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特許7470299物体検出装置、センシング装置及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】物体検出装置、センシング装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240411BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G02B26/10 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020046972
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148514
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一範
(72)【発明者】
【氏名】中村 健翔
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013054(JP,A)
【文献】特開2009-047433(JP,A)
【文献】特開2019-035690(JP,A)
【文献】特開2020-012953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48ー 7/51
G01S 17/00ー17/95
G01C 3/00ー 3/32
G01B 11/00ー11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源基板上の光源からの光を物体に投光光学系を介して投光し、該物体からの反射光を、受光光学系を介して受光基板上の受光部で受光する物体検出装置であって、
記投光光学系の部材及び前記受光光学系の部材は、保持部材に直接固定され、
前記光源基板及び前記受光基板は、位置調整材を介在させてそれぞれ保持部材に固定され、
前記投光光学系及び前記受光光学系は、それぞれの光軸が互いに傾斜するように前記保持部材に固定されていることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置において、
前記光源は、前記光源基板上の端部付近に配置され、
前記受光部は、前記受光基板上の端部付近に配置され、
前記光源基板及び前記受光基板は、前記端部同士が互いに対向するように配置されることを特徴とする物体検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物体検出装置において、
前記光源基板及び前記受光基板は、前記光源基板及び前記受光基板をそれぞれ保持する基板保持部材に保持させた状態とし、前記基板保持部材と前記保持部材との間に前記位置調整材を介在させて、前記保持部材に固定されていることを特徴とする物体検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出装置において、
前記保持部材は、前記投光光学系の部材及び前記受光光学系の部材を位置決めする位置決め手段を備えていることを特徴とする物体検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物体検出装置において、
前記位置調整材は硬化性樹脂であることを特徴とする物体検出装置
【請求項6】
求項1乃至5のいずれか1項に記載の物体検出装置において、
前記投光光学系からの光を光偏向部材によって偏向して物体へ投光し、該物体からの反射光を該光偏向部材と同一又は異なる光偏向部材によって偏向して前記受光光学系を介して前記受光部で受光することを特徴とする物体検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の物体検出装置において、
前記投光光学系及び前記受光光学系は、偏向方向に対して直交する方向へ互いにずれた位置で前記保持部材に対して固定されていることを特徴とする物体検出装置。
【請求項8】
請求項6は7に記載の物体検出装置において、
前記投光光学系及び前記受光光学系は、偏向方向における略同一位置に固定されていることを特徴とする物体検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の物体検出装置と、
前記物体検出装置の出力に基づいて、物体の有無、物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度の少なくとも1つを含む物体検出情報を導出する情報処理装置とを有することを特徴とするセンシング装置。
【請求項10】
請求項9に記載のセンシング装置において、
前記物体検出装置は、移動体に搭載され、
前記情報処理装置は、物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、危険判断処理を実行することを特徴とするセンシング装置。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の物体検出装置を搭載することを特徴とする移動体。
【請求項12】
請求項10に記載のセンシング装置を搭載することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置、センシング装置及び移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光源基板上の光源からの光を物体に投光光学系を介して投光し、該物体からの反射光を、受光光学系を介して受光基板上の受光部で受光する物体検出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、投光ビーム(光源からの光)を反射する反射領域と物体で反射した受光ビーム(反射光)を透過する透過領域とを外側表面に備え、かつ、透過した受光ビームを反射する反射面を備えた1つのプリズムで、光源からの投光ビームと物体からの受光ビームとの光路を分離する光測距装置(物体検出装置)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の物体検出装置では、装置が大型化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、光源基板上の光源からの光を物体に投光光学系を介して投光し、該物体からの反射光を、受光光学系を介して受光基板上の受光部で受光する物体検出装置であって、前記投光光学系の部材及び前記受光光学系の部材は、保持部材に直接固定され、前記光源基板及び前記受光基板は、位置調整材を介在させてそれぞれ保持部材に固定され、前記投光光学系及び前記受光光学系は、それぞれの光軸が互いに傾斜するように前記保持部材に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態におけるレーザレーダの概略的構成を示すブロック図。
