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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/281 20160101AFI20240411BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20240411BHJP
   A23G 9/34 20060101ALI20240411BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20240411BHJP
【FI】
A23L29/281
A23L29/269
A23G9/34
A23L29/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019131733
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021016312
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克亮
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029452(JP,A)
【文献】特開平10-117693(JP,A)
【文献】特開2013-150556(JP,A)
【文献】特開2006-137433(JP,A)
【文献】特開2016-019539(JP,A)
【文献】特開2010-088409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-20℃の冷凍下でゼリー状であるゼリー食品であって、
ゼラチンと、ネイティブジェランガムと、アルコールと、を含むことを特徴と
ゼラチンの含有量が0.8質量%以下であり、
ネイティブジェランガムの含有量が0.3質量%以下である、
ゼリー食品。
【請求項2】
前記ゼラチンと前記ネイティブジェランガムの含有量比が1:0.7~1:1.5である、請求項1に記載のゼリー食品。
【請求項3】
スパウト付きパウチ容器に充填されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項4】
前記アルコールがエタノールであることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のゼリー食品。
【請求項5】
前記エタノールの濃度が、1質量%以下であることを特徴とする、請求項4に記載のゼリー食品。
【請求項6】
ゼラチンと、ネイティブジェランガムと、アルコールと、を配合し、ゼリー原料を調整する工程と、
調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する充填工程を有
前記ゼリー原料におけるゼラチンの含有量が0.8質量%以下であり、
前記ゼリー原料におけるネイティブジェランガムの含有量が0.3質量%以下である、
-20℃の冷凍雰囲気下で飲用可能なゼリー食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、-20℃の冷凍下でゼリー状である食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲み口付きのパウチ容器に充填された食品(ゼリー飲料)が広く流通している(特許文献1~特許文献5)。また、飲み口付きのパウチ容器に充填された食品を冷凍することについても研究開発がされている(特許文献1、特許文献4、特許文献5)。
【0003】
例えば、特許文献1には、飲み口付きのパウチ容器に充填された食品を冷凍庫で凍結し、適度に解凍して飲用する食品が開示されている。
【0004】
特許文献6には、カルシウムを含有する冷菓生地(脱脂粉乳、生クリーム、牛乳等)中に粒状ゼリーを含有する形態とすることで、-15℃以下の冷凍下であっても未凍結の粒状ゼリーの弾力性を保持することが開示されている。
【0005】
また、特許文献7には、冷凍下でゼリー食感を有するバーアイスが開示されている。
【0006】
ところで、従来技術として、ゼラチンを保形のための主成分として含むゼリーに、ネイティブジェランガムを含む食品を入れることで、上面と下面の一方又は両方が層状となるゼリーを製造できることが知られている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-27917号公報
【文献】特開2010-259335号公報
【文献】特開2010-17163号公報
【文献】特許4339391号
【文献】特開2002-272431号公報
【文献】特開2014-54213号公報
【文献】特開2016-158512号公報
【文献】特開平10-286070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1、特許文献4、特許文献5に記載される食品は、冷凍状態においてはシャーベットのような舌触りであった。
また、特許文献8に開示されているゼリー食品は、別個に調製したゼラチンを含むゼリーと、ネイティブジェランガムを含む食品とを組み合わせ、食していく過程で内部の別の食品が現れてくるゼリーである。
【0009】
上記先行技術のあるところ、種々の飲み口付きのパウチ容器に充填された食品であって、新たな嗜好性をもった食品の更なる開発が求められていた。
【0010】
