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特許7470532化合物、組成物、フィルム、積層構造体、発光装置、ディスプレイ及び化合物の製造方法
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  • 特許-化合物、組成物、フィルム、積層構造体、発光装置、ディスプレイ及び化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】化合物、組成物、フィルム、積層構造体、発光装置、ディスプレイ及び化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/21 20060101AFI20240411BHJP
   C07C 257/12 20060101ALI20240411BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240411BHJP
   C01G 21/16 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C07C211/21 CSP
C07C257/12
C09K11/08
C01G21/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020033505
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2020142981
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019037920
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】杉内 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】有村 孝
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】Journal of the American Chemical Society,2016年,138,14202-14205
【文献】The Journal of Physical Chemistry Letters,2017年,8,6041-6047
【文献】Physical Review Materials,2018年,2,116003,ISSN 2475-9953
【文献】Chemistry of Materials,2017年,29,8433-8439
【文献】Advanced Materials,2016年,28,10088-10094
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C09K,C01G
CAPlus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折パターンにおいて、面のミラー指数(001)のピークの半値幅が0.10以上、0.60未満であり、A、B、及びXを構成成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する化合物。
(Aは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、1価の陽イオンであり、炭素原子数が3以下の有機アンモニウムイオン、又は下記式(A4)で表される炭素原子数が3以下のアミジニウムイオンである
(R 10 11 N=CH-NR 12 13 ・・・(A4)
前記式(A4)中、R 10 ~R 13 は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
Xは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする8面体の各頂点に位置する成分であって、ハロゲン化物イオンである。
Bは、ペロブスカイト型結晶構造において、Aを頂点に配置する6面体、及びXを頂点に配置する8面体の中心に位置する成分であって、イオンである。)
【請求項2】
前記Aは、メチルアンモニウムイオン又は(H N=CH-NH で表されるアミジニウムイオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Aは、(H N=CH-NH で表されるアミジニウムイオンである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、又はフッ化物イオンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記Xは、臭化物イオンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物と、下記(2-1)、下記(2-1)の改質体、下記(2-2)及び下記(2-2)の改質体からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物と、を含む組成物。
(2-1)シラザン
(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物と、下記(3)、下記(4)及び下記(5)からなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含む組成物。
(3)溶媒
(4)重合性化合物
(5)重合体
【請求項8】
更に、下記(3)、下記(4)及び下記(5)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項に記載の組成物。
(3)溶媒
(4)重合性化合物
(5)重合体
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を含むフィルム。
【請求項10】
請求項のいずれか一項に記載の組成物を形成材料とするフィルム。
【請求項11】
請求項又は10に記載のフィルムを含む積層構造体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層構造体を備える発光装置。
【請求項13】
請求項11に記載の積層構造体を備えるディスプレイ。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
前記A及び前記Bを含む第1溶液を得る工程と、
前記Xを含む第2溶液を得る工程と、
前記第1溶液及び前記第2溶液を混合して混合液を得る工程と、
得られた混合液を冷却する工程と、を含み、
前記混合液は、水を含み、
の質量Wに対する、前記水の質量Wの比である(W/W)が0.05~100である、化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物、フィルム、積層構造体、発光装置、ディスプレイ及び化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光材料として、発光性の半導体化合物が注目されている。色純度の高い発光材料を製造するため、発光性の半導体化合物は、その発光スペクトルの半値幅がより狭く急峻な発光ピークとなることが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Advanced Materials 2016, 28, p.10088-10094
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の発光性の半導体化合物として、例えば、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、非特許文献1に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、発光スペクトルの半値幅が広く、色純度の向上が期待できるものではない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、発光スペクトルの半値幅が狭い、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、前記化合物を含む組成物、前記組成物を形成材料とするフィルム、前記フィルムを含む積層構造体、前記積層構造体を備える発光装置、ディスプレイ、及び化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
【0007】
本発明は下記の[1]~[10]を包含する。
[1] X線回折パターンにおいて、面のミラー指数(001)のピークの半値幅が0.10以上、0.60未満であり、A、B、及びXを構成成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する化合物。
(Aは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、1価の陽イオンである。
Xは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする8面体の各頂点に位置する成分であって、ハロゲン化物イオン、及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンである。
Bは、ペロブスカイト型結晶構造において、Aを頂点に配置する6面体、及びXを頂点に配置する8面体の中心に位置する成分であって、金属イオンである。)
[2] 請求項1に記載の化合物と、下記(2-1)、下記(2-1)の改質体、下記(2-2)及び下記(2-2)の改質体からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物と、を含む組成物。
(2-1)シラザン
(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物
[3] [1]に記載の化合物と、下記(3)、下記(4)及び下記(5)からなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含む組成物。
(3)溶媒
(4)重合性化合物
(5)重合体
[4] 更に、下記(3)、下記(4)及び下記(5)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む[2]に記載の組成物。
(3)溶媒
(4)重合性化合物
(5)重合体
[5] [1]に記載の化合物を含むフィルム。
[6] [2]~[4]のいずれか一項に記載の組成物を形成材料とするフィルム。
[7] [5]又は[6]に記載のフィルムを含む積層構造体。
[8] [7]に記載の積層構造体を備える発光装置。
[9] [7]に記載の積層構造体を備えるディスプレイ。
[10] 金属元素Mの単体及び金属元素Mを含む化合物のいずれか一方又は両方を含有する原料と水とを混合する工程と、前記水の存在下で前記原料を反応させる工程と、を含む半導体化合物の製造方法であって、前記原料に含まれる金属元素Mの質量Wに対する、前記水の質量Wの比である(W/W)が0.05~100である、X線回折パターンにおいて、面のミラー指数(001)のピークの半値幅が0.10以上、0.60未満である金属元素Mを含む半導体化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光スペクトルの半値幅が狭い、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、前記化合物を含む組成物、前記組成物を形成材料とするフィルム、前記フィルムを含む積層構造体、前記積層構造体を備える発光装置及びディスプレイを提供することができる。
また、本発明によれば、発光スペクトルの半値幅が狭い、化合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る積層構造体の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係るディスプレイの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を示して本発明を詳細に説明する。
【0011】
<ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物>
本実施形態の化合物はA、B、及びXを構成成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」、「(1)ペロブスカイト化合物」、又は単に「(1)」ともいう。)である。
Aは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする六面体の各頂点に位置する成分であって、1価の陽イオンである。
Bは、ペロブスカイト型結晶構造において、Aを頂点に配置する六面体、及びXを頂点に配置する八面体の中心に位置する成分であって、金属イオンである。BはXの八面体配位をとることができる金属カチオンである。
Xは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする八面体の各頂点に位置する成分であって、ハロゲン化物イオン、及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンである。
【0012】
A、B、及びXを構成成分とするペロブスカイト化合物の構造としては、3次元構造、2次元構造、疑似2次元(quasi-2D)構造のいずれの構造であってもよい。
3次元構造の場合、ペロブスカイト化合物の組成式は、ABX(3+δ)で表される。
2次元構造の場合、ペロブスカイト化合物の組成式は、ABX(4+δ)で表される。
【0013】
ここで、δは、Bの電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、-0.7以上0.7以下である。例えば、Aが1価の陽イオン、Bが2価の陽イオン、Xが1価の陰イオンである場合、ペロブスカイト化合物が電気的に中性となるようにδを選択することができる。ペロブスカイト化合物が電気的に中性とは、ペロブスカイト化合物の電荷が0であることを意味する。
【0014】
ペロブスカイト化合物は、Bを中心とし、頂点をXとする八面体を含む。八面体は、BXで表される。
ペロブスカイト化合物が3次元構造を有する場合、ペロブスカイト化合物に含まれるBXは、八面体(BX)において頂点に位置する1つのXを、結晶中で隣り合う2つの八面体(BX)で共有することで、3次元ネットワークを構成する。
【0015】
ペロブスカイト化合物が2次元構造を有する場合、ペロブスカイト化合物に含まれるBXは、八面体(BX)において頂点に位置する2つのXを、結晶中で隣り合う2つの八面体(BX)で共有することで八面体の稜線を共有し、2次元的に連なった層を構成する。ペロブスカイト化合物では、2次元的に連なったBXからなる層と、Aからなる層と、が交互に積層された構造を有する。
【0016】
本明細書において、ペロブスカイト化合物の結晶構造は、X線回折(以下、XRDともいう)パターンにより確認することができる。更に、複数のペロブスカイト化合物で構成されるペロブスカイト化合物の混合物中のペロブスカイト化合物それぞれの結晶分布もまたXRDにより確認することができる。
【0017】
ペロブスカイト化合物が3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する場合、通常、X線回折パターンにおいて、ペロブスカイト化合物の面のミラー指数(hkl)は、2θ=12~18°の位置に、(hkl)=(001)に由来するピークが確認される。又は2θ=18~25°の位置に、(hkl)=(110)に由来するピークが確認される。
【0018】
ペロブスカイト化合物が3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する場合、通常、X線回折パターンにおいて、ペロブスカイト化合物の面のミラー指数(hkl)は、2θ=13~16°の位置に、(hkl)=(001)に由来するピークが確認される、又は2θ=20~23°の位置に、(hkl)=(110)に由来するピークが確認されることが好ましい。
【0019】
ペロブスカイト化合物が2次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する場合、通常、X線回折パターンにおいて、ペロブスカイト化合物の面のミラー指数(hkl)は、2θ=1~10°の位置に、(hkl)=(002)由来のピークが確認される。また、2θ=2~8°の位置に、(hkl)=(002)由来のピークが確認されることが好ましい。
【0020】
ペロブスカイト化合物は、3次元構造を有することが好ましい。
【0021】
XRDによって測定したX線回折パターンにおいて、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物の(hkl)=(001)のピークの半値幅は0.10(deg)以上、0.60(deg)未満である。前記半値幅は、0.15(deg)以上、0.50(deg)以下が好ましく、0.20(deg)以上、0.30(deg)以下がより好ましく、0.20(deg)以上、0.25(deg)以下がさらに好ましい。
(1)ペロブスカイト化合物の(hkl)=(001)のピークの半値幅が0.15以上であると、ペロブスカイト化合物の結晶が安定的に形成される。また、前記ピークの半値幅が0.20以上であると、上記効果に加え、励起光の吸収率が向上する。
(1)ペロブスカイト化合物の(hkl)=(001)のピークの半値幅が0.60未満であると、発光波長の半値幅が狭くなる。
【0022】
(1)ペロブスカイト化合物の(hkl)=(001)の半値幅は、XRDパターン(CuKα線)より、統合粉末X線解析ソフトウェア PDXL(リガク社製)を用いて算出することができる。
【0023】
本実施形態のペロブスカイト化合物及び後述の製造方法で製造される半導体化合物の(hkl)=(001)の半値幅は、具体的には、以下のようにして確認することが出来る。
本実施形態のペロブスカイト化合物又は後述の製造方法で製造される半導体化合物を含む分散液組成物を洗浄した無反射板に0.05mL滴下し、自然乾燥させる。CuKαを線源とし、かつ回折角2θの測定範囲を5°以上60°以下とする粉末X線回折測定を行い、(hkl)=(001)に対応するピークを決定する。さらに、上述の解析ソフトを用いて、決定した(hkl)=(001)の半値幅を算出する。
【0024】
(構成成分A)
ペロブスカイト化合物を構成するAは、1価の陽イオンである。Aとしては、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンが挙げられる。
【0025】
(有機アンモニウムイオン)
Aの有機アンモニウムイオンとして具体的には、下記式(A3)で表される陽イオンが挙げられる。
【0026】
【化1】
【0027】
式(A3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R~Rは、少なくとも1つがアルキル基又はシクロアルキル基であり、R~Rの全てが同時に水素原子となることはない。
【0028】
~Rで表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、R~Rで表されるアルキル基は、それぞれ独立に置換基としてアミノ基を有していてもよい。
【0029】
~Rで表されるアルキル基の炭素原子数は、それぞれ独立に通常1~20であり、1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0030】
~Rで表されるシクロアルキル基は、それぞれ独立に置換基としてアミノ基を有していてもよい。
【0031】
~Rで表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、それぞれ独立に通常3~30であり、3~11であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含む。
【0032】
~Rで表される基としては、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
【0033】
ペロブスカイト化合物が、Aとして上記式(A3)で表される有機アンモニウムイオンを含む場合、式(A3)に含まれ得るアルキル基及びシクロアルキル基の数は少ないとよい。また、式(A3)に含まれ得るアルキル基及びシクロアルキル基の炭素原子数は小さいとよい。これにより、発光強度が高い3次元構造のペロブスカイト化合物を得ることができる。
【0034】
式(A3)で表される有機アンモニウムイオンにおいて、R~Rで表されるアルキル基及びシクロアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は1~4であることが好ましい。また、式(A3)で表される有機アンモニウムイオンにおいて、R~Rのうちの1つが炭素原子数1~3のアルキル基であり、R~Rのうちの3つが水素原子であることがより好ましい。
【0035】
~Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
【0036】
~Rのシクロアルキル基としては、それぞれ独立にR~Rのアルキル基で例示した炭素原子数3以上のアルキル基が環を形成したものが挙げられる。一例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等を例示できる。
【0037】
Aで表される有機アンモニウムイオンとしては、CHNH (メチルアンモニウムイオンともいう。)、CNH (エチルアンモニウムイオンともいう。)又はCNH (プロピルアンモニウムイオンともいう。)であることが好ましく、メチルアンモニウムイオン又はエチルアンモニウムイオンであることより好ましく、メチルアンモニウムイオンであることがさらに好ましい。