図2】(a)は、同レーザレーダにおける投光光学系及び同期系を模式的に示した説明図。(b)は、同レーザレーダにおける受光光学系を模式的に示した説明図。(c)は、同レーザレーダにおける投光光学系と受光光学系の配置を説明する説明図。
図3】同レーザレーダにおける検出系や同期系におけるPD出力検出部の一例を示す模式図。
図4】(a)は、同レーザレーダにおけるLDAの各LDの発光領域と、LDAを構成する1つのLDから出射されて投光光学系を介した光の照射範囲とを示す説明図。(b)は、同レーザレーダにおけるPDAの各PDの受光領域と、PDAを構成する1つのPDでの物体からの反射光の受光可能範囲とを示す説明図。
図5】同LDAの各LDの照射範囲と同PDAの各PDの受光可能範囲との関係を示す説明図。
図6】検出範囲の解像度を表す模式図。
図7】(a)は、構成例1におけるレーザレーダのLDとPDの関係を示す説明図。構成例2におけるレーザレーダのLDとPDの関係を示す説明図。
図8】LDA11における同時に点灯されるLD群を説明するための説明図。
図9】各LD群の点灯タイミングを示すタイミングチャート。
図10】同レーザレーダを備えるセンシング装置を備えた自動車を示す模式図。
図11】同レーザレーダにおけるY軸に直交する断面を示す断面図。
図12】変形例1におけるレーザレーダにおけるY軸に直交する断面を示す断面図。
図13】変形例1におけるレーザレーダを、ハウジングを取り除いた状態で示す斜視図。
図14】変形例1におけるレーザレーダを、ハウジングを取り除いた状態で、図12の右斜め上から見たときの斜視図。
図15】変形例2におけるレーザレーダにおけるY軸に直交する断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における走査型の物体検出装置であるレーザレーダ100の概略的構成を示すブロック図である。
本実施形態のレーザレーダ100は、一例として、移動体としての自動車に搭載され、光を出射し、物体(例えば先行車両、停車車両、障害物、歩行者等)からの反射光(散乱光)を受光して、物体の有無や物体までの距離、物体の位置や方向などを検出する走査型レーザレーダである。レーザレーダ100は、例えば自動車のバッテリ(蓄電池)から電力の供給を受ける。
【0009】
レーザレーダ100は、図1に示されるように、複数の半導体素子であるLD(レーザダイオード)を含むLDA(レーザダイオードアレイ)11を光源として備え、LD駆動装置12、投光光学系20、受光光学系30、検出系40、同期系50なども備えている。
【0010】
LDA11の各LDは、LD駆動装置12により駆動され、レーザ光を出射する。LD駆動装置12は、自動車のECU(エンジンコントロールユニット)401からLD駆動信号(矩形パルス信号)が入力されたときにLDを点灯(発光)させる。LDA11の詳細については、後述する。
【0011】
図2(a)は、投光光学系20及び同期系50を模式的に示した説明図である。図2(b)は、受光光学系30を模式的に示した説明図である。
以下では、図2(a)等に示されるZ軸方向を鉛直方向とするXYZ三次元直交座標系を適宜用いて説明する。
【0012】
投光光学系20は、図2(a)に示されるように、LDA11からの光の光路上に配置されたカップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23と、カップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23を介した光の光路上に配置された反射ミラー24と、反射ミラー24で反射された光の光路上に配置された偏向器としての回転ミラー26とを含む。本実施形態では、装置を小型化するために、シリンドリカルレンズ23と回転ミラー26との間の光路上に反射ミラー24を設けて光路を折り返している。
【0013】
LDA11から出射された光は、カップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23により所定のビームプロファイルの光に整形された後、反射ミラー24で反射され、回転ミラー26でZ軸周りに偏向される。回転ミラー26でZ軸周りの所定の偏向範囲に偏向された光が投光光学系20から投射された光、すなわちレーザレーダ100から出射された光である。
【0014】
回転ミラー26は、反射面を有し、カップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23からの光を回転軸(Z軸)周りに回転しながら反射(偏向)することで、上述した偏向範囲に対応する有効走査領域を水平な1軸方向(ここではY軸方向)である主走査方向に走査する。回転ミラー26は、図2(a)から分かるように、反射面を2面(対向する2つの面)有しているが、これに限らず、1面でも3面以上でも良い。また、少なくとも2つの反射面を設け、回転ミラーの回転軸に対して異なった角度で傾けて配置して、走査・検出する領域をZ軸方向に切り替えることも可能である。
【0015】
本実施形態においては、LDA11、LD駆動装置12及び投光光学系20を含んで、有効走査領域を主走査方向に光走査する光源装置としての光走査装置である光走査ユニット200が構成されている(図1参照)。なお、主走査方向(ここではY軸方向)に直交する方向(ここではZ軸方向)は「副走査方向」と呼ばれる。
【0016】
受光光学系30は、図2(b)に示されるように、投光光学系20から投射され有効走査領域内にある物体で反射(散乱)された光を反射する回転ミラー26と、回転ミラー26からの光を反射する反射ミラー24と、反射ミラー24からの光の光路上に配置され、光を後述する光検出器としてのPDA(フォトダイオードアレイ)41に結像させる結像光学系(受光レンズ)32とを含む。
【0017】
図2(c)は、LDA11から反射ミラー24までの光路と、反射ミラー24からPDA41までの光路が一部省略されて示されている。図2(c)から分かるように、投光光学系20と受光光学系30は、Z軸方向に重なるように配置されており、反射ミラー24及び回転ミラー26は、投光光学系20と受光光学系30で共通となっている。これにより、物体上におけるLDA11の照射範囲とPDA41の受光可能範囲の相対的な位置ずれを小さくでき、安定した物体検出を実現できる。
【0018】
検出系40は、図2(b)及び図1に示されるように、投光光学系20から投射されて有効走査領域内にある物体で反射(散乱)された光を、受光光学系30を介して受光するPDA41と、PDA41の受光信号を検出するPD出力検出部44と、LD駆動信号の立ち上がりタイミングとPD出力検出部44での受光信号の検出タイミングとの時間差から物体までの距離を算出する距離算出部46とを含む。
【0019】
投光光学系20から投射されて物体で反射(散乱)された光は、回転ミラー26及び反射ミラー24を介して結像光学系32に導かれ、結像光学系32によりPDA41に集光する(図2(b)参照)。本実施形態では、装置を小型化するために、回転ミラー26と結像光学系32との間に反射ミラー24を設けて光路を折り返している。ここでは、結像光学系32は1枚のレンズで構成されているが、2枚以上のレンズとしても良いし、ミラー光学系を用いても良い。PDA41については、後に詳述する。
