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特許7470181接合体、セラミックス銅回路基板、接合体の製造方法、およびセラミックス銅回路基板の製造方法
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  • 特許-接合体、セラミックス銅回路基板、接合体の製造方法、およびセラミックス銅回路基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】接合体、セラミックス銅回路基板、接合体の製造方法、およびセラミックス銅回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H05K3/38 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022508228
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021009040
(87)【国際公開番号】W WO2021187201
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020048222
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】米津 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】末永 誠一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 幸子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-121889(JP,A)
【文献】特開平8-139420(JP,A)
【文献】特開2007-66995(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021472(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/199060(WO,A1)
【文献】特開2011-97038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00―37/02
H01L 23/12―23/15
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板と、
接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、
を備えた接合体であって、
前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有し、
前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記個数割合は1%以下であることを特徴とする請求項1記載の接合体。
【請求項3】
前記3つの領域において、前記銅結晶粒の長径の平均値は、30μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項4】
前記3つの領域において、前記銅結晶粒の長径の平均値は、50μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項5】
前記3つの領域において、長径が平均範囲内である前記銅結晶粒の個数割合は、80%以上であり、
前記平均範囲は、前記3つの領域における前記銅結晶粒の長径の平均値の0.5倍以上2倍以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項6】
前記セラミックス基板のうねり曲線の算術平均高さWaが2μm以下、前記うねり曲線の最大断面高さWtが10μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項7】
前記接合層は、Ag、CuおよびTiを含有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項8】
前記セラミックス基板は、窒化珪素基板または窒化アルミニウム基板のいずれか一方であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の接合体を用いたことを特徴とするセラミックス銅回路基板。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の接合体の製造方法であって、
前記セラミックス基板と前記銅板との間に、前記接合層用のろう材を配置させる工程と、
接合温度が800℃以下である接合工程と、
を備えたことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項11】
