(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 X
(21)【出願番号】P 2020033856
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0164421(US,A1)
【文献】特開2013-021773(JP,A)
【文献】特開2019-022398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタと、該スイッチングトランジスタに直列接続されたセンス抵抗と、前記スイッチングトランジスタがONすることで入力電圧が印加する1次巻線、負荷が接続される2次巻線及び補助巻線を有するトランスと、前記2次巻線側の出力電圧に応じたホトカプラ電流を生成するホトカプラと、前記補助巻線に発生する電圧を整流平滑した電圧を電源電圧とする制御回路と、前記制御回路は前記センス抵抗に発生するセンス電圧と前記ホトカプラ電流によって前記スイッチングトランジスタのON/OFFを制御するスイッチング電源装置において、
前記制御回路は、前記電源電圧を検出する電圧検出回路と、前記スイッチングトランジスタがONした後に前記スイッチングトランジスタをOFFさせるOFFタイミング信号を、前記ホトカプラ電流が大きいほど且つ前記センス電圧が大きいほど早いタイミングで生成するON期間制御回路と、前記スイッチングトランジスタがOFFした後に前記スイッチングトランジスタをONさせるONタイミング信号を、前記ホトカプラ電流が大きいほど遅いタイミングで生成するOFF期間制御回路と、前記ON期間制御回路から出力する前記OFFタイミング信号によって前記スイッチングトランジスタをOFFさせ、前記OFF期間制御回路から出力する前記ONタイミング信号によって前記スイッチングトランジスタをONさせる第1SRFF回路と、を備え、
前記OFF期間制御回路は、
前記ホトカプラ電流が大きいほど遅いタイミングで第1信号を出力する第3コンパレータと、前記電源電圧の検出電圧が所定値を下回るとセットされて第2信号を出力し前記スイッチングトランジスタがONすると前記第2信号がリセットされる第2SRFF回路と、前記第3コンパレータから第1信号が出力し又は前記第2SRFF回路から前記第2信号が出力するとき前記ONタイミング信号を出力するゲート回路とを備え、前記電圧検出回路で検出した電源検出電圧が所定値を下回るとき、前記ONタイミング信号を強制的に出力することを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスとホトカプラを使用したDC/DCコンバータとして機能するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7にこの種の従来のスイッチング電源装置の回路を示す(例えば特許文献1)。このスイッチング電源回路は、NMOSのスイッチングトランジスタMN1のON/OFFを制御するための制御回路20Aを備え、この制御回路20AのRSFF回路23から出力する駆動電圧Vdrvが“H”になると駆動回路24から出力するゲート電圧Vgが“H”になって、MNOSのスイッチングトランジスタMN1がONし、トランス10の1次巻線L1に入力電圧Vinによる電流が流れる。このとき、トランス10の2次巻線L2に発生する起電力は逆極性となるのでダイオードD1に阻止されて電流は流れないが、補助巻線L3は電圧Vriseが正電圧で発生する。
【0003】
スイッチングトランジスタMN1がONしているときは、ON期間制御回路21Aから出力するOFFタイミング電圧Voffは“L”となっているが、センス抵抗Rsに流れる電流が順次大きくなってその電圧Vsがある基準値を超えると、そのOFFタイミング電圧Voffが“H”に切り替わる。これにより、RSFF回路23がリセットされて、そこから出力する駆動電圧Vdrvが“L”となり、ゲート電圧Vgも“L”となって、スイッチングトランジスタMN1がOFFする。このとき、トランス10の2次巻線L2に生じる起電力が正極性となって、ダイオードD1がONしてキャパシタC2に電荷が蓄積される。このキャパシタC2の電圧が出力電圧Voutとなって、図示しない負荷に供給される。
