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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】リフトオフ方法及びレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240412BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20240412BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240412BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240412BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240412BHJP
【FI】
H01L21/02 C
B23K26/57
H01L21/304 611
H01L21/78 B
H01L33/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020105642
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197539
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 将
(72)【発明者】
【氏名】三村 純也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049934(JP,A)
【文献】特開2013-021225(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101882578(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
B23K 26/57
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を移設基板に移し替えるリフトオフ方法であって、
光デバイスウエーハの光デバイス層の表面に接合材を介して移設基板を接合して複合基板を形成する移設基板接合ステップと、
該複合基板を構成する光デバイスウエーハのエピタキシー基板の裏面側からエピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファー層に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザービームを照射し、バッファー層を破壊するバッファー層破壊ステップと、
該バッファー層破壊ステップを実施した後に、エピタキシー基板を光デバイス層から剥離して光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層移設ステップと、を含み、
該バッファー層破壊ステップでは、
外径と、内径と、を指定したリング状の領域毎にレーザービームの照射条件を変更して、該光デバイスウエーハに対してレーザービームを照射することを特徴とする、リフトオフ方法。
【請求項2】
エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合材を介して移設基板に接合した複合基板におけるバッファー層にレーザービームを照射してバッファー層を破壊するレーザー加工装置であって、
複合基板の移設基板側を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された複合基板のバッファー層にレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を有し、
該制御ユニットは、
内径と、外径と、を指定することでレーザービームを照射する領域を複数のリング状の領域を有するように設定し、複数のリング状の領域毎に異なる該レーザービームの照射条件を設定する照射領域設定部を有することを特徴とする、レーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトオフ方法及びレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合材を介して移設基板に接合し、光デバイスウエーハと移設基板とが接合材により接合されて構成された複合基板のバッファー層にレーザービームを照射して破壊し、光デバイス層をエピタキシー基板から移設基板に移設するリフトオフ方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-229386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された複合基板をレーザービームの照射で分離するリフトオフ方法において、複合基板は、光デバイスウエーハと移設基板等との貼り合わせに起因する反りを有している。
【0005】
このような複合基板に対してレーザービームを照射する場合、外周部と中央部とでレーザービームの照射のされ方(集光状態)が異なるため、外周部のみが先に剥離して中央部が剥離しない、またはその逆の現象が起きてしまい、所望の加工結果が得られないという問題がある。
【0006】
さらに、剥離していない領域の剥離を促進するために、複合基板全体に対してレーザービームを追加して照射すると、加工時間が長くなる上、既に剥離している箇所にダメージを与えてしまい品質低下を招くという問題が存在する。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の加工結果を得ることを可能としながらも品質低下を抑制することができるリフトオフ方法及びレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のリフトオフ方法は、エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を移設基板に移し替えるリフトオフ方法であって、光デバイスウエーハの光デバイス層の表面に接合材を介して移設基板を接合して複合基板を形成する移設基板接合ステップと、該複合基板を構成する光デバイスウエーハのエピタキシー基板の裏面側からエピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファー層に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザービームを照射し、バッファー層を破壊するバッファー層破壊ステップと、該バッファー層破壊ステップを実施した後に、エピタキシー基板を光デバイス層から剥離して光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層移設ステップと、を含み、該バッファー層破壊ステップでは、外径と、内径と、を指定したリング状の領域毎にレーザービームの照射条件を変更して、該光デバイスウエーハに対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0009】