【0020】
同期系50は、図2(a)及び図1に示されるように、LDA11から出射されてカップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23を介して反射ミラー24で反射され、回転ミラー26により偏向された光のうち、反射ミラー24で再反射された光の光路上に配置された同期レンズ52と、同期レンズ52を介した光の光路上に配置された同期検知用PD54と、同期検知用PD54の出力信号を検出するPD出力検出部56とを含む。
【0021】
本実施形態において、同期系50に用いられる光は、回転ミラー26により偏向された光のうち、上述した偏向範囲に対して回転ミラー26の回転方向上流側の反射ミラー24上の領域で反射された光である。なお、同期系50に用いる光は、上述した偏向範囲に対して回転ミラー26の回転方向下流側の反射ミラー24上の領域で反射される光であってもよい。
【0022】
回転ミラー26の回転により、回転ミラー26の各反射面で反射された光が同期検知用PD54で受光される度に同期検知用PD54から信号が出力される。すなわち、同期検知用PD54からは定期的に信号が出力されることになる。このように回転ミラー26からの光を同期検知用PD54に照射するための同期点灯を行うことで、同期検知用PD54での受光タイミングに基づいて、回転ミラー26の回転タイミングを得ることが可能となる。よって、LDA11を同期点灯してから所定時間経過後にLDA11をパルス点灯することで、有効走査領域を主走査方向に光走査することができる。すなわち、同期検知用PD54に光が照射されるタイミングの前後期間にLDA11をパルス点灯することで有効走査領域を主走査方向に光走査することができる。
【0023】
ここで、時間計測(距離計測)や同期検知に用いる受光素子としては、上述したPD(Photo Diode)の他、APD(Avalanche Photo Diode)、ガイガーモードAPDであるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等を用いることが可能である。APDやSPADは、PDに対して感度が高いため、検出精度や検出距離の点で有利である。
【0024】
図3は、検出系40や同期系50におけるPD出力検出部の一例を示す模式図である。
PD出力検出部での動作としては、受光信号の信号増幅及び受光信号のタイミング検出の2つの動作がある。受光信号の信号増幅についてはアンプなどの増幅器を用いて増幅し、受光信号のタイミング検出についてはコンパレータなどの比較器を用いて、PDからの受光信号の一定出力(スレッシュレベル)以上となる立ち上り波形部を検出する。すなわち、PD出力検出部は、コンパレータを用いて受光信号を2値化した論理信号として得ることができる。
【0025】
同期系50のPD出力検出部56は、同期検知用PD54の受光信号(立ち上がり波形部)を検出すると、同期信号をECU401に出力する(図1参照)。ECU401は、PD出力検出部56からの同期信号に基づいてLD駆動信号を生成し、LD駆動信号をLD駆動装置12及び距離算出部46に出力する。
【0026】
一方、検出系40のPD出力検出部44は、PDA41のPDの受光信号(立ち上がり波形部)を検出すると、検出信号(矩形パルス信号)を距離算出部46に出力する。距離算出部46は、ECU401からのLD駆動信号の立ち上がりタイミングとPD出力検出部44からの検出信号の立ち上がりタイミングとの時間差を物体までの往復距離と推定し、時間差を距離に変換することで物体までの距離を算出し、その算出結果をECU401に測定信号として出力する。ECU401は、距離算出部46からの測定信号に基づいて例えば自動車の速度制御等を行う。自動車の速度制御としては、例えば自動ブレーキ(オートブレーキ)が挙げられる。
【0027】
ここで、ECU401からLD駆動装置12に出力されるLD駆動信号は、同期点灯を行うための単一の駆動パルスからなるバイアス発光制御信号と、バイアス発光制御信号に対して遅延した、パルス点灯を行うための複数の駆動パルスからなるパルス発光制御信号とで構成される。バイアス発光制御信号及びパルス発光制御信号は、ECU401により同期信号に基づいて生成される。
【0028】
バイアス発光制御信号は、回転ミラー26の回転タイミングが同期検知用PD54に光が入射するタイミングに一致する間、LD駆動装置12に入力される。
【0029】
パルス発光制御信号は、回転ミラー26の回転タイミングが有効走査領域の走査開始タイミングから走査終了タイミングまでの間に、LD駆動装置12に入力される。
【0030】
LD駆動装置12は、バイアス発光制御信号が入力されたときにLDを同期点灯(バイアス点灯)させる。このとき、LDから出射された光は、カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23、反射ミラー24、回転ミラー26、同期レンズ52の経路を辿り、同期検知用PD54上に集光する。
【0031】
また、LD駆動装置12は、パルス発光制御信号が入力されたときにLDをパルス点灯(パルス発光)させる。このとき、LDから出射された光は、カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23、反射ミラー24、回転ミラー26の経路を辿り、有効走査領域に向けて投射される。
【0032】
図4(a)は、LDA11の各LDの発光領域と、LDA11を構成する1つのLDから出射されて投光光学系20を介した光の照射範囲とを示す説明図である。
LDA11は、図4(a)から分かるように、複数(例えば16個)のLD1-1,1-2,1-3,1-4,2-1,2-2,2-3,2-4,3-1,3-2,3-3,3-4,4-1,4-2,4-3,4-4がZ軸方向(副走査方向)に配列された垂直スタック型のレーザアレイである。ここでは、LD1-1~4-4は、-Z方向に昇順に並んでいる。
【0033】
図4(b)は、PDA41の各PDの受光領域と、PDA41を構成する1つのPDでの物体からの反射光の受光可能範囲とを示す説明図である。
PDA41は、図4(b)から分かるように、複数(例えば4個)のPD1~4がZ軸方向(副走査方向)に配列された垂直スタック型のフォトダイオードアレイである。ここでは、PD1~4は、-Z方向に昇順に並んでいる。
【0034】
図5は、LDA11の各LDの照射範囲とPDA41の各PDの受光可能範囲との関係を示す説明図である。
LD1-1~1-4の照射範囲はPD1の受光可能範囲に対応し、LD2-1~2-4の照射範囲はPD2の受光可能範囲に対応し、LD3-1~3-4の照射範囲はPD3の受光可能範囲に対応し、LD4-1~4-4の照射範囲はPD4の受光可能範囲に対応している。すなわち、LD1-1~1-4からの光はPD1で受光され、LD2-1~2-4からの光はPD2で受光され、LD3-1~3-4からの光はPD3で受光され、LD4-1~4-4からの光はPD4で受光される。
