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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】微粒子分散ワックス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/06 20060101AFI20240411BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240411BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240411BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L91/06
C08K3/013
C08J3/20 B CER
G03G9/097 365
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068947
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165342
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】松下 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山内 祥敬
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-169100(JP,A)
【文献】特開2014-089442(JP,A)
【文献】特開2010-014949(JP,A)
【文献】特開2001-200059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G03G 9/08-9/113
C08J 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスと、前記ワックス中に分散した、前記ワックスに対して非相溶の微粒子と、からなる微粒子分散ワックスであって、
前記微粒子は、Ti、Ca、Al、及びSiからなる群より選ばれる一種又は二種以上の元素を有する無機化合物であり、
前記微粒子のワックスに対する添加量が、ワックス100質量部に対して2質量部以上10質量部以下であり、
E型粘度計を用い、温度110℃、シェアレート6,000s-1の条件で測定される溶融粘度をV6000とし、温度110℃、シェアレート1,500s-1の条件で測定される溶融粘度をV1500としたときに、前記V6000とV1500が、下記式(1)を満たすことを特徴とする微粒子分散ワックス。
2.0≦V1500/V6000≦4.5 式(1)
【請求項2】
前記微粒子の一次粒子径は、5.0nm以上、200.0nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散ワックス。
【請求項3】
請求項1に記載の微粒子分散ワックスを製造する方法であって、前記ワックスを融点温度以上に加熱した後、ワックスと非相溶な微粒子である、Ti、Ca、Al、及びSiからなる群より選ばれる一種又は二種以上の元素を有する無機化合物ワックス100質量部に対して2質量部以上10質量部以下投入し撹拌混合することを特徴とする微粒子分散ワックスの製造方法。
【請求項4】
前記微粒子の一次粒子径は、5.0nm以上、200.0nm以下である、請求項3に記載の微粒子分散ワックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分散ワックス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、コピー機など電子写真方式の装置で使用されるトナー、例えば、粉砕トナーは、結着剤樹脂、ワックス、帯電制御剤、顔料等を溶融、混練することで各材料を分散させ、その後粉砕し、所定の粒径の粒子を得ることが行なわれている。
このトナーを構成する各材料を如何に良好に分散させることが出来るか、は非常に重要であり、これまで多くの混練技術の改良、各種分散剤による改善など、技術開発が行なわれてきた。
【0003】
特に近年、消費電力低減のための低温定着化、及び、より均質な定着性実現のため、従来ワックスよりもより低融点であるワックスの開発、あるいは、トナー中におけるワックスの配置をより制御しやすくしたトナーの製造方法の開発などに重点が置かれた開発が行なわれている。
ワックスの融点と溶融時の粘度とは基本的に一次の関係性があり、融点の低いワックスは溶融時の粘度が低く、融点の高いワックスは溶融時の粘度が高い傾向がある。
トナーの低温定着のためには、トナーに配合するワックスとしては融点の低いワックスを使う必要があり、結果として溶融時の粘度が低いワックスを使用する必要があった。
【0004】
特許文献1には、無機化合物を含有させたワックスを離型剤として含有したトナーが提案されている。ワックス中にTi、Ca、Al、Siからなる群より選ばれる一種又は二種以上の元素を有する無機化合物を含有させることで、ワックスを増粘させ、低融点ワックスを使用しても、定着ローラへのワックスの付着、画像表面のワックスの波打ちを防ぎ、均一光沢の高画質画像を達成するものである。
【0005】