本発明のレーザー加工装置は、エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合材を介して移設基板に接合した複合基板におけるバッファー層にレーザービームを照射してバッファー層を破壊するレーザー加工装置であって、複合基板の移設基板側を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された複合基板のバッファー層にレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を有し、該制御ユニットは、内径と、外径と、を指定することでレーザービームを照射する領域を複数のリング状の領域を有するように設定し、複数のリング状の領域毎に異なる該レーザービームの照射条件を設定する照射領域設定部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、所望の加工結果を得ることを可能としながらも品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例の要部を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されたレーザー加工装置の加工対象の複合基板を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示された複合基板の要部の断面図である。
図4図4は、図2に示された複合基板を構成する光デバイスウエーハの斜視図である。
図5図5は、図4に示された光デバイスウエーハの要部の断面図である。
図6図6は、実施形態1に係るリフトオフ方法の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、図5に示されたリフトオフ方法の移設基板接合ステップにおいて、光デバイスウエーハの光デバイス層と移設基板とを対向させた状態の斜視図である。
図8図8は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップを実施するレーザー加工装置の照射領域設定部に設定されたバッファー層のリング状の領域を示す平面図である。
図9図9は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップを模式的に示す側面図である。
図10図10は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのレーザービームの集光点の軌跡を示す平面図である。
図11図11は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのバッファー層の第1領域にレーザービームを照射した状態を示す平面図である。
図12図12は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのバッファー層の第2領域にレーザービームを照射した状態を示す平面図である。
図13図13は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのバッファー層の第3領域にレーザービームを照射した状態を示す平面図である。
図14図14は、図6に示されたリフトオフ方法の光デバイス層移設ステップを模式的に示す斜視図である。
図15図15は、実施形態2に係るリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップを実施するレーザー加工装置の照射領域設定部に設定されたリング状の領域を示す平面図である。
図16図16は、実施形態3に係るリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップの全体照射ステップ後の平面図である。
図17図17は、実施形態3に係るリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップの領域照射ステップ後の平面図である。
図18図18は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例1に係るリフトオフ方法の流れを示すフローチャートである。
図19図19は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例2に係るリフトオフ方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
まず、本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置を説明する。図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例の要部を示す斜視図である。実施形態1に係る図1に示すレーザー加工装置100は、図2及び図3に示された複合基板1のバッファー層6を破壊する装置である。
【0014】
(複合基板)
複合基板1を説明する。図2は、図1に示されたレーザー加工装置の加工対象の複合基板を示す斜視図である。図3は、図2に示された複合基板の要部の断面図である。図4は、図2に示された複合基板を構成する光デバイスウエーハの斜視図である。図5は、図4に示された光デバイスウエーハの要部の断面図である。なお、図4は、実施形態1の説明のため、光デバイス9を光デバイスウエーハ2に対して実際よりも大きく模式的に示している。
【0015】
複合基板1は、図2及び図3に示すように、光デバイスウエーハ2と、移設基板3とを備える。光デバイスウエーハ2は、図2図3図4及び図5に示すように、エピタキシー基板4を含む。光デバイスウエーハ2は、エピタキシー基板4の表面5にバッファー層6を介して光デバイス層7が積層されている。
【0016】
エピタキシー基板4は、実施形態1において、外径が100mm程度で厚みが1.2mm~1.5mm程度の円板形状を有するサファイアからなる基板である。光デバイス層7は、実施形態1において、図5に示すように、エピタキシー基板4の表面5にエピタキシャル成長法によって合計6μm程度の厚さで形成されるn型窒化ガリウム半導体層7-1およびp型窒化ガリウム半導体層7-2を含む。光デバイス層7は、例えば、LEDとして使用されるものである。バッファー層6は、実施形態1において、エピタキシー基板4に光デバイス層7を積層する際に、エピタキシー基板4の表面5と光デバイス層7のp型窒化ガリウム半導体層7-2との間に形成される厚みが1μm程度の窒化ガリウム(GaN)から構成された層である。
【0017】
光デバイス層7は、実施形態1において、図4に示すように、格子状に交差した複数のストリート8によって区画された複数の領域に光デバイス9を形成している。光デバイス9同士の間隔、即ちストリート8の幅は、実施形態1において、5μm程度である。なお、エピタキシー基板4は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ウエーハであってもよい。
【0018】
移設基板3は、外径がエピタキシー基板4の外径と等しい円板状に形成されている。移設基板3は、実施形態1において、厚みがエピタキシー基板4と同程度であり、シリコンから構成されるが、本発明では、シリコンに限定されずに、例えば、銅合金、モリブデン又はガラスなどで構成されても良い。
【0019】
移設基板3は、一方の面3-1に接着剤が接合されて接合材10が積層される。接合材10を構成する接着剤は、有機化合物を含んで構成されるもの、例えば、粘着テープに使用される糊が好適なものとして用いられる。接着剤は、加熱されることで軟化して粘性が低下し、さらに加熱するか、または紫外線を照射することで、硬化反応等の化学反応が起きて硬化して粘性がさらに低下する性質を有しても良い。また、接合材10は、金、白金、クロム、インジウム、又はパラジウムなどの金属で構成されても良い。
【0020】
複合基板1は、移設基板3の一方の面3-1に積層された接合材10が光デバイス9の光デバイス層7に接合されて構成される。即ち、複合基板1は、光デバイスウエーハ2の光デバイス層7を接合材10を介して移設基板3に接合して構成されている。
【0021】
(レーザー加工装置)