【0038】
(アミジニウムイオン)
Aで表されるアミジニウムイオンとしては、例えば、下記式(A4)で表されるアミジニウムイオンが挙げられる。
(R1011N=CH-NR1213・・・(A4)
【0039】
式(A4)中、R10~R13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。
【0040】
10~R13で表されるアルキル基は、それぞれ独立に直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、R10~R13で表されるアルキル基は、それぞれ独立に置換基としてアミノ基を有していてもよい。
【0041】
10~R13で表されるアルキル基の炭素原子数は、それぞれ独立に通常1~20であり、1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0042】
10~R13で表されるシクロアルキル基は、それぞれ独立に置換基として、アミノ基を有していてもよい。
【0043】
10~R13で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、それぞれ独立に通常3~30であり、3~11であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含む。
【0044】
10~R13のアルキル基の具体例としては、それぞれ独立にR~Rにおいて例示したアルキル基と同じ基が挙げられる。
10~R13のシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ独立にR~Rにおいて例示したシクロアルキル基と同じ基が挙げられる。
【0045】
10~R13で表される基としては、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基が好ましい。
【0046】
式(A4)に含まれる、アルキル基及びシクロアルキル基の数を少なくすること、並びにアルキル基及びシクロアルキル基の炭素原子数を小さくすることにより、発光強度が高い3次元構造のペロブスカイト化合物を得ることができる。
【0047】
アミジニウムイオンにおいて、R10~R13で表されるアルキル基及びシクロアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は1~4であることが好ましく、R10が炭素原子数1のアルキル基であり、R11~R13が水素原子であることがさらに好ましい。
【0048】
ペロブスカイト化合物において、Aがセシウムイオン、炭素原子数が3以下の有機アンモニウムイオン、又は炭素原子数が3以下のアミジニウムイオンである場合、一般的にペロブスカイト化合物は3次元構造を有する。
【0049】
ペロブスカイト化合物において、Aが炭素原子数4以上の有機アンモニウムイオン、又は炭素原子数4以上のアミジニウムイオンである場合、ペロブスカイト化合物は、2次元構造及び擬似2次元(quasi-2D)構造のいずれか一方又は両方を有する。この場合、ペロブスカイト化合物は、2次元構造又は疑似2次元構造を、結晶の一部又は全体に有することができる。
2次元のペロブスカイト型結晶構造が複数積層すると3次元のペロブスカイト型結晶構造と同等になる(参考文献:P.PBoixら、J.Phys.Chem.Lett.2015,6,898-907など)。
【0050】
ペロブスカイト化合物中のAは、セシウムイオン、又はアミジニウムイオンが好ましいく、アミジニウムイオンがより好ましい。
【0051】
(1)ペロブスカイト化合物において、Aを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
(構成成分B)
ペロブスカイト化合物を構成するBは、1価の金属イオン、2価の金属イオン、及び3価の金属イオンからなる群より選ばれる1種類以上の金属イオンであってよい。Bは2価の金属イオンを含むことが好ましく、鉛イオン、スズイオン、アンチモンイオン、ビスマスイオン、及びインジウムイオンからなる群より選ばれる1種類以上の金属イオンを含むことがより好ましく、鉛イオン又はスズイオンがさらに好ましく、鉛イオンが特に好ましい。
【0053】
(1)ペロブスカイト化合物において、Bを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
(構成成分X)
ペロブスカイト化合物を構成するXは、ハロゲン化物イオン、及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンであってよい。
【0055】
ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオンを挙げることができる。Xは、臭化物イオンであることが好ましい。
【0056】
(1)ペロブスカイト化合物において、Xを1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
Xが2種以上のハロゲン化物イオンを含む場合、ハロゲン化物イオンの含有比率は、発光波長により適宜選ぶことができる。例えば、臭化物イオンと塩化物イオンとの組み合わせ、又は、臭化物イオンとヨウ化物イオンとの組み合わせとすることができる。
【0058】
Xは、所望の発光波長に応じて適宜選択することができる。
【0059】
Xが臭化物イオンであるペロブスカイト化合物は、通常480nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは520nm以上の波長範囲に強度の極大ピークがある蛍光を発することができる。
【0060】
また、Xが臭化物イオンであるペロブスカイト化合物は、通常700nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲に強度の極大ピークがある蛍光を発することができる。
上記波長範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0061】
ペロブスカイト化合物中のXが臭化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常480~700nmであり、500~600nmであることが好ましく、520~580nmであることがより好ましい。
【0062】
Xがヨウ化物イオンであるペロブスカイト化合物は、通常520nm以上、好ましくは530nm以上、より好ましくは540nm以上の波長範囲に強度の極大ピークがある蛍光を発することができる。
【0063】
また、Xがヨウ化物イオンであるペロブスカイト化合物は、通常800nm以下、好ましくは750nm以下、より好ましくは730nm以下の波長範囲に強度の極大ピークがある蛍光を発することができる。
上記波長範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0064】
ペロブスカイト化合物中のXがヨウ化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常520~800nmであり、530~750nmであることが好ましく、540~730nmであることがより好ましい。
【0065】
Xが塩化物イオンであるペロブスカイト化合物は、通常300nm以上、好ましくは310nm以上、より好ましくは330nm以上の波長範囲に強度の極大ピークがある蛍光を発することができる。
【0066】
また、Xが塩化物イオンであるペロブスカイト化合物は、通常600nm以下、好ましくは580nm以下、より好ましくは550nm以下の波長範囲に強度の極大ピークがある蛍光を発することができる。
上記波長範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0067】
ペロブスカイト化合物中のXが塩化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常300~600nmであり、310~580nmであることが好ましく、330~550nmであることがより好ましい。
【0068】
(3次元構造のペロブスカイト化合物の例示)
ABX(3+δ)で表される3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHPbI、CHNHPbBr(3-y)(0<y<3)、CHNHPbBr(3-y)Cl(0<y<3)、(HN=CH-NH)PbBr、(HN=CH-NH)PbCl、(HN=CH-NH)PbIを挙げることができる。
【0069】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CHNHPb(1-a)CaBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)SrBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)LaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CHNHPb(1-a)BaBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)DyBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)も挙げることができる。
【0070】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CHNHPb(1-a)NaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CHNHPb(1-a)LiBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)も挙げることができる。
【0071】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CsPb(1-a)NaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CsPb(1-a)LiBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)も挙げることができる。
【0072】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CHNHPb(1-a)NaBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CHNHPb(1-a)LiBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CHNHPb(1-a)NaBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CHNHPb(1-a)LiBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)も挙げることができる。
【0073】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(HN=CH-NH)Pb(1-a)NaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)LiBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)NaBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)NaBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)も挙げることができる。
【0074】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CsPbBr、CsPbCl、CsPbI、CsPbBr(3-y)(0<y<3)、CsPbBr(3-y)Cl(0<y<3)も挙げることができる。
【0075】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CHNHPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)AlBr(3+δ)(0<a≦0.7、0≦δ≦0.7)、CHNHPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)も挙げることができる。
【0076】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CsPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)AlBr(3+δ)(0<a≦0.7、0<δ≦0.7)、CsPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)も挙げることができる。
【0077】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、CHNHPb(1-a)ZnBr(3-y)(0<a≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)AlBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)CoBr(3-y)(0<a≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)MnBr(3-y)(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)MgBr(3-y)(0<a≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)ZnBr(3-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)AlBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7、0<δ≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)CoBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7、0<δ≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)MnBr(3-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<3)、CHNHPb(1-a)MgBr(3-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<3)も挙げることができる。
【0078】
3次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(HN=CH-NH)ZnBr(0<a≦0.7)、(HN=CH-NH)MgBr(0<a≦0.7)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)ZnBr(3-y)(0<a≦0.7、0<y<3)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)ZnBr(3-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<3)も挙げることができる。
【0079】
上述した3次元構造のペロブスカイト化合物の中でも、CsPbBr、CsPbBr(3-y)(0<y<3)、(HN=CH-NH)PbBrがより好ましく、(HN=CH-NH)PbBrがさらに好ましい。
【0080】
(2次元構造のペロブスカイト化合物の例示)
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPbBr、(CNHPbCl、(CNHPbI、(C15NHPbBr、(C15NHPbCl、(C15NHPbI、(CNHPb(1-a)LiBr(4+δ)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0)、(CNHPb(1-a)NaBr(4+δ)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0)、(CNHPb(1-a)RbBr(4+δ)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0)を挙げることができる。
【0081】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(C15NHPb(1-a)NaBr(4+δ)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0)、(C15NHPb(1-a)LiBr(4+δ)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0)、(C15NHPb(1-a)RbBr(4+δ)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0)も挙げることができる。
【0082】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPb(1-a)NaBr(4+δ-y)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0、0<y<4)、(CNHPb(1-a)LiBr(4+δ-y)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0、0<y<4)、(CNHPb(1-a)RbBr(4+δ-y)(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0、0<y<4)も挙げることができる。
【0083】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPb(1-a)NaBr(4+δ-y)Cl(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0、0<y<4)、(CNHPb(1-a)LiBr(4+δ-y)Cl(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0、0<y<4)、(CNHPb(1-a)RbBr(4+δ-y)Cl(0<a≦0.7、-0.7≦δ<0、0<y<4)も挙げることができる。
【0084】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPbBr、(C15NHPbBrも挙げることができる。
【0085】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPbBr(4-y)Cl(0<y<4)、(CNHPbBr(4-y)(0<y<4)も挙げることができる。
【0086】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、(CNHPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)、(CNHPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、(CNHPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)も挙げることができる。
【0087】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(C15NHPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、(C15NHPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)、(C15NHPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、(C15NHPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)も挙げることができる。
【0088】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPb(1-a)ZnBr(4-y)(0<a≦0.7、0<y<4)、(CNHPb(1-a)MgBr(4-y)(0<a≦0.7、0<y<4)、(CNHPb(1-a)CoBr(4-y)(0<a≦0.7、0<y<4)、(CNHPb(1-a)MnBr(4-y)(0<a≦0.7、0<y<4)も挙げることができる。
【0089】
2次元構造のペロブスカイト化合物の好ましい例としては、(CNHPb(1-a)ZnBr(4-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<4)、(CNHPb(1-a)MgBr(4-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<4)、(CNHPb(1-a)CoBr(4-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<4)、(CNHPb(1-a)MnBr(4-y)Cl(0<a≦0.7、0<y<4)も挙げることができる。
【0090】
<(1)ペロブスカイト化合物の粒径>
(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径は、13.5nm以上80.0nm以下であることが好ましい。
