(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】単胃家畜用飼料
(51)【国際特許分類】
A23K 50/75 20160101AFI20240412BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20240412BHJP
A23K 20/189 20160101ALI20240412BHJP
【FI】
A23K50/75
A23K10/30
A23K20/189
(21)【出願番号】P 2020032957
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】浜本 慎平
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-57577(JP,A)
【文献】特開2001-299236(JP,A)
【文献】特開2007-325580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0123669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単胃家畜の糞重量を減少させるための飼料であって、
精白米および/または玄米を13重量%以上含有し、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ
のいずれもが配合された、上記飼料。
【請求項2】
鳥類の糞重量を減少させるための飼料である、請求項1に記載の飼料。
【請求項3】
採卵用成鶏の糞重量を減少させるための飼料である、請求項1または2に記載の飼料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の飼料を単胃家畜に給餌することを含む、単胃家畜の飼育方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の飼料を単胃家畜に給餌することを含む、単胃家畜の糞重量を減少させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単胃家畜用の飼料に関する。特に本発明は、軟便または水様便を防止した上で糞重量を減少できる飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業界において、家畜排泄物の適切な処理が求められており、多大な労力とコストが費やされている。
例えば、飼料加工の面からは、飼料をペレット加工したり、エキスパンダー加工したりすることによって排泄物量を低減することが提案されている。また、飼料配合の面からも、家畜の発育を維持しながら排泄物を減らす技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定量のβ-グルカナーゼとキシラナーゼとペクチナーゼを配合した飼料を豚に給餌することによって豚の糞排泄量を低減することが提案されている。また、特許文献2には、ダッタンソバを含有する飼料によって家畜や家禽の排泄物量を低減することが提案されている。さらに、特許文献3には、蛋白質含量が41%以上であり粗繊維が8%以下の菜種粕を0.1~30%配合した飼料によって家畜の排泄物量を低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-299236号公報
【文献】特開2006-174790号公報
【文献】国際公開2009/157112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、飼料配合の面から家畜の糞を減らす技術が提案されてきたが、特殊な飼料原料が必要だったり、その効果が十分でなかったりした。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、軟便または水様便を防止した上で糞重量を減少できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、飼料に一定以上の米を配合した上で、さらに、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼからなる群より選択される1以上の酵素を飼料に添加することによって、糞の水分を大きく変化させることなく、単胃家畜の糞重量を減少させることに成功した。
【0007】
これに限定されるものではないが、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 単胃家畜の糞重量を減少させるための飼料であって、13重量%以上の米を含有し、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼからなる群より選択される1以上の酵素が配合された、上記飼料。
[2] キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼのいずれもが配合された、[1]に記載の飼料。
[3] 鳥類用である、[1]または[2]に記載の飼料。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の飼料を単胃家畜に給餌することを含む、家畜の飼育方法。