上記事情に鑑みなされた本発明は、従来にはない嗜好性をもったゼリー食品を提供することを課題とする。
【0011】
本発明者らは鋭意研究をおこなった結果、-20℃での冷凍下でゼリー状であるゼリー食品にゼラチンを含ませることで、より良好なゼリー食感を有する食品を製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、-20℃の冷凍下でゼリー状であるゼリー食品であって、ゼラチンを含むことを特徴とする。
本発明のゼリー食品は、-20℃の冷凍下でゼリー状であり、冷凍下で喫食した場合にもゼリー食感を楽しむことができる。
【0013】
また、本発明の好ましい形態では、ゼラチン以外のゲル化剤を含む。
ゼラチンとゼラチン以外のゲル化剤を組み合わせて用いることで、飲み口パウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記ゲル化剤がネイティブジェランガムである。
ゼラチンとネイティブジェランガムを組み合わせて用いることで、飲み口パウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記ゼリー食品は、飲み口付きパウチ容器に充填されている。
このような形態の食品は、冷凍庫から取り出した後、飲み口から飲用する感覚で手軽に喫食することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい形態では、さらに、アルコールを含む。
アルコールを用いることで、-20℃の冷凍下において良好なゼリー食感とすることができる。
【0017】
また、本発明の好ましい形態では、前記アルコールがエタノールである。
アルコールとしてエタノールを用いることで、-20℃の冷凍下において良好なゼリー食感とすることができる。また、エタノールは、少量で前記ゼリー食感を良好とする効果を奏するため、風味に与える影響を小さくすることができる。
【0018】
また、本発明の好ましい形態では、エタノールの濃度が1質量%以下である。
エタノール濃度が1質量%以下である食品は、-20℃の冷凍下で適度なゼリー強度を有する。そのため、特に、前述した飲み口付きのパウチ容器に充填される形態において、容器を手で掴んだり押したりすることにより食品を飲み口から容易に吐出させることができる。
【0019】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記ゼラチンの濃度が0.8質量%以下である。
ゼラチンの濃度を上限以下とすることで、冷凍下で良好なゼリー食感となる。
【0020】
また、前記課題を解決する本発明は、ゼラチンを配合し、ゼリー原料を調製する工程と、
調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する充填工程を有する、
-20℃の冷凍雰囲気下で飲用可能なゼリー食品の製造方法でもある。
【0021】
また、前記課題を解決する本発明は、ゼラチンとゼラチン以外のゲル化剤を含む、冷凍した食品でもある。
本発明の冷凍した食品は、冷凍下で良好なゼリー食感を楽しむことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、冷凍庫内の温度域で冷凍した場合にゼリー状であり、冷凍庫から取り出してすぐに喫食した場合でも良好なゼリー食感を有する食品又は冷凍した食品を提供することができる。
また、本発明の好ましい形態によれば、独自の嗜好性を備える、飲み口付きのパウチ容器に充填された食品又は冷凍食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更が可能である。
【0024】
本発明の食品は、多糖類やゼラチン等を含む高分子原料のネットワークに水が保持された組織を主とする食品であって、全体として弾力性及び保形性を有する。
「ゼリー状」とは、食品が弾力性及び保形性を有している状態を指す。
「ゼリー状」であることは、スプーンですくった際に、食品が崩壊することなく、角が立った状態であることで評価することができる。
ゼリー状の食品は、口に入れ、咀嚼したときに、弾性を感じながら崩壊していく食感(本明細書において「ゼリー食感」等という。)を有する。
また、「-20℃の冷凍下」とは、食品が-20℃雰囲気の冷凍庫内に一定時間(例えば24時間以上)保管され、十分に冷却された状態をいう。
本発明においては、食品を前記冷凍庫内から室温(20℃)に取り出してすぐ(3分以内)に評価した際にゼリー状であれば、「-20℃の冷凍下でゼリー状」であると評価することができる。
【0025】
以下、本発明のゼリー食品のより好ましい形態を説明する。
【0026】
本発明のゼリー食品の包装形態は特に限定されず、例えば、スパウト付きパウチ容器に充填されている形態を好ましく挙げることができる。
スパウト付きパウチ容器に充填されている形態であることで、冷凍庫で冷凍した状態のものを、特段の解凍操作をすることなく、容器の外側から手で掴んだり押したりして飲み口からゼリー食品を吐出させ、飲用する感覚で喫食することができる。
なお、このような形態のゼリー食品は、一般的にゼリー飲料などと呼ばれる。
【0027】