また、増粘させたワックスをE型粘度計で測定すると、温度110℃、シェアレート6,000s-1の条件で測定される溶融粘度をV6000とし、温度110℃、シェアレート1,500s-1の条件で測定される溶融粘度をV1500としたときに、前記V6000とV1500が、5.0≦V1500/V6000≦9.5を満たすという規定がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐画像ブロッキング性に優れたトナーを得るためのトナーの離型剤に適した微粒子分散ワックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、以下の微粒子分散ワックスによって達成される。
ワックスと、前記ワックス中に分散した、前記ワックスに対して非相溶の微粒子と、からなる微粒子分散ワックスであって、温度110℃、シェアレート6,000s-1の条件で測定される溶融粘度をV6000とし、E型粘度計を用い、温度110℃、シェアレート1,500s-1の条件で測定される溶融粘度をV1500としたときに、前記V6000とV1500が、下記式(1)を満たすことを特徴とする微粒子分散ワックス。
2.0≦V1500/V6000≦4.5 式(1)
【発明の効果】
【0008】
本発明の微粒子分散ワックスをトナーの離型剤として用いることにより、耐画像ブロッキング性に優れたトナーとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特許文献1に記載された発明を検証してみたところ、5.0≦V1500/V6000≦9.5を満たすためには、無機化合物を多量に添加しなければならず、定着時に阻害物質として働いてしまい、定着性が悪化してしまった。
本発明はトナーを構成する材料であるワックスにあらかじめ微粒子を分散、内包させることにより、ワックスの特性、特に溶融時の粘度制御を積極的に行なうものである。
【0010】
融点の低いワックスは溶融時の粘性が低いのが通常であり、結果として樹脂との溶融粘度差が大きくなり、樹脂中で良好な分散状態を得られないという課題が生じている。良好な分散状態を得るためには、混ぜ合わせたいもの同士が同じ温度で近い溶融粘性を示す事が重要であり、また粘度が高いほど強い混練シェアを与えることが可能となる。
【0011】
混練時の温度を非常に高くすれば、見かけ上はそれぞれの成分材料の粘度も低くなり、混練が進むように思えるが、各成分材料の溶融物が冷える工程で各成分材料がそれぞれの成分に再分離、固化するため、結果として高分散状態の混練物を得ることができない。
ワックスの融点と樹脂のTgが近いものであっても、その粘性発現の仕組み、メカニズムが異なることから、ワックスが低粘性を示すのに対し、樹脂は高粘性挙動を示すため、結果として混練装置内でうまく混練出来ないという問題も発生する。
良好な分散状態を得るためには、溶融・混練時の粘度が近接していることが重要であるが、先ほど挙げたように、ワックスの融点と粘度とはほぼ一次の関係性があり、融点の低い材料は低粘度となり易いため、樹脂中に良好な分散状態とすることは非常に難しい。
【0012】
また、近年は紙資源節約のため、両面印刷の機会が多い。両面印刷で多数枚出力した場合に、接触した画像同士がブロッキングにより張り付きやすい。
ブロッキングを生じると、画像同士を剥がすときに画像表面が荒れる場合がある。
また、さらにブロッキング状態がひどければ、剥がすときに画像欠陥を生じる場合もある。
定着時にトナーから染み出し、画像表面に存在するワックスが低融点であると、定着後の熱で固まりにくく、画像がブロッキングしやすい状態となる。
【0013】
本発明のワックスに対して非相溶の微粒子を分散させたワックスは、あらかじめワックスに対して非相溶である微粒子(以下、「非相溶微粒子」ともいう)をワックス中によく分散させることが重要である。また非相溶微粒子の添加量、粒子径を選定することにより、溶融時の粘性をより細かく制御することが出来る。詳細は後述するが、非相溶微粒子の添加量を増やすことにより溶融粘性は増加し、非相溶微粒子の粒子径を小さくして比表面積を増加させることにより増粘効果が現れ易くなる。
また粒子径は異なるが添加量により比表面積を揃えた場合は、粘弾性など粘性に関わる項が変化する。
より細かく狙いの性質を得るために、2種以上の異なる非相溶微粒子を同時にワックスに添加しても全く問題ない。
【0014】
ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス、エステル合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ポリエチレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、硬化ひまし油など植物性ワックスなどが挙げられる。
【0015】
非相溶微粒子としては、特に制限するものではないが、Ti、Ca、Al、及びSiからなる群より選ばれる一種又は二種以上の元素を有する無機化合物である。具体的な例としては、酸化チタン(TiO)、酸化カルシウム(CaO)、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ウォラストナイト(CaSiO)、カオリンクレー(AlSi10(OH))、タルク(MgSi10(OH))等が好ましく使用できる。また、PMMA、メラミン粒子など合成樹脂粒子であってもなんら問題は無い。