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の飼料を単胃家畜に給餌することを含む、家畜の糞重量を減少させる方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の飼料によれば、単胃家畜の発育を維持し、軟便または水様便を防止した上で、糞重量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、単胃家畜用の飼料に関しており、本発明によれば、軟便または水様便を防止した上で糞重量を減少できる。本発明に係る飼料は、13重量%以上の米を含有し、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼからなる群より選択される1以上の酵素を含有する。米の含有量が13重量%未満であれば、満足する糞重量の減少はみられず、米の含有量が13重量%以上であっても、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼからなる群より選択される1以上の酵素を含有しなければ、糞重量は減少するが軟便または水様便になる場合がある。軟便または水様便は、糞処理におけるハンドリングが悪く、また衛生状態が悪くなる。
【0011】
本発明に係る単胃家畜は、胃を一つ持つ家畜を意味する。本発明に係る家畜は、その生産物(乳、肉、卵、毛、皮、毛皮など)または能力(力、感覚など)を人が利用するために馴致・飼育している動物をいう。単胃家畜としては、これに限定されるものではないが、例えば、豚、鳥類、馬、犬などが挙げられる。飼料の消化吸収は、単胃家畜では小腸において、反芻家畜では胃において、盛んに行われている。単胃家畜の小腸における消化吸収には、腸液、膵液、小腸の微絨毛に存在する膜酵素などが関与し、単胃家畜間で大きな差は見られない。本発明に係る単胃家畜は、好ましくは豚、鳥類であり、より好ましくは鳥類である。鳥類は、鶏、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウなどである。より好ましくは鶏であり、さらに好ましくは成鶏である。本発明に係る成鶏は、産卵開始後の鶏で種鶏以外のものをいう。
【0012】
本発明に係る飼料は、穀類として米を含有する。本発明の飼料に配合する米の種類、形態などは特に制限されず、精白米や玄米、モミ米などをそのままで使用したり、混合したり、適宜加工処理して使用することができる。米を加工処理する場合、例えば、加熱処理、粉砕処理などの物理的処理;酸処理、アルカリ処理など化学的処理;酵素処理、発酵処理など生物的処理を単独または複数組み合わせた処理を行うことができる。好ましくは、精白米及び/または玄米をそのままで、もしくは物理的処理して使用し、より好ましくは、精白米及び/または玄米をそのままで、もしくは粉砕処理して使用する。本発明において飼料に対する米の配合量は13重量%以上であり、好ましくは15重量%以上であり、19重量%以上としてもよい。米の配合量の上限は特に限定されないが、70重量%以下が好ましく、55重量%以下がより好ましく、40重量%以下としてもよい。米の粗蛋白質量や粗脂肪量は特に制限されないが、粗蛋白質量は、例えば、5.0~9.3重量%や5.6~8.7重量%、6.2~8.1重量%とすることができ、粗脂肪量は、例えば、4.2重量%以下や0.1~3.7重量%や0.3~3.2重量%とすることができる。また、米の粗繊維量も特に制限されないが、例えば、1.6重量%以下や1.3重量%以下、0.1~1.0重量%とすることができる。
【0013】
本発明に係る飼料は、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼからなる群より選択される1以上の酵素が配合され、好ましい態様において、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼから選択される2以上が配合され、より好ましい態様において、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼすべてが配合される。キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼすべてを配合する場合、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼすべてを含む酵素製剤を配合してもよい。キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼすべてを含む酵素製剤としては、例えばDanisco社のアビザイム1500、アビザイム1502などが挙げられる。酵素製剤の配合量は特に限定されないが、例えば、1~5000ppmが好ましく、10~2500ppmがより好ましく、50~1000ppmがさらに好ましい。
【0014】
キシラナーゼは、キシランをキシロースに分解する酵素であり、植物の細胞壁の主要成分であるヘミセルロースを分解する。本発明においては、公知のキシラナーゼを適宜使用することができる。好ましい態様において、飼料1kg当たりのキシラナーゼ活性は、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令に記載されるキシラン糖化力試験法により、0.3~3000キシラン糖化力単位配合されてもよく、より好ましくは3~1500キシラン糖化力単位であり、さらに好ましくは15~600キシラン糖化力単位である。
【0015】
プロテアーゼは、ペプチド結合を加水分解する酵素であり、本発明においては、公知のプロテアーゼを適宜使用することができ、好ましくは、アルカリ性に至適pHをもつアルカリ性プロテアーゼである。好ましい態様において、飼料1kg当たりのプロテアーゼ活性は、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令に記載されるたん白消化力試験法により、4~30000たん白消化力単位配合されてもよく、より好ましくは40~15000たん白消化力単位であり、さらに好ましくは200~6000たん白消化力単位である。
