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特許7470262二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法
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  • 特許-二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-09
(45)【発行日】2024-04-17
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240410BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240410BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240410BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240410BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
B01D53/14 200
B01D53/18 110
B01D53/62
B01D53/78
C01F11/18 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023567252
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012265
(87)【国際公開番号】W WO2023190372
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022052024
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】早川 康之
(72)【発明者】
【氏名】八木 利之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
(72)【発明者】
【氏名】寺前 剛
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148432(JP,A)
【文献】特開2009-136770(JP,A)
【文献】特開平07-031985(JP,A)
【文献】特開2009-279552(JP,A)
【文献】特開2021-138574(JP,A)
【文献】特開2006-069860(JP,A)
【文献】特開2007-190538(JP,A)
【文献】特開2014-117636(JP,A)
【文献】特開2021-050124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0017035(US,A1)
【文献】特開2010-076976(JP,A)
【文献】特表2011-524253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/62
B01D 53/80
B01J 20/02
B09B 3/00- 3/80
C01F 11/18
C02F 11/00-11/20
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されているコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し固液分離をすることなく撹拌しつつ加水した第一中間体を得る加水手段と、
前記第一中間体に対し固液分離をすることなく二酸化炭素を含むガスを供給して第二中間体を得る供給手段と、
前記第二中間体を水切りして、炭酸カルシウムの結晶である軽質炭酸カルシウムと、セメント粒子のカルシウム成分がこのセメント粒子の表面に炭酸塩化したセメント分炭酸塩化粉体と、未反応のセメント粒子と、を含む粉体を製造する水切り手段と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項2】
加水手段は、コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されている水セメント比が略1のコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し、その重量の4倍以上15倍以下の水を加える
ことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項3】
水切り手段は、第二中間体をこの第二中間体の自重により水切りする
ことを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置。
【請求項4】
コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されているコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し固液分離をすることなく撹拌しつつ加水した第一中間体を得る加水工程と、
前記第一中間体に対し固液分離をすることなく二酸化炭素を含むガスを供給することで第二中間体を得る供給工程と、
前記第二中間体を水切りして、炭酸カルシウムの結晶である軽質炭酸カルシウムと、セメント粒子のカルシウム成分がこのセメント粒子の表面に炭酸塩化したセメント分炭酸塩化粉体と、未反応のセメント粒子と、を含む粉体を製造する水切り工程と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素固定化方法。
【請求項5】
加水工程では、コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されている水セメント比が略1のコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し、その重量の4倍以上15倍以下の水を加える
