(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】チャックテーブル及び加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20240412BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240412BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240412BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20240412BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240412BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B24B27/06 M
B23Q3/08 A
H01L21/304 622H
H01L21/304 631
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2020001083
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 節男
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-341042(JP,A)
【文献】特開2011-009424(JP,A)
【文献】実開昭58-056441(JP,U)
【文献】特開平11-010472(JP,A)
【文献】特開2018-062048(JP,A)
【文献】特開2004-306254(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0023888(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 7/04
B24B 27/06
B23Q 3/08
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面で保持するチャックテーブルであって、
表面が該保持面を構成する多孔質シリコン基板からなる吸着板と、
該吸着板を裏面から支持し、吸引源からの負圧を該吸着板に作用させる吸引路を備える支持基台と、
該吸着板の該保持面の周縁及び露出した外周面をシールする、砥粒と樹脂とが混合されたシール剤と、
を備え、
該被加工物を研削する砥石を用いて該保持面及び該シール剤の上面がセルフ研削され、
該セルフ研削時に該シール剤の該砥粒が該樹脂から脱落する
チャックテーブル。
【請求項2】
該シール剤の上面は、
該セルフ研削時に該砥石に押圧されている状態では該保持面と同一平面に形成され、
該セルフ研削後に該砥石からの押圧が解除されると該樹脂の弾性によって該保持面より盛り上がる
請求項1に記載のチャックテーブル。
【請求項3】
該砥粒は、シリコン粒である
請求項1に記載のチャックテーブル。
【請求項4】
保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物及び該チャックテーブルの保持面
及び該シール剤を砥石で研削する加工ユニットと、を備える加工装置であって、
該チャックテーブルは、請求項1
から3のいずれか1項に記載のチャックテーブルである加工装置。
【請求項5】
該加工ユニットは、
保持面と平行な回転軸を備えるスピンドルに切削ブレードが装着された切削ユニット、又は、保持面と垂直な回転軸を備えるスピンドルに研削砥石が環状に配置された研削ホイールが装着された研削ユニットである
請求項
4に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブル及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、サファイア(Al2O3)、又はガラス等の各種板状の被加工物を切削ブレード又は研削砥石等で加工する際、被加工物を吸引保持するチャックテーブルが利用される。従来のチャックテーブルは、ステンレス等の金属の枠体と、枠体に嵌合されるポーラスのアルミナセラミックスからなる吸着板とを含み、吸着版の表面で被加工物を吸引保持する。特に、研削装置では、チャックテーブルの保持面を研削砥石で研削するセルフ研削を行って、チャックテーブルの保持面と研削ホイールの研削砥石の下面とを平行にすることで、被加工物を均一な厚さに研削加工できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のチャックテーブルの保持面は、ポーラスのアルミナセラミックスとステンレスとから構成されているため、例えばシリコンウェーハ等の硬度の低い被加工物を研削する研削砥石では、研削力が足らず、特にステンレスを研削することが難しい。