分散液中において(1)ペロブスカイト化合物が安定的に分散できる観点から、(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径は15.0nm以上であることが好ましく、17.0nm以上であることがより好ましく、18.0nm以上であることがさらに好ましい。また、発光強度が高い(1)ペロブスカイト化合物を得る観点から、(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径は80.0nm以下であることが好ましく、25.0nm以下であることがより好ましく、22.0nm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
本明細書において、(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径は、例えば透過型電子顕微鏡(以下、TEMともいう。)、又は走査型電子顕微鏡(以下、SEMともいう。)により測定することができる。具体的には、TEM、又はSEMにより、無作為に選んだ30個以上の(1)ペロブスカイト化合物の立方体もしくは直方体形状をした粒子の最も長い辺の長さを測定し、測定値の算術平均値を計算することにより、平均粒径を求めることができる。
【0092】
本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物を観察する方法としては、例えば、(1)ペロブスカイト化合物を含む分散液組成物をSEM、又はTEMなどを用いて観察する方法が挙げられる。さらに、SEM、またはTEMを用いたエネルギー分散型X線分析(EDX)測定によって、詳細な元素分布を解析することができる。空間分解能が高い観点から、TEMで観察する方法が好ましい。
【0093】
(1)ペロブスカイト化合物をTEMで観察する方法としては、(1)ペロブスカイト化合物を含む分散液組成物をTEM専用の支持膜付きグリッドにキャストし、自然乾燥させたものを用いる方法が挙げられる。
【0094】
(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径を解析する方法としては、TEM像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトを用いて解析する方法が挙げられる。
まず、前記TEM像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトを用いて二値化処理を行う。(1)ペロブスカイト化合物を黒色とし、それ以外を白色として変換した二値化処理済み画像を得る。このとき、TEM-EDX測定で得られた元素マッピング像と比較し、(1)ペロブスカイト化合物に由来する成分が検出されている部分が黒色に変換されていることを確認する。齟齬が見られた場合は、二値化処理を行う閾値の調整を行う。前記二値化処理済み画像について、画像解析ソフトを用いて、(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径を測定する。画像解析ソフトは、Image JやPhotoshop等を適宜選択することができる。
【0095】
本実施形態の他の態様においては、(1)ペロブスカイト化合物は、前記ペロブスカイト結晶構造をもつ化合物が複数集まったペロブスカイト混合物である。前記ペロブスカイト混合物は、1種または2種以上のペロブスカイト結晶構造をもつ化合物で構成されている。よって、前記ペロブスカイト混合物は、1種または2種以上の1価の構成成分Aである陽イオン、構成成分Bである金属イオン、及び構成成分Xである陰イオンで構成されている。
【0096】
<組成物1>
本実施形態の組成物1は、上述の(1)ペロブスカイト化合物と、下記(2-1)、下記(2-1)の改質体、下記(2-2)及び下記(2-2)の改質体からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物とを含む。
(2-1)シラザン
(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物
【0097】
本明細書においては、前記(2-1)、前記(2-1)の改質体、前記(2-2)及び前記(2-2)の改質体からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を「(2)表面保護剤」と総称することがある。
【0098】
本実施形態の組成物1は、上述の(1)ペロブスカイト化合物と、前記(2-1)及び前記(2-1)の改質体からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物と、を含むことが好ましい。
【0099】
本実施形態の組成物1は、更に下記(3)、下記(4)及び下記(5)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。
(3)溶媒
(4)重合性化合物
(5)重合体
【0100】
<組成物2>
本実施形態の組成物2は、上述の(1)ペロブスカイト化合物と、前記(3)、前記(4)及び前記(5)からなる群から選ばれる少なくとも一種と、を含む。
【0101】
以下の説明においては、(3)溶媒、(4)重合性化合物、(5)重合体を「分散媒」と総称することがある。本実施形態の組成物1及び組成物2において(1)ペロブスカイト化合物は、これらの分散媒に分散していてもよい。
【0102】
本明細書において「分散している」とは、(1)ペロブスカイト化合物が分散媒に浮遊している状態、又は(1)ペロブスカイト化合物が分散媒に懸濁している状態のことを指す。(1)ペロブスカイト化合物が分散媒に分散している場合、(1)ペロブスカイト化合物の一部は沈降していてもよい。
【0103】
本実施形態の組成物1及び組成物2は、さらに下記(6)を含んでいてもよい。なお、下記(6)の詳細については後述する。
(6)表面修飾剤
【0104】
本実施形態の組成物1及び組成物2は、前記(1)~前記(6)以外のその他の成分を有していてもよい。例えば、本実施形態の組成物は、本発明の効果が損なわれない程度の若干の不純物、(1)ペロブスカイト化合物を構成する元素からなるアモルファス構造を有する化合物、重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
【0105】
以下、本実施形態の組成物に含まれる前記(2)~前記(6)について説明を行う。
【0106】
<(2)表面保護剤>
本実施形態の組成物1は(1)ペロブスカイト化合物の(2)表面保護剤として、(2-1)シラザン、前記(2-1)の改質体、(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物、及び前記(2-2)の改質体からからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む。
【0107】
本実施形態の組成物1は、(2)表面保護剤が(1)ペロブスカイト化合物の表面を覆うことによって、量子収率の向上、発光波長を短波長化するという効果が得られる。
【0108】
<(2-1)シラザン>
(2-1)シラザンは、Si-N-Si結合を有する化合物である。シラザンは、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
【0109】
シラザンは、低分子シラザンであっても、高分子シラザンであってもよい。本明細書では、高分子シラザンをポリシラザンと記載することがある。
【0110】
本明細書において「低分子」とは、数平均分子量が600未満であることを意味する。また、本明細書において「高分子」とは、数平均分子量が600以上20000以下であることを意味する。
【0111】
本明細書において「数平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0112】
(2-1-1.低分子シラザン)
低分子シラザンとしては、例えば、下記式(B1)で表されるジシラザンであることが好ましい。
【0113】
【化2】
【0114】
式(B1)中、R14及びR15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、又は炭素原子数1~20のアルキルシリル基を表す。
【0115】
14及びR15は、アミノ基などの置換基を有していてもよい。複数あるR15は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0116】
式(B1)で表される低分子シラザンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0117】
(2-1-2.低分子シラザン)
低分子シラザンとしては、例えば、下記式(B2)で表される低分子シラザンも好ましい。
【0118】
【化3】
【0119】
式(B2)中、R14、及びR15は、上記式(B1)におけるR14、及びR15と同様である。
【0120】
複数あるR14は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
複数あるR15は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0121】
式(B2)中、nは1以上20以下の整数を表す。nは、1以上10以下の整数でもよく、1又は2でもよい。
【0122】
式(B2)で表される低分子シラザンとしては、オクタメチルシクロテトラシラザン、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシラザン、及び2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシラザンが挙げられる。
【0123】
低分子のシラザンとしては、オクタメチルシクロテトラシラザン、及び1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザンが好ましく、オクタメチルシクロテトラシラザンがより好ましい。
【0124】
(2-1-3.高分子シラザン)
高分子シラザンとしては、例えば、下記式(B3)で表される高分子シラザン(ポリシラザン)が好ましい。
【0125】
ポリシラザンは、Si-N-Si結合を有する高分子化合物である。式(B3)で表されるポリシラザンの構成単位は、一種であっても、複数種であってもよい。
【0126】
【化4】
【0127】
式(B3)中、R14、及びR15は、上記式(B1)におけるR14、及びR15と同様である。
【0128】
式(B3)中、*は、結合手を表す。分子鎖末端のN原子の結合手には、R14が結合している。
分子鎖末端のSi原子の結合手には、R15が結合している。
【0129】
複数あるR14は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
複数あるR15は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0130】
mは、2以上10000以下の整数を表す。
【0131】
式(B3)で表されるポリシラザンは、例えば、R14、及びR15のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンでもよい。
【0132】
また、式(B3)で表されるポリシラザンは、例えば、少なくとも1つのR15が水素原子以外の基であるオルガノポリシラザンであってもよい。用途に応じて、適宜にパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
【0133】
(1)の分散性を向上させ、凝集を抑制する効果が高まる観点から、本実施形態の組成物は、式(B3)で表されるオルガノポリシラザンを含むことが好ましい。
【0134】
式(B3)で表されるオルガノポリシラザンとしては、R14及びR15の少なくとも1つが、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、又は炭素原子数1~20のアルキルシリル基であるオルガノポリシラザンであってもよい。
【0135】
その中でも、式(B3)で表され、R14及びR15の少なくとも1つがメチル基であるオルガノポリシラザンが好ましい。
【0136】
(2-1-4.高分子シラザン)
高分子シラザンとしては、例えば、下記式(B4)で表される構造を有するポリシラザンも好ましい。
【0137】
ポリシラザンは、分子内の一部に環構造を有していてもよく、例えば、式(B4)で表される構造を有していてもよい。
【0138】
【化5】
【0139】
式(B4)中、*は、結合手を表す。
式(B4)の結合手は、式(B3)で表されるポリシラザンの結合手、又は式(B3)で表されるポリシラザンの構成単位の結合手と結合していてもよい。
【0140】
また、ポリシラザンが、分子内に複数の式(B4)で表される構造を含む場合、式(B4)で表される構造の結合手は、他の式(B4)で表される構造の結合手と直接結合していてもよい。
【0141】
式(B3)で表されるポリシラザンの結合手、式(B3)で表されるポリシラザンの構成単位の結合手、及び他の式(B4)で表される構造の結合手のいずれとも結合していないN原子の結合手には、R14が結合している。
【0142】
式(B3)で表されるポリシラザンの結合手、式(B3)で表されるポリシラザンの構成単位の結合手、及び他の式(B4)で表される構造の結合手のいずれとも結合していないSi原子の結合手には、R15が結合している。
【0143】
は、1以上10000以下の整数を表す。nは、1以上10以下の整数でもよく、1又は2でもよい。
【0144】
(1)の分散性を向上させ、凝集を抑制する効果が高まる観点から、本実施形態の組成物は、式(B4)で表される構造を有するオルガノポリシラザンを含むことが好ましい。
【0145】
式(B4)で表される構造を有するオルガノポリシラザンとしては、少なくとも1つの結合手がR14又はR15と結合し、当該R14及びR15の少なくとも1つが、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、又は炭素原子数1~20のアルキルシリル基であるオルガノポリシラザンであってもよい。
【0146】
その中でも、式(B4)で表される構造を含み、少なくとも1つの結合手がR14又はR15と結合し、当該R14及びR15の少なくとも1つがメチル基であるポリシラザンであることが好ましい。
【0147】
一般的なポリシラザンは、例えば、直鎖構造と、6員環、又は8員環等の環構造とが存在した構造、すなわち前記式(B3)、前記式(B4)で表される構造を有する。一般的なポリシラザンの分子量は、数平均分子量(Mn)で600~20000程度(ポリスチレン換算)であり、分子量によって液体又は固体の物質でありうる。
【0148】
ポリシラザンは、市販品を使用してもよく、市販品としては、NN120-10、NN120-20、NAX120-20、NN110、NAX120、NAX110、NL120A、NL110A、NL150A、NP110、NP140(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)並びに、AZNN-120-20、Durazane(登録商標)1500 Slow Cure、Durazane1500 Rapid Cure、Durazane1800、及びDurazane1033(メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0149】
ポリシラザンは、好ましくはAZNN-120-20、Durazane1500 Slow Cure、Durazane1500 Rapid Cureであり、より好ましくはDurazane1500 Slow Cureである。
【0150】
<(2-1)シラザンの改質体>
本明細書において「改質」とは、Si-N結合、Si-SR結合(Rは水素原子又は有機基)又はSi-OR結合(Rは水素原子又は有機基)を有するケイ素化合物が加水分解し、Si-O-Si結合を有するケイ素化合物が生成することをいう。Si-O-Si結合は、分子間の縮合反応で生成してもよく、分子内の縮合反応で生成してもよい。
【0151】
本明細書において「改質体」とは、Si-N結合、Si-SR結合又はSi-OR結合を有するケイ素化合物を改質することにより得られた化合物をいう。
【0152】
(2-1)の改質体としては、前記式(B1)で表されるジシラザンの改質体、前記式(B2)で表される低分子シラザンの改質体、前記式(B3)で表されるポリシラザンの改質体、前記式(B4)で表される構造を分子内に有するポリシラザンの改質体であることが好ましい。
【0153】
式(B2)で表される低分子シラザンの改質体について、式(B2)で表される低分子シラザンの改質体に含まれる全てのケイ素原子に対して窒素原子と結合していないケイ素原子の割合は0.1~100%であることが好ましい。また、窒素原子と結合していないケイ素原子の割合は、10~98%であることがより好ましく、30~95%であることがさらに好ましい。
【0154】
なお、「窒素原子と結合していないケイ素原子の割合」は、後述する測定値を用いて、((Si(モル))-(Si-N結合中のN(モル)))/Si(モル)×100で求められる。改質反応を考慮すると、「窒素原子と結合していないケイ素原子の割合」とは、「改質処理にて生じるシロキサン結合に含まれるケイ素原子の割合」を意味する。
【0155】
式(B3)で表されるポリシラザンの改質体について、式(B3)で表されるポリシラザンの改質体に含まれる全てのケイ素原子に対して窒素原子と結合していないケイ素原子の割合は0.1~100%であることが好ましい。また、窒素原子と結合していないケイ素原子の割合は、10~98%であることがより好ましく、30~95%であることがさらに好ましい。
【0156】
式(B4)で表される構造を有するポリシラザンの改質体について、式(B4)で表される構造を有するポリシラザンの改質体に含まれる全てのケイ素原子に対して窒素原子と結合していないケイ素原子の割合は0.1~99%であることが好ましい。また、窒素原子と結合していないケイ素原子の割合は、10~97%であることがより好ましく、30~95%であることがさらに好ましい。
【0157】
改質体中のSi原子数、Si-N結合の数は、X線光電子分光法(XPS)によって測定することができる。
【0158】
改質体について、上述の方法による測定値を用いて求められる、全てのケイ素原子に対する「窒素原子と結合していないケイ素原子の割合」は、0.1~99%であることが好ましく、10~99%であることがより好ましく、30~95%であることがさらに好ましい。
【0159】
<(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物>
本実施形態の組成物1は、(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物を含んでいてもよい。以下、(2-2)アミノ基、アルコキシ基及びアルキルチオ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有するケイ素化合物を「(2-2)ケイ素化合物」と総称することがある。
【0160】
(2-2)ケイ素化合物としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリメトキシフェニルシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランが例として挙げられる。
【0161】
中でも、(1)の耐久性の観点から、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシフェニルシランが好ましく、トリメトキシフェニルシランがより好ましい。
【0162】
<(2-2)ケイ素化合物の改質体>
(2-2)ケイ素化合物の改質体は、上述の(2-2)ケイ素化合物を改質することにより得られる化合物をいう。「改質」に関しては、(2-1)シラザンの改質体における説明と同様である。
【0163】
本実施形態の組成物1において、上述の(2)表面保護剤を1種のみ有していてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
<(6)表面修飾剤>
本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物の表面は表面修飾剤層により覆われていてもよい。表面修飾剤層は、(1)ペロブスカイト化合物と(2)表面保護剤との間に位置していてもよい。
【0165】
なお、表面修飾剤層が(1)ペロブスカイト化合物の「表面」を覆うとは、表面修飾剤層が(1)ペロブスカイト化合物に直接接して覆うことの他、表面修飾剤層が(1)ペロブスカイト化合物の表面に形成された他の層の表面に直接接して形成され、(1)ペロブスカイト化合物の表面に直接接することなく覆うことも含む。
【0166】
<表面修飾剤層>
表面修飾剤層は、アンモニウムイオン、アミン、第1級~第4級アンモニウムカチオン、アンモニウム塩、カルボン酸、カルボキシレートイオン、及びカルボキシレート塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン又は化合物を形成材料とする。
【0167】
中でも、表面修飾剤層は、アミン、及びカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を形成材料とすることが好ましい。
以下、表面修飾剤層の形成材料を「(6)表面修飾剤」と称することがある。
【0168】
表面修飾剤は、後述する製造方法で本実施形態の組成物を製造する際に、(1)ペロブスカイト化合物の表面を覆い、(1)ペロブスカイト化合物を組成物中に安定して分散させる作用を有する化合物である。
【0169】
<アンモニウムイオン、第1級~第4級アンモニウムカチオン、アンモニウム塩>