ことを特徴とする請求項4記載の二酸化炭素固定化方法。
【請求項6】
水切り工程では、第二中間体をこの第二中間体の自重により水切りする
ことを特徴とする請求項4または5記載の二酸化炭素固定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラッジから粉体を製造する二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジ(セメントスラリー)のカルシウム分に二酸化炭素を反応させて、炭酸カルシウムを得る二酸化炭素固定化装置が知られている(例えば、特許文献1ないし3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5072090号公報
【文献】特許第4892520号公報
【文献】特開2010-76976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の各特許文献に記載された構成の場合、高純度の炭酸カルシウムを得ることができるものの、製造工程が複雑であり、コストが掛かるとともに、生産量の増加が容易でない。特に、炭酸カルシウムは、低純度であっても、その用途によっては十分に要求品質を満たす場合があるため、必要以上の高純度のものでなくとも、安価で大量に生産できるものが求められる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、二酸化炭素を安価に固定化できるとともに、二酸化炭素を固定化した粉体を安価に大量生産できる二酸化炭素固定化装置及び二酸化炭素固定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の二酸化炭素固定化装置は、コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されているコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し固液分離をすることなく撹拌しつつ加水した第一中間体を得る加水手段と、前記第一中間体に対し固液分離をすることなく二酸化炭素を含むガスを供給して第二中間体を得る供給手段と、前記第二中間体を水切りして、炭酸カルシウムの結晶である軽質炭酸カルシウムと、セメント粒子のカルシウム成分がこのセメント粒子の表面に炭酸塩化したセメント分炭酸塩化粉体と、未反応のセメント粒子と、を含む粉体を製造する水切り手段と、を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1記載の二酸化炭素固定化装置において、加水手段は、コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されている水セメント比が略1のコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し、その重量の4倍以上15倍以下の水を加えるものである。
【0008】
請求項3記載の二酸化炭素固定化装置は、請求項1または2記載の二酸化炭素固定化装置において、水切り手段は、第二中間体をこの第二中間体の自重により水切りするものである。
【0009】
請求項4記載の二酸化炭素固定化方法は、コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されているコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し固液分離をすることなく撹拌しつつ加水した第一中間体を得る加水工程と、前記第一中間体に対し固液分離をすることなく二酸化炭素を含むガスを供給することで第二中間体を得る供給工程と、前記第二中間体を水切りして、炭酸カルシウムの結晶である軽質炭酸カルシウムと、セメント粒子のカルシウム成分がこのセメント粒子の表面に炭酸塩化したセメント分炭酸塩化粉体と、未反応のセメント粒子と、を含む粉体を製造する水切り工程と、を備えるものである。
【0010】
請求項5記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項4記載の二酸化炭素固定化方法において、加水工程では、コンクリート二次製品製造段階で粗骨材及び細骨材が除去されている水セメント比が略1のコンクリートスラッジであるセメントペーストスラッジに対し、その重量の4倍以上15倍以下の水を加えるものである。
【0011】
請求項6記載の二酸化炭素固定化方法は、請求項4または5記載の二酸化炭素固定化方法において、水切り工程では、第二中間体をこの第二中間体の自重により水切りするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化炭素を固定化した、軽質炭酸カルシウムと、セメント分炭酸塩化粉体と、セメント分炭酸塩化未反応粉体と、を含む粉体を安価に大量生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態の二酸化炭素固定化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図1を参照して説明する。
【0015】
図1において、1は二酸化炭素固定化装置である。二酸化炭素固定化装置1は、原素材となるコンクリートスラッジ2を用い、二酸化炭素を固定化した乾燥状態の粉体3を製造する粉体製造装置である。
【0016】
