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  • 特許-光学積層体、及び表示装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】光学積層体、及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240410BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240410BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240410BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240410BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240410BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/12
B32B27/00 M
C09J201/00
C09J7/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011846
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115803
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 龍源
(72)【発明者】
【氏名】鄭 有延
(72)【発明者】
【氏名】金 炯旭
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191551(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039296(WO,A1)
【文献】特開2012-053078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/12
B32B 27/00
C09J 201/00
C09J 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光積層体と、前記偏光積層体の第1表面に積層された第1粘着剤層と、前記第1粘着剤層の前記偏光積層体側とは反対側の表面に積層された第1基材フィルムと、前記偏光積層体の第2表面に積層された第2粘着剤層と、前記第2粘着剤層の前記偏光積層体側とは反対側の表面に積層された第2基材フィルムと、を有し、
下記式(1a)、式(2b)、及び式(5b)の関係を満たす、光学積層体。
(A/B)×C≧800 (1a)
(A/B)×C≦2000 (2b)
300≦C≦2000 (5b)
[式(1a)、式(2b)、及び式(5b)において、
Aは、前記偏光積層体と前記第2粘着剤層との間での180°剥離力をA1[gf/25mm]とし、前記第2基材フィルムと前記第2粘着剤層との合計の厚みをA2[μm]としたときに、A1/A2で算出される値であり、
Bは、前記第1粘着剤層と前記第1基材フィルムとの間での180°剥離力をB1[gf/25mm]とし、前記第1基材フィルムの厚みをB2[μm]としたときに、B1/B2で算出される値であり、
Cは、前記第1粘着剤層、前記偏光積層体、前記第2粘着剤層及び前記第2基材フィルムがこの順で積層されてなる評価積層体のスティッフネス[ガーレー単位]とする。]
【請求項2】
前記Aは下記式(3a)の関係を満たす、請求項に記載の光学積層体。
0.1≦A≦1 (3a)
【請求項3】
前記Bは下記式(4a)の関係を満たす、請求項1又は2に記載の光学積層体。
0.08≦B≦0.8 (4a)
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体から前記第1基材フィルムを剥離して前記第1粘着剤層の表面を露出させる第1基材フィルム剥離工程と、
前記第1粘着剤層の露出した前記表面を表示素子に貼合する貼合工程と、有する表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-188550号公報(特許文献1)には、第1面に第1粘着剤層を介して第1基材フィルムが設けられるとともに、第2面に第2粘着剤層を介して第2基材フィルムが設けられている光学フィルムを巻き回したロールが開示されている。かかる光学フィルムは、所定形状に切断された後、第1基材フィルムが剥離されて露出された第1粘着剤層を介して表示基板に貼り合わせられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-188550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、ロールに巻き取られた状態で、基材フィルムと光学フィルムとの間に生じる浮きを抑制するために、界面の接着力の大小関係を調整することが記載されている。
【0005】
本発明は、光学積層体を貼合するための粘着剤層の表面の貼付されている離型フィルムを剥離するときに、かかる離型フィルムとは反対側の表面に設けられている表面保護フィルムの剥がれが抑制された光学積層体、及び当該光学積層体を用いた表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す光学積層体及び表示装置の製造方法を提供する。
〔1〕 偏光積層体と、前記偏光積層体の第1表面に積層された第1粘着剤層と、前記第1粘着剤層の前記偏光積層体側とは反対側の表面に積層された第1基材フィルムと、前記偏光積層体の第2表面に積層された第2粘着剤層と、前記第2粘着剤層の前記偏光積層体側とは反対側の表面に積層された第2基材フィルムと、を有し、
下記式(1a)の関係を満たす、光学積層体。
(A/B)×C≧800 (1a)
[式(1a)において、
Aは、前記偏光積層体と前記第2粘着剤層との間での180°剥離力をA1[gf/25mm]とし、前記第2基材フィルムと前記第2粘着剤層との合計の厚みをA2[μm]としたときに、A1/A2で算出される値であり、
Bは、前記第1粘着剤層と前記第1基材フィルムとの間での180°剥離力をB1[gf/25mm]とし、前記第1基材フィルムの厚みをB2[μm]としたときに、B1/B2で算出される値であり、
Cは、前記第1粘着剤層、前記偏光積層体、前記第2粘着剤層及び前記第2基材フィルムがこの順で積層されてなる評価積層体のスティッフネス[ガーレー単位]とする。]
〔2〕 下記式(2a)の関係をさらに満たす、〔1〕に記載の光学積層体。
(A/B)×C≦10000 (2a)
