で規定される所定の圧力範囲内に維持される。
【0070】
制御回路150は、無線通信部151、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)サーバ152、条件記憶部153、タイマ154、給電制御部155を含んで構成されている。
【0071】
無線通信部151は、所定の無線通信方式で無線通信を行う機能を有している。本発明の実施の形態では、無線通信部151は、外部通信機器200との間で無線通信を行う親機として機能する。無線通信方式は特に限定されないが、例えばIEEE802.11規格に準拠した無線LANを用いることができる。
【0072】
HTTPサーバ152は、無線通信を介して接続した外部通信機器200とHTTPを用いてデータのやり取りを行う機能を有しており、データのやり取りを行うためのプログラムやウェブページ等があらかじめ設定される。なお、HTTPサーバ152は、加圧装置100の動作条件を外部通信機器200から取得する条件取得部の一例にすぎず、任意の情報取得方法や通信プロトコルを用いることができる。外部通信機器200から取得する加圧装置100の動作条件は特に限定されないが、例えば加圧装置100の稼働停止時間とすることができる。加圧装置100の稼働停止時間とは、加圧装置100が稼働を開始した時点や外部通信機器200から設定が行われた時点から、加圧装置100の稼働を停止させるまでの時間を意味する。無線通信部151およびHTTPサーバ152は、例えば、市販の小型無線モジュールによって実現可能である。
【0073】
条件記憶部153は、HTTPサーバ152により外部通信機器200から取得した加圧装置100の動作条件を記憶する機能を有している。本発明の実施の形態では、加圧装置100の動作条件の一例として、外部通信機器200から取得した加圧装置100の稼働停止時間が条件記憶部153に記憶されるようになっている。
【0074】
タイマ154は、加圧装置100の動作時間を計時する機能を有している。加圧装置100の動作時間とは、加圧装置100が稼働した時点や外部通信機器200から設定が行われた時点から経過した時間を意味する。加圧装置100の動作時間は、加圧装置100の筺体に設けられたスイッチボタン101が押下されて空気圧縮部110が圧縮空気の排出動作を開始した時点から計時されてもよく、外部通信機器200により加圧装置100の稼働停止時間が設定された時点から計時されてもよい。
【0075】
給電制御部155は、加圧装置100の動作時間が条件記憶部153に記憶されている加圧装置100の稼働停止時間を超えた場合には、圧力スイッチ130に対する給電を停止することで圧力スイッチ130の動作を停止するよう制御する機能を有している。圧力スイッチ130の電源がオフになった場合、圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回っても、圧縮動作制御部135から空気圧縮部110へ制御信号が出力されず、その結果、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作は行われなくなる。
【0076】
なお、ここでは、給電制御部155が、圧力スイッチ130に対する給電を停止して圧力スイッチ130の動作を停止することで、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作を停止させる動作制御部としての機能を果たすようになっているが、空気圧縮部110を直接制御して、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作を停止してもよい。
【0077】
図4に示す外部通信機器200は、無線通信部201、表示部202、操作部203を有している。外部通信機器200は、加圧装置100の稼働停止時間等の動作条件を設定するための端末であり、例えば操作者のスマートフォンを用いることができる。
【0078】
無線通信部201は、加圧装置100の無線通信部151と同一の無線通信方式で無線通信を行う機能を有している。本発明の実施の形態では、無線通信部201は、加圧装置100との間で無線通信を行う子機として機能する。
【0079】
表示部202および操作部203は、操作者が情報を確認しながら、例えば加圧装置100の稼働停止時間等の動作条件を適切に入力するための機能を有している。外部通信機器200がスマートフォンの場合には、表示部202および操作部203は、タッチパネル式ユーザインタフェースおよびHTTPユーザエージェント機能を含むウェブブラウザ等を表している。表示部202および操作部203を用いて入力された加圧装置100の稼働停止時間等の動作条件は、無線通信部201を通じて加圧装置100へ送信されて加圧装置100の条件記憶部153に記憶される。