レーザー加工装置100は、複合基板1におけるバッファー層6にレーザービーム121を照射して、バッファー層6を破壊する装置である。レーザー加工装置100は、図1に示すように、複合基板1の移設基板3側を保持する保持面111を備えたチャックテーブル110と、レーザービーム照射ユニット120と、図示しない移動ユニットと、撮像ユニット130と、制御ユニット140とを有する。
【0022】
チャックテーブル110は、複合基板1を保持面111で保持する。保持面111は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル110は、保持面111上に載置された複合基板1を吸引保持する。実施形態1では、保持面111は、水平方向と平行な平面である。
【0023】
また、チャックテーブル110は、移動ユニットの回転移動ユニットにより保持面111に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。チャックテーブル110は、回転移動ユニットとともに、移動ユニットのX軸移動ユニットにより水平方向と平行なX軸方向に移動されかつY軸移動ユニットにより水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。
【0024】
レーザービーム照射ユニット120は、チャックテーブル110に保持された複合基板1のバッファー層6に対してパルス状のレーザービーム121を照射するユニットである。実施形態1では、レーザービーム照射ユニット120は、複合基板1のエピタキシー基板4に対しては透過性を有し、バッファー層6に対しては吸収性を有する波長のパルス状のレーザービーム121を照射する。レーザービーム照射ユニット120の一部は、移動ユニットのZ軸移動ユニットによりZ軸方向に移動自在に支持されている。
【0025】
レーザービーム照射ユニット120は、エピタキシー基板4に対して透過性を有しかつバッファー層6に対して吸収性を有する波長のパルス状のレーザービーム121を発振するレーザービーム発振手段122(図9に示す)と、レーザービーム発振手段122から発振されたレーザービーム121の集光点123をバッファー層6に位置付けて、チャックテーブル110の保持面111に保持した複合基板1にレーザービーム121を照射する集光レンズ124と、レーザービーム発振手段122と集光レンズ124との間のレーザービーム121の光路上に設けられたミラー125とを含む。
【0026】
集光レンズ124は、チャックテーブル110の保持面111とZ軸方向に対向する位置に配置され、レーザービーム発振手段122から発振されたレーザービーム121を透過して、レーザービーム121を集光点211に集光させる。
【0027】
ミラー125は、レーザービーム121を反射するものであって、実施形態1では、ガルバノミラー等で構成されレーザービーム121の反射角度を調整可能とされる。ミラー125は、レーザービーム121がバッファー層6の水平方向の任意の位置で集光レンズ124により集光されるように、レーザービーム121を走査可能である。実施形態1では、平面視において、ミラー125は、レーザービーム121の集光点123がエピタキシー基板4の最外周から中心に向けてスパイラル状の軌跡となるように、レーザービーム121を走査する。これにより、レーザービーム照射ユニット120は、バッファー層13の全面にレーザービーム121を照射する。
【0028】
移動ユニットは、レーザービーム照射ユニット120とチャックテーブル110とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、保持面111と平行な方向である。移動ユニットは、チャックテーブル110をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニットと、チャックテーブル110をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニットと、レーザービーム照射ユニット120に含まれる集光レンズ124をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニットと、チャックテーブル110をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニットとを備える。
【0029】
また、レーザー加工装置100は、チャックテーブル110のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル110のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザービーム照射ユニット120に含まれる集光レンズ124のZ軸方向の位置を検出するZ軸方向位置検出ユニットとを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット140に出力する。
【0030】
撮像ユニット130は、チャックテーブル110に保持された複合基板1を撮像するものである。撮像ユニット130は、チャックテーブル110に保持された複合基板1を撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備える。実施形態1では、撮像ユニット130は、レーザービーム照射ユニット120の筐体の先端に取り付けられて、レーザービーム照射ユニット120の集光レンズ124とX軸方向に並ぶ位置に配置されている。撮像ユニット130は、複合基板1を撮像して、複合基板1とレーザービーム照射ユニット120との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット140に出力する。
【0031】
制御ユニット140は、レーザー加工装置100の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作をレーザー加工装置100に実施させるものである。なお、制御ユニット140は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット140の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置100を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置100の上述した構成要素に出力する。
【0032】
また、制御ユニット140は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット141と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニット142とが接続されている。入力ユニット142は、表示ユニット141に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0033】
また、制御ユニット140は、照射領域設定部143を有する。照射領域設定部143は、複合基板1のバッファー層のリング状の領域21(図8に例示する)毎に設定された照射条件を記憶するものである。照射領域設定部143は、入力ユニット142などから入力された内径23と、外径22とを受け付けると、内径23と外径22とで定められるバッファー層6のリング状の領域21が設定される。照射領域設定部143は、入力ユニット142などから入力された照射条件と、リング状の領域21の内径23及び外径22とを対応付けて記憶する。なお、実施形態1では、照射条件は、レーザービーム121の出力、インデックス、デフォーカスであるが、これらに限定されない。こうして、照射領域設定部143は、内径23と、外径22とを指定することでレーザービーム121を照射する領域として少なくとも1のリング状の領域21を有するように設定するものである。なお、実施形態1では、照射領域設定部143の機能は、前述した記憶装置により実現される。