〔3〕 前記Aは下記式(3a)の関係を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
0.1≦A≦1 (3a)
〔4〕 前記Bは下記式(4a)の関係を満たす、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
0.08≦B≦0.8 (4a)
〔5〕 前記Cは下記式(5a)の関係を満たす、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
200≦C≦3000 (5a)
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学積層体から前記第1基材フィルムを剥離して前記第1粘着剤層の表面を露出させる第1基材フィルム剥離工程と、
前記第1粘着剤層の露出した前記表面を表示素子に貼合する貼合工程と、有する表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学積層体を貼合するための粘着剤層の表面の貼付されている離型フィルムを剥離するときに、かかる離型フィルムとは反対側の表面に設けられている表面保護フィルムの剥がれが抑制された光学積層体、及び当該光学積層体を用いた表示装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の光学積層体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
[表示装置]
図1は、光学積層体100から第1基材フィルム22を剥離した光学積層体100’を表示素子200に貼合して表示装置300を作製する際の態様を示した概略断面図である。
【0011】
<光学積層体>
光学積層体100は、偏光積層体10を有し、偏光積層体10の第1表面に積層された第1粘着剤層21と、第1粘着剤層21の偏光積層体10側とは反対側の表面に積層された第1基材フィルム22と、偏光積層体10の第2表面に積層された第2粘着剤層31、第2粘着剤層31の偏光積層体10側とは反対側の表面に積層された第2基材フィルム32と、を有する。
【0012】
光学積層体100において、第1粘着剤層21の表面が表示素子200との貼合面となる。第1基材フィルム22は、第1粘着剤層21の偏光積層体10側とは反対側の表面に積層された離型フィルム(セパレータ)である。離型フィルムは、光学積層体100が表示素子200に貼合される際に光学積層体100から剥離される。光学積層体100から第1基材フィルム22が剥離した後の積層体を光学積層体100’とする。
【0013】
第2基材フィルム32は、第2粘着剤層31を介して偏光積層体10の第2表面に積層され、第2粘着剤層31と合わせて表面保護フィルム30として機能する。第2基材フィルム32上には、通常、予め第2粘着剤層31が設けられて表面保護フィルム30を構成しており、かかる表面保護フィルム30における第2粘着剤層31の表面が偏光積層体10に貼合されて光学積層体100が構成されている。表面保護フィルム30は、通常、光学積層体100が表示素子200に貼合された後に光学積層体100’から剥離される。
【0014】
偏光積層体10は、偏光板を少なくとも含み、さらに、前面板、タッチセンサパネル等を含んでいてもよい。偏光板は、偏光フィルムを少なくとも含み、そのほかに、保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、貼合層等を含んでいてもよい。
【0015】
光学積層体100の厚みは、光学積層体に求められる機能及び光学積層体の用途等に応じて異なるため特に限定されないが、例えば20μm以上2000μm以下であり、好ましくは50μm以上1000μm以下であり、より好ましく100μm以上500μm以下である。
【0016】
光学積層体100の平面視形状は、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。光学積層体100の面方向の形状が長方形である場合、長辺の長さは、例えば10mm以上1400mm以下であってよく、好ましくは50mm以上600mm以下である。短辺の長さは、例えば5mm以上800mm以下であり、好ましくは30mm以上500mm以下であり、より好ましくは50mm以上300mm以下である。光学積層体100を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0017】
光学積層体100は、表示装置300に用いることができる。表示装置300の製造方法は、光学積層体100から第1基材フィルム22を剥離して第1粘着剤層21の表面を露出させる工程と、第1粘着剤層21の露出した表面を表示素子200に貼合する工程と、を有する。
【0018】
表示装置300は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。光学積層体100は、屈曲が可能な表示装置に好適である。光学積層体100が、有機EL表示装置に用いられる場合、光学積層体100中の偏光積層体10は円偏光板であることが好ましく、光学積層体100から第1基材フィルム22を剥離した後にこれを有機EL表示素子の視認側表面に貼合することにより反射光を抑制することができる。光学積層体100が、液晶表示装置に用いられる場合、光学積層体100中の偏光積層体10は直線偏光板又は円偏光板であることが好ましく、光学積層体100から第1基材フィルム22を剥離した後にこれを液晶表示素子の両面にそれぞれ貼合することにより画像光を形成することができる。
【0019】
光学積層体100は、下記式(1a)の関係を満たし、好ましくは下記式(1b)の関係を満たす。
(A/B)×C≧800 (1a)
(A/B)×C≧820 (1b)
【0020】
式(1a)及び式(1b)における各値は以下の通りである。
Aは、偏光積層体10と第2粘着剤層31との間での180°剥離力をA1[gf/25mm]とし、第2基材フィルム32と第2粘着剤層31との合計の厚みをA2[μm]としたときに、A1/A2で算出される値である。
Bは、第1粘着剤層21と第1基材フィルム22との間での180°剥離力をB1[gf/25mm]とし、第1基材フィルム22の厚みをB2[μm]としたときに、B1/B2で算出される値である。
Cは、第1粘着剤層21、偏光積層体10、第2粘着剤層31及び第2基材フィルム32がこの順で積層されてなる評価積層体のスティッフネス[ガーレー単位]である。なお、1mN=9.807×10-3 ガーレー単位である。
各値は、後述の実施例の欄に記載の方法に従って測定される。
【0021】
