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  • 特許-吸水性樹脂粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20240411BHJP
   C08F 6/00 20060101ALI20240411BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240411BHJP
   C08K 3/015 20180101ALI20240411BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20240411BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240411BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L101/14
C08F6/00
C08K3/01
C08K3/015
C08K7/24
A61F13/15 147
A61F13/53 300
A61F13/15 142
A61F13/15 141
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019126351
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021011539
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】居藤 崇志
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-346089(JP,A)
【文献】国際公開第2005/005549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/14
C08F 6/00
C08K 3/01
C08K 3/015
C08K 7/24
A61F 13/15
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロ多孔質無機材料及び重合体粒子を含み、該重合体粒子が無機還元剤を含有する、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
前記ミクロ多孔質無機材料がゼオライト及びリン酸ジルコニウムの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
前記ミクロ多孔質無機材料が抗菌性金属イオンを含む、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項4】
前記無機還元剤が前記重合体粒子の内部に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含有する吸収体。
【請求項6】
請求項5に記載の吸収体を備える吸収性物品。
【請求項7】
おむつである、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
水溶液中のエチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合することにより、含水ゲル状重合体を形成する重合工程と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥して重合体粒子を形成する乾燥工程とを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法であって、
前記重合工程中及び前記乾燥工程後からなる群から選択される少なくとも一つの工程でミクロ多孔質無機材料を添加することと、
前記重合工程から前記乾燥工程中までの間に、無機還元剤を添加することとを更に含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、衛生用品の分野で使用されており、例えばおむつ等の吸収性物品に含まれる吸収体の材料として使用されている。特許文献1には、吸水性樹脂と、抗菌性金属を担持した多孔性物質からなる抗菌剤と、金属キレート剤とを含有する吸水性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-346089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衛生用品中に含まれる吸水性樹脂粒子が尿等の金属イオン含有液を吸収してゲル化した後、長時間が経過すると、ゲルが劣化することがある。劣化したゲルは離水を生じやすいため、漏れの原因となり、また、使用者の肌荒れの原因となり得る。
【0005】
本発明は、尿等の金属イオン含有液を吸収した後のゲル安定性に優れた吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸水性樹脂粒子は、ミクロ多孔質無機材料及び重合体粒子を含み、該重合体粒子が無機還元剤を含有する。
【0007】
上記ミクロ多孔質無機材料は、ゼオライト及びリン酸ジルコニウムの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0008】
上記ミクロ多孔質無機材料は、抗菌性金属を含むことが好ましい。
【0009】
上記吸水性樹脂粒子において、上記無機還元剤が上記重合体粒子の内部に含まれることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記吸水性樹脂粒子を含有する吸収体を提供する。
【0011】
本発明はまた、上記吸収体を備える吸収性物品を提供する。
【0012】
上記吸収性物品は、おむつであってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、尿等の金属イオン含有液を吸収した後のゲル安定性に優れた吸水性樹脂粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】吸収性物品の一例を示す断面図である。
図2】ゲル強度測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0017】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、ミクロ多孔質無機材料及び重合体粒子を含み、該重合体粒子が無機還元剤を含有する。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、当該構成を備えることにより、尿等の金属イオン含有液を吸収した後に形成される膨潤ゲルが、長時間にわたり劣化しづらく、安定性に優れる。
【0018】
(ミクロ多孔質無機材料)
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子に用いられるミクロ多孔質無機材料は天然であってもよく、合成品であってもよい。ミクロ多孔質無機材料は、陽イオンを吸着する性質を有することが好ましい。ミクロ多孔質無機材料としては、例えば、ゼオライト、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、モンモリロナイト(ケイ酸塩鉱物)、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。中でも、ゲル安定性を高めやすい観点から、ゼオライト、及び/又はリン酸ジルコニウムが好適に用いられる。
【0019】
ミクロ多孔質無機材料の粒径は、例えば、0.5~10μmであってよく、0.7~5μmであってよい。
