(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】インク、インクセット、インク容器、記録方法、及び、記録装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20240411BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240411BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2020002808
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019008424
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019214884
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 有希子
(72)【発明者】
【氏名】小島 智之
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎
(72)【発明者】
【氏名】小林 広紀
(72)【発明者】
【氏名】松下 友樹
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149825(JP,A)
【文献】特開2009-084424(JP,A)
【文献】特開2006-299117(JP,A)
【文献】特開2011-137070(JP,A)
【文献】特開2013-163743(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176794(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319136(US,A1)
【文献】特開2012-179756(JP,A)
【文献】特表2017-537986(JP,A)
【文献】特開2013-177530(JP,A)
【文献】特開2016-190959(JP,A)
【文献】特開2014-237752(JP,A)
【文献】特開2014-189754(JP,A)
【文献】特許第5425241(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型インクであって、少なくとも表面張力調整剤を含み、かつ、表面張力が39mN/m以上であるモノマーを20質量%以上60質量%以下含み、
前記表面張力が39mN/m以上であるモノマーは、
ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート及び/又はアクリロイルモルフォリンと、N-ビニルカプロラクタム及び/又はトリシクロデカンジメチロールジアクリレートと、を含むインク
Aと、
活性エネルギー線硬化型インクであって、前記表面張力調整剤を含まないインクであるインクBと、
を組み合わせてなることを特徴とする複層形成用インクセット。
【請求項2】
前記インク
Aの硬化塗膜と、液体状の前記インク
Aの界面における界面自由エネルギーγ
SLが30.0mJ/m
2以上である、請求項1に記載のインク
セット。
【請求項3】
前記
インクAの表面張力調整剤を0.01質量%以上0.5質量%以下含む、請求項1または2に記載のインク
セット。
【請求項4】
前記
インクAの表面張力が39mN/m以上であるモノマーを30質量%以上48質量%以下含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のインク
セット。
【請求項5】
前記
インクAの表面張力が43mN/m以上であるモノマーを5質量%以上10質量%以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のインク
セット。
【請求項6】
前記インクAがクリアインクであり、前記インクBがカラーインクである、請求項
1~5のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項7】
前記インクBの硬化塗膜と、液体状の
前記インクBの界面における界面自由エネルギーγ
SLが20.0mJ/m
2以下である、請求項
1~6のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項8】
前記インクBが、表面張力が34mN/m以下であるモノマーを15質量%以上50質量%以下含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
前記インクBが、表面張力が34mN/m以下であるモノマーを18質量%以上40質量%以下含む、請求項
1~8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
前記インクBがオリゴマーを1質量%以上10質量%以下含む、請求項
1~9のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれか1項に記載のインクセットを用い、前記インクBを付与する工程と、前記インクAを付与する工程とを含む記録方法。
【請求項12】
前記インクBの吐出及び活性エネルギー線の照射工程を含む第一工程と、前記インクAの吐出及び活性エネルギー線の照射工程を含む第二工程とを含む請求項
11に記載の記録方法。
【請求項13】
前記吐出および活性エネルギー線照射工程が、画像の同一領域に対して往復8回以上である請求項
12に記載の記録方法。
【請求項14】
インクを吐出する手段と、請求項
1~10のいずれか1項に記載のインクセットとを有することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクセット、インク容器、記録方法、及び、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の記録媒体上に画像を形成する方法として、インクジェット記録方式が知られている。インクジェット記録方式は、インクの消費効率が高く、省資源性に優れており、単位記録あたりのインクのコストを低く抑えることが可能である。
【0003】