光学積層体100を用いて表示装置を製造する方法は、光学積層体100から第1基材フィルム22を剥離して第1粘着剤層21の表面を露出させる第1基材フィルム剥離工程を有する。第1基材フィルム剥離工程は、例えば、光学積層体100を表面保護フィルム30が積層されている表面側から吸着して保持し、第1基材フィルム22の表面にテープを貼付してかかるテープを介して第1基材フィルム22を引き起こして第1基材フィルム22のみを剥離する操作を含む。第1基材フィルム剥離工程は、第1基材フィルム22の剥離を目的としているものの、表面保護フィルム30の剥がれが生じる場合があった。表面保護フィルム30の剥がれが生じると第1基材フィルム剥離工程を継続することが難しくなる。
【0022】
第1基材フィルム剥離工程において、表面保護フィルム30の剥がれが生じることを抑制するためには、表面保護フィルム30と偏光積層体10との接着力を高めて剥離力を上げる方法が考えられるが、表面保護フィルム30の接着力を上げると、後の工程において表面保護フィルム30をきれいに剥がすことが難しくなったり、剥離後の偏光積層体10の表面に傷等の不具合が生じることがある。
【0023】
本発明者らは鋭意検討した結果、光学積層体100が上記式(1a)の関係を満たすことにより、第1基材フィルム剥離工程における表面保護フィルム30の剥がれを抑制できることを見出した。
【0024】
光学積層体100は、好ましくは下記式(2a)の関係を満たし、さらに好ましくは下記式(2b)の関係を満たす。
(A/B)×C≦10000 (2a)
(A/B)×C≦2000 (2b)
【0025】
光学積層体100が上記式(2a)の関係を満たすことにより、第1基材フィルム剥離工程と光学積層体100’を表示素子200に貼合する貼合工程の後の、表面保護フィルム30を剥離する表面保護フィルム剥離工程において表面保護フィルム30を簡単にきれいに剥がすことができ、また、第1基材フィルム剥離工程前に第1基材フィルム22の剥がれが生じることを抑制することができる。
【0026】
上記式(1a)中における上記Aは、表面保護フィルム剥離工程において表面保護フィルム30を簡単にきれいに剥がすことができる観点から、好ましくは下記式(3a)の関係を満たし、さらに好ましくは下記(3b)の関係を満たす。Aの値は、第2基材フィルム32の材料、第2粘着剤層31の材料、第2粘着剤層31と偏光積層体10との貼合面の表面処理の内、少なくとも1つを調整してA1の値を調整することにより、又は第2基材フィルム32と第2粘着剤層の合計の厚みA2を調整することにより、調整することができる。貼合面の表面処理としては、例えばコロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理が挙げられる。
0.1≦A≦1 (3a)
0.15≦A≦0.6 (3b)
【0027】
上記式(1a)中における上記Bは、第1基材フィルム剥離工程において第1基材フィルム22を簡単にきれいに剥がすことができる観点から、好ましくは下記式(4a)の関係を満たし、さらに好ましくは下記(4b)の関係を満たす。Bの値は、第1基材フィルム22の材料、第1粘着剤層21の材料、第1粘着剤層21と第1基材フィルム22との貼合面の表面処理の内、少なくとも1つを調整してB1の値を調整することにより、又は第1基材フィルム22の厚みB2を調整することにより、調整することができる。貼合面の表面処理としては、例えばコロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理が挙げられる。
0.08≦B≦0.8 (4a)
0.1≦B≦0.4 (4b)
【0028】
上記式(1a)中における上記Cは、第1基材フィルム剥離工程前に第1基材フィルム22の剥がれが生じることを抑制することができる観点及び光学積層体100’又は偏光積層体10に屈曲性を付与し得る観点から、好ましくは下記式(5a)の関係を満たし、さらに好ましくは下記式(5b)の関係を満たす。光学積層体100’又は偏光積層体10が屈曲性を有することにより、屈曲性を有する表示装置を構成することが可能になる。Cの値は、第2基材フィルム32の材料、偏光積層体10の積層構造、並びにかかる積層構造において用いる各層の材料及び厚みを調整することにより調整することができる。
200≦C≦3000 (5a)
300≦C≦2000 (5b)
【0029】
偏光積層体10と第2粘着剤層31との間における180°剥離力A1は、10gf/25mm以上であることが好ましく、14gf/25mm以上であることがより好ましく、20gf/25mm以上であってもよい。180°剥離力A1は、50gf/25mm以下であることが好ましく、40gf/25mm以下であってもよく、30gf/25mm以下であってもよい。
【0030】
第1粘着剤層21と第1基材フィルム22との間における180°剥離力B1は、1gf/25mm以上であることが好ましく、5gf/25mm以上であることがより好ましく、6gf/25mm以上であってもよい。180°剥離力B1は、20gf/25mm以下であることが好ましく、15gf/25mm以下であってもよく、10gf/25mm以下であってもよい。
【0031】
偏光積層体10と第2粘着剤層31との間における180°剥離力A1は、第1粘着剤層21と第1基材フィルム22との間における180°剥離力B1よりも大きいことが好ましい。
【0032】
<第1粘着剤層21>
第1粘着剤層21は、光学積層体100中では偏光積層体10の第1表面に積層され、偏光積層体10と表示素子との貼合層として機能する。第1粘着剤層21は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよいが、好ましくは1層からなるものである。第1粘着剤層21は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂を主成分とする粘着剤組成物から構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0033】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0034】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0035】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
【0036】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0037】