このため、従来では、比較的固いビトリファイドボンドやメタルボンド等のボンド材に粗い砥粒が固定されたセルフ研削専用の研削ホイールを研削装置に装着してセルフ研削を行っている。しかしながら、セルフ研削後、シリコンウェーハ等の被加工物を研削する際には、セルフ研削専用の研削ホイールから細かい砥粒の研削ホイールに付け替える必要がある。すなわち、被加工物を加工する研削ホイールは、チャックテーブルの保持面に対して、厳密には平行でない。このため、チャックテーブルに形成されたセルフ研削時のうねり、すなわち、セルフ研削専用の研削ホイールによる研削痕が被加工物に転写されてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物を研削する研削砥石又は切削する切削ブレードで加工することができるチャックテーブル及び加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のチャックテーブルは、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルであって、表面が該保持面を構成する多孔質シリコン基板からなる吸着板と、該吸着板を裏面から支持し、吸引源からの負圧を該吸着板に作用させる吸引路を備える支持基台と、該吸着板の該保持面の周縁及び露出した外周面をシールする、砥粒と樹脂とが混合されたシール剤と、を備え、該被加工物を研削する砥石を用いて該保持面及び該シール剤の上面がセルフ研削され、該セルフ研削時に該シール剤の該砥粒が該樹脂から脱落することを特徴とする。
【0007】
該シール剤の上面は、該セルフ研削時に該砥石に押圧されている状態では該保持面と同一平面に形成され、該セルフ研削後に該砥石からの押圧が解除されると該樹脂の弾性によって該保持面より盛り上がってもよい。該砥粒は、シリコン粒であってもよい。
【0008】
また、本発明の加工装置は、保持面で被加工物を保持する該チャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物及び該チャックテーブルの保持面及び該シール剤を砥石で研削する加工ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0009】
該加工ユニットは、保持面と平行な回転軸を備えるスピンドルに切削ブレードが装着された切削ユニット、又は、保持面と垂直な回転軸を備えるスピンドルに研削砥石が環状に配置された研削ホイールが装着された研削ユニットであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、被加工物を研削する研削砥石又は切削する切削ブレードで加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る研削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された研削装置の加工対象の被加工物の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された研削装置のチャックテーブル及び被加工物を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された研削装置のチャックテーブルの構成例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示されたチャックテーブルの支持基台の平面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示された研削装置によるセルフ研削加工の一状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図6のセルフ研削加工の後、基準高さ測定の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図1に示された研削装置による研削加工の一状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るチャックテーブル10及びチャックテーブル10を備える加工装置について、図面に基づいて説明する。まず、チャックテーブル10を備える加工装置の一例としての研削装置1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る研削装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された研削装置1の加工対象の被加工物200の構成例を示す斜視図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向である。
【0014】