中でも活性エネルギー線硬化型インクは、速乾性に優れ、非吸収性の記録媒体にも印字でき、さらに画像がにじみにくい方式として近年注目されている。エネルギー線硬化型インクは様々な記録媒体にも広く適用可能であることから、サイネージや建材等で用いられている。
【0004】
顧客の様々なニーズに応えるために、カラーインクの発色性はもちろんのこと、さらにインクの光沢制御が求められている。インクジェット記録方式では記録媒体へのインク滴の着弾量を制御して画像を形成しているため、画像濃度によってインク膜に膜厚差が発生してしまうなど、光沢制御が困難である。
【0005】
光沢を制御する方法としては、従来検討がされており、例えば、特許文献1には、記録媒体を加温してインクの濡れ広がりを調整することによって光沢を制御する方法が記載されている。
特許文献2には、画像形成層上にクリアインク層を形成する複層形成用インクセットを用いたインクジェット記録方法が記載されている。このインクジェット記録方法においては着色インクからなる画像形成層上に界面活性剤を含有するクリアインクを着弾させた直後、すなわち、クリアインクが濡れ広がる前にピニング光によってクリアインクを硬化させることでマットコートを実現している。一方、画像形成用インクには界面活性剤は含まれておらず、クリアインク中の重合開始剤量を最適化して画像形成層上でのクリアインクの濡れ広がりを向上させることでグロスコートの両立を実現している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法ではコスト高となるという問題がある。また、特許文献2の方法では、生産性の観点で問題があり、またマットコートに関しては、塗膜の均一性が低減する可能性がある。
本発明は、塗膜の均一性を損なわず、低光沢感の制御ができる活性エネルギー線硬化型インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができる本発明のインクは下記(1)に記載するとおりのものである。
(1)活性エネルギー線硬化型インクであって、少なくとも表面張力調整剤を含み、かつ、表面張力が39mN/m以上であるモノマーを20質量%以上60質量%以下含むことを特徴とするインク。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗膜の均一性を損なわず、低光沢感の制御ができる活性エネルギー線硬化型インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2A、
図2Bは本発明のインクセットを用いる記録方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は下記(1)に記載のインクに係るものであるが、下記(2)~(17)を発明の実施形態として含むのでこれらの実施形態についても合わせて説明する。
(1)活性エネルギー線硬化型インクであって、少なくとも表面張力調整剤を含み、かつ、表面張力が39mN/m以上であるモノマーを20質量%以上60質量%以下含むことを特徴とするインク。
(2)前記インクの硬化塗膜と、液体状の前記インクの界面における界面自由エネルギーγSLが30.0 mJ/m2以上であることを特徴とする、上記(1)に記載のインク。
(3)前記表面張力調整剤を0.01質量%以上0.5質量%以下含む、上記(1)または(2)に記載のインク。
(4)前記表面張力が39mN/m以上であるモノマーを30質量%以上48質量%以下含む、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインク。
(5)前記表面張力が43mN/m以上であるモノマーを5質量%以上10質量%以下含む、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のインク。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のインクであるインクAと、活性エネルギー線硬化型インクであって、前記表面張力調整剤を含まないインクであるインクBとを組み合わせてなる複層形成用インクセット。
(7)前記インクAがクリアインクであり、前記インクBがカラーインクである上記(6)に記載のインクセット。
(8)前記インクBの硬化塗膜と、液体状のインクBの界面における界面自由エネルギーγSLが20.0 mJ/m2以下である、上記(6)又は(7)に記載のインクセット。
(9)前記インクBが、表面張力が34mN/m以下であるモノマーを15質量%以上50質量%以下含む、上記(6)~(8)のいずれか1項に記載のインクセット。
(10)前記インクBが、表面張力が34mN/m以下であるモノマーを18質量%以上40質量%以下含む、上記(6)~(9)のいずれか1項に記載のインクセット。
(11)前記インクBがオリゴマーを1質量%以上10質量%以下含む、上記(6)~(10)のいずれか1項に記載のインクセット
(12)上記(6)~(11)のいずれか1項に記載のインクセットを用い、前記インクBを付与する工程と、前記インクAを付与する工程とを含む記録方法。
(13)前記インクBの吐出及び活性エネルギー線の照射工程を含む第一工程と、前記インクAの吐出及び活性エネルギー線の照射工程を含む第二工程とを含む上記(12)に記載の記録方法。
(14)前記吐出および活性エネルギー線照射工程が、画像の同一領域に対して往復8回以上である上記(13)に記載の記録方法。
(15)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のインクを容器中に収容してなるインク容器。
(16)インクを吐出する手段と、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のインクとを有することを特徴とする記録装置。
(17)インクを吐出する手段と、上記(6)~(11)のいずれか1項に記載のインクセットとを有することを特徴とする記録装置。
【0011】
<<インク>>
本発明のインクは、活性エネルギー線硬化型インクであり、少なくとも表面張力調整剤を含み、かつ、表面張力が39mN/m以上であるモノマーを20質量%以上60質量%以下含むことを特徴とする。また、インクは、必要に応じて重合開始剤、色材、有機溶剤、その他の成分を含んでもよい。なお、以降の説明においては、「インク」を「組成物」とも記載し、「活性エネルギー線硬化型インク」を「活性エネルギー線硬化型組成物」とも記載する。
【0012】