第1粘着剤層21は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材フィルム又は偏光積層体10の第1表面上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。基材フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムであることが一般的であり、その典型的な例として、離型処理が施されたセパレートフィルムを挙げることができる。セパレートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等の樹脂からなるフィルムの粘着剤層が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。
【0038】
例えば、セパレートフィルムを第1基材フィルム22として、この離型処理面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成して第1粘着剤層21とし、このセパレートフィルム付粘着剤層を偏光積層体10の第1表面に積層してもよい。
偏光積層体10の第1表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成して第1粘着剤層21とし、第1粘着剤層21の外面にセパレートフィルムを第1基材フィルム22として積層してもよい。
粘着剤層を偏光積層体10の第1表面に設ける際には、偏光積層体10の貼合面及び/又は粘着剤層の貼合面に表面活性化処理、例えばプラズマ処理、コロナ処理等を施すことが好ましく、コロナ処理を施すことがより好ましい。
また、第2セパレートフィルム上に粘着剤組成物を塗布して第1粘着剤層21を形成し、形成された粘着剤層上にセパレートフィルム(第1基材フィルム22)を積層した粘着剤シートを準備し、この粘着剤シートから第2セパレートフィルムを剥離した後のセパレートフィルム付粘着剤層を偏光積層体10に積層してもよい。第2セパレートフィルムは、セパレートフィルム(第1基材フィルム22)よりも第1粘着剤層21との密着力が弱く、剥離し易いものが用いられる。
【0039】
第1粘着剤層21の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。
【0040】
<第1基材フィルム22>
第1基材フィルム22は、第1粘着剤層21の偏光積層体10側とは反対側の表面に積層された離型フィルム(セパレータ)である。第1基材フィルム22の第1粘着剤層21に接する表面は、離型処理が施されていることが好ましい。
【0041】
第1基材フィルム22は、熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば環状ポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム等が挙げられる。第1基材フィルム22はポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0042】
第1基材フィルム22の厚みB2は、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがより好ましい。第1基材フィルム22の厚みB2は、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0043】
<表面保護フィルム30>
表面保護フィルム30は、第2基材フィルム32とその上に積層される第2粘着剤層31とで構成される。表面保護フィルム30は、偏光積層体10の第2表面を保護する機能を有し、例えば、光学積層体100’が表示素子200に貼合された後に、偏光積層体10から剥離される。
【0044】
第2基材フィルム32を構成する樹脂については、第1基材フィルム22に関する上述の説明が適用される。
【0045】
第2粘着剤層31を構成する粘着剤組成物については、第1粘着剤層21を構成する粘着剤組成物に関する上述の説明が適用される。第2粘着剤層31の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。表面保護フィルム30は市販品を用いることもできる。
【0046】
第2基材フィルム32と第2粘着剤層31の合計の厚みA2は、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であってもよい。第2基材フィルム32と第2粘着剤層31の合計の厚みA2は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0047】
<偏光積層体10>
(偏光板)
偏光積層体10は、偏光板を少なくとも含む。偏光板は、直線偏光子層を少なくとも含む。偏光板は、例えば円偏光板であり、円偏光板は位相差層を少なくとも含む。円偏光板は、表示装置中で反射された外光を吸収することができるため、光学積層体に反射防止機能を付与することができる。
【0048】
偏光板の厚みは、通常5μm以上であり、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。また、偏光板の厚みは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0049】
(直線偏光子層)
直線偏光子層は、自然光等の非偏光な光線からなる一方向の直線偏光を選択的に透過させる機能を有する。直線偏光子層は、二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層、重合性液晶化合物の硬化物及び二色性色素を含み、二色性色素が重合性液晶化合物の硬化物中に分散し、配向している液晶層等を偏光子層として備えることができる。色素を異方性のある媒質中に分散して配向させると、ある方向からは着色して見え、それと垂直な方向からはほとんど無色に見えることがある。このような現象を示す色素を二色性色素という。液晶層を偏光子層として用いた直線偏光子層は、二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層に比べて、屈曲方向に制限がないため好ましい。
【0050】
(二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層である偏光子層)
二色性色素を吸着させた延伸フィルムである偏光子層は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0051】
偏光子層の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子層の厚みを薄くすることは、円偏光板の薄膜化に有利である。偏光子層の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0052】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。