【0004】
ON期間制御回路21AのOFFタイミング電圧Voffが“H”になるタイミングは、センス抵抗Rsに発生する電圧Vsが大きいほど(つまり入力電力が大きいほど)、且つ出力電圧Vutを検出するホトカプラ40のホトカプラ電流Ipcが大きいほど(つまり出力電圧Vout高いほど)、早くなる。
【0005】
スイッチングトランジスタMN1がOFFすると、キャパシタC5が電流源IB1の電流Iref1によって充電され、その充電電圧Vc5がある基準値を超えると、OFF期間制御回路22Aから出力するONタイミング電圧Vonが“H”に切り替わる。これにより、RSFF回路23がセットされて、駆動電圧Vdrvが“H”となり、ゲート電圧もVgも“H”となって、スイッチングトランジスタMN1がONする。
【0006】
OFF期間制御回路22AのONタイミング電圧Vonが“H”になるタイミングは、ホトカプラ電流Ipcが大きいほど(つまり出力電圧Voutが高いほど)、遅くなる。
【0007】
反転検出回路26は補助巻線L3の電圧Vriseが負→正に反転する時点で発生するパルス電圧VpをOFF期間制御回路22Aに出力する。OFF期間制御回路22Aではこのパルス電圧Vpを入力することにより、ONタイミング電圧Vonが“H”になるタイミング、つまりスイッチングトランジスタMN1がONするタイミングが、補助巻線L3に電流が流れていないタイミング、つまり2次巻線L2に電流が流れていないタイミングに合うように、リタイミングを行う。
【0008】
出力電圧検出回路30は出力電圧Voutを検出し、その出力電圧Voutに比例した電流をホトカプラ40のホトダイオードPDに流す。よって、ホトカプラ40のホトトランジスタPTのホトカプラ電流Ipcは出力電圧Voutに比例した電流となる。
【0009】
また、電流源IB1用の電圧Vreg1は、電源電圧VDDを入力して安定化する電圧生成回路28で生成している。駆動回路24用の電圧Vreg2(>Vreg1)は電源電圧VDDを入力して安定化する電圧生成回路29で生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、
図7のスイッチング電源装置では、例えば2次巻線L2側の負荷が通常負荷(重負荷)から無負荷を含む軽負荷の状態に変化すると、出力電圧Voutが上昇してホトカプラ電流Ipcが増大する。このため、ON期間制御回路21Aから出力するOFFタイミング電圧Voffの出力タイミングが早くなり、スイッチングトランジスタMN1のON期間が短くなる。また、OFF期間制御回路22Aから出力するONタイミング電圧Vonの出力タイミングが遅くなり、スイッチングトランジスタMN1のOFF期間が長くなる。また、補助巻線L3に接続するダイオードD2とキャパシタC3の整流回路において、ダイオードD2の導通はトランジスタMN1と同じON期間とOFF期間となる。よって、電圧VriseをダイオードD2とキャパシタC3で整流平滑して生成される制御回路20Aの電源電圧VDDが低下する。無負荷ではさらに出力電圧Voutの低下が緩やかであり、この傾向が長く続く。特に、キャパシタC3の容量が小さいときは、電源電圧VDDの低下傾向は著しくなる。
【0012】
したがって、この電源電圧VDDを使用して生成される駆動回路24の電源電圧Vreg2が必要十分な電圧とならず、スイッチングトランジスタMN1を正常に駆動できなくなるという問題が起こる。また、制御回路20Aに電源電圧VDDの低電圧検出回路が装備されているときは、低電圧検出によって制御回路20A自体の動作が停止してしまう。
【0013】