コンクリートスラッジ2は、コンクリート二次製品製造時に発生するコンクリートスラッジである。コンクリート二次製品とは、セメント、水、細骨材、粗骨材、混和材からなるコンクリート材料を固化させた、例えばコンクリート柱、コンクリート杭等の製品をいう。特に、コンクリートスラッジ2は、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程にて発生するものである。遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジは、品質的にモルタルスラッジ、さらにはセメントペーストスラッジと同等のものである。そのため、コンクリートスラッジ2及び粉体3は、粗骨材及び細骨材が除去されている。本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1で製造される粉体3は、粒子径0.5mm以上の骨材(石粉等)を含んでいない。粉体3は、二酸化炭素を固定化した二酸化炭素固定化粉体であって、かつ、二酸化炭素吸着機能を有する二酸化炭素吸着材である。
【0017】
コンクリートスラッジ2は、セメント由来のカルシウム(Ca)分を豊富に含む、高アルカリ性の材料である。当該カルシウム分が二酸化炭素の吸着に有効な成分である。
【0018】
また、本実施の形態で用いられるコンクリートスラッジ2は、水セメント比(W/C)が略1である。例えば、コンクリートスラッジ2は、成分比が、セメント分49.9%、水49.9%、及び、微細砂分0.2%のものである。
【0019】
なお、コンクリートスラッジ2は、コンクリート二次製品工場で発生するコンクリートスラッジ、あるいは、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)について、粗骨材及び細骨材を分離したものを用いてもよい。すなわち、コンクリートスラッジ2は、いずれもフレッシュコンクリートの余剰分である。そして、コンクリートスラッジ2は、加熱処理や乾燥処理を経ることなく、そのまま常温の範囲で使用される。
【0020】
二酸化炭素固定化装置1は、加水手段5を備える。加水手段5は、非加熱のコンクリートスラッジ2に対して撹拌しつつ水WIを加えることで、第一中間体6を得るものである。一例として、加水手段5は、溶出槽8と、溶出槽8に設置された撹拌手段9と、を有する。撹拌手段9としては、例えば回転翼が用いられる。コンクリートスラッジ2の重量に対して、加水量が小さいほど二酸化炭素の吸着量の効率は高く、加水量が多いほど水和反応による強度発現が抑制される。本実施の形態において、加水手段5では、コンクリートスラッジ2の重量の4倍以上15倍以下の水WIが加えられる。加水量がコンクリートスラッジ2の重量の4倍未満の場合、コンクリートスラッジ2の粘着性が高くなり、15倍より大きい場合、カルシウムイオン濃度が下がり、それぞれ二酸化炭素の吸着効率が低下する。そのため、例えば加水量がコンクリートスラッジ2の重量の10倍の場合には、第一中間体6の成分比は、セメント5%、水95%、微細砂分0%となる。
【0021】
また、二酸化炭素固定化装置1は、供給手段11を備える。供給手段11は、加水手段5と直接接続され、加水手段5から直接得た第一中間体6に対し二酸化炭素を含むガスGを供給することで、第二中間体12を得るものである。一例として、供給手段11は、反応槽14と、反応槽14に設置されたガス供給手段15と、を有する。
【0022】
反応槽14は、例えば竪型サイロとも呼ばれ、上下方向に長手状に形成されている。反応槽14には、加水手段5の溶出槽8から排出部16を介して第一中間体6が上部から投入される。本実施の形態において、反応槽14は、外面が円筒状の反応槽本体部17と、外面が円錐状の縮小部18と、を上下に一体的に有し、軸方向を上下方向に沿わせて配置されている。反応槽本体部17は、一定または略一定の径寸法を有する円筒状である。縮小部18は、反応槽本体部17の下部に同軸状に連なり、下方に向かって縮径している。
【0023】
ガス供給手段15は、ガスG中の二酸化炭素をコンクリートスラッジ2のカルシウム分に反応させることで、炭酸カルシウムを生成させ、二酸化炭素を固定化させるものである。ガス供給手段15は、ガス供給源と接続された配管、バルブ、及び、ノズルなどを有する。ガス供給手段15は、反応槽14の下部に接続され、ガスGを反応槽14の下部から所定時間、例えば15分以上120分以下に亘り噴出させる。ガス供給手段15によるガスGの噴出は、連続的でもよいし断続的でもよい。
【0024】
ガス供給手段15により供給されるガスGは、ボイラや発電所などのガス供給源からの排ガスが好適に利用される。このガスGは、一例として、二酸化炭素を5%以上25%以下含む。
【0025】
さらに、二酸化炭素固定化装置1は、水切り手段20を備える。水切り手段20は、供給手段11から第二中間体12を直接得て、この第二中間体12を水切りして粉体3を製造するものである。本実施の形態において、水切り手段20は、第二中間体12をこの第二中間体12の自重により水切り(自然脱水)する。すなわち、本実施の形態の水切り手段20は、動力や熱源等を備えない、非駆動のものである。水切り手段20としては、例えばフレキシブルコンテナバッグなどが好適に用いられる。すなわち、水切り手段20は、化学繊維などからなる不織布により袋状に形成され、粉体3を内部に保持しつつ、粉体3よりも粒子が小さい水WOなどを底部や周辺部から排出するものである。水切り手段20には、供給手段11の反応槽14の下部の導出部22から反応槽14の外部に導出された第二中間体12が供給される。なお、水切り手段20は、製造される粉体3の用途によっては、強制乾燥させてもよい。
【0026】
次に、本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1による二酸化炭素固定化方法(粉体3の製造方法)について説明する。
【0027】
まず、コンクリートスラッジ2を加水手段5の溶出槽8に導入する。所定量のコンクリートスラッジ2が溶出槽8に導入されると、加水手段5では、溶出槽8内のコンクリートスラッジ2に対し、所定量の水WIを加えつつ撹拌手段9によって撹拌して第一中間体6を得る。この加水工程(加水攪拌工程)は、常温で実施される。
【0028】
