IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-測定装置及び測定方法 図1
  • 特許-測定装置及び測定方法 図2
  • 特許-測定装置及び測定方法 図3
  • 特許-測定装置及び測定方法 図4
  • 特許-測定装置及び測定方法 図5
  • 特許-測定装置及び測定方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20240411BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G01R31/58
G01R29/08 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020168421
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060758
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山口 文枝
(72)【発明者】
【氏名】中島 滉
(72)【発明者】
【氏名】鳥光 悟
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-255564(JP,A)
【文献】特開昭61-25075(JP,A)
【文献】特開平10-326525(JP,A)
【文献】特開平10-326527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 29/08-29/10
G01R 31/00
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド付き電線のシールド特性を測定する測定装置において、
前記シールド付き電線を格納する筐体と、
前記筐体内において前記シールド付き電線を一端部と他端部との間で捻回する捻回装置と、
前記筐体内の前記シールド付き電線の一端部から内部の導体に交流信号を入力する入力部と、
前記筐体内の前記シールド付き電線の他端部側で内部の導体に導通接続される終端部と、
前記筐体に導通接続され、前記シールド付き電線の捻回時の検出信号を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記出力部から出力される検出信号から前記シールド特性を取得する特性取得部を備えることを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記入力部から入力される交流信号の発生装置を備えることを特徴とする請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記特性取得部は、前記シールド特性として、前記入力される交流信号と前記出力される検出信号の信号強度の比率を取得することを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記特性取得部は、前記捻回装置による捻回動作中に前記シールド特性を取得することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記特性取得部は、前記捻回装置による捻回動作中に前記シールド特性を取得するタイミングを設定する設定装置を備えることを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記特性取得部は、前記捻回装置による捻回動作の捻回角度に応じて前記シールド特性を取得することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記特性取得部は、前記捻回角度と前記シールド特性との関係を取得することを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記特性取得部は、取得した前記シールド特性から前記シールド付き電線の良否を判定することを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記特性取得部は、取得した前記シールド特性の数値に基づいて測定終了を決定することを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記筐体内の温度を測定する温度センサと、
前記筐体内の温度を調節する温度調節部と、
前記温度センサが測定した温度に基づいて、前記温度調節部を制御する制御部と、を有する請求項1から10のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