本発明の目的は、2次巻線側が無負荷を含む軽負荷の状態になっても制御回路の電源電圧が低下することを防止したスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、スイッチングトランジスタと、該スイッチングトランジスタに直列接続されたセンス抵抗と、前記スイッチングトランジスタがONすることで入力電圧が印加する1次巻線、負荷が接続される2次巻線及び補助巻線を有するトランスと、前記2次巻線側の出力電圧に応じたホトカプラ電流を生成するホトカプラと、前記補助巻線に発生する電圧を整流平滑した電圧を電源電圧とする制御回路と、前記制御回路は前記センス抵抗に発生するセンス電圧と前記ホトカプラ電流によって前記スイッチングトランジスタのON/OFFを制御するスイッチング電源装置において、前記制御回路は、前記電源電圧を検出する電圧検出回路と、前記スイッチングトランジスタがONした後に前記スイッチングトランジスタをOFFさせるOFFタイミング信号を、前記ホトカプラ電流が大きいほど且つ前記センス電圧が大きいほど早いタイミングで生成するON期間制御回路と、前記スイッチングトランジスタがOFFした後に前記スイッチングトランジスタをONさせるONタイミング信号を、前記ホトカプラ電流が大きいほど遅いタイミングで生成するOFF期間制御回路と、前記ON期間制御回路から出力する前記OFFタイミング信号によって前記スイッチングトランジスタをOFFさせ、前記OFF期間制御回路から出力する前記ONタイミング信号によって前記スイッチングトランジスタをONさせる第1SRFF回路とを備え、前記OFF期間制御回路は、前記ホトカプラ電流が大きいほど遅いタイミングで第1信号を出力する第3コンパレータと、前記電源電圧の検出電圧が所定値を下回るとセットされて第2信号を出力し前記スイッチングトランジスタがONすると前記第2信号がリセットされる第2SRFF回路と、前記第3コンパレータから第1信号が出力し又は前記第2SRFF回路から前記第2信号が出力するとき前記ONタイミング信号を出力するゲート回路とを備え、前記電圧検出回路で検出した電源検出電圧が所定値を下回るとき、前記ONタイミング信号を強制的に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、負荷が通常負荷(重負荷)から軽負荷に変化して出力電圧が高くなりスイッチングトランジスタのスイッチングが行われなくなっても、制御回路の電源電圧が所定値を下回ると、スイッチングトランジスタが強制的にONに制御される。よって、補助巻線に強制的に電圧が発生するので、制御回路に供給される電源電圧が必要十分な値に保持され、軽負荷状態でのスイッチング周期長期化による制御回路の動作不能状態が発生することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例のスイッチング電源装置のブロック図である。
【
図2】
図1のスイッチング電源装置のON期間制御回路の回路図である。
【
図3】
図1のスイッチング電源装置のOFF期間制御回路の回路図である。
【
図4】
図1のスイッチング電源装置の反転検出回路の回路図である。
【
図5】
図1のスイッチング電源装置のタイムアウト回路の回路図である。
【
図6】
図1のスイッチング電源装置の通常負荷(重負荷)から軽負荷の状態に移行したときの動作波形図である。
【
図7】従来のスイッチング電源装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明の実施例のスイッチング電源装置の構成を示す。10は1次巻線L1、2次巻線L2、補助巻線L3を有するトランスである。1次巻線L1には、入力直流電圧VinがキャパシタC1で安定化されて入力し、その1次巻線L1に直列接続されたNMOSのスイッチングトランジスタMN1のON/OFF動作により生じる電磁エネルギーを、2次巻線L2と補助巻線L3に伝える。2次巻線L2には、ダイオードD1とキャパシタC2により整流平滑回路が構成され、そのキャパシタC2の電圧が出力電圧Voutとなる。補助巻線L3には、ダイオードD2とキャパシタC3により整流平滑回路が構成され、その整流平滑回路で電源電圧VDDが生成されている。
