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特許7471093バイオマス灰の製品化システム、製品化システムにより製造した製品、製品化システムにより製造した製品の出荷システム
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  • 特許-バイオマス灰の製品化システム、製品化システムにより製造した製品、製品化システムにより製造した製品の出荷システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】バイオマス灰の製品化システム、製品化システムにより製造した製品、製品化システムにより製造した製品の出荷システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20240412BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20240412BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240412BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B3/20
B09B101:30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020012347
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021115555
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594018267
【氏名又は名称】株式会社中研コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241951(JP,A)
【文献】特開2012-076009(JP,A)
【文献】特開2006-314987(JP,A)
【文献】特開2012-236722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス資源を燃焼させたバイオマス灰を取得する取得手段と、
該取得手段で取得した前記バイオマス灰を塩素濃度の高さに応じてバイオマス灰の塩素の濃度が高い高塩素灰と、バイオマス灰の塩素の濃度が低い低塩素灰とに分類する分類手段と、
前記高塩素灰と、前記低塩素灰とを個別に保管可能な保管手段と、
前記分類手段によって分類された前記バイオマス灰を取得して原料を調製する原料調製手段と、
前記原料調製手段で調製した原料を製品にする製品化手段と、を備え、
前記原料調整手段は、
前記バイオマス灰の塩素濃度の許容範囲を定める塩素濃度許容値を超える塩素濃度の前記バイオマス灰である前記高塩素灰に塩素濃度が前記塩素濃度許容値よりも低い前記バイオマス灰である前記低塩素灰を混合することで塩素濃度を前記塩素濃度許容値以下にした混合灰を原料とする処理と、
前記低塩素灰を取得してそのまま原料とする処理とを実行可能である、
バイオマス灰の製品化システム。
【請求項2】
前記製品化手段は、
前記低塩素灰からなる原料をそのまま製品にするバイパス処理と、
前記低塩素灰又は前記混合灰からなる原料に対して前記原料とは別の材料を混合したものを製品にする混合処理と、
前記低塩素灰又は前記混合灰からなる原料に対して磁性体を除去したものを製品にする磁選処理のうちの少なくとも何れか一つの処理を実行可能である、
請求項1に記載のバイオマス灰の製品化システム。
【請求項3】
前記製品化手段は、前記混合処理を実行可能であり、且つ前記混合処理において、スラグ骨材、フライアッシュ、セメント、混和剤の少なくとも何れか一つを混合用原料として前記原料に混合する、
請求項2に記載のバイオマス灰の製品化システム。
【請求項4】
前記分類手段は、
前記取得手段で取得した前記バイオマス灰を塩素濃度の高さに応じて分類する塩素濃度別分類処理と、
前記取得手段で取得した前記バイオマス灰をカルシウム濃度の高さに応じて分類するカルシウム濃度別分類処理と、を実行するように構成され、
前記分類手段は、前記カルシウム濃度別分類処理において、前記取得手段で取得した前記バイオマス灰のカルシウム濃度が3.5%以上である場合、該バイオマス灰に固結防止剤を散布するように構成される、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のバイオマス灰の製品化システム。
