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特許7470563圧着部、ジョイント端子、ジョイント構造、圧着部の製造方法及びジョイント端子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】圧着部、ジョイント端子、ジョイント構造、圧着部の製造方法及びジョイント端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/20 20060101AFI20240411BHJP
   H01R 4/00 20060101ALI20240411BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01R4/20
H01R4/00 A
H01R43/048 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020067669
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163727
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直人
(72)【発明者】
【氏名】駿河 康晴
(72)【発明者】
【氏名】榊 章宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063868(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129084(WO,A1)
【文献】特開2019-057392(JP,A)
【文献】特開2001-326053(JP,A)
【文献】特開2015-220144(JP,A)
【文献】特開2013-054854(JP,A)
【文献】特開2010-244889(JP,A)
【文献】特開2011-077013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00
H01R 4/18-4/20
H01R 43/00-43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の導体を挿入する開口を有する筒状体で形成された圧着部であって、
前記筒状体の周方向における少なくとも一部に、外周面が凹状となり、内周面が径内側に突出する窪み部が設けられ、
前記窪み部が前記周方向に複数設けられるとともに、
複数設けられた前記窪み部が前記周方向に等間隔で配置され、
前記窪み部が、前記筒状体の内半径に対して10%以上40%以下の高さで前記内周面より突出し、
前記窪み部の内半径が、前記導体の外半径よりも大きくなるように形成されている
圧着部。
【請求項2】
前記窪み部が3つ設けられた
請求項1に記載の圧着部。
【請求項3】
1つの前記窪み部が、前記内周面の全周に対して1/3以下の前記周方向の長さで形成された
請求項1又は2に記載の圧着部。
【請求項4】
前記内周面の前記窪み部が形成されていない範囲が、前記内周面の全周に対して2/3以下の前記周方向の長さで形成された
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の圧着部。
【請求項5】
前記窪み部が、前記筒状体の軸方向において、圧着治具における圧着部分の厚みより広い長さで形成された
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の圧着部。
【請求項6】
前記内周面に、複数の凹部で構成するセレーションが形成された
請求項1乃至5のうちいずれかに記載の圧着部。
【請求項7】
前記セレーションは、前記窪み部の、前記内周面の軸方向及び前記周方向の少なくとも一方を跨ぐ範囲に形成された
請求項6に記載の圧着部。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれかに記載の圧着部が、前記筒状体の軸方向の両端部が前記開口となるように、前記軸方向の直交断面に対して対称配置されるとともに、一体の筒状体に構成された
ジョイント端子。
【請求項9】
前記軸方向の中央付近にセパレータが設けられた
請求項8に記載のジョイント端子。
【請求項10】
前記セパレータは前記筒状体の前記周方向における一部に配置され、
前記窪み部が前記周方向における前記セパレータと同じ位置に配置された
請求項9に記載のジョイント端子。
【請求項11】
請求項8乃至10のうちいずれかに記載のジョイント端子に、前記軸方向の双方から先端が露出した導体を備えた電線を挿入して圧着された
ジョイント構造。
【請求項12】
電線の導体を挿入する開口を有する筒状体で形成される圧着部の製造方法であって、
所定幅の金属条における幅方向の所定箇所に、一方面から他方面に向かって凹状となる窪み部を形成する窪み形成工程と
前記他方面側が内面側となるように、且つ前記幅方向の両側の端面同士が対面するように前記筒状体の軸方向の回りに曲げて筒状に形成する曲げ加工工程と、
前記端面同士を突き合わせて接合する接合工程とを行い、
前記窪み部を前記筒状体の周方向に複数設けるとともに、
複数設けられた前記窪み部を前記周方向に等間隔で配置し、
前記窪み部は、前記筒状体の内半径に対して10%以上40%以下の高さで前記筒状体の内周面より突出し、
前記窪み部の内半径を、前記導体の外半径よりも大きくなるように形成する
圧着部の製造方法。
【請求項13】
前記窪み部は、前記軸方向に所定の長さで形成され、
前記他方面における前記幅方向及び前記軸方向の所定範囲に、前記一方面に向って凹状となる複数の凹部で構成するセレーションを形成するセレーション形成工程を、前記窪み形成工程の前に行う
請求項12に記載の圧着部の製造方法。
【請求項14】
電線の導体をそれぞれ挿入する開口を両端に有する筒状の圧着部を備えたジョイント端子の製造方法であって、
所定幅の金属条における幅方向の所定箇所に、一方面から他方面に向かって凹状となる窪み部を、前記圧着部の軸方向と一致する方向へ所定間隔を隔てて複数形成する窪み形成工程と、
前記他方面側が内面側となるように、且つ前記幅方向の両側の端面同士が対面するように曲げて筒状に形成する曲げ加工工程と、
前記端面同士を突き合わせて接合する接合工程とを行い、
前記窪み部を筒状の前記圧着部の周方向に複数設けるとともに、
複数設けられた前記窪み部を前記周方向に等間隔で配置し、
前記窪み部は、筒の前記圧着部の内半径に対して10%以上40%以下の高さで筒状の前記圧着部の内周面より突出し、
前記窪み部の内半径を、前記導体の外半径よりも大きくなるように形成する
ジョイント端子の製造方法。
【請求項15】
前記窪み部は、前記軸方向に所定の長さで形成され、
前記他方面における前記幅方向及び前記軸方向の所定範囲に、前記一方面に向って凹状となる複数の凹部で構成するセレーションを形成するセレーション形成工程を、前記窪み形成工程の前に行う
請求項14に記載のジョイント端子の製造方法。
【請求項16】
前記セレーション形成工程の後、
前記他方面の前記軸方向の中央付近に前記一方面から前記他方面に向かう方向に突出するセパレータを形成するセパレータ形成工程を行う
請求項15に記載のジョイント端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体に配索されたケーブル同士や、端子に電線を圧着して接続する圧着部、ジョイント端子、ジョイント構造、圧着部の製造方法及びジョイント端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に配索されたケーブル同士や、端子に電線を圧着して接続するために様々な圧着金具が用いられており、特許文献1に記載のスリーブもそのひとつである。