【0034】
次に、実施形態1に係るリフトオフ方法を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態1に係るリフトオフ方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係るリフトオフ方法は、光デバイスウエーハ2の光デバイス層7をエピタキシー基板4から移設基板3に移し替える方法である。実施形態1に係るリフトオフ方法は、図6に示すように、移設基板接合ステップ1001と、バッファー層破壊ステップ1002と、光デバイス層移設ステップ1003とを含む。
【0035】
(移設基板接合ステップ)
図7は、図5に示されたリフトオフ方法の移設基板接合ステップにおいて、光デバイスウエーハの光デバイス層と移設基板とを対向させた状態の斜視図である。移設基板接合ステップ1001は、光デバイスウエーハ2の光デバイス層7の表面に接合材10を介して移設基板3を接合して複合基板1を形成するステップである。
【0036】
移設基板接合ステップ1001では、移設基板3の一方の面3-1に接着剤を塗布して、接合材10を形成する。移設基板接合ステップ1001では、図7に示すように、光デバイスウエーハ2の光デバイス層7と、移設基板3の一方の面3-1に形成された接合材10とを対向させて、光デバイスウエーハ2と移設基板3とを互いに近づけ、光デバイス層7に接合材10を接触させる。移設基板接合ステップ1001では、光デバイスウエーハ2と移設基板3とを圧着して、接合材10を介して光デバイス層7の表面に移設基板3を接合して、図2及び図3に示す複合基板1を形成する。
【0037】
(バッファー層破壊ステップ)
図8は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップを実施するレーザー加工装置の照射領域設定部に設定されたバッファー層のリング状の領域を示す平面図である。図9は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップを模式的に示す側面図である。図10は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのレーザービームの集光点の軌跡を示す平面図である。図11は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのバッファー層の第1領域にレーザービームを照射した状態を示す平面図である。図12は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのバッファー層の第2領域にレーザービームを照射した状態を示す平面図である。図13は、図6に示されたリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップのバッファー層の第3領域にレーザービームを照射した状態を示す平面図である。
【0038】
バッファー層破壊ステップ1002は、複合基板1を構成する光デバイスウエーハ2のエピタキシー基板4の表面5の裏側の裏面11側からエピタキシー基板4に対しては透過性を有しバッファー層6に対しては吸収性を有する波長のパルス状のレーザービーム121を照射し、バッファー層6を破壊するステップである。
【0039】
バッファー層破壊ステップ1002では、オペレータが入力ユニット142を操作するなどして加工内容情報を制御ユニット140に入力する。実施形態1において、加工内容情報として、複合基板1のバッファー層6全体に同じ照射条件でレーザービーム121を照射する全体照射ステップと、全体照射ステップ後に、バッファー層6の複数のリング状の領域21に互いに異なる照射条件でレーザービーム121を照射する領域照射ステップを実施する情報が制御ユニット140に入力され、制御ユニット140が入力された情報を受け付けて、照射領域設定部143に記憶する。
【0040】
また、バッファー層破壊ステップ1002では、加工内容情報を設定する際には、全体照射ステップの照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を全体照射ステップと対応付けて照射領域設定部143に記憶する。実施形態1では、全体照射ステップの照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を3μJ(マイクロジュール)以上でかつ10μJ以下とし、インデックスを10μm(マイクロメータ)以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ2.0mm以下とする。
【0041】
また、バッファー層破壊ステップ1002では、加工内容情報を設定する際には、領域照射ステップにおいて照射条件が異なるバッファー層6のリング状の各領域21の情報である外径22と内径23と照射条件とを入力し、制御ユニット140がこれらを受け付けて、受け付けた外径22と内径23とで定められる領域21と照射条件とを対応付けて照射領域設定部143に記憶する。
【0042】
実施形態1では、領域照射ステップの領域21の情報として、図8に示すバッファー層6の外径22(以下、符号22-1で示す)と、バッファー層6の外径22-1よりも小さい第1内径23(内径に相当し、以下、23-1と記す)とが入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に外径22-1と第1内径23-1とで囲まれるリング状の領域21(以下、第1領域21-1と記す)が設定される。実施形態1では、バッファー層6の外径22-1は、例えば、101.6mmであり、第1内径23-1は、例えば、67.8mmである。
【0043】
オペレータが入力ユニット142を操作するなどして領域照射ステップの第1領域21-1の照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を第1領域21-1の外径22-1及び第1内径23-1と対応付けて照射領域設定部143に記憶する。実施形態1では、第1領域21-1の照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を2μJ(マイクロジュール)以上でかつ8μJ以下とし、インデックスを10μm(マイクロメータ)以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ3.0mm以下とする。
【0044】
実施形態1では、領域照射ステップの領域21の情報として、第1内径23-1と等しい第2外径22(外径に相当し、以下、符号22-2で示す)と、第2外径22-2よりも小さい第2内径23(内径に相当し、以下、符号23-2で示す)とが入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に第2外径22-2と第2内径23-2とで囲まれるリング状の領域21(以下、第2領域21-2と記す)が設定される。実施形態1では、第2外径22-2は、例えば、67.8mmであり、第2内径23-2は、33.8mmである。
【0045】