ここで、スパウト付きパウチ容器としては、例えば、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを挙げることができる(特許3663084号、特許3477396号、特許3659775号参照)。また、スパウト付きパウチ容器の飲み口とゼリー食品の収容部分をプラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器で一体成型したものであってもよい。また、スパウト部は、パウチ容器の上部のみにあってもよく、パウチ内部まで侵入しているものであってもよい。さらに、スパウト部(ストロー部)がなくても、パウチ容器先端部分が窄まった形状になっており、ストローの代わりになっている容器(オリヒロ社「Tパウチ」など)であってもよい(例:特許4988882)。
ここで、スパウト付きパウチ容器が備えるストロー部の有無や形状は、押出し後のゼリー食品の食感に影響を与える。そのため、求める押出し後のゼリー食品に求める食感に合わせて、スパウト付きパウチ容器が備えるストロー部の有無や形状を適宜選択することが可能である。なお、ストロー部がパウチ容器内に侵入していると、押出し後のゼリー食品は崩壊する傾向にある。
【0028】
本発明のゼリー食品は、常温で流通する製品として提供することも、冷凍状態(-18℃以下)で流通する冷凍ゼリー食品として提供することもできる。何れの場合も、家庭用や業務用冷凍庫の温度域(-18~-20℃)で冷凍した後に喫食する形態とすることができる。また、一度冷凍されたゼリー食品を常温で解凍しながら喫食する形態とすることもできる。
【0029】
以下、本発明のゼリー食品に含まれる各成分について好ましい形態を説明する。
なお、本明細書における各成分の含有量(濃度)に関する記載において、「ゼリー食品全体」とは、特に断りがない限り容器内に収容される可食部分全体を示し、容器は含まない。
【0030】
本発明のゼリー食品は、ゼラチンを含む。
-20℃での冷凍下でゼリー状であるゼリー食品にゼラチンを含ませることで、より良好なゼリー食感を有する食品を製造できる。
【0031】
ゼリー食品におけるゼラチンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。
ゼラチンの含有量が下限以上にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。そのため、ゼラチンの含有量が上記範囲内にあるゼリー食品によれば、ゼリー食感を楽しむことができる。
【0032】
また、ゼリー食品におけるゼラチンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.4質量%以下である。
ゼラチンの含有量が上限以下にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。そのため、ゼラチンの含有量が上記範囲内にあるゼリー食品によれば、ゼリー食感を楽しむことができる。
【0033】
ここで、用いるゼラチンのブルーム強度は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、より好ましくは140以上である。
ゼラチンのブルーム強度が下限以上にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。
【0034】
また、用いるゼラチンのブルーム強度は、好ましくは400以下、より好ましくは350以下、さらに好ましくは320以下である。
ゼラチンのブルーム強度が上限以下にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有する。
【0035】
ここで、ゼラチンのブルーム強度は、ブルーム式ゼリー強度計を用い、測定した値を用いることができる。
また、ゼラチンのブルーム強度としては、ゼリー強度評価試験治具を用い、ゼラチンの6.67(62/3)%水溶液を規定のカップに入れ製造したゼリーの表面を、10℃雰囲気下、径12.7mmのプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重(g)を測定し、該測定値を基に算出した値を用いることもできる。
【0036】
また、本発明のゼリー食品は、ゼラチン以外のゲル化剤を含む形態であることが好ましい。
ゼラチンとゼラチン以外のゲル化剤を組み合わせて用いることで、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下であっても、ゼリー食品を飲み口からの吐出性に優れる。
また、ゼラチンとゼラチン以外のゲル化剤を組み合わせて用いることで、飲み口パウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0037】
ここで、ゼラチン以外のゲル化剤としては、グルコマンナン、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、寒天、ジェランガム、アルギン酸及びペクチンから選ばれる1又は2以上を好ましく挙げることができる。
【0038】
中でも、ゲル化剤は、ネイティブジェランガムであることが好ましい。
ゼラチンとネイティブジェランガムを組み合わせて用いることで、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下であっても、ゼリー食品を飲み口からの吐出性に優れる。
また、ゼラチンとネイティブジェランガムを組み合わせて用いることで、飲み口パウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0039】
ゲル化剤がネイティブジェランガムである場合の、ゼリー食品におけるネイティブジェランガムの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。
