(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物、ポリウレタンインテグラルスキンフォーム、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240412BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240412BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C08G18/00 M
C08G18/10
C08G18/73
C08G18/66 074
C08G18/48 066
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2019159656
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長岡 毅
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】吉井 直哉
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-291129(JP,A)
【文献】特開2012-224712(JP,A)
【文献】特開2019-085469(JP,A)
【文献】特開2016-204403(JP,A)
【文献】特開2002-030129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00- 18/87
C08G71/00- 71/04
C08J 9/00- 9/42
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含むポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物であって、
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ヘキサメチレンジイソシアネートを含むイソシアネート成分と平均分子量80~180のジオールとから得られるイソシアネート基末端アダクト体を含み、
有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が10~20質量%であり、
ポリオール成分(B)が、ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)を含み、
該ポリオキシアルキレンポリオールが、触媒とし
てホスファゼン触媒又はイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いたものであり、かつ水酸基価18~28mgKOH/g、総不飽和度0.001~0.03meq./gであることを特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物。
【請求項2】
有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含み、密度が200~350kg/m
3
のポリウレタンインテグラルスキンフォームを形成するためのポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物であって、
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ヘキサメチレンジイソシアネートを含むイソシアネート成分と平均分子量80~180のジオールとから得られるイソシアネート基末端アダクト体を含み、
有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が10~20質量%であり、
ポリオール成分(B)が、ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)を含み、
該ポリオキシアルキレンポリオールが、触媒として複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン触媒又はイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いたものであり、かつ水酸基価18~28mgKOH/g、総不飽和度0.001~0.03meq./gであることを特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォーム用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のISF用組成物を発泡させてなるポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項4】
請求項1に記載のISF用組成物を発泡させてなり、密度が200~400kg/m
3である
、または、
請求項2に記載のISF用組成物を発泡させてなり、密度が200~350kg/m
3
であることを特徴とす
るポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項5】
反発弾性率が45%以上であり、引裂強さが30N/cm以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項6】
有機ポリイソシアネート組成物(A)と、ポリオール成分(B)とを、触媒(C)、及び発泡剤(D)の存在下、反応、発泡させて得られる、請求項3乃至5のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンインテグラルスキンフォーム(以下、「ISF」と称する場合がある。)用組成物、ISF及び当該ISFの製造方法に関する。さらに詳しくは、従来のISFの欠点であった太陽光や熱による変色がほとんどなく、高い反発弾性を有しつつ、機械的強度に優れるISF及びISFの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ISFは、その生産性の良さ、機械的強度、感触の良さ等から、靴底用素材やステアリングホイールをはじめとする自動車の内装部品として広く使用されている。
【0003】
従来のISFの製造に当たっては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と称する場合がある。)等の芳香族系のポリイソシアネートが使用されることが多いため、太陽光線等の光によって容易に黄変する傾向があることから、濃い色や暗い色に着色して変色を目立たなくする必要があった。
【0004】
近年、意匠の多様化に伴い明るい色調のISFが求められるようになったため、さまざまなISF外観の変色の抑制方法が提案されてきたが、高い反発弾性率を有しつつ、優れた機械的強度を有するISFの技術が求められている。
【0005】