(6)表面修飾剤であるアンモニウムイオン、及び第1級~第4級アンモニウムカチオンは、下記式(A1)で表される。(6)表面修飾剤であるアンモニウム塩は、下記式(A1)で表されるイオンを含む塩である。
【0170】
【化6】
【0171】
式(A1)で表されるイオンにおいて、R~Rは、水素原子、又は1価の炭化水素基を表す。
【0172】
~Rで表される炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。飽和炭化水素基としては、アルキル基、又はシクロアルキル基を挙げることができる。
【0173】
~Rで表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
~Rで表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1~20であり、5~20であることが好ましく、8~20であることがより好ましい。
【0174】
シクロアルキル基の炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましく、3~11であることがより好ましい。炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含む。
【0175】
~Rの不飽和炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0176】
~Rの不飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常2~20であり、5~20であることが好ましく、8~20であることがより好ましい。
【0177】
~Rは、水素原子、アルキル基、又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、アルケニル基が好ましい。R~Rは、炭素原子数8~20のアルケニル基であることが好ましい。
【0178】
~Rのアルキル基の具体例としては、R~Rにおいて例示したアルキル基が挙げられる。
【0179】
~Rのシクロアルキル基の具体例としては、R~Rにおいて例示したシクロアルキル基が挙げられる。
【0180】
~Rのアルケニル基としては、R~Rにおいて例示した前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基において、いずれか一つの炭素原子間の単結合(C-C)が、二重結合(C=C)に置換されたものが例示でき、二重結合の位置は限定されない。
【0181】
~Rのアルケニル基の好ましいものとしては、例えば、エテニル基、プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、2-ノネニル基、2-ドデセニル基、9-オクタデセニル基が挙げられる。
【0182】
式(A1)で表されるアンモニウムカチオンが塩を形成する場合、カウンターアニオンとしては、特に制限は無い。カウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオンや、カルボキシレートイオンなどが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、臭化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオンが挙げられる。
【0183】
式(A1)で表されるアンモニウムカチオンと、カウンターアニオンとを有するアンモニウム塩としては、n-オクチルアンモニウム塩、オレイルアンモニウム塩が好ましい例として挙げられる。
【0184】
<アミン>
表面修飾剤であるアミンとしては、下記式(A11)で表すことができる。
【0185】
【化7】
【0186】
上記式(A11)において、R~Rは、上記式(A1)が有するR~Rと同じ基を表す。ただし、R~Rのうち少なくとも1つは1価の炭化水素基である。
【0187】
表面修飾剤であるアミンとしては、第1級~第3級アミンのいずれであってもよいが、第1級アミン及び第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。
【0188】
表面修飾剤であるアミンとしては、オレイルアミンが好ましい。
【0189】
<カルボン酸、カルボキシレートイオン、カルボキシレート塩>
表面修飾剤であるカルボキシレートイオンは、下記式(A2)で表される。表面修飾剤であるカルボキシレート塩は、下記式(A2)で表されるイオンを含む塩である。
-CO ・・・(A2)
【0190】
表面修飾剤であるカルボン酸は、上記(A2)で表されるカルボキシレートアニオンにプロトン(H)が結合したカルボン酸が挙げられる。
【0191】
式(A2)で表されるイオンにおいて、Rは、一価の炭化水素基を表す。Rで表される炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。飽和炭化水素基としては、アルキル基、又はシクロアルキル基を挙げることができる。
【0192】
で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0193】
で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1~20であり、5~20であることが好ましく、8~20であることがより好ましい。
【0194】
シクロアルキル基の炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましく、3~11であることがより好ましい。炭素原子数は、置換基の炭素原子数も含む。
【0195】
で表される不飽和炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0196】
で表される不飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常2~20であり、5~20であることが好ましく、8~20であることがより好ましい。
【0197】
はアルキル基又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、アルケニル基が好ましい。
【0198】
のアルキル基の具体例としては、R~Rにおいて例示したアルキル基が挙げられる。
のシクロアルキル基の具体例としては、R~Rにおいて例示したシクロアルキル基が挙げられる。
【0199】
のアルケニル基の具体例としては、R~Rにおいて例示したアルケニル基が挙げられる。
【0200】
式(A2)で表されるカルボキシレートアニオンは、オレイン酸アニオンが好ましい。
【0201】
カルボキレートアニオンが塩を形成する場合、カウンターカチオンとしては、特に制限は無いが、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましい例として挙げられる。
【0202】
表面修飾剤であるカルボン酸としては、オレイン酸が好ましい。
【0203】
上述した表面修飾剤の中では、アンモニウム塩、アンモニウムイオン、第1級~第4級アンモニウムカチオン、カルボキシレート塩、カルボキシレートイオンが好ましい。
【0204】
アンモニウム塩、アンモニウムイオンの中では、オレイルアミン塩、オレイルアンモニウムイオンがより好ましい。
【0205】
カルボキシレート塩、カルボキシレートイオンの中では、オレイン酸塩、オレイン酸アニオンがより好ましい。
【0206】
本実施形態の組成物1及び組成物2において、上述の(6)表面修飾剤を1種のみ有していてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0207】
<(3)溶媒>
本実施形態の組成物が有する溶媒は、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物を分散させることができる媒体であれば特に限定されない。本実施形態の組成物が有する溶媒は、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物を溶解し難いものが好ましい。
本明細書において「溶媒」とは、1気圧、25℃において液体状態である物質のことをいう。ただし、溶媒には、後述する重合性化合物は含まれない。
【0208】
溶媒としては、下記(a)~(k)を挙げることができる。
(a)エステル
(b)ケトン
(c)エーテル
(d)アルコール
(e)グリコールエーテル
(f)アミド基を有する有機溶媒
(g)ニトリル基を有する有機溶媒
(h)カーボネート基を有する有機溶媒
(i)ハロゲン化炭化水素
(j)炭化水素
(k)ジメチルスルホキシド
【0209】
(a)エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等を挙げることができる。
【0210】
(b)ケトンとしては、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0211】
(c)エーテルとしては、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等を挙げることができる。
【0212】
(d)アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール等を挙げることができる。
【0213】
(e)グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。
【0214】
(f)アミド基を有する有機溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
【0215】
(g)ニトリル基を有する有機溶媒としては、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等を挙げることができる。
【0216】
(h)カーボネート基を有する有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0217】
(i)ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルム等を挙げることができる。
【0218】
(j)炭化水素としては、n-ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、1-オクタデセン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0219】
これらの溶媒の中でも、(a)エステル、(b)ケトン、(c)エーテル、(g)ニトリル基を有する有機溶媒、(h)カーボネート基を有する有機溶媒、(i)ハロゲン化炭化水素及び(j)炭化水素は、極性が低く、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物を溶解し難いと考えられるため好ましい。
【0220】
さらに、本実施形態の組成物に用いる溶媒としては、(i)ハロゲン化炭化水素、(j)炭化水素がより好ましい。
【0221】
本実施形態の組成物1及び組成物2においては、上述の溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0222】
<(4)重合性化合物>
本実施形態の組成物が有する重合性化合物は、本実施形態の組成物を製造する温度において、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物を溶解し難いものが好ましい。
【0223】
本明細書において「重合性化合物」とは、重合性基を有する単量体化合物(モノマー)を意味する。例えば、重合性化合物は、1気圧、25℃において液体状態であるモノマーを挙げることができる。
【0224】
例えば、常温、常圧下において製造する場合、重合性化合物としては、特に制限は無い。重合性化合物としては、例えば、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル等の公知の重合性化合物が挙げられる。なかでも、重合性化合物としては、アクリル系樹脂の単量体であるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのいずれか一方又は両方が好ましい。
【0225】
本実施形態の組成物1及び組成物2においては、重合性化合物を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0226】
本実施形態の組成物において、全ての(4)重合性化合物に対する、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの合計量の割合は、10mol%以上であってもよい。同割合は、30mol%以上であってもよく、50mol%以上であってもよく、80mol%以上であってもよく、100mol%であってもよい。
【0227】
<(5)重合体>
本実施形態の組成物に含まれる重合体は、本実施形態の組成物を製造する温度において、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物の溶解度が低い重合体が好ましい。
【0228】
例えば、常温、常圧下において製造する場合、重合体としては、特に制限は無いが、例えば、ポリスチレン、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂等の公知の重合体が挙げられる。なかでも、重合体としては、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルに由来する構成単位及びメタクリル酸エステルに由来する構成単位のいずれか一方又は両方を含む。
【0229】
本実施形態の組成物において、(5)重合体に含まれる全ての構成単位に対する、アクリル酸エステルに由来する構成単位及びメタクリル酸エステルに由来する構成単位の合計量の割合は、10mol%以上であってもよい。同割合は、30mol%以上であってもよく、50mol%以上であってもよく、80mol%以上であってもよく、100mol%であってもよい。
【0230】
(5)重合体の重量平均分子量は、100~1200000であることが好ましく、1000~800000であることがより好ましく、5000~150000であることがさらに好ましい。
【0231】
本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0232】
本実施形態の組成物1及び組成物2において、上述の(5)重合体を1種のみ有していてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0233】
<組成物中の各成分の含有量>
本実施形態の組成物1及び組成物2において、組成物の総質量に対する(1)ペロブスカイト化合物の含有割合は、特に限定されるものではない。
【0234】
上記含有割合は、濃度消光を防ぐ観点から、90質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0235】
また、上記含有割合は、良好な量子収率を得る観点から、0.0002質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。
【0236】
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0237】
組成物の総質量に対する(1)ペロブスカイト化合物の含有割合は、通常0.0002~90質量%である。
【0238】
組成物の総質量に対する(1)ペロブスカイト化合物の含有割合は、0.001~40質量%であることが好ましく、0.002~10質量%であることがより好ましく、0.01~3質量%であることがさらに好ましい。
【0239】
組成物の総質量に対する(1)ペロブスカイト化合物の含有割合が上記範囲内である組成物は、(1)ペロブスカイト化合物の凝集が生じ難く、発光性も良好に発揮される点で好ましい。
【0240】
本実施形態の組成物1において、組成物の総質量に対する(2)表面保護剤の含有割合は、特に限定されるものではない。
【0241】
上記含有割合は、(1)ペロブスカイト化合物の分散性を向上させる観点、及び耐久性を向上させる観点から、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0242】
また、上記含有割合は、耐久性を向上させる観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。
【0243】
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0244】
組成物の総質量に対する(2)表面保護剤の含有割合は、通常0.001~30質量%である。
【0245】
組成物の総質量に対する(2)表面保護剤の含有割合は、0.001~30質量%であることが好ましく、0.001~10質量%であることがより好ましく、0.1~7.5質量%であることがさらに好ましい。
【0246】
本実施形態の組成物1及び組成物2において、組成物の総質量に対する分散媒の含有割合は、特に限定されるものではない。
【0247】
上記含有割合は、(1)ペロブスカイト化合物の分散性を向上させる観点、及び耐久性を向上させる観点から、99.99質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることがさらに好ましい。
【0248】
また、上記含有割合は、耐久性を向上させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがもっとも好ましい。
【0249】
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0250】
組成物の総質量に対する分散媒の含有割合は、通常0.1~99.99質量%である。
【0251】
組成物の総質量に対する分散媒の含有割合は、1~99質量%であることが好ましく、10~99質量%であることがより好ましく、20~99質量%であることがさらに好ましく、50~99質量%であることが特に好ましく、90~99質量%であることが最も好ましい。
【0252】
また、上記組成物において、(1)ペロブスカイト化合物、(2)表面保護剤及び分散媒の合計含有割合は、組成物の総質量に対して90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0253】
本実施形態の組成物1及び組成物2において、組成物の総質量に対する(6)表面修飾剤の含有割合は、特に限定されるものではない。
【0254】
上記含有割合は、耐久性向上の観点から、30質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0255】
また、上記含有割合は、熱耐久性を向上させる観点から、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。
【0256】
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0257】
組成物の総質量に対する(6)表面修飾剤の含有割合は、通常0.0001~30質量%である。
【0258】
組成物の総質量に対する(6)表面修飾剤の含有割合は、0.001~1質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。
【0259】
組成物の総質量に対する(6)表面修飾剤の含有割合が上記範囲内である組成物は、熱耐久性に優れる点で好ましい。
【0260】
本実施形態の組成物における、若干の不純物、(1)ペロブスカイト化合物を構成する元素からなるアモルファス構造を有する化合物、重合開始剤の合計含有割合は、組成物の総質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0261】
<各成分の配合比>
本実施形態の組成物1及び2において、分散媒に対する(1)ペロブスカイト化合物の質量比[(1)ペロブスカイト化合物/分散媒]は、0.00001~10であってもよく、0.0001~5であってもよく、0.0005~3であってもよい。
【0262】
(1)ペロブスカイト化合物と、分散媒との配合比に係る範囲が上記範囲内である組成物は、(1)ペロブスカイト化合物の凝集が生じ難く、良好に発光する点で好ましい。
【0263】
本実施形態の組成物1において、(1)ペロブスカイト化合物と(2)表面保護剤との配合比は、(1)、(2)の種類等に応じて、適宜定めることができる。
【0264】
本実施形態の組成物1において、(1)ペロブスカイト化合物のB成分である金属イオンと、(2)表面保護剤のSi元素とのモル比[Si/B]は、0.001~200であってもよく、0.01~50であってもよい。
【0265】
本実施形態の組成物1において、(2)表面保護剤が、式(B1)又は(B2)で表されるシラザンの改質体である場合、(1)ペロブスカイト化合物のB成分である金属イオンと、(2-1)シラザンの改質体のSiとのモル比[Si/B]は、0.001~100であってもよく、0.001~50であってもよく、1~20であってもよい。
【0266】
本実施形態の組成物1において、(2)表面保護剤が、式(B3)で表される構成単位を有するポリシラザンである場合、(1)ペロブスカイト化合物のB成分である金属イオンと、(2-1)シラザンの改質体のSi元素とのモル比[Si/B]は、0.001~100であってもよく、0.01~100であってもよく、0.1~100であってもよく、1~50であってもよく、1~20であってもよい。
【0267】
(1)ペロブスカイト化合物と(2)表面保護剤との配合比に係る範囲が上記範囲内である組成物は、(2)表面保護剤による、水蒸気に対する耐久性向上の作用が、特に良好に発揮される点で好ましい。
【0268】
上記ペロブスカイト化合物のB成分である金属イオンと、(2)表面保護剤のSi元素とのモル比[Si/B]は、以下のような方法で求めることができる。