【0035】
各PDの受光可能範囲は、対応する4つのLDの照射範囲よりもわずかに大きくなるように設定されている。これにより、受光可能範囲を効率よく照射できるため、受光可能範囲における光量を増大でき、検出精度及び検出距離を向上できる。また、製造誤差の範囲で照射範囲と受光可能範囲がわずかにずれても、検出精度及び検出距離が低下するのを抑制できる。
【0036】
図6は、検出範囲の解像度を表す模式図である。
図6に示される最小の四角は、1回の計測で計測できる範囲(解像度)を示す。主走査方向(Y軸方向)の解像度を高めるためには、レーザ光の射出時間間隔を狭くすればよい。主走査方向に直交する副走査方向(Z軸方向)の解像度を高めるためには、LDの個数を増やすか、PDの個数を増やせばよい。なお、図6では、副走査方向の解像度は16とされている。
【0037】
ここで、図7(a)に示される構成例1のレーザレーダは、副走査方向に一次元配列された16個のLD(LD1’~16’)を含むLDA11と、16個のLDに対応する1個のPD(PD1’)を有している。すなわち、16個のLDの照射領域と1個のPDの受光可能範囲が対応している。構成例1では、PDが1個であるため、16個のLDを時分割で切り替え、データを取得する必要があり、データの取得に時間がかかる。すなわち、図7(a)における1列分のデータを取得するのに、LDを時分割で16回点灯させる必要があり、検出データ取得時間の長期化を余儀なくされる。
【0038】
また、図7(b)に示される構成例2のレーザレーダは、1個のLD(LD1’)と、1個のLDに対応する、副走査方向に対応する方向に一次元配列された16個のPD(PD1’~16’)を含むPDA41を有している。構成例2では、1個のLDで16個のPDをカバーする構成としているため、構成例1と比べて、LD1つ当たりの光量が等しいとすると、PD1つ当たりの光量が小さい(構成例1の1/16)ため、検出距離の短距離化を余儀なくされる。
【0039】
これに対し、本実施形態のレーザレーダ100では、図8に示されるように、LDA11におけるAと表記された4個のLD(これらを併せてLD群Aとも呼ぶ)は、電気的に接続され(例えば配線で接続され)、同時に点灯する。LDA11におけるBと表記された4個のLD(これらを併せてLD群Bとも呼ぶ)は、電気的に接続され、同時に点灯する。LDA11におけるCと表記された4個のLD(これらを併せてLD群Cとも呼ぶ)は、電気的に接続され、同時に点灯する。LDA11におけるDと表記された4個のLD(これらを併せてLD群Dとも呼ぶ)は、電気的に接続され、同時に点灯する。
【0040】
LD群Aの最も+Z側のLDは前記LD1-1であり、LD群Bの最も+Z側のLDは前記LD1-2であり、LD群Cの最も+Z側のLDは前記LD1-3であり、LD群Dの最も+Z側のLDは前記LD1-4である。LD群Aの2番目に+Z側のLDは前記LD2-1であり、LD群Bの2番目に+Z側のLDは前記LD2-2であり、LD群Cの2番目に+Z側のLDは前記LD2-3であり、LD群Dの2番目に+Z側のLDは前記LD2-4である。LD群Aの3番目に+Z側のLDは前記LD3-1であり、LD群Bの3番目に+Z側のLDは前記LD3-2であり、LD群Cの3番目に+Z側のLDは前記LD3-3であり、LD群Dの3番目に+Z側のLDは前記LD3-4である。LD群Aの4番目に+Z側のLDは前記LD4-1であり、LD群Bの4番目に+Z側のLDは前記LD4-2であり、LD群Cの4番目に+Z側のLDは前記LD4-3であり、LD群Dの4番目に+Z側のLDは前記LD4-4である。また、図8において、PDA41における1~4と表記された4個のPDは、それぞれPD1~4である。
【0041】
本実施形態では、LD群Aの4個のLDを同時点灯させ、対応するPD1~4で反射光の検出を行う。次に、LD群Bの4個のLDを同時点灯させ、対応するPD1~4で反射光の検出を行う。次に、LD群Cの4個のLDを同時点灯させ、対応するPD1~4で反射光の検出を行う。次に、LD群Dの4個のLDを同時点灯させ、対応するPD1~4で反射光の検出を行う。なお、PD1~4は、増幅器1~4に個別に接続されている。増幅器1~4は、PD出力検出部44に接続されている。各PDの出力信号は、対応する増幅器で増幅され、PD出力検出部44に送られる。この結果、図6における副走査方向の1列に相当する距離データを取得できる。
【0042】
このように、LDとPDの両方をアレイ化し、アレイ状光源であるLDA11の一部(複数のLDからなるLD群)毎に点灯する構成とし、点灯させるLD群を時間的に切り替える(点灯タイミングをLD群間で異ならせる)ことで、点灯させるLDを時間的に切り替える(点灯タイミングをLD毎に異ならせる)場合に比べて切り替え回数を少なくすることができ、その結果、副走査方向に高解像度の距離データを、高速に取得することができる。ここでは、16個のLD、4個のPDに対して切り替え回数4回で、副走査方向に16の解像度の距離データを得ることができる。
【0043】
レーザレーダ100による走査、検出を行う際、このような副走査方向の点灯動作を主走査方向の各走査位置で(パルス発光制御信号の各駆動パルスに対応する位置で)行うことで、走査位置で副走査方向に高解像度の距離データを高速に取得できることとなる。結果として、図6に示されるような主走査方向及び副走査方向に高解像度の距離データ(ここでは副走査方向により高解像度な距離データ)を得ることができる。
【0044】
ところで、図8に示されるように、複数のLDを電気的に接続し、同時点灯させる場合は、隣り合わないLDを電気的に接続するのが好ましい。これにより、熱が局所的に発生するのを抑制でき、LDの発光光量低下等の発熱による悪影響を回避できる。また、電気的に接続された複数のLDは、異なる複数のPDに個別に対応することが好ましい。つまり、図8に示されるように、複数のLDを電気的に接続する場合は、異なるPDに対応するLD同士を電気的に接続することが好ましく、そのようにすることで、1回の同時発光(同時点灯)により、副走査方向において異なる複数位置の距離データを略同時に取得でき、データを取得する効率が良くなるばかりか、光を有効に利用でき、検出距離を増大できる。
【0045】
また、図9に示されるタイミングチャートのように、4つのLD群A~Dは、各LD群が周期的に(ここでは同一の点灯周期Tで)、かつLD群間で異なるタイミングで点灯され、点灯させるLD群の切り替え時間、すなわち一のLD群の点灯終了時から次のLD群の点灯開始時までの時間が点灯周期Tよりも短く設定されている。これにより、各LD群の点灯周期Tを長くとることができ、熱の発生を抑えLD群の各LDの発光光量低下を抑制できるだけでなく、LDの寿命を長くすることができる。
【0046】
図10は、レーザレーダ100を備えるセンシング装置300を備えた移動体としての自動車400を示す模式図である。
センシング装置300は、自動車400に搭載され、レーザレーダ100に加えて、レーザレーダ100に電気的に接続された情報処理装置としての監視制御装置301を備えている。本実施形態のセンシング装置300は、レーザレーダ100が車内のルームミラー近傍に取り付けられるが、車両のバンパー付近など、レーザレーダ100を他の場所に取り付けてもよい。