【0020】
20はスイッチングトランジスタMN1のON/OFFを制御する制御回路であり、上記の電源電圧VDDにより動作する。制御回路20において、21はスイッチングトランジスタMN1がONを継続している時間を制御してOFFタイミング電圧Voffを出力するON期間制御回路、22はスイッチングトランジスタMN1がOFFを継続している時間を制御してONタイミング電圧Vonを出力するOFF期間制御回路である。ON期間制御回路21は外付けのキャパシタC4を備える。OFF期間制御回路22は外付けのキャパシタC5を備える。
【0021】
23は第1SRFF回路であり、ON期間制御回路21から出力するOFFタイミング電圧Voffが“H”になることによりリセットされて、Q端子から出力する駆動電圧Vdrvを“L”にする。また、OFF期間制御回路22から出力するONタイミング電圧Vonが“H”になることによりセットされて、Q端子から出力する駆動電圧Vdrvを“H”にする。
【0022】
24は第1SRFF回路23のQ端子から出力する駆動電圧Vdrvを入力してスイッチングトランジスタMN1をON/OFFするゲート電圧Vgを生成する駆動回路であり、駆動電圧Vdrvが“H”のときゲート電圧Vgを“H”にして、スイッチングトランジスタMN1をONにさせ、駆動電圧Vdrvが“L”のときゲート電圧Vgを“L”にして、スイッチングトランジスタMN1をOFFにする。
【0023】
25はタイムアウト回路であり、第1SRFF回路23から出力する駆動電圧VdrvとON期間制御回路21から出力するOFFタイミング電圧Voffを取り込んで、OFFタイミング電圧Voffが発生してから駆動電圧Vdrvが“H”になるまでの時間(つまり、スイッチングトランジスタMN1のOFF期間)が所定時間Taを超えているとき、モード電圧Vmodeを無負荷を含む“軽負荷”を示す“H”に設定し、所定時間Taを超えるまでは、モード電圧Vmodeを“通常負荷”を示す“L”に設定して、ON期間制御回路21とOFF期間制御回路22に出力する。
【0024】
26は反転検出回路であり、補助巻線L3に発生する脈流電圧Vriseを抵抗R1を介して取り込んで、波形整形したパルス電圧Vpを生成し、OFF期間制御回路22に出力する。
【0025】
27は電圧検出回路であり、制御回路20に入力する電源電圧VDDを取り込んで、その電源電圧VDDが一定値Vaを下回ると、電源検出電圧Vdetが“H”になる。
【0026】
28は電源電圧VDDを取り込んで制御回路20の内部の各回路に供給する安定化電圧Vreg1を生成する電圧生成回路、29は電源電圧VDDを取り込んで制御回路20の駆動回路24に供給する安定化高電圧Vreg2(>Vreg1)を生成する電圧生成回路である。
【0027】
30は出力電圧Voutを検出する出力電圧検出回路であり、目標電圧との差分に応じた電流がホトカプラ40のホトダイオードPDに供給される。ホトダイオードPDと光学的に結合されたホトトランジスタPTは、ホトダイオードPDの発光量、つまり出力電圧Voutが目標電圧より高いほど大きなホトカプラ電流Ipcを生成して、制御回路20のON期間制御回路21とOFF期間制御回路22から引き抜く。
【0028】
図2にON期間制御回路21の詳細図を示す。ON期間制御回路21は、OFFタイミング電圧Voff1を出力するON期間第1制御回路211と、OFFタイミング電圧Voff2を出力するON期間第2制御回路212と、モード電圧Vmodeが“L”(通常負荷)のときOFFタイミング電圧Voff1を選択し、モード電圧Vmodeが“H”(軽負荷)のときOFFタイミング電圧Voff2を選択する選択回路213とを備える。
【0029】
ON期間第1制御回路211は、基準電圧Vref1の電圧源VB1と、バッファBF1と、抵抗R2と、駆動電圧Vdrvが“H”のときONするスイッチSW1と、センス電圧Vsを入力するバッファBF2と、抵抗R2とスイッチングSW1の共通点の電圧Vr2とセンス電圧Vsを比較するコンパレータCP1とを備える。