ISF外観の変色を抑制する技術としては、例えば特許文献1にはISFを製造する金型内に無黄変塗料をあらかじめ塗布した後にISF用樹脂を注入し、表面が無黄変塗料によって被覆されたISFを得るインモールドコート法が記載されている。しかし、工程数が多くなる欠点がある。また、充分な耐候性を持たせるためには、50μm程度の厚膜が必要となり、作業工程が煩雑になる欠点もある。
【0006】
特許文献2には、黄変芳香族イソシアネートの代わりに耐変色性に優れた非芳香族系ポリイソシアネートを用いたISFが提案されているが、常温付近での蒸気圧が高いジイソシアネートモノマーを使用するため、その刺激性や皮膚毒性に対する取り扱い上の問題がある。
【0007】
特許文献3には、脂肪族系、あるいは脂環族系イソシアネートのイソシアヌレート体のみを使用した耐変色性が良いISFが提案されている。しかし本提案は変色性についての課題を解決するものであり、機械物性や反発弾性については十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭59-018723号公報
【文献】特開昭55-66917号公報
【文献】特開平9-183826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のISFの欠点であった変色の問題を解決し、かつ、高反発弾性率を有し、機械的強度や生産性に優れるISF用組成物、ISF、及び該ISFの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討研究を重ねた結果、特定のヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と称する場合がある。)成分と特定のジオール成分とから得られる有機ポリイソシアネート組成物と、特定のポリオール成分を使用することで、これらの課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は,以下の(1)~(6)の実施形態を含む。
【0012】
(1)有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含むISF用組成物であって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、HDIを含むイソシアネート成分と平均分子量80~180のジオールとから得られるイソシアネート基末端アダクト体を含み、有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が10~20質量%であり、ポリオール成分(B)が、ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)を含み、該ポリオキシアルキレンポリオールが、触媒として複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン触媒又はイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いたものであり、かつ水酸基価18~28mgKOH/g、総不飽和度0.001~0.03meq./gであることを特徴とするISF用組成物。
【0013】
(2)ジオールが側鎖、または側鎖及び環構造を有することを特徴とする上記(1)に記載のISF用組成物。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)に記載のISF用組成物を発泡させてなるISF。
【0015】
(4)密度が200~400kg/m3であることを特徴とする上記(3)に記載のISF。
【0016】
(5)反発弾性率が45%以上であり、引裂強さが30N/cm以上であることを特徴とする上記(3)又は(4)に記載のISF。
【0017】
(6)有機ポリイソシアネート組成物(A)と、ポリオール成分(B)とを、触媒(C)、及び発泡剤(D)の存在下、反応、発泡させて得られる、上記(3)乃至(5)のいずれかに記載のISFの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、これまでの課題であった耐変色性を備え、高い反発弾性を有しつつ、機械的強度に優れたISFを得ることができる。また、本発明により得られたISFは、靴底用樹脂等高い弾性性能が必要な素材に広く利用でき非常に有用である。さらに、ISF製造の際、一般的な発泡装置で高い生産安定性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明のISF用組成物は、有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を含み、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、HDIを含むイソシアネート成分と平均分子量80~180のジオールとから得られるイソシアネート基末端アダクト体を含み、有機ポリイソシアネート組成物(A)のイソシアネート基含有率が10~20質量%であり、ポリオール成分(B)が、ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)を含み、該ポリオキシアルキレンポリオールが、触媒として複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン触媒又はイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いたものであり、かつ水酸基価18~28mgKOH/g、総不飽和度0.001~0.03meq./gであることを特徴とするISF用組成物である。
【0021】
イソシアネート基末端アダクト体を得る際に用いるジオールの平均分子量は80~180であるが、側鎖、又は側鎖及び環構造を有し、下記式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0022】
【0023】
(式中、Rは側鎖を有するアルキレン基、または環状構造を有する置換基を表す。)。
【0024】
式(1)中、Rは式(1)で示されるジオールの水酸基の少なくともいずれか一方が2級水酸基になるような構造や、炭素数が2以上の側鎖を有する置換基であることが好ましい。式(1)において、ジオールの水酸基が1級水酸基になるような構造が多く、側鎖の炭素数が1以下の置換基である場合は、アダクト体のウレタン基が凝集しやすくなり、得られるアダクト体の粘度が高くなり、また固化しやすいため、取り扱いが困難になる恐れがある。
【0025】
また、ジオールの平均分子量が80未満の場合、アダクト体のウレタン基が凝集しやすくなり、高粘度化するため好ましくない。平均分子量が180を超える場合は、得られるアダクト体のイソシアネート基含有率が10質量%よりも下がり、高粘度化するため、発泡装置への導入が困難になると共に、一般的な発泡装置のイソシアネートやポリオール類の混合能力では十分均一に混合されないため好ましくない。なお、式(1)中のRが環構造を有する場合、高硬度のISFが得られやすいという利点がある。