【0080】
ここで、外部通信機器200を用いて加圧装置100の動作条件を設定する方法について説明する。
【0081】
例えば、加圧装置100と外部通信機器200とを無線LANで通信できるようにするため、加圧装置100を無線LAN親機として動作させる。具体的には、加圧装置100の無線通信部151に所定のSSID(Service Set Identifier)およびパスワードを設定して、SSIDをブロードキャストさせる。さらに、加圧装置100のHTTPサーバ152に所定のローカルIP(Internet Protocol)アドレスを割り当てる。
【0082】
一方、例えばスマートフォン等の外部通信機器200を無線LAN子機として動作させて、外部通信機器200から加圧装置100のHTTPサーバ152にアクセスできるようにする。外部通信機器200において加圧装置100のSSIDを検出してパスワードを入力することで、外部通信機器200と加圧装置100との間の無線接続を簡単に確立させることができる。さらに、外部通信機器200でブラウザを起動して、HTTPサーバ152のローカルIPアドレスを入力することで、HTTPサーバ152に用意されたウェブページが外部通信機器200に送信され、外部通信機器200の表示画面に表示される。
【0083】
図5は、本発明の実施の形態において、外部通信機器200のタッチパネル式ユーザインタフェースにおける表示画面上に表示されたウェブページの一例を示す図である。
図5に示すウェブページは、加圧装置100の稼働停止時間を入力するためのものであり、例えば、稼働停止時間の単位を入力するための単位入力部251、稼働停止時間の数値を入力するための数値入力部252、HTTPサーバ152への送信指示を行うための送信指示ボタン253を含んでいる。
【0084】
単位入力部251は、例えばドロップダウンメニューで構成されており、秒、分等の単位を選択できるようになっている。数値入力部252は、例えばテキストボックスで構成されており、操作者が所望の数値を入力できるようになっている。送信指示ボタン253は、例えばデータ送信プログラムの起動にリンクされたボタンであり、操作者がこのボタンを選択することで、単位入力部251に入力された単位および数値入力部252に入力された数値がHTTPサーバ152へ送信されるようになっている。HTTPサーバ152は、外部通信機器200から送信された加圧装置の稼働停止時間の「単位」および「数値」を取得して条件記憶部153に記憶させる。
【0085】
図5に示す例では、単位入力部251および数値入力部252で「分」および「20」が入力されており、操作者が送信指示ボタン253を選択することで、加圧装置100の稼働停止時間を「20分」に設定することができる。
【0086】
以下、
図4に示す加圧装置100の動作について説明する。
図6は、本発明の実施の形態における加圧装置100の動作の一例を示すフローチャートである。なお、サンプル液を収容したサンプル液収容部4にチューブ141が接続され、バッファ液を収容したバッファ液収容部5にチューブ142が接続され、圧縮空気流通管120の一方向弁125からバレル41およびバレル51まで連通する内部空間が気密な状態となっているものとする。
【0087】
加圧装置100のコンセントが接続されて加圧装置100の筺体に設けられたスイッチボタン101が押下されると、加圧装置100の空気圧縮部110は、圧縮空気の排出動作を開始して圧縮空気の排出を行う(ステップS501)。サンプル液収容部4にチューブ141を接続し、バッファ液収容部5にチューブ142を接続した直後の初期状態では、上述した気密な状態となっている内部空間は外気圧と略等圧である。空気圧縮部110の排気能力に依存するが、空気圧縮部110からの圧縮空気の排出により、当該内部空間内の空気圧を速やかに(例えば1秒程度で)上限圧力値に到達させることが可能である。
【0088】
圧力スイッチ130は圧縮空気流通管120内の空気圧を計測し(ステップS502)、圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値を上回ったかどうかを監視する(ステップS503)。圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値を上回っていない場合(ステップS503でNO)、すなわち圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値以下である場合には、圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値を上回るまで、上記のステップS501~S503の処理が実行され、圧縮空気の排出が継続して行われる。