ネイティブジェランガムの含有量を下限以上とすることで、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができる。
また、ネイティブジェランガムの含有量が下限以上であることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感を楽しむことができる。
【0040】
ゲル化剤がネイティブジェランガムである場合の、ゼリー食品におけるネイティブジェランガムの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。
ネイティブジェランガムの含有量を上限以下とすることで、スパウト付きパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下であっても、ゼリー食品を飲み口からの吐出性に優れる。
また、ネイティブジェランガムの含有量が上限以下であることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感を楽しむことができる。
【0041】
また、ゼラチンとネイティブジェランガムの含有量比は、1:0.2~1:3、より好ましくは1:0.4~1:2、さらに好ましくは1:0.7~1:1.5の範囲内にあることが好ましい。
ゼラチンとネイティブジェランガムの含有量の配合比が上記範囲内にあることで、飲み口パウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0042】
本発明のBrix値の下限は、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは37以上である。
ゼリー食品のBrix値が下限以上であるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度を有する。ゼリー食品のBrix値が下限以上であるゼリー食品は、解凍時の弾力性に優れる。
【0043】
本発明のBrix値の下限は、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。
ゼリー食品のBrix値が上限以下であるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度を有する。そのため、特に飲み口パウチ容器に充填する形態において、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0044】
なお、ゼリー食品のBrix値を算出する方法としては、糖度計を用いてBrix値を測定する方法を挙げることができる。また、屈折計を用いてBrix値を算出する方法、ゼリー食品中の糖分の濃度をBrix値検量線に照らしてBrix値を定める方法、等を挙げることができる。
【0045】
また、ゼリー食品のBrix値は、ゼリー食品中の糖質の含有量を調整することで、調節することができる。
【0046】
また、本発明においては、アルコールをさらに含むことが好ましい。
アルコールをさらに含む形態とすることで、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。また、アルコールは、酒類等からの由来であってもよい。
【0047】
中でも、本発明のゼリー食品は、エタノールを含むことが好ましい。
エタノールをさらに含む形態とすることで、吐出後の良好なゼリー食感と飲み口パウチ容器からの良好な吐出性を両立することができる。
【0048】
エタノールの含有量の下限は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上である。
また、エタノールの含有量の上限は、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.4質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下である。
エタノール濃度が上記範囲内にあることで、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度とすることができ、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において吐出性により優れる。
【0049】
また、本発明においては、糖アルコールをさらに含むことが好ましい。
中でも、本発明のゼリー食品は、エリスリトールを含むことが好ましい。
【0050】
エリスリトールの含有量の下限は、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは2.3質量%以上である。
また、エリスリトールの含有量の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.7質量%以下である。
エリスリトール濃度が上記範囲内にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度を有する。
【0051】
また、本発明のゼリー食品は、グリセリンを含む形態であることが好ましい。
【0052】
ゼリー食品におけるグリセリンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