少なくとも前記筐体を格納する断熱容器からなる恒温槽を有するか、又は、断熱容器からなる前記筐体を恒温槽とする請求項11に記載の測定装置。
【請求項13】
シールド付き電線のシールド特性を測定する測定方法において、
前記シールド付き電線を格納する筐体と、前記筐体内において前記シールド付き電線を一端部と他端部との間で捻回する捻回装置と、前記筐体内の前記シールド付き電線の一端部側で内部の導体に導通接続される終端部と、前記筐体内の前記シールド付き電線の他端部から内部の導体に交流信号を入力する入力部と、前記筐体に導通接続され、前記シールド付き電線の捻回時の検出信号を出力する出力部とを備える測定装置を用いて、
前記筐体内に保持された前記シールド付き電線に対して、交流信号の入力中に前記出力部からの検出信号を測定することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド付き電線のシールド特性を測定するための測定装置及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流信号で伝送を行う電線は、周波数が高くなると信号がノイズとして外部に漏出しないように、高いシールド特性が要求される。また、電線は可動部に使用される場合もあるので、変形に対する耐久性も必要である。
従って、シールド付き電線のシールド特性と耐久性(例えば屈曲耐久性や捻回特性)の関係を評価する測定装置が待望されている。
【0003】
従来の測定装置は、被測定電線とアンテナシールド線とを平行に配置し、被測定電線に増幅されたノイズ信号を流し、アンテナシールド線側に接続された周波数分析機によって、アンテナシールド線が受信する被測定電線からのノイズ信号の信号強度からシールド特性の測定を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術として、ケーブルに対して、当該ケーブルの長手方向を軸として繰り返しの捻回を行いながら、ケーブルの両端部における電気抵抗値の変化が測定されていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-156967号公報
【文献】特開2017-10612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、アンテナシールド線のシールド特性を測定する技術だが、シールド電線のシールド特性の測定にも適用可能である。
しかしながら、この測定装置は、シールド線を静的な状態に維持して測定を行うものなので、シールド付き電線のシールド特性と耐久性の関係を評価するためには、規定回数の捻回動作を加えてからシールド付き電線を測定装置に取り付けて測定を行うことを繰り返す必要があった。このため、毎回の測定において取り付け状態にバラつきを生じるおそれがあり、高精度での測定を行うことが困難であった。
また、この測定装置では、シールド線の捻回動作中のシールド特性の変化を測定することができなかった。
【0007】
特許文献2では、繰り返しの捻回を行いながらケーブルの両端部における電気抵抗値の変化の測定する方法に言及されているが、捻回動作中に測定を実現する具体的な測定装置の構成について言及がなく、実質的には実現ができなかった。
また、この特許文献2は、ケーブルの両端部の電気抵抗値の測定を行うに過ぎず、シールド特性の測定を行うことはできなかった。
【0008】
本発明は、シールド付き電線のシールド特性と耐久性との関係をより精度良く測定することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シールド付き電線のシールド特性を測定する測定装置において、
前記シールド付き電線を格納する筐体と、
前記筐体内において前記シールド付き電線を一端部と他端部との間で捻回する捻回装置と、
前記筐体内の前記シールド付き電線の一端部から内部の導体に交流信号を入力する入力部と、
前記筐体内の前記シールド付き電線の他端部側で内部の導体に導通接続される終端部と、
前記筐体に導通接続され、前記シールド付き電線の捻回時の検出信号を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、シールド付き電線のシールド特性を測定する測定方法において、
前記シールド付き電線を格納する筐体と、前記筐体内において前記シールド付き電線を一端部と他端部との間で捻回する捻回装置と、前記筐体内の前記シールド付き電線の一端部側で内部の導体に導通接続される終端部と、前記筐体内の前記シールド付き電線の他端部から内部の導体に交流信号を入力する入力部と、前記筐体に導通接続され、前記シールド付き電線の捻回時の検出信号を出力する出力部とを備える測定装置を用いて、