ペロブスカイト化合物のB成分である金属イオンのモル数(B)は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって、ペロブスカイト化合物に含まれるB成分である金属の質量を算出したのち、モルに換算することによって求める。また、(2)表面保護剤のSi元素のモル数(Si)は、用いた(2)表面保護剤の質量からモル換算することによって求める。
このときの、(2)表面保護剤のSi元素のモル数(Si)とペロブスカイト化合物のB成分である金属イオンのモル数(B)の比が、[Si/B]である。
【0269】
本実施形態の組成物において、十分に量子収率を向上させる観点から、(1)ペロブスカイト化合物の質量に対して(2)表面保護剤の質量は、好ましくは1.1質量部以上であり、より好ましくは1.5質量部以上であり、さらに好ましくは1.8質量部以上である。また、(1)ペロブスカイト化合物の質量に対して(2)表面保護剤の質量は、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは4.9質量部以下であり、さらに好ましくは2.5質量部以下である。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0270】
本実施形態の半導体化合物の製造方法によると、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物及びX線回折パターンにおいて、面のミラー指数(001)のピークの半値幅が0.10以上、0.60未満である金属元素Mを含む半導体化合物を製造することができる。
【0271】
<半導体化合物の製造方法>
本実施形態の半導体化合物の製造方法は、金属元素Mの単体及び金属元素Mを含む化合物のいずれか一方又は両方を含有する原料と水とを混合する工程と、前記水の存在下で前記原料を反応させる工程と、を含む。また、前記原料に含まれる金属元素Mの質量Wに対する前記水の質量Wの比である(W/W)が0.05~100である。
【0272】
金属元素Mの単体及び金属元素Mを含む化合物のいずれか一方又は両方を含有する原料を反応させ生成する半導体化合物の結晶化を行う工程において水が存在すると、生成した半導体化合物の結晶の一部が溶解し、その後半導体化合物の再結晶が進むことにより、半導体化合物の結晶性が向上する。
【0273】
<金属元素M>
本実施形態の半導体化合物の製造方法に含まれる金属元素Mとしては、周期表の第2族~14族の金属元素が例として挙げられる。周期表の第2~14族の金属元素としては特に限定されないが、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Cu、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Sn、Pbが挙げられる。
【0274】
本実施形態の半導体化合物は、前記金属元素M以外に周期表の第13~17族の非金属元素を含んでいてもよい。周期表第13~17族の非金属元素としては特に限定されないが、例えば、B、C、N、P、As、Sb、Se、Te、F,Cl、Br、I、又はSが挙げられる。
【0275】
本実施形態の製造方法よって製造される半導体化合物としては、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物、及び下記(i)~(vii)の半導体化合物を挙げることができる。
(i)II族-VI族化合物を含む半導体化合物
(ii)II族-V族化合物を含む半導体化合物
(iii)III族-V族化合物を含む半導体化合物
(iv)III族-IV族化合物を含む半導体化合物
(v)III族-VI族化合物を含む半導体化合物
(vi)IV族-VI族化合物を含む半導体化合物
(vii)遷移金属-p-ブロック化合物を含む半導体化合物
【0276】
<(i)II族-VI族化合物を含む半導体化合物>
II族-VI族化合物を含む半導体化合物としては、周期表の第2族元素と第16族元素とを含む化合物を含む半導体化合物と、周期表の第12族元素と第16族元素とを含む化合物を含む半導体化合物とを挙げることができる。
なお、本明細書において、「周期表」とは、長周期型周期表を意味する。
【0277】
以下の説明では、第2族元素と第16族元素とを含む化合物を含む半導体化合物を「半導体化合物(i-1)」、第12族元素と第16族元素とを含む化合物を含む半導体化合物を「半導体化合物(i-2)」と称することがある。
【0278】
半導体化合物(i-1)のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、又はBaTeが挙げられる。
【0279】
また、半導体化合物(i-1)としては、
(i-1-1)第2族元素を1種類、第16族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(i-1-2)第2族元素を2種類、第16族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(i-1-3)第2族元素を2種類、第16族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0280】
半導体化合物(i-2)のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、又はHgTeが挙げられる。
【0281】
また、半導体化合物(i-2)としては、
(i-2-1)第12族元素を1種類、第16族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(i-2-2)第12族元素を2種類、第16族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(i-2-3)第12族元素を2種類、第16族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0282】
II族-VI族半導体化合物は、第2族元素、第12族元素、及び第16族元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0283】
<(ii)II族-V族化合物を含む半導体化合物>
II族-V族半導体化合物は、第12族元素と、第15族元素とを含む。
【0284】
II族-V族半導体化合物のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、Zn、ZnAs、Cd、CdAs、Cd、又はZnが挙げられる。
【0285】
また、II族-V族半導体化合物としては、
(ii-1)第12族元素を1種類、第15族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(ii-2)第12族元素を2種類、第15族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(ii-3)第12族元素を2種類、第15族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0286】
II族-V族半導体化合物は、第12族元素、及び第15族元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0287】
<(iii)III族-V族化合物を含む半導体化合物>
III族-V族半導体化合物は、第13族元素と、第15族元素とを含む。
【0288】
III族-V族半導体化合物のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、又はAlNが挙げられる。
【0289】
また、III族-V族半導体化合物としては、
(iii-1)第13族元素を1種類、第15族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(iii-2)第13族元素を2種類、第15族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(iii-3)第13族元素を2種類、第15族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0290】
III族-V族半導体化合物は、第13族元素、及び第15族元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0291】
<(iv)III族-IV族化合物を含む半導体化合物>
III族-IV族半導体化合物は、第13族元素と、第14族元素とを含む。
【0292】
III族-IV族半導体化合物のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、Al、Gaが挙げられる。
【0293】
また、III族-IV族半導体化合物としては、
(iv-1)第13族元素を1種類、第14族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(iv-2)第13族元素を2種類、第14族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(iv-3)第13族元素を2種類、第14族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0294】
III族-IV族半導体化合物は、第13族元素、及び第14族元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0295】
<(v)III族-VI族化合物を含む半導体化合物>
III族-VI族半導体化合物は、第13族元素と、第16族元素とを含む。
【0296】
III族-VI族半導体化合物のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、Al、AlSe、AlTe、Ga、GaSe、GaTe、GaTe、In、InSe、InTe、又はInTeが挙げられる。
【0297】
また、III族-VI族半導体化合物としては、
(v-1)第13族元素を1種類、第16族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(v-2)第13族元素を2種類、第16族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(v-3)第13族元素を2種類、第16族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0298】
III族-VI族半導体化合物は、第13族元素、及び第16族元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0299】
<(vi)IV族-VI族化合物を含む半導体化合物>
IV族-VI族半導体化合物は、第14族元素と、第16族元素とを含む。
【0300】
IV族-VI族半導体化合物のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、PbS、PbSe、PbTe、SnS、SnSe、又はSnTeが挙げられる。
【0301】
また、IV族-VI族半導体化合物としては、
(vi-1)第14族元素を1種類、第16族元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(vi-2)第14族元素を2種類、第16族元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(vi-3)第14族元素を2種類、第16族元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0302】
IV族-VI族半導体化合物は、第14族元素、及び第16族元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0303】
<(vii)遷移金属-p-ブロック化合物を含む半導体化合物>
遷移金属-p-ブロック半導体化合物は、遷移金属元素と、p-ブロック元素とを含む。「p-ブロック元素」とは、周期表の第13族から第18族に属する元素である。
【0304】
遷移金属-p-ブロック半導体化合物のうち、二元系の半導体化合物としては、例えば、NiS、CrSが挙げられる。
【0305】
また、遷移金属-p-ブロック半導体化合物としては、
(vii-1)遷移金属元素を1種類、p-ブロック元素を2種類含む三元系の半導体化合物
(vii-2)遷移金属元素を2種類、p-ブロック元素を1種類含む三元系の半導体化合物
(vii-3)遷移金属元素を2種類、p-ブロック元素を2種類含む四元系の半導体化合物
であってもよい。
【0306】
遷移金属-p-ブロック半導体化合物は、遷移金属元素、及びp-ブロック元素以外の元素をドープ元素として含んでいてもよい。
【0307】
上述の三元系の半導体化合物や四元系の半導体化合物の具体例としては、ZnCdS、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、ZnCdSSe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、CuInS、又はInAlPAs等が挙げられる。
【0308】
本実施形態の半導体化合物としては、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物、第12族元素であるCdを含む半導体化合物、及び第13族元素であるInを含む半導体化合物が好ましい。また、本実施形態の化合物としては、(1)ペロブスカイト化合物、CdとSeとを含む半導体化合物、及びInとPとを含む半導体化合物がより好ましい。
【0309】
CdとSeとを含む半導体化合物は、二元系の半導体化合物、三元系の半導体化合物、四元系の半導体化合物のいずれも好ましい。中でも、二元系の半導体化合物であるCdSeが特に好ましい。
【0310】
InとPとを含む半導体化合物は、二元系の半導体化合物、三元系の半導体化合物、四元系の半導体化合物のいずれも好ましい。中でも、二元系の半導体化合物であるInPが特に好ましい。
【0311】
<本実施形態の半導体化合物の製造方法によって製造される半導体化合物の粒径>
本実施形態の半導体化合物の製造方法によって製造される半導体化合物の好ましい平均粒径は、上述の(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径と同様である。
【0312】
本明細書において、本実施形態の半導体化合物の製造方法によって製造される半導体化合物の平均粒径は、上述の(1)ペロブスカイト化合物の平均粒径の測定と同様の方法によって測定することができる。
【0313】
本実施形態の半導体化合物の製造には、金属元素Mの単体及び金属元素Mを含む化合物のいずれか一方又は両方を含有する原料が使用される(以下、金属元素Mの単体及び金属元素Mを含む化合物のいずれか一方又は両方を含有する原料を「金属元素Mを含む原料」ということがある。)。半導体化合物が非金属元素を含むときは、前記原料にさらに非金属元素を含む化合物を使用することが好ましい(以下、非金属元素を含む化合物を「非金属元素を含む原料化合物」ということがある。)。
【0314】
<金属元素Mの単体>
金属元素Mの単体としては特に制限はないが、上述の金属元素Mの単体等が挙げられる。
【0315】
<金属元素Mを含む化合物>
金属元素Mを含む化合物としては特に制限はないが、上述の金属元素Mを含む酸化物、酢酸塩、有機金属化合物、ハロゲン化物、硝酸塩等が挙げられる。
【0316】
本実施形態の半導体化合物の製造において、上述の金属元素Mの単体を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0317】
本実施形態の半導体化合物の製造において、上述の金属元素Mを含む化合物を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0318】
<非金属元素を含む化合物>
非金属元素を含む原料化合物としては、特に制限はないが、半導体化合物に含まれる非金属元素を含む化合物を使用することができる。本実施形態においては、上述の周期表第13~17族の非金属元素を含む化合物を制限なく使用することができる。
【0319】
本実施形態の半導体化合物の製造において、上述の非金属元素を含む原料化合物を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0320】
((i)~(vii)の半導体化合物の製造方法)
(i)~(vii)の半導体化合物は、半導体化合物を構成する金属元素Mを含む原料と、脂溶性溶媒とを混合した混合液を加熱する方法で製造することができる。また、前記混合液には、必要に応じて、半導体化合物を構成する非金属元素を含む化合物を添加することが好ましい。
【0321】
脂溶性溶媒としては、例えば炭素原子数4~20の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素原子数4~20の炭化水素基を有する含酸素化合物などが挙げられる。
【0322】
炭素原子数4~20の炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0323】
炭素原子数4~20の飽和脂肪族炭化水素基としては、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などを挙げることができる。
【0324】
炭素原子数4~20の不飽和脂肪族炭化水素基としては、オレイル基を挙げることができる。
【0325】
炭素原子数4~20の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
【0326】
炭素原子数4~20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ナフチルメチル基などを挙げることができる。
【0327】
炭素原子数4~20の炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基、及び不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0328】
含窒素化合物としては、アミン類やアミド類を挙げることができる。
含酸素化合物としては、脂肪酸類を挙げることができる。
【0329】
このような脂溶性溶媒のうち、炭素原子数4~20の炭化水素基を有する含窒素化合物が好ましい。このような含窒素化合物としては、例えばn-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキルアミンや、オレイルアミンなどのアルケニルアミンが好ましい。
【0330】
こうした脂溶性溶媒は、合成により生じる半導体化合物の表面に結合可能である。脂溶性溶媒が半導体化合物の表面に結合する際の結合としては、例えば共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、ファンデルワールス結合等の化学結合が挙げられる。
【0331】
上記混合液の加熱温度は、使用する原料(単体や化合物)の種類によって適宜設定すればよい。混合液の温度は、通常、室温~300℃である。例えば、130~300℃が好ましく、240~300℃がより好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると結晶構造が単一化しやすいため好ましい。加熱温度が上記上限値以下であると、生じる半導体化合物の結晶構造が崩壊しにくく、目的物が得られやすいため好ましい。
【0332】
混合液の加熱時間は、使用する原料(単体や化合物)の種類、加熱温度によって適宜設定すればよい。混合液の加熱時間は、例えば、数秒間~数時間が好ましく、1~60分間がより好ましい。
【0333】
上述の半導体化合物の製造方法においては、加熱後の混合液を冷却することにより、目的物である半導体化合物を含む沈殿物が得られる。沈殿物を分離して適宜洗浄することで、目的物である半導体化合物が得られる。
【0334】
沈殿物を分離した上澄み液については、合成した半導体化合物が不溶又は難溶な溶媒を添加し、上澄み液における半導体化合物の溶解度を低下させて沈殿物を生じさせ、上澄み液に含まれる半導体化合物を回収してもよい。「半導体化合物が不溶又は難溶な溶媒」としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリルなどを挙げることができる。
【0335】
上述の半導体化合物の製造方法においては、分離した沈殿物を有機溶媒(例えばクロロホルム、トルエン、ヘキサン、n-ブタノールなど)に入れて半導体化合物を含む溶液としてもよい。
【0336】
本実施形態の半導体化合物の製造方法は、金属元素Mの単体及び金属元素Mを含む化合物のいずれか一方又は両方を含有する原料と水とを混合する工程を含む。当該工程は、水に上述の加熱前の溶液を添加してもよく、上述の加熱前の溶液及び加熱中の溶液のいずれか一方又は両方に水を添加してもよい。中でも、上述の加熱前の溶液及び加熱中の溶液のいずれか一方又は両方に水を添加することが好ましい。なお、加熱中の溶液に水を添加する場合、添加時の溶液の温度が155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0337】
添加する水分量は、金属元素Mを含む原料に含まれる金属元素Mの質量Wに対する、前記添加した水の質量Wの比である(W/W)が0.05~100となるようにする。金属元素Mは(1)ペロブスカイト化合物を構成するBの金属元素であってもよい。(W/W)は0.05~3.0であることが好ましく、0.50~3.0であることがより好ましく、1.0~2.2であることがさらに好ましく、1.1~2.0であることが特に好ましい。(W/W)が前記範囲内であれば、得られる半導体化合物のX線パターンにおける(hkl)=(001)のピークの半値幅を所定の範囲にすることが可能となる。