<<インクセット>>
本発明のインクは、複数層からなる画像を形成する際に用いられる、下層を形成する他のインクと上層を形成する本発明のインクとからなるインクセットを形成することができる。
好ましいインクセットは、本発明のインクをクリアインクとして、他のインクをイエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクを含むカラーインクとする組み合わせである。このインクセットを用いて、まずカラーインクによって下層(画像層)を形成し、次いでクリアインクによって上層(クリアインク層)を形成する。
以下では、上層を形成する場合の本発明のインクを「インクA」といい、下層を形成するインクを「インクB」ということがある。
【0013】
<表面張力調整剤>
本発明において表面張力調整剤として使用する化合物は、いわゆる「顔料分散剤」を除いた、一般に表面張力の調整に用いられる公知の化合物を問題なく用いることができる。
表面張力調整剤としては、何ら限定されないが、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性シリコーン界面活性剤、有機フルオロ化合物等が挙げられる。
本発明のインクは、上記表面張力調整剤を含む必要があり、該表面張力調整剤は画像表面において表面配向することで少量添加でも効果があるため、その含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、また、吐出性を担保するため、0.5質量%以下であることが好ましい。
【0014】
イオン性界面活性剤としては、例えば、酢酸オクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサデカン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
変性シリコーン界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤やオレフィン変性シリコーン界面活性剤等が挙げられる。
有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤やフッ素化合物樹脂などが挙げられる。
【0015】
本発明において規定する表面張力の数値は、協和界面科学株式会社の自動表面張力計 DY-300を用い、Wilhelmy法(プレート法)によって以下に記載する手順で測定して得た値である。
モノマーの温度を25℃に調節し、赤熱洗浄した白金プレートを用いて実施し、連続して測定した2回の差が±0.2mN/m以内になるまで繰り返し評価を行った。表面張力の値は2回の結果の平均値とした。
【0016】
<モノマー>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクはモノマー(重合性化合物)を含有する。上記モノマーとしては、表面張力39mN/m以上のモノマーを含む必要がある。上記モノマーとしては、何ら限定されないが、例えば、アクリロイルモルフォリン(44.6mN/m)、N-ビニルカプロラクタム(39.1mN/m)、フェノキシエチルアクリレート(39.3mN/m)、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(41.8mN/m)などが挙げられる。
【0017】
光沢度を下げる効果を得るには上記モノマーの含有量は20質量%以上である必要がある。また、塗膜の均一性を担保するため、上記モノマーの含有量は60質量%以下である必要がある。モノマーの含有量は30質量%以上48質量%以下であることが好ましい。さらに低光沢にするために、表面張力が43mN/m以上のモノマーを5質量%以上含むとより好ましい。また、上記表面張力43mN/m以上のモノマーを10質量%以下を含むことにより、インクの表面張力が高くなり過ぎてインクがはじかれるということがなく、塗膜の均一性が担保できるため好ましい。
【0018】
表面張力43mN/m以上のモノマーとしては、何ら限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート(43.7mN/m)やアクリロイルモルフォリン(44.6mN/m)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(43.0mN/m)などが挙げられる。
【0019】
本発明のインクセットにおけるインクBはインクAとの表面自由エネルギー差を広げ、よりインクの濡れ広がりを抑制するために表面張力34mN/m以下のモノマーを含むことが好ましい。上記モノマーとしては、何ら限定されないが、例えば、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレートなどが挙げられる。
【0020】
インクBにおける前記表面張力34mN/m以下のモノマーの含有量は、インクAの濡れ広がりを抑制するため15質量%以上であることが好ましく、インクの吐出性を担保するため50質量%以下であることが好ましい。さらに、より濡れ広がりを抑制するため、上記モノマーの含有量が18質量%以上であることが好ましく、インクの吐出性を担保するため40質量%以下であるとより好ましい。
【0021】
<オリゴマー>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクBは、基材との接点を増やすことで光沢度を上げるために、オリゴマーを1質量%以上10質量%以下含むことが好ましい。なお、オリゴマーとは、重量平均分子量が1,000以上30,000以下の重合体を意味する。前記重合平均分子量は、例えば ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