【0020】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子中のミクロ多孔質無機材料の含量は、重合体粒子100質量部に対して、例えば0.001~3質量部であってよく、0.01~1質量部であることが好ましく、0.01~0.5質量部であることがより好ましく、0.01~0.1質量部であることが更に好ましい。ミクロ多孔質無機材料の含有量が重合体粒子100質量部に対して0.001質量部以上であると、よりゲル安定を高められるため好ましく、3質量部以下であると、経済的観点から好ましい。
【0021】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子中のミクロ多孔質無機材料の含量は、吸水性樹脂粒子全量に対して例えば0.001~3質量%であってよく、0.01~1質量%であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましく、0.01~0.1質量%であることが好ましい。
【0022】
ミクロ多孔質無機材料は、抗菌性金属を含むことが好ましい。抗菌性金属は、例えば、銀、亜鉛、銅等であってよく、銀又は亜鉛が好ましく、銀及び亜鉛の組合せがより好ましい。さらに、抗菌性金属は、ミクロ多孔質無機材料にイオン状態で担持されていることが好ましい。すなわち、ミクロ多孔質無機材料は、抗菌性金属イオンを含むことが好ましい。抗菌性金属イオンは、例えば、銀イオン、亜鉛イオン、銅イオン等であってよい。
【0023】
ミクロ多孔質無機材料が抗菌性金属を含む場合、ミクロ多孔質無機材料における抗菌性金属の量は、ミクロ多孔質無機材料全量に対して例えば0.1~20質量%であってよい。
【0024】
ミクロ多孔質無機材料は、重合体粒子の内部に配置されていてもよく、重合体粒子の表面に配置されていてもよい。ゲル安定性を高める観点から、ミクロ多孔質無機材料は、重合体粒子の表面に配置されていることが好ましい。ミクロ多孔質無機材料は、例えば、重合体粒子を構成する単量体を重合する際に添加してもよく、重合して得られた重合体粒子と乾燥状態で混合することにより重合体粒子に添加してもよい。ミクロ多孔質無機材料は、乾燥状態で重合体粒子と混合されることにより重合体粒子に添加されることが好ましい。
【0025】
(無機還元剤)
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子に含まれる重合体粒子は、無機還元剤を含有する。本明細書において、無機還元剤とは、還元性を有する無機化合物をいう。無機還元剤は、還元性無機元素を有していればよく、具体的には、還元性の硫黄原子又は還元性のリン原子を有する化合物が挙げられ、好ましくは還元性の硫黄原子を含む化合物又は還元性のリン原子を含む水溶性化合物が挙げられる。
【0026】
硫黄原子を含む無機還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素アンモニウム等の亜硫酸水素塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸アンモニウム等のピロ亜硫酸塩;亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸アンモニウム、亜二チオン酸カルシウム、亜二チオン酸亜鉛等の亜二チオン酸塩;三チオン酸カリウム、三チオン酸ナトリウム等の三チオン酸塩;四チオン酸カリウム、四チオン酸ナトリウム等の四チオン酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩等が挙げられる。リン原子を含む無機還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
無機還元剤としては、これらの中でも、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、又は亜二チオン酸塩が好ましく、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウムがより好ましい。無機還元剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0028】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、無機還元剤は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又は、これらの両方に配置されてもよい。ゲル安定性を高める観点から、無機還元剤は重合体粒子の内部に含まれていることが好ましい。無機還元剤を重合体粒子の内部に含有させる方法としては、例えば、単量体を重合する前又は重合中に無機還元剤を添加する方法、単量体を重合して得られた含水ゲル状重合体を乾燥させる工程の前又は途中に添加する方法が挙げられる。特に、単量体を重合して得られた含水ゲル状重合体を乾燥させる途中で、かつ表面架橋工程の前に、無機還元剤の水溶液を添加することが好ましい。
【0029】
無機還元剤を添加するタイミングは、含水ゲル状重合体の含水率が5~70質量%である時点が好ましく、10~60質量%である時点がより好ましく、36~50質量%である時点が更に好ましい。含水ゲル状重合体の含水率については後述する。
【0030】
無機還元剤の含有量は、吸水性樹脂粒子全量に対して、例えば0.001~1質量%であってよく、0.001~0.5質量%であることが好ましく、0.003~0.1質量%であることがより好ましく、0.005~0.06質量%であることが更に好ましい。無機還元剤の含有量が吸水性樹脂全量に対して0.001質量部以上であると、尿等の金属イオン含有液を吸収した後のゲル安定性がより高められるため好ましい。無機還元剤の含有量が吸水性樹脂全量に対して1質量部以下であると、吸水性能を高められるため好ましい。
【0031】
(重合体粒子)
重合体粒子としては、例えば、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体であってよい。すなわち、重合体粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。エチレン性不飽和単量体としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を用いることができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0032】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0033】
これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが更に好ましい。すなわち、重合体粒子は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0034】
重合体粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70~100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であることがより好ましい。