【0016】
アミラーゼは、グリコシド結合を加水分解し、でんぷん中のアミロースやアミロペクチンを単糖類であるブドウ糖や二糖類であるマルトース及びオリゴ糖に分解する酵素である。本発明においては、公知のアミラーゼを適宜使用することができる。好ましい態様において、飼料1kg当たりのアミラーゼ活性は、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令に記載されるでんぷん糖化力試験法により、0.2~2500でんぷん糖化力単位配合されてもよく、より好ましくは2~1200でんぷん糖化力単位であり、さらに好ましくは10~500でんぷん糖化力単位である。
【0017】
本発明に係る飼料は、本発明の効果を阻害しない限り、上記した原料の他に一般的に飼料に使用されている任意の材料を使用することができる。例えば、トウモロコシ、マイロ、大麦、小麦、ライ麦などの米以外の穀類;フスマ、ヌカなどの糟糠類;大豆粕、ナタネ粕などの植物性油粕類;魚粉、肉骨粉などの動物性飼料;オリゴ糖類;動物性油脂、植物性油脂などの油脂;ビタミンB1及びビタミンEなどの各種ビタミン類;食塩、ケイ酸、炭酸カルシウム、第3リン酸カルシウムなどのミネラル類;アミノ酸類;有機酸類などを配合することができる。
【0018】
本発明に係る飼料において、配合する米以外の穀類は外皮を有していても有していなくてもよい。また、米以外の穀類の外皮のみを別途配合することもでき、例えば、フスマ(例えば、小麦フスマ、大麦フスマ、オーツ麦フスマ、ライ麦フスマなど)、とうもろこし種皮、豆皮(例えば大豆皮、小豆皮など)が好適な例として挙げられる。
【0019】
本発明に係る飼料の形態は、特に制限されず、給餌する対象の種類、飼育期間などに合わせて適宜選択することができる。例えば、マッシュ飼料、ペレット飼料、クランブル飼料、エキスパンダー飼料、フレーク飼料などをそのまま、もしくはそれらを混合したものを選択してもよい。マッシュ飼料は、穀類原料を粉砕したものに粉状の原料や液体原料を混ぜ合わせたもの、ペレット飼料は、マッシュ飼料に水蒸気等により水分を加えて加熱調湿し加圧成形したもの、クランブル飼料は、ペレット飼料を荒砕きしたもの、エキスパンダー飼料は、水蒸気を加え高い圧力で押出造粒したもの、フレーク飼料は、穀類原料に水蒸気等により水分を加えて加熱調湿しロールでフレーク状にしたものである。
【0020】
一つの態様において、本発明は飼料の製造方法である。本発明に係る飼料は、米を含む穀類、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼからなる群より選択される1以上の酵素を少なくとも含む原料を混合することによって製造することができる。
【0021】
原料を混合する際は、公知の手段を用いればよく、例えば、一軸又は二軸ミキサー、ボールカッター、サイレントカッターなどの裁断混合機、粉砕混合機などを用いることができる。各原料はすべて同時に混合してもよく、一部の材料をあらかじめ混合した後に残りの材料を混合するなど、複数回に分けて混合してもよい。各原料は、混合前に適宜粘度を調整したり、粉砕・解砕等の前処理を行ったりすることも可能である。
【0022】
本発明においては、原料を混合した後などに、適当な水分まで乾燥してもよい。乾燥は、公知の手段を用いればよく、例えば、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの方法で行うことができる。水分含有量1~15重量%程度に乾燥することが好ましく、水分含有量9~15重量%にすることがより好ましい。水分含有量が低いと粉舞いしやすくなるため作業性が悪くなり、水分含有量が高いと腐敗しやすく保存性に問題が生じる。飼料の水分含有量は、「五訂 日本食品標準成分表分析マニュアル」(I-1.常圧加熱乾燥法、I-1-1.直接法)に基づいて測定することが可能である。
【0023】
一つの態様において本発明は、上述した飼料を給餌することを含む、単胃家畜の飼育方法であり、さらに本発明は、上述した飼料を給餌することを含む、単胃家畜の糞重量を減少させる方法である。本発明においては飼育の全期間にわたって本発明の飼料のみを給餌することもできるが、一定の期間のみ本発明の飼料を給餌することが可能であり、他の飼料と併用してもよい。
【実施例】
【0024】
以下、具体例を挙げながら本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0025】
原料
以下の実験においては、下記の原料を使用した。なお、「日本標準飼料成分表(2009年版)」(中央畜産会)の飼料番号、ならびに粗蛋白質及び粗脂肪、粗繊維を平均値±標準偏差で記載した。
・トウモロコシ(飼料番号5501、粗蛋白質:7.6±0.3重量%、粗脂肪:3.8±0.4重量%、粗繊維1.7±0.2重量%)
・玄米(飼料番号5601、粗蛋白質:7.5±0.6重量%、粗脂肪:2.7±0.5重量%、粗繊維0.7±0.3重量%)
・精白米(飼料番号5611、粗蛋白質:6.8±0.6重量%、粗脂肪:0.5±0.2重量%、粗繊維0.2±0.1重量%)
・大豆粕(飼料番号7451、粗蛋白質:45.0±1.4重量%、粗脂肪:1.9±0.6重量%、粗繊維5.3±0.6重量%)
・ナタネ粕(飼料番号7501、粗蛋白質:37.3±1.4重量%、粗脂肪:2.9±0.7重量%、粗繊維9.4±0.8重量%)