特許文献1に記載のスリーブは円筒状の金属管体であり、両端部の開口よりそれぞれ電線を挿入し、圧着して、機械的且つ電気的に接続するものである。
【0003】
ここで、スリーブ等の圧着金具によって接続された電線同士を十分な導電性を確保するためには、圧着金具に備えた圧着部を電線に対して所定の圧縮率で圧着する必要がある。
しかしながら、オープンバレルのような開放された圧着部に比べ、断面環状の円筒状のスリーブでは、所定の圧縮率で圧着することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭52-31871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述した問題を鑑み、所定の圧着状態に圧着できる圧着部、ジョイント端子、ジョイント構造、圧着部の製造方法及びジョイント端子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電線の導体を挿入する開口を有する筒状体で形成された圧着部であって、前記筒状体の周方向における少なくとも一部に、外周面が凹状となり、内周面が径内側に突出する窪み部が設けられ、前記窪み部が前記周方向に複数設けられるとともに、複数設けられた前記窪み部が前記周方向に等間隔で配置され、前記窪み部が、前記筒状体の内半径に対して10%以上40%以下の高さで前記内周面より突出し、前記窪み部の内半径が、前記導体の外半径よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする。
この発明により、所定の圧縮率で圧着することができる。
【0007】
詳述すると、前記圧着部の周方向における少なくとも一部に、外周面が凹状となり、内周面が径内側に突出する窪み部が設けられているため、電線の導体を挿入する圧着部の内部に、窪み部が径内側に向かって突出することとなる。つまり、予め、窪み部によって、電線の導体を挿入する圧着部の内部の空間の体積を減少させることができる。
【0008】
このように、窪み部によって体積が減少した圧着部の内部の空間に電線の導体を挿入し、その状態で圧着治具の圧着部分で圧着する圧着断面において、予め圧縮方向である径内側に突出している窪み部が形成されていない領域が、圧縮方向に変形する。窪み部が設けられていない筒状の圧着部に比べ、窪み部が形成されていない領域に作用する圧着治具の圧着部分から作用する圧着力は増大し、圧着部と電線とを確実に圧着することができる。なお、窪み部が形成されていない領域の変形に伴って窪み部もさらに径内側に変形する。そして、窪み部と、窪み部が形成されていない領域との径方向の差が解消され、圧着完了時において、筒状の全周を径内側に変形させた圧着状態となる。
【0009】
このように、窪み部によって空間の体積が減少した圧着部の内部に電線の導体を挿入し、圧着することで、所定の圧着状態で圧着することができる。殊に、作業者によってばらつきやすい手動式の圧着装置で圧着する場合であっても、窪み部によって所定の圧着状態で圧着することができる。
【0010】
また、圧着部の内部に突出する窪み部の外周面が凹状となっているため、つまり、窪み部は厚みが大きく減少していないため、圧着状態においても略均一な肉厚の圧着部を圧着することができ、安定した圧着状態を維持することができる。よって、圧着部と電線とで所望の導電性を確保することができる。
なお、筒状の圧着部は、円筒状、楕円筒状、多角筒状などであってもよい。
【0011】
また、前記窪み部が周方向に複数設けられているため、周方向に複数設けられた窪み部によって圧着部の内部の空間体積が減少し、より所定の圧着状態で圧着することができる。なお、複数の窪み部が設けられていることで、ひとつひとつの窪み部の大きさは小さくとも、複数の窪み部が圧着部の内部に突出するため、所定の圧縮率で圧着し、所望の導電性を得ることができる。
【0012】
また、複数設けられた前記窪み部が前記周方向に等間隔で配置されているため、圧着部の内部の空間に突出する窪み部が周方向に亘って均等に配置されているため、圧着部を圧着する方向である圧着方向が変わっても、つまり、いずれの圧着方向から圧着しても、窪み部によって所定の圧着状態で圧着することができる。
【0013】
また、前記窪み部が、前記筒状体の内半径に対して10%以上40%以下の高さで前記内周面より突出しているため、所定の圧着状態で圧着することができる。詳述すると、前記窪み部が前記筒状体の内半径に対して10%未満の高さで前記内周面より突出していると、圧着部の内部空間に突出する窪み部が小さいため、つまり、圧着部の内部空間における体積減少が少なく、十分な圧着量が確保できないおそれがある。前記窪み部が内半径に対して40%より高く前記内周面より突出していると、圧着部の内部空間における体積減少が大きくなりすぎ、接続対象となる電線を挿入するための筒形状を大きくする必要があり、結果、所望の圧着状態で圧着することができないおそれがある。これに対し、前記窪み部が、前記筒状体の内半径に対して10%以上40%以下の高さで前記内周面より突出することで、窪み部によって空間の体積が減少した圧着部の内部に電線の導体を挿入し、圧着することで、所定の圧着状態で圧着することができる。
【0014】
上述の内半径に対して10%以上40%以下の高さで前記内周面より突出するとは、前記圧着部の内周面の半径に対して10%以上40%以下の高さである。
なお、前記窪み部は、前記筒状体の内半径に対して20%以上30%以下の高さで前記内周面より突出することが更に好ましい。
【0015】
またこの発明の態様として、前記窪み部が3つ設けられてもよい。
この発明により、各窪み部の大きさを大きく形成せずとも、圧着部の周方向において120度ずつの間隔で配置された窪み部によって、いずれの方向から圧着してもより所定の圧着状態で圧着することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、1つの前記窪み部が、前記内周面の全周に対して1/3以下の前記周方向長さで形成されてもよい。
この発明により、所定の圧着状態で圧着することができる。詳しくは、1つの前記窪み部が、前記内周面の1/3以上の周方向長さで形成されると、圧着部の内部空間における体積減少が大きくなりすぎ、接続対象となる電線を挿入するための筒形状を大きくする必要があり、結果、所望の圧着状態で圧着することができないおそれがある。これに対し、1つの前記窪み部が、前記内周面の1/3以下の周方向長さで形成することで、窪み部によって空間の体積が減少した圧着部の内部に電線の導体を挿入し、圧着することで、所定の圧着状態で圧着することができる。
なお、1つの前記窪み部が、前記内周面の5%以上30%未満であれば更に好ましく、10%以上の20%以下であることが更に好ましい。
【0017】
またこの発明の態様として、前記内周面の前記窪み部が形成されていない範囲が、前記内周面の全周に対して2/3以下の前記周方向長さで形成されてもよい。
上述の内周面における周方向長さは、前記圧着部の内周面における周方向の長さである。
【0018】
この発明により、所定の圧着状態で圧着することができる。詳しくは、前記内周面の前記窪み部が形成されていない範囲が、前記内周面において2/3より長い周方向長さで形成されると、窪み部が小さくなり、窪み部を形成することによる十分な圧着量が確保できないおそれがある。これに対し、前記内周面の前記窪み部が形成されていない範囲が、前記内周面の全周に対して2/3以下の周方向長さで形成することで、十分な圧着量を確保することができる。
なお、前記内周面の前記窪み部が形成されていない範囲は、前記内周面の全周に対して、1/3以上2/3以下の周方向長さであることが好ましく、40%以上50%以下の周方向長さであることが更に好ましい。換言すると、前記内周面の前記窪み部が形成されている範囲は、前記内周面の全周に対して、1/3以上2/3以下の周方向長さであることが好ましく、50%以上60%以下の周方向長さであることが更に好ましい。