非相溶微粒子の一次粒子径は、5.0nm以上、200.0nm以下であることが好ましい。
【0016】
また、非相溶微粒子の表面を、親油性処理、親水性処理、疎水性処理剤等、各種の表面処理により表面改質してもなんら問題は無い。
ワックスにこれら非相溶微粒子を含有させるには、例えばビーカー内のワックスを融点温度以上に加熱した後、前記非相溶微粒子を投入し撹拌混合するなどすればよい。
【0017】
なお、本発明のワックスは静電印刷法等における静電荷像を現像するためのトナー用途以外に、例えば、ゲル状食品用容器蓋剤、塗料、艶出し剤などに用いることもできる。
【実施例
【0018】
以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
また、以下の記載においては特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す、
【0019】
[原材料]
以下では、本発明の実施形態のワックス及びトナーを作製するために用いた原材料及び現像剤を作製するために用いたキャリアについて説明する。
【0020】
(結着樹脂)
・結着樹脂(A):トナー用非晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg)=58℃、フロー軟化温度(T1/2)=135℃)
・結着樹脂(B):トナー用非晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移温度(Tg)=50℃、フロー軟化温度(T1/2)=103℃)
【0021】
(着色剤)
・着色剤(A):カーボンブラック(三菱化学(株)製、#44)
【0022】
(帯電制御剤)
・帯電制御剤(A):サリチル酸ジルコニウム塩(保土谷化学工業(株)製、商品名:TN-105)
・帯電制御剤(B):サリチル酸亜鉛塩(オリエント化学(株)製、商品名:BONTORON E-304)
【0023】
(離型剤)
・WAX(A):カルナウバワックス(加藤洋行(株)製、商品名:カルナウバワックス1号粉末)
・WAX(B):ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製、商品名:ビスコール550P)
【0024】
(非相溶微粒子)
・R976 (日本アエロジル製 DDS表面処理 一次粒子径7nm)
・R972 (日本アエロジル製 DDS表面処理 一次粒子径16nm)
・RY50 (日本アエロジル製 PDMS表面処理 一次粒子径35nm)
・X-24 9163A (信越化学製 ゾルゲルシリカ粒子 HMDS処理 一次粒子径120nm)
・MP-2200 (綜研化学製 平均粒径350nm)
非相溶微粒子の平均一次粒子径は日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影される画像を用い、粒子解析から平均径を算出した。
【0025】
[キャリア]
画像作製に使用するキャリアは、フェライトコア材2500部に対して、シリコーン樹脂溶液(信越化学工業社製)200部、カーボンブラック(キャボット社製)3部をトルエン中で分散させたコート液を流動層式スプレー法で塗布し、コア材の表面を被覆した後、300℃の電気炉で2時間焼成することにより得た。なお、キャリアは、粒径分布が比較的シャープで平均粒径が30~60μmであるものを使用した。
【0026】
[実施例1]
<微粒子分散ワックス(A)の作製>
WAX(A):カルナウバワックス(加藤洋行(株)製、商品名:カルナウバワックス1号粉末)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子R976(日本アエロジル製 DDS表面処理 一次粒子径7nm)5部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(A)を得た。
【0027】
[実施例2]
<微粒子分散ワックス(B)の作製>
WAX(A):カルナウバワックス(加藤洋行(株)製、商品名:カルナウバワックス1号粉末)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子X-24 9163A(信越化学製 ゾルゲルシリカ粒子 HMDS処理 一次粒子径120nm)5部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(B)を得た。
【0028】
[実施例3]
<微粒子分散ワックス(C)の作製>
WAX(A):カルナウバワックス(加藤洋行(株)製、商品名:カルナウバワックス1号粉末)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子RY50(日本アエロジル製 PDMS表面処理 一次粒子径35nm)7部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(C)を得た。
【0029】
[実施例4]
<微粒子分散ワックス(D)の作製>
WAX(A):カルナウバワックス(加藤洋行(株)製、商品名:カルナウバワックス1号粉末)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子R976(日本アエロジル製 DDS表面処理 一次粒子径7nm)10部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(D)を得た。