研削装置1は、チャックテーブル10に保持された被加工物200の被加工面を研削加工する装置である。被加工物200は、例えば、シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)又は炭化ケイ素等を基板201とする円板状の半導体ウェーハ、セラミック、ガラス又はサファイア系の無機材料基板、板状金属、樹脂の延性材料、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:total thickness variation:ワークの被加工面を基準面として厚み方向に測定した高さの被加工面全面における最大値と最小値の差)が要求される各種加工材料等である。
【0015】
図2に示すように、実施形態の被加工物200は、基板201の表面202に形成される複数のストリート203(分割予定ライン)と、格子状に交差する複数のストリート203によって区画された各領域に形成されるデバイス204とを有する。被加工物200は、ストリート203に沿って分割されることによって、チップ205になる。なお、実施形態では、被加工物200は、基板201がシリコンで構成された半導体ウェーハである。
【0016】
被加工物200の表面202側には、保護部材210が貼着される。保護部材210は、研削装置1によって被加工物200の裏面206側を研削する際に、チャックテーブル10に保持される被加工物200の表面202側のデバイス204を異物の付着や接触による損傷から保護するものである。保護部材210は、実施形態において、被加工物200と同形の円板形状のテープである。保護部材210は、例えば、合成樹脂により構成された基材層と、基材層の表面及び裏面の少なくともいずれかに積層された粘着性を有する糊層とを含む。
【0017】
実施形態の研削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と、X軸移動ユニット60と、Z軸移動ユニット70と、研削ユニット80と、高さ測定器90(
図6~
図8参照)と、制御ユニット100と、を備える。チャックテーブル10は、被加工物200を保持面21で吸引保持する。チャックテーブル10の詳細な構成については、後述にて説明する。
【0018】
X軸移動ユニット60は、チャックテーブル10を、研削ユニット80に対してX軸方向に相対的に移動させるユニットである。X軸移動ユニット60は、実施形態において、研削装置1の装置基台2に対して、チャックテーブル10をX軸方向に移動させる。X軸移動ユニット60は、不図示のテーブル移動機構と、カバー部材61と、蛇腹部材62と、を含む。
【0019】
不図示のテーブル移動機構は、研削装置1の装置基台2の内部に設けられ、回転ユニット12(
図4参照)を介して、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な回転軸11(
図6及び
図8参照)回りに回転自在に支持する。テーブル移動機構は、チャックテーブル10を、研削ユニット80の下方の加工領域と、研削ユニット80の下方から離間して被加工物200が搬入出される領域とに亘ってX軸方向に移動させる。
【0020】
カバー部材61は、チャックテーブル10の周囲を覆う。カバー部材61の上面は、水平方向に沿って平坦に形成されている。蛇腹部材62は、カバー部材61のX軸方向の両側に延在する。チャックテーブル10がX軸に沿って研削ユニット80の下方に近接する方向に移動すると、研削ユニット80側の蛇腹部材62が収縮し、研削ユニット80とは反対側の蛇腹部材62が伸張する。チャックテーブル10がX軸に沿って研削ユニット80の下方から離間する方向に移動すると、研削ユニット80側の蛇腹部材62が伸張し、研削ユニット80とは反対側の蛇腹部材62が収縮する。
【0021】
Z軸移動ユニット70は、研削ユニット80を、チャックテーブル10に対してZ軸方向に相対的に移動させるユニットである。Z軸移動ユニット70は、実施形態において、研削装置1の装置基台2から立設した壁3に対して、研削ユニット80をZ軸方向に移動させる。Z軸移動ユニット70は、一対の案内レール71、71と、雄ねじロッド72と、2つの軸受部材73、73と、モータ74と、昇降基台75と、支持部76と、を備える。
【0022】
一対の案内レール71、71は、壁3の一面にZ軸方向に延びるように設置される。一対の案内レール71、71は、昇降基台75をZ軸方向に移動自在に支持する。雄ねじロッド72は、上側先端部及び下側先端部が壁3に取り付けられた軸受部材73、73によって、Z軸方向に平行な軸心回りに回転自在に設けられる。モータ74は、雄ねじロッド72を回転駆動するための駆動源である。モータ74は、上側の軸受部材73に設けられる。モータ74の出力軸は、雄ねじロッド72に電動連結されている。
【0023】
昇降基台75は、一対の案内レール71に沿ってZ軸方向に移動自在に設けられる。昇降基台75は、雄ねじロッド72に螺合する雌ねじ部を有する。昇降基台75は、支持部76を介して研削ユニット80を支持する。モータ74が正転すると、一対の案内レール71、71に沿って昇降基台75が下降移動し、昇降基台75の下降移動に伴って研削ユニット80が前進する。モータ74が逆転すると、一対の案内レール71、71に沿って昇降基台75が上昇移動し、昇降基台75の上昇移動に伴って研削ユニット80が後退する。