前記筐体内に保持された前記シールド付き電線に対して、交流信号の入力中に前記出力部からの検出信号を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成により、シールド付き電線のシールド特性と耐久性との関係をより精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】発明の第一の実施形態である測定装置の概略構成図である。
図2】シールド付き電線から漏れる電磁波を検出する測定装置の概略構成図である。
図3】測定装置における測定時の処理を示したフローチャートである。
図4】発明の実施形態である測定装置で得られたシールド特性を示す線図である。
図5】従来の測定方法で得られたシールド特性を示す線図である。
図6】発明の第二の実施形態である測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一の実施形態の概要]
本発明の第一の実施の形態を図1図5に基づいて説明する。図1は第一の実施形態である測定装置10の概略構成図である。
【0014】
上記測定装置10は、シールド付き電線100のシールド特性を測定するための測定装置である。
シールド付き電線100は、導体101を中心として、絶縁層102、シールド103、シース104が積層された構造の電線である。
中心の導体101は、例えば、複数本の良導体(例えば、銅)の素線を撚り合わせて構成されている。
絶縁層102は、導体101の外周を被覆する絶縁材料(例えば、ポリエチレン、架橋ポリエチレン)から構成されている。
シールド103は、絶縁層の外周を被覆する導体編組で構成されているが、編組に限らず、薄膜状又はテープ状の導体材料で被覆してもよい。
シース104は、塩化ビニルやポリエチレン等の絶縁体からなり、シールド外周を被覆している。
なお、測定の対象となるシールド付き電線は、導体とシールドを備えていれば、上記以外の構成であっても良い。
【0015】
シールド付き電線100は、後述する筐体20内に収容可能な長さに調整される。さらに、シールド付き電線100は、その両端部で導体101が露出するようにシース104等が除去された状態で測定装置10内に保持される。
【0016】
[測定装置]
測定装置10は、筐体20、捻回装置30、終端部35、入力部40、出力部45、特性取得部50、基部60を備えている。
【0017】
基部60は、シールド付き電線100の格納容器である筐体20を下から支持する土台である。基部60は、筐体20との間で電気的に絶縁されている。基部60は、筐体20との間に絶縁材料を介挿しても良いし、基部60全体を絶縁材料から形成しても良い。
また、基部60は、内部において、捻回装置30及び入力部40を支持する。
【0018】
筐体20は、シールド付き電線100を格納可能な密閉用器である。筐体20は、例えば、上下が閉塞された円筒体からなる。筐体20は、その中心軸を鉛直上下方向に向けた状態で基部60に支持されている。
筐体20は、銅等の良導体から形成されている。また、筐体20内において、シールド付き電線100は、筐体20の中心軸上に配置される。筐体20は、出力部45に導体接続されている。
筐体20の内部にシールド付き電線100を取り付ける作業が必要となるので、筐体20は半割構造としても良い。この場合、筐体20の中心軸に沿った割断面で分割可能とすることが好ましい。また、二つの分割体に隙間が生じないように、重なり代を設けることが好ましい。
【0019】
筐体20の底板部21の中心には貫通孔22が形成されている。この貫通孔22には、軸受23を介して、入力部40の保持部41(後述)が回転可能に取り付けられている。
また、筐体20の天井部25の上面中央には、筐体20と導通する良導体からなる出力部45が固定装備されている。
【0020】
入力部40は、その上側に良導体の金属製の円筒からなる保持部41を備え、その下側には高周波伝搬用のロータリージョイント42を備えている。保持部41は、その上部が筐体20の内側に挿入され、下部は筐体20での外部においてロータリージョイント42に連結されている。
保持部41は、上からシールド付き電線100の一端部(図1における下端部)が挿入される有底穴を有し、挿入されたシールド付き電線100の一端部を保持する。保持部41には、ネジ等の締結部材により、挿入されたシールド付き電線100の一端部を強固に固定保持する構造を設けることが好ましい。
この保持部41は、有底であって金属製であることから、シールド付き電線100の一端部側からの電磁波の漏れを防止することができる。