【0053】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等も使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000以上10000以下であり、好ましくは1500以上5000以下である。
【0054】
二色性色素を吸着させた延伸層である偏光子層は、通常、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させて偏光子層とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光子層を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子層の保護層として用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光子層から剥離除去してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、後述する熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。
【0055】
二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層である偏光子層は、そのまま直線偏光子層として用いてよく、その片面又は両面に保護層を形成して直線偏光子層として用いてもよい。保護層としては、後述する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。得られる直線偏光子層の厚みは、好ましくは2μm以上40μm以下である。
【0056】
熱可塑性樹脂フィルムは、例えば環状ポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム等、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。偏光子層と保護層とは、後述する貼合層を介して積層することができる。
【0057】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常100μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、なおさらに好ましくは30μm以下であり、また、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。
【0058】
熱可塑性樹脂フィルム上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及びスクラッチ性を向上させた熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、上述の樹脂フィルムに形成されるハードコート層と同様にして形成することができる。
【0059】
(液晶層である偏光子層)
液晶層を形成するために用いる重合性液晶化合物は、重合性反応基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。重合性反応基は、重合反応に関与する基であり、光重合性反応基であることが好ましい。光重合性反応基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。光重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物の液晶性は、液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0060】
液晶層である偏光子層に用いられる二色性色素としては、300~700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及びアントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、2種以上を組み合わせてもよいが、3種以上を組み合わせることが好ましい。特に、3種以上のアゾ化合物を組み合わせることがより好ましい。二色性色素の一部が反応性基を有していてもよく、また液晶性を有していてもよい。
【0061】
液晶層である偏光子層は、例えば基材フィルム上に形成した配向膜上に、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光子層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を重合して硬化させることによって形成することができる。基材フィルム上に、偏光子層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材フィルムとともに延伸することによって、偏光子層を形成してもよい。偏光子層を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子層の保護層として用いてもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上述した熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。
【0062】
重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光子層形成用組成物、及びこの組成物を用いた偏光子層の製造方法としては、特開2013-37353号公報、特開2013-33249号公報、特開2017-83843号公報等に記載のものを例示することができる。偏光子層形成用組成物は、重合性液晶化合物及び二色性色素に加えて、溶媒、重合開始剤、架橋剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
偏光子層形成用組成物が含有していてもよい重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合性開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100重量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。この範囲内であると、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、液晶化合物の配向状態を安定化させやすい。