【0024】
研削ユニット80は、チャックテーブル10に保持された被加工物200及びチャックテーブル10の保持面21を研削する加工ユニットである。研削ユニット80は、スピンドル81と、モータ83と、工具装着部材84と、研削ホイール85と、を含む。
【0025】
スピンドル81は、支持部76に対して回転自在に設けられる。スピンドル81は、チャックテーブル10の保持面21と垂直な回転軸82(
図6参照)を備える。モータ83は、スピンドル81を回転駆動させるための駆動源である。工具装着部材84は、円板状の部材であり、スピンドル81の下端に設けられる。工具装着部材84の下面には、研削ホイール85が装着される。
【0026】
研削ホイール85は、工具装着部材84に応じた大きさに形成された円板状の部材であり、工具装着部材84の下面に着脱可能に装着される。研削ホイール85の下面には、研削ホイール85の外周に沿って複数の研削砥石86が環状に配置される。研削装置1による研削加工中、スピンドル81が回転軸82回りに回転しながら昇降基台75と共に研削ホイール85が下降移動することによって、研削砥石86の下面である研削面は、被加工物200の被加工面又はチャックテーブル10の保持面21に接触する。研削砥石86は、被加工物200の被加工面又はチャックテーブル10の保持面21に接触して研削加工を行う。この際、研削砥石86には、不図示の給水源から給水ノズル等を介して加工液87(
図6及び
図8参照)が供給される。
【0027】
制御ユニット100は、研削装置1の上述した構成要素、すなわち、X軸移動ユニット60、Z軸移動ユニット70、研削ユニット80、及び後述の高さ測定器90(
図6~
図8等参照)等をそれぞれ制御して、被加工物200又はチャックテーブル10に対する加工動作を研削装置1に実施させるものである。制御ユニット100は、例えば、CPU(central processing unit)等のマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)等のメモリを有する記憶装置を含む記憶部101と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100は、加工動作の状態及び画像等を表示する液晶表示装置等により構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報等を登録する際に用いる図示しない入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0028】
次に、実施形態に係るチャックテーブル10の詳細な構成について説明する。
図3は、
図1に示された研削装置1のチャックテーブル10及び被加工物200を示す斜視図である。
図4は、
図1に示された研削装置1のチャックテーブル10の構成例を示す断面図である。
図5は、
図4に示されたチャックテーブル10の支持基台30の平面図である。
図3に示すように、チャックテーブル10は、被加工物200を保持面21で吸引保持する。実施形態において、被加工物200の被加工面は裏面206である。すなわち、チャックテーブル10は、実施形態において、保護部材210越しに被加工物200の表面202側を吸引保持する。チャックテーブル10は、吸着板20と、支持基台30と、シール剤40と、を備える。また、
図4に示すように、チャックテーブル10は、支持基台30の吸引路33を介して、吸引源50と接続される。チャックテーブル10は、吸引源50によって吸引されることで、保持面21に載置された被加工物200を吸引保持する。
【0029】
吸着板20は、多孔質シリコン基板からなる円板体である。吸着板20は、表面が被加工物200を保持する保持面21を構成する。保持面21は、被加工物200の外径より若干小さい。吸着板20は、裏面22側が支持基台30に支持される。
【0030】
支持基台30は、吸着板20の外径より大きい外径を有する円形の皿体である。
図5に示すように、支持基台30は、吸着板20を裏面22側から支持する。支持基台30は、高さ基準面31と、支持面32と、吸引路33と、を含む。
【0031】
高さ基準面31は、支持基台30の最上面であり、チャックテーブル10の回転軸11に垂直な面に平坦に形成される。高さ基準面31は、内径が吸着板20の外径と同等の輪形状である。高さ基準面31は、支持基台30の外周に沿って形成される。支持基台30は、高さ基準面31より内側かつ下方に凹形状を有する。
【0032】
支持面32は、吸着板20を裏面22から支持する。支持面32は、高さ基準面31より下方に形成される凹形状の底面であり、チャックテーブル10の回転軸11に垂直な面に平坦に形成される。高さ基準面31と支持面32との高さの差は、吸着板20の厚みより小さい。支持面32は、実施形態において、上面視で高さ基準面31の内周に外周が沿う輪形状を含み、径方向に所定間隔に同心円に形成される複数の輪形状である。