【0047】
監視制御装置301は、レーザレーダ100の検出結果に基づいて、物体の形状や大きさの推定、物体の位置情報の算出、移動情報の算出、物体の種類の認識等の処理を行って、それらの情報(物体情報)を出力する物体情報出力部と、物体情報出力部の出力結果に基づいて危険を判断する危険判断処理を実行する判断部としての機能を有する。
【0048】
監視制御装置301は、危険ありと判断すると、アラーム等の警報を発したり表示モニタ402に警告画像を表示したりして自動車400の運転者に注意を促したり、ハンドルを切って危険を回避するための制動指令などをECU401へ出力したりする。なお、センシング装置300は、例えば車両のバッテリから電力の供給を受ける。
【0049】
本実施形態では、監視制御装置301が自動車400に搭載されているが、自動車400の外部に配置し、自動車400が通信可能なネットワークを介して監視制御装置301と通信するようにしてもよい。監視制御装置301が自動車400に搭載される場合、監視制御装置301は、レーザレーダ100と一体的に設けられても良いし、レーザレーダ100とは別体に設けられても良い。また、監視制御装置301は、ECU401が行う制御の少なくとも一部を行っても良い。
【0050】
次に、本発明の特徴部分であるレーザレーダ100の構造について説明する。
図11は、本実施形態におけるレーザレーダ100におけるY軸に直交する断面を示す断面図である。
投光光学系20は、カップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23からなり、受光光学系30は、受光レンズ32からなる。LDA11は、光源基板であるLD駆動基板13に対してはんだで電気的に接続されている。PDA41は、受光基板であるPD駆動基板43に表面実装されて電気的に接続されている。
【0051】
投光光学系20を構成するカップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23と、受光光学系30を構成する受光レンズ32とは、保持部材としてのハウジング101によって位置決めされて固定されている。カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23及び受光レンズ32の位置決め手段は、精度良く成型された取付形状部によって構成されていて、カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23及び受光レンズ32の間における相対的な位置の誤差は極めて小さく設定される。
【0052】
本実施形態のハウジング101は、アルミダイキャストで成型され、カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23及び受光レンズ32の位置決め手段となる取付形状部は2次加工により高精度に形成されている。なお、ハウジング101の材料や成型方法はこれに限定されるものではなく、例えばガラスフィラー入り樹脂材料の射出成型品などであってもよい。
【0053】
カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23及び受光レンズ32は、ハウジング101の各取付形状部に取り付けられて位置が決まった後、板バネなどの固定手段によりハウジング101に固定される。カップリングレンズ22、シリンドリカルレンズ23及び受光レンズ32の固定方法は、これに限られるものではなく、例えば鏡筒に入れてリング状のバネ部材により押圧して固定する方法や、接着剤による固定方法などを採用してもよい。
【0054】
本実施形態では、上述したように、投光光学系20のカップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23がハウジング101に直接固定されるため、投光路の光軸O1やピントの調整は、LDA11が実装されたLD駆動基板13の位置調整(位置や姿勢の調整)により行う。投光路の光軸O1の調整は、LD駆動基板13を図中Y軸方向及びZ軸方向に移動させて行い、ピントの調整は、LD駆動基板13を図中X軸方向に移動させて行う。
【0055】
具体的には、光軸O1の調整は、シリンドリカルレンズ23を出た光を所定の位置に設置したカメラに入射させ、カメラ上の座標が所定の位置範囲内に入るようにLD駆動基板13の位置を調整する。ピントの調整は、このカメラ上のビーム強度分布が所定の範囲内に入るようにLD駆動基板13の位置調整を行う。これらの調整により、LD駆動基板13の位置が決まると、LD駆動基板13をハウジング101に固定するための固定工程に入る。
【0056】
本実施形態において、LD駆動基板13の表面(ハウジング101に対向する面)の端部領域には、位置調整材として、熱硬化樹脂やUV(UltraViolet)硬化樹脂などの硬化性樹脂102が予め塗布されている。LD駆動基板13は、3軸方向の位置調整を可能とするため、ハウジング101には直接接触しないように、硬化性樹脂102を介在させてハウジング101に取り付けられる。LD駆動基板13は、位置調整完了後、固定工程を実施して硬化性樹脂102を硬化させてハウジング101に対して固定される。
【0057】
硬化性樹脂102は、固定工程を実施するまでは、ハウジング101上にLD駆動基板13を保持でき、かつ、LD駆動基板13の位置を3軸方向へ調整できる程度の柔らかさをもつが、固定工程を実施した後は硬化して、ハウジング101上にLD駆動基板13を固定する。熱硬化樹脂は、固定工程において熱を作用させることにより樹脂が硬化する性質を持つ。UV硬化樹脂は、固定工程において紫外線(UV)を作用させることにより樹脂が硬化する性質を持つ。
【0058】
受光光学系30も、上述した投光光学系20と同様に、受光レンズ32がハウジング101に直接固定されるため、受光路の光軸O2やピントの調整は、PDA41が実装されたPD駆動基板43の位置調整(位置や姿勢の調整)により行う。受光路の光軸O2の調整は、PD駆動基板43を図中Y軸方向及びZ軸方向に移動させて行い、ピントの調整は、PD駆動基板43を図中X軸方向に移動させて行う。
【0059】
具体的には、物体検出領域に所定の物体を設置し、投光光学系20から射出される光が当該物体で反射して戻ってくる反射光をPD駆動基板43上のPDA41で受光したときの受光信号が所定の範囲内に入る位置を狙って調整を行う。これらの調整により、PD駆動基板43の位置が決まると、PD駆動基板43をハウジング101に固定するための固定工程に入る。
【0060】
PD駆動基板43の固定工程も、LD駆動基板13の固定工程と同様に、PD駆動基板43の表面(ハウジング101に対向する面)の端部領域に、位置調整材としての硬化性樹脂102が予め塗布される。PD駆動基板43は、3軸方向の位置調整を可能とするため、ハウジング101には直接接触しないように、硬化性樹脂102を介在させてハウジング101に取り付けられる。PD駆動基板43は、位置調整完了後、固定工程を実施して硬化性樹脂102を硬化させてハウジング101に対して固定される。