【0019】
またこの発明の態様として、前記窪み部が、前記筒状体の軸方向において、圧着治具における圧着部分の厚みより広い長さで形成されてもよい。
上記圧着治具は、手動の圧着治具や機械式の圧着治具であり、上記圧着部分の厚みは圧着治具における刃型の厚みである。
【0020】
この発明により、軸方向における圧着治具の圧着部分によって圧着される軸方向の圧着箇所を所定の圧着状態で圧着することができる。詳しくは、窪み部が圧着治具の圧着部分の厚みより狭い長さで形成されると、圧着箇所において所定の圧着状態で圧着できる軸方向の範囲が圧着治具の圧着部分の厚みより狭くなり、十分な導通性が確保できないおそれがある。これに対し、前記窪み部が、前記圧着部の軸方向において、圧着治具における圧着部分の厚みより広い長さで形成されているため、圧着治具の圧着部分の厚み分を所定の圧着状態で圧着でき、結果として十分な導通性が確保することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記内周面に、複数の凹部で構成するセレーションが形成されてもよい。
この発明により、接続強度及び導通性を向上することができる。詳しくは、所定の圧着状態で圧着された電線は前記内周面に形成された凹状のセレーションに食い込むため、接続強度が向上する。
また、セレーションに電線が食い込むことで電線と前記内周面との接触面積が増大し、導通性を向上することができる。殊に、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電線の場合、表面に酸化皮膜が形成されるが、セレーションに食い込むことで、セレーションの各凹部の角部によって酸化皮膜が破壊され、導通性をさらに向上することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記セレーションは、前記窪み部の、前記内周面の軸方向及び前記周方向の少なくとも一方を跨ぐ範囲に形成されてもよい。
この発明により、窪み部に加え、窪み部が形成されていない領域でもセレーションに電線が食い込み、接続強度及び導通性をより向上することができる。
【0023】
またこの発明は、上述の圧着部が、両端部が前記開口となるように、軸方向の直交断面に対して対称配置されるとともに、一体の筒状体に構成されたジョイント端子であることを特徴とする。
この発明により、両端部の開口から挿入された電線を所望の圧着状態で圧着して、電線同士を機械的且つ電気的に確実に接続することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記軸方向の中央付近にセパレータが設けられてもよい。
この発明により、一方の電線の過挿入を防止し、両開口より電線を挿入して、両電線に対して窪み部を有する箇所で確実に圧着することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記セパレータは前記筒状体の前記周方向における一部に配置され、前記窪み部が前記周方向における前記セパレータと同じ位置に配置されてもよい。
この発明により、セパレータで一方の過挿入が防止された電線を、窪み部が形成された圧着箇所で確実に圧着することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明により、所定の圧着状態に圧着できる圧着部、ジョイント端子、圧着部の製造方法及びジョイント端子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態のリペアスリーブの外観図。
図2】本実施形態のリペアスリーブを一端側から視た正面図(a)、図1中のA-A線矢視断面図(b)。
図3】本実施形態のリペアスリーブの側面図(a)、図1中のB-B線矢視断面図(b)。
図4】本実施形態のリペアスリーブの製造途中の板状体の平面図(a)、図4(a)中のC-C線矢視断面図(b)。
図5】本実施形態のリペアスリーブの製造過程の状態を仮想線で付加した図4(a)中のD-D線矢視断面図。
図6】本実施形態のリペアスリーブを介して電線同士を圧着する前の状態を示す外観図。
図7】本実施形態のリペアスリーブを介して電線同士を圧着する直前の状態を示す外観図(a)、圧着後の状態を示す外観図(b)。
図8】本実施形態のリペアスリーブを電線に対して圧着後の状態を、図2(b)に対応して示した断面図。
図9】変形例1のリペアスリーブを図2(b)に対応して示した断面図。
図10】変形例2のリペアスリーブの外観図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は本実施形態のリペアスリーブ1の外観図、図2(a)は本実施形態のリペアスリーブ1を一端側から視た正面図、図2(b)は図1中のA-A線矢視断面図である。図3(a)は本実施形態のリペアスリーブ1の側面図、図3(b)は図1中のB-B線矢視断面図、図4(a)は本実施形態のリペアスリーブ1の内周面(42f)の展開図に相当する、本実施形態のリペアスリーブ1の製造途中の板状体11の平面図、図4(b)は図4(a)中のC-C線矢視断面図である。
図5は本実施形態のリペアスリーブ1の製造過程の状態を仮想線で付加した図4(a)中のD-D線矢視断面図、図6は本実施形態のリペアスリーブ1を介して電線100同士を圧着する前の状態を示す外観図である。
図7(a)は本実施形態のリペアスリーブ1を介して電線100同士を圧着する直前の状態を示す外観図、図7(b)は本実施形態のリペアスリーブ1を介して電線100同士を圧着後の状態を示す外観図である。
図8は本実施形態のリペアスリーブ1を電線100に対して圧着後の状態を、図2(b)に対応して示した断面図。図9は変形例1のリペアスリーブ1を図2(b)に対応して示した断面図、図10は変形例2のリペアスリーブ1の外観図である。
【0029】
なお、図1図3中の矢印Dは径方向、矢印Xは軸方向、矢印Rは周方向を示す。さらに矢印Duは径方向Dの中でも上方向、矢印Ddは径方向Dの中でも下方向を示す。また、図1図2(a)(b)、図3(a)、図6図7(a)(b)、図8図9においては、後述する窪み部6の形状を明確にするために便宜上、後述するセレーション7(図4(a)(b)、図5参照)の図示を省略している。
【0030】
図1図2(a)(b)、図3(a)(b)に示すように、本実施形態のリペアスリーブ1は、電線100同士を接続するためのリペア(修理)用のジョイント端子であり、全体が略円筒状の筒状体として一体形成されている。本実施形態のリペアスリーブ1は、銅又は銅合金により形成されている。
但し、これに限らずリペアスリーブ1は、アルミ又はアルミ合金等の他の導電性材料で形成されたものであってもよい。
【0031】
図1図2(a)(b)、図3(b)に示すように、リペアスリーブ1は、その軸方向Xの両端に開口2(2A,2B)が形成されており、これら開口2の間において、夫々の開口2から電線100(図6参照)の露出導体101T(同図参照)を挿入可能とする電線挿入穴3が、リペアスリーブ1の軸方向Xと一致する方向に貫通形成されている(図3(b)参照)。
【0032】
すなわち、リペアスリーブ1の軸方向Xの両端の開口2は、電線挿入穴3を介して互いに連通し、リペアスリーブ1の軸方向Xに対して双方向(軸方向Xの一方側および他方側)からの電線挿入穴3への電線100の挿入を可能としている。なお図2(a)、図3(b)に示すように、電線挿入穴3の軸方向Xの両端の開口2(2A,2B)の周縁部21(21A,21B)は、夫々に対応する開口2に向けて徐々に拡径し、電線100を挿入し易く形成されている。
【0033】