【0030】
そして、電圧Vr2は、スイッチングトランジスタMN1がOFFしているときには、スイッチSW1がOFFしていることにより、基準電圧Vref1となる。しかし、スイッチングトランジスタMN1がONすると、スイッチSW1がONすることによって、ホトカプラ電流Ipcが抵抗R2に流れるので、抵抗R2には「R2×Ipc」の電圧降下が生じて、電圧Vr2は以下のようになる。
Vr2=Vref1-R2×Ipc ・・・(1)
【0031】
この電圧Vr2がセンス電圧VsとコンパレータCP1で比較され、センス電圧Vsが電圧Vr2より大きくなったとき、OFFタイミング電圧Voff1を“H”にする。
【0032】
スイッチングトランジスタMN1がONしてからのセンス電圧Vsの変化は以下のようになる。Vinは入力電圧、L1は1次巻線L1のインダクタンス、tonはスイッチングトランジスタMN1のON期間である。
Vs=Rs×Vin/L1×ton ・・・(2)
【0033】
出力電圧Voutが高くなってホトカプラ電流Ipcが増えた場合は、電圧Vr2が低下するので、センス電圧Vsが電圧Vr2より大きくなり、コンパレータCP1から出力するOFFタイミング電圧Voff1が“H”にするまでの時間、つまりスイッチングトランジスタMN1がOFFするまでの時間(ON期間)は短くなる。
【0034】
また、式(2)により、センス電圧Vsの時間に対する変化は、入力電圧Vinの大きさに比例するので、ホトカプラ電流Ipcが一定の状態で入力電圧Vinが高くなるときも、ON期間が短くなる。
【0035】
このようにして、ON期間第1制御回路211は、ホトカプラ電流Ipcが大きいほど、かつセンス電圧Vsが高いほど、OFFタイミング電圧Voff1を“H”にするタイミングを早くして、スイッチングトランジスタMN1をそのONしている時間が短くなるように制御する。つまり、スイッチングトランジスタMN1のON期間は、出力電圧Voutが高いほど、入力電圧Vinが高いほど、センス電圧Vsが高いほど、短くなる。
【0036】
ON期間第2制御回路212は、駆動電圧Vdrvが“H”のときOFFするスイッチSW2と、電流Iref2を供給する電流源IB2と、外付けのキャパシタC4と、電圧源VB2により基準電圧Vref2が設定されたコンパレータCP2とを備える。
【0037】
そして、キャパシタC4の電圧Vc4は、駆動電圧Vdrvが“L”のときはスイッチSW2がONしているので0Vとなっているが、駆動電圧Vdrvが“H”になるとスイッチSW2がOFFするので、電流源IB2の電流Iref2により充電されて時間に比例して高くなり、電圧Vref2よりも高くなると、コンパレータCP2から出力するOFFタイミング電圧Voff2が“H”になる。
【0038】
つまり、ON期間第2制御回路212は、スイッチングトランジスタMN1がONしてから電圧Vc4が電圧Vref2に達するとOFFタイミング電圧Voff2を“H”にする。このON期間は、ON期間第1制御回路211から出力するOFFタイミング電圧Voff1の最も早いタイミングより、さらに早いタイミングとなる固定タイミングである。つまり、このときのON期間は固定時間であり最短時間である。
【0039】
このようにして、ON期間制御回路21はスイッチングトランジスタMN1を、負荷状態が“通常負荷”のときは、負荷状態(ホトカプラ電流Ipcやセンス電圧Vs)に応じて動的に設定されるOFFタイミング電圧Voff1によって、ONからOFFに切り替えるが、負荷状態が“軽負荷”のときは、OFFタイミング電圧Voff2によって、ONからOFFに切り替える。スイッチングトランジスタMN1のONタイミングからOFFタイミングに至るON期間は、“通常負荷”のときは負荷状態に応じて伸縮制御され、“軽負荷”のときは固定値となる。“軽負荷”のときの固定のON期間は、“通常負荷”のときの最低のON期間よりもさらに短いON期間である。つまり、“軽負荷”のときはON期間が最低値に固定される。