【0089】
圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値を上回った場合(ステップS503でYES)、圧力スイッチ130は圧縮空気の排出停止を指示する制御信号を空気圧縮部110に出力し、空気圧縮部110は圧縮空気の排出を停止する(ステップS504)。
【0090】
空気圧縮部110から圧縮空気の排出が停止されると、圧力スイッチ130は圧縮空気流通管120内の空気圧を引き続き計測し(ステップS505)、圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回ったかどうかを監視する(ステップS506)。圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回っていない場合(ステップS506でNO)、すなわち圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値以上である場合には、圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回るまで、上記のステップS505およびS506の処理が実行される。
【0091】
圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回った場合(ステップS506でYES)には上記のステップS501に戻り、圧力スイッチ130は圧縮空気の排出開始を指示する制御信号を空気圧縮部110に出力し、空気圧縮部110は圧縮空気の排出動作を再び開始して圧縮空気の排出を行う(ステップS501)。このように、空気圧縮部110による圧縮空気の排出および排出停止が繰り返し行われることにより、圧縮空気流通管120内の空気圧が下限圧力値を下回った場合には上限圧力値を上回るまで昇圧され、圧縮空気流通管120内の空気圧が上限圧力値および下限圧力値で規定される所定の圧力範囲内に維持される。
【0092】
図6に示す加圧装置100の動作は、
図7に示す動作に含まれる割込処理によって停止される。
図7は、本発明の実施の形態における加圧装置100の動作を停止する割込処理を含む動作の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、動作条件として加圧装置100の稼働停止時間が条件記憶部153に既に記憶されており、加圧装置100の動作時間の計時が行われているものとする。
【0093】
図7には、
図6に示す加圧装置100の動作中に、スイッチボタン101が押下されるイベント、または動作時間が稼働停止時間を超えるイベントが発生した場合に、加圧装置100の動作を停止する割込処理が実行されることが示されている。
【0094】
例えば加圧装置100の給電制御部155は、スイッチボタン101が押下されたかどうかを監視するとともに(ステップS601)、タイマ154で計時された加圧装置100の動作時間が、動作条件として設定されている稼働停止時間を超えたかどうかを監視する(ステップS602)。スイッチボタン101が押下されておらず(ステップS601でNO)、かつ、加圧装置100の動作時間が稼働停止時間を超えていない場合(ステップS602でNO)には、上記のステップS601およびS602に係るイベントの監視が引き続き実行される。
【0095】
一方、スイッチボタン101が押下された場合(ステップS601でYES)、または加圧装置100の動作時間が稼働停止時間を超えた場合(ステップS602でYES)には、給電制御部155は、圧力スイッチ130に対する給電を停止して圧力スイッチ130の動作を停止し、その結果、加圧装置100の動作が停止される(ステップS603)。ステップS603における加圧装置100の動作の停止は、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作を停止することに加えて、空気圧縮部110による圧縮空気の排出が再開されないことを含む。
【0096】
次に、
図1に示す粒子分離装置1を用いた粒子分離に係る動作について説明する。
【0097】
図1に示す粒子分離装置1を用いることで簡単かつ適切に粒子を分離することができる。粒子分離を行う場合、まずサンプル液収容部4のアダプタ128を外し、バレル41に適量のサンプル液を注入して、再びアダプタ128をバレル41に装着する。また同様に、バッファ液収容部5のアダプタ129を外し、バレル51に適量のバッファ液を注入して、再びアダプタ129をバレル51に装着する。これにより、圧縮空気流通管120の一方向弁125から分岐管121を経て、チューブ141およびサンプル液収容部4のバレル41ならびにチューブ142およびバッファ液収容部5のバレル51まで連通する内部空間は等圧かつ気密な状態となる。