【0064】
液晶層である偏光子層の厚みは、通常10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0065】
液晶層である偏光子層は基材フィルムを剥離除去せずに直線偏光子層として用いてもよく、基材フィルムを偏光子層から剥離除去して直線偏光子層としてもよい。液晶層である偏光子層は、その片面又は両面に保護層を形成して直線偏光子層として用いてもよい。保護層としては、上述する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。
【0066】
液晶層である偏光子層は、その片面又は両面にオーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層は、偏光子層の保護等を目的として設けることができる。オーバーコート層は、例えば偏光子層上にオーバーコート層を形成するための材料(組成物)を塗布することによって形成することができる。オーバーコート層を構成する材料としては、例えば光硬化性樹脂、水溶性ポリマー等が挙げられる。オーバーコート層を構成する材料としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を用いることができる。
【0067】
(位相差層)
円偏光板において、位相差層は、1層であってもよく2層以上であってもよい。位相差層は、その表面を保護するオーバーコート層、位相差層を支持する基材フィルム等を有していてもよい。位相差層は、λ/4層を含み、さらにλ/2層又はポジティブC層の少なくともいずれかを含んでいてもよい。位相差層がλ/2層を含む場合、直線偏光子層側から順にλ/2層及びλ/4層を積層する。位相差層がポジティブC層を含む場合、直線偏光子層側から順にλ/4層及びポジティブC層を積層してもよく、直線偏光子層側から順にポジティブC層及びλ/4層を積層してもよい。位相差層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
【0068】
位相差層は、保護層の材料として例示した樹脂フィルムから形成してもよいし、重合性液晶化合物が硬化した層から形成してもよい。位相差層は、さらに配向膜を含んでもよい。位相差層は、λ/4層と、λ/2層及びポジティブC層とを貼合するための貼合層を有していてもよい。
【0069】
位相差層は、重合性液晶化合物を硬化してなる層から形成する場合、重合性液晶化合物を含む組成物を、基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向層を形成してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上記熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同じであってよい。位相差層は、重合性液晶化合物を硬化してなる層から形成する場合、配向層及び基材フィルムを有する形態で光学積層体に組み込まれてもよい。位相差層は、貼合層を介して直線偏光子層と貼合することができる。
【0070】
(貼合層)
貼合層は、粘着剤組成物又は接着剤組成物から構成される層である。貼合層の材料となる粘着剤組成物は、第1粘着剤層21を構成する粘着剤組成物に関する上述の説明が適用される。
【0071】
貼合層の材料となる接着剤組成物としては、例えば水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等のうち1種又は2種以上を組み合わせて形成することができる。水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含む接着剤、光反応性樹脂を含む接着剤、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含む接着剤等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマー、及びこれらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含む化合物を挙げることができる。
【0072】
貼合層の厚みは、例えば1μm以上であってよく、好ましくは1μm以上25μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下、さらに好ましくは2.5μm以上5μm以下である。
【0073】
(前面板)
偏光積層体10は前面板を含むものであっても含まないものであってもよい。前面板は、光を透過可能な板状体であれば、材料及び厚みは限定されることはなく、また1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されてもよい。前面板10としては、樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)、ガラス製の板状体(例えばガラス板、ガラスフィルム等)が挙げられる。前面板10は、表示装置の最表面を構成することができる。
【0074】
前面板の厚みは、例えば30μm以上500μm以下であってよく、好ましくは40μm以上200μm以下であり、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
【0075】
前面板が樹脂製の板状体である場合、樹脂製の板状体は、光を透過可能なものであれば限定されることはない。樹脂フィルム等の樹脂製の板状体を構成する樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミドなどの高分子で形成されたフィルムが挙げられる。これらの高分子は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。樹脂フィルムは、強度及び透明性向上の観点から好ましくはポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどの高分子で形成される。
【0076】
前面板は、樹脂フィルム又は樹脂フィルムにハードコート層を備えた樹脂フィルムが好ましい。ハードコート層は、樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及びスクラッチ性を向上させた樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、例えば紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。樹脂フィルムの両面にハードコート層を有する場合、各ハードコート層の組成や厚みは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0077】