【0026】
本発明におけるポリオキシアルキレンポリオール(B-1)は、開環付加重合触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリオールである。本発明においては、ISFとして優れた性能を発現しやすい、水酸基価18~28mgKOH/g、総不飽和度0.001~0.03meq./gのポリオキシアルキレンポリオールを使用する。ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)の水酸基価が18mgKOH/g未満の場合、得られるISFの硬さが柔らかくなり、また、高い粘度による混合不良や液流れ性が悪化する。他方、28mgKOH/gを超えるとISFの弾性が低下する。
【0027】
ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)の総不飽和度が大きくなることは末端に不飽和基を有するモノオール成分が多くなることを意味し、総不飽和度が0.03meq./gよりも大きい場合にはフォームの架橋密度低下に伴い耐久性が低下する。また0.001meq./gよりも小さい場合には工業的に製造することが難しい。
【0028】
ポリオキシアルキレンポリオールの開環付加重合触媒としては、一般的にKOH触媒が知られているが本発明においては複合金属シアン化物錯体触媒又はホスファゼン触媒又はイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いる。KOH触媒を用いポリオキシアルキレンポリオールを製造した場合、ポリオキシアルキレンポリオールの分子量の増加とともに末端に不飽和基を有するモノオールが副生することが知られており、該モノオールを多量に含有するポリオキシアルキレンポリオールをポリウレタン原料として用いた場合、得られる軟質ポリウレタンフォームは、硬度や耐久性が低いものとなりやすい。
【0029】
ポリオキシアルキレンポリオール(B-1)の末端水酸基の一級化率としては60~90mol%が好ましく、70~90mol%がより好ましい。末端水酸基の一級化率が60mol%より低い場合には成型した軟質ポリウレタンフォームの成型安定性が低下し、崩壊やヒケが生じる場合がある。他方、末端水酸基の一級化率が90mol%より高い場合には、フォームの独立気泡性(独泡性)が強くなり、成型収縮を生じる恐れがある。ここで一級化率とは、末端の水酸基が一級になっている割合であり、〔(一級水酸基数/全水酸基数)×100(mol%)〕で表すことができる。
【0030】
本発明のISF用組成物には、得られるISFの硬さ調整を目的として、ポリオール中でビニル系モノマーを通常の方法で重合して製造したポリマーポリオールを併用することができる。このようなポリマーポリオールとしては、ポリアルキレンポリオール中、ラジカル開始剤の存在下でビニル系モノマーを重合させ、安定分散させたものが挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ヒドロキシアルキル、メタアクリレート、アルキルメタアクリレートが挙げられ、中でもアクリロニトリル、スチレンが好ましい。このようなポリマーポリオールの具体例としては、AGC社製のEL-910、EL-923、三洋化成工業社製のFA-728R等が挙げられる。
【0031】
触媒(C)としては、当該分野において公知である各種ウレタン化触媒が使用できる。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N”N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ブチル-2-メチルイミダゾール等の3級アミン及びこれらの有機酸塩、ジメチルエタノールアミン、N-トリオキシエチレン-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン等のアミノアルコール類、及びこれらの有機酸塩、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物類等が挙げられる。これら触媒は、必要に応じて2種類以上を混合して使用することができる。また、これら触媒を低粘度化、液状化、成形機械の計量精度向上のための増容、等の理由で各種溶媒、ポリオール、可塑剤、等に溶解して使用することも可能である。
【0032】
本発明に使用される発泡剤(D)としては水が望ましいが、必要に応じて地球環境等に重大な影響を及ぼすことが少ない公知のものも使用することができる。この公知の発泡剤には不活性低沸点溶剤と反応性発泡剤の二種があり、前者としてはジクロルメタン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、アセトン、蟻酸メチル、ヘキサン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン等、さらに窒素ガス、炭酸ガスや空気等を挙げることができる。後者の例としては、室温より高い温度等により分解して気体を発生する、例えばアゾ化合物や炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0033】
本発明には成型安定性の向上やISFの硬さの調整を目的として官能基数2~4の架橋剤を用いることができる。具体的には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、シクロヘキサンジエタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を用いることができる。これらのうち特に反応性が高いアミン系アルコールが好ましい。
【0034】
また、本発明には必要に応じて従来公知の他の添加剤も使用できる。例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤を配合することによって本発明の特徴である優れた耐変色性を一層向上させることができる。具体的には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノール系の紫外線吸収剤等がある。
【0035】
また、これら以外にも、公知の整泡剤、難燃剤、スコーチ防止剤、着色剤、減粘剤、顔料又は染料、マイカ、ガラス繊維等の補強材又は充填剤、導電剤、絶縁剤、発光剤、抗菌剤、防カビ剤、芳香剤、VOCキャッチャー剤等が挙げられ、必要に応じて使用することができる。
【0036】
本発明におけるISFは、例えば、有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、及び必要に応じて助剤の存在下、攪拌混合後、金型内に注入して得られるモールドフォーム、又は上下左右に壁面を有するコンベアーに注入することで得られる連続シート状フォーム等として製造される。両製造方法とも、有機ポリイソシアネート組成物(A)以外の成分をあらかじめ混合してポリオールプレミックスを準備し、これと有機ポリイソシアネート組成物(A)との2成分を混合発泡させる方法、一部又は全ての成分を別々に攪拌混合機の混合ヘッドに導入し、発泡する方法が可能である。