なお図6に示すように、電線100の露出導体101Tとは、芯線としての導体101を被覆部材102で被覆して成る電線(「被覆電線」とも称する)100の長尺方向の先端部であって、被覆部材102を剥がして導体101を露出させた部分である。当例において、導体101は、複数の素線を束ねた撚り線からなるが、単線であってもよい。
【0034】
リペアスリーブ1は、軸方向Xの両端に有する開口2のうち、一端又は他端の開口2から電線挿入穴3に挿入された電線100を圧着する圧着部4(4A,4B)が、夫々の開口2に対応して軸方向Xの両側に形成されている。
【0035】
詳しくは図1図3(a)(b)に示すように、圧着部4(4A,4B)は、リペアスリーブ1の軸方向Xの略中間位置Pm(図1図3(a)参照)に対して一方と他方との夫々の側に備えている。図1図3(a)(b)に示すように、これら一対の圧着部4A,4Bは、リペアスリーブ1の軸方向Xの中間位置Pmにおける、軸方向Xの直交断面に対して互いに略対称(略面対称)に配置されている。
【0036】
さらに図3(b)に示すように、電線挿入穴3の軸方向Xにおける、一方の圧着部4Aに対応する部分を一方の電線挿入穴部31Aと設定するとともに、他方の圧着部4Bに対応する部分を他方の電線挿入穴部31Bと設定する。
【0037】
これにより、一方の圧着部4Aは、軸方向Xの一端側の開口2Aから電線挿入穴部31Aに挿入した電線100の露出導体101Tを圧着するとともに、他方の圧着部4Bは、軸方向Xの他端側の開口2Bから電線挿入穴部31Bに挿入した電線100の露出導体101Tを圧着する。
【0038】
但し以下の説明において、リペアスリーブ1の軸方向Xの略中間位置Pmに対して一方と他方とを区別しない場合は、「一方」または「他方」を省略し、単に圧着部4、開口2、電線挿入穴部31と称する。
【0039】
また図2(a)(b)、図3(b)に示すように、リペアスリーブ1の軸方向Xの略中間位置Pm(図1図3(a)参照)付近には、該中間位置Pm付近の周方向Rの一部(当例では下端付近)から該リペアスリーブ1の内周面よりも径内側(径方向D内側、当例では上方向)へ突出するセパレータ5が設けられている。
詳しくは、セパレータ5は、一方または他方の開口2から対応する電線挿入穴部31へ挿入された電線100の露出導体101Tの端面(先端)が、リペアスリーブ1の軸方向Xの略中間位置Pm付近において当接可能に電線挿入穴3の空間において張り出している。これにより、セパレータ5は、一方または他方の開口2から対応する電線挿入穴部31へ挿入された電線100の露出導体101Tが、リペアスリーブ1の軸方向Xの略中間位置Pm付近を越えた側の電線挿入穴部31までの過挿入を規制する。
【0040】
なお、リペアスリーブ1は、軸方向Xにおいて電線挿入穴3が貫通形成された構成に限らず、一方の電線挿入穴部31Aと他方の電線挿入穴部31Bとがセパレータ5によって完全に分断された形態としてもよい。
【0041】
電線挿入穴部31は、リペアスリーブ1の軸方向Xの一方側、他方側の夫々に対応する開口2から電線100の露出導体101Tが、その該略全長に亘って挿入される深さに形成されている。その他にもリペアスリーブ1は、例えば、板厚(t’(図2(b)、図3(b)参照))、外半径、内半径(すなわち電線挿入穴3の半径)(D4(図2(a)参照))等の基本的な寸法がJIS等の規格に準拠しており、リペアスリーブ1を介して電線100同士を接続するために必要な品質が確保されるように形成されている。
【0042】
図1図3(a)(b)に示すように、圧着部4は、軸方向Xにおける、該圧着部4に対応する側の開口2の周辺領域と、リペアスリーブ1の軸方向Xの中間位置Pmの周辺領域との間に、圧着工具の刃型91,92(後述するクリンパ91およびアンビル92)(図8参照)によって、実質的に加締められる圧着領域41(41A,41B)を備えている。
【0043】
この圧着領域41は、圧着部4の軸方向Xにおいて、圧着工具の刃型91,92の厚み、すなわち、圧着部4の軸方向Xに対応する、刃型91,92の長さよりも若干長い長さを有する。
【0044】
そのため同図に示すように、圧着部4は、軸方向Xにおける、圧着領域41に対して両側、すなわち、圧着部4に対応する側の開口2の周辺領域と、リペアスリーブ1の軸方向Xの中間位置Pmの周辺領域とに、実質的に圧着工具の刃型91,92によって加締められない非圧着領域42(42A,42B),43(43A,43B)が形成されている。
【0045】
また図1図2(a)(b)、図3(a)(b)に示すように、圧着部4は、その周方向Rに複数の窪み部6が設けられている。これら窪み部6は、何れも軸方向Xの直交断面視で、外周面4eが凹状となり、かつ内周面4fが径内側に突出するように形成されている。
【0046】
すなわち図3(b)に示すように、圧着部4の外周面4eにおける、窪み部6に相当する箇所には、外周面61aが凹状となる窪み部凹所61が形成されるとともに、圧着部4の内周面4fにおける窪み部6に相当する箇所には、内周面62aが径内側に突出する窪み部突所62が形成されている。
【0047】
図2(a)(b)に示すように、本実施形態の窪み部6は、一方の圧着部4Aおよび他方の圧着部4Bの夫々の圧着領域41に、その周方向Rに等間隔で3つずつ配設されている。すなわち、リペアスリーブ1は、圧着部4ごとに3つずつ、全体として6つの窪み部6が設けられている。
【0048】
窪み部6は、このように圧着領域41の周方向Rに等間隔で3つ配設されているが、そのうちの1つは、図2(a)(b)、図3(a)(b)に示すように、リペアスリーブ1の周方向Rにおける、セパレータ5を設けた箇所と同じ下端に、その周辺に亘って設けられている。
【0049】
さらに、圧着部4の周方向Rに設けられた3つの窪み部6の夫々は、圧着部4の内周面4fの全周に対して1/3以下の周方向Rの長さで形成されている。
なお、窪み部6の凹状の外周面61aの周方向Rの長さは、圧着工具の刃型91,92の特にクリンパ91の幅(すなわち、窪み部6の外周面61aの接線方向に対応する、クリンパ91の長さ)(W91(図8参照))よりも小さく形成されていることが好ましい。
【0050】
また図2(b)、図3(a)に示すように、圧着部4の内周面4fの周方向Rにおける、3つの窪み部6が形成されていない箇所63(以下、「窪み部非形成領域63」とも称する)の範囲は、該内周面4fの全周に対して2/3以下の周方向Rの長さで形成されている。
【0051】
図3(a)(b)に示すように、窪み部6は、圧着領域41の軸方向Xの略全長に亘って連続して形成されている。すなわち、窪み部6は、圧着部4の軸方向Xにおいて、圧着工具の刃型91,92の厚み(すなわち、圧着部4の軸方向Xに対応する、刃型91,92の長さ)よりも長い長さで形成されている。
【0052】
窪み部6は、上述したように圧着領域41の軸方向Xの略全長に亘って形成されているものの、圧着領域41に収まる範囲で形成されており、圧着部4の軸方向Xにおける、圧着領域41に対して両側に位置する非圧着領域42,43には形成されていない(図3(a)(b)参照)。
すなわち、窪み部6は、リペアスリーブ1の軸方向Xにおける、開口2の周辺(42(42A,42B))や、セパレータ5を備えた中間位置Pm周辺(43(43A,43B))には形成されていない。
【0053】
リペアスリーブ1は、上述したように、圧着領域41の内周面4fにおける、窪み部非形成領域63に対して窪み部6の内周面62aが径内側に位置するが、周方向Rにおける窪み部6を有する箇所の内半径が、露出導体101Tの外半径よりも若干大きくなるように形成されている。具体的には、窪み部6は、圧着領域41の内周面4fにおける窪み部非形成領域63における内半径(D4)に対して10%以上40%以下の高さ(h6(図2(b)、図3(b)参照))で径内側へ突出している。
【0054】