【0035】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下が好ましく、25~70質量%がより好ましく、30~55質量%が更に好ましい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0036】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%であることが好ましく、50~90モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることが更に好ましい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0037】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。
【0038】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0039】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。吸水性樹脂粒子の適切な粒度分布が得られやすい観点、並びに、吸水性樹脂粒子の吸水特性及びそれを用いた吸収体及び吸収性物品の性能が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0040】
界面活性剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.08~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0041】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤としては、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0042】
高分子系分散剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.08~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0043】
炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6~8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
炭化水素分散媒は、工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、n-ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。また、同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n-ヘプタン及び異性体の炭化水素75~85%含有)を用いてもよい。
【0045】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30~1000質量部が好ましく、40~500質量部がより好ましく、50~400質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0046】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、過硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0047】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.05~10ミリモルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.05ミリモル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の使用量が10ミリモル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0048】
上述のラジカル重合開始剤は、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0049】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0050】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0051】
重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の,重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0052】
内部架橋剤の使用量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、0.01~10ミリモルがより好ましく、0.012~5ミリモルが更に好ましく、0.015~1ミリモルが特に好ましく、0.02~0.1ミリモルが極めて好ましく、0.025~0.08ミリモルが非常に好ましい。
【0053】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤を含む水相と、炭化水素分散媒、界面活性剤、必要に応じて高分子系分散剤等を含む油相とを混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0054】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0055】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0056】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2~3段で行うことが好ましい。
【0057】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤及び/又は内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0058】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5~4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0059】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に重合後架橋剤を添加して加熱することで架橋を施してもよい。重合後に架橋を行うことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて吸水特性を更に向上させることができる。
【0060】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の、2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。重合後架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0061】
重合後架橋剤の量は、好適な吸水特性が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下、10ミリモル以下、又は0.01~5ミリモルであってよい。
【0062】
重合後架橋剤の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋剤は、重合直後の含水率+3%から、乾燥工程の途中の含水率36%までの領域で添加することが好ましい。
【0063】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行うことにより重合体粒子(例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体粒子)が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0064】