前記接合温度は700℃以下であることを特徴とする請求項10記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
接合前の前記銅板の平均粒径をA(μm)、接合後の前記銅板の平均粒径をB(μm)としたとき、B/A≦10を満たすことを特徴とする請求項10ないし請求項11のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項13】
1.1≦B/A≦5を満たすことを特徴とする請求項12記載の接合体の製造方法。
【請求項14】
前記ろう材のDSC曲線において、最も大きな吸熱ピークが700℃以下にあることを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の接合体の製造方法と、
接合された前記銅板に回路構造を付与する工程と、
を備えたセラミックス銅回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、接合体、セラミックス銅回路基板、接合体の製造方法、およびセラミックス銅回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス基板と銅板の接合体は、半導体素子などを搭載する回路基板に用いられる。国際公開第2018/021472号公報(特許文献1)には、セラミックス基板と銅板を接合したセラミックス銅回路基板が開示されている。特許文献1では、Ag、Cu、Tiなどを含有するろう材が、接合層として用いられている。また、接合層のナノインデンテーション硬さを制御することにより、TCT特性を向上させている。特許文献1では、接合層中に、AgTi結晶、TiCなどを存在させることにより、ナノインデンテーション硬さを制御している。特許文献1では、ナノインデンテーション硬さを制御することにより、接合強度とTCT特性を向上させている。
特許文献1では、接合温度780~850℃の高温で、接合が行われている。接合温度が高いと、接合設備の負担が増加する。また、高温での接合は、セラミックス基板および銅板へ熱応力が掛かる。熱応力の負荷は、セラミックス銅回路基板のゆがみの原因となっていた。このため、より低い温度での接合が求められていた。
例えば、国際公開第2018/199060号公報(特許文献2)では、接合温度720~800℃で接合したセラミックス銅回路基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/021472号公報
【文献】国際公開第2018/199060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2での接合温度は、特許文献1での接合温度よりも低いため、熱応力を緩和できる。その一方で、それ以上の性能向上は実現できずにいた。例えば、セラミックス基板を大きくすると接合体の反り量が大きくなるといった課題が生じていた。その原因を追究したところ、その課題は、銅板の粒成長に起因することが分かった。本発明は、このような課題に対応するためのものである。本発明は、銅板の粒成長を抑制したセラミックス銅回路基板を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
セラミックス基板と、接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、を備えた接合体であって、前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有し、前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかる接合体の一例を示す図。
図2】銅板の結晶構造の一例を示す図。
図3】多数個取りを行うための一例を示す図。
図4】実施形態にかかるセラミックス銅回路基板の別の一例を示す図。
図5】実施形態にかかるセラミックス銅回路基板の一例を示す図である。
図6】実施形態にかかる半導体装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態にかかる接合体は、セラミックス基板と、接合層を介して前記セラミックス基板に接合された銅板と、を備える。前記銅板は、前記セラミックス基板と前記銅板とが接合された方向に垂直な表面を有し、前記表面に含まれる5mm×5mmの3つの領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、0%以上5%以下であることを特徴とする。
図1は、実施形態にかかる接合体の一例を示す。図1において、1は接合体である。2はセラミックス基板である。3は銅板(表銅板)である。4は銅板(裏銅板)である。5は接合層(表接合層)である。6は接合層(裏接合層)である。図1の例では、セラミックス基板の縦サイズおよび横サイズは、それぞれ、銅板の縦サイズおよび横サイズと同じである。