これにより、電線100の露出導体101Tを電線挿入穴3に挿入可能とし、電線挿入性を確保するとともに、露出導体101Tの径外面と窪み部6の内周面62aとの隙間を極力少なくし、圧着後の電線保持力を高めている。
【0055】
図2(b)、図3(b)に示すように、窪み部6は、外周面61aが凹状となり、かつ内周面62aが径内側に突出する断面形状で形成されているが、周方向Rおよび軸方向Xの略全体に亘って外周面61aと内周面62aが共に略同じ割合で窪み部非形成領域63に対して径内側へ変形させて(ずらして)いる。これにより、窪み部6の板厚tは、窪み部非形成領域63の板厚t’と略同じになるように形成されている。
【0056】
窪み部6は、外周面61aと内周面62aの各周縁(窪み部6の周方向Rおよび軸方向Xの端部)が共に径内側へ段状に延び(図2(b)、図3(b)参照)、該周縁よりも中央(周方向Rおよび軸方向Xの中央)全体が、圧着領域41の周方向Rにおいて、窪み部非形成領域63と略同じ曲率となる孤状に形成されている(図2(b)参照)。
【0057】
圧着部4の圧着領域41の内周面4fには、該内周面4fに対して径外側(径方向D外側)へ窪んだ複数の凹部7a,7bで構成するセレーション7が形成されている(図4(a)(b)、図5参照)。凹部7a,7bは、セレーション7の形成領域において、軸方向Xおよび周方向Rに沿って等ピッチで配設されている。
セレーション7は、圧着領域41の上端(後述するロウ付け部12(図2(b)参照)の位置)およびその周辺を除く周方向Rの略全域に亘って形成されている(図示省略)。すなわち、セレーション7は、圧着領域41の周方向Rにおいて、3つの窪み部6と、窪み部非形成領域63とに亘って連続して形成されている(図4(a)、図5参照)。
【0058】
なお、セレーション7は、圧着部4の周方向Rのみならず軸方向Xにおいても窪み部6を跨ぐように形成してもよい。また本実施形態において、セレーション7は、外形が平行四辺形状の凹部7aを周方向Rに等ピッチで配設した凹部群と、周方向Rに連続して延びる長尺状の凹部7bとの2種類を備え、これら凹部7a,7bを軸方向Xに交互に配設したものである。但し、凹部7a,7bの形状や配置(個数やピッチ)は上記実施形態に限定しない。
【0059】
続いて上述したリペアスリーブ1の製造方法について説明する。
リペアスリーブ1は、所定サイズの板状体11に対して、セレーション形成工程と窪み形成工程とセパレータ形成工程と曲げ加工工程と接合工程とを、この順に行うことにより製造する。
【0060】
板状体11は、板金を所定サイズに打ち抜くことにより得られる金属条であって、第1方向L1および第2方向L2に延びる矩形状に形成されている(図4(a)(b)、図5参照)。なお、図4(a)、図5中の矢印L1は板状体11の第1方向を示し、図4(a)(b)中の矢印L2は板状体11の面内において第1方向L1と直交する第2方向を示し、図4(b)、図5中の矢印Tは板状体11の厚さ方向を示す。
【0061】
セレーション形成工程は、板状体11の厚さ方向の他方面11fに対して、一方面11eに向かって凹状となる複数の凹部7a,7bで構成するセレーション7を形成する。
【0062】
本工程では、セレーション7を、板状体11の第2方向L2の、中間位置Pmに対して両側へ同じ所定間隔を隔てた箇所に形成する(図4(a)(b)参照)。これによりセレーション7は、板状体11の第2方向L2の各側の箇所の、第1方向L1および第2方向L2の所定範囲に亘る領域に形成される。
窪み形成工程は、セレーション7が形成された板状体11に対して、その厚み方向の一方面11eが他方面11fに向かって凹状となり、かつ他方面11fが一方面11eの側と反対側へ突出する窪み部6を、プレス成形等により形成する。本工程では、図4(a)、図5に示すように、窪み部6を、板状体11の第2方向L2の、中間位置Pm(図4(a)参照)に対して両側へ同じ所定間隔を隔てた箇所に3つずつ形成する。これにより板状体11の第2方向L2の各側において、3つの窪み部6は、板状体11の第1方向L1の中間位置およびその両側に夫々離間して形成される。
【0063】
ここで、セレーション7と窪み部6とは共に、板状体11の第2方向L2における、リペアスリーブ1の軸方向Xの両側に有する圧着領域41に対応する箇所に形成される。さらに、上述したセレーション形成工程によって、セレーション7は、第1方向L1について、板状体11の第2方向L2の各側の箇所共に、該板状体11の第1方向L1の両端面11a,11aを除く略全体に亘って形成されている(図4(a)、図5参照)。
【0064】
これにより、セレーション7は、板状体11の第2方向L2の各側の箇所共に、第1方向L1において、3つの窪み部6と、これら窪み部6周辺の窪み部非形成領域63とに亘って(換言すると3つの窪み部6を跨ぐように)連続して形成されている。つまり、窪み部6における他方面11f側の面には、第1向および第2方向L2の略全体に亘ってセレーション7が成されている 。
【0065】
セパレータ形成工程は、板状体11の第2方向L2の中間位置Pm付近に、厚み方向の一方面11eから他方面11fに向かう方向に突出するセパレータ5を形成する(図2(a)、図3(a)(b)参照)。
【0066】
具体的には、セパレータ5は、本工程においては、板状体11の平面視中央(第1方向L1および第2方向L2の中間位置)付近において、該セパレータ5の幅に相当する第2方向L2の間隔を隔てた箇所を、板状体11の本体側に対して第1方向L1に沿って切り込みを入れる(図4(a)(b)参照)。
【0067】
これにより、セパレータ5は、板状体11の平面視中央付近において、該セパレータ5の第1方向L1の両端部のみが板状体11の本体側に繋がった状態で板状体11の本体側に対して分離することができる。なお、セパレータ5は、後述する接続工程の後(すなわち、板状体11を筒状にした状態)で、第1方向L1の中間部分を径内側へ突き出すように曲げ加工することで形成される。
【0068】
図5中仮想線で示した板状体11のように、曲げ加工工程は、板状体11を、厚み方向の他方面11fが内周面4fとなるとともに第1方向L1の両側の端面11a,11a同士が対面する(突き合わさる)ように、第2方向L2と平行に延びる軸回りに曲げて円筒状に形成する。
接合工程は、板状体11の第1方向L1の両側の端面11a,11a同士を周方向Rに突き合わせた状態で該端面11a,11a同士を第2方向L2に沿って連続して例えば、銀ロウにより、ロウ付けすることによって、板状体11を円筒状に保つことができ、リペアスリーブ1が完成する。
【0069】
なお、図1図2(a)(b)、図3(b)中のリペアスリーブ1の上端において軸方向Xの全長に亘って延びる部分が、板状体11の突合わせた端面11a,11a同士を接合した接合部としてのロウ付け部12に相当する。また、板状体11の端面11a,11aを接合するにあたり、ロウ付けに限らず溶接等の他の接合手段を採用してもよい。さらにまた、リペアスリーブ1の軸方向Xは板状体11の第2方向L2と平行であり、リペアスリーブ1の周方向Rが板状体11の第1方向L1に相当し、リペアスリーブ1の径方向Dが板状体11の厚み方向に相当する。
【0070】
続いて、作業者が上述したリペアスリーブ1を介して2本の電線100を接続する手順について図6図7(a)(b)、図8を用いて説明する。
図6に示す状態から図7(a)に示す状態となるように、作業者は、2本の電線100のうち、一方の電線100の露出導体101Tを一方の開口2Aから対応する電線挿入穴部31A(図3(b)参照)へ挿入するとともに、他方の電線100の露出導体101Tを他方の開口2B(同図参照)から対応する電線挿入穴部31B(同図参照)へ挿入する。
【0071】