続いて、この第一中間体6を、排出部16を介して供給手段11の反応槽14へと上部から導入する。供給手段11では、反応槽14内の第一中間体6に二酸化炭素を含むガスGをガス供給手段15により加圧供給することで、第一中間体6に含まれるコンクリートスラッジ2の二酸化炭素吸着機能(DAC(Direct Air Capture)機能)によって、第一中間体6に含まれるカルシウム分が二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムが生成されて、二酸化炭素が第一中間体6に固定化されていく。
【0029】
そして、二酸化炭素固定化装置1の所定時間の稼働により、コンクリートスラッジ2に二酸化炭素が吸着された第二中間体12が反応槽14内に製造される。この後、第二中間体12は、供給手段11の反応槽14の導出部22を介して水切り手段20へと導入され、水切り手段20により水WOが脱水されて粉体3が製造される。水切り手段20を経て製造された粉体3の含水率は4%以上40%以下の幅を有し、粉体3の用途に応じて設定できる。
【0030】
製造された粉体3は、軽質炭酸カルシウムと、セメント分炭酸塩化粉体と、セメント分炭酸塩化未反応粉体と、の3種を含む、1μm以上50μm以下の粒径の複合的な二酸化炭素固定化粉体である。なお、粉体3には、微細砂分が極少量含まれるが、成分比としては実質的に無視できる。軽質炭酸カルシウムとは、セメント粒子から水分へ溶出したカルシウム成分が、二酸化炭素と反応して生成される炭酸カルシウムの結晶である。セメント分炭酸塩化粉体とは、セメント粒子のカルシウム成分が、導入された二酸化炭素と反応して、その粒子表面等に炭酸カルシウムとして二酸化炭素固定化(炭酸塩化)した粉体である。セメント分炭酸塩化未反応粉体とは、上記が“未反応”な粉体、すなわち本実施の形態ではセメント粒子(未反応スラッジ)そのものである。
【0031】
製造された粉体3における軽質炭酸カルシウム、セメント分炭酸塩化粉体、セメント分炭酸塩化未反応粉体の成分比は、軽質炭酸カルシウムが2%、セメント分炭酸塩化粉体が94%以上、セメント分炭酸塩化未反応粉体が4%以下である。また、二酸化炭素吸着反応による二酸化炭素成分重量比は、軽質炭酸カルシウムが44wt%-CO、セメント分炭酸塩化粉体が25wt%-CO、セメント分炭酸塩化未反応粉体が1wt%-COである。そのため、当該粉体3の単位重量当たりの二酸化炭素固定重量は、24.4wt%に相当する。
【0032】
なお、製造された粉体3は、製造過程で二酸化炭素が固定化されているだけでなく、その内部においてさらなる二酸化炭素吸着機能を備え、時間経過とともに二酸化炭素を吸着する機能、つまり緩速的な二酸化炭素吸着機能を発揮する。
【0033】
例えば、本実施の形態により製造される粉体3は、コンクリート混練時の混和材、アスファルト舗装フィラー材、土壌改良材の補助材、及び、トンネルなどの裏込め注入材の補助材、などとして適用でき、使い勝手が良好であるとともに、これらの適用により二酸化炭素を固定化した固定物の利活用が可能となる。
【0034】
したがって、従来産業廃棄物として廃棄されてきて年間300万トン以上の排出があるコンクリートスラッジ2を有効利用して粉体を製造できるだけでなく、二酸化炭素に起因する地球温暖化対策にも有効であるとともに、二酸化炭素を回収し有効利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)に好適に用いることができる。
【0035】
このように、本実施の形態によれば、加水手段5により、粗骨材及び細骨材が除去されたコンクリートスラッジ2に対し撹拌しつつ加水して第一中間体6を生成し、その第一中間体6に対し供給手段11により二酸化炭素を含むガスGを供給して第二中間体12を生成し、その第二中間体12を水切り手段20により水切りして粉体3を製造することにより、全体の反応フロー中に例えば固液分離手段、固体分離手段、粉粒体破砕手段、強制乾燥手段などが不要であり、つまり設備投資が少なく、常温常圧においての簡便なフローによって二酸化炭素を安価に固定化できるとともに、二酸化炭素を固定化した粉体3を安価に大量生産できる。
【0036】
また、原材料となるコンクリートスラッジ2を、加熱処理などを施すことなくそのまま使用できるため、加熱に要する電力消費による二酸化炭素排出量の増加を抑制した、簡素な構成及び工程での粉体の製造(二酸化炭素の固定化)が可能である。
【0037】
加水手段5(加水工程)では、粗骨材及び細骨材が除去された水セメント比が略1のコンクリートスラッジ2に対し、その重量の4倍以上15倍以下の水を加えることで、適切な水分量でコンクリートスラッジ2を撹拌して供給手段11(供給工程)に送る第一中間体6を製造できる。
【0038】
水切り手段20(水切り工程)では、第二中間体12を第二中間体12の自重により水切りすることで、動力などを用いる必要がなく、二酸化炭素の固定化に当たり、電力消費による二酸化炭素排出量の増加を抑制できる。
【0039】
本実施の形態の二酸化炭素固定化装置1により製造された粉体3としては、純度が高い軽質炭酸カルシウムを得ることはできず、複合的な二酸化炭素固定化粉体となるものの、製造過程が簡便化され、粒径が50μm以下で3種の粉体が複合化されているものであって、二酸化炭素固定重量比も重量の25%程度保持できており、かつ、従来の軽質炭酸カルシウムの製造方法により製造される軽質炭酸カルシウムの50倍以上の生産量を得ることができる。
【0040】
当該粉体3は、純度が低くても、例えばアスファルト舗装フィラー材などの用途であれば、要求品質を十分に満たすことができる。つまり、用途に適した品質の粉体3を安価に大量生産でき、二酸化炭素固定材の広範な利活用が可能となる。
【0041】
上記の特徴から、当該粉体は、軽質炭酸カルシウムよりも安価に提供する事が出来る。またCO固定利活用の設備、技術としても高く評価できる。
【符号の説明】
【0042】
1 二酸化炭素固定化装置
2 コンクリートスラッジ
3 粉体
5 加水手段
6 第一中間体
11 供給手段
12 第二中間体
20 水切り手段
G ガス
図1