オペレータが入力ユニット142を操作するなどして領域照射ステップの第2領域21-2の照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を第2領域21-2の第2外径22-2及び第2内径23-2と対応付けて照射領域設定部143に記憶する。実施形態1では、第2領域21-2の照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を2μJ(マイクロジュール)以上でかつ6μJ以下とし、インデックスを10μm(マイクロメータ)以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ3.0mm以下とする。
【0046】
実施形態1では、領域照射ステップの領域21の情報として、第2内径23-2と等しい第3外径22(外径に相当し、以下、符号22-3で示す)と、第3外径22-3よりも小さい第3内径(内径に相当)とが入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に第3外径22-3で囲まれる円形の領域21(以下、第3領域21-3と記す)が設定される。実施形態1では、第3外径22-3は、例えば、33.8mmであり、第3内径は、0mmである。なお、本明細書では、第3領域21-3は、内径が零のリング状の領域でもある。
【0047】
オペレータが入力ユニット142を操作するなどして領域照射ステップの第3領域21-3の照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を第3領域21-3の第3外径22-3と対応付けて照射領域設定部143に記憶する。実施形態1では、第3領域21-3の照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を1μJ(マイクロジュール)以上でかつ5μJ以下とし、インデックスを10μm(マイクロメータ)以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ3.0mm以下とする。
【0048】
なお、実施形態1において、バッファー層破壊ステップ1002の領域照射ステップの第1領域21-1の照射条件よりも第2領域21-2の照射条件が、レーザービームの出力などが低くされ、領域照射ステップの第2領域21-2の照射条件よりも第3領域21-3の照射条件が、レーザービームの出力などが低くされる。こうして、実施形態1では、バッファー層破壊ステップ1002の領域照射ステップの内周側の領域21-2,21-3の照射条件は、外周側の領域21-1,21-2の照射条件よりもレーザービーム121の出力などが低くされる。
【0049】
バッファー層破壊ステップ1002では、複合基板1の移設基板3側がチャックテーブル110の保持面111に載置され、制御ユニット140が真空吸引源を動作させて、レーザー加工装置100が複合基板1の移設基板3をチャックテーブル110の保持面111に吸引保持する。バッファー層破壊ステップ1002では、制御ユニット140が、チャックテーブル110に保持した集光点123を複合基板1のバッファー層6に設定して、レーザー加工装置100が、図9に示すように、レーザービーム照射ユニット120からレーザービーム121をエピタキシー基板4の裏面11側からバッファー層6に照射する。
【0050】
バッファー層破壊ステップ1002では、制御ユニット140が、加工内容情報通りにレーザービーム121をバッファー層6に照射する。また、バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、全体照射ステップでは、図10に示すように、制御ユニット140がミラー125を制御して最初に集光点123をエピタキシー基板4の最外周に位置付け、集光点123が最外周から中心に向かうスパイラル状の軌跡30(図10に示す)上を移動するように、設定された照射条件のレーザービーム121を走査する。
【0051】
バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、全体照射ステップ後、制御ユニット140がミラー125を制御して最初に集光点123をエピタキシー基板4の最外周に位置付け、集光点123がスパイラル状の軌跡30上を移動するように、レーザービーム121を走査して、領域照射ステップを実施する。バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、領域照射ステップにおいて、図11に平行斜線で示すバッファー層6の第1領域21-1に照射領域設定部143に設定された第1領域21-1の照射条件のレーザービーム121を走査して照射する。
【0052】
バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、領域照射ステップにおいて、バッファー層6の第1領域21-1にレーザービーム121を照射した後に、図12に網掛けで示すバッファー層6の第2領域21-2に照射領域設定部143に設定された第2領域21-2の照射条件のレーザービーム121を走査して照射する。バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、領域照射ステップにおいて、バッファー層6の第2領域21-2にレーザービーム121を照射した後に、図13にクロスハッチングで示すバッファー層6の第3領域21-3に照射領域設定部143に設定された第3領域21-3の照射条件のレーザービーム121を走査して照射する。
【0053】
このように、バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、全体照射ステップ後、集光点123がスパイラル状の軌跡30上を移動するように、制御ユニット140がレーザービーム121を走査するとともに、レーザービーム121の走査中に照射領域設定部143に設定された各領域21-1,21-2,21-3の照射条件となるように、レーザービーム121の照射条件を変更する。こうして、バッファー層破壊ステップ1002では、外径22-1,22-2と内径23-1,23-2とを指定したリング状の領域21-1,21-2及び第3外径22-3を指定した円形の第3領域21-3毎にレーザービーム121の照射条件を変更して、光デバイスウエーハ2のバッファー層6に対してレーザービーム121を照射する。
【0054】
パルス状のレーザービーム121は、エピタキシー基板4に対しては透過性を有しバッファー層6に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザービームである。これにより、バッファー層破壊ステップ1002では、レーザービーム121が照射されたバッファー層6は、Ga化合物が破壊され、Nガスからなる気泡とGaからなるGa層とに分離される。バッファー層破壊ステップ1002では、バッファー層6を破壊し、バッファー層6内に気泡を生成する。なお、気泡と、気泡以外の箇所は、エピタキシー基板4の裏面11側から視認すると、色合い等が異なり、互いに区別することができる。
【0055】
(光デバイス層移設ステップ)
図14は、図6に示されたリフトオフ方法の光デバイス層移設ステップを模式的に示す斜視図である。光デバイス層移設ステップ1003は、バッファー層破壊ステップ1002を実施した後に、エピタキシー基板4を光デバイス層7から剥離して、光デバイス層7を移設基板3に移設するステップである。
【0056】
光デバイス層移設ステップ1003では、図14に示すように、複合基板1の移設基板3を移設装置150の保持テーブル151に保持し、複合基板1のエピタキシー基板4の裏面11に超音波ホーン152を接触させる。光デバイス層移設ステップ1003では、振動付与手段153を動作させて、振動付与手段153から超音波ホーン152に超音波振動を付与し、超音波ホーン152から複合基板1に超音波振動を付与する。これにより、光デバイス層移設ステップ1003では、エピタキシー基板4が振動し、破壊されたバッファー層6を起点として、エピタキシー基板4が光デバイス層7から剥離する。光デバイス層移設ステップ1003では、エピタキシー基板4を複合基板1から除去して、光デバイス層7を移設基板3に移設する。
