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特許7471168自動分析装置および自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】自動分析装置および自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240412BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/10 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020122821
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019153
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】東 信二
(72)【発明者】
【氏名】久野 英紀
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025812(JP,A)
【文献】特開2018-159682(JP,A)
【文献】特開2009-270453(JP,A)
【文献】特開2007-315969(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055931(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料または試薬を分注する分注機構と、
前記分注機構を洗浄するための洗浄水を送出するギヤポンプと、
前記ギヤポンプによる洗浄水の送出圧力をアナログで測定する圧力メータと、
制御装置と、
を備えた自動分析装置であって、
前記試料と前記試薬を反応させる反応容器を浸漬するための恒温液を保持する反応槽と、
前記分注機構を介して前記反応槽に送出された洗浄水の液位または容量を測定するセンサと、を有し、
前記制御装置は、
予め求められた、前記ギヤポンプによる洗浄水の測定済み送出圧力と、前記ギヤポンプから送出される洗浄水の液位または容量が所定値に達するまでに要した計測済み時間と、の相関関係を記憶する記憶部と、
前記センサによって測定された、洗浄水の液位または容量が前記所定値に達するまでに要した判定用時間と、前記記憶部に記憶された相関関係と、に基づいて、前記ギヤポンプの状況を取得する状況取得部と、を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載された自動分析装置において、
前記状況取得部は、前記判定用時間と、前記相関関係と、に基づいて、前記ギヤポンプの圧力を推定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載された自動分析装置において、
前記記憶部は、前記相関関係から算出された閾値も記憶しており、
前記状況取得部は、前記判定用時間と、前記閾値と、に基づいて、前記ギヤポンプの異常を判定する