接合体1は、セラミックス基板2の両面に接合層5および接合層6をそれぞれ介して銅板3および銅板4を接合した構造を有している。便宜上、銅板3を表銅板、接合層5を表接合層と呼ぶ。また、銅板4を裏銅板、接合層6を裏接合層と呼ぶ。図1の例では、セラミックス基板の両面に、銅板が接合されている。実施形態にかかる接合体は、このような形状に限定されるものではない。銅板サイズは、適宜変更可能である。また、セラミックス基板の片面のみに、銅板が接合されていてもよい。
【0008】
図2は、銅板の結晶構造の一例を示す。図2において、3は銅板である。7は銅結晶粒である。銅板は多結晶体である。例えば、それぞれの銅結晶粒は、面心立方格子構造を有する。
銅結晶粒は、拡大写真にて観察される。拡大写真は、光学顕微鏡または走査電子顕微鏡(SEM)により撮影される。粒界が確認し難いときは、化学研磨またはエッチング処理が施されてもよい。倍率は、100倍以上に設定される。観察対象は、セラミックス基板と銅板とが接合された方向に垂直な銅板の表面である。化学研磨またはエッチング処理で除去される銅板の厚さは、当該接合方向における銅結晶粒1個分以下に設定される。銅結晶粒2個分以上の厚さが除去されると、いわゆる銅板表面でなくなるためである。つまり、銅板表面とは、セラミックス銅回路基板として用いる際の銅板表面を指す。銅結晶粒1個分以下の厚さとして、例えば10μm以下が設定される。
5mm×5mmを単位面積とし、単位面積5mm×5mmの領域を1つの観察領域とする。拡大写真において、単位面積5mm×5mmに写る銅結晶粒の長径を測定する。銅結晶粒の長径は、銅結晶粒の外縁上の2点間の距離のうち、最も長い距離に対応する。単位面積5mm×5mmにおいて、輪郭がすべて写っている銅結晶粒のみを測定対象とする。単位面積5mm×5mmの領域を3か所観察し、その合計の粒指数を測定する。粒指数とは、各領域における各銅結晶粒の長径を用いて個数割合を求めることにより得られる値である。互いに十分に離れた3つの領域が、観察領域として選定される。観察領域は、無作為に選定される。また、拡大写真の端部で輪郭が途切れている銅結晶粒は、測定対象に含めない。また、一視野で単位面積5mm×5mmを観察できないときは、互いに隣り合う複数の拡大写真をつなぎ合わせて5mm×5mmの写真を得てもよい。
実施形態にかかる接合体は、銅板表面の3つの観察領域において、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合が、0%以上5%以下であることを特徴とする。これは、長径が400μm以下の銅結晶粒7の個数割合が、95%以上であることを示す。
【0009】
長径が400μmを超える銅結晶粒は、熱処理に伴い粒成長した粗大粒である。接合層を介してセラミックス基板と銅板を接合する場合、銅板は800℃程度の高温にさらされる。銅板は、高温化で粒成長する。表面と平行な方向に粒成長が生じ、粗大粒が形成されると、接合体に反りが生じ易くなる。本願発明の発明者らは、表面において単位面積5mm×5mmに長径400μmを超える銅結晶粒が6%以上になると、反りが大きくなることを見出した。特に、接合体が大きくなると、反りが生じ易かった。実施形態にかかる接合体では、長径が400μmを超える銅結晶粒の個数が抑えられているため、反りを低減できる。
なお、表面に垂直な断面方向における粒成長は、接合体の反りに影響を与え難い。このため、銅板表面において前記個数割合が0%以上5%以下であれば、断面において長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合が5%を超えても良い。
長径が400μmを超える銅結晶粒の個数割合は、1%以下であることが好ましい。銅結晶粒7の長径は、300μm以下が好ましい。銅結晶粒7の長径が300μm以下と小さいと、反りの抑制効果がさらに向上する。
銅結晶粒の長径の下限値は、特に限定されない。好ましくは、長径は10μm以上である。銅結晶粒7のサイズが小さい銅板は、製造コストの増大を招く可能性がある。
【0010】
銅結晶粒7の長径の平均値は、30μm以上300μm以下が好ましい。
銅結晶粒7の長径の平均値は、3か所の単位面積5mm×5mmに写る銅結晶粒の長径の平均値である。1つの単位面積5mm×5mmにおいて、輪郭がすべて写っている銅結晶粒のみが測定対象として選定される。単位面積5mm×5mmを3か所観察し、測定対象である銅結晶粒の長径の平均を算出することで、平均値が得られる。平均値は、個数割合で算出される。例えば、長径がそれぞれ350μm、220μm、200μm、120μm、40μmの5個の銅結晶粒が観察されたとき、長径の平均値は186μm(=(350+220+200+120+40)÷5)である。
長径の平均値が30μm未満であると、銅結晶粒が小さすぎる。銅板が小さな結晶粒の集合体を含む場合、大きな結晶粒が存在したときの影響が大きくなる。また、長径の平均値が300μmを超えると、長径が400μmを超える銅結晶粒の数が増える可能性が高くなる。このため、長径の平均値は、30μm以上300μm以下、さらには50μm以上150μm以下が好ましい。