【請求項5】
前記製品化手段は、前記混合処理と、前記混合処理を行った製品と水とを混錬したものを製品にする二次加工処理とを実行可能である、
請求項2に記載のバイオマス灰の製品化システム。
【請求項6】
前記製品化手段は、前記磁選処理を実行可能であり、
前記二次加工処理は、前記混合処理と前記磁選処理とを行った製品と水とを混錬したものを製品とするように構成される、
請求項5に記載のバイオマス灰の製品化システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のバイオマス灰の製品化システムにより製造された製品。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のバイオマス灰の製品化システムにより製造した製品を出荷する、出荷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物資源を燃焼させた際に発生するバイオマス灰を製品にするバイオマス灰の製品化システム、製品化システムにより製造した製品、製品化システムにより製造した製品の出荷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な廃棄物について再利用することが提案されており、例えば、特許文献1には、一般廃棄物、産業廃棄物、医療廃棄物等の廃棄物を処理する際に発生する熱を野菜等の栽培に利用したり、資源を生成したりするシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-334531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、生物資源を燃焼させた際に発生するバイオマス灰を活用することに対する関心が高まっているが、バイオマス灰に含まれる成分にはバイオマス灰特有の傾向、例えば、塩素の濃度が高い傾向があり、この傾向が製品化を行う設備や製品の品質に悪影響を与えてしまうことがある。
【0005】
例えば、塩素の濃度が高いバイオマス灰を使用してコンクリートを製造する場合は、製造したコンクリートに含まれる塩素の濃度も高くなるため、コンクリート中の鉄筋に錆びが生じて膨張し、コンクリート破壊が発生することがある。
【0006】
また、カルシウムの濃度が高いバイオマス灰を使用する場合は、サイロ内での保管時において大気中の水分と反応して消石灰に変化して固結することがあるため、サイロ内からバイオマス灰を引き出せない状態に陥ると、製造プラントが停止したり、固結したバイオマス灰がサイロから排出されたりすること等のリスクがある。
【0007】
このように、バイオマス灰は、製品や製品の製造過程において様々な問題を引き起こすことがあるため、扱うことが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、バイオマス灰特有の成分による扱いにくさを解消できるバイオマス灰の製品化システム、該製品化システムにより製造した製品、該製品化システムにより製造した製品の出荷システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバイオマス灰の製品化システムは、
バイオマス資源を燃焼させたバイオマス灰を取得する取得手段と、
該取得手段で取得した前記バイオマス灰を塩素濃度の高さに応じて分類する分類手段と、
前記分類手段によって分類された前記バイオマス灰を取得して原料を調製する原料調製手段であって、前記バイオマス灰の塩素濃度の許容範囲を定める塩素濃度許容値が設定され、且つ前記分類手段によって分類された前記バイオマス灰のうち、塩素濃度が前記塩素濃度許容値を超える高塩素灰を取得した場合、該高塩素灰に塩素濃度が前記塩素濃度許容値よりも低い低塩素灰を混合することで塩素濃度を前記塩素濃度許容値以下にした混合灰を原料とする原料調製手段と、
該原料調製手段で調製した原料を製品にする製品化手段と、を備える。
【0010】
上記構成のバイオマス灰の製品化システムによれば、取得手段で取得したバイオマス灰は、分類手段により塩素濃度の高さに応じて分類され、さらに、塩素濃度が高いバイオマス灰(塩素濃度許容値を超えているバイオマス灰)を原料にする場合は、原料調製手段により塩素濃度が抑えられる。
【0011】