金属元素Mを含む原料において、前記金属元素Mの単体、又は金属元素Mを含む化合物を複数使用する場合、前記Wは、使用した全ての前記金属元素Mの単体の質量の和と使用した全ての金属元素Mを含む化合物中の金属元素Mの質量の和を合計することで得ることができる。また、水を複数回に分けて添加する場合、前記Wは添加した全ての水の質量を採用することができる。
【0338】
本実施形態の他の態様において、金属元素Mが(1)ペロブスカイト化合物を構成するBの金属元素である場合、Wは、(1)ペロブスカイト化合物に含まれる、鉛、スズ、アンチモン、ビスマス、及びインジウムの合計質量であってもよい。
【0339】
有機溶媒中への水の溶解を促進する観点から、水を添加する溶液中にはイオン性の化合物を含むことが好ましい。イオン性の化合物としては、アンモニウム化合物、またはハロゲン化物が好ましい。
【0340】
溶媒中への水の溶解を促進する観点から、水を含む溶液の調製は室温で混合することが好ましい。
【0341】
反応後に不要になった水を除去して劣化を抑制する観点から、不活性ガスを流通させながら反応させることが好ましい。
【0342】
本明細書において、溶液中の水分量は、微量水分測定装置(AQ-2000、平沼産業社製、ケトン系電解液Hydranal-Coulomat AK)を用いて測定することができる。
【0343】
<(1)ペロブスカイト化合物の製造方法>
(1)ペロブスカイト化合物の製造方法は、既知文献(Nano Lett. 2015, 15, 3692-3696、ACSNano,2015,9,4533-4542)を参考に、以下に述べる方法によって製造することができる。
【0344】
(第1の製造方法)
ペロブスカイト化合物の製造方法としては、ペロブスカイト化合物を構成するB成分、X成分、及びA成分を高温の上述の(3)溶媒に溶解させ溶液を得る工程と、溶液を冷却する工程とを含む製造方法が挙げられる。
【0345】
以下、第1の製造方法を具体的に説明する。
【0346】
まず、B成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物とを高温の(3)溶媒に溶解させ溶液を得る。「A成分を含む化合物」は、X成分を含んでいてもよい。
本工程は、高温の(3)溶媒に各化合物を加えて溶解させ溶液を得ることとしてもよい。
また、本工程は、(3)溶媒に各化合物を加えた後、昇温することで溶液を得ることとしてもよい。第1の製造方法においては、溶液は、(3)溶媒に各化合物を加えた後、昇温することで得ることが好ましい。
【0347】
(3)溶媒としては、原料であるB成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物とを溶解することができる溶媒が好ましい。
【0348】
「高温」とは、各原料が溶解する温度の溶媒であればよい。例えば、高温の(3)溶媒の温度として、60~600℃であることが好ましく、80~400℃であることがより好ましい。
【0349】
(3)溶媒に各化合物を加えた後、昇温することで溶液を得る場合、昇温後の保持温度としては例えば、80~150℃であることが好ましく、120~140℃であることがより好ましい。
【0350】
第1の製造方法においては、前記昇温前又は昇温中の溶液に水を添加することが好ましい。
【0351】
前記昇温中の溶液に水を添加する場合、添加時の溶液の温度は155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0352】
添加する水分量は、金属元素Mを含む原料に含まれる金属元素Mの質量Wに対する、前記添加した水の質量Wの比である(W/W)が0.05~100となるようにする。(W/W)は0.05~3.0であることが好ましく、0.5~3.0であることがより好ましく、1.0~2.2であることがさらに好ましく、1.1~2.0であることが特に好ましい。(W/W)が前記範囲内であれば、得られる(1)ペロブスカイト化合物のX線パターンにおける(hkl)=(001)のピークの半値幅を所定の範囲にすることが可能となる。
【0353】
金属元素Mを含む原料において、金属元素Mの単体、又は金属元素Mを含む化合物を複数使用する場合、前記Wは、使用した全ての金属元素Mの単体の質量の和と使用した全ての金属元素Mを含む化合物中の金属元素Mの質量の和を合計することで得ることができる。また、水を複数回に分けて添加する場合、前記Wは添加した全ての水の質量を採用することができる。
なお、本実施形態では、前記B成分が金属元素Mである。
【0354】
有機溶媒中への水の溶解を促進する観点から、水を添加する溶液中にはイオン性の化合物を含むことが好ましい。イオン性の化合物としては、アンモニウム化合物、またはハロゲン化物が好ましい。
【0355】
溶媒中への水の溶解を促進する観点から、水を含む溶液の調製は室温で混合することが好ましい。
【0356】
反応後に不要になった水を除去して劣化を抑制する観点から、不活性ガスを流通させながら反応させることが好ましい。
【0357】
次いで、得られた溶液を冷却する。
冷却する温度としては、-20~50℃が好ましく、-10~30℃がより好ましい。
冷却速度としては、0.1~1500℃/分が好ましく、10~150℃/分がより好ましい。
【0358】
高温の溶液を冷却することで、溶液の温度差に起因した溶解度の差により、ペロブスカイト化合物を析出させることができる。これにより、ペロブスカイト化合物を含む分散液が得られる。
【0359】
得られたペロブスカイト化合物を含む分散液について固液分離を行うことで、ペロブスカイト化合物を回収することができる。固液分離の方法としては、ろ過、溶媒の蒸発による濃縮などが挙げられる。固液分離を行うことで、ペロブスカイト化合物のみを回収することができる。
【0360】
なお、上述した製造方法においては、得られるペロブスカイト化合物の粒子が分散液中で安定して分散しやすいため、上述の(6)表面修飾剤を加える工程を含んでいることが好ましい。
【0361】
(6)表面修飾剤を加える工程は、冷却する工程の前に行うことが好ましい。具体的には、(6)表面修飾剤は、(3)溶媒に添加してもよく、B成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物とを溶解した溶液に添加してもよい。
【0362】
また、上述した製造方法においては、冷却する工程のあと、遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいることが好ましい。除去する工程によって除去する粗大粒子のサイズは、好ましくは10μm超、より好ましくは1μm超、さらに好ましくは500nm超である。
【0363】
(第2の製造方法)
ペロブスカイト化合物の製造方法としては、ペロブスカイト化合物を構成するA成分、B成分を含む第1溶液を得る工程と、ペロブスカイト化合物を構成するX成分を含む第2溶液を得る工程と、第1溶液と第2溶液を混合して混合液を得る工程と、得られた混合液を冷却する工程とを含む製造方法が挙げられる。
【0364】
以下、第2の製造方法を具体的に説明する。
【0365】
まず、A成分を含む化合物と、B成分を含む化合物とを高温の第2溶媒に溶解させ第1溶液を得る。
本工程は、高温の(3)溶媒に各化合物を加えて溶解させ第1溶液を得ることとしてもよい。
また、本工程は、(3)溶媒に各化合物を加えた後、昇温することで第1溶液を得ることとしてもよい。第2の製造方法においては、第1溶液は、(3)溶媒に各化合物を加えた後、昇温することで得ることが好ましい。
【0366】
(3)溶媒としては、A成分を含む化合物と、B成分を含む化合物とを溶解することができる溶媒が好ましい。
【0367】
「高温」とは、A成分を含む化合物と、B成分を含む化合物とが溶解する温度であればよい。例えば、高温の(3)溶媒の温度として、60~600℃であることが好ましく、80~400℃であることがより好ましい。
【0368】
(3)溶媒に各化合物を加えた後、昇温することで第1溶液を得る場合、昇温後の保持温度としては例えば、80~150℃であることが好ましく、120~140℃であることがより好ましい。
【0369】
また、X成分を含む化合物を上述の(3)溶媒に溶解させ第2溶液を得る。X成分を含む化合物と、B成分を含む化合物とを(3)溶媒に溶解させ第2溶液を得てもよい。
【0370】
(3)溶媒としては、X成分を含む化合物を溶解することができる溶媒が挙げられる。
【0371】
次いで、得られた第1溶液と第2溶液を混合して混合液を得る。第1溶液と第2溶液とを混合する際には、一方を他方に滴下するとよい。また、撹拌しながら第1溶液と第2溶液とを混合するとよい。
【0372】
第2の製造方法においては、前記昇温前又は昇温中の前記第1溶液及び前記第2溶液のいずれか一方又は両方に水を添加してもよく、前記第1溶液と前記第2溶液との混合液に水を添加してもよいが、前記昇温前又は昇温中の前記第1溶液及び前記第2溶液のいずれか一方又は両方に水を添加することが好ましく、前記第2溶液に添加することがより好ましい。
【0373】
前記昇温中の第1溶液に水を添加する場合、添加時の溶液の温度は155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0374】
前記第2溶液に水を添加する場合、混合の際の前記第1溶液の温度は155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0375】
前記第1溶液と前記第2溶液との混合液に水を添加する場合、添加時の混合液の温度は155℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0376】
添加する水分量は、金属元素Mを含む原料に含まれる金属元素Mの質量Wに対する、前記添加した水の質量Wの比である(W/W)が0.05~100となるようにする。金属元素Mは(1)ペロブスカイト化合物を構成するBの金属元素であってもよい。(W/W)は0.05~3.0であることが好ましく、0.5~3.0であることがより好ましく、1.0~2.2であることがさらに好ましく、1.1~2.0であることが特に好ましい。(W/W)が前記範囲内であれば、得られる(1)ペロブスカイト化合物のX線パターンにおける(hkl)=(001)のピークの半値幅を所定の範囲にすることが可能となる。
【0377】
金属元素Mを含む原料において、金属元素Mの単体、又は金属元素Mを含む化合物を複数使用する場合、前記Wは、使用した全ての金属元素Mの単体の質量の和と使用した全ての金属元素Mを含む化合物中の金属元素Mの質量の和を合計することで得ることができる。また、水を複数回に分けて添加する場合、前記Wは添加した全ての水の質量を採用することができる。
【0378】
本実施形態の他の態様において、前記Wは、(1)ペロブスカイト化合物に含まれる、鉛、スズ、アンチモン、ビスマス、及びインジウムの合計質量であってもよい。
【0379】
有機溶媒中への水の溶解を促進する観点から、水を添加する溶液中にはイオン性の化合物を含むことが好ましい。イオン性の化合物としては、アンモニウム化合物、またはハロゲン化物が好ましい。
【0380】
溶媒中への水の溶解を促進する観点から、水を含む溶液の調製は室温で混合することが好ましい。
【0381】
反応後に不要になった水を除去して劣化を抑制する観点から、不活性ガスを流通させながら反応させることが好ましい。
【0382】
次いで、得られた混合液を冷却する。
冷却する温度としては、-20~50℃が好ましく、-10~30℃がより好ましい。
冷却速度としては、0.1~1500℃/分が好ましく、10~150℃/分がより好ましい。
【0383】
混合液を冷却することで、混合液の温度差に起因した溶解度の差により、ペロブスカイト化合物を析出させることができる。これにより、ペロブスカイト化合物を含む分散液が得られる。
【0384】
得られたペロブスカイト化合物を含む分散液については、固液分離を行うことで、ペロブスカイト化合物を回収することができる。固液分離の方法としては、第1の製造方法で示した方法が挙げられる。
【0385】
なお、上述した製造方法においては、得られるペロブスカイト化合物の粒子が分散液中で安定して分散しやすいため、上述の(6)表面修飾剤を加える工程を含んでいることが好ましい。
【0386】
(6)表面修飾剤を加える工程は、冷却する工程の前に行うことが好ましい。具体的には、(6)表面修飾剤は、(3)溶媒、第1溶液、第2溶液、混合液のいずれに添加してもよい。
【0387】
また、上述した製造方法においては、冷却する工程のあと、第1の製造方法で示した遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいていることが好ましい。
【0388】
<組成物1の製造方法1>
以下、得られる組成物の性状を理解しやすくするため、組成物1の製造方法1で得られる組成物を「組成物1-1」と称する。組成物1-1は液状の組成物である。
【0389】
本実施形態の組成物1-1は、(1)ペロブスカイト化合物及び(2)表面保護剤に、さらに(3)溶媒及び(4)重合性化合物のいずれか一方又は両方と混合することで製造することができる。
【0390】
(1)ペロブスカイト化合物及び(2)表面保護剤と、(3)溶媒及び(4)重合性化合物のいずれか一方又は両方と、を混合する際には、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0391】
(1)ペロブスカイト化合物及び(2)表面保護剤と、(3)溶媒及び(4)重合性化合物のいずれか一方又は両方とを混合する際、混合時の温度には特に制限は無い。(1)ペロブスカイト化合物及び(2)表面保護剤が均一に混合しやすいため、混合時の温度は、0℃~100℃の範囲であることが好ましく、10℃~80℃の範囲であることがより好ましい。
【0392】
((3)溶媒を含む組成物1-1の製造方法)
(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、(3)溶媒と、を含む組成物の製造方法としては、例えば、下記製造方法(a1)であってもよく、下記製造方法(a2)であってもよい。
【0393】
製造方法(a1):(1)ペロブスカイト化合物と、(3)溶媒と、を混合する工程と、得られた混合物と、(2)表面保護剤と、を混合する工程と、を含む組成物の製造方法。
【0394】
製造方法(a2):(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を混合する工程と、得られた混合物と、(3)溶媒と、を混合する工程と、を含む組成物の製造方法。
【0395】
製造方法(a1)、(a2)で用いる(3)溶媒は、(1)ペロブスカイト化合物を溶解しにくいものが好ましい。このような(3)溶媒を用いると、製造方法(a1)で得られる混合物、及び製造方法(a1)、(a2)で得られる組成物は、分散液となる。
【0396】
本実施形態の組成物が(2)表面保護剤として、前記(2-1)シラザンの改質体及び前記(2-2)ケイ素化合物の改質体のいずれか一方又は両方を含む場合、組成物の製造方法としては、下記製造方法(a3)であってもよく、下記製造方法(a4)であってもよい。
【0397】
製造方法(a3):(1)ペロブスカイト化合物と、(3)溶媒と、を混合する工程と、得られた混合物と、前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物のいずれか一方又は両方と、を混合する工程と、得られた混合物に改質処理を施す工程と、を含む組成物の製造方法。
【0398】
製造方法(a4):(1)ペロブスカイト化合物と、前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物のいずれか一方又は両方と、を混合する工程と、得られた混合物と、(3)溶媒と、を混合する工程と、得られた混合物に改質処理を施す工程と、を含む組成物の製造方法。
【0399】
(3)溶媒には、(5)重合体が溶解又は分散していてもよい。
【0400】
上述の製造方法に含まれる混合する工程では、撹拌を行うことが分散性を高める観点から好ましい。
【0401】
上述の製造方法に含まれる混合する工程において、混合可能であれば温度には特に制限は無いが、均一に混合する観点から、0℃以上100℃以下の範囲であることが好ましく、10℃以上80℃以下の範囲であることがより好ましい。
【0402】
組成物の製造方法は、(1)ペロブスカイト化合物の分散性を向上させる観点から、製造方法(a1)、又は製造方法(a3)であることが好ましい。
【0403】
(改質処理を施す方法)
改質処理の方法は、前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物に対し紫外線を照射する方法、及び前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物と水蒸気とを反応させる方法等の公知の方法が挙げられる。以下の説明では、前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物と水蒸気とを反応させる処理のことを、「加湿処理」と称することがある。
【0404】
紫外線を照射する方法で用いられる紫外線の波長は、通常10~400nmであり、10~350nmが好ましく、100~180nmがより好ましい。紫外線の発生させる光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UVレーザー光等が挙げられる。
【0405】
中でも、加湿処理を施すことが、(1)ペロブスカイト化合物の近傍により強固な保護領域を形成する観点から好ましい。
【0406】
加湿処理を施す場合、例えば、後述する温度、及び湿度条件下で一定の時間、組成物を静置してもよく、同条件下、一定の時間撹拌してもよい。
【0407】
加湿処理における温度は、十分に改質が進行する温度であればよい。加湿処理における温度は、例えば、5~150℃であることが好ましく、10~100℃であることがより好ましく、15~80℃であることがさらに好ましい。
【0408】
加湿処理における湿度は、組成物中の前記(2-1)及び前記(2-2)に十分に水分が供給される湿度であればよい。加湿処理における湿度は、例えば30%~100%であることが好ましく、40%~95%であることがより好ましく、60%~90%であることがさらに好ましい。
【0409】
加湿処理に要する時間は、十分に改質が進行する時間であればよい。加湿処理に要する時間は、例えば、10分間以上1週間以下であることが好ましく、1時間以上5日間以下であることがより好ましく、2時間以上3日間以下であることがさらに好ましい。
【0410】
組成物に含まれる前記(2-1)及び前記(2-2)の分散性を高める観点から、撹拌することが好ましい。
【0411】
加湿処理における水の供給は、水蒸気を含むガスを反応容器中に流通させることによってもよく、水蒸気を含む雰囲気中で撹拌することで、界面から水分を供給してもよい。
【0412】
水蒸気を含むガスを反応容器中に流通させる場合、得られる組成物の耐久性が向上するため、水蒸気を含むガス流量は、0.01L/分以上100L/分以下が好ましく、0.1L/分以上10L/分以下がより好ましく、0.15L/分以上5L/分以下がさらに好ましい。水蒸気を含むガスとしては、例えば飽和量の水蒸気を含む窒素を挙げることができる。
【0413】
本実施形態の組成物の製造方法において(2)表面保護剤、及び(3)溶媒は、上述した(1)ペロブスカイト化合物の製造方法に含まれるいずれかの工程で混合させてもよい。例えば、下記製造方法(a5)、(a6)であってもよい。
【0414】
製造方法(a5):ペロブスカイト化合物を構成するB成分を含む化合物と、X成分を含む化合物と、A成分を含む化合物と、(2)表面保護剤と、を高温の(3)溶媒に溶解させ溶液を得る工程と、溶液を冷却する工程と、を含む製造方法。
【0415】
製造方法(a6):ペロブスカイト化合物を構成するA成分を含む化合物と、B成分を含む化合物と、を高温の(3)溶媒に溶解させ第1溶液を得る工程と、ペロブスカイト化合物を構成するX成分を含む化合物を(3)溶媒に溶解させ第2溶液を得る工程と、第1溶液と、第2溶液と、を混合して混合液を得る工程と、得られた混合液を冷却する工程とを含む製造方法。
【0416】
製造方法(a6)において、(2)表面保護剤は、第1溶液及び第2溶液のいずれか一方又は両方に溶解させる。
【0417】
これらの製造方法に含まれる各工程の条件は、上述の(1)ペロブスカイト化合物の製造方法における第1の製造方法、及び第2の製造方法の条件と同様である。
【0418】
((4)重合性化合物を含む組成物1-2の製造方法)
(1)ペロブスカイト化合物、(2)表面保護剤、及び(4)重合性化合物を含む組成物の製造方法は、例えば、下記製造方法(c1)~(c3)が挙げられる。
【0419】
製造方法(c1):(4)重合性化合物に(1)ペロブスカイト化合物を分散させ分散体を得る工程と、得られた分散体と、(2)表面保護剤と、を混合する工程と、を含む製造方法。
【0420】
製造方法(c2):(4)重合性化合物に(2)表面保護剤を分散させ分散体を得る工程と、得られた分散体と、(1)ペロブスカイト化合物と、を混合する工程と、を含む製造方法。
【0421】
製造方法(c3):(4)重合性化合物に、(1)ペロブスカイト化合物と(2)表面保護剤との混合物を分散させる工程を含む製造方法。
【0422】
製造方法(c1)~(c3)において、(1)ペロブスカイト化合物の分散性を高める観点から製造方法(c1)であることが好ましい。
【0423】
製造方法(c1)~(c3)において、各分散体を得る工程では、(4)重合性化合物を、各材料に滴下してもよいし、各材料を(4)重合性化合物に滴下してよい。
均一に分散しやすいため、(1)ペロブスカイト化合物、(2)表面保護剤の少なくとも一つを(4)重合性化合物に滴下することが好ましい。