・コーングルテンミール(飼料番号7771、粗蛋白質:63.7±3.0重量%、粗脂肪:2.5±1.8重量%、粗繊維0.8±0.6重量%)
・トウモロコシジスチラーズグレインソリュブル(DDGS;飼料番号6588、粗蛋白質:26.2±1.6重量%、粗脂肪:11.0±1.3重量%、粗繊維7.0±0.7重量%)
・小麦フスマ(飼料番号6151、粗蛋白質:15.7±0.9重量%、粗脂肪:4.3±0.5重量%、粗繊維9.5±0.6重量%)
・コーングルテンフィード(飼料番号6331、粗蛋白質:20.9±1.5重量%、粗脂肪:3.6±1.2重量%、粗繊維7.5±1.3重量%)
・動物性油脂(飼料番号8950、粗脂肪:99.0重量%)
実験1
1-1.飼料の調製
対照飼料1を、「日本飼養標準 家禽(2011年版)」(中央畜産会)に記載される卵用鶏の産卵期(日産卵量56gの場合)の要求量を満たすように、表1-1に示す配合に基づいて調製した。原料の成分値は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載の数値を利用した。その後、対照飼料1と各原料を7:3の比率で混合し、各試験区飼料を調製した。なお、水分含有量は10~13重量%の範囲とした。表1-1に記載のその他の原料には、カルシウム化合物のほか、微量成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸組成を揃えるためのメチオニンなどが含まれる。
【0026】
【0027】
1-2.鳥類への給餌
鳥類として採卵鶏を選択し、調製した対象飼料1及び各試験飼料を下記の条件で給餌した。
(給餌試験条件)
・試験期間:4日間以上の予備試験期間の後、3日間の給餌
・供試鶏:白色レグホーン種(ジュリアライト)
・日齢:給与開始時において約365日齢
・羽数:対象区1及び各試験区について3羽
・給与方法:1羽あたり100g/日の制限給餌(自由飲水)
1-3.糞の分析
各飼料を給餌した3日間、全糞を採取して観察し、重量を測定した。対照飼料1を給餌した試験区における糞重量を100として、各試験区における糞重量を評価した。
【0028】
表1-2および
図1の結果から明らかなように、対照飼料1に米を配合した飼料を給餌することによって、糞重量が減少した。なお、糞の性状は、試験区間で大きな差は見られず、対照飼料に米を配合した飼料を給餌することによって、軟便または水様便になることはなかった。
【0029】
【0030】
実験2
2-1.飼料の調製
対照飼料2を、「日本飼養標準 家禽(2011年版)」に記載される卵用鶏の産卵期(日産卵量56gの場合)の要求量を満たすように、表2-1に示す配合に基づいて調製した。原料の成分値は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載の数値を利用した。また、試験飼料2を、「日本飼養標準 家禽(2011年版)」に記載される卵用鶏の産卵期(日産卵量56gの場合)の要求量を満たし、かつ、対照飼料2の代謝エネルギー2,800kcal/kg及びメチオニン0.30重量%、リジン0.65重量%、カルシウム3.6重量%、有効リン0.22重量%と同等になるように、表2-1に示す配合に基づいて調製した。米の含有量は23重量部とした。なお、水分含有量は10~13重量%の範囲とした。表2-1に記載のその他の原料には、カルシウム化合物のほか、微量成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸組成を揃えるためのメチオニンなどが含まれる。なお、ここでは、大豆粕、ナタネ粕、コーングルテンミールを併せて植物性ミールと称する。
【0031】
【0032】
2-2.鳥類への給餌
鳥類として採卵鶏を選択し、調製した対象飼料2及び試験飼料2を下記の条件で給餌した。
(給餌試験条件)
・試験期間:3ヶ月間
・供試鶏:白色レグホーン種(ジュリアライト)
・日齢:給与開始時において約620日齢
・羽数:対象区2及び試験区2について約25000羽
・飼育環境:千葉県内の生産農場におけるウインドウレス鶏舎(直立8段ケージ)
・給与方法:不断給餌(自由飲水)
2-3.糞の分析
2日に1回の除糞時に重量計を用いて全糞の重量を測定した。
【0033】
鶏1羽あたりの1日の糞重量(g)を表2-2に示すが、対照飼料2と比較し、玄米を23重量部配合した試験飼料2を給餌することによって、糞重量が減少した。ところが、試験飼料2を給餌した試験区では、糞の形状が崩れており、軟便または水様便のような様相であった。このことは、鶏糞処理におけるハンドリングが悪くなることや、鶏舎内の衛生状態が悪くなることから解決すべき課題である。
【0034】
【0035】
実験3
3-1.飼料の調製
試験飼料3-1を、「日本飼養標準 家禽(2011年版)」に記載される卵用鶏の産卵期(日産卵量56gの場合)の要求量を満たすように、表3-1に示す配合に基づいて調製した。原料の成分値は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載の数値を利用した。その後、試験飼料3-1に対して下記のように酵素製剤を添加して、試験飼料3-2~試験飼料3-4の飼料を調製した。すなわち、試験飼料3-1は酵素無添加であり、試験飼料3-2はセルラーゼを含む酵素製剤(ロノザイムVP、DSM社、60繊維糖化力単位/kg)を0.02重量部添加、試験飼料3-3はβ-グルカナーゼを含む酵素製剤(ロノザイムマルチグレイン、DSM社、18000β-グルカン糖化力単位/kg)を0.01重量部添加、対照飼料3-4はキシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤(アビザイム1502、Danisco社、キシラナーゼ:600000キシラン糖化力単位/kg、アルカリ性プロテアーゼ:6000000たん白質消化力単位/kg、アミラーゼ:450000でんぷん糖化力単位/kg)を0.035重量部添加した。各酵素活性は、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令に記載される試験法により測定し、セルラーゼは繊維糖化力単位、β-グルカナーゼはβ-グルカン糖化力単位、キシラナーゼはキシラン糖化力単位、アルカリ性プロテアーゼはたん白質消化力単位、アミラーゼはでんぷん糖化力単位で表した。なお、水分含有量は10~13重量%の範囲とした。