そのため、製品化手段では塩素の濃度が抑えられた原料を製品にすることが可能となり、バイオマス灰を用いて調製した原料の塩素が製品化を行う設備や、製品の品質に悪影響を与えることを抑えることができる。
【0012】
本発明のバイオマス灰の製品化システムにおいて、
前記製品化手段は、
前記原料をそのまま製品にするバイパス処理と、
前記原料に対して前記原料とは別の材料を混合したものを製品にする混合処理と、
前記原料に対して磁性体を除去したものを製品にする磁選処理のうちの少なくとも何れか一つの処理を実行可能であってもよい。
【0013】
上記構成のバイオマス灰の製品化システムによれば、バイパス処理、混合処理、磁選処理の何れの処理で製品を製造する場合であっても塩素濃度が抑えられている原料を使用することができるため、原料に含まれる塩素による悪影響を抑えつつ複数種の製品を製造することができる。
【0014】
本発明のバイオマス灰の製品化システムにおいて、
前記製品化手段は、前記混合処理を実行可能であり、且つ前記混合処理において、スラグ骨材、フライアッシュ、セメント、混和剤の少なくとも何れか一つを混合用原料として前記原料に混合する、ようにしてもよい。
【0015】
この場合においても、塩素濃度が抑えられている原料を使用することができるため、原料に含まれる塩素による悪影響を抑えることができる。
【0016】
この場合、本発明のバイオマス灰の製品化システムにおいて、
前記分類手段は、該取得手段で取得した前記バイオマス灰のカルシウム濃度が3.5%以上である場合、該バイオマス灰に固結防止剤を散布する、ように構成されていてもよい。
【0017】
このようにすれば、時間の経過によりバイオマス灰が水分を吸収して固結してしまうことを防止できるため、バイオマス灰をより扱いやすくすることができる。
【0018】
本発明のバイオマス灰の製品化システムにおいて、
前記製品化手段は、前記混合処理と、前記混合処理を行った製品と水とを混錬したものを製品にする二次加工処理とを実行可能であってもよい。
【0019】
上記構成のバイオマス灰の製品化システムによれば、塩素濃度が抑えられた原料から硬化体の材料となる製品を製造するため、塩素による悪影響が生じ難い硬化体を得られる材料を製品とすることができる。
【0020】
また、本発明のバイオマス灰の製品化システムにおいて、
前記製品化手段は、前記磁選処理を実行可能であり、
前記二次加工処理は、前記混合処理と前記磁選処理とを行った製品と水とを混錬したものを製品とするように構成されていてもよい。
【0021】
上記構成のバイオマス灰の製品化システムによれば、塩素濃度が抑えられ且つ磁性体が除かれた原料から硬化体の材料となる製品を製造するため、塩素や磁性体による悪影響が生じ難い硬化体を得られる材料を製品とすることができる。
【0022】
本発明の製品は、上記何れかのバイオマス灰の製品化システムにより製造されたものである。かかる製品は、塩素濃度が抑えられた原料により製造されているため、塩素による品質への悪影響が表れにくいものとなっている。
【0023】
本発明の出荷システムは、塩素濃度が抑えられた原料を使用してバイオマス灰の製品化から製品の出荷までを行うことができるため、バイオマス灰を製品化する処理や、製品を出荷する処理を円滑に進めることができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のバイオマス灰の製品化システム、該製品化システムにより製造した製品、該製品化システムにより製造した製品の出荷システムは、バイオマス灰特有の成分による扱いにくさを解消できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るバイオマス灰の製品化システムのブロック図である。
図2図2は、バイオマス灰に含有されている成分と、石炭灰に含有されている成分との対比表である。
図3図3は、別々に取得した6つのバイオマス灰のそれぞれに含有されている成分と、石炭灰に含有されている成分との対比表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態にかかるバイオマス灰の製品化システム(以下、製品化システムと称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態の製品化システムは、生物資源を燃焼させた際に発生するバイオマス灰を利用して製品を製造するように構成されたシステムである。また、本実施形態の製品化システムで扱うバイオマス灰は、生物資源のうち木材を燃焼させた際に発生したものである。また、バイオマス灰は、図2に示すように、別種の灰に比べて塩素やカルシウム、酸化カリウムの含有量が高い傾向がある。なお、図3には、別々に取得したバイオマス灰(A~F)の成分と、石炭灰の成分とを示しているが、バイオマス灰では石炭灰に比べて塩素やカルシウム、酸化カリウムの含有量が高くなる傾向があることが分かる。