前面板がガラス板である場合、ガラス板は、ディスプレイ用強化ガラスが好ましく用いられる。ガラス板の厚みは、例えば50μm以上1000μm以下であってよい。ガラス板を用いることにより、優れた機械的強度及び表面硬度を有する前面板を構成することができる。
【0078】
光学積層体100が表示装置に用いられる場合、前面板は、表示装置の前面(画面)を保護する機能(ウィンドウフィルムとしての機能)を有するのみではなく、タッチセンサとしての機能、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。
【0079】
(タッチセンサパネル)
偏光積層体10は、タッチセンサパネルをさらに備えていてもよい。タッチセンサパネルを備える偏光積層体10として、例えば前面板と円偏光板とタッチセンサとをこの順に有する偏光積層体が挙げられる。タッチセンサパネルは、タッチされた位置を検出可能なセンサ(すなわちタッチセンサ)を有するパネルであれば、限定されない。タッチセンサの検出方式は限定されることはなく、抵抗膜方式、静電容量結合方式、光センサ方式、超音波方式、電磁誘導結合方式、表面弾性波方式等のタッチセンサパネルが例示される。低コストであることから、抵抗膜方式、静電容量結合方式のタッチセンサパネルが好適に用いられる。
【0080】
抵抗膜方式のタッチセンサの一例として、互いに対向配置された一対の基板と、それら一対の基板の間に挟持された絶縁性スペーサーと、各基板の内側の前面に抵抗膜として設けられた透明導電膜と、タッチ位置検知回路とにより構成されている部材が挙げられる。抵抗膜方式のタッチセンサを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、対向する抵抗膜が短絡して、抵抗膜に電流が流れる。タッチ位置検知回路が、このときの電圧の変化を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0081】
静電容量結合方式のタッチセンサの一例としては、基板と、基板の全面に設けられた位置検出用透明電極と、タッチ位置検知回路とにより構成されている部材が挙げられる。静電容量結合方式のタッチセンサを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、タッチされた点で人体の静電容量を介して透明電極が接地される。タッチ位置検知回路が、透明電極の接地を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0082】
タッチセンサパネルの厚みは、例えば5μm以上2000μm以下であってよく、好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。
【0083】
タッチセンサパネルは、基材フィルム上にタッチセンサのパターンが形成された部材であってよい。基材フィルムの例示は、上述の熱可塑性樹脂フィルムの説明における例示と同じであってよい。タッチセンサパターンの厚みは、例えば1μm以上20μm以下であってよい。
【0084】
[光学積層体の製造方法]
光学積層体100は、各層を貼合する工程を含む方法によって製造することができる。偏光積層体10を先に構成した後に、その第1表面及び第2表面に粘着剤層を設ける工程を経て製造してもよいし、偏光積層体の第1表面を形成する表面を有する前駆体に予め粘着剤層を設ける工程、又は偏光積層体の第2表面を形成する表面を有する前駆体に予め粘着剤層を設ける工程を有し、前駆体を積層する工程を経て偏光積層体10を有する光学積層体100を製造してもよい。
【0085】
[表示装置の用途]
本発明に係る表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【実施例
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
[偏光積層体の構成要素の準備]
(液晶層である偏光子層を有する液晶型偏光板)
厚さ25μmのTACフィルムの片面に配向膜組成物を塗布し、乾燥及び偏光露光をして配向膜を形成した。配向膜上に、液晶重合性化合物と染料とを含む液晶組成物を塗布し、乾燥した。紫外線照射による硬化を行って液晶層である偏光子層を形成し、液晶型偏光板を得た。
【0088】
(延伸層である偏光子層を有する延伸型偏光板)
PVAフィルムを1軸延伸しながらヨウ素を含有した溶液に浸漬して染色した後、ホウ酸を含有した溶液に浸漬して架橋させて乾燥することで偏光子層を得た。偏光子層の片面に厚さ13μmのCOPからなる透明フィルムを接着剤で貼り付けて延伸型偏光板を得た。
【0089】
(1/4波長板)
PETフィルムの片面に配向膜組成物を塗布し、乾燥及び偏光露光をして配向膜を形成した。配向膜上に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布し、乾燥した。紫外線照射による硬化を行って位相差層(1/4波長層)を形成し、PETフィルム付1/4波長板を得た。配向膜及び位相差層(1/4波長層)からなる積層体を1/4波長板とした。
【0090】
(1/2波長板)
PETフィルムの片面に配向膜組成物を塗布し、乾燥及び偏光露光をして配向膜を形成した。配向膜上に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布し、乾燥した。紫外線照射による硬化を行って位相差層(1/2波長層)を形成し、PETフィルム付1/2波長板を得た。配向膜及び位相差層(1/2波長層)からなる積層体を1/2波長板とした。
【0091】
(ポシティブC層)
PETフィルムの片面に垂直配向膜組成物を塗布し、乾燥及び露光をして配向膜を形成した。配向膜上に、重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布し、乾燥した。紫外線照射による硬化を行って位相差層(ポジティブC層)を形成し、PETフィルム付ポジティブC層を得た。配向膜及び位相差層からなる積層体についてもポジティブC層とした。
【0092】
(反射防止用液晶型偏光板)
液晶型偏光板のTACフィルム側でない表面に粘着剤を用いてPETフィルム付1/4波長板を貼合した後、PETフィルムを剥離した。さらに1/4波長板の表面に粘着剤を用いてPETフィルム付ポジティブC位相差層を貼合した後、PETフィルムを剥離した。ポジティブC層の表面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層(第1粘着剤層)を形成し、粘着剤層付き反射防止用液晶型偏光板(円偏光板)を得た。