重合体粒子の製造においては、乾燥工程(水分除去工程)又はそれ以降の工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分(表面及び表面近傍)の表面架橋が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性などを制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5~35質量%である時点が好ましく、10~35質量%である時点がより好ましく、15~30質量%である時点が更に好ましい。
【0065】
含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、無機還元剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0066】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0067】
表面架橋剤の使用量は、好適な吸水特性が得られやすい観点から、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.01~20ミリモルが好ましく、0.05~10ミリモルがより好ましく、0.1~5ミリモルが更に好ましく、0.15~1ミリモルが特に好ましく、0.2~0.5ミリモルが極めて好ましい。
【0068】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去すること、加熱減圧下で乾燥すること等により、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0069】
重合反応は、撹拌翼を有する各種撹拌機を用いて行うことができる。撹拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。
【0070】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、更に、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、重合体粒子の流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含むことができる。追加成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又は、これらの両方に配置され得る。吸水性樹脂粒子が金属キレート剤を含むと、ゲル安定性がより高められる傾向にあるため好ましい。
【0071】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、130~800μm、200~850μm、250~700μm、300~600μm、又は、300~450μmであってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、上述の製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0072】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水量は、優れたゲル強度が得られる観点から、50.0g/g以上、53.0g/g以上、又は55.0g/g以上であってよく、70g/g以下、68g/g以下、又は65g/g以下であってよい。生理食塩水の吸水量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0073】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、尿、血液等の体液の吸収性に優れており、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、タンポン等の衛生用品、ペットシート、犬又は猫のトイレ配合物等の動物排泄物処理材などの分野に応用することができる。
【0074】
(吸収体)
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体に好適に用いることができる。本実施形態に係る吸収体は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子を含有する。吸収体における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸収体が吸収性物品に使用された際に十分な液体吸収性能を得る観点から、吸収体の1平米あたり100~1000g(すなわち100~1000g/m)であることが好ましく、より好ましくは150~800g/m、更に好ましくは200~700g/mである。吸収性物品としての十分な液体吸収性能を発揮させる観点から、上記含有量は100g/m以上であることが好ましい。ゲルブロッキング現象の発生を抑制する観点から、上記含有量は1000g/m以下であることが好ましい。
【0075】
吸収体は、吸水性樹脂粒子に加えて更に、例えば繊維状物を備えていてよい。吸収体は、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物であってよい。吸収体における、吸水性樹脂粒子の質量割合は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計に対し、2%~100%であってよく、10%~80%であることが好ましく、20%~70%であることがより好ましい。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された形態であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた形態であってもよく、その他の形態であってもよい。
【0076】
繊維状物としては、例えば、微粉砕された木材パルプ、コットン、コットンリンター、レーヨン、セルロースアセテート等のセルロース系繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維が挙げられる。また、繊維状物は、上述の繊維の混合物でもよい。
【0077】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、例えば、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。
【0078】
熱融着性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー、ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイドや芯鞘構造からなる非全融型バインダーが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着する。ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との配合物が挙げられる。
【0079】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2ーエチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つ以上の単量体の重合物が挙げられる。これら接着性バインダーは、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0080】