【0029】
製品化システム1は、バイオマス資源を燃焼させたバイオマス灰を取得する取得手段2と、該取得手段2で取得したバイオマス灰を所定の成分濃度の高さに応じて分類する分類手段3と、分類手段3により分類したバイオマス灰を保管する保管手段4と、分類手段3によって分類されたバイオマス灰を取得して原料を調製する原料調製手段5と、該原料調製手段5で調製した原料を製品化して出荷する製品化手段6と、を備えている。
【0030】
取得手段2は、図1に示すように、複数の発電所Gから受け入れたバイオマス灰を取得するように構成されていてもよいし、一つの発電所Gから受け入れたバイオマス灰を取得するように構成されていてもよい。また、発電所Gとは別の場所から受け入れたバイオマス灰を取得することも可能である。
【0031】
分類手段3は、取得手段2で取得した前記バイオマス灰を、塩素濃度の高さに応じて分類する塩素濃度別分類処理と、カルシウム濃度の高さに応じて分類するカルシウム濃度別分類処理と、を実行するように構成されている。
【0032】
塩素濃度別分類処理では、取得手段2で取得したバイオマス灰の塩素の濃度と、バイオマス灰の塩素濃度が高いか低いかを判定する基準となる塩素濃度基準値とを比較し、バイオマス灰を、バイオマス灰の塩素の濃度が塩素濃度基準値を超えている高塩素灰と、バイオマス灰の塩素の濃度が塩素濃度基準値よりも低い低塩素灰とに分類する。
【0033】
塩素濃度基準値には、例えば、前記判定を行う基準とするバイオマス灰の塩素濃度が設定されており、この場合、塩素濃度基準値に設定されるバイオマス灰の塩素濃度は、20%~5%の範囲で設定することが好ましい。バイオマス灰の塩素濃度が5%を超えると潮解性が活発になる傾向があり、20%を超えるとサイロ内で潮解性の影響で排出が困難になる傾向がある。また、バイオマス灰の塩素濃度が10%を超えるとサイロに振動機を作動させるなどの潮解性対策が必要となり、またバイオマス灰の塩素濃度が7%を超えるとサイロ内の温度や湿度の影響で潮解性の影響がでるため、塩素濃度基準値に設定されるバイオマス灰の塩素濃度は、5%以下であることがより好ましい。
【0034】
カルシウム濃度別分類処理では、取得手段2で取得したバイオマス灰のカルシウムの濃度と、バイオマス灰のカルシウム濃度が高いか低いかを判定するカルシウム濃度基準値とを比較し、バイオマス灰を、バイオマス灰のカルシウムの濃度がカルシウム濃度基準値を超えている高カルシウム灰と、バイオマス灰のカルシウムの濃度がカルシウム濃度基準値以下である低カルシウム灰とに分類する。
【0035】
カルシウム濃度基準値には、取得手段2で取得したバイオマス灰の前記判定を行う基準とするカルシウム濃度が設定されており、例えば、前記判定を行う基準とするバイオマス灰のカルシウム濃度は30%~3.5%の範囲で設定されることが望ましい。バイオマス灰のカルシウム濃度3.5%を超えると固結性が発生しやすくなる傾向があり、30%以上であるとサイロ内で時間の経過により固結性の影響で排出が困難になる傾向がある。また、バイオマス灰のカルシウム濃度が15%を超えると、サイロに振動機を作動させるなどの固結性対策が必要となり、またバイオマス灰のカルシウム濃度が7%を超えるとサイロ内の温度や湿度の影響で固結性の影響がでるため、カルシウム濃度基準値に設定されるバイオマス灰のカルシウム濃度は、3.5%未満の値であることが好ましい。
【0036】
保管手段4は、高塩素灰、低塩素灰、高カルシウム灰、低カルシウム灰のそれぞれを個別に保管するように構成されており、高塩素灰を保管する塩素灰用第一保管部40と、低塩素灰を保管する塩素灰用第二保管部41と、高カルシウム灰を保管するカルシウム灰用第一保管部42と、低カルシウム灰を保管するカルシウム灰用第二保管部43と、を有している。なお、保管部の数は、必ず4つである必要はなく、取得手段2で取得したバイオマス灰の成分や、分類手段3による分類の仕方等に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