【0011】
また、長径が平均範囲内である銅結晶粒の個数割合は、80%以上であることが好ましい。平均範囲は、銅結晶粒の長径の平均値の0.5倍以上2倍以下である。小さな銅結晶粒または大きな銅結晶粒は、粒成長による局所的な応力の原因となり易い。このため、平均値に近いサイズの銅結晶粒の数が多いことが好ましい。従って、長径が平均範囲内である銅結晶粒の個数割合は、80%以上、さらには90%以上100%以下が好ましい。
平均値に対する個数割合は、粒径分布を測定することで判別できる。単位面積5mm×5mmに写る銅結晶粒の長径を測定する。単位面積5mm×5mmを3か所分測定し、粒度分布グラフを求める。または、拡大写真を画像解析して粒度分布グラフを得てもよい。
【0012】
また、セラミックス基板のうねり曲線の算術平均うねりWaが2μm以下、うねり曲線の最大断面高さWtが10μm以下、であることが好ましい。
うねり曲線とは、断面曲線にカットオフ値λfとλcの位相補償形フィルタをかけることにより得られる輪郭曲線である。うねり曲線は、JIS-B-0601(2013)(ISO4287)に準じて測定するものとする。
Waが2μm以下、Wtが10μm以下であるということは、セラミックス基板表面の凹凸が小さいことを示している。セラミックス基板表面の凹凸が大きいと、接合時の銅板への熱の伝わり方は部分的に異なってくる。部分的な熱の伝わり方が異なると、部分的な接合性に影響が生じる。セラミックス基板が大型化すると、反りの原因となり易い。
【0013】
セラミックス基板として、窒化珪素基板、窒化アルミニウム基板、酸化アルミニウム基板、アルジル基板などが挙げられる。
セラミックス基板の厚さは、0.1mm以上1mm以下が好ましい。基板厚さが0.1mm未満では、強度の低下を招く可能性がある。また、さが1mmより大きいとセラミックス基板が熱抵抗体となり、接合体の放熱性を低下させる可能性がある。
窒化珪素基板の3点曲げ強度は、600MPa以上であることが好ましい。また、窒化珪素基板の熱伝導率は、80W/m・K以上であることが好ましい。窒化珪素基板の強度を上げることにより、基板厚さを薄くできる。このため、窒化珪素基板の3点曲げ強度は、600MPa以上、さらには700MPa以上が好ましい。これにより、窒化珪素基板の基板厚さを0.40mm以下、さらには0.30mm以下と薄くできる。
窒化アルミニウム基板の3点曲げ強度は、300~450MPa程度である。その一方、窒化アルミニウム基板の熱伝導率は、160W/m・K以上である。窒化アルミニウム基板の強度は窒化珪素基板に比べて低いため、基板厚さは0.60mm以上が好ましい。
また、酸化アルミニウム基板の3点曲げ強度は300~450MPa程度であるが、酸化アルミニウム基板は安価である。また、アルジル基板の3点曲げ強度は550MPa程度と高いが、アルジル基板の熱伝導率は30~50W/m・K程度である。
セラミックス基板は、窒化珪素基板または窒化アルミニウム基板のいずれか一方であることが好ましい。窒化珪素基板または窒化アルミニウム基板は、後述する活性金属接合法を用いることにより、銅板との接合強度を高めることができる。特に、窒化珪素基板が好ましい。窒化珪素基板は高い強度を有するため、厚い銅板を窒化珪素基板に接合したとしても、優れた信頼性を得ることができる。
【0014】
接合層は、活性金属を含有することが好ましい。活性金属は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、およびHf(ハフニウム)から選ばれる1種である。活性金属を含有したろう材を、活性金属ろう材と呼ぶ。また、活性金属ろう材を使った接合方法は、活性金属接合法と呼ばれている。活性金属ろう材をセラミックス基板と銅板の間に配置し、熱処理を行うことにより接合体が得られる。接合体が得られた後は、活性金属ろう材は接合層となる。また、活性金属としては、Tiが好ましい。Tiは、ZrやHfよりも活性な金属である。また、Tiのコストは、ZrおよびHfに比べて安い。活性金属は、金属単体に限らず、化合物または合金としてろう材に添加されてもよい。化合物としては、水素化物、酸化物、窒化物などが挙げられる。
また、活性金属ろう材は、活性金属以外の成分として、Ag(銀)、Cu(銅)、Sn(錫)、In(インジウム)、およびC(炭素)から選ばれる1種または2種以上を含有していることが好ましい。AgまたはCuは、ろう材の母材となる成分である。SnまたはInは、ろう材の融点を下げる効果を有する。Cは、ろう材の流動性を制御したり他の成分と反応して接合層の組織を制御したりする効果を有する。このため、ろう材の成分としては、Ag-Cu-Ti、Ag-Cu-Sn-Ti、Ag-Cu-Ti-C、Ag-Cu-Sn-Ti-C、Ag-Ti、Cu-Ti、Ag-Sn-Ti、Cu-Sn-Ti、Ag-Ti-C、Cu-Ti-C、Ag-Sn-Ti-C、Cu-Sn-Ti-Cが挙げられる。また、Snの代わりにInが用いられてもよい。SnとInの両方が用いられてもよい。SnおよびInの代わりに、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)、Ga(ガリウム)などの低融点金属が用いられてもよい。