【0037】
本発明のISFを製造する際、有機ポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基と、水を含むイソシアネート反応性化合物中の全イソシアネート反応性基のモル比(イソシアネート基/NCO反応性基)としては、0.4~1.2(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=40~120)であることが好ましく、0.5~1.1(NCO INDEX=50~110)であることがより好ましい。
【0038】
なお、本発明におけるISFの密度は、200~400kg/m3であることが好ましい。特に経済性や生産性を考慮すると350kg/m3以下に調整することが好ましい。
【0039】
触媒(C)の種類や配合量にもよるが、水のみを発泡剤として使用する場合、この密度帯域を達成するために必要な水の添加部数は、ポリオール成分(B)100質量部に対し0.3~3.0質量部であることが好ましい。
【0040】
以上のように、本発明のISFは、その用途を特に限定するものではないが、反発弾性率が45%以上、引裂強さが30N/cm以上というように、高反発弾性率、高機械的強度を有し、かつHDIを含むイソシアネート成分とジオールから得られたアダクト体のみをイソシアネート成分として使用しているため、非常に優れた使用感、強度、耐久性を得ることができる。また、耐変色性、耐候性に優れていることから、ISF表面への塗膜保護も必要なく、あらかじめ樹脂液に着色しておけば所望の色調に着色できることから、靴底、靴底の一部、靴の中敷、自動車用ステアリングホイール、アームレスト、家電用電気機器、家具などの幅広い用途に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、さらに本発明の具体的実施例について述べるが、本実施例のみによって本発明が限定されることはない。なお実施例において、すべての部及び%は特に断りの無い限り質量基準である。
【0042】
[有機ポリイソシアネート組成物の合成]
表1に示した原料を用い、以下の操作を行うことで有機ポリイソシアネート組成物A-1~9を得た。表中の原料配合は、質量部にて示した。
【0043】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-1]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)を949g、および1,3-ブタンジオール(以下、1,3-BG)を51g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量17.5%、粘度(25℃)4,400mPa・s、遊離のHDI含量0.5質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0044】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-2]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを707g、および1,3-BGを76g、ネオペンチルグリコールを66g、水素添加ビスフェノールAを152g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量16.1%、粘度(25℃)21,000mPa・s、遊離のHDI含量0.9質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0045】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-3]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを913g、および3,3-ジメチロールヘプタンを87g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量16.9%、粘度(25℃)4,300mPa・s、遊離のHDI含量0.5質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0046】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-4]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを926g、およびジプロピレングリコールを74g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量17.9%、粘度(25℃)1,630mPa・s、遊離のHDI含量0.5質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0047】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-5]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを885g、およびジオキサングリコールを115g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量15.2%、粘度(25℃)62,300mPa・s、遊離のHDI含量0.5質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0048】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-6]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを894g、およびPEG-200を106g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量15.7%、粘度(25℃)790mPa・s、遊離のHDI含量0.5質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0049】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-7]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを894g、およびPP-200を106g仕込み、80℃で5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート基含有量15.7%、粘度(25℃)1,640mPa・s、遊離のHDI含量0.5質量%であるイソシアネート基末端アダクト体を得た。