【0098】
この状態において、操作者は、加圧装置100の圧力スイッチ130にて所定の圧力範囲を設定し、また必要に応じて外部通信機器200から加圧装置100の稼働停止時間を設定して、スイッチボタン101を押下すればよい。スイッチボタン101の押下により加圧装置100が稼働して空気圧縮部110から圧縮空気が排出されると、サンプル液収容部4のバレル41およびバッファ液収容部5のバレル51の内部の空気圧が昇圧し、その後、
図6のフローチャートに示す加圧装置100の動作によって所定の圧力範囲内に維持されるので、適量のサンプル液およびバッファ液を分離部6内に導入し続けることが可能となる。
【0099】
図1に示す粒子分離装置1を用いた粒子分離に係る動作によれば、加圧装置100から排出された圧縮空気によりバレル41、51の内圧が高められて、その内圧の作用によりサンプル液およびバッファ液を分離部6内に導入することが可能となる。また、バレル41、51の内圧は所定の圧力範囲内に維持されるので、適量のサンプル液およびバッファ液を分離部6内に導入し続けることが可能となる。操作者はサンプル液およびバッファ液を分離部6に導入するための断続的な操作、例えばピストンの押し込み操作等を行う必要はなく、また、圧力値を監視する必要もないので、粒子分離装置10のそばに居続ける必要はない。
【0100】
また、例えば操作者が離席中に、バレル41、51に収容されているサンプル液やバッファ液がすべて分離部6内に導入されてバレル41、51が空になった場合には、バレル41、51内の空気が分離部6、サンプル液回収部7またはバッファ液回収部8から漏れてしまい、所定の圧力範囲内に維持するために空気圧縮部110が圧縮空気を排出し続ける、いわゆる空回しの状態になる可能性がある。これに対し、
図1に示す粒子分離装置1によれば、適切な稼働停止時間を外部通信機器200から設定することが可能であり、空気圧縮部110による空回しが行われる前に粒子分離に係る動作を自動的に停止させることが可能である。
【0101】
以下、本発明に係る加圧装置を粒子分離装置に適用した場合の作用について説明する。
【0102】
本発明によれば、簡便に利用できるとともに操作の負担を大幅に軽減し、かつ適切に粒子を分離し得る粒子分離装置を実現することを可能とする、粒子分離装置に適用される加圧装置が提供される。
【0103】
本発明に係る加圧装置100は、サンプル液収容部4およびバッファ液収容部5にチューブ141、142を接続するだけで簡単に粒子分離装置1を組み立てることが可能となる。
【0104】
本発明に係る加圧装置100は、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作が開始されると、空気圧縮部110から排出された圧縮空気の空気圧が、一方向弁125から分岐管121を経てサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方に同時かつ同圧に作用し、適量のサンプル液および適量のバッファ液をDLDマイクロ流路チップに導入して適切に粒子を分離することができるようになる。したがって、操作者は、スイッチボタン101を押下して、空気圧縮部110による圧縮空気の排出動作を開始させるだけでよく、操作者による操作の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0105】
本発明に係る加圧装置100は、圧力スイッチ130がサンプル液収容部4およびバッファ液収容部5の両方に作用させる空気圧を所定の圧力範囲に維持するようになっている。これにより、空気圧縮部110から排出された圧縮空気の空気圧が常に所定の圧力範囲内に自動的に維持されるようになり、サンプル液収容部4に収容されたサンプル液およびバッファ液収容部5に収容されたバッファ液の両方に対して、所定の圧力範囲内に維持された同一の空気圧を常に作用させ続け、常に適量のサンプル液および適量のバッファ液をDLDマイクロ流路チップ内に導入し続けることができる。したがって、操作者は、サンプル液およびバッファ液をDLDマイクロ流路チップ60に導入するための操作や監視等を行うことなく、適切に粒子を分離することが可能となり、粒子分離装置1のそばに居続けなければならないという制約から解放される。
【0106】
本発明に係る加圧装置100では、所定の圧力範囲が例えば上限圧力値および下限圧力値によって規定され、空気圧縮部から排出された圧縮空気の空気圧を、常に所定の圧力範囲内、すなわち下限圧力値以上であって上限圧力値以下の範囲に自動的かつ確実に維持できるようになっている。これにより、サンプル液収容部4に収容されたサンプル液およびバッファ液収容部5に収容されたバッファ液の両方に対して、所定の圧力範囲内に維持された同一の空気圧を常に作用させ続けることが可能となる。