グリセリンの含有量が下限以上にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度を有する。
【0053】
また、ゼリー食品におけるグリセリンの含有量は、ゼリー食品全体の好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、特に好ましくは10.5質量%以下である。
グリセリンの含有量が上限以下にあるゼリー食品は、-20℃の冷凍下でより適度なゼリー強度を有する。
【0054】
ここで、本発明のゼリー食品は、その含水量が好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
また、本発明のゼリー食品は、その含水量が90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
含水率を前記範囲とすることで、-20℃の冷凍下でより良好な食感とすることができる。
【0055】
なお、本発明のゼリー食品は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常ゼリー食品に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、ゼリー食品添加物、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、乳原料、食物繊維、安定剤等が挙げられる。
【0056】
また、得られるゼリー食品のpHが3.0~6.0、より好ましくは3.0~5.0、さらに好ましくは3.0~4.6となるように配合することが好ましい。得られるゼリー食品のpHが4.6以下とすることで、微生物の繁殖を抑えることができるため、ゼリー食品衛生上好ましい。また、pHを3.0以上とすることでゼリー食品の酸味を抑えることができるため、好ましい。
【0057】
また、本発明の食品の-20℃の冷凍下でのゼリー強度の下限は、好ましくは1N(kg・m/s)以上、より好ましくは2N(kg・m/s)以上である。また、本発明の食品の-20℃の冷凍下でのゼリー強度の上限は、好ましくは18N(kg・m/s)以下、より好ましくは15N(kg・m/s)以下、さらに好ましくは10N(kg・m/s)以下である。
ゼリー強度を前記範囲とすることで、良好な食感とすることができる。また、ゼリー強度を上限以下とすることで、特に飲み口付きのパウチ容器に充填する形態において、容器からの吐出性を良好にすることができる。
【0058】
なお、ゼリー強度は、例えば、食品を、レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を使用し、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、最大荷重20N(kg・m/s)の条件で測定(圧縮試験)することができる。また、最大荷重を超えた場合には測定値を20N(kg・m/s)とした。
【0059】
本発明は、冷凍した食品にも関する。本明細書において、冷凍した食品は、冷凍状態(-18℃以下)で食される食品を指す。なお、冷凍した食品には、冷凍状態(-18℃以下)で流通するものも、常温で流通し家庭で凍結するものも、含まれる。
本発明の冷凍した食品は、ゼラチンと、ゼラチン以外のゲル化剤を含む。
各成分や物性、包装の好ましい形態は、前述した本発明の食品の説明がそのままあてはまる。
【0060】
以下、本発明のゼリー食品の製造方法について、説明する。
なお、各成分や物性、包装の好ましい形態は、前述した本発明のゼリー食品の説明がそのままあてはまる。
【0061】
(1)調製工程
調製工程は、ゼリー原料を調製する工程である。
この際、本発明では、ゼラチンを配合することを含む。
【0062】
(2)充填工程
充填工程は、調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する工程である。
スパウト付きパウチ容器へのゼリー原料の充填操作は、例えば本出願人による特許第3527019号公報や、特開平11-157502号公報などに記載された方法によっておこなうことができる。
【0063】
ここで、本発明のゼリー食品の製造方法においては、上記(1)、(2)の工程を含むものであれば、充填工程後に加熱後冷却するといった方法、調製工程後のゼリー原料を一旦加熱して後、スパウト付きパウチ容器に充填し冷却する方法、加熱を経ない方法の何れの方法を含む。
ここで、加熱する場合には、加熱温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。殺菌条件を強くすることで、冷凍前のゼリー食品を常温流通することにも対応できる。
【実施例
【0064】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[試験例1] ゼラチンの影響
ゼラチンが、ゼリー食品の物性に与える影響を検討した。
【0066】
(1)ゼリー食品の製造
水に、下記表1に示す各原料を加え、ゼリー食品原料を調製した。調製したゼリー食品原料を95℃に加熱し、カップ容器もしくはスパウト付きパウチ容器に充填した。充填後、水槽で冷却し、24時間室温で放置した。さらに冷凍庫(-20℃)で24時間保管することで、比較例及び、実施例のゼリー食品を製造した。