【0057】
以上説明した実施形態1に係るリフトオフ方法は、外径22-1,22-2,22-3と内径23-1,23-2を指定したリング状又は円形の領域21-1,21-2,21-3毎に照射条件を設定する。したがって、反りを有する複合基板1に対して、外周部と中央部の照射条件を変更でき、それぞれ最適な集光状態や出力でレーザービーム121を照射する加工ができるため、加工時間の削減や品質不良の低減に貢献する。その結果、実施形態1に係るリフトオフ方法は、所望の加工結果を得ることを可能としながらも品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0058】
〔実施形態2〕
実施形態2に係るレーザー加工装置及びリフトオフ方法を説明する。図15は、実施形態2に係るリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップを実施するレーザー加工装置の照射領域設定部に設定されたリング状の領域を示す平面図である。なお、図15は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
実施形態2に係るリフトオフ方法は、バッファー層破壊ステップ1002において、全体照射ステップを実施せずに、領域照射ステップのみを実施し、領域照射ステップの照射条件が異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態2において、バッファー層破壊ステップ1002において、加工内容情報として、バッファー層6の複数のリング状の領域21に互いに異なる照射条件でレーザービームを照射する領域照射ステップを実施する情報が制御ユニット140に入力され、制御ユニット140が入力された情報を受け付けて、照射領域設定部143に記憶する。
【0060】
実施形態2では、バッファー層破壊ステップ1002の領域照射ステップの領域21の情報として、図15に示すバッファー層6の外径22-1と、バッファー層6の外径22-1、第1内径23-1及び第2内径23-2よりも小さい第4内径23(内径に相当し、以下、符号23-4で示す)とが入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に外径22-1と第4内径23-4とで囲まれるリング状の領域21(図15に示し、以下、第4領域21-4と記す)が設定される。実施形態1では、バッファー層6の外径22-1は、例えば、101.6mmであり、第4内径23-4は、例えば、5.0mmである。
【0061】
オペレータが入力ユニット142を操作するなどして領域照射ステップの第4領域21-4の照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を第4領域21-4の外径22-1及び第4内径23-4と対応付けて照射領域設定部143に記憶する。実施形態2では、第4領域21-4の照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を3μJ以上でかつ10μJ以下とし、インデックスを10μm以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ3.0mm以下とする。
【0062】
実施形態2では、バッファー層破壊ステップ1002の領域照射ステップの領域21の情報として、第4内径23-4と等しい第5外径22(外径に相当し、以下、22-5で示す)と、第5外径22-5よりも小さい第5内径(内径に相当)とが入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に第5外径22-5で囲まれる円形の領域21(以下、第5領域21-5と記す)が設定される。実施形態1では、第5外径22-5は、例えば、5.0mmであり、第5内径は、0mmである。なお、本明細書では、第5領域21-5は、内径が零のリング状の領域でもある。
【0063】
オペレータが入力ユニット142を操作するなどして領域照射ステップの第5領域21-5の照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を第5領域21-5の第5外径22-5と対応付けて照射領域設定部143に記憶する。実施形態2では、第5領域21-5の照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を1μJ以上でかつ5μJ以下とし、インデックスを10μm以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ3.0mm以下とする。
【0064】
なお、実施形態2において、バッファー層破壊ステップ1002の領域照射ステップの第4領域21-4の照射条件よりも第5領域21-5の照射条件が、レーザービーム121の出力などが低くされる。こうして、実施形態2では、バッファー層破壊ステップ1002の領域照射ステップの内周側の第5領域21-5の照射条件は、外周側の第4領域21-4の照射条件よりもレーザービーム121の出力などが低くされる。
【0065】
バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100が複合基板1の移設基板3をチャックテーブル110の保持面111に吸引保持し、集光点123をバッファー層6に設定して、レーザー加工装置100がレーザービーム121をバッファー層6に照射する。実施形態2において、バッファー層破壊ステップ1002では、制御ユニット140がミラー125を制御して最初に集光点123をエピタキシー基板4の最外周に位置付け、集光点123がスパイラル状の軌跡30上を移動するように、レーザービーム121を走査するとともに、レーザービーム121の走査中に照射領域設定部143に設定された各領域21-4,21-5の照射条件となるように、レーザービーム121の照射条件を変更する。
【0066】
実施形態2に係るリフトオフ方法は、外径22-1,22-5と内径23-4を指定したリング状又は円形の領域21-4,21-5毎に照射条件を設定する。したがって、反りを有する複合基板1に対して、外周部と中央部の照射条件を変更でき、それぞれ最適な集光状態や出力でレーザービーム121を照射する加工ができるため、加工時間の削減や品質不良の低減に貢献する。その結果、実施形態2に係るリフトオフ方法は、実施形態1と同様に、所望の加工結果を得ることを可能としながらも品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0067】
〔実施形態3〕
実施形態3に係るレーザー加工装置及びリフトオフ方法を説明する。図16は、実施形態3に係るリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップの全体照射ステップ後の平面図である。図17は、実施形態3に係るリフトオフ方法のバッファー層破壊ステップの領域照射ステップ後の平面図である。なお、図16及び図17は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
実施形態3に係るリフトオフ方法は、バッファー層破壊ステップ1002において、領域照射ステップの照射条件が異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002において、加工内容情報として、全体照射ステップを実施する情報と、領域照射ステップを実施する情報が制御ユニット140に入力され、制御ユニット140が入力された情報を受け付けて、照射領域設定部143に記憶する。