【0107】
本発明に係る加圧装置100は、外部通信機器200と無線通信を行って、加圧装置100の動作条件を無線通信を介して外部通信機器200から設定できるようになっている。これにより、例えば加圧装置100本体に動作条件を設定するための操作ボタンや表示パネル等を設置する必要がなくなり、加圧装置100の部品点数を減らすことおよびコンパクトな加圧装置100を実現することが可能となり、加圧装置100のコストを大幅に低減することが可能となる。
【0108】
本発明に係る加圧装置100は、加圧装置100の動作条件として加圧装置100の稼働停止時間を設定し、加圧装置100の動作時間が稼働停止時間を超えた場合には加圧装置100の動作を停止させるようになっている。これにより、加圧装置100の動作時間が、例えばスマートフォン等の外部通信機器200を用いて設定した加圧装置100の稼働停止時間を超えた場合には、加圧装置100の動作を停止させて粒子分離に係る動作を自動的に終了させることができ、粒子分離が完了してもなお加圧装置が動作し続ける、いわゆる空回しを防止し、操作者は安心して粒子分離装置1のそばを離れることが可能となる。
【0109】
本発明に係る加圧装置100は、空気圧縮部110、一方向弁125および圧力スイッチ130が筺体内に収容されており、空気圧縮部110から排出された圧縮空気を流通させる圧縮空気流通管(チューブ)120が、筺体の貫通孔を通じて筺体の外部へ延びた構成となっている。このような構成により、部品点数が少なくかつコストが大幅に低減された、圧縮空気の排出に特化した簡素でコンパクトな加圧装置100が実現されている。
【0110】
本発明に係る加圧装置100は、加圧装置100の動作開始を指示するスイッチボタン101が筐体の外表面に設けられた構成となっている。このような構成により、部品点数が少なくかつコストが大幅に低減された、圧縮空気の排出に特化した簡素でコンパクトな加圧装置100が実現されている。
【0111】
本発明に係る加圧装置100は筺体が略直方体形状であり、制振部材が筺体の外底面に設けられた構成となっている。このような構成により、空気圧縮部等の振動源から発生する振動や音を大幅に低減することができる静音かつ低振動の加圧装置を実現することが可能である。また、振動源となる空気圧縮部110等の周囲に同様の制振部材を配置することで、振動源から発生する振動や駆動音を更に低減することも可能である。
【0112】
なお、本発明の実施の形態では、外部通信機器200から無線通信を介して設定する加圧装置100の動作条件として、加圧装置100の動作を停止させる稼働停止時間を一例として挙げているが、設定可能な動作条件は加圧装置100の稼働停止時間に限定されるものではない。例えば、圧力スイッチ130の設定値として圧力設定値記憶部132に記憶される所定の圧力範囲を規定する数値、すなわち、上限圧力値、下限圧力値または応差等の数値を外部通信機器200から無線通信を介して設定できるようにしてもよい。
【0113】
また、本発明の実施の形態では、加圧装置100が
図1に示す粒子分離装置1に適用された場合を一例として挙げているが、加圧装置100が適用される粒子分離装置1の構成は特に限定されるものではなく、例えば
図8に示す構成とすることも可能である。
【0114】
図8は、本発明の実施の形態における加圧装置を含む粒子分離装置の別の一例を示す斜視図である。
図1に示す粒子分離装置1と
図8に示す粒子分離装置10とを比較した場合、加圧装置100から圧縮空気流通管120が延出して分岐管121においてチューブ141およびチューブ142に分岐されている点は共通しているが、
図8に示す粒子分離装置10は、チューブ141およびチューブ142が粒子分離回収カートリッジ900に接続されている点で異なっている。
【0115】
図8に示す粒子分離回収カートリッジ900は、
図1に示すサンプル液収容部4、バッファ液収容部5、分離部6、サンプル液回収部7およびバッファ液回収部8と同一の機能を有している。具体的には、
図8に示す粒子分離回収カートリッジ900は、サンプル液収容部4、バッファ液収容部5、サンプル液回収部7およびバッファ液回収部8にそれぞれ対応する4つのタンク、すなわち、サンプル液収容タンク901、バッファ液収容タンク902、サンプル液回収タンク903およびバッファ液回収タンク904を備えている。また、