このとき、作業者は、夫々の電線100の露出導体101Tを、その端面がセパレータ5に当接するまで対応する電線挿入穴部31へ挿入する。なお、電線100の露出導体101Tの長さや、電線挿入穴部31の深さは、露出導体101Tを電線挿入穴部31に挿入時に、電線100の被覆部材102の端面が、対応する開口2の周縁部21に干渉したり、該電線挿入穴部31へ差し込まれることがない寸法に設定されている。
【0072】
作業者は、2本の電線100の露出導体101Tが両側から挿入された状態のリペアスリーブ1(図7(a)参照)を、例えば手動式の圧着工具に備えた一対の刃型91,92(アンビル92およびクリンパ91)(図8参照)のうち、固定型としてのアンビル92の刃先にセットする。
【0073】
具体的には、作業者は、まずリペアスリーブ1に備えた一対の圧着部4のうち、一方の圧着部4Aの圧着領域41をアンビル92の刃先にセットする。このとき、可動型としてのクリンパ91は、アンビル92に対して圧着部4を隔てて相対する側(当例では上側)で対峙するように配置された状態となる。
【0074】
その状態で作業者は、圧着工具のハンドルを締め付けることで、クリンパ91がアンビル92の側へ可動し(図8中の白抜き矢印参照)、図8に示すように、クリンパ91とアンビル92とで両側から圧着領域41を挟み込む(加締める)ことで、一方の圧着部4Aを一方の電線100に圧着することができる。
なお図8に示すように、当例における一方の圧着部4Aは、上部(ロウ付け部12の側)がクリンパ91の側を臨むとともに下部がアンビル92の刃先に保持される向きでセットされている。
【0075】
同じ要領で、作業者は、他方の圧着部4Bを他方の電線100に圧着することで、軸方向Xの両側において圧着部4と電線100とを電気的および機械的に接続することができる。
【0076】
すなわち図7(b)、図8に示すように、2本の電線100をリペアスリーブ1を介して接続した接続構造体としての電線付きリペアスリーブVを構成することができる。
なお、図7(b)、図8中において、圧着部4の周方向Rの一部が凹状となる部位9は、圧着時に圧着部4をクリンパ91で押し当てた部位である。
【0077】
上述したようなリペアスリーブ1を介した2本の電線100の接続作業は、例えば、工場等の現場において、電線100に電気的導通の不具合が生じた際に、作業者によって行われるリペア作業の一環として適用することができる。
【0078】
リペア作業の一例について簡単に説明する。自動車のワイヤハーネスに備えた複数の電線100のうち、所定の電線100の長さ方向の一部分に電気的導通の不具合が生じる等して該一部分を交換する場合、作業者は、電線100の該一部分を切断して除去する。
【0079】
次に作業者は、長尺方向の両端に、リペアスリーブ1の一方の圧着部4Aが夫々接続された電線100を用意する。そして、その電線100の長尺方向の一端に備えたリペアスリーブ1の他方の圧着部4Bと、一部が除去された電線100の残りの部分の一端部とを、手動式の圧着工具を用いて接続する。
同様に、用意した電線100の長尺方向の他端に備えたリペアスリーブ1の他方の圧着部4Bと、一部が除去された電線100の残りの部分の他端部とを接続する。最後にリペア後の電線100をワイヤハーネスに備えた他の電線100と共にバンドやテープ等で結束してリペア作業を完了する。
【0080】
また、上述した実施形態のリペアスリーブ1は、圧着部4ごとに周方向Rに3つの窪み部6を設けたものであるが、本発明のリペアスリーブは、図9に示す変形例1のように、圧着部4’ごとに窪み部6’を1つだけ設けた構成を採用してもよい。
【0081】
図9に示すように、変形例1のリペアスリーブ1’は、圧着部4’の軸方向Xの直交断面視でロウ付け部12(圧着部4’の上端)の、圧着部4’の中心に対して反対側(圧着部4’の下端の側)にのみ窪み部6’が設けられている。変形例1の窪み部6’は、上述した実施形態のリペアスリーブ1の各窪み部6と比して例えば、3倍程度の周方向Rの長さとなるように長く形成されている。
なお、変形例1のリペアスリーブ1’は、上述した実施形態のリペアスリーブ1と同様の構成については、図9において同一の符号を付してその説明を省略する。
この構成によれば、圧着部4’の周方向Rにおいて窪み部6’を1つだけ形成することで、1つあたりの窪み部6’の内周面62a’および外周面61a’を周方向Rに広く確保できる。
【0082】
このように、窪み部6’の内周面62a’を広く確保することで、1つの窪み部6’を備えた圧着部4’であっても、電線100を圧着時に該電線100をしっかりと圧縮することができ、接続強度を確保することができる。
【0083】
さらに、窪み部6’の内周面62a’を広く確保することで、セレーション形成工程によって、圧着部4’の内周面4fに形成されたセレーション7が、その後に行う窪み形成工程の際に、窪み部6の内周面62a’に位置するセレーションが潰れることない。従って、窪み部6の内周面62a’にセレーションを形成することによる効果、すなわち、電線100を圧着時にセレーションにしっかりと食い込ませることで、接続強度を確保することができる。
【0084】
このように、本発明のリペアスリーブは、窪み部6を圧着部4ごとに少なくとも1つの設けた構成であれば、窪み部6の数やレイアウトについては特に限定しない。
例えば、窪み部6は、2つの圧着部4A,4B間で異なる数で形成したり、周方向Rにおいて異なる箇所に形成してもよい。
【0085】
続いて本発明のリペアスリーブについて行った効果確認試験について表1に基づいて説明する。
表1は本実施形態および変形例1の各リペアスリーブ1の圧縮率に基づく評価確認試験の結果を示す。
【0086】
【表1】
本試験では、発明例1、発明例2、従来例の各リペアスリーブを用意し、夫々のリペアスリーブを電線100に圧着する際の圧縮率に基づいて評価した。
【0087】
ここで圧縮率とは、圧着部4,4’における圧着領域41、および圧着領域41により圧着される電線100の、圧着前の断面積に対する圧着後の断面積の変化率を示し、圧縮率が低いほど断面積の低減量が大きい、すなわち、電気抵抗低減等の観点で効果が高いことを示す。本試験結果において、圧縮率が75%以上である場合を「△」、70%以75%未満の場合を「〇」、70%未満の場合を「◎」として評価した。
【0088】
発明例1は、窪み部6が圧着部4の周方向Rに3つ設けられた上述した実施形態に係るリペアスリーブ1、発明例2は、窪み部6’が圧着部4’の周方向Rに1つ設けられた上述した変形例1に係るリペアスリーブ1’、従来例は、圧着部に窪み部が設けられていない従来のリペアスリーブを示している。
【0089】
本試験では発明例1に関して、圧着部4に対する圧着方向を、0度から周方向Rの一方側へ45度刻みに180度までの合計5つの場合を設定し、これら5つの場合に基づいて圧着方向の違いによる圧縮率の違いについても評価した。
【0090】
ここで圧着方向とは、圧着時に圧着部4の軸方向Xの直交断面視において、圧着部4を隔てて対峙するよう配置される、圧着工具に備えた一対の刃型91,92(アンビル92およびクリンパ91)によって圧着部4を挟み込む方向を示す。この圧着方向は、一対の刃型91,92の、圧着部4の周方向Rにおける相対位置に基づいて設定される。
【0091】
表1中の白抜きの矢印は、クリンパ91を圧着部4に押し当てる方向であって、圧着方向を示している。本試験では、例えば図8に示すように、クリンパ91を圧着部4に押し当てる部位9が、圧着部4の周方向Rにおける上端(ロウ付け部12の位置)である場合の圧縮方向を0度に設定する。
【0092】
なお、発明例2については圧縮方向が0度の場合のみについて圧縮率に関する評価を行った。また、従来例においては、圧着部の周方向Rの部位に関わらず形態が同じであり、圧縮率は圧着方向に応じて影響を受けないため、所定の1方向からの圧縮により圧縮率に関する評価を行った。
【0093】
さらに、圧着部4,4’と圧着する電線100として、導体101がアルミニウム又はアルミニウム合金から成るアルミ電線100と、銅又は銅合金から成る銅電線100との2種類を用意し、夫々について圧縮率に関する評価を行った。