【0069】
実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002では、オペレータが入力ユニット142を操作するなどして加工内容情報を設定する際には、全体照射ステップの照射条件を実施形態1と同様に制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を全体照射ステップと対応付けて照射領域設定部143に記憶する。
【0070】
実施形態3では、領域照射ステップの領域21の情報として、バッファー層6の外径22-1と、バッファー層6の外径22-1よりも小さい第6内径23(図17に示し、内径に相当し、以下、符号23-6で示す)とが入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に外径22-1と第6内径23-6とで囲まれるリング状の領域21(以下、第6領域21-6と記す)が設定される。また、実施形態3では、オペレータが入力ユニット142を操作するなどして領域照射ステップの第6領域21-6の照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件を第6領域21-6の外径22-1及び第6内径23-6と対応付けて照射領域設定部143に記憶する。なお、実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002では、全体照射ステップを実施後に、領域照射ステップにおいて第6領域21-6のみにレーザービーム121を照射するので、バッファー層6の内周側は、外周側よりも照射されるレーザービーム121の出力などが低くなる。
【0071】
バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100が複合基板1の移設基板3をチャックテーブル110の保持面111に吸引保持し、集光点123をバッファー層6に設定して、レーザー加工装置100がレーザービーム121をバッファー層6に照射する。実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002では、制御ユニット140がミラー125を制御して最初に集光点123をエピタキシー基板4の最外周に位置付け、集光点123がスパイラル状の軌跡30上を移動するように、レーザービーム121を走査して、全体照射ステップの照射条件でバッファー層6全体に図16に平行斜線で示すようにレーザービーム121を照射する。
【0072】
実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、全体照射ステップ後、制御ユニット140がミラー125を制御して最初に集光点123をエピタキシー基板4の最外周に位置付け、集光点123がスパイラル状の軌跡30上を移動するように、レーザービーム121を走査する。実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100は、図17に網かけで示すバッファー層6の第6領域21-6に照射領域設定部143に設定された第6領域21-6の照射条件のレーザービーム121を走査して照射する。実施形態3において、バッファー層破壊ステップ1002では、レーザー加工装置100が第6領域21-6にレーザービーム121を照射すると、終了する。
【0073】
実施形態3に係るリフトオフ方法は、外径22-1と第6内径23-6を指定したリング状の第6領域21-6の照射条件を設定する。したがって、反りを有する複合基板1に対して、外周部と中央部の照射条件を変更でき、それぞれ最適な集光状態や出力でレーザービーム121を照射する加工ができるため、加工時間の削減や品質不良の低減に貢献する。その結果、実施形態3に係るリフトオフ方法は、実施形態1と同様に、所望の加工結果を得ることを可能としながらも品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0074】
(変形例1)
実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例1に係るリフトオフ方法を説明する。図18は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例1に係るリフトオフ方法の流れを示すフローチャートである。なお、図18は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
変形例1に係るリフトオフ方法は、図18に示すように、移設基板接合ステップ1001、バッファー層破壊ステップ1002と、光デバイス層移設ステップ1003に加え、確認ステップ1004と、再加工ステップ1005とを含むこと以外、実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同じである。
【0076】
確認ステップ1004は、バッファー層破壊ステップ1002の実施後、バッファー層破壊ステップ1002において、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊したか否かを確認するステップである。確認ステップ1004では、撮像ユニット130でチャックテーブル110上の複合基板1を撮像し、複合基板1全体の画像を取得する。確認ステップ1004では、取得した複合基板1全体の画像に基づいて、気泡を認識するなどして、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊したか否かを確認する。
【0077】
確認ステップ1004では、オペレータが表示ユニット141に表示された複合基板1全体の画像を視認して、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊したか否かを確認しても良い。また、確認ステップ1004では、制御ユニット140が、複合基板1全体の画像を予め設定された複数の領域に区画し、各領域の気泡を抽出し、各領域の気泡の面積の割合を算出する。確認ステップ1004では、制御ユニット140が、算出した各領域の気泡の面積の割合が予め定められた所定値以上であるか否かを判定し、全ての領域の気泡の面積の割合が予め定められた所定値以上であると、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊したと判定する。確認ステップ1004では、制御ユニット140が、少なくとも一つの領域の気泡の面積の割合が予め定められた所定値未満であると、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊していないと判定する。
【0078】
確認ステップ1004では、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊したと判定する(Yes)と、光デバイス層移設ステップ1003に進み、エピタキシー基板4を光デバイス層7が剥離できる程度に破壊していないと判定する(No)と、再加工ステップ1005に進む。
【0079】
再加工ステップ1005は、確認ステップ1004において、バッファー層6の破壊が不十分であると判定された領域に再度、レーザービーム121を照射するステップである。再加工ステップ1005は、確認ステップ1004において、オペレータが表示ユニット141に表示された複合基板1全体の画像を視認して確認した場合には、オペレータが入力ユニットを操作するなどして、レーザー加工装置100が、バッファー層6の破壊が不十分であると判定された領域にレーザービーム121を照射する。また、再加工ステップ1005では、制御ユニット140が表示ユニット141に表示された複合基板1全体の画像に基づいて確認した場合には、レーザー加工装置100が、バッファー層6の破壊が不十分であると判定された領域である気泡の面積の割合が予め定められた所定値未満であった領域にレーザービーム121を照射する。