【0424】
製造方法(c1)~(c3)において、各混合する工程では、分散体を各材料に滴下してもよいし、各材料を分散体に滴下してもよい。
均一に分散しやすいため、(1)ペロブスカイト化合物、(2)表面保護剤の少なくとも一つを分散体に滴下することが好ましい。
【0425】
(4)重合性化合物には、(3)溶媒と(5)重合体との少なくともいずれか一方が溶解又は分散していてもよい。
【0426】
(5)重合体を溶解又は分散させる溶媒は、特に限定されない。溶媒としては、(1)ペロブスカイト化合物を溶解し難いものが好ましい。
(5)重合体が溶解している溶媒としては、例えば、上述の(3)溶媒が挙げられる。
【0427】
(3)溶媒の中でも、ハロゲン化炭化水素、及び炭化水素がより好ましい。
【0428】
また、本実施形態の組成物の製造方法は、下記製造方法(c4)であってもよく、製造方法(c5)であってもよい。
【0429】
製造方法(c4):(1)ペロブスカイト化合物を(3)溶媒に分散させ分散液を得る工程と、得られた分散液に、(4)重合性化合物と、(5)重合体と、を混合して混合液を得る工程と、得られた混合液と、(2)表面保護剤と、を混合する工程とを有する、組成物の製造方法。
【0430】
製造方法(c5):(1)ペロブスカイト化合物を(3)溶媒に分散させ分散液を得る工程と、得られた分散液と、前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物のいずれか一方又は両方と、を混合し、混合液を得る工程と、得られた混合液に改質処理を施し前記(2-1)シラザンの改質体及び前記(2-2)ケイ素化合物の改質体のいずれか一方又は両方を含む混合液を得る工程と、得られた混合液と、(3)溶媒と、を混合する工程とを有する、組成物の製造方法。
【0431】
組成物1の製造方法1において、(6)表面修飾剤を使用するときは、(2)表面保護剤とともに添加することができる。
【0432】
<組成物1の製造方法2>
本実施形態の組成物の製造方法としては、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、(4)重合性化合物と、を混合する工程と、(4)重合性化合物を重合させる工程と、を含む製造方法を挙げることができる。
【0433】
組成物1の製造方法2で得られる組成物は、(1)ペロブスカイト化合物、(2)表面保護剤、(5)重合体の合計が組成物全体の90質量%以上であることが好ましい。
【0434】
また、本実施形態の組成物の製造方法としては、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、(3)溶媒に溶解している(5)重合体とを混合する工程と、(3)溶媒を除去する工程と、を含む製造方法も挙げることができる。
【0435】
上述の製造方法に含まれる混合する工程には、上述の組成物1の製造方法1で示した方法と同様の混合方法を用いることができる。
【0436】
組成物の製造方法は、例えば、下記(d1)、(d2)の製造方法が挙げられる。
【0437】
製造方法(d1):(4)重合性化合物に、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を分散させる工程と、(4)重合性化合物を重合させる工程と、を含む製造方法。
【0438】
分散させる工程において、(4)重合性化合物に(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を加える順番には制限がない。(1)ペロブスカイト化合物が先であってもよく、(2)表面保護剤が先であってもよく、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を同時に加えてもよい。
【0439】
製造方法(d2):(5)重合体を溶解させた(3)溶媒に、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を分散させる工程と、溶媒を除去する工程と、を含む製造方法。
【0440】
分散させる工程において、(5)重合体を溶解させた(3)溶媒に(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を加える順番には制限がない。(1)ペロブスカイト化合物が先であってもよく、(2)表面保護剤が先であってもよく、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を同時に加えてもよい。
【0441】
製造方法(d2)に含まれる、(3)溶媒を除去する工程は、室温で静置し、自然乾燥させる工程であってもよいし、真空乾燥機を用いた減圧乾燥であってもよいし、加熱によって(3)溶媒を蒸発させる工程であってもよい。
【0442】
(3)溶媒を除去する工程では、例えば、0℃以上300℃以下で、1分間以上7日間以下乾燥させることで、(3)溶媒を除去することができる。
【0443】
製造方法(d1)に含まれる、(4)重合性化合物を重合させる工程は、ラジカル重合などの公知の重合反応を適宜用いることで行うことができる。
【0444】
例えばラジカル重合の場合は、(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、(4)重合性化合物との混合物に、ラジカル重合開始剤を添加し、ラジカルを発生させることで重合反応を進行させることができる。
【0445】
ラジカル重合開始剤は特に限定されるものではないが、例えば、光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0446】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0447】
組成物1の製造方法2において、(6)表面修飾剤を使用するときは、(2)表面保護剤とともに添加することができる。
【0448】
<組成物1の製造方法3>
また、本実施形態の組成物の製造方法は、下記(d3)~(d6)の製造方法も採用することができる。
【0449】
製造方法(d3):(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、(5)重合体と、を溶融混練する工程を含む製造方法。
【0450】
製造方法(d4):(1)ペロブスカイト化合物と、前記(2-1)シラザン及び前記(2-2)ケイ素化合物のいずれか一方又は両方と、(5)重合体と、を溶融混練する工程と、(5)重合体が溶融した状態で加湿処理を施す工程と、を含む製造方法。
【0451】
製造方法(d5):(1)ペロブスカイト化合物と、(2)表面保護剤と、を含む液状組成物を製造する工程と、得られた液状組成物から固形分を取り出す工程と、得られた固形分と、(5)重合体と、を溶融混練する工程と、を含む製造方法。
【0452】
製造方法(d6):(2)表面保護剤を含まず、(1)ペロブスカイト化合物を含む液状組成物を製造する工程と、得られた液状組成物から固形分を取り出す工程と、得られた固形分と、(2)表面保護剤と、(5)重合体と、を溶融混練する工程と、を含む製造方法。
【0453】
製造方法(d3)~(d6)において(5)重合体を溶融混練する方法としては、重合体の混練方法として公知の方法を採用することができる。例えば、単軸押出機、又は二軸押出機を用いた押出加工を採用することができる。
【0454】
製造方法(d4)の加湿処理を施す工程は、上述した方法を採用することができる。
【0455】
製造方法(d5)及び(d6)の液状組成物を製造する工程は、上述の製造方法(a1)又は(a2)を採用することができる。製造方法(d6)の液状組成物を製造する工程においては、上述の製造方法(a1)又は(a2)において(2)表面保護剤を添加しなければよい。
【0456】
製造方法(d5)の液状組成物を製造する工程は、上述の製造方法(a3)又は(a4)を採用することができる。
【0457】
製造方法(d5)、(d6)の固形分を取り出す工程は、例えば加熱、減圧、送風及びこれらの組み合わせにより、液状組成物から液状組成物を構成する(3)溶媒及び(4)重合性化合物を除去することで行う。
【0458】
組成物の製造方法3において、(6)表面修飾剤を使用するときは、(2)表面保護剤とともに添加することができる。
【0459】
<組成物2の製造方法>
本実施形態の組成物2は、(2)表面保護剤の添加、改質処理を行わない以外は、上述の組成物1の製造方法1~3と同様に製造することができる。
【0460】
上述の組成物の製造方法において、改質処理を施した後の組成物にハロゲンイオンを含む溶液を添加すると、(1)ペロブスカイト化合物中のXと前記ハロゲンイオンとの交換反応が起き、(1)ペロブスカイト化合物の最大発光波長の値を調整することができる。
【0461】
(1)ペロブスカイト化合物の表面に前記(2)表面保護剤からなる表面保護層を形成した後に、さらにシロキサン結合を有する無機ケイ素化合物の層を形成してもよい。
本明細書において、「シロキサン結合を有する無機ケイ素化合物」とは、有機基とケイ素元素を含み、前記有機基の全てが改質処理(加水分解)により脱離する有機基である化合物の改質体及び有機基を有さないケイ素元素を含む化合物の改質体を意味する。
【0462】
シロキサン結合を有する無機ケイ素化合物としては、例えば、前記式(B1)において、複数あるR15の全てが水素原子であるジシラザンの改質体、前記式(B2)において、複数あるR15の全てが水素原子である低分子シラザンの改質体、上記式(B3)において、複数あるR15の全てが水素原子である高分子シラザンの改質体、上述した式(B4)で表される構造を有するポリシラザンにおいて、複数あるR15の全てが水素原子である高分子シラザンの改質体、ケイ酸ナトリウム(NaSiO)の改質体が挙げられる。
【0463】
<組成物に含まれる(1)ペロブスカイト化合物の含有量の測定>
本実施形態の組成物に含まれる(1)ペロブスカイト化合物は乾燥質量法によって固形分濃度(質量%)を算出することができる。乾燥質量法の詳細については、実施例において説明する。
【0464】
<発光スペクトルの半値幅、吸収率、発光波長の測定>
本発明の(1)ペロブスカイト化合物の発光スペクトルの半値幅、吸収率、発光波長は、絶対PL量子収率測定装置(例えば、浜松ホトニクス株式会社製、C9920-02)を用いて、励起光450nm、室温、大気下で測定する。発光波長は最も発光強度の高い値の波長を用いる。
【0465】
本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物の励起光の吸収率は、0.2以上、1未満が好ましく、0.3以上、0.9未満がより好ましく、0.6以上、0.9未満がさらに好ましい。
【0466】
<フィルム>
本発明に係るフィルムは、本実施形態の(1)ペロブスカイト化合物を含む。
本実施形態に係るフィルムは、上述の組成物を形成材料とする。例えば、本実施形態に係るフィルムは、(1)ペロブスカイト化合物及び(5)重合体を含み、(1)ペロブスカイト化合物及び(5)重合体の合計がフィルム全体の90質量%以上である。
【0467】
フィルム形状は特に限定されるものではなく、シート状、バー状等の任意の形状であることができる。本明細書において「バー状の形状」とは、例えば、一方向に延在する平面視帯状の形状を意味する。平面視帯状の形状としては、各辺の長さが異なる板状の形状が例示される。
【0468】
フィルムの厚みは、0.01μm~1000mmであってもよく、0.1μm~10mmであってもよく、1μm~1mmであってもよい。
本明細書においてフィルムの厚みは、フィルムの縦、横、高さの中で最も値の小さい辺を「厚さ方向」としたときの、フィルムの厚さ方向のおもて面と裏面との間の距離を指す。具体的には、マイクロメータを用い、フィルムの任意の3点においてフィルムの厚みを測定し、3点の測定値の平均値を、フィルムの厚みとする。
【0469】
フィルムは、単層であってもよく、複層であってもよい。複層の場合、各層は同一の種類の実施形態の組成物が用いられていてもよく、互いに異なる種類の実施形態の組成物が用いられていてもよい。
【0470】
フィルムは、例えば、後述の積層構造体の製造方法により、基板上に形成されたフィルムを得ることができる。また、フィルムは基板から剥がして得ることができる。
【0471】
<積層構造体>
本実施形態に係る積層構造体は、複数の層を有し、少なくとも一層が、上述のフィルムである。
【0472】
積層構造体が有する複数の層のうち、上述のフィルム以外の層としては、基板、バリア層、光散乱層等の任意の層が挙げられる。
積層されるフィルムの形状は特に限定されるものではなく、シート状、バー状等の任意の形状であることができる。
【0473】
(基板)
基板は、特に制限はないが、フィルムであってもよい。基板は、光透過性を有するものが好ましい。光透過性を有する基板を有する積層構造体では、(1)ペロブスカイト化合物が発した光を取り出しやすいため好ましい。
【0474】
基板の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマーや、ガラスなどの公知の材料を用いることができる。
例えば、積層構造体において、上述のフィルムを、基板上に設けていてもよい。
【0475】
図1は、本実施形態の積層構造体の構成を模式的に示す断面図である。第1の積層構造体1aは、第1の基板20及び第2の基板21の間に、本実施形態のフィルム10が設けられている。フィルム10は、封止層22によって封止されている。
【0476】
本発明の一つの側面は、第1の基板20と、第2の基板21と、第1の基板20と第2の基板21との間に位置する本実施形態に係るフィルム10と、封止層22と、を有する積層構造体であって、封止層22が、フィルム10の第1の基板20、及び第2の基板21と接していない面上に配置されることを特徴とする積層構造体1aである。
【0477】
(バリア層)
本実施形態に係る積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、バリア層が挙げられる。外気の水蒸気、及び大気中の空気から前述の組成物を保護する観点から、バリア層を含んでいてもよい。
【0478】
バリア層は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明なものが好ましい。バリア層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマーや、ガラス膜などの公知のバリア層を用いることができる。
【0479】
(光散乱層)
本実施形態に係る積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、光散乱層が挙げられる。入射した光を有効に利用する観点から、光散乱層を含んでいてもよい。
光散乱層は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明なものが好ましい。光散乱層としては、シリカ粒子などの光散乱粒子や、増幅拡散フィルムなどの公知の光散乱層を用いることができる。
【0480】
<発光装置>
本発明に係る発光装置は、本発明の実施形態の化合物、組成物又は前記積層構造体と、光源とを合せることで得ることができる。発光装置は、光源から発光した光を、後段に設置した化合物、組成物又は積層構造体に照射することで、化合物、組成物又は積層構造体を発光させ、光を取り出す装置である。前記発光装置における積層構造体が有する複数の層のうち、上述のフィルム、基板、バリア層、光散乱層以外の層としては、光反射部材、輝度強化部、プリズムシート、導光板、要素間の媒体材料層等の任意の層が挙げられる。
本発明の一つの側面は、プリズムシート50と、導光板60と、前記第一の積層構造体1aと、光源30と、がこの順に積層された発光装置2である。
【0481】
(光源)
本発明に係る発光装置を構成する光源は、特に制限は無いが、前述の化合物、前述の組成物、又は積層構造体中の(1)ペロブスカイト化合物を発光させるという観点から、600nm以下の発光波長を有する光源が好ましい。光源としては、例えば、青色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)、レーザー、ELなどの公知の光源を用いることができる。
【0482】
(光反射部材)
本発明に係る発光装置を構成する積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、光反射部材が挙げられる。光源の光を前述の化合物、組成物、又は積層構造体に向かって照射する観点から、光反射部材を含んでいても良い。光反射部材は、特に制限は無いが、反射フィルムであっても良い。
反射フィルムとしては、例えば、反射鏡、反射粒子のフィルム、反射金属フィルムや反射体などの公知の反射フィルムを用いることができる。
【0483】
(輝度強化部)
本発明に係る発光装置を構成する積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、輝度強化部が挙げられる。光の一部分を、光が伝送された方向に向かって反射して戻す観点から、輝度強化部を含んでいても良い。
【0484】
(プリズムシート)
本発明に係る発光装置を構成する積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、プリズムシートが挙げられる。プリズムシートは、代表的には、基材部とプリズム部とを有する。なお、基材部は、隣接する部材に応じて省略してもよい。プリズムシートは、任意の適切な接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層)を介して隣接する部材に貼り合わせることができる。プリズムシートは、視認側とは反対側(背面側)に凸となる複数の単位プリズムが並列されて構成されている。プリズムシートの凸部を背面側に向けて配置することにより、プリズムシートを透過する光が集光されやすくなる。また、プリズムシートの凸部を背面側に向けて配置すれば、凸部を視認側に向けて配置する場合と比較して、プリズムシートに入射せずに反射する光が少なく、輝度の高いディスプレイを得ることができる。
【0485】
(導光板)
本発明に係る発光装置を構成する積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、導光板が挙げられる。導光板としては、例えば、横方向からの光を厚さ方向に偏向可能となるよう、背面側にレンズパターンが形成された導光板、背面側及び/又は視認側にプリズム形状等が形成された導光板などの任意の適切な導光板が用いることができる。
【0486】
(要素間の媒体材料層)
本発明に係る発光装置を構成する積層構造体が有していてもよい層としては、特に制限は無いが、隣接する要素(層)間の光路上に1つ以上の媒体材料からなる層(要素間の媒体材料層)が挙げられる。
要素間の媒体材料層に含まれる1つ以上の媒体には、特に制限は無いが、真空、空気、ガス、光学材料、接着剤、光学接着剤、ガラス、ポリマー、固体、液体、ゲル、硬化材料、光学結合材料、屈折率整合又は屈折率不整合材料、屈折率勾配材料、クラッディング又は抗クラッディング材料、スペーサー、シリカゲル、輝度強化材料、散乱又は拡散材料、反射又は抗反射材料、波長選択性材料、波長選択性抗反射材料、色フィルター、又は前記技術分野で既知の好適な媒体、が含まれる。
【0487】
本発明に係る発光装置の具体例としては、例えば、ELディスプレイや液晶ディスプレイ用の波長変換材料を備えたものが挙げられる。
具体的には、
(E1)本発明の組成物をガラスチューブ等の中に入れて封止し、これを導光板の端面(側面)に沿うように、光源である青色発光ダイオードと導光板の間に配置して、青色光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(オンエッジ方式のバックライト)、
(E2)本発明の組成物をシート化し、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止したフィルムを、導光板の上に設置して、導光板の端面(側面)に置かれた青色発光ダイオードから導光板を通して前記シートに照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(表面実装方式のバックライト)、
(E3)本発明の組成物を、樹脂等に分散させて青色発光ダイオードの発光部近傍に設置し、照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(オンチップ方式のバックライト)、及び
(E4)本発明の組成物を、レジスト中に分散させて、カラーフィルター上に設置し、光源から照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト
が挙げられる。
【0488】
また、本発明に係る発光装置の具体例としては、本発明の実施形態の組成物を成形し、光源である青色発光ダイオードの後段に配置して、青色光を緑色光や赤色光に変換して白色光を発する照明が挙げられる。
【0489】
<ディスプレイ>
図2に示すように、本実施形態のディスプレイ3は、液晶パネル40と、前述の発光装置2とを視認側からこの順に備える。発光装置2は、第2の積層構造体1bと光源30とを備える。第2の積層構造体1bは、前述の第1の積層構造体1aが、プリズムシート50と、導光板60と、をさらに備えたものである。ディスプレイは、任意の適切なその他の部材をさらに備えていてもよい。
本発明の一つの側面は、液晶パネル40と、プリズムシート50と、導光板60と、前記第一の積層構造体1aと、光源30と、がこの順に積層された液晶ディスプレイ3である。
【0490】
(液晶パネル)
上記液晶パネルは、代表的には、液晶セルと、前記液晶セルの視認側に配置された視認側偏光板と、前記液晶セルの背面側に配置された背面側偏光板とを備える。視認側偏光板及び背面側偏光板は、それぞれの吸収軸が実質的に直交又は平行となるようにして配置され得る。
【0491】
(液晶セル)