【0094】
本試験においては、表1に示す評価項目ごとにリペアスリーブおよび電線100を所定のサンプル数(例えば50個)を用意し、各サンプルについて、上述した手順によりリペアスリーブを電線100に接続し、例えば図7(b)に示す電線付きリペアスリーブVのような接続構造体を作成する。
【0095】
そして、サンプル数に対応して得た接続構造体ごとに、圧着した状態の圧着部4および電線100の圧縮率を計測し、評価項目ごとに算出した圧縮率の平均値に基づいて評価した。
【0096】
表1に示す効果確認試験の結果のとおり、発明例1,2は、銅電線100、アルミ電線100共に従来例よりも圧縮効果(すなわち圧着前に対する圧着後の圧着部4,4’および電線100の断面積の低減代)を高めることが確認できた。
【0097】
なお、従来例の圧着された圧着部の軸方向Xの断面は、電線間や圧着部の内周面との間に隙間が確認できたのに対して発明例1,2おいては、これらの略隙間が略確認されなかった。
【0098】
また、発明例1に関して、銅電線100、アルミ電線100共に各圧着方向について「〇」又は「◎」となる結果であったため、圧着方向の違いに関わらず、圧縮効果を高めることが確認できた。
【0099】
さらに、発明例1は、試行した圧着方向の全てにおいて、発明例2に対して圧縮効果が同等以上であることから、全体的に発明例2よりも圧縮効果を高めることが確認できた。
【0100】
上述した実施形態のリペアスリーブに備えた筒状の圧着部4(4A,4B)は、図1図2(a)(b)、図3図6に示すように、電線100の露出導体101T(導体)を挿入する開口2(2A,2B)を有しており、図1図2(a)(b)、図3(a)(b)に示すように、前記圧着部4の周方向Rにおける少なくとも一部に、外周面4eが凹状となり、内周面4fが径内側に突出する窪み部6が設けられたものである。
この発明により、所定の圧縮率で圧着することができる。
【0101】
詳述すると、前記圧着部4の周方向Rにおける少なくとも一部に、外周面4eが凹状となり、内周面4fが径内側に突出する窪み部6が設けられているため、電線100の露出導体101Tを挿入する圧着部4の内部に、窪み部6が径内側に向かって突出することとなる。つまり、予め、窪み部6によって、電線100の露出導体101Tを挿入する圧着部4の内部の空間、すなわち電線挿入穴3の体積を減少させることができる。
【0102】
このように、窪み部6によって体積を減少した電線挿入穴3に電線100の露出導体101Tを挿入した状態で圧着治具の圧着部分、すなわちクリンパ91およびアンビル92からなる刃型91,92で圧着する圧着断面において、予め圧縮方向である径内側に突出している窪み部6が形成されていない窪み部非形成領域63が圧縮方向に変形する。窪み部6が設けられていない従来の筒状の圧着部に比べ、窪み部非形成領域63に作用する圧着治具の圧着部分から作用する圧着力は増大し、確実に圧着することができる。なお、窪み部非形成領域63の変形に伴って窪み部6もさらに径内側に変形する。そして、窪み部6と、窪み部非形成領域63との径方向Dの差が略解消され(図8参照)、圧着完了時において、圧着部4の全周を径内側に変形させた圧着状態となる。
【0103】
このように、窪み部6によって空間の体積が減少した電線挿入穴3に露出導体101Tを挿入し、圧着することで、所定の圧着状態で圧着することができる。殊に、作業者によってばらつきやすい手動式の圧着装置で圧着する場合であっても、窪み部6によって所定の圧着状態で圧着することができる。
【0104】
また図2(b)、図3(b)に示すように、窪み部6は、外周面61aが凹状となり、内周面62aが径内側に突出する。つまり、窪み部6は、厚みtが、圧着部4における周辺の窪み部非形成領域63の厚みt’と比して大きく減少していない(t≒t’)。このため、圧着状態においても略均一な肉厚の圧着部4で電線100の露出導体101Tと圧着することができ、安定した圧着状態を維持することができる。よって、圧着部4と電線100とで所望の導電性を確保することができる。
【0105】
また上述したように、窪み部6は、周方向Rに複数設けられているため、圧着部4の周方向Rに複数設けられた窪み部6によって電線挿入穴3の空間体積が減少し、より所定の圧着状態で圧着することができる。
なお、複数の窪み部6が設けられていることで、ひとつひとつの窪み部6の大きさは小さくとも、複数の窪み部6が圧着部4の内部に突出するため、所定の圧縮率で圧着し、所望の導電性を得ることができる。
【0106】
また図2(a)(b)に示すように、複数設けられた窪み部6は、前記周方向Rに等間隔で配置されているため、圧着部4を圧着する方向である圧着方向が変わっても、つまり、いずれの圧着方向から圧着しても、窪み部6によって所定の圧着状態で圧着することができる。
【0107】
また上述したように、窪み部6は、圧着部4の周方向Rに3つ設けられているため、各窪み部6の大きさを大きく形成せずとも、120度ずつの間隔で配置された窪み部6によって、いずれの方向から圧着してもより所定の圧着状態で圧着することができる。
【0108】
また上述したように、圧着部4は、その内周面4fの窪み部6が形成されていない範囲が、該内周面4fの全周に対して2/3以下の周方向Rの長さで形成されているため、所定の圧着状態で圧着することができる。
【0109】
詳しくは、前記内周面4fの窪み部6が形成されていない範囲が、該内周面4fの全周に対して2/3より長い周方向Rの長さで形成されると、窪み部6が小さくなり、窪み部6を形成することによる十分な圧着量が確保できないおそれがある。これに対し、圧着部4は、その内周面4fの窪み部6が形成されていない範囲が、該内周面4fの全周に対して2/3以下の周方向Rの長さで形成することで、窪み部6を形成することによる十分な圧着量を確保できる。
【0110】
なお、前記内周面4fの窪み部6が形成されていない範囲が、前記内周面4fにおいて40%以上50%以下の周方向Rの長さであるとより好ましい。
【0111】
また上述したように、1つの窪み部6は、前記内周面4fの全周に対して1/3以下の周方向Rの長さで形成されているため、所定の圧着状態で圧着することができる。
【0112】
詳しくは、1つの窪み部6が、前記内周面4fの1/3以上の周方向Rの長さで形成されると、電線挿入穴3の空間における体積減少が大きくなりすぎ、接続対象となる電線100を挿入するための筒形状を大きくする必要があり、結果、所望の圧着状態で圧着することができないおそれがある。これに対し、1つの窪み部6が、前記内周面4fの1/3以下の周方向Rの長さで形成することで、窪み部6によって空間の体積が減少した電線挿入穴3に電線100の露出導体101Tを挿入し、圧着部4を圧着することで、所定の圧着状態で圧着することができる。
なお、1つの窪み部6は、前記内周面4fの全周に対して5%以上30%未満の周方向Rの長さであればより好ましく、10%以上の20%以下であればさらに好ましい。
【0113】
また上述したように、窪み部6は、前記内周面4fの内半径(D4)に対して10%以上40%以下の高さ(h6)で該内周面4fより突出しているため(図2(b)、図3(b)参照)、所定の圧着状態で圧着することができる。
【0114】
詳述すると、窪み部6が前記内周面4fの内半径(D4)に対して10%未満の高さ(h6)で該内周面4fより突出していると、電線挿入穴3の内部空間に突出する窪み部6が小さいため、電線挿入穴3の空間における体積減少が少なく、十分な圧着量が確保できないおそれがある。
つまり、圧着部4の圧縮率の低減代が十分ではなく、圧着状態の圧着部4による電線保持力も確保できなおそれがある。
【0115】