【0030】
[実施例5]
<粒子分散ワックス(E)の作製>
WAX(B):ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製、商品名:ビスコール550P)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、アクリル単分散粒子MP-2200(綜研化学製 平均粒径350nm)2部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(E)を得た。
【0031】
[実施例6]
<微粒子分散ワックス(F)の作製>
WAX(B):ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製、商品名:ビスコール550P)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子R972 (日本アエロジル製 DDS表面処理 一次粒子径16nm)1部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(F)を得た。
【0032】
[実施例7]
<微粒子分散ワックス(G)の作製>
WAX(B):ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製、商品名:ビスコール550P)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子X-24 9163A(信越化学製 ゾルゲルシリカ粒子 HMDS処理 一次粒子径120nm)20部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(G)を得た。
【0033】
[比較例1]
<微粒子分散ワックス(H)の作製>
WAX(B):ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製、商品名:ビスコール550P)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、アクリル単分散粒子MP-2200(綜研化学製 平均粒径350nm)20部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(H)を得た。
【0034】
[比較例2]
<微粒子分散ワックス(I)の作製>
WAX(B):ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製、商品名:ビスコール550P)100部をビーカー内で160℃に加熱溶融したのち、シリカ微粒子R976(日本アエロジル製 DDS表面処理 一次粒子径7nm)1部を投入し、撹拌混合し微粒子分散ワックス(I)を得た。
【0035】
実施例1~7、比較例1、2の微粒子分散ワックスにおける、ワックス名、微粒子種類、微粒子の含有量を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
以下では、本発明の微粒子分散ワックスを離型剤として使用するトナーの作製例について述べる。
(トナーAの作製)
結着樹脂(A): 41部
結着樹脂(B): 41部
着色剤(A): 8.5部
帯電制御剤(A): 1.0部
微粒子分散ワックス(A): 4.0部
【0038】
上記の各原材料を上記割合で合計5Kgになるように計量後、高速混合機にて3分間混合して原材料の混合物を得た。次に、得られた原材料の混合物を、密閉式連続混練押出機(L/D=30)を用いて、温度120℃、吐出量10Kg/時間、回転数150rpmで溶融混練し、厚さ1~2mmの板状の溶融混練物を得た。
ついで、この溶融混練物を機械式粉砕機にて粉砕し、その後、気流式分級機で分級して、体積平均粒子径が9.5μmのトナー母体粒子を得た。次に、得られたトナー母体粒子100部に対して、疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン(株)製)を1.0部添加し、高速混合機にて周速40m/secで3分間攪拌混合しトナーAを得た。
【0039】
(トナーB~Jの作製)
上記トナーAの作製においてトナーの成分処方を表2に示したものに変えたことを除いては、トナーAの作製と同様の方法によってトナーB~Jを作製した。
各トナーの配合組成を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
(画像形成装置)
以下では、本発明の微粒子ワックスを含有するトナーを用いてテストチャートを印刷し、このテストチャートについて耐画像ブロッキング性を評価した。画像形成装置としては、株式会社リコー製デジタルフルカラー複合機Imagio Neo C600改造機(線速が280mm/sec)を用いた。
この画像形成装置の構成の概要を述べると以下のとおりである。