【0033】
吸引路33は、支持面32から下方に凹形状に形成される凹部である。吸引路33は、隣接する支持面32の間の凹部を含む。吸引路33は、最外周の支持面32よりも内周側の支持面32同士の外周と内周とを接続する凹部を含む。吸引路33は、吸引源50に接続する通路に連通するように支持基台30の底面の中央に形成された孔を含む。吸引路33は、吸引源50からの負圧を吸着板20に作用させる。吸引源50と吸引路33とを接続する通路には、切換弁51が設けられていてもよい。切換弁51は、通電されている状態のみ吸引源50と吸引路33とを連通させる。
【0034】
図4に示すように、シール剤40は、吸着板20と支持基台30とをシールする。シール剤40は、吸着板20の保持面21の周縁23及び露出した外周面24をシールする。これにより、吸引路33が密封される。シール剤40は、樹脂と砥粒との混合物である。樹脂は、例えば、エポキシ系樹脂、シリコン系、ゴム系、塩化ビニル系等である。砥粒の径は、吸着板20の気孔以下の大きさである2~500μm程度である。砥粒は、例えば、シリコン、炭化ケイ素、ガラス、人工ダイヤモンド、又は立方晶窒化ホウ素(CBN)等の粒子である。シール剤40によるシール幅、すなわち、シール剤40が塗布される吸着板20の部分は、吸着板20の径方向で、2~5mm程度である。
【0035】
次に、実施形態に係る研削装置1によって研削加工される被加工物200の厚さの監視方法について説明する。
図6は、
図1に示された研削装置1によるセルフ研削加工の一状態を示す模式図である。
図7は、
図6のセルフ研削加工の後、基準高さ測定の一例を示す模式図である。
図8は、
図1に示された研削装置1による研削加工の一状態を示す模式図である。
【0036】
研削装置1は、高さ測定器90をさらに備える。高さ測定器90は、チャックテーブル10の高さを測定する第1センサ91と、被加工物200の被加工面の高さを測定する第2センサ92と、を有する。第1センサ91は、先端を支持基台30の高さ基準面31に位置合わせすることで、高さ基準面31の高さを測定する。第2センサ92は、先端を保持面21に位置合わせすることで、保持面21の高さを測定する。第2センサ92は、先端を保持面21に保持された被加工物200の被加工面である裏面206に位置合わせすることで、被加工物200の裏面206の高さを測定する。
【0037】
高さ測定器90は、第1センサ91及び第2センサ92の測定結果に基づいて、高さ基準面31に対する保持面21の高さ情報を、制御ユニット100へ出力する。又は、高さ測定器90は、第1センサ91及び第2センサ92の測定結果に基づいて、高さ基準面31に対する被加工物200の被加工面の高さ情報を、制御ユニット100へ出力する。
【0038】
図6に示すように、研削ユニット80でチャックテーブル10の保持面21を研削して平坦に形成する所謂セルフ研削を実施した後、
図7に示すように、高さ測定器90の第2センサ92の先端を保持面21に位置合わせして、高さ基準面31に対する保持面21の高さを測定する。制御ユニット100は、高さ基準面31に対する保持面21の高さ情報を高さ測定器90から取得する。制御ユニット100は、この際の高さ情報を、基準高さとして記憶部101に記憶させる。なお、セルフ研削は、チャックテーブル10が、取り付けられた際に実施される。
【0039】
図8に示すように、研削ユニット80で被加工物200を研削している際には、高さ測定器90の第2センサ92の先端を被加工物200の裏面206に位置合わせして、高さ基準面31に対する被加工物200の裏面206の高さを測定する。制御ユニット100は、高さ基準面31に対する被加工物200の裏面206の高さを被加工物200の高さ情報として高さ測定器90から取得する。制御ユニット100は、被加工物200の高さから、記憶部101に記憶された基準高さを減算することによって、保護部材210を含む被加工物200の厚さを算出する。このように、研削装置1は、研削加工中に被加工物200の厚さを監視することができる。
【0040】
また、実施形態に係る研削装置1は、被加工物200を研削する研削ホイール85を研削ユニット80に取り付けて、セルフ研削を実施する。すなわち、実施形態に係る研削装置1は、セルフ研削時、被加工物200の研削時に同一の研削ホイール85を用いる。実施形態では、被加工物200の基板201がシリコンで構成され、チャックテーブル10の吸着板20が多孔質シリコン基板で構成されているので、セルフ研削と被加工物200の研削とを、同一の研削ホイール85で実施できる。
【0041】