本実施形態に係る吸収体は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、顔料、染料、抗菌剤、香料、粘着剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。これらの添加剤により、吸収体に種々の機能を付与することができる。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、吸収体は吸水性樹脂粒子中の無機粒子とは別に無機粉末を含んでいてもよい。無機粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト、カオリン、クレイ等が挙げられる。
【0081】
本実施形態に係る吸収体の形状は、特に限定されず、例えばシート状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、例えば0.1~20mm、0.3~15mmであってよい。
【0082】
(吸収性物品)
本実施形態に係る吸収性物品は、吸収体のほかに、例えば、コアラップ、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシートを備えていてよい。コアラップは、吸収体を保形するものである。液体透過性トップシートは、吸液対象の液体が浸入する側の最外部に配置されるものである。液体不透過性バックシートは、吸液対象の液体が浸入する側とは反対側の最外部に配置されるものである。
【0083】
吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生用品(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0084】
図1は、吸収性物品の一例を示す断面図である。図1に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性トップシート30と、液体不透過性バックシート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性バックシート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性トップシート30がこの順に積層している。図1において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
【0085】
吸収体10は、吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bと、を有する。吸水性樹脂粒子10aは、繊維層10b内に分散している。
【0086】
コアラップ20aは、吸収体10に接した状態で吸収体10の一方面側(図1中、吸収体10の上側)に配置されている。コアラップ20bは、吸収体10に接した状態で吸収体10の他方面側(図1中、吸収体10の下側)に配置されている。吸収体10は、コアラップ20aとコアラップ20bとの間に配置されている。
【0087】
コアラップ20a及びコアラップ20bは、例えば、吸収体10と同等の大きさの主面を有している。コアラップを用いることにより、吸収体の保形性を維持し、吸収体を構成する吸水性樹脂粒子等の脱落や流動を防止することができる。コアラップとしては、例えば、不織布、織布、ティッシュ、液体透過孔を有する合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられ、経済性の観点から、粉砕パルプを湿式成形してなるティッシュが好ましく用いられる。
【0088】
液体透過性トップシート30は、吸収対象の液体が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性トップシート30は、コアラップ20aに接した状態でコアラップ20a上に配置されている。液体不透過性バックシート40は、吸収性物品100において液体透過性トップシート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性バックシート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体透過性トップシート30及び液体不透過性バックシート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性トップシート30及び液体不透過性バックシート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。
【0089】
液体透過性トップシート30としては、不織布、多孔質シートなどが挙げられる。不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。なかでも、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布が好ましく用いられる。
【0090】
液体透過性トップシート30の構成素材としては、当該技術分野で公知の樹脂又は繊維を用いることができ、吸収性物品に用いられた際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、レーヨン、その他の合成樹脂又は合成繊維、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維などが挙げられる。構成素材としては、液体透過性トップシート30の強度を高める等の観点から、合成繊維が好ましく用いられ、なかでもポリオレフィン、ポリエステルであることが好ましい。これらの素材は、単独で用いられてもよく、2種以上の素材を組み合わせて用いられてもよい。
【0091】
液体透過性トップシート30に用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能を向上させる観点から、適度な親水性を有していることが望ましい。当該観点から、国際公開第2011/086843号に記載の「不織布の親水度」(紙パルプ試験方法No.68(2000)に準拠)に従って測定したときの親水度が、5~200のものが好ましく、10~150のものがより好ましい。このような親水性を有する不織布は、上述の不織布のうち、レーヨン繊維のように素材自身が適度な親水度を示すものを用いたものでもよく、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維に、公知の方法で親水化処理し、適度な親水度を付与したものを用いたものであってもよい。
【0092】
化学繊維の親水化処理の方法としては、例えば、スパンボンド不織布において、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものをスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、又は疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を得た後に親水化剤を含浸させる方法等が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0093】
液体透過性トップシート30に用いられる不織布は、吸収性物品に良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与すること、並びに吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きいことが好ましい。不織布の目付量は、好ましくは5~200g/mであり、より好ましくは8~150g/mであり、更に好ましくは10~100g/mである。また、不織布の厚さは、20~1400μmであることが好ましく、50~1200μmであることがより好ましく、80~1000μmであることが更に好ましい。