【0040】
選択回路213は、アンドゲート回路AND1,AND2と、オアゲート回路OR1と、インバータINV1とで構成されている。そして、モード電圧Vmodeが“L”(通常負荷)のときは、アンドゲート回路AND1がゲートを開いてON期間第1制御回路211の“H”のOFFタイミング電圧Voff1が選択されて、OFFタイミング電圧Voffとして出力する。また、モード電圧Vmodeが“H”(軽負荷)のときは、アンドゲート回路AND2がゲートを開いてON期間第2制御回路の“H”のOFFタイミング電圧Voff2が選択されて、OFFタイミング電圧Voffとして出力する。
【0041】
図3にOFF期間制御回路22の詳細図を示す。OFF期間制御回路22は、OFF期間設定回路221と、選択回路222とを備える。
【0042】
OFF期間設定回路221は、駆動電圧Vdrvが“H”のときONするスイッチSW3と、外付けのキャパシタC5と、モード電圧Vmodeが“H”(軽負荷)のときOFFするスイッチSW4と、モード電圧Vmodeが“H”(軽負荷)のときONするスイッチSW5と、電圧がVref3の電圧源VB3と、バッファBF3と、抵抗R3と、コンパレータCP3と、電圧がVref4の電圧源VB4と、第1DFF回路2211と、第2RSFF回路2212と、オアゲート回路OR2とを備える。第1DFF回路2211は、反転検出回路26のパルス電圧Vpの立ち上りに同期してコンパレータCP3の出力電圧V1をラッチし、ONタイミング電圧Von1として出力する。第2RSFF回路2212は電圧検出回路27からの電源検出電圧Vdetが“H”になることによってセットされてQ端子の出力を“H”にし、駆動電圧Vdrvが“H”になることによってQ端子を“L”に戻す。オアゲート回路OR2は、コンパレータCP3の出力信号が“H”、又は第2RSFF回路2212のQ端子が“H”のとき、ONタイミング電圧Von2を“H”にする。
【0043】
このOFF期間制御回路221では、駆動電圧Vdrvが“L”になってスイッチングトランジスタMN1がOFFになると、スイッチSW3がOFFになってキャパシタC5が電流源IB1の電流Ifer1によって充電され、キャパシタC5の電圧がVc5となる。この電圧Vc5は徐々に高くなり、モード電圧Vmodeが“L”(通常負荷)であれば、スイッチSW4がON、スイッチSW5がOFFしているので、この電圧Vc5がバッファBF3に入力し抵抗R3を経由してコンパレータCP3の非反転入力端子に入力する電圧がVr3となる。このとき流れるホトカプラ電流Ipcは、スイッチングトランジスタMN1のOFF時点からダイオードD1導通後に時間経過とともに小さくなるので、抵抗R3に発生する電圧降下が順次小さくなり、電圧Vr3が順次上昇することになる。
【0044】
そして、その電圧Vr3が基準電圧Vref4より高くなれば、コンパレータCP3から出力する第1信号V1が“H”になる、この第1信号V1は反転検出回路26から出力するパルス電圧Vpの立ち上りで第1DFF回路2211においてラッチされ、ONタイミング電圧Von1として出力する。このときのONタイミング電圧Von1の発生タイミングは、ホトカプラ電流Ipcが大きいほど遅くなり、OFF期間が長くなる。
【0045】
パルス電圧Vpの立ち上りのタイミングは、後記するように補助巻線L3で発生する脈動電圧Vriseが基準電圧Vref6より高くなるとき“H”になるので、スイッチングトランジスタMN1のドレイン電圧の自由振動の谷(脈動電圧Vriseの頂上)に該当するタイミングとなる。
【0046】