前述したように、保持部41は、筐体20により、軸受23を介して、鉛直上下方向に沿った中心軸回りに回転可能に支持されている。また、保持部41は、捻回装置30により回動動作が入力される。従って、保持部41を通じて、シールド付き電線100の一端部を他端部に対して捻回させることが可能である。
【0021】
保持部41は、外周が絶縁材料からなり、軸受23及び筐体20との間で電気的に絶縁されている。
一方、保持部41の下側に設けられた高周波伝搬用のロータリージョイント42は、シールド付き電線100の一端部側から露出した導体101が保持部41を介して導通接続されている。
ロータリージョイント42は、その下部が基部60に固定支持されている。さらに、ロータリージョイント42は、特性取得部50の高周波信号入出力装置51(後述)に接続されている。
これにより、シールド付き電線100の一端部が入力部40で捻回された場合でも、ロータリージョイント42を通じてシールド付き電線100の導体101に対して、良好に高周波信号を入力することができる。
【0022】
捻回装置30は、モーターと減速機とを有する。減速機は、入力部40の保持部41の外周を保持し、モーターから保持部41に減速回転を付与することができる。また、捻回装置30は、減速機から保持部41に伝達される回転角度を検出する角度センサを備えている。
【0023】
筐体20の天井部25の下面中央部には、終端部35が垂下支持されている。終端部35は、上端部が閉塞された金属製の円筒からなる。終端部35は、シールド付き電線100の他端部(図1における上端部)が下から挿入された状態で固定的に保持する。終端部35は、金属製であることから、シールド付き電線100の他端部側からの電磁波の漏れを防止することができる。
終端部35は、筐体20の天井部25において回転を生じないように固定されている。従って、シールド付き電線100の一端部に回転動作が加えられた場合に、他端部側が回転しないよう保持し、シールド付き電線100を捻回させることができる。
終端部35の内部には、終端抵抗36が設けられている。終端抵抗36の一端部は、シールド付き電線100の他端部側から露出した導体101に接続されている。また、シールド付き電線100の他端部において導体101は、終端部35及び終端抵抗36の他端部を介して接地されている。
【0024】
特性取得部50は、交流信号の発生装置としての高周波信号入出力装置51と、分析装置52とを備えている。
高周波信号入出力装置51は、高周波信号を出力する出力端子と、検出信号の信号強度を検出する入力端子を備えている。
高周波信号入出力装置51の出力端子は、高周波伝搬用のロータリージョイント42に接続され、シールド付き電線100の一端部側から導体101に高周波信号を入力する。
ここでいう、高周波信号とは、周波数帯域で数[MHz]~の交流信号を含むものとする。なお、シールド付き電線100に入力するのは高周波に限らず、より低周波数の交流信号であっても良い。
【0025】
高周波信号入出力装置51の入力端子は、出力部45に接続されている。
前述したように、シールド付き電線100は、筐体20内の中心軸上に保持されており、その導体101の一端部から高周波信号が入力される。このとき、シールド103が適正に機能している場合には、導体101から発生する電磁波はシールド103によって電線の外部への漏洩が抑制される。
一方、シールド103に劣化や破損等が生じている場合には、図2に示すように、劣化又は破損箇所から電磁波が漏洩し、筐体20の内壁で捕捉されて、出力部45を通じて高周波信号入出力装置51の入力端子に検出信号として検出される。
【0026】
分析装置52は、ここでは、画像出力部とキーボードやマウス等の入力インターフェイスを備えたパーソナルコンピュータを例示するが、同様に機能する処理装置でも実現可能である。
分析装置52は、捻回装置30と高周波信号入出力装置51とに接続されている。分析装置52は、捻回装置30の動作制御を行い、高周波信号入出力装置51からの検出信号から検出データとして記録する。
【0027】
詳細には、分析装置52は、その入力インターフェイスによって、捻回装置30がシールド付き電線100に付与する捻回動作の往復回動の振幅角度、単位時間当たりの往復回動数、高周波信号入出力装置51がシールド付き電線100に入力する高周波信号の周波数、測定終了とする検出信号の信号強度(または、検出信号と高周波信号との比率)の閾値等を任意に設定入力することができる。
【0028】
さらに、入力インターフェイスによって、高周波信号入出力装置51からの検出信号のサンプリング間隔を任意に設定することができる。サンプリング間隔は、捻回装置30の角度センサから検出されるシールド付き電線100の捻回角度の角度間隔であっても良いし、時間間隔であっても良い。