【0093】
(反射防止用延伸型偏光板)
延伸型偏光板のCOPフィルム側でない表面に粘着剤層を用いてPETフィルム付1/2波長板を貼合した後、PETフィルムを剥離した。さらに1/2波長板の表面に粘着剤を用いてPETフィルム付1/4波長板を貼合した後、PETフィルムを剥離した。1/4波長板の表面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層(第1粘着剤層)を形成し、粘着剤層付き反射防止用延伸型偏光板(円偏光板)を得た。
【0094】
[実施例1]
粘着剤層付き反射防止用液晶型偏光板のTAC表面に表面保護フィルムA(アクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)付ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、藤森工業株式会社、AY-4212)を貼合し、粘着剤層面には離型フィルムF(離型処理された厚さ50μmPET)を貼合して実施例1の光学積層体を作製した。
【0095】
<各パラメータの測定>
(180°剥離力A1及び表面保護フィルムの厚みA2の測定)
実施例1の光学積層体の全体構成から2.5cm幅で測定用サンプルを裁断した。裁断した光学積層体から離型フィルムを剥離除去して、粘着剤層(第1粘着剤層)の表面をガラスに貼合した。ガラスを引張力測定装置(株式会社島津製作所製「AG-1S」)に固定した。表面保護フィルムAを一部剥離して引張力測定装置のジグに固定した。25℃環境において、3.0m/minの速度で剥離角度が180°となるようにして表面保護フィルムAを剥離し、剥離力A1[gf/25mm]を測定した。剥離した表面保護フィルムAは接触式膜厚測定装置(株式会社ニコン製「MS-5C」)を用いて厚みA2[μm]を測定した。表1に、180°剥離力A1、表面保護フィルムの厚みA2、及びA1/A2より算出されるパラメータAの各値を示す。
【0096】
(180°剥離力B1及び離型フィルムの厚みB2の測定)
実施例1の光学積層体の全体構成から2.5cm幅で測定用サンプルを裁断した。裁断した光学積層体から表面保護フィルムAを除去して、表面保護フィルムAがあった面をガラスに貼合した。ガラスを引張力測定装置(株式会社島津製作所製「AG-1S」)に固定し、離型フィルムF(第1基材フィルム)を一部剥離して引張力測定装置のジグに固定した。25℃環境において、3.0m/minの速度で剥離角度が180°となるようにして離型フィルムFを剥離し、剥離力B1[gf/25mm]を測定した。剥離した離型フィルムFも同様に接触式膜厚測定装置(株式会社ニコン製「MS-5C」)を用いて厚みB2[μm]を測定した。表1に、180°剥離力B1、離型フィルムの厚みB2、及びB1/B2より算出されるパラメータBの各値を示す。
【0097】
(スティッフネスCの測定)
実施例1の光学積層体の全体構成から2.54cm幅、長さ8.89cmの大きさの測定用サンプルを裁断した。かかる測定用サンプルから離型フィルムFを除去してこれを評価積層体とし、評価積層体スティッフネスC[ガーレー単位]をスティフネス測定器(Gurley社 Bending Stiffness Tester)を用いて測定した。表1に、スティッフネスC、及び(A/B)×Cの算出値を示す。
【0098】
[実施例2]
表面保護フィルムAに代えて、表面保護フィルムB(アクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)付PETフィルム、藤森工業株式会社、AY-638)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0099】
[実施例3]
表面保護フィルムAに代えて、表面保護フィルムC(アクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)付PETフィルム、藤森工業株式会社、AY(75)-638)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0100】
[実施例4]
表面保護フィルムAに代えて、表面保護フィルムD(厚み125μmのPET(第2基材フィルム)に粘着剤組成物を塗布して厚み15μmのアクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)を形成したもの)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0101】
[実施例5]
離型フィルムFに代えて、離型処理された厚さ38μmのPETである離型フィルムGを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0102】
[実施例6]
粘着剤層付き反射防止用液晶型偏光板に代えて、粘着剤層付き反射防止用延伸型偏光板を使用したこと以外は、実施例3と同様にして実施例6の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0103】
[比較例1]
表面保護フィルムAに代えて、表面保護フィルムE(アクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)付PETフィルム、藤森工業株式会社、AY(75)-4212)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0104】
[比較例2]
粘着剤層付き反射防止用液晶型偏光板に代えて、粘着剤層付き反射防止用延伸型偏光板を使用したこと以外は、実施例5と同様にして比較例2の光学積層体を作製し、各パラメータを測定した。
【0105】
[剥離評価]
各実施例及び比較例で作られた光学積層体を、吸着ステージに表面保護フィルムが接触するように載せて吸引することで固定した。剥離テープを離型フィルム(第1基材フィルム)の角部分に貼り付け、光学積層体表面から、剥離角度が90°になるように持ち上げた。離型フィルムが粘着剤層(第1粘着剤層)面から分離された場合を正常剥離と判定し、表面保護フィルムが偏光積層体表面から剥離された場合を剥離不良(逆剥離)と判定した。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【符号の説明】
【0107】
100、100’ 光学積層体、10 偏光積層体、21 第1粘着剤層、22 第1基材フィルム、30 表面保護フィルム、31 第2粘着剤層、32 第2基材フィルム、200 表示素子、300 表示装置。
図1