【0061】
本実施形態においては、投光光学系20の光軸O1と受光光学系30の光軸O2が所定の角度θをもってお互いに傾斜するように設定される。この光軸間角度θが小さいほど、投光光学系20やLDA11と受光光学系30やPDA41との距離を近づけて配置することができるので、装置の小型化が可能である。
【0062】
しかも、本実施形態においては、位置調整を必要とするLD駆動基板13及びPD駆動基板43は、いずれも、ハウジング101との間に位置調整材としての硬化性樹脂102を介在させ、硬化前の硬化性樹脂102の位置調整機能(適度な柔軟性)によって位置合わせされ、その後、硬化性樹脂102の硬化機能によってハウジング101に固定される。このような硬化性樹脂102を用いていることで、LD駆動基板13及びPD駆動基板43上に、並びに、ハウジング101上に、従来必要であった位置合わせ調整用のスペース(例えば、位置合わせ用の調整ネジの設置スペースなど)を設ける必要がなくなる。よって、従来よりも装置の小型化が可能である。
【0063】
また、本実施形態において、LD駆動基板13及びPD駆動基板43の位置調整を行うにあたっては、その位置調整の調整量を確保するために、LD駆動基板13及びPD駆動基板43の位置を動かしてもお互いが干渉しないように、LD駆動基板13とPD駆動基板43との間に当該調整量に応じた位置調整用スペースを確保しなければならない。言い換えると、装置の小型化実現のためにLD駆動基板13及びPD駆動基板43を互いに近づけて配置するにしても、それぞれの位置調整のために必要な位置調整用スペースは確保しなければならない。
【0064】
ここで、本実施形態では、位置調整を必要とするLD駆動基板13及びPD駆動基板43は、投光路及び受光路それぞれの物体から最も遠い位置に存在する光学素子である。これは、以下のように装置の小型化の面で有利に働く。
【0065】
所定の角度θをもって互いに傾斜している投光路及び受光路の光軸O1,O2は、物体に近いほど、お互いの間隔が狭くなる。そのため、それぞれの光路上に配置される光学素子は、物体に近い位置であるほど、お互いに干渉せずに近づけて配置することが困難となる。そして、どの光学素子で位置調整する場合でも、おおよそ同程度の位置調整用スペースを要することから、位置調整用スペースを確保するために必要な光軸O1,O2の間隔も同程度を要する。したがって、位置調整を必要とする光学素子が物体に近い位置にあるほど、投光路及び受光路の光軸O1,O2の傾斜角度θを大きくとる必要がでてくる。その結果、投光路及び受光路それぞれの物体から最も遠い位置に存在する光学素子であるLD駆動基板13及びPD駆動基板43を、本実施形態と同じ距離まで近づけて配置することができず、小型化の妨げになる。すなわち、本実施形態によれば、投光路及び受光路それぞれの物体から最も遠い位置に存在する光学素子であるLD駆動基板13及びPD駆動基板43で位置調整を行う構成としたことで、投光路上及び受光路上に存在する他の光学素子で位置調整を行う構成とする場合よりも、装置の小型化に有利である。
【0066】
なお、本実施形態においては、位置調整を必要とする光学素子を、投光路及び受光路それぞれの物体から最も遠い位置に存在するLD駆動基板13及びPD駆動基板43とした構成であるが、これに限られない。例えば、LD駆動基板13及びPD駆動基板43をハウジング101に直接固定して位置決めし、位置調整を必要とする光学素子を投光光学系20及び受光光学系30とした構成であってもよい。
【0067】
更に、本実施形態においては、図11に示すように、LDA11をLD駆動基板13上の端部付近に配置し、かつ、PDA41をPD駆動基板43上の端部付近に配置し、これらの端部同士が対向するようにLD駆動基板13及びPD駆動基板43を配置している。これにより、LD駆動基板13及びPD駆動基板43がお互いに干渉しない範囲で、LDA11とPDA41との距離をなるべく近く配置することが可能となる。その結果、上述した光軸間角度θをより小さくすることができ、投光光学系20のカップリングレンズ22及びシリンドリカルレンズ23と受光光学系30の受光レンズ32との距離をより近づけて配置できるようになり、更なる装置の小型化を実現できる。
【0068】
なお、図11に示す構成は、回転ミラー26等の偏向器を備えていない物体検出装置にも適用することができるものである。
【0069】
〔変形例1〕
次に、上述した実施形態におけるレーザレーダ100の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
本変形例1では、偏向器として、回転ミラー26ではなく、反射面を所定の回動軸回りで往復回動させて光を偏向(走査)するMEMSミラーデバイス126を用いている点と、かつ、MEMSミラーデバイス126も上述したハウジング101に保持させる構成としている点で、上述した実施形態とは異なる構成となっている。以下、当該異なる構成を中心に説明する。
【0070】
図12は、本変形例1におけるレーザレーダ100におけるY軸に直交する断面を示す断面図である。
図13は、本変形例1におけるレーザレーダ100を、ハウジング101を取り除いた状態で示す斜視図である。
図14は、本変形例1におけるレーザレーダ100を、ハウジング101を取り除いた状態で、図12の右斜め上から見たときの斜視図である。
【0071】
本変形例1で用いるMEMSミラーデバイス126は、図中矢印で示すように所定の回転軸を中心に反射面が往復回動するように、所定の共振周波数で動作する。反射面をもつMEMSミラー126aは、ミラー固定部126bに固定され、そのミラー固定部126bがMEMS駆動基板126cに固定されている。MEMSミラー126aは半導体プロセスにより製造されるため、形状精度が高い。また、ミラー固定部126bは、アルミダイキャストに切削による2次加工を入れることで、高い形状精度が得られている。これらを治具によって位置決めして固定することにより、MEMSミラー126aとミラー固定部126bとを精度良く組み付けることができるので、MEMSミラーデバイス126の位置決めを、ミラー固定部126bで行うことができる。
【0072】
本変形例1では、ミラー固定部126bをハウジング101上のデバイス取付部に取り付けて位置決めすることで、同じハウジング101に保持されているLD駆動基板13、投光光学系20、受光光学系30及びPD駆動基板43との位置精度も高く確保することができる。
【0073】
LDA11からMEMSミラーデバイス126に向かって射出された光は、往復回動するMEMSミラー126aの反射面によって一次元往復走査される。投光光学系20と受光光学系30は、上述した実施形態と同様に、図14に示すように、Y軸方向(MEMSミラー126aの短手方向)における位置が略同一となるように配置されている。そのため、MEMSミラー126aの反射面によって反射されて物体検知領域に投光される投光路と、物体に当たって反射された反射光がMEMSミラー126aの反射面によって反射されてPDA41に向かう受光路の画角がほぼ一致するので、物体検知領域内の物体を検出することができる。