【0080】
変形例1に係るリフトオフ方法は、外径22-1,22-2,22-3,22-5と内径23-1,23-2,23-4,23-6を指定したリング状又は円形の領域21-1,21-2,21-3,21-4,21-5,21-6の照射条件を設定する。したがって、反りを有する複合基板1に対して、外周部と中央部の照射条件を変更でき、それぞれ最適な集光状態や出力でレーザービーム121を照射する加工ができるため、加工時間の削減や品質不良の低減に貢献する。その結果、変形例1に係るリフトオフ方法は、実施形態1と同様に、所望の加工結果を得ることを可能としながらも品質低下を抑制することができるという効果を奏する。
【0081】
また、変形例1に係るリフトオフ方法は、確認ステップ1004と再加工ステップ1005を含むので、バッファー層6の破壊が十分であるか否かを確認し、不十分である場合に再加工ステップ1005を実施するので、バッファー層6を確実に十分に破壊でき、光デバイス層7を移設基板3に破損させることなく移設することができる。
【0082】
(変形例2)
実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例2に係るリフトオフ方法を説明する。図19は、実施形態1、実施形態2及び実施形態3の変形例2に係るリフトオフ方法の流れを示すフローチャートである。なお、図19は、実施形態1、実施形態2、及び実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
変形例2に係るリフトオフ方法は、図19に示すように、移設基板接合ステップ1001、バッファー層破壊ステップ1002と、光デバイス層移設ステップ1003に加え、光デバイス層移設ステップ1003において、光デバイス層7を移設基板3に移設できなかった場合に実施する接合材除去ステップ1007と、再移設ステップ1008とを含むこと以外、実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同じである。
【0084】
接合材除去ステップ1007は、光デバイス層移設ステップ1003において、複合基板1からエピタキシー基板4を除去できずに、光デバイス層7を移設基板3に移設できなかった(ステップ1006:No)場合、エピタキシー基板4の外縁からはみ出した接合材10によりエピタキシー基板4と移設基板3とが接合していると考えて、エピタキシー基板4の外縁からはみ出した接合材10を除去するステップである。
【0085】
接合材除去ステップ1007では、レーザー加工装置100が、チャックテーブル110の保持面111に複合基板1の移設基板3を吸引保持し、オペレータにより入力された接合材除去ステップ1007用の加工内容情報を受け付けて、照射領域設定部143に記憶し、設定する。変形例2において、接合材除去ステップ1007で設定される加工内容情報として、リング状の領域にレーザービーム121を照射するリング状領域照射ステップを実施する情報が制御ユニット140に入力され、制御ユニット140が入力された情報を受け付けて、記憶する。
【0086】
接合材除去ステップ1007では、オペレータが入力ユニット142を操作するなどして加工内容情報を設定する際には、リング状領域照射ステップの照射開始の位置を示すリング状の領域の外径と照射終了位置を示すリング状の領域の内径と照射条件とを入力し、制御ユニット140がこれらを受け付けて、受け付けた外径と内径とで定められるリング状の領域と照射条件とを対応付けて記憶する。
【0087】
変形例2では、リング状領域照射ステップのリング状の領域の情報として、バッファー層6の外径22-1よりも若干大きな外径と、バッファー層6の外径22-1がリング状の領域の内径として入力され、制御ユニット140の照射領域設定部143に外径と内径とで囲まれるリング状の領域が設定される。オペレータが入力ユニット142を操作するなどしてリング状領域照射ステップの照射条件を制御ユニット140に入力し、制御ユニット140が照射条件を受け付けて、受け付けた照射条件をリング状の領域と対応付けて記憶する。実施形態1では、リング状の領域の照射条件は、例えば、レーザービーム121の出力を5μJ以上でかつ10μJ以下とし、インデックスを10μm以上でかつ20μm以下とし、デフォーカスを0mm以上でかつ1.0mm以下とする。
【0088】
接合材除去ステップ1007では、制御ユニット140が、ミラー125を制御して最初に集光点123をリング状の領域の最外周に位置付け、集光点123が最外周からリング状の領域の内縁に向かうスパイラル状の軌跡上を移動するように、設定された照射条件のレーザービーム121を照射するリング状領域照射ステップを実施して、エピタキシー基板4の外縁からはみ出した接合材10を除去する。
【0089】
接合材除去ステップ1007実施後、再移設ステップ1008を実施する。再移設ステップ1008は、光デバイス層移設ステップ1003と同様に、光デバイス層を移設するステップである。再移設ステップ1008を実施後、リフトオフ方法を終了する。光デバイス層移設ステップ1003において、複合基板1からエピタキシー基板4を除去でき、光デバイス層7を移設基板3に移設できた場合には、リフトオフ方法を終了する。
【0090】
なお、変形例2に係るリフトオフ方法は、変形例1と同様に、確認ステップ1004と再加工ステップ1005とを含んでも良い。
【0091】
変形例2に係るリフトオフ方法は、エピタキシー基板4の外縁からはみ出した接合材10のみを加工することができるので、光デバイス層7に過度なダメージを与えることなく安定的な剥離を実現できるという効果を奏する。
【0092】
また、変形例2に係るリフトオフ方法は、接合材除去ステップ1007と再移設ステップ1008を含むので、光デバイス層7を移設基板3に破損させることなく移設することができる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、前述した実施形態において、バッファー層破壊ステップ1002では、バッファー層6の内周側が、外周側よりも照射されるレーザービーム121の出力などが低くされるが、本発明では、これに限定されずに、バッファー層6の内周側が、外周側よりも照射されるレーザービーム121の出力などが高くされても良い。
【0094】
また、本発明は、接合材10がエピタキシー基板4の外縁からはみ出しているかを最初に目視等で確認し、接合材除去ステップ1007を実施して、まずはみ出した接合材10を除去してからバッファー層破壊ステップ1002を実施してバッファー層6を破壊してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 複合基板
2 光デバイスウエーハ
3 移設基板
4 エピタキシー基板
5 表面
6 バッファー層
7 光デバイス層
10 接合材
11 裏面
21,21-1,21-2,21-3,21-4,21-5,21-6 領域
22,22-1,22-2,22-3,22-5 外径
23,23-1,23-2,23-4,23-6 内径
100 レーザー加工装置
110 チャックテーブル
111 保持面
120 レーザービーム照射ユニット
121 パルス状のレーザービーム
140 制御ユニット
143 照射領域設定部
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