即ち、分析装置52(の入力インターフェイス)は、捻回装置30による捻回動作中にシールド特性を取得するタイミングを設定する設定装置として機能する。
なお、分析装置52は、非常に微少な時間又は非常に微少な捻回角度となるサンプリング間隔で検出信号の信号強度のデータを取得した後に、設定された、より疎となる時間間隔又は捻回角度間隔で検出信号の信号強度を間引いて抽出しても良い。
【0029】
図3は測定装置10において、シールド付き電線100のシールド特性を取得する測定を行う場合に、分析装置52が実行する処理及び制御を示したフローチャートである。この図3に基づいて、測定装置10による測定動作及び処理について説明する。
【0030】
分析装置52の入力インターフェイスから、捻回動作の往復回動の振幅角度、単位時間当たりの往復回動数、高周波信号入出力装置51がシールド付き電線100に入力する高周波信号の周波数、測定終了とする検出信号の信号強度の閾値、サンプリング間隔が設定入力されると、分析装置52は、これらを測定条件として記録する(ステップS1)。
【0031】
シールド付き電線100は、両端部の導体101を露出させた状態で一端部が保持部41に取り付けられ、他端部が終端部35に取り付けられる。この状態で半割の筐体20を閉じて、シールド付き電線100の格納作業を完了する。
そして、分析装置52は、捻回装置30を制御して、測定条件である捻回動作の往復回動の振幅角度、単位時間当たりの往復回動数でシールド付き電線100の捻回動作を開始させる(ステップS3)。
また、分析装置52は、高周波信号入出力装置51を制御して、捻回動作の開始と共に、設定された周波数で高周波信号をシールド付き電線100に入力する。また、これと同時に、分析装置52は、設定されたサンプリング周期で検出信号の信号強度を記録する(ステップS5)。
【0032】
分析装置52は、高周波信号入出力装置51からの検出信号の信号強度を監視する(ステップS7)。そして、検出信号の信号強度が増加して、予め設定された閾値に到達すると、捻回装置30を停止し、高周波信号の出力を停止し、検出信号の信号強度の記録を終了して、測定を終了する。
なお、上記測定では、検出信号の信号強度が閾値に到達することを終了条件としている場合を例示しているが、これに替えて、或いは、これと並行して、測定からの経過時間が予め定められた測定時間に達することを終了条件としてもよい。
【0033】
図4は、分析装置52によって取得されたシールド特性を示す線図である。
このシールド特性では、横軸を測定開始からの経過時間、縦軸を入力した高周波信号と検出信号の信号強度の比率としている。
この場合、分析装置52は、サンプリング間隔として時間を選択している。そして、分析装置52は、シールド付き電線100から検出される検出信号の信号強度を対応する高周波信号の信号強度で除算し、各信号強度の比率を算出して記録している。
なお、分析装置52は、算出した図4のシールド特性の線図を分析装置52が有するモニタに表示する。
図示のように、シールド付き電線100に対する捻回動作が繰り返されると、シールド103は、各部において、その耐久性に限界を生じ、導体101から生じる電磁波の漏れ量が増加する。そして、各信号強度の比率が当該比率について予め設定された閾値に到達すると、測定を終了する。
【0034】
なお、図4では、横軸を経過時間としているが、これに限られない。捻回装置30は、保持部41に伝達される回転角度を検出する角度センサを備えているので、分析装置52は、捻回装置30の角度センサが検出する回転角度を取得しても良い。そして、捻回動作は正方向と逆方向との往復回動動作なので、検出される回転角度の絶対値を積算することで、横軸を回転角度(捻回角度)の積算値として、シールド特性を求めることも可能である。
【0035】
また、分析装置52は、予め、測定時間についてシールド付き電線100の良否判定を行うための閾値Tjが設定されている。そして、分析装置52は、測定終了時に、シールド特性(各信号強度の比率)の閾値に達した経過時間が閾値Tjを超えているか否かによって、シールド付き電線100の良否判定を行う。分析装置52は、シールド特性の閾値に達した経過時間が閾値Tjを超えている場合には、シールド付き電線100を良品と判定し、超えられなかった場合には、シールド付き電線100を良品ではないと判定する。分析装置52は、これらの判定結果もモニタに表示する。
なお、良否判定を行うための閾値Tjも、分析装置52の入力インターフェイスから任意に設定可能としても良い。
【0036】
[発明の実施形態における技術的効果]
上記測定装置10は、筐体20内で入力部40と終端部35によって保持されたシールド付き電線100に対して、捻回装置30により捻回動作を付与して、高周波電流入力時における出力部45からの検出信号の信号強度を取得することができる。