【0074】
また、投光光学系20と受光光学系30は、上述した実施形態と同様に、Z軸方向あるいはMEMSミラー126aの長手方向における位置が、互いにずれて配置されている。そのため、MEMSミラー126aの反射面に向かう投光路の光軸O1と、MEMSミラー126aの反射面からPDA41に向かう受光路の光軸O2は、所定の角度θをもって互いに傾斜するようになっている。その結果、物体検知領域に対しても、投光路の光軸O1と受光路の光軸O2とがずれることになるため、物体を検知できる範囲は、投光路の幅と受光路の幅とが重なる範囲となる。
【0075】
また、MEMSミラー126aの反射面上においては、図12に示すように、LDA11から投光される光の反射点とPDA41に受光される光(物体からの反射光)の反射点とがMEMSミラー126aの長手方向(MEMSミラー126aの回動軸方向)に離れることになる。そのため、MEMSミラー126aの反射面上での投光反射点による散乱光がPDA41に受光されにくく、PDA41に対して不要なゴースト光が入射することが抑制される。
【0076】
なお、投光路の光軸O1と受光路の光軸O2とが平行になるように構成すると、MEMSミラー126aの反射面上での投光路の光軸位置と受光路の光軸位置とが、本実施形態よりも更に離れる。投光路の光軸位置と受光路の光軸位置とが離れすぎると、MEMSミラー126aの長手方向長さが長くなる。MEMSミラー126aは共振によって往復回動するところ、MEMSミラー126aの長手方向長さが長くなると、慣性モーメントが大きくなり、共振周波数が低下する。共振周波数が低下すると、本実施形態のように移動体上に搭載される場合などのように外部振動を受ける環境下では、入力される衝撃や振動に対する破壊の余裕度が低下する。そのため、MEMSミラー126aの長手方向長さは短くすることが好ましい。また、MEMSミラー126aがシリコン基板(Si基板)から切り出して形成される場合、MEMSミラー126aの長手方向長さが短くなれば、1枚のSiウエハから得られるMEMSミラー126aの個数が増え、低コスト化にも有利である。
【0077】
以上の点を踏まえると、本実施形態のように投光路の光軸O1と受光路の光軸O2とが所定の角度θをもってお互いに傾斜するように構成することは、PDA41に対するゴースト光の入射抑制とともに、MEMSミラー126aの小型化を可能とし、走査の高速化、低コスト化の実現に寄与する。
【0078】
〔変形例2〕
次に、上述した実施形態におけるレーザレーダ100の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
本変形例2では、LD駆動基板13及びPD駆動基板43をそれぞれ基板保持部材に保持させた状態とし、これらの基板保持部材とハウジング101との間に硬化性樹脂102を介在させて、LD駆動基板13及びPD駆動基板43をハウジング101に取り付ける。なお、そのほかの点については、上述した変形例1と同様であるため、以下、異なる点を中心に説明する。
【0079】
図15は、本変形例2におけるレーザレーダ100におけるY軸に直交する断面を示す断面図である。
本変形例2において、LD駆動基板13はLD駆動基板用の基板保持部材15に対してネジ17によって固定されている。また、PD駆動基板43はPD駆動基板用の基板保持部材45に対してネジ47によって固定されている。これらの基板保持部材15,45は、3軸方向の位置調整を可能とするため、ハウジング101には直接接触しないように、硬化性樹脂102を介在させてハウジング101に取り付けられる。基板保持部材15,45は、位置調整完了後、固定工程を実施して硬化性樹脂102を硬化させてハウジング101に対して固定される。
【0080】
LD駆動基板13及びPD駆動基板43は、その基板の形状や材質、硬化性樹脂102を付着させることのできる領域などに制限がある。そのため、LD駆動基板13及びPD駆動基板43とハウジング101との間に硬化性樹脂102を介在させて固定する場合、ハウジング101の形状自由度、硬化性樹脂102の選択自由度、硬化性樹脂102の付着領域の自由度などが低い。
【0081】
そこで、本変形例2では、LD駆動基板13及びPD駆動基板43を基板保持部材15,45に固定し、これらの基板保持部材15,45とハウジング101との間に硬化性樹脂102を介在させて固定する。基板保持部材15,45は、形状や材質、硬化性樹脂102を付着させることのできる領域などの制限が少ないので、ハウジング101の形状自由度、硬化性樹脂102の選択自由度、硬化性樹脂102の付着領域の自由度などを高めることができる。よって、設計自由度が増え、ロバスト性の向上、組立調整容易性の向上などを図ることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、レーザレーダ100が搭載される移動体として自動車を例に説明したが、移動体は、自動車以外の車両、航空機、船舶等であっても良い。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、光源基板(例えばLD駆動基板13)上の光源(例えばLDA11)からの光を物体に投光光学系20を介して投光し、該物体からの反射光を、受光光学系30を介して受光基板(例えばPD駆動基板43)上の受光部(例えばPDA41)で受光する物体検出装置(例えばレーザレーダ100)であって、前記光源基板及び前記投光光学系のうちの一方の部材(例えば投光光学系20)と前記受光基板及び前記受光光学系のうちの一方の部材(例えば受光光学系30)は、保持部材(例えばハウジング101)に直接固定され、前記光源基板及び前記投光光学系のうちの他方の部材(例えばLD駆動基板13)と前記受光基板及び前記受光光学系のうちの他方の部材(例えばPD駆動基板43)は、位置調整材(例えば硬化性樹脂102)を介在させてそれぞれ保持部材に固定されていることを特徴とするものである。
従来の物体検出装置においては、投光ビーム(光源からの光)を反射する反射領域と物体で反射した受光ビーム(反射光)を透過する透過領域とを外側表面に備え、かつ、透過した受光ビームを反射する反射面を備えた1つのプリズムで、光源からの投光ビームの光路(投光路)と物体からの受光ビームの光路(受光路)とを分離する。この構成によれば、プリズムの反射面で反射した受光ビームが光源の方向へ向かうように、プリズムの反射面を形成することで、光源と受光部とを並べて配置することができ、装置の小型化が可能である。
ここで、物体検出装置は、一般に、光源からの光が所望の光路を通って物体に投光され、かつ、物体からの反射光が所望の光路を通って受光部で受光されるように、光源、受光部、光路上に存在する光学系が、互いに位置合わせ(位置や姿勢の調整)されている必要がある。従来の物体検出装置では、少なくとも光源と受光部とプリズムとの間の位置合わせが必要である。この位置合わせのために、例えば、光源を搭載する光源基板や受光部を搭載する受光基板の位置を調整ネジで調整する構成を採用すると、その調整ネジを設けるためのスペース(以下「位置合わせ調整用のスペース」という。)をそれぞれの基板上に確保する必要がある。そのため、これらの基板が大型化し、装置の大型化を招く。