【0015】
活性金属ろう材の組成について、Ag(銀)は0質量%以上75質量%以下、Cu(銅)は15質量%以上85質量%以下、Ti(チタン)またはTiH(水素化チタン)は1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。TiとTiHの両方が用いられる場合は、これらの合計が1~15質量%の範囲内であることが好ましい。AgとCuの両方が用いられる場合は、Agが20~60質量%、Cuが15~40質量%であることが好ましい。
ろう材は、必要に応じて、Sn(錫)またはIn(インジウム)の1種または2種を、1質量%以上50質量%以下含有してもよい。TiまたはTiHの含有量は、1~15質量%であることが好ましい。また、ろう材は、必要に応じ、C(炭素)を0.1質量%以上2wt%以下含有してもよい。
活性金属ろう材の組成の比率は、混合する原料の合計を100質量%として算出される。例えば、Ag、Cu、およびTiの3種でろう材が構成される場合、Ag+Cu+Ti=100質量%である。Ag、Cu、TiH、およびInの4種でろう材が構成される場合、Ag+Cu+TiH+In=100質量%である。Ag、Cu、Ti、Sn、Cの5種でろう材が構成される場合、Ag+Cu+Ti+Sn+C=100質量%である。
【0016】
また、接合層は、Ag、CuおよびTiを含有することが好ましい。接合層がAg、CuおよびTiを含むということは、活性金属ろう材がAg、CuおよびTiを含んでいることを示す。Ag-Cu-Ti系ろう材は、接合強度を向上させる。また、Ag-Cu-Ti-Sn系ろう材は、ろう材の融点を下げることができるので、接合温度を下げることができる。
接合温度を700℃以下にすることで、銅板へのAgの拡散量を抑制できる。銅板の表面に、Agが拡散することを抑制できる。また、接合温度を700℃以下にすることで、Agは、主に銅板の結晶粒界に拡散する。これにより、拡散したAgが、銅板のエッチングを阻害することを抑制できる。
【0017】
次に、接合体の製造方法について説明する。実施形態にかかる接合体は、上記構成を有していれば、その製造方法は限定されない。ここでは、歩留まり良く接合体を得るための方法として、次の例を挙げる。
実施形態にかかる接合体の製造方法は、セラミックス基板と銅板との間に接合層用のろう材を配置させる工程と、接合温度が800℃以下である接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
まず、セラミックス基板上に、接合層用のろう材を介して銅板を配置する工程を行う。ろう材は、前述の活性金属ろう材である。活性金属ろう材は、Tiなどの活性金属を含むろう材である。活性金属は、水素化物などの活性金属化合物として添加されてもよい。活性金属ろう材は、活性金属以外の成分として、Ag(銀)、Cu(銅)、Sn(錫)、In(インジウム)、およびC(炭素)から選ばれる1種または2種以上を含有していることが好ましい。
【0019】
まず、必要な成分を混合する工程を行うことで、活性金属ろう材ペーストを調製する。ペーストを得るには、バインダーや溶媒と混合することが有効である。
活性金属ろう材ペーストを、セラミックス基板または銅板の少なくとも一方に塗布する。活性金属ろう材ペーストの厚さは、5μm以上60μm以下が好ましい。活性金属ろう材ペーストの厚さとは、塗布したペーストを乾燥させた後の厚さである。厚さが5μm未満では、接合強度が低下する可能性がある。また、60μmを超えて厚いと、接合工程での熱応力が大きくなり、接合体の反りが大きくなる可能性がある。このため、活性金属ろう材ペーストの厚さは、5μm以上60μm以下、さらには10μm以上50μm以下が好ましい。
【0020】
活性金属ろう材ペーストを一方に塗布する工程を行った後、ペーストが塗布されていない他方を、一方に載せる工程を行う。例えば、セラミックス基板に活性金属ろう材ペーストを塗布した場合、活性金属ろう材ペーストを介してセラミックス基板に銅板を載せる工程が行われる。セラミックス基板の両面に活性金属ろう材ペーストが塗布され、両面に銅板が配置されてもよい。銅板に活性金属ろう材ペーストが塗布され、活性金属ろう材ペーストを介して銅板の上にセラミックス基板を配置してもよい。
【0021】
次に、接合温度が800℃以下である接合工程を行う。接合温度とは、接合工程において一定時間保持された温度のうち、最高の温度を指す。接合温度が高いと、銅板を構成する銅結晶粒の粒成長が促進される。従来の活性金属接合法では、接合温度が850℃程度であった。接合温度が800℃を超えると、銅板の粒成長が大きくなる。銅板の粒成長が大きいと、長径が400μmを超えた大きな銅結晶粒が生成され易くなる。