【0036】
また、表3-1に記載のその他の原料には、カルシウム化合物のほか、微量成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸組成を揃えるためのメチオニンなどが含まれる。なお、ここでは、大豆粕、ナタネ粕、コーングルテンミールを併せて植物性ミールと称する。
【0037】
【0038】
3-2.鳥類への給餌
鳥類として採卵鶏を選択し、調製した各試験飼料を下記の条件で給餌した。
(給餌試験条件)
・試験期間:4日間以上の予備試験期間の後、3日間の給餌
・供試鶏:白色レグホーン種(ジュリアライト)
・日齢:給与開始時において約494日齢
・羽数:各試験区について3羽
・給与方法:1羽あたり100g/日の制限給餌
3-3.排泄物の分析
各試験飼料を給餌した3日間、全糞を採取して観察し、重量と水分を測定した。表3-2に結果を示す。米を16重量部含む試験飼料3-1に比べ、さらにキシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤を添加した試験飼料3-4を給餌することによって、糞重量が優位に減少した。実験1及び2の結果から、米を16重量部含む試験飼料3-1を給餌することでも、糞重量は減少していると推測できるが、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤を添加することで、糞重量を減少させる効果が高まることがわかった。また、糞の性状については、試験区間で大きな差は見られず、軟便または水様便になることはなかった。糞の水分も、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤を添加することによる変化は見られなかった。実験2において、飼料中の米の含有量を高めることで、軟便または水様便になることが示唆されたが、実験3の結果から、飼料中の米の含有量が16重量部以下であれば、糞の性状に問題はないことがわかった。
【0039】
【0040】
実験4
4-1.飼料の調製
対照飼料4を、「日本飼養標準 家禽(2011年版)」に記載される卵用鶏の産卵期(日産卵量56gの場合)の要求量を満たすように、表2-1に示す配合に基づいて調製した。原料の成分値は、「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載の数値を利用した。また、試験飼料4を、「日本飼養標準 家禽(2011年版)」に記載される卵用鶏の産卵期(日産卵量56gの場合)の要求量を満たし、かつ、対照飼料4の代謝エネルギー2,850kcal/kg及びメチオニン0.34重量%、リジン0.76重量%、カルシウム3.6重量%、有効リン0.23重量%と同等になるように、表4-1に示す配合に基づいて調製した。米の含有量は23重量部、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤(アビザイム1502)は0.035重量部とした。なお、水分含有量は10~13重量%の範囲とした。また、表4-1に記載のその他の原料には、カルシウム化合物のほか、微量成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸組成を揃えるためのメチオニンなどが含まれる。なお、ここでは、大豆粕、ナタネ粕、コーングルテンミールを併せて植物性ミールと称する。
【0041】
【0042】
4-2.鳥類への給餌
鳥類として採卵鶏を選択し、調製した対象飼料4及び試験飼料4を下記の条件で給餌した。
(給餌試験条件)
・試験期間:2ヶ月間
・供試鶏:白色レグホーン種(ジュリアライト)
・羽数:対象区4は約23万羽(約330日齢)、試験区4は2.7万羽(約270日齢)
・飼育環境:千葉県内の生産農場におけるウインドウレス鶏舎(直立8段ケージ)
・給与方法:不断給餌(自由飲水)
4-3.排泄物の分析
2日に1回の除糞時に重量計を用いて全糞の重量を測定した。
【0043】
鶏1羽あたりの1日の糞重量(g)を表4-2に示すが、対照飼料2と比較し、米を26重量部、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤を0.035重量部配合した試験飼料4を給餌することによって、糞重量が明らかに減少した。また、糞の性状については、対照飼料2と比較し、試験飼料4を給餌することによって大きな差は見られず、軟便または水様便になることはなかった。糞の水分も変化は見られなかった。
【0044】
このことから、飼料に一定以上の米を配合した上で、さらに、キシラナーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含む酵素製剤を飼料に添加することによって、糞の性状に問題なく、糞重量を減少させることができた。
【0045】