つまり、測定装置10では、シールド付き電線100を一回取り付ければ、捻回動作と測定とが完了するまでシールド付き電線100の付け外し作業を不要とすることができる。
このため、捻回装置と測定装置とが別体である従来の測定方法と比べた場合に、捻回動作と測定とを何度も繰り返すことにより、測定装置に対する毎回のシールド付き電線100の取り付け作業により取り付け状態のバラつきの発生を十分に抑制することが可能となり、測定精度の向上を実現することが可能となる。
また、シールド付き電線100の付け外し作業負担を最小限に低減することが可能となる。
【0037】
また、測定装置10は、交流信号の発生装置としての高周波信号入出力装置51を備えるので、ノイズの原因となる高周波に対するシールド特性を測定することが可能である。
【0038】
また、分析装置52は、シールド特性として、入力される高周波信号と出力される検出信号の信号強度の比率を取得しているので、シールド付き電線100に入力される高周波の振動周波数の影響を排除したシールド特性の変化を取得することが可能となる。
【0039】
また、分析装置52は、捻回装置30による捻回動作中にシールド特性を取得するので、実際に外力や外部動作が入力される環境に近い状態でのシールドの耐久性を取得することが可能となる。
図5は、比較の為に、捻回装置と測定装置とに交互にシールド付き電線100を付け替えて、捻回動作(図中では「耐久試験」と標記)と測定とを繰り返して行う従来の測定方法によって取得されたシールド特性を示した線図である。
従来の測定方法では、規定回数の捻回動作を行うごとに測定が行われるので、間欠的なシールド特性しか得ることができない。
従って、閾値を設定した場合でも、シールド特性が閾値を超えたことは分かるが、正確にどの時点で閾値を超えたかを求めることはできない。また、シールド特性が断片的にしか取得できないので、シールド付き電線100が非捻回状態を0°としてそこからの捻回角度の変化に対するシールド特性の変化を取得することもできない。
【0040】
これに対して、測定装置10は、シールド付き電線100の捻回動作中において、連続的にシールド特性の変化を取得することができるので、どの時点でシールド特性が閾値を超えたかを正確に求めることが可能である。
また、シールド付き電線100が非捻回状態を0°とした場合(基準角度とする)に、捻回角度の変化に対するシールド特性の変化も取得することが可能となる。例えば、図4では、閾値に近づくにつれて、シールド特性が増減を繰り返す変化を示すことが観察できる。
このように、シールド付き電線100の捻回に対するシールド特性の変化についてより正確な分析を行うことが可能となる。
【0041】
また、分析装置52は、入力インターフェイスからサンプリング間隔を時間で設定することができる。換言すると、捻回装置30による捻回動作中にシールド特性を取得するタイミングを設定することができる。
従って、所望の時間間隔でのシールド特性の変化を取得することが可能となる。
【0042】
また、分析装置52は、入力インターフェイスからサンプリング間隔を捻回角度で設定することもできる。換言すると、捻回装置30による捻回動作の捻回角度に応じたシールド特性を取得することができる。
さらに、シールド付き電線100の基準角度に対する捻回角度の変化に対するシールド特性の変化も取得することができ、捻回角度からのシールド特性の分析を行うことも可能となる。
【0043】
さらに、分析装置52は、取得したシールド特性からシールド付き電線100の良否を判定している。これにより、シールド付き電線100の良否を耐久性の観点から客観的に、より正確に、より簡単に行うことが可能となる。
【0044】
また、分析装置52は、予め、閾値を定めて、取得したシールド特性の数値に基づいて測定終了を決定しているので、自動的に測定を終わらせることができ、過不足なく適正な測定を行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施形態において、所定の時間(たとえば、10秒)連続してシールド特性が閾値を超えた場合や、所定のサンプリング回数(例えば、5回)閾値を超えた場合に測定を終了するようにしてもよい。この他、所定時間内におけるシールド特性の変化の特性(例えば、所定時間内におけるシールド特性の分散)に基づいて、閾値を最初に越えてから測定を終了するまでの時間やサンプリング回数を定めるようにしてもよい。このような構成とすることで、測定されるシールド特性のばらつきを低減することができる。また、これにより、より正確なシールド特性の把握が可能となる。
【0046】
[第二の実施形態の概要]