接合温度は、800℃以下、さらには700℃以下が好ましい。なお、接合温度の下限は、特に限定されないが、500℃以上が好ましい。接合温度が低いと、接合の信頼性が低下する可能性がある。このため、接合温度は、500℃以上800℃以下、さらには550℃以上700℃以下が好ましい。また、接合温度の保持時間は、60分以下、さらには30分以下が好ましい。保持時間の下限は、特に限定されないが、1分以上であることが好ましい。1分未満では、Ag拡散が不十分となり接合性が安定しない可能性がある。
【0022】
また、接合前の銅板の平均粒径をA(μm)、接合後の銅板の平均粒径をB(μm)としたとき、B/A≦10を満たすことが好ましい。また、1.1≦B/A≦5を満たすことがさらに好ましい。
B/A≦10であるということは、接合前後での粒成長の割合が10倍以下であることを示している。粒成長とは、熱により銅板の銅結晶粒が大きくなる現象である。粒成長は、個々の銅結晶粒が大きくなっていくため、応力が発生する。B/Aが10倍を超えて大きいと、応力が大きくなり過ぎて接合体の反りが生じ易くなる。このため、B/AはB/A≦10、さらには1.1≦B/A≦5を満たすことが好ましい。
平均粒径Aは、以下の方法により算出できる。接合前の銅板の表面に含まれる、単位面積5mm×5mmの3つの領域を観察する。各領域において、測定対象である銅結晶粒を選定する。選定された各同結晶粒の長径を測定する。各長径の平均を算出することで、平均粒径が得られる。
平均粒径Bは、前述した通り、単位面積5mm×5mmの3つの領域を観察した結果から得られる長径の平均値である。
【0023】
接合用ろう材について、DSC曲線における最も大きな吸熱ピークが700℃以下であることが好ましい。粒成長を抑制するには、接合温度を800℃以下にすることが有効である。このためには、ろう材の融点が700℃以下であることが有効である。好ましくは、ろう材の融点は550℃以上700℃以下である。
【0024】
DSC曲線とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、吸熱反応や発熱反応のピークを測定して得られる曲線である。マイナス方向のピークは、吸熱反応が生じていることを示す。プラス方向のピークは、発熱反応が生じていることを示す。
DSC曲線は、昇温工程、一定の温度での保持工程、および降温工程からなる温度プロファイルを通して測定される。この温度プロファイルにおいて、昇温工程は、常温から500℃まで、昇温速度5℃/minで昇温させる。次に、昇温工程は、500℃を60分保持する。次に、昇温工程は、昇温速度5℃/minで845℃まで昇温させる。その後、保持工程は、845℃の温度を30分保持する。降温工程は、845℃から常温まで、降温速度5℃/minにて降温させる。
DSCとしては、NETZSCH社製TGA-DSC同時熱分析装置STA449-F3-Jupiterまたはこれと同等の性能を有する装置を用いることができる。また、測定は、アルミナ容器にろう材を適量滴下してAr(アルゴン)フロー中で行われる。Ar雰囲気中で測定することにより、ろう材と雰囲気が反応するのを防ぐことが必要である。また、Arフローの流量は、試料側20ml/分、冷却側200ml/分に設定される。
SC曲線の昇温工程の中で、550℃以上800℃以下の温度範囲にある最も大きな吸熱ピークの検出温度を融点とみなす。ろう材の融点が700℃以下であるということは、最も大きな吸熱ピークが550~700℃の範囲内に存在することを示している。なお、550℃未満にマイナス方向のピークがあったとしても、吸熱ピークにカウントしなくてよい。この吸熱反応は、活性金属ろう材の融解、分解などに起因する。例えば、活性金属として水素化チタン(TiH)を用いた場合、500℃前後にマイナス方向のピークが検出される。このピークは、TiHがTiとHに分解するときに生じる吸熱反応を示す。このため、550℃以上800℃以下の温度範囲にある最も大きな吸熱ピークの検出温度を融点とみなす。
【0025】
活性金属ろう材の融点は、550℃以上700℃以下の範囲内、さらには550℃以上650℃以下の範囲内であることが好ましい。融点を下げることにより、銅結晶粒の粒成長を抑制できる。これにより、B/A≦10、さらには1.1≦B/A≦5を実現できる。
【0026】
活性金属ろう材の融点を制御するには、組成、原料粉末の粒径などを制御することが有効である。前述のように、SnまたはInは、ろう材の融点を下げる効果がある。ろう材を構成する成分の中で、SnまたはInの粉末粒径を最も大きくすることが有効である。例えば、Ag-Cu-Sn-Tiろう材を用いるとき、Ag粉末、Cu粉末、Sn粉末、Ti粉末の中でSn粉末の粒径を最も大きくする。Snは、他のろう材成分と反応し易い元素である。Sn粉末の粒径を大きくすることにより、Sn粉末が他の成分と接触し易くなる。これにより、ろう材の融点を下げることができる。Snの代わりにInを用いても同様である。融点を下げる効果のある成分の粒径を、他の成分の粒径よりも大きくすることが有効である。また、接合温度の低温化は、接合設備の負荷を減らすことができる。