一方、モード電圧Vmodeが“H”(軽負荷)のときは、スイッチSW4がOFFし、スイッチSW5がONして、バッファBF3に電圧源VB3の電圧Vref3が入力し、抵抗R3を経由して電圧Vr3となる。この電圧Vr3はホトカプラ電流Ipcが時間経過とともに小さくなることで順次上昇し、基準電圧Vref4より高くなるとコンパレータCP3の出力である第1信号V1が“H”になる。このときの第1信号V1が“H”になるタイミングは、ホトカプラ電流Ipcが大きいほど遅くなるので、OFF期間が長くなる。また、制御回路20の電源電圧VDDが所定値Vaを下回り電圧検出回路27の電源検出電圧Vdetが“H”になったときは、ホトカプラ電流Ipcの値に関係なく第2RSFF回路2212がセットされてそのQ端子の第2信号V2が“H”となる。そして、第1信号V1又は第2信号V2が“H”になると、オアゲート回路OR2の出力電圧Von2が“H”になる。
【0047】
選択回路222は、アンドゲート回路AND3,AND4と、オアゲート回路OR3と、インバータINV3とで構成されている。そして、Vmode=L”(通常負荷)のときは、アンドゲート回路AND3がゲートを開いて第1DFF回路2211の出力電圧Von1を選択して、ONタイミング電圧Vonとして出力する。
【0048】
一方、Vmode=“H”(軽負荷)のときは、アンドゲート回路AND4がゲートを開いてオアゲート回路OR2の出力電圧Von2を選択して、ONタイミング電圧Vonとして出力する。このときは、パルス電圧Vpによるリタイミング制御は受けない。
【0049】
図4に反転検出回路26の詳細図を示す。反転検出回路26は、
図4に示すように、電圧Vref5の電圧源VB5と、NPNトランジスタQ1と、NPNトランジスタQ2と、電圧Vref6の電圧源VB6と、コンパレータCP4とを備える。トランジスタQ1は最低電圧規制回路を構成し、補助巻線L3にその●側が負極となる脈動電圧Vriseが発生したときコンパレータCP4の非反転入力端子の電圧を「Vref5-Vbe(Q1)」に制限する。Vbe(Q1)はトランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧である。トランジスタQ2は最高電圧規制回路を構成し、補助巻線L3にその●側が正極となる脈動電圧Vriseが発生したときコンパレータCP4の非反転入力端子の電圧をVbe(Q2)に制限する。Vbe(Q2)はトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧である。そして、脈動電圧Vriseが電圧源VB6の電圧Vref6を超えたとき、パルス電圧Vpを“H”にする。
【0050】
図5にタイムアウト回路25の詳細図を示す。タイムアウト回路25は、タイマ回路251と第2DFF回路252により構成されている。タイマ回路251は、OFFタイミング電圧Voffが“H”になるとタイムカウントを開始するとともに出力電圧Vtを“L”にし、所定時間Taだけカウントすると出力電圧Vtを“H”にする。第2DFF回路252は、第1SRFF回路23のQ出力電圧Vdrvが“H”の立ち上りタイミングで、タイマ回路251の出力電圧Vtが“H”であればQ端子の電圧Vmodeを“H”にし、“L”であれば“L”にする。
【0051】
したがって、タイマ回路251の出力電圧Vtが“H”のときに電圧Vdrvが“H”になると電圧Vmodeが“H”(軽負荷)になるが、この後、OFFタイミング電圧Voffが“H”になると、タイマ回路251の出力電圧Vtが“H”から“L”に変化する。そして、タイマ時間T1が経過する前に電圧Vdrvが“H”にならず、経過後に“H”になったときは、タイマ回路251の出力電圧Vtが“H”となっているので、第2DFF回路252のQ端子の電圧Vmodeが“H”(軽負荷)から変化しない。再度OFFタイミング電圧Voffが“H”になることでタイマ回路251の出力電圧Vtが“L”になり、その後タイマ時間T1が経過するまえに電圧Vdrvが“H”になれば、モード電圧Vmodeは“L”(通常負荷)になる。
【0052】