前記オリゴマーの表面張力は塗膜の光沢度に影響を与えない。前記オリゴマーとしては、例えば、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、その他の特殊オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種で用いても、2種以上を併用してもよい。 前記オリゴマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、日本合成化学工業株式会社製のUV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3010B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、UV-8630B、UV-7000B、UV-7610B、UV-1700B、UV-7630B、UV-6300B、UV-6640B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650B、UT-5449、UT-5454;サートマー社製のCN902、CN902J75、CN929、CN940、CN944、CN944B85、CN959、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J85、CN964、CN965、CN965A80、CN966、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN968、CN969、CN970、CN970A60、CN970E60、CN971、CN971A80、CN971J75、CN972、CN973、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977、CN977C70、CN978、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN983、CN984、CN985、CN985B88、CN986、CN989、CN991、CN992、CN994、CN996、CN997、CN999、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9013、CN9018、CN9019、CN9024、CN9025、CN9026、CN9028、CN9029、CN9030、CN9060、CN9165、CN9167、CN9178、CN9290、CN9782、CN9783、CN9788、CN9893;ダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、KRM8200、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260、KRM7735、KRM8296、KRM8452、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL8311、EBECRYL8701などが挙げられる。
【0022】
<硬化手段>
本発明の硬化型組成物を硬化させる手段としては、加熱硬化または活性エネルギー線による硬化が挙げられ、これらの中でも活性エネルギー線による硬化が好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0023】
<重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
<色材>
前記インクAは色材を含有していても良く、前記インクBは色材を含有しているとより好ましい。色材としては、目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~30質量%であることが好ましい。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。 分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<有機溶媒>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0026】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、重合禁止剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0027】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されない。例えば、重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。色材を用いる場合は、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0028】
<粘度>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0029】
<界面自由エネルギー>
本発明における界面自由エネルギーの定義としては、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化塗膜の表面自由エネルギーをγS、液体状の活性エネルギー線硬化型組成物の表面張力をγL、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化塗膜表面と液体状の活性エネルギー線硬化型組成物における界面の界面自由エネルギーをγSLとして記載する。固体の表面自由エネルギーγS、液体の表面張力γL、固液界面における界面自由エネルギーγSLの関係性はYoungの式γSL=γS-γLCOSθを用いて記載できる。
我々が鋭意検討した結果、画像の光沢度と界面自由エネルギーに相関性が得られた。界面自由エネルギーが大きいとインクの接触角が大きくなる、すなわち濡れ性が低く低光沢な画像となること、および界面自由エネルギーが小さいとインクの接触角が小さくなる、すなわち濡れ性が高く高光沢で発色性の高い画像となることがわかっている。
界面自由エネルギーが大きい,具体的にはγSLが30.0mJ/m2以上となるクリアインクと、界面自由エネルギーが小さい,具体的にはγSLが20.0mJ/m2以下となるカラーインクを組み合わせることで、高光沢で発色性の良いカラーインクの光沢性を制御したい場合に、クリアインクで光沢性の低減制御が可能になる。
上述したモノマーの配合量に加え,界面自由エネルギーを制御することで,画像の光沢性をより具体的に制御できる。
【0030】
<用途>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0031】
<組成物収容容器>
本発明の組成物収容容器は、活性エネルギー線硬化型組成物が収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0032】