【0050】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-8]
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた1Lの四つ口フラスコにHDIを950g及びイソプロパノール50gを入れ、攪拌しながら85℃に加熱し3時間ウレタン化反応を行った。次いで、この反応液中にアロファネート化触媒としてオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.1gを加え、110℃で3時間反応後、反応停止剤であるリン酸エステル「JP-508」(城北化学社製、商品名)0.1gを加え、50℃で1時間撹拌し反応を停止させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数2.0、イソシアネート含量19.3%、25℃での粘度100mPa・s、未反応の遊離のHDI含量0.1%であるイソシアネート基末端アロファネート体を得た。
【0051】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例A-9]
攪拌装置、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを950g、および3-メチル-1,5-ペンタンジオール50gを仕込み、これらを撹拌しながら60℃に加熱した。60℃に到達後、アロファネート化触媒としてオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.1gを加え、110℃で3時間反応後、反応停止剤であるリン酸エステル「JP-508」(城北化学社製、商品名)0.1gを加え、50℃で1時間撹拌し反応を停止させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、平均官能基数4.8、イソシアネート含量19.2質量%、粘度(25℃)2,200mPa・s、遊離のHDI含量0.1質量%であるイソシアネート基末端アロファネート体を得た。
【0052】
【0053】
[ポリオール成分の調製]
表2に示す割合で原料を均一に混合し、ポリオールプレミックスとして、ポリオール成分P-1~P-5を調製した。なお、原料配合は質量部にて示した。
【0054】
【0055】
・ポリオールB-1:触媒としてイミノ基含有ホスファゼニウム塩を用いて製造された2種類のポリオキシアルキレンポリオールをブレンドし、平均官能基数=3.0、水酸基価=24(mgKOH/g)、総不飽和度0.03meq./g、末端水酸基の一級化率が85%になるように調整した。
・ポリオールB-2:触媒としてKOHを用いて製造された平均官能基数=3.0、水酸基価=24(mgKOH/g)、総不飽和度0.12meq./g、末端水酸基の一級化率が79%のポリオキシアルキレンポリオール。
・ポリオールB-3:触媒としてKOHを用いて製造された平均官能基数=3.0、水酸基価=28(mgKOH/g)、総不飽和度0.07meq./g、末端水酸基の一級化率が87%のポリオキシアルキレンポリオール。
・ポリオールB-4:触媒としてKOHを用いて製造された平均官能基数=3.0、水酸基価=33(mgKOH/g)、総不飽和度0.07meq./g、末端水酸基の一級化率が78%のポリオキシアルキレンポリオール。
【0056】
表1~表2で使用した原料は以下の通り。
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、東ソー社製
・1,3-ブタンジオール:ダイセル社製、分子量90
・ネオペンチルグリコール:三菱ガス化学社製、分子量104
・水添ビスフェノールA:新日本理化社製、商品名「リカビノールHB」、分子量240
・3,3-ジメチロールヘプタン:JNC社製、分子量160
・ジプロピレングリコール:ADEKA社製、分子量134
・ジオキサングリコール:三菱ガス化学社製、分子量218
・PEG-200:ポリエチレングリコール(平均分子量200)、三洋化成工業社製
・PP-200:ポリプロピレングリコール(平均分子量200)、三洋化成工業社製
・DABCO T-9:2―エチルヘキサン酸スズ(II)、Evonik社製
・DBU:ジアザビシクロウンデセン、サンアプロ社製
・EG:エチレングリコール、三菱ケミカル社製
・JF-95:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、城北化学工業社製
・NIAX CS-22:トリス(ジプロピレングリコール)フォスファイト、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製。
【0057】
[ISFの作製]
有機ポリイソシアネート組成物としてイソシアネート基末端アダクト体A-1~A-7、イソシアネート基末端アロファネート体A-8~A-9、ポリオールプレミックスP-1~P-5を用いISFを作製した。
【0058】
即ち、表3~4に示す割合で温度40℃に調整した各有機ポリイソシアネート組成物と温度25℃に調整したポリオールプレミックスとを7000r.p.m.の回転数で卓上ミキサーにより混合撹拌した。200mm×200mm×10mmサイズの金属モールド(金型)を70℃に加熱し、離型剤塗布後、乾燥し、得られた混合物を注入した後、蓋をして7分間硬化させた。硬化後、金型から取り出し、ISFのテストピース(以下TPと略す)を得た。得られたTPについては、70℃で24時間加熱養生した後に、密度、硬さ、機械物性等の評価を実施した。
【0059】
<物性測定>
・密度:JIS K7222に準じて測定を行った。
・硬さ(アスカーC、スキン付き表面硬度):JIS K7312に準じて測定を行った。
・反発弾性率:JIS K6400-3に準じて測定を行った。
・TR(引裂き強度、B型ダンベル使用):JIS K6400-5に準じて測定を行った。
【0060】
<黄変性試験>
ISFをQ-Lab社製QUVによって曝露(光源UVB-313、照度0.59W/m2/nm、温度50℃で24時間)させた後に、ミノルタ製色彩色差計CR-310を使用し、JIS K7373に準じてYI値を測定した。
【0061】
<総合評価>
以下の3項目すべてにおいて基準値を超えたものを良好と判断した。
・反発弾性率:45%以上
・TR:30N/cm以上
・YI値の差(ΔYI)が5以下
ΔYI=「試験終了後のYI値」-「試験前のYI値」
作製したISFの評価結果を表3~表4に記載する。
【0062】
【0063】
【0064】
表3~表4から明らかなように、本願発明の有機ポリイソシアネート組成物と、ポリオール成分から得られるISFは、これまでの課題であった耐変色性を備え、高い反発弾性率、優れた機械的強度を有する。
【0065】
本発明による従来市場に無い耐変色性を備え、高い反発弾性率と優れた機械的物性を有するポリウレタンインテグラルスキンフォームは、靴底、靴のインソール、産業用機械の部品、玩具、楽器等に、意匠性と使用感の向上、高耐久化等の優れた効果をもたらす。