一方、窪み部6が前記内周面4fの内半径(D4)に対して40%より高くなる高さ(h6)で該内周面4fより突出していると、電線挿入穴3の空間における体積減少が大きくなりすぎ、接続対象となる電線100を挿入するための筒形状を大きくする必要があり、結果、所望の圧着状態で圧着することができないおそれがある。
つまり、圧着部4への電線挿入性を確保できないおそれがある。
【0116】
これに対し、窪み部6が、前記内周面4fの内半径(D4)に対して10%以上40%以下の高さ(h6)で該内周面4fより突出することで、窪み部6によって空間の体積が減少した電線挿入穴3に電線100の露出導体101Tを挿入し、圧着することで、所定の圧着状態で圧着することができる。
【0117】
また上述したように、窪み部6は、圧着部4の軸方向Xにおいて、圧着治具における圧着部分、すなわち刃型91,92の厚みより広い長さで形成されているため、圧着部4の軸方向Xにおける、圧着治具の圧着部分によって圧着される圧着箇所、すなわち圧着領域41を所定の圧着状態で圧着することができる(図7(b)参照)。
【0118】
詳しくは、窪み部6が圧着治具の圧着部分の厚みより狭い長さで形成されると、圧着領域41において所定の圧着状態で圧着できる軸方向Xの範囲が圧着治具の圧着部分の厚みより狭くなり、十分な導通性が確保できないおそれがある。
これに対し、窪み部6が、圧着部4の軸方向Xにおいて、圧着治具における圧着部分の厚みより広い長さで形成されているため、圧着治具の圧着部分の厚み分を所定の圧着状態で圧着できるため、十分な導通性が確保することができる。
【0119】
また上述したように、前記内周面4fには、複数の凹部7a,7bで構成するセレーション7が形成されているため(図4(a)(b)、図5参照)、接続強度及び導通性を向上することができる。
詳しくは、所定の圧着状態で圧着された電線100は前記内周面4fに形成された凹状のセレーション7に食い込むため、接続強度が向上する。
また、セレーション7に電線100が食い込むことで電線100と前記内周面4fとの接触面積が増大し、導通性を向上することができる。殊に、アルミニウム又はアルミニウム合金製の電線100の場合、表面に酸化皮膜が形成されるが、セレーション7に食い込むことで、セレーション7の凹部7a,7bの角部によって酸化皮膜が破壊され、導通性をさらに向上することができる。
【0120】
また上述したように、セレーション7は、窪み部6の前記軸方向X及び前記周方向Rの少なくとも一方を跨ぐ範囲に形成されたものである(図4(a)、図5参照)ため、窪み部6に加え、窪み部6が形成されていない窪み部非形成領域63でもセレーション7に電線100が食い込み、接続強度及び導通性をより向上することができる。
【0121】
また、上述した実施形態のリペアスリーブ1は、上述の圧着部4(4A,4B)が、軸方向Xの両端部に開口2(2A,2B)を有するように、軸方向Xの中間位置Pmにおける軸方向Xの直交断面に対して対称配置されるとともに、一体の筒状体に構成されたジョイント端子であることを特徴とする。
【0122】
この構成により、圧着部4と、該圧着部4の軸方向Xの両端部の開口2から挿入された電線100とを、所望の圧着状態で圧着して、電線100同士をリペアスリーブ1を介して機械的且つ電気的に確実に接続することができる。
【0123】
また上述したように、リペアスリーブ1は、その軸方向Xの中間位置Pm付近にセパレータ5が設けられているため(図2(a)図3(b)参照)、一方の電線100の過挿入を防止し、両開口2(2A,2B)より電線100を挿入して、両電線100に対して窪み部6を有する箇所で確実に圧着することができる。
【0124】
また上述したように、セパレータ5はリペアスリーブ1の周方向Rにおける一部に配置され、窪み部6がリペアスリーブ1の周方向Rにおける、セパレータ5と同じ位置に配置されているため(図2(a)(b)参照)、セパレータ5で一方の過挿入が防止された電線100を、窪み部6が形成された圧着箇所で確実に圧着することができる。
【0125】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のジョイント端子はリペアスリーブ1に対応し、
以下同様に、
金属条は板状体11に対応し、
金属条における幅方向は第1方向L1に対応し、
所定幅の金属条は、第1方向L1に所定の長さを有する板状体11に対応し、
金属条における幅方向の所定箇所は、板状体11の第1方向L1の中間位置およびその両側に夫々離間した箇所に対応し、
圧着治具における圧着部分は刃型91,92に対応し、
導体は露出導体101Tに対応し、
(ジョイント端子の)軸方向Xの中央はリペアスリーブ1の軸方向Xの略中間位置Pmに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0126】
例えば、上述の説明では、本発明のジョイント端子をリペアスリーブ1に適用した実施形態について説明したが、リペア用に限らず、他の用途に適用してもよい。
【0127】
また、本発明のジョイント端子は、圧着部4の内周面4fにセレーション7を形成することは必須ではなく、セレーション7を形成していない構成であってもよい。
【0128】
さらに、圧着部4は、軸方向Xにおける、開口2の周辺領域と、リペアスリーブ1の軸方向Xの中間位置Pmの周辺領域とのうち、少なくとも一方の領域についても圧着領域41として形成してもよい。
【0129】
また、本発明の筒状の圧着部は、上述したように円筒状に限らず、楕円筒状、多角筒状などであってもよい。
【0130】
さらにまた、本発明のジョイント端子は、外周面4eが凹状となり、かつ内周面4fが径内側に突出する窪み部6が設けられた筒状の圧着部4を備えた構造であれば、上述した実施形態のリペアスリーブ1のように、軸方向Xの直交断面に対して一方側と他方側とに対称配置された一対の圧着部4A,4Bを備えた構成に限定せず他の実施形態を採用してもよい。
【0131】
具体的には、本発明のジョイント端子は、図10に示す変形例2のジョイント端子1’’のように、軸方向Xの一方側に備えた圧着部4’’と、他方側に備えた端子接続部8とを互いに連結した構成を採用してもよい。
【0132】
圧着部4’’は、クローズドバレルとして、軸方向Xの一端側に開口を有する筒状に形成され、その外周面4eが凹状となり、かつ内周面が径内側に突出する窪み部6’’が設けられている。なお、圧着部4’’は、上述した実施形態の圧着部4と直交断面形状等の形状が略同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0133】
端子接続部8は、ボックス部として、接続相手側の部品に備えた雄型端子(図示省略)を軸方向Xの他端側から差し込んで電気的に接続可能な雌型端子接続部として形成されている。
なお、端子接続部8は、上述したように雌型端子接続部として形成するに限らず、雄型端子接続部として突片状に形成したものであってもよい(図示省略)。
【符号の説明】
【0134】
1,1’…リペアスリーブ(ジョイント端子)
1’’…ジョイント端子
2(2A,2B)…開口
4(4A,4B),4’,4’’…圧着部
4e…外周面
4f…内周面
5…セパレータ
6,6’,6’’…窪み部
7…セレーション
7a,7b…凹部
11…板状体(金属条)
11a,11a…板状体の第1方向両側の端面((金属条の)前記幅方向両側の端面)
11e…一方面
11f…他方面
91,92…刃型(圧着治具における圧着部分)
100…電線
101T…露出導体(導体)
R…周方向
X…(圧着部の)軸方向
L1…板状体の第1方向((金属条における)幅方向)
D4…(圧着部の)内半径
h6…(前記窪み部の)高さ
Pm…リペアスリーブの軸方向の略中間位置((ジョイント端子の)軸方向の中央)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10