<像の形成方法、形成装置>
本発明の硬化型組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。さらに、活性エネルギー線硬化型組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0033】
図1は、インクジェット吐出手段を備えた記録装置(像形成装置)の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された被記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。さらに、前記インクAとインクBのインクセットで複層形成する場合は、クリアインクの吐出及びインクを硬化させるための光源を搭載していても良い。複層形成は後述で詳細を説明する。
また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
【0034】
被記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
【0035】
<<複層形成>>
図2A及び
図2Bは本発明のインクセットを用いて記録媒体上にインクを付与して複層の画像を記録する方法を説明する図である。
第一工程では、
図2Aに示すように、インクジェットヘッド41から記録媒体45にインクB(44)を吐出して、活性エネルギー線光源42、43から活性エネルギー線を照射する。次いで、第二工程では、
図2Bに示すように、インクジェットヘッド51からインクB上にインクA(56)を吐出して、活性エネルギー線光源52、53から活性エネルギー線を照射する。このように、インクBを吐出して活性エネルギー線照射を行う第一工程と、インクAを吐出して活性エネルギー線照射を行う第二工程とを含むと、光沢度が下がり好ましい。なお、
図2A、2B中の矢印は主走査方向に対する往路、復路を示している。より光沢度を下げるには、前記工程が形成画像の同一領域に対して主走査方向に往復8回以上行うとより好ましい。また、生産性が低下するため、14回以下が好ましい。
図2Aの42、43、
図2Bの52,53の活性エネルギー線光源は両方を使用しても良く、どちらか片方のみを使用しても良い。また、インクジェットヘッドの片側にのみ活性エネルギー線光源を搭載しても良い。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1~20、比較例1~3はインクAに関するものであり、実施例21~41、比較例4はインクAおよびインクBからなるインクセットに関するものである。
【0037】
実施例及び比較例で用いた各材料の略号、メーカー名及び製品名を表1に示す。
略号a~dは当該材料が以下の成分であることを示す。
(a1)表面張力39mN/m以上のモノマー
(a2)表面張力34mN/m以下のモノマー
(a3)表面張力34mN/m超、39mN/m未満のモノマー
(a4)オリゴマー
(b)表面張力調整剤
(c)色材
(d)光重合開始剤
【0038】
【0039】
[実施例1~20、比較例1~3]
(インクAの調製)
上記(a)~(d)の材料を下記表2-1及び表2-2に示す配合割合(数値は質量部)で混合して実施例1~20及び比較例1~3のインクA-1~A-23を得た。
【0040】
[実施例21~41、比較例4]
(インクBの調製)
上記(a)~(d)の材料を下記表3-1及び表3-2に示す配合割合(数値は質量部)で混合してインクB-1~B-18を得た。
(インクセット)
上記で調製した実施例及び比較例インクAとインクBとを下記表3-1及び表3-2に示すように組み合わせて実施例21~41及び比較例4のインクセットとした。
【0041】
(評価)
上記で得たインク及びインクセットを用いて、以下のようにして像を形成し、像の評価を行った。
<像形成>
得られた実施例1~20及び比較例1~3のインクA-1~A-23をMH5420ヘッド(株式会社リコー製)搭載のインクジェット吐出装置により、解像度1,200dpi×1,200dpi、1滴あたりの滴量15pL、印字速度420mm/秒間の条件で吐出した。紫外線光源としては、インクジェットプリンタ用UV-LED装置(装置名:UV-LEDモジュール(シングルパス水冷、ウシオ電機株式会社製)により光照射して硬化させた。ヘッド-光源間の距離は200mmとした。
硬化は、UVA領域に相当する波長域において1W/cm2で、3J/cm2の光量条件で硬化させた。なお、光量は、UV Power Puck(登録商標) II(EIT社製)のUVA領域にて測定した。
記録媒体としては、ポリカーボネート基材(商品名:ユーピロンNF-2000、三菱ガス化学株式会社製、平均厚み0.5mm)を用いた。
このようにして硬化させた4cm×4cmのベタ塗膜を評価用の画像とした。
また、実施例21~41及び比較例4のインクセットの評価用画像は、上記手順にて下層のインクB-1~B-18の塗膜を作製した後、同様の手順で上層のインクAの塗膜を作製したものを評価用の画像とした。
【0042】
<光沢度>
光沢度測定はビックガードナー社のマイクロトリグロス計を用いて評価を行った。600×400dpiで描画した、画像に対して5か所評価を行い、その平均値を光沢度とした。
評価は60°での光沢度の数値について以下の基準で評価した。
評価 : 60°光沢度
7 : 4未満
6 : 4以上5未満
5 : 5以上7.5未満
4 : 7.5以上10未満
3 : 10以上12.5未満
2 : 12.5以上15未満
1 : 15以上
【0043】
<塗膜均一性>
インクのハジキが発生していないか目視によって評価を実施し、以下の基準で評価した。
評価 : 塗膜の状態
○ : ハジキがなく均一な塗膜が形成された
△ : 塗膜が全体に形成されたものの膜厚が部分的にやや不均一であった
× : 不均一の程度が大きい
【0044】
<吐出性>
リコー製MH2620ヘッドにて、インクの飛翔速度が7±1m/sとなる条件で、20kHzの周波数で1分間連続吐出した際の不吐出となるノズル数で評価を実施し、不吐出ノズル数について以下の基準で評価した。
評価 : 不吐出ノズル数
○ : 0~3個
△ : 4~10個
× : 11個以上
【0045】
<界面自由エネルギー>
下記(イ)~(ヌ)の手順により界面自由エネルギーγ
SLを算出し,以下の基準で評価した.