原料調製手段5は、高塩素灰と低塩素灰とから原料を調製する塩素灰用の調製処理と、高カルシウム灰と低カルシウム灰とから原料を調製するカルシウム灰用の調製処理と、を実行可能であり、バイオマス灰の塩素濃度の許容範囲を定める塩素濃度許容値と、バイオマス灰のカルシウム濃度の許容範囲を定めるカルシウム濃度許容値とが設定されている。
【0038】
なお、塩素濃度許容値は塩素濃度基準値と同じ値、カルシウム濃度許容値はカルシウム濃度許容値と同じ値とすることができ、この場合は、塩素灰用第一保管部40に保管されている高塩素灰は塩素濃度が塩素濃度許容値を超えているバイオマス灰となり、塩素灰用第二保管部41に保管されている低塩素灰は塩素濃度が塩素濃度許容値よりも低いバイオマス灰となる。
【0039】
また、カルシウム灰用第一保管部42に保管されている高カルシウム灰はカルシウム濃度がカルシウム濃度許容値を超えているバイオマス灰となり、カルシウム灰用第二保管部43に保管されている低カルシウム灰はカルシウム濃度がカルシウム濃度許容値よりも低いバイオマス灰となる。
【0040】
原料調製手段5は、塩素灰用の調製処理において、低塩素灰を取得し、該低塩素灰をそのまま原料とする処理と、高塩素灰を取得し、該高塩素灰に低塩素灰を混合することで塩素濃度を塩素濃度許容値以下にした混合灰を原料とする処理とを実行可能である。
【0041】
また、原料調製手段5は、カルシウム灰用の調製処理において、低カルシウム灰を取得し、該低カルシウム灰をそのまま原料とする処理と、高カルシウム灰を取得し、該高カルシウム灰に低カルシウム灰を混合することでカルシウム濃度をカルシウム濃度許容値以下にした混合灰を原料とする処理とを実行可能である。
【0042】
製品化手段6は、原料そのものを製品とするバイパス処理と、原料に対して原料とは別の材料を混合したものを製品とする混合処理と、原料に対して磁性体を除去したものを製品とする磁選処理と、を選択的に実行可能であり、また、本実施形態の製品化手段6では、混合処理又は磁選処理と混合処理とを行った製品と、水とを混錬したものを製品とする二次加工処理も選択的に実行可能である。なお、二次加工処理により製品として得られるのは、コンクリートや、漁礁等の硬化体を作成するための材料である。なお、製品化手段6で実行する処理の選択は、製品化システム1内で自動的に実行されるようにしてもよいし、ユーザーが実行するようにしてもよい。
【0043】
本実施形態に係る製品化システム1の構成は、以上の通りである。また、本実施形態に係る製品化システム1では、取得手段2でバイオマス灰を取得する取得工程と、該バイオマス灰を分類手段3で塩素濃度の高さに応じて分類する分類工程と、分類工程で分類したバイオマス灰を取得して原料を調製する調製工程とを実行するバイオマス灰の処理方法が行われ、調製工程において、塩素濃度が高いバイオマス灰(塩素濃度許容値を超えているバイオマス灰)を原料にする場合は、かかるバイオマス灰の塩素濃度が原料調製手段5によって抑えられる。
【0044】
そのため、製品化手段6では塩素の濃度が抑えられた原料を製品にすることが可能となり、バイオマス灰を用いて調製した原料の塩素が製品化を行う設備や、製品の品質に悪影響を与えることを抑えることができ、これにより、バイオマス灰特有の成分による扱いにくさを解消できるという優れた効果を奏し得る。
【0045】
なお、製品化システム1のように、調製工程において、分類工程で分類したバイオマス灰のうち、バイオマス灰の塩素濃度の許容範囲を定める塩素濃度許容値を超える高塩素灰を取得した場合、該高塩素灰に低塩素灰を混合することで塩素濃度を塩素濃度許容値以下にした混合灰を原料とする、バイオマス灰の処理方法をとることにより、特有の成分による扱いにくさを抑えたバイオマス灰を得ることも可能である。
【0046】
また、製品化システム1で製造した製品においても、塩素の濃度が抑えられるため、例えば、製品としてコンクリートを製造した場合は、コンクリートに含まれる塩素の濃度も抑えられ、これにより、コンクリート中の鉄筋に錆びが生じて膨張し、コンクリート破壊が発生するというような問題が起こりにくくなる。このように、製品化システム1で製造した製品についても、バイオマス灰特有の成分による扱いにくさが解消される。
【0047】