このようにして、電圧Vdrvが“H”になる間隔、つまりスイッチングトランジスタMN1のOFF期間がタイマ期間Taを超えるときは、モード電圧Vmodeが“H”になり、これはスイッチングトランジスタMN1の駆動周期が長い、つまり現在の運転状態が“軽負荷”であることを示す。一方、電圧Vdrvが“H”になる間隔がタイマ期間Ta以内のときは、モード電圧Vmodeが“L”になり、これはスイッチングトランジスタMN1の駆動周期が短い、つまり現在の運転状態が“通常負荷”であることを示す。
【0053】
さて、本実施例のスイッチング電源装置では、負荷が通常負荷(重負荷)から軽負荷の状態に変化すると、出力電圧Voutが上昇し、出力電流Ioutはゼロになる。出力電圧Voutが上昇するとホトカプラ電流Ipcが増加して、スイッチングトランジスタMN1が早期にOFFとなる。これにより出力電圧Voutが目標電圧に低下するまでホトカプラ電流Ipcは増加したままになる。このときは、出力電圧Voutがゆっくり低下してOFF時間が長くなり、電圧Vmodeが “H”(軽負荷)となる。スイッチングトランジスタMN1がOFFしている間は、制御回路20の消費電流によりキャパシタC3が放電されるので、制御回路20の電源電圧VDDは低下してゆく。
【0054】
そして、
図6の時刻t1で電源電圧VDDが電圧Vaを下回ると、電圧検出回路27の電源検出電圧Vdetが“H”となって、第2RSFF回路2212がセットされ、第2電圧V2が“H”となり、信号Von2が“H”となり、ONタイミング信号Vonが“H”となって、スイッチングトランジスタMN1がONに切り替えられる。これにより、出力電圧Voutが若干上昇することで、電源電圧VDDも上昇する。このときのスイッチングトランジスタMN1のON期間は、ON期間制御回路21のON期間第2制御回路212のキャパシタC4の電圧Vc4で決定されるが、このON期間は前記したように最短のON期間である。
【0055】
この後、一旦上昇した電源電圧VDDが時刻t2において再度電圧Vaを下回ると、同様にスイッチングトランジスタMN1が強制的にONになる。そして、出力電圧Voutが目標値まで低下して、ホトカプラ電流Ipcによる制御状態の範囲に入り、電源電圧VDDが電圧Va以上を保持するようになると、ON期間制御回路21のON期間第2制御回路212とOFF期間制御回路22のOFF期間設定回路221の電圧Vref3を使用した軽負荷動作のスイッチングに移行して、第1電圧V1を受ける電圧Von2がONタイミング電圧Vonとして選択されるようになる。
【0056】
これにより、軽負荷の状態になっても所定の周期で最低のON期間のスイッチングが継続されることになり、制御回路20の電源電圧VDDが必要十分な値に保持され、正常な電圧Vreg1,Vreg2が生成されることになる。
【0057】
以上から本実施例によれば、2次巻線側が軽負荷になっても1次側の制御回路20に要求される電源電圧VDDを十分な値に保持することができ、2次巻線側の軽負荷でスイッチング電源装置の動作が停止する事態を回避することができる。
【0058】
なお、スイッチングトランジスタMN1を強制的にONさせる場合は、そのON期間を電圧Vmodeが“H”(軽負荷)のときよりも更に短くしてもよい。この場合は、電源検出電圧Vdetが“H”になったときに、ON期間制御回路21のON期間第2制御回路の電流Iref2の値をより大きな値に切り替えたり、あるいは電圧Vref2をより低い値に切り替えれば良い。これにより、OFF期間も短くなり、スイッチング周期を短くして電源電圧VDDを早期に必要な電圧まで回復させることができる。
【符号の説明】
【0059】
10:トランス、L1:1次巻線、L2:2次巻線、L3:補助巻線
20,20A:制御回路、21,21A:ON期間制御回路、211:ON期間第1制御回路、212:ON期間第2制御回路、212A:ON期間第2制御回路、213:選択回路、22,22A:OFF期間制御回路、221:OFF期間設定回路、2212:第2RSFF回路、222:選択回路、23:第1SRFF回路、24:駆動回路、25:タイムアウト回路、26:反転検出回路、27:電圧検出回路、28,29:電圧生成回路
30:出力電圧検出回路
40:ホトカプラ