本発明においては、光源基板及び投光光学系のうちの一方の部材と、受光基板及び受光光学系のうちの一方の部材は、それぞれ、保持部材に対して直接固定されるものであるため、保持部材の取付形状等によって位置合わせされる。その一方で、光源基板及び投光光学系のうちの他方の部材と、受光基板及び受光光学系のうちの他方の部材は、それぞれ、位置調整材を介在させて保持部材に固定されるので、位置調整材の機能により位置合わせされる。例えば、硬化性樹脂のように柔軟性・粘着性を備えた位置調整材を用いれば、位置調整材を介在させた状態で当該他方の部材を保持部材に対して位置調整し、その後に硬化処理を行って硬化させることで当該他方の部材を保持部材に固定することができる。位置調整材は、当該他方の部材と保持部材との間に介在するものであるため、従来必要であった位置合わせ調整用のスペースが実質的に不要となる。このように位置合わせ調整用のスペースが不要となることで、当該物体検出装置を構成するこれらの構成部品を、より限られた空間内に配置することができ、従来よりも装置の小型化が可能となる。
特に、本発明においては、光源基板、投光光学系、受光光学系、受光基板が、保持部材によって一体的に保持されるため、保持部材のそれぞれの箇所に取り付けるだけで、大まかな位置合わせ(位置や姿勢の調整)は完了する。そのため、位置調整材を用いて行う位置合わせは微調整で済むため、この点も装置の小型化に寄与する。
【0084】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記保持部材は、前記一方の部材を位置決めする位置決め手段(例えばハウジング101の取付形状部)を備えていることを特徴とするものである。
これによれば、適切な位置決めが可能となる。
【0085】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記位置調整材は硬化性樹脂102であることを特徴とするものである。
これによれば、位置調整材によって前記他方の部材の位置調整と保持部材への固定とを行うことができる。
【0086】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記投光光学系及び前記受光光学系は、それぞれの光軸O1,O2が互いに傾斜するように前記保持部材に固定されていることを特徴とするものである。
これによれば、光源からの光が直接的に受光部へ入射するゴースト光を抑制することができる。
【0087】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記投光光学系からの光を光偏向部材(例えば回転ミラー26やMEMSミラーデバイス126)によって偏向して物体へ投光し、該物体からの反射光を該光偏向部材と同一又は異なる光偏向部材によって偏向して前記受光光学系を介して前記受光部で受光することを特徴とするものである。
このような光偏向部材を備えた光走査型の物体検出装置における小型化を実現することができる。
【0088】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記投光光学系及び前記受光光学系は、偏向方向(例えばY軸方向)に対して直交する方向(例えばZ軸方向)へ互いにずれた位置で前記保持部材に対して固定されていることを特徴とするものである。
これによれば、光源からの光が直接的に受光部へ入射するゴースト光を抑制することができる。
【0089】
[第7態様]
第7態様は、第5又は第6態様において、前記投光光学系及び前記受光光学系は、偏向方向(例えばY軸方向)における略同一位置に固定されていることを特徴とするものである。
これによれば、偏向器による投光の偏向に対して同じ画角の受光をすることができる。
【0090】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれか物体検出装置(例えばレーザレーダ100)と、前記物体検出装置の出力に基づいて、物体の有無、物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度の少なくとも1つを含む物体検出情報を導出する情報処理装置(例えば監視制御装置301)とを有することを特徴とするセンシング装置300である。
これによれば、センシング装置の小型化を実現することができる。
【0091】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記物体検出装置は、移動体(例えば自動車400)に搭載され、前記情報処理装置は、物体の位置、物体の移動方向及び物体の移動速度のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、危険判断処理を実行することを特徴とするものである。
これによれば、移動体の周囲に存在する物体による危険を判断して、適宜、危険回避の処理、制御を実行することが可能となる。
【0092】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第7態様のいずれか物体検出装置を搭載することを特徴とする移動体(例えば自動車400)である。
小型の物体検出装置を搭載した移動体を提供することができる。
【0093】
[第11態様]
第11態様は、第9態様のセンシング装置を搭載することを特徴とする移動体(例えば自動車400)である。
小型のセンシング装置を搭載した移動体を提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 :LDA
12 :LD駆動装置
13 :LD駆動基板
15 :基板保持部材
17 :ネジ
20 :投光光学系
22 :カップリングレンズ
23 :シリンドリカルレンズ
24 :反射ミラー
26 :回転ミラー
30 :受光光学系
32 :結像光学系(受光レンズ)
40 :検出系
41 :PDA
43 :PD駆動基板
44 :PD出力検出部
45 :基板保持部材
46 :距離算出部
47 :ネジ
50 :同期系
52 :同期レンズ
56 :PD出力検出部
100 :レーザレーダ
101 :ハウジング
102 :硬化性樹脂
126 :MEMSミラーデバイス
126a :MEMSミラー
126b :ミラー固定部
126c :MEMS駆動基板
200 :光走査ユニット
300 :センシング装置
301 :監視制御装置
400 :自動車
401 :ECU
402 :表示モニタ
O1,O2:光軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【文献】特許5663251号公報
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