また、取得手段2で取得したバイオマス灰は、分類手段3によりカルシウム濃度の高さに応じても分類され、さらに、カルシウム濃度が高いバイオマス灰(カルシウム濃度許容値を超えているバイオマス灰)を原料にする場合は、原料調製手段5によりカルシウム濃度が抑えられる。
【0048】
そのため、製品化手段6ではカルシウム濃度が抑えられた原料を製品にすることも可能であり、バイオマス灰を用いて調製した原料に含まれるカルシウムが製品化を行う設備や、製品の品質に悪影響を与えることもできる。そのため、保管部(より具体的には、カルシウム灰用第一保管部42)から取り出したバイオマス灰が固結しにくくなる。
【0049】
また、取得手段2で取得したバイオマス灰のカルシウム濃度が3.5%以上である場合は、該バイオマス灰に固結防止剤が散布されるため、時間の経過によりバイオマス灰が水分を吸収して固結してしまうことが防止され、これにより、バイオマス灰をより扱いやすくすることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、塩素濃度の高さと、カルシウム濃度の高さとに応じて分類したバイオマス灰を別々に保管しているため、原料にするバイオマス灰の成分を調整し易くなっている。
【0051】
製品化手段6は、それぞれがバイオマス灰を別種の製品にするバイパス処理、混合処理、磁選処理、二次加工処理を選択的に実行可能であるが、何れの処理を実行した場合であっても、塩素濃度や、カルシウム濃度が抑えられた原料を使用することができるため、これらの成分による悪影響が抑えられる。
【0052】
なお、混合処理でスラグ骨材、フライアッシュ、セメント、混和剤の少なくとも何れか一つを混合用原料として原料に混合する場合においても、塩素濃度が抑えられている原料を使用することができるため、原料に含まれる塩素による悪影響を抑えることができる。
【0053】
また、二次加工処理で得た製品を硬化させて硬化体にした場合においては、塩素濃度やカルシウム濃度が硬化体の品質に悪影響を与えてしまうことも抑えられる。
【0054】
なお、本発明に係るバイオマス灰の製品化システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0055】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、塩素濃度別分類処理では、高塩素灰や低塩素灰を塩素濃度に応じてさらに細かく分類してもよい。
【0056】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、カルシウム濃度別分類処理では、高カルシウム灰や低カルシウム灰をカルシウム濃度に応じてさらに細かく分類してもよい。
【0057】
上記実施形態において特に言及しなかったが、塩素濃度別分類処理では、カルシウムの濃度がカルシウム濃度基準値以下のバイオマス灰を対象として分類を行い、カルシウム濃度別分類処理では、塩素の濃度が塩素濃度基準値以下のバイオマス灰を対象として分類を行うようになっていることが好ましい。この場合においては、分類手段3が塩素の濃度が塩素濃度基準値を超え、且つカルシウムの濃度もカルシウム濃度基準値を超えているバイオマス灰を分類し、さらに、保管手段4がかかるバイオマス灰を保管する保管部を有するように構成されていることが好ましい。
【0058】
上記実施形態において特に言及しなかったが、上記実施形態の製品化システム1で製造した製品を出荷する出荷手段を付加することにより、出荷システムを構成することも可能である。なお、出荷手段とは、例えば、製品の梱包や、梱包された状態の製品の搬送等を行うように構成されたものである。
【0059】
上記実施形態において、製品化手段6は、バイパス処理と、混合処理と、磁選処理の3つの処理を実行できるように構成されていたが、この構成に限定されない。製品化手段6は、バイパス処理と、混合処理と、磁選処理の3つの処理のうちの少なくとも何れか1つの処理を実行できるように構成されていればよく、例えば、バイパス処理のみを実行できるように構成されていたり、バイパス処理と混合処理とを実行できるように構成されていたりしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…製品化システム、2…取得手段、3…分類手段、4…保管手段、5…原料調製手段、6…製品化手段、40…塩素灰用第一保管部、41…塩素灰用第二保管部、42…カルシウム灰用第一保管部、43…カルシウム灰用第二保管部、G…発電所
図1
図2
図3