なお、本実施例では、スパウト付きパウチ容器として、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを用いた(特許3659775号 参照)。なお、本実施例で用いたスパウト付きパウチ容器は、ストローがパウチ容器内部に侵入している形態である(特許3659775号の図1 参照)。
【0067】
【表1】
【0068】
(2)試験内容及び評価項目
製造したゼリー食品について、以下の試験及び評価をおこなった。なお、試験例1におけるBrix値は、デジタル糖度計(光屈折臨界角検出方式)を用いて計測した値である。
【0069】
・ゼリー強度(-20℃)
以下の方法により測定した値を、ゼリー食品のゼリー強度とした。
レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(N)もしくは、破断しない場合には測定中の最大応力(N)をゼリー強度とした。
【0070】
・-20℃冷凍下でのゼリー食感の評価
-20℃冷凍下での性状について、以下の基準を用いて、ゼリー飲料を専門とする評価者による評価をおこなった。
【0071】
(i)スパウト付きパウチ容器を解袋し、ゼリー食品を取り出した態様での評価
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したスパウト付きパウチ容器入りゼリー食品を解袋し、ゼリー食品を取り出した。取り出したゼリー食品を口に入れ、「ゼリー食感」を評価した(冷凍庫から取り出して3分以内)。
〇…ゼリー食感を感じる。舌や歯で押しつぶした際に弾力を感じる。
△…ゼリー食感を感じる。舌で微妙な弾力の有無を感じ取れる。
×…ゼリー食感を感じない。
【0072】
(ii)スパウト付きパウチ容器から吐出させた態様での評価
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したゼリー食品を、冷凍庫から室温に取り出し、手でスパウト付きパウチ容器を掴み、容器の飲み口からゼリー食品を吐出させた。吐出させたゼリー食品を口に入れ、「ゼリー食感」を評価した(冷凍庫から取り出して3分以内)。
〇…ゼリー食感を感じる。舌や歯で押しつぶした際に弾力を感じる。
△…ゼリー食感を感じる。舌で微妙な弾力の有無を感じ取れる。
×…ゼリー食感を感じない。
【0073】
・-20℃冷凍下でのスパウト付きパウチ容器からの吐出性
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したゼリー食品を、冷凍庫から室温に取り出し、手でスパウト付きパウチ容器を掴み、容器の飲み口からゼリー食品を吐出させて喫食した(冷凍庫から取り出して3分以内)。ゼリー食品の吐出性について、以下の基準を用いて、ゼリー飲料を専門とする評価者による評価をおこなった。なお、評価時の品温は-20℃であった。
〇…容器を掴む動作で容易にゼリー食品を吐出することができる。
△…容器を掴む動作でゼリー食品を吐出することができるが、過度な力を入れる必要がある。
×…吐出困難。
【0074】
・解凍品のゼリー食感及び弾力性
-20℃雰囲気の冷凍庫で24時間冷却したカップ容器入り食品を、冷凍庫から室温に取り出した後、水冷して解凍した後、スプーンですくって喫食した。ゼリー食感及び弾力性について、ゼリー飲料を専門とする評価者による評価をおこなった。
【0075】
(3)結果及び考察
表1の結果から、ゼラチンを含ませることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感が向上することがわかった。
【0076】
[試験例2] ゼラチンの含有量の影響
ゼラチンの含有量がゼリー食品の物性に与える影響を検討した。
【0077】
(1)試験内容及び評価項目
表2に示す量のゼラチンを含むゼリー食品を試験例1と同じ方法で製造した。
製造したゼリー食品を試験例1と同じ評価方法及び評価基準による評価に供した。
なお、試験例2におけるBrix値は、デジタル糖度計(光屈折臨界角検出方式)を用いて計測した値である。
【0078】
【表2】
【0079】
(2)結果及び考察
ゼラチンを一定量含むゼリー食品であれば、-20℃の冷凍下でより良好なゼリー食感を有することがわかった。ここで、ゼラチンの濃度を0.4質量%以下とすることで、ゼリー食感により優れることがわかった。
また、表2の結果から、ゼラチンとネイティブジェランガムを組み合わせることで、スパウト付きのパウチ容器に充填される形態において-20℃の冷凍下で容器を手で掴んだり押したりすることにより、ゼリー食品を飲み口から容易に吐出させることができることがわかった。
【0080】
[試験例3] エタノールの影響
次に、エタノールが食品の物性に与える影響について検討した。
【0081】
(1)試験内容及び評価項目
表3に示す量のエタノール含む食品を試験例1と同じ方法で製造した。
製造した食品を試験例1と同じ評価方法及び評価基準による評価に供した。
なお、試験例3におけるBrix値は、デジタル糖度計(光屈折臨界角検出方式)を用いて計測した値である。
【0082】
【表3】
【0083】
(2)結果及び考察
表3の結果から、ゼラチンを一定量含むゼリー食品であれば、エタノールの含有量によらず、-20℃の冷凍下でのゼリー食感が向上することがわかった。
また、表3の結果から、エタノールを含めることで、-20℃の冷凍下でのゼリー食感に、より優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、水分補給や栄養補給を目的とした食品であって、飲み口付きパウチ容器に充填して提供される製品に応用することができる。