【0094】
液体不透過性バックシート40は、吸収体10に吸収された液体がバックシート40側から外部へ漏れ出すのを防止する。液体不透過性バックシート40には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂を主体とした液不透過性フィルム、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合された複合フィルム、耐水性のメルトブローン不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布などを用いることができる。吸収性物品の着用感を損なわないよう、柔軟性を確保する観点から、バックシート40は、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付量10~50g/mの樹脂フィルムを使用することができる。また、通気性素材を用いた場合、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することもできる。
【0095】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性トップシート30、及び、液体不透過性バックシート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。また、コアラップ20a,20bを用いて吸収体10を保形する方法は、特に限定されず、図1に示すように複数のコアラップにより吸収体が挟持されていてよく、1枚のコアラップにより吸収体が被覆されていてもよい。
【0096】
吸収体10は、液体透過性トップシート30に接着されていてもよい。吸収体10と液体透過性トップシート30とを接着することで、液体がより円滑に吸収体に導かれるため、液体漏れ防止により優れた吸収性物品が得られやすい。吸収体10がコアラップにより挟持又は被覆されている場合、少なくともコアラップと液体透過性トップシート30とが接着されていることが好ましく、更にコアラップと吸収体10とが接着されていることがより好ましい。接着方法としては、例えば、ホットメルト接着剤を液体透過性トップシート30に対してその幅方向へ所定間隔で縦方向ストライプ状、スパイラル状等の形状に塗布して接着する方法、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びその他の水溶性高分子から選ばれる水溶性バインダーを用いて接着する方法等が挙げられる。また、吸収体10が熱融着性合成繊維を含む場合は、その熱融着によって接着する方法を採用してもよい。
【0097】
本実施形態によれば、上述の吸水性樹脂粒子の製造方法により得られた吸水性樹脂粒子を用いた、吸収体の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、上述の吸水性樹脂粒子の製造方法により吸水性樹脂粒子を得る粒子製造工程を備える。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、粒子製造工程の後に、吸水性樹脂粒子と繊維状物とを混合する工程を備えてよい。本実施形態によれば、上述の吸収体の製造方法により得られた吸収体を用いた、吸収性物品の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、上述の吸収体の製造方法により吸収体を得る吸収体製造工程を備える。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、吸収体製造工程の後に、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを用いて吸収性物品を得る工程を備えてよく、当該工程では、例えば、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを互いに積層することにより吸収性物品を得る。
【実施例
【0098】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[製造例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機として翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた、内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン293gを入れ、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを添加した。フラスコ内の混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤を溶解した。その後、形成された溶液を50℃まで冷却した。
【0100】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れ、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.011g(0.063ミリモル)を加えて溶解することにより、第1段目の水性液を調製した。
【0101】
第1段目の水性液を上記フラスコに添加して、10分間撹拌した。別途、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを加熱溶解することにより界面活性剤溶液を調製した。当該界面活性剤溶液を上記フラスコに更に添加して、撹拌機の回転数を550rpmまで増速して撹拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、上記フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0102】
別の内容積500mLのビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)を入れ、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.013g(0.075ミリモル)を加えて溶解することにより、第2段目の水性液を調製した。
【0103】
撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、上記フラスコ系内を25℃に冷却した。その後、上記第2段目の水性液の全量を、上記第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で30分間置換した。その後、再度上記フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行って、含水ゲル状重合体を含むスラリーを得た。
【0104】
その後、125℃に設定した油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、176.6gの水を系外へ抜き出した。その後、上記フラスコに無機還元剤として3質量%の亜硫酸ナトリウム水溶液4.42g及びキレート剤として4.5質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液5.89gを撹拌下で添加した。
【0105】
その後、125℃に設定した油浴に上記フラスコを再び浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、更に89.1g(合計265.7g)の水を系外へ抜き出した。その後、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0106】