液晶セルは、一対の基板と、前記基板間に挟持された表示媒体としての液晶層とを有する。一般的な構成においては、一方の基板に、カラーフィルター及びブラックマトリクスが設けられており、他方の基板に、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線及びソース信号を与える信号線と、画素電極及び対向電極とが設けられている。上記基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー等によって制御できる。上記基板の液晶層と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜等を設けることができる。
【0492】
(偏光板)
偏光板は、代表的には、偏光子と、偏光子の両側に配置された保護層とを有する。偏光子は、代表的には、吸収型偏光子である。
上記偏光子としては、任意の適切な偏光子が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く、特に好ましい。
【0493】
本実施形態の化合物又は組成物の用途としては、例えば、発光ダイオード(LED)用の波長変換材料が挙げられる。
<LED>
本実施形態の化合物又は組成物は、例えば、LEDの発光層の材料として用いることができる。
本実施形態の化合物又は組成物を含むLEDとしては、例えば、本実施形態の化合物又は組成物とZnSなどの導電性粒子を混合して膜状に積層し、片面にn型輸送層を積層し、もう片面にp型輸送層を積層した構造をしており、電流を流すことで、p型半導体の正孔と、n型半導体の電子が接合面の組成物に含まれる(1)ペロブスカイト化合物の粒子中で電荷を打ち消すことで発光する方式が挙げられる。
【0494】
<太陽電池>
本実施形態の化合物又は組成物は、太陽電池の活性層に含まれる電子輸送性材料として利用することができる。
前記太陽電池としては、構成は特に限定されないが、例えば、フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板、酸化チタン緻密層、多孔質酸化アルミニウム層、本実施形態の化合物又は組成物を含む活性層、2,2’,7,7’-tetrakis(N,N’-di-p-methoxyphenylamine)-9,9’-spirobifluorene(Spiro-MeOTAD)などのホール輸送層、及び、銀(Ag)電極をこの順で有する太陽電池が挙げられる。
酸化チタン緻密層は、電子輸送の機能、FTOのラフネスを抑える効果、及び、逆電子移動を抑制する機能を有する。
多孔質酸化アルミニウム層は、光吸収効率を向上させる機能を有する。
活性層に含まれる、本実施形態の化合物又は組成物は、電荷分離及び電子輸送の機能を有する。
【0495】
<フィルムの製造方法>
フィルムの製造方法は、例えば、下記(e1)~(e3)の製造方法が挙げられる。
【0496】
製造方法(e1):液状組成物を塗工して塗膜を得る工程と、塗膜から(3)溶媒を除去する工程と、を含むフィルムの製造方法。
【0497】
製造方法(e2):(4)重合性化合物を含む液状組成物を塗工して塗膜を得る工程と、得られた塗膜に含まれる(4)重合性化合物を重合させる工程と、を含むフィルムの製造方法。
【0498】
製造方法(e3):上述の製造方法(d1)、(d2)で得られた組成物を成形加工するフィルムの製造方法。
【0499】
<積層構造体の製造方法>
積層構造体の製造方法は、例えば、下記(f1)~(f3)の製造方法が挙げられる。
【0500】
製造方法(f1):液状組成物を製造する工程と、得られた液状組成物を基板上に塗工する工程と、得られた塗膜から(3)溶媒を除去する工程と、を含む積層構造体の製造方法。
【0501】
製造方法(f2):フィルムを基板に張り合わせる工程を含む積層構造体の製造方法。
【0502】
製造方法(f3):(4)重合性化合物を含む液状組成物を製造する工程と、得られた液状組成物を基板上に塗工する工程と、得られた塗膜に含まれる(4)重合性化合物を重合させる工程と、を含む製造方法。
【0503】
製造方法(f1)、(f3)における液状組成物を製造する工程は、上述の製造方法(c1)~(c4)を採用することができる。
【0504】
製造方法(f1)、(f3)における液状組成物を基板上に塗工する工程は、特に制限は無いが、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法などの、公知の塗布、塗工方法を用いることができる。
【0505】
製造方法(f1)における(3)溶媒を除去する工程は、上述した製造方法(d2)に含まれる(3)溶媒を除去する工程と同様の工程とすることができる。
【0506】
製造方法(f3)における(4)重合性化合物を重合させる工程は、上述した製造方法(d1)に含まれる(4)重合性化合物を重合させる工程と同様の工程とすることができる。
【0507】
製造方法(f2)におけるフィルムを基板に張り合わせる工程では、任意の接着剤を用いることができる。
【0508】
接着剤は、(1)ペロブスカイト化合物を溶解しないものであれば特に制限は無く、公知の接着剤を用いることができる。
【0509】
積層構造体の製造方法は、得られた積層構造体に、さらに任意のフィルムを張り合わせる工程を含んでいてもよい。
【0510】
張り合わせる任意のフィルムとしては、例えば、反射フィルム、拡散フィルムが挙げられる。
【0511】
フィルムを張り合わせる工程では、任意の接着剤を用いることができる。
【0512】
上述の接着剤は、本実施形態の化合物を溶解しないものであれば特に制限は無く、公知の接着剤を用いることができる。
【0513】
<発光装置の製造方法>
例えば、前述の光源と、光源から後段の光路上に前述の化合物、前述の組成物、又は積層構造体を設置する工程とを含む製造方法が挙げられる。
【0514】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0515】
<センサー>
本実施形態の化合物又は組成物は、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(イメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する検出部、パルスオキシメーターなどの光学バイオセンサーの検出部に使用する含まれる光電変換素子(光検出素子)材料として利用することができる。
【実施例
【0516】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0517】
((1)ペロブスカイト化合物の固形分濃度測定)
実施例5で得られた組成物におけるペロブスカイト化合物の固形分濃度は、それぞれ、再分散させることで得られたペロブスカイト化合物及び溶媒を含む分散液を105℃で3時間乾燥させた後に、残存した質量を測定して下記式1に当てはめて算出した。
固形分濃度(質量%)=乾燥後の質量÷乾燥前の質量×100・・・式1
【0518】
(添加水の質量Mの測定)
添加水の質量Mは、微量水分測定装置(AQ-2000、平沼産業社製、ケトン系電解液Hydranal-Coulomat AK)を用いて測定した。
【0519】
(発光スペクトルの半値幅、吸収率、及び発光波長の測定)
実施例1~5、及び比較例1で得られた化合物の発光スペクトルの半値幅、及び発光波長を、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、C9920-02)を用いて、励起光450nm、室温、大気下で測定した。
【0520】
((hkl)=(001)の半値幅測定)
実施例1~5、及び比較例1で得られた化合物をX線構造回折(XRD、CuKα線=1.5458λ、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)によって測定したのち、(hkl)=(001)のピークの半値幅を測定した。(hkl)=(001)のピークの半値幅は、統合粉末X線解析ソフトウェア PDXL(リガク社製)を用いて算出した。
【0521】
(平均粒径測定)
実施例1~5、及び比較例1で得られた化合物を透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2200FS)で観察した。実施例1~5、及び比較例1で得られた化合物をそれぞれ含む組成物をTEM専用の支持膜付きグリッドにキャストし、自然乾燥させたものを、加速電圧を200kVとして観察を行った。また、観察した視野では、エネルギー分散型X線分析(日本電子株式会社製、JED-2300)も行い、元素マッピング像を得た。
【0522】
実施例1~5、及び比較例1で得られたペロブスカイト化合物の平均粒径は、画像解析ソフトImage Jを用いて算出した。各組成物のTEM像中の、実施例1~5、及び比較例1で得られた化合物それぞれを黒色とし、それ以外を白色として変換した二値化処理済み画像を得た。このとき、TEM-EDX測定で得られた元素マッピング像と比較し、実施例1~5、及び比較例1で得られたペロブスカイト化合物それぞれに由来する成分が検出されている位置を黒色に変換できていることを確認した。前記二値化処理済み画像について、ペロブスカイト化合物のサイズを測定した。
平均粒径は無作為に選んだ300個のペロブスカイト化合物の立方体もしくは直方体をした粒子の最も長い辺の長さの平均から算出した。
【0523】
[実施例1]
オレイルアミン25mL、及びエタノール200mLを混合した後、氷冷しながら攪拌し、臭化水素酸溶液(48%)を17.12mL添加した後、減圧乾燥して沈殿を得た。沈殿はジエチルエーテルを用いて洗浄した後、減圧乾燥して臭化オレイルアンモニウムを得た。
【0524】
臭化オレイルアンモニウム21gに対して、トルエン200mLを混合した後、後述の酢酸鉛・3水和物(金属元素Mとして鉛を含む原料)中の鉛の質量(g)に対し、水(g)/鉛(g)が、0.58となるように臭化オレイルアンモニウムを含む溶液に水を添加して、臭化オレイルアンモニウムを含む溶液53.4mLを調製した。
酢酸鉛・3水和物1.52gと、ホルムアミジン酢酸塩1.56g、1-オクタデセンの溶媒160mLと、オレイン酸40mLとを混合した。攪拌して、窒素を流しながら130℃まで加熱した後、上述の臭化オレイルアンモニウム、及び水を含む溶液を53.4mL添加した。添加後溶液を室温まで降温し、(1)ペロブスカイト化合物を含む分散液1を得た。
【0525】
分散液1.50μLに対してトルエン3.95mLを混合した溶液の発光特性を評価すると、発光スペクトルの半値幅が20.93nmであり、励起光の吸収率は0.65であり、発光波長が541nmであった。
【0526】
200mLの上記分散液1に対してトルエン100mL、及びアセトニトリル50mLを混合した溶液をろ過で固液分離した。その後、ろ過上の固形分をトルエン100mL、及びアセトニトリル50mLの混合溶液を2回流して洗浄し、ろ過した。これにより、(1)ペロブスカイト化合物を得た。
【0527】
得られた(1)ペロブスカイト化合物をトルエン100mLで分散し、分散液2を得た。分散液2を50μL無反射板にキャスト・乾燥した後、XRD測定した所、XRDスペクトルは2θ=14~15°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有していた。測定した(hkl)=(001)の半値幅は0.272であった。測定結果より、回収した(1)ペロブスカイト化合物は、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であることを確認した。TEMによって測定した平均粒径は14.6nmであった。
【0528】
[実施例2]
ペロブスカイト化合物の製造工程における臭化オレイルアンモニウムを含む溶液の水分量を、酢酸鉛・3水和物(金属元素Mとして鉛を含む原料)中の鉛の質量(g)に対し、水(g)/鉛(g)を、1.13とした以外は、実施例1と同様の方法で分散液を得た。(hkl)=(001)の半値幅は、0.232であった。また、発光スペクトルの半値幅は、20.68nmであり、励起光の吸収率は0.72であり、発光波長が541nmであった。TEMによって測定した平均粒径は21.6nmであった。
【0529】
[実施例3]
ペロブスカイト化合物の製造工程における臭化オレイルアンモニウムを含む溶液の水分量を、酢酸鉛・3水和物(金属元素Mとして鉛を含む原料)中の鉛の質量(g)に対し、水(g)/鉛(g)がを1.69とした以外は、実施例1と同様の方法で分散液を得た。(hkl)=(001)の半値幅は、0.213であった。また、発光スペクトルの半値幅は、20.15nmであり、励起光の吸収率は0.65であり、発光波長が542nmであった。TEMによって測定した平均粒径は18.4nmであった。
【0530】
[実施例4]
ペロブスカイト化合物の製造工程における臭化オレイルアンモニウムを含む溶液の水分量を、酢酸鉛・3水和物(金属元素Mとして鉛を含む原料)中の鉛の質量(g)に対し、水(g)/鉛(g)を、2.25とした以外は、実施例1と同様の方法で分散液を得た。(hkl)=(001)の半値幅は、0.150であった。また、発光スペクトルの半値幅は、20.16nmであり、励起光の吸収率は0.29であり、発光波長が539nmであった。TEMによって測定した平均粒径は26.6nmであった。
【0531】
[実施例5]
オレイルアミン25mL、及びエタノール200mLを混合した後、氷冷しながら攪拌しながら臭化水素酸溶液(48%)を17.12mL添加した後、減圧乾燥して沈殿を得た。沈殿はジエチルエーテルを用いて洗浄した後、減圧乾燥して臭化オレイルアンモニウムを得た。
【0532】
臭化オレイルアンモニウム21gに対して、トルエン200mLを混合した後、後述の酢酸鉛・3水和物(金属元素Mとして鉛を含む原料)中の鉛の質量(g)に対し、水(g)/鉛(g)が、1.69となるように臭化オレイルアンモニウムを含む溶液に水を添加して、臭化オレイルアンモニウムを含む溶液を調製した。
酢酸鉛・3水和物1.52gと、ホルムアミジン酢酸塩1.56g、1-オクタデセンの溶媒160mLと、オレイン酸40mLとを混合した。攪拌して、窒素を流しながら130℃まで加熱した後、上述の臭化オレイルアンモニウム及び水を含む溶液を53.4mL添加した。添加後溶液を室温まで降温し、(1)ペロブスカイト化合物を含む分散液3を得た。TEMによって測定した平均粒径は18.4nmであった。
【0533】
200mLの上記分散液3に対してトルエン100mL、及びアセトニトリル50mLを混合した溶液をろ過で固液分離した。その後、ろ過上の固形分をトルエン100mL、及びアセトニトリル50mLの混合溶液を2回流して洗浄し、ろ過した。これにより、(1)ペロブスカイト化合物を得た。
【0534】
得られた(1)ペロブスカイト化合物をトルエン100mLで分散し、分散液4を得た。分散液4を50μL無反射板にキャスト・乾燥した後、XRD測定した所、XRDスペクトルは2θ=14~15°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有していた。測定した(hkl)=(001)の半値幅は0.213であった。測定結果より、回収した(1)ペロブスカイト化合物は、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であることを確認した。
【0535】
前記ペロブスカイト化合物をキシレンと混合して、固形分濃度が0.9質量%となるように185mLの分散液5を調製した。ここに、オルガノポリシラザン(1500 Slow Cure、Durazane, メルクパフォーマンスマテリアルズ株式会社製)を、分散液5中の1質量部のペロブスカイト化合物に対し、2質量部加えた。上述の方法で発光スペクトルの半値幅を測定すると、20.60nmであり、発光波長は538nmであった。
【0536】
[比較例1]
ペロブスカイト化合物の製造工程における臭化オレイルアンモニウムを含む溶液の水分量を、酢酸鉛・3水和物(金属元素Mとして鉛を含む原料)中の鉛の質量(g)に対し、水(g)/鉛(g)を0.046とした以外は、実施例1と同様の方法で分散液を得た。なお、上述の水は、意図的に加えたものではなく、原料に含まれていた水分由来の水である。
上述の方法で(hkl)=(001)の半値幅を算出すると0.600であった。上述の方法で発光スペクトルの半値幅を測定すると、24.30nmであり、励起光の吸収率は0.64であり、発光波長は535nmであった。TEMによって測定した平均粒径は13.1nmであった。
【0537】
実施例1~5、比較例1の結果を表1に示す。
【0538】
【表1】
【0539】
上記の結果から、本発明を適用した実施例1~5のペロブスカイト化合物は、本発明を適用しない比較例1のペロブスカイト化合物と比べて、発光スペクトルの半値幅が狭いことが確認できた。
【0540】
[参考例1]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物を、ガラスチューブ等の中に入れて封止した後に、これを光源である青色発光ダイオードと導光板の間に配置することで、青色発光ダイオードの青色光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0541】
[参考例2]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物をシート化する事で樹脂組成物を得ることができ、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止したフィルムを導光板の上に設置することで、導光板の端面(側面)に置かれた青色発光ダイオードから導光板を通して前記シートに照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0542】
[参考例3]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物を、青色発光ダイオードの発光部近傍に設置することで照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0543】
[参考例4]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物とレジストを混合した後に、溶媒を除去する事で波長変換材料を得ることができる。得られた波長変換材料を光源である青色発光ダイオードと導光板の間や、光源であるOLEDの後段に配置することで、光源の青色光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
【0544】
[参考例5]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物をZnSなどの導電性粒子を混合して成膜し、片面にn型輸送層を積層し、もう片面をp型輸送層で積層することでLEDを得る。電流を流すことによりp型半導体の正孔と、n型半導体の電子が接合面のペロブスカイト化合物中で電荷を打ち消されることで発光させることができる。
【0545】
[参考例6]
フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板の表面上に、酸化チタン緻密層を積層させ、その上から多孔質酸化アルミニウム層を積層し、その上に実施例1~5に記載の化合物、又は組成物を積層し、溶媒を除去した後にその上から2,2’,7,7’-tetrakis-(N,N’-di-p-methoxyphenylamine)-9,9’-spirobifluorene(Spiro-OMeTAD)などのホール輸送層を積層し、その上に銀(Ag)層を積層し、太陽電池を作製する。
【0546】
[参考例7]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物の、溶媒を除去して成形する事で本実施形態の組成物を得ることができ、これを青色発光ダイオードの後段に設置することで、青色発光ダイオードから組成物に照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換して白色光を発するレーザーダイオード照明を製造する。
【0547】
[参考例8]
実施例1~5に記載の化合物、又は組成物の溶媒を除去して成形する事で本実施形態の組成物を得ることができる。得られた組成物を光電変換層の一部とすることで、光を検知する検出部に使用する含まれる光電変換素子(光検出素子)材料を製造する。光電変換素子材料は、X線撮像装置及びCMOSイメージセンサーなどの固体撮像装置用のイメージ検出部(イメージセンサー)、指紋検出部、顔検出部、静脈検出部及び虹彩検出部などの生体の一部分の所定の特徴を検出する検出部、パルスオキシメーターなどの光学バイオセンサーに用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0548】
本発明によれば、発光スペクトルの半値幅が狭いペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、前記化合物を含む組成物、前記組成物を形成材料とするフィルム、前記フィルムを含む積層構造体、前記積層構造体を備える発光装置及びディスプレイを提供することが可能となる。
したがって、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、前記化合物を含む組成物、前記組成物を形成材料とするフィルム、前記フィルムを含む積層構造体、及び前記前記積層構造体を備える発光装置及びディスプレイは、発光用途において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0549】
1a…第1の積層構造体、1b…第2の積層構造体、10…フィルム、20…第1の基板、21…第2の基板、22…封止層、2…発光装置、3…ディスプレイ、30…光源、40…液晶パネル、50…プリズムシート、60…導光板
図1
図2