【0027】
銅板としては、純銅板や銅合金板を用いることができる。銅板は、無酸素銅であることが好ましい。無酸素銅は、JIS-H-3100に示されたように、銅純度99.96wt%以上である。また、接合前の銅板において、銅結晶粒の長径の平均値は、10μm以上200μm以下が好ましい。長径の平均値が10μm未満では、粒成長し易い微細な銅結晶粒が増える可能性がある。また、平均値が200μmを超えると、接合後に、長径が400μmを超える銅結晶粒の数が増える可能性がある。このため、接合前の長径の平均値は、10μm以上200μm以下、さらには20μm以上150μm以下が好ましい。接合前の長径の平均値は、加工率などを変えることにより調製できる。なお、加工率は、加工前の材料の断面積と加工後の断面積の差を、加工前の材料の断面積で割った百分率(%)で表される。
【0028】
以上の工程により、セラミックス基板と銅板を接合した接合体を製造することができる。接合温度を800℃以下と接合することにより、銅結晶の粒成長を抑制できる。これにより、接合体を大型化したとしても、反り量を低減できる。接合体を大型化すると、多数個取りを行うことができる。多数個取りとは、大型の接合体を切断して小さな接合体を得る方法である。接合体を分割する方法またはセラミックス銅回路基板を分割する方法もある。分割し易くするために、スクライブ加工が施されてもよい。実施形態によれば、セラミックス基板2のサイズが縦200mm以上、横200mm以上と大型化したとしても、接合体の反り量を0.1mm以下に低減できる。また、接合温度を700℃以下とすることにより、銅板中のAgの拡散量を抑制できる。
【0029】
図3は、多数個取りを行うための接合体の一例を示す。図3において、1は接合体、8はスクライブラインである。スクライブライン8は、分割溝である。分割溝は、ドット状、ライン状など様々である。また、分割溝は、一方の面にのみ設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。スクライブライン8は、レーザ加工などによって形成される。図3は、接合体1を4つに分割するためのスクライブライン8を設けた例を示している。スクライブライン8を設ける条件は、この例に限定されず、適宜変更可能である。大型のセラミックス銅回路基板を分割し、小型のセラミックス銅回路基板を得てもよい。すなわち、接合体に対して多数個取りが行われてもよいし、セラミックス銅回路に対して多数個取りが行われてもよい。多数個取りは量産性の良い方法である。
【0030】
また、接合体1の銅板に回路構造を付与することにより、セラミックス銅回路基板が製造される。回路構造の付与には、エッチング工程が有効である。図4は、回路構造が付与されたセラミックス銅回路基板1aの一例を示す。図4では、回路構造に加工された表銅板3が例示されている。実施形態は、このような形態に限定されず、必要な回路構造を適用できる。または、上述した接合体の製造において、回路構造に加工された銅板が、セラミックス基板に接合されても良い。この場合、接合体としてセラミックス銅回路基板が得られる。また、銅板の側面には、傾斜構造が付与されてもよい。また、銅板の側面から接合層がはみ出た構造が付与されてもよい。
【0031】
図5は、実施形態にかかるセラミックス銅回路基板の一例を示す図である。
セラミックス基板には、貫通孔が設けられていても良い。セラミックス銅回路基板は、表の銅板と裏の銅板が貫通孔を介して導通した構造を有することが好ましい。図5は、貫通孔を有するセラミックス銅回路基板の一例を示す。図5は、貫通孔が設けられた部分における断面図である。図5において、1aはセラミックス銅回路基板である。2は窒化珪素基板である。3は表銅板である。4は裏銅板である。5、6は接合層である。9は貫通孔である。図5では、貫通孔9を介して、表銅板3と裏銅板4が導通している。図5では、複数の貫通孔9が、それぞれ、複数の表銅板3と複数の裏銅板4を接続している。実施形態は、このような構造に限定されない。セラミックス銅回路基板1aにおいて、複数の表銅板3の一部に対してのみ貫通孔9が設けられていても良い。複数の裏銅板4の一部に対してのみ貫通孔9が設けられていても良い。貫通孔9の内部には、接合層5または6と同じ材料が充填されることが好ましい。貫通孔9の内部の構造は、表銅板と裏銅板を導通できれば、特に限定されない。このため、貫通孔9内壁にのみ金属薄膜が設けられていても良い。一方、接合層5または6と同じ材料を充填することにより、接合強度を向上させることができる。
【0032】
図6は、実施形態にかかる半導体装置の一例を示す図である。