その後、n-ヘプタン及び水を125℃にて蒸発させて乾燥させ、得られた乾燥品を目開き850μmの篩に通過させることで、222.4gの重合体粒子(乾燥品)を得た。
【0107】
[製造例2]
ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液を用いなかったこと、及び、2度目に共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を83.4g(合計量260.0g)としたこと以外は製造例1と同様にして、重合体粒子(乾燥品)220.8gを得た。
【0108】
[製造例3]
亜硫酸ナトリウム水溶液を用いなかったこと、及び、2度目に共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を84.8g(合計量261.4g)としたこと以外は製造例1と同様にして、重合体粒子(乾燥品)223.7gを得た。
【0109】
[製造例4]
製造例1と同様にして、含水ゲル状重合体を含むスラリーを得た。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、255.8gの水を系外へ抜き出した。その後、上記フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0110】
その後、n-ヘプタン及び水を125℃にて蒸発させて乾燥させ、得られた乾燥品を目開き850μmの篩に通過させることで、222.2gの重合体粒子(乾燥品)を得た。
【0111】
[吸水性樹脂粒子の製造]
[実施例1]
製造例1により得られた重合体粒子を、重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)と混合することにより、非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物を得た。
【0112】
この混合物100gに対して、ミクロ多孔質無機材料として0.03gのゼオミックHD10N(シナネンゼオミック株式会社製、合成ゼオライト、銀イオン及び亜鉛イオン含有、平均粒径1~2μm)をドライブレンドすることによって、実施例1の吸水性樹脂粒子を得た。
【0113】
ドライブレンドは次の方法で行った。容器内に上記混合物及びミクロ多孔質無機材料を所定の割合で投入した。明和工業株式会社製クロスロータリー混合機を用いて、自転回転数50rpm及び公転回転数50rpmの条件で30分間回転することにより、容器内の材料を混合した。
【0114】
非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0115】
[実施例2]
ミクロ多孔質無機材料としてゼオミックHD10Nの代わりに0.03gのゼオミックAJ10D(シナネンゼオミック株式会社製、合成ゼオライト、銀イオン及び亜鉛イオン含有、平均粒径2~3μm)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0116】
[実施例3]
製造例1により得られた重合体粒子の代わりに製造例2により得られた重合体粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は350μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は62g/gであった。
【0117】
[実施例4]
ミクロ多孔質無機材料としてゼオミックHD10Nの代わりにゼオミックAJ10Dを用いたこと以外は実施例3と同様にして、実施例4の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は350μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は62g/gであった。
【0118】
[実施例5]
ミクロ多孔質無機材料としてゼオミックHD10Nの代わりにノバロンAG1100(東亞合成株式会社製、ナトリウム水素リン酸ジルコニウム、銀イオン含有、平均粒径0.9μm)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0119】
[実施例6]
ミクロ多孔質無機材料としてゼオミックHD10Nの代わりにダッシュライトZH10N(シナネンゼオミック株式会社製、合成ゼオライト、亜鉛イオン含有、平均粒径1~2μm)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0120】
[実施例7]
ミクロ多孔質無機材料としてゼオミックHD10Nの代わりにゼオライト♯70(日東粉化工業株式会社製、モルデナイト系天然ゼオライト)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0121】
[実施例8]
ミクロ多孔質無機材料としてゼオミックHD10Nの代わりに0.5gのAO10N(シナネンゼオミック株式会社製、抗菌性金属を担持していない合成ゼオライト、平均粒径2~3μm)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は60g/gであった。
【0122】
[実施例9]
ミクロ多孔質無機材料としてAO10Nの添加量を0.03gに変更したこと以外は実施例8と同様にして、実施例9の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0123】
[比較例1]
製造例1により得られた重合体粒子の代わりに製造例3により得られた重合体粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較例1の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は365μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0124】
[比較例2]
ミクロ多孔質無機材料を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は360μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は61g/gであった。
【0125】
[比較例3]
製造例1により得られた重合体粒子の代わりに製造例4により得られた重合体粒子を用いたこと以外は実施例9と同様にして、比較例3の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は348μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は60g/gであった。
【0126】
[比較例4]
製造例1により得られた重合体粒子の代わりに製造例4により得られた重合体粒子を用いたこと、及び、ミクロ多孔質無機材料を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の吸水性樹脂粒子を得た。非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は348μmであった。得られた吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は60g/gであった。
【0127】
[中位粒子径の測定]