VH:γ
SL≧35.0mJ/cm
2
H:30.0mJ/cm
2≦γ
SL<35.0mJ/cm
2
M:20.0mJ/cm
2<γ
SL<30.0mJ/cm
2
L:γ
SL≦20.0mJ/cm
2
(イ)協和界面科学株式会社の自動表面張力計DY-30.0を用い、Wilhelmy法(プレート法)によって以下に記載する手順で測定して得た値をインクの表面張力γ
Lとする。インクの温度を25℃に調節し、赤熱洗浄した白金プレートを用いて実施し、連続して測定した2回の差が±0.2mN/m以内になるまで繰り返し評価を行った。表面張力の値は2回の結果の平均値とした。
(ロ)ポリカーボネートの平滑板の上に、ワイヤーバーを用いて膜厚約10 μmのインクを塗布する。
(ハ)(ロ)で作成したインク膜に、Phoseon製Firejet240 (中心波長395 nm)を用い、1000mW/cm
2の照度で3000mJ/cm
2の積算エネルギーを照射する。
(ニ)(ハ)で作成したインク硬化膜を、接触角計にセットする。
(ホ)(ニ)でセットしたインク膜に対し、ガラス製シリンジを用いてインクを滴下する。
(ヘ)インク滴下後、47秒経過時点の接触角の値を、インク硬化膜に対するインクの接触角θとする。
(ト)(ニ)の手順でセットしたインク膜に対し、ガラス製シリンジを用いてジヨードメタン、α-ブロモナフタレン、純水、ホルムアミド、エチレングリコールをそれぞれ滴下する。
(チ)サンプル滴下後、47秒経過時点の接触角の値を、インク硬化膜に対するサンプルの接触角の値とする。
(リ)ジヨードメタン、α-ブロモナフタレン、純水、ホルムアミド、エチレングリコールの接触角の値を用い、下記式(チ-1)に示す北崎・畑の理論式を用いてインク硬化膜の表面自由エネルギーγ
Sを算出する。なお、表面自由エネルギーの非極性成分をγ
s
α、表面自由エネルギーの極性成分をγ
s
b、表面自由エネルギーの水素結合成分をγ
s
cとし、γ
S=γ
s
α+γ
s
b+γ
s
cとする。
【数1】
(ヌ)Youngの式γ
SL=γ
S-γ
LCOSθより、界面自由エネルギーγ
SLを算出する。
【0046】
<カラーインクの発色性>
インクジェット吐出装置を用い、600×1200dpi、8パス、インク塗布量1.7mg/cm2の条件で印刷したカラーインクの画像を、X-Rite939を用いて測定した彩度の値について、以下の基準で評価した。
〇:シアンの場合、55以上、マゼンタの場合、70以上、イエローの場合、90以上
△:シアンの場合、45以上55未満、マゼンタの場合、60以上70未満、イエローの場合、80以上90未満
×:シアンの場合、45未満、マゼンタの場合、60未満、イエローの場合、80未満
【0047】
<総合評価>
◎ : 光沢度評価は6~7であり、他の評価が全て〇であるもの
〇 : 光沢度評価は4~5であり、△評価が1つ以下であるもの(但し、実施例21~41の吐出性に関しては、インクAまたはインクBのどちらか片方が△評価の場合でも、インクAおよびインクBの両方が△評価の場合も、△評価の数は1つとして数える。)
△ : 光沢度評価は3であるもの
× : ×の評価が1つ以上あるか、光沢度評価が2以下であるもの
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【符号の説明】
【0053】
21 供給ロール
22 被記録媒体
23a、23b、23c、23d 各色印刷ユニット
24a、24b、24c、24d 光源
25 加工ユニット
26 印刷物巻取りロール
41 インクジェットヘッド
42、43 活性エネルギー線光源
44 インクB
45 記録媒体
51 インクジェットヘッド
52、53 活性エネルギー線光源
54 インクB
55 記録媒体
56 インクA
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【文献】特開2015-083647号公報
【文献】特許5425241号公報