図8には不図示であるが、粒子分離回収カートリッジ900の底面側にDLDマイクロ流路チップ60が取り付けられており、サンプル液収容タンク901とサンプル液導入口61a、バッファ液収容タンク902とバッファ液導入口61b、サンプル液回収タンク903とサンプル液排出口61c、バッファ液回収タンク904とバッファ液排出口61dとが連通した構成となっている。
【0116】
図1に示す粒子分離装置1は、チューブやバレル等の煩雑な組み立て作業が必要であるのに対し、
図8に示す粒子分離回収カートリッジ900は、これらの機能が一体化された部材であり、組み立て作業が不要で利便性に優れた使い捨て製品として提供される。また、粒子分離回収カートリッジ900は、サンプル液やバッファ液が液漏れしないように、DLDマイクロ流路チップ60および各部材間で液体が流通する連通部等が封止されており、感染症等のリスクを低減する衛生面に優れた構成となっている。
【0117】
図8に示す粒子分離装置10を用いた粒子分離も、
図1に示す粒子分離装置1を用いた粒子分離と同様に簡単な動作で行うことができる。まず、サンプル液収容タンク901の上面に貫通孔を有する加圧装置接続部911にチューブ141を接続し、バッファ液収容タンク902の上面に貫通孔を有する加圧装置接続部912にチューブ142を接続する。この状態が
図8に図示されている。なお、加圧装置接続部911、912は、
図1においてチューブ141、142とバレル41、51とを接続するアダプタ128、129としての役割を有している。
【0118】
次いで、キャップ921~924をすべて外し、サンプル液収容タンク901に適量のサンプル液を注入し、バッファ液収容タンク902に適量のバッファ液を注入して、サンプル液収容タンク901およびバッファ液収容タンク902のキャップ921、922を再び装着する。これにより、サンプル液収容タンク901は加圧装置接続部911の貫通孔のみ開口した状態となり、バッファ液収容タンク902は加圧装置接続部912の貫通孔のみ開口した状態となって、圧縮空気流通管120の一方向弁125から分岐管121を経て、チューブ141およびサンプル液収容タンク901ならびにチューブ142およびバッファ液収容タンク902まで連通する内部空間は等圧かつ気密な状態となる。
【0119】
この状態において、操作者は、加圧装置100の圧力スイッチ130にて所定の圧力範囲を設定し、また必要に応じて外部通信機器200から加圧装置100の稼働停止時間を設定して、スイッチボタン101を押下すればよい。スイッチボタン101の押下により加圧装置100が稼働して空気圧縮部110から圧縮空気が排出されると、サンプル液収容タンク901およびバッファ液収容タンク902の内部の空気圧が昇圧し、その後、
図6のフローチャートに示す加圧装置100の動作によって所定の圧力範囲内に維持されるので、適量のサンプル液およびバッファ液をDLD流路部62内に導入し続けることが可能となる。上述した
図1に示す粒子分離装置1を用いた粒子分離に係る動作と同様に、操作者は、粒子分離装置10のそばに居続ける必要はなく、さらに、適切な稼働停止時間を設定することで空回しが行われる前に粒子分離に係る動作を停止させることが可能である。
【0120】
以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0121】
1、10、300 粒子分離装置
4、304 サンプル液収容部
5、305 バッファ液収容部
6、306 分離部
7、307 サンプル液回収部
8、308 バッファ液回収部
41、51 バレル
41a、51a 注入口
41b、51b 排出口
41c、51c、71、81、141、142 チューブ
60 DLDマイクロ流路チップ
61a サンプル液導入口
61b バッファ液導入口
61c サンプル液排出口
61d バッファ液排出口
62 DLD流路部
72 サンプル液回収容器
82 バッファ液回収容器
100 加圧装置
101 スイッチボタン
110 空気圧縮部
111 圧縮空気排出口
120 圧縮空気流通管(チューブ)
121 分岐管
125 一方向弁
126 T型チューブコネクタ
128、129 アダプタ
130 圧力スイッチ
131 圧力計測部
132 圧力設定値記憶部
133、202 表示部
134、203 操作部
135 圧縮動作制御部
143、144 三方活栓
150 制御回路
151、201 無線通信部
152 HTTPサーバ
153 条件記憶部
154 タイマ
155 給電制御部(動作制御部)
200 外部通信機器
251 単位入力部
252 数値入力部
253 送信指示ボタン
302 シリンジ
303 圧力分配部
900 粒子分離回収カートリッジ
901 サンプル液収容タンク
902 バッファ液収容タンク
903 サンプル液回収タンク
904 バッファ液回収タンク
911、912 加圧装置接続部
921~924 キャップ