粒子の中位粒子径は下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。なお、ミクロ多孔質無機材料の混合前後で中位粒子径は実質的に変動がないため、各実施例及び比較例で測定した、非晶質シリカ及び重合体粒子を含む混合物の中位粒子径は、吸水性樹脂粒子の中位粒子径とみなすことができる。
【0128】
[無機還元剤の定量]
実施例1により得られた吸水性樹脂粒子中の無機還元剤(亜硫酸ナトリウム)の量を、以下の方法によって測定した。実施例1により得られた吸水性樹脂粒子中の無機還元剤量は、86ppmであった。
吸水性樹脂粒子約10mgをポリプロピレン製容器に採取して秤量し、イオン交換水30mLを加え、蓋をして室温で1時間振とうした。次に、得られた抽出液をろ紙(No.7)を用いてろ過した後、イオン交換水を用いて100mLに定容してイオンクロマトグラフィー(IC)定量分析を行った。IC条件は下記のとおりとした。
IC装置:Thermo Fisher Scientific、ICS-5000
カラム:Dionex IonPac AS18-4μm(2mm×150mm)
ガードカラム:Dionex IonPac AG18-4μm(2mm×30mm)
除去システム:Dionex AERS-500(エクスターナルモード)
検出器:電気伝導度検出器
溶離液:17mM KOH水溶液(溶離液ジェネレーターEGC500を使用)
流速:0.25mL/min.
試料注入量:100μL
【0129】
[生理食塩水の吸水量(g/g)]
吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水量は以下の方法で測定した。500mL容のビーカーに、生理食塩水500gを量り取り、600r/minで撹拌させながら、吸水性樹脂粒子2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌させた状態で60分間放置し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。その後、あらかじめ目開き75μm標準篩の質量Wa(g)を測定しておき、これを用いて、上記ビーカーの内容物をろ過し、篩を水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、30分間放置することにより余剰の水分をろ別した。膨潤ゲルの入った篩の質量Wb(g)を測定し、以下の式により、生理食塩水吸水能を求めた。
生理食塩水の吸水量=(Wb-Wa)/2.0
【0130】
[ゲル安定性評価]
実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂粒子について、以下の方法でゲル安定性を評価した。
【0131】
(人工尿の調製)
以下の組成の人工尿を調製した。
尿素:20.0g
塩化ナトリウム:8.0g
塩化カルシウムニ水和物:0.3g
硫酸マグネシウム七水和物:0.8g
硫酸第一鉄七水和物:0.05g
イオン交換水:970.9g
【0132】
(ゲルの調製)
内容積100mLのビーカーに、上記人工尿49.0gを量り取り、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、マグネチックスターラー(iuchi社製:HS-30D)の上に配置した。引き続きマグネチックスターラーバーを600回転/分で回転するように調整した。次に、吸水性樹脂粒子1.0gを撹拌中のビーカー内に投入し、回転渦が消えて液面が水平になるまで撹拌を続け、測定試料となる膨潤ゲルを調製した。膨潤ゲルを調製した直後に、膨潤ゲルの入ったビーカーをラップ(三菱ケミカル株式会社製、ダイアラップ)で覆った。
【0133】
(ゲル強度の評価)
ゲル強度は、図2に示す測定原理を有する装置を用いて測定した。図2に示す装置は、支持部50、可動台板60、可動台板60を駆動するための駆動部70、及び測定部80から構成される。支持部50において、支持台51に立てられた支柱52の上部に架台53が固定されている。支柱52には、上下に移動するように可動台板60が取り付けられている。可動台板60は、測定試料(ゲル)61を搭載することができる。架台53上にはパルスモーター71が搭載され、プーリー72を回転させることによって、ワイヤー73を介して可動台板60を上下に移動する。
【0134】
測定部80において、変形により生ずる歪みを計測するためのロードセル81に、精密スプリング82及び連継軸83を介して感圧軸84が取り付けられている。ディスク付き感圧軸84は、先端にディスクを有する。測定条件により、ディスクの直径は変更することができる。ディスク付き感圧軸84の上部には重り90を搭載することができる。
【0135】
ゲル強度を測定する装置の作動原理は、次のとおりである。精密スプリング82を、上方のロードセル81(応力検出器)に固定し、下方にはディスク付き感圧軸84を連結して所定の重り90を乗せて垂直に懸吊してある。測定試料61を乗せた可動台板60は、パルスモーター71の回転により一定速度で上昇する。スプリング82を介して試料61に定速荷重を加え、変形により生ずる歪みをロードセル81で計測し、硬さを測定演算するものである。
【0136】
ゲル強度値(N/m)は、Curdmeter-mini(I.techno engineering製、品番:ME-600)を用いて、感圧軸のディスク16mmφ、荷重400g、スピード7秒/インチ、粘稠モード設定で、下記の所定時間に測定した。
【0137】
膨潤ゲルを調製から30分間25±2℃の室温下で放置した後に、上記方法によりゲル強度(ゲル強度初期値)を測定した。また、劣化を促進するため、膨潤ゲルを調製から3時間、40℃の熱風乾燥機内で放置した後で、ゲル強度(ゲル強度3時間後値)を測定した。それぞれのゲル強度は3回測定し、その平均値を用いた。
【0138】
得られたゲル強度初期値及び3時間後値から、下記式により3時間ゲル強度変化率(%)を算出した。結果を表1に示す。変化率が低いほどゲル安定性が高いことを示す。
3時間ゲル強度変化率(%)=[(ゲル強度初期値-ゲル強度3時間後値)/ゲル強度初期値]×100
【0139】
【表1】




【0140】
ミクロ多孔質無機材料を含むが無機還元剤を含まない比較例1及び3、並びにミクロ多孔質無機材料を含まないが無機還元剤を含む比較例2では、ミクロ多孔質無機材料及び無機還元剤をいずれも含まない比較例4と比べて、ゲル安定性が僅かに向上していることが確認された。一方、ミクロ多孔質無機材料及び無機還元剤を含む実施例では、比較例と比べてゲル安定性が著しく向上したことが示された。
【0141】
さらに、実施例9及び比較例1について、ゲル強度の初期値及び6時間後値を測定し、下記式により初期値からの6時間後のゲル強度変化率を算出した。ゲル強度6時間後値は、放置時間を6時間に変更したこと以外は上記ゲル強度3時間後値と同様に測定した。結果を表2に示す。
6時間ゲル強度変化率(%)=[(ゲル強度初期値-ゲル強度6時間後値)/ゲル強度初期値]×100
【表2】
【0142】
実施例9では、6時間後のゲル強度変化率は31%に留まった。一方、比較例1では、3時間後のゲル強度変化率は39%であったが、6時間後のゲル強度変化率は57%に達し、更に著しく劣化が進むことが確認された。
【符号の説明】
【0143】
10…吸収体、10a…吸水性樹脂粒子、10b…繊維層、20a,20b…コアラップ、30…液体透過性トップシート、40…液体不透過性バックシート、50…支持部、51…支持台、52…支柱、53…架台、60…可動台板、61…測定試料、70…駆動部、71…パルスモーター、72…プーリー、73…ワイヤー、80…測定部、81…ロードセル、82…精密スプリング、83…連継軸、84…ディスク付き感圧軸、90…重り、100…吸収性物品。
図1
図2