像担持体である感光体ドラムの周囲に近接又は接触して、感光体ドラム上に一様な電荷を帯電させる帯電ローラ、感光体ドラム上に静電潜像を形成するための露光手段である露光装置、静電潜像を顕像化してトナー像とする現像装置、トナー像を転写紙に転写する転写ベルト、感光体ドラム上の残留トナーを除去するクリーニング装置、感光体ドラム上の残電荷を除電する除電ランプ、帯電ローラが印加する電圧及び現像剤のトナー濃度を制御するための光センサが配置されている。また、この現像装置には、トナー補給装置よりトナー補給口を介して実施例又は比較例のトナーが補給される。作像動作は、次のように行われる。感光体ドラムは、反時計回転方向に回転する。感光体ドラムは、除電光により除電され、表面電位が0~-150Vの基準電位に平均化される。次に、帯電ローラにより帯電され、表面電位が-1000V前後となる。次に、露光装置で露光され、光が照射された部分(画像部)は、表面電位が0~-200Vとなる。現像装置により、スリーブ上のトナーが上記画像部分に付着する。トナー像が作られた感光体ドラムは、回転移動し、給紙部より、用紙先端部と画像先端部が転写ベルトで一致するようなタイミングで転写紙が送られ、転写ベルトで感光体ドラムの表面のトナー像が転写紙に転写される。その後、転写紙は、定着部へ送られ、熱と圧力によりトナーが転写紙に融着されてコピーとして排出される。感光体ドラム上に残った残留トナーは、クリーニング装置中のクリーニングブレードにより掻き落とされ、その後、感光体ドラムは、除電光により残留電荷が除電されてトナーの無い初期状態となり、再び次の作像工程へ移る。
【0042】
(評価項目)
上記の画像形成装置において、実施例、比較例のトナー及び現像剤を用いて以下項目を評価した。以下では、トナー中に離型剤として分散しているワックスを離型剤ということがある。
【0043】
[離型剤分散径]
トナー中に分散している離型剤の最大方向の粒径をもって離型剤分散径とした。
トナー粒子をエポキシ樹脂に包埋したのち、ウルトラミクロトーム(ウルトラソニック)で、トナー中心を通る断面でスライスして100nmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率1万倍で観察を行ない写真撮影した。画像解析用ソフトウェアImageJを用いて離型剤の平均分散径を求めた。
評価の基準は以下の通りである。
評価基準(×、▲以外は許容範囲である)
◎:0.5μm以上1μm未満
○:1μm以上、粒径の1/3未満
△:粒径の1/3以上、粒径の1/2未満
×:粒径の2/1以上
▲:0.5μm未満
【0044】
[耐画像ブロッキング性]
白紙とテストチャート(黒ベタ画像部と白抜き画像部が交互に印刷されたもの)を交互に5枚重ね、圧力をかけ75℃6時間加熱後1時間自然冷却を行う。その後、白紙への移行部のIDを測定し、ΔIDが高いものほど耐画像ブロッキング性が悪いものと設定した。
評価の基準は以下の通りである。
評価基準(×以外は許容範囲である。)
◎:0.001未満
○:0.001以上0.008未満
△:0.008以上0.01未満
×:0.01以上
上記の結果を、表3にまとめた。
【0045】
【表3】
【0046】
トナーA~Gは本発明の微粒子分散ワックスを離型剤として用いているため、耐画像ブロッキング性及び離型剤分散径が良好なものとなっている。
トナーA~DとトナーEとの対比から、非相溶微粒子の粒径が大きく、添加量が少ないと離型剤分散径、耐画像ブロッキング評価が劣る傾向があることがわかる。
トナーA~DとトナーFとの対比から、非相溶微粒子の添加量が少ないと離型剤分散径、耐画像ブロッキング評価が劣る傾向があることがわかる。
トナーA~DとトナーGとの対比から、非相溶微粒子の添加量が多いと、定着しづらくなり耐画像ブロッキング評価が劣る傾向があることが分かる。
トナーH~Jは本発明の構成を満たしていないことから、離型剤分散径、耐ブロッキング評価が許容範囲外のものとなっている。
【0047】
以上示したように、実施例の離型剤を添加したトナーは、離型剤分散径、耐画像ブロッキングに優れるトナーであることがわかった。
【0048】
本発明は下記(1)に記載の微粒子分散ワックスに係るものであるが、下記(2)~(4)を発明の実施形態として含む。
(1)ワックスと、前記ワックス中に分散した、前記ワックスに対して非相溶の微粒子と、からなる微粒子分散ワックスであって、温度110℃、シェアレート6,000s-1の条件で測定される溶融粘度をV6000とし、E型粘度計を用い、温度110℃、シェアレート1,500s-1の条件で測定される溶融粘度をV1500としたときに、前記V6000とV1500が、下記式(1)を満たすことを特徴とする微粒子分散ワックス。
2.0≦V1500/V6000≦4.5 式(1)
(2)前記微粒子の一次粒子径は、5.0nm以上、200.0nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散ワックス。
(3)前記微粒子のワックスに対する添加量が、ワックス100質量部に対して2質量部以上10質量部以下であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の微粒子分散ワックス。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の微粒子分散ワックスを製造する方法であって、前記ワックスを融点温度以上に加熱した後、ワックスと非相溶な微粒子を投入し撹拌混合することを特徴とする微粒子分散ワックスの製造方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【文献】特開2010-014949号公報