本発明の第二の実施の形態を図6に基づいて説明する。図6は第二の実施形態である測定装置10Aの概略構成図である。なお、測定装置10Aについて、前述した測定装置10と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
【0047】
測定装置10Aは、筐体20及び基部60を格納する断熱容器からなる恒温槽70と、恒温槽70内の温度を調節するためのヒーター53と、恒温槽70内の温度を検出する温度センサ54とを備えている。ヒーター53は温度調節部の一例である。
ヒーター53は、温度制御が可能なあらゆるものを使用することが出来る。
温度センサ54は、温度検出ができ、信号出力が可能なあらゆるものを使用することが出来る。
【0048】
分析装置52は、ヒーター53と接続され、ヒーター53の温度制御を行うことができる。すなわち、分析装置52は制御部の役割も有している。また、分析装置52は、温度センサ54と接続され、恒温槽70内の温度を検出することができる。
分析装置52の入力インターフェイスから、恒温槽70内の目標温度を設定することができる。
【0049】
シールド特性の測定の際には、設定された目標温度となるようにヒーター53の出力を制御する(例えば、オンオフによるフィードバック制御)。さらに、目標温度が検出されてから、筐体20の内部全体が目標温度となるように、予め定められた設定待機時間の経過を待ってから測定が開始される。測定開始後の制御及び処理は、前述した図3のフローチャートと同一である。
【0050】
この測定装置10Aでは、例えば、設定温度を複数設定し、各設定温度で測定を行うことにより、シールド付き電線100の温度変化を考慮したシールド特性を取得することが可能となる。
【0051】
なお、ヒーター53と温度センサ54は、シールド特性の検出結果に影響を及ぼす可能性を考慮して、筐体20の外側に配置しているが、ヒーター53と温度センサ54の種別によって、シールド特性の検出結果の影響が小さいものを使用する場合には、筐体20の内側に配置してもよい。
また、恒温槽70は、筐体20のみを内側に配置する構成としても良い。また、ヒーター53と温度センサ54を筐体20の内側に配置する場合には、筐体20そのものを断熱材料から形成し、筐体20を恒温槽にしても良い。その場合、筐体20の内面全体に金属等の導体材料からなる金属層を形成し、出力部45に導体接続することが好ましい。
また、ヒーター53だけでなく、ペルチェ素子等の冷却源を用いて冷却も可能としても良い。当該冷却源は温度調節部の一例である。
【0052】
[その他]
測定装置10の筐体20は、良導体から形成される場合を例示したがこれに限定されない。例えば、筐体20の内面全体に金属からなる金属層を形成し、他の部分は金属以外の材料で形成しても良い。なお、その場合、筐体20の内面の金属層は、出力部45と導通させる必要がある。
【0053】
また、特性取得部50の高周波信号入出力装置51が、交流信号の発生と検出信号の検出の両方を行っているが、これらを個別の装置で行っても良い。
また、上記実施形態では、測定装置10,10Aが特性取得部50を含む構成を例示しているが、測定装置10,10Aは、特性取得部50を含まない構成としても良い。その場合、測定装置10,10Aの入力部40には、既存の交流発生器を接続し、出力部には既存の周波数分析装置を取り付けて測定を行っても良い。また、捻回装置には、既存のモーター制御装置を接続し、捻回角度振幅や回転速度を制御してもよい。
【0054】
また、測定装置10,10Aでは、入力部40の保持部41のみが回動してシールド付き電線100の捻回する構成を例示したが、シールド付き電線100が捻回可能であれば、測定装置10,10Aのいずれの構成が回動を行っても良い。例えば、終端部35が回動して、シールド付き電線100を捻回させてもよい。その場合、保持部41が固定でも良いし、終端部35と逆回転を行う構成としても良い。
また、シールド付き電線100の捻回の際に、筐体20が回動する構成としても良い。筐体20が回動する場合には、筐体20と出力部45との間にも高周波伝搬用のロータリージョイントを設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
10,10A 測定装置
20 筐体
30 捻回装置
35 終端部
36 終端抵抗
40 入力部
41 保持部
42 ロータリージョイント
45 出力部
50 特性取得部
51 高周波信号入出力装置(発生装置)
52 分析装置(制御部)
53 ヒーター(温度調節部)
54 温度センサ
60 基部
100 シールド付き電線
101 導体
102 絶縁層
103 シールド
104 シース
図1
図2
図3
図4
図5
図6