以上説明したように、実施形態に係るチャックテーブル10は、表面が保持面21を構成する多孔質シリコン基板からなる吸着板20と、吸着板20を裏面22から支持し、吸引源50からの負圧を吸着板20に作用させる吸引路33を備える支持基台30と、を備える。吸着板20が高い破砕性及び導電性を有する多孔質シリコン基板からなるので、被加工物200を研削する研削砥石86によって加工できる。すなわち、チャックテーブル10のセルフ研削と被加工物200の研削とで、同じ研削砥石86等の加工具を使用することができる。これにより、研削砥石86と平行な保持面21を形成でき、うねりの発生を抑制することができる。
【0042】
また、チャックテーブル10は、吸着板20の保持面21の周縁23及び露出した外周面24を、樹脂と砥粒とが混合されたシール剤40でシールしている。表1は、樹脂のみのシール剤でシールした場合に比べた、樹脂と砥粒とが混合されたシール剤40でシールした場合との研削時の効果の一覧を示す。
【0043】
【0044】
樹脂のみのシール剤でシールした場合、セルフ研削中にシール剤40の部分が研削されると、樹脂が柔らかいため削り難く、また樹脂が研削砥石86に吸着して目詰まりし易い。これに対し、樹脂と砥粒とが混合されたシール剤40でシールした場合、砥粒が樹脂から脱落することによって、削り易く、また研削砥石86に吸着し難くなり目詰まりし難くなる。
【0045】
また、シール剤40は、吸着板20に比べて非常に柔軟で弾性のある材料からなる。このため、シール剤40の上面は、セルフ研削時には保持面21と同一平面に形成されるが、セルフ研削後に研削砥石86からの押圧が解除されると、弾性によって樹脂が保持面21より数μmほど僅かに盛り上がる。シール剤40の上面が保持面21より僅かに盛り上がった状態で、被加工物200が保持面21に吸着されると樹脂が被加工物200に密着する。これにより、被加工物200の吸着固定時のリークを抑制することができ、さらに、リークを抑制することにより、研削時の振動による被加工物200の外周縁の欠けの発生を抑制することができる。しかしながら、樹脂が加工液87により膨潤すると、保持面21と被加工物200との間の気密性が低下し、樹脂と被加工物200との隙間から加工液87が浸入しリークする可能性がある。樹脂と砥粒とが混合されたシール剤40は、樹脂のみのシール剤に比べて膨潤し難いので、好適に被加工物200に密着させることができる。
【0046】
また、実施形態に係るチャックテーブル10において、支持基台30は、支持面32が径方向に所定間隔に形成された複数の輪形状であり、吸引路33が支持面32から下方に凹形状に形成される。これにより、吸着板20は、径方向に所定間隔に形成された複数の支持面32によって裏面22が支持されるので、吸引源50から吸引路33が吸引されても、保持面21が凸凹することを抑制することができる。
【0047】
さらに、実施形態に係る研削装置1(加工装置)は、第1センサ91及び第2センサ92を有する高さ測定器90をさらに備える。研削装置1は、チャックテーブル10の高さ基準面31と、セルフ研削後の保持面21の高さとの差である基準高さに基づいて、研削加工中の被加工物200の被加工面の高さを算出することによって、被加工物200の厚さを監視する。なお、基準高さを測定する際は、第2センサ92の先端を保持面21に位置合わせすることによって保持面21の高さを測定する。第2センサ92の先端に比べて多孔質シリコン基板からなる吸着板20が柔らかいが、一瞬の接触で測定することができるので、第2センサ92によって吸着板20を削ってしまう恐れは低い。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、実施形態では、研削ユニット80を備える研削装置によって研削加工を行うが、研削加工を行う加工装置は、研削装置に限定されない。
【0049】
図9は、変形例に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
図9に示すように、本発明では、保持面21と平行な回転軸を備えるスピンドル111に切削ブレード115が装着された切削ユニット110を備える切削装置1-2によって研削加工を行ってもよい。なお、
図9に示す切削装置1-2において、実施形態の研削装置1と同等の構成部品には同一符号を付して説明を省略する。スピンドル111は、
図9に示す変形例において、Y軸方向と平行なの回転軸を有する。
【符号の説明】
【0050】
1 研削装置(加工装置)
10 チャックテーブル
11 回転軸
12 回転ユニット
20 吸着板
21 保持面(表面)
22 裏面
23 周縁
24 外周面
30 支持基台
31 高さ基準面
32 支持面
33 吸引路
40 シール剤
50 吸引源
60 X軸移動ユニット
70 Z軸移動ユニット
80 研削ユニット(加工ユニット)
81 スピンドル
82 回転軸
83 モータ
84 工具装着部材
85 研削ホイール
86 研削砥石
87 加工液
90 高さ測定器
100 制御ユニット
110 切削ユニット(加工ユニット)
111 スピンドル
115 切削ブレード
200 被加工物