実施形態にかかるセラミックス銅回路基板は、半導体装置に好適である。半導体装置では、セラミックス銅回路基板の銅板に、接合層を介して半導体素子が実装される。図6は、半導体装置の一例を示す。図6において、1aはセラミックス銅回路基板である。10は半導体装置である。11は半導体素子である。12は接合層である。13はワイヤボンディングである。14は金属端子である。図6では、セラミックス銅回路基板1aの銅板上に接合層12を介して、半導体素子11が接合されている。同様に、接合層12を介して、金属端子14が接合されている。隣り合う銅板同士が、ワイヤボンディング13で導通されている。図6では、半導体素子11の他に、ワイヤボンディング13と金属端子14が接合されている。実施形態にかかる半導体装置は、このような構造に限定されない。例えば、ワイヤボンディング13と金属端子14はどちらか一方のみが設けられていても良い。半導体素子11、ワイヤボンディング13、および金属端子14は、表銅板3にそれぞれ複数個設けても良い。裏銅板4には、半導体素子11、ワイヤボンディング13、および金属端子14を必要に応じ接合できる。金属端子14には、リードフレーム形状、凸型形状など様々な形状が適用できる。
実施形態にかかる接合体を、上述したセラミックス銅回路基板または半導体装置に用いることで、これらの反りを低減できる。
【0033】
(実施例)
(実施例1~7、比較例1~3)
セラミックス基板として表1に示した窒化珪素基板または窒化アルミニウム基板を用意した。
【0034】
【表1】
【0035】
次に、表2に示す銅板を用意した。銅板は、いずれも無酸素銅である。
【0036】
【表2】
【0037】
次に、表3に示す活性金属ろう材を用意した。活性金属ろう材1~3では、Sn粉末の粒径が最も大きい。活性金属ろう材4では、Ag粉末の粒径が最も大きい。また、ろう材の融点は、前述に示した通りDSC曲線を測定して得られた値である。
【0038】
【表3】
【0039】
次に、セラミックス基板、銅板、活性金属ろう材を用いて接合工程を行った。銅板の縦横サイズは、セラミックス基板に合わせた。また、接合工程では、10-3Pa以下の真空中で、10~30分間、接合温度を保持した。各素材の組合せは、表4に示した通りである。
【0040】
【表4】
【0041】
得られた接合体について、銅板の銅結晶粒の長径、接合体の反り量、および接合強度を測定した。
長径については、銅板の表面をエッチング処理した後に、SEM観察を行った。SEM観察では、単位面積5mm×5mmの領域を任意に3か所観察した。観察された銅結晶粒の長径を測定した。また、銅結晶粒の長径の平均値からのずれは、単位面積5mm×5mmを任意の3か所観察した結果から算出した。
接合体の反り量としては、長辺側の反り量を測定した。接合体の側面から、セラミックス基板の反り量を測定する。セラミックス基板の長辺の端部と端部を直線で結ぶ。その直線とセラミックス基板表面の最も遠い位置を反り量とした。長辺側の反り量が0.1mm以下の実施例は良品(〇)、0.1mmを超えた実施例は不良品(×)と表示されている。
接合強度は、ピール試験により測定した。具体的には、各実施例および比較例の接合条件を用いて、ピール試験用試料を用意した。試料は、セラミックス基板に短冊状の銅板を接合した。その際、銅板の一端がセラミックス基板からはみ出るように接合した。はみ出た銅板を垂直に引っ張ることで、ピール強度を測定した。
接合強度が、20kN/m以上の実施例は、最良品(◎)と表示されている。15kN/m以上20kN/m未満の実施例は、良品(〇)と表示されている。14kN/m以下の実施例は、不良品(×)と表示されている。
その結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
表から分かる通り、実施例にかかる接合体は、銅板の銅結晶粒が制御されていた。また、反り量、接合強度についても、良好な結果が得られた。これは、接合温度を800℃以下、さらには700℃以下にしても、十分な強度を有する接合体が得られることを示している。また、実施例3については、窒化珪素基板のWa、Wtが好ましい範囲から外れているため、接合強度が低下した。
それに対し、比較例3のように、融点が高いろう材で接合温度を下げても、接合体が得られなかった。また、比較例1および比較例2では、接合温度が800℃を超えているため、銅結晶の粒成長の度合いが大きかった。このため、接合体の反り量が大きくなった。
以上のように、実施例によれば、セラミックス基板のサイズを大きくしても、接合体の反り量を低減できる。また、接合強度が高い接合体を得ることができる。セラミックス基板のサイズを大きくできるため、多数個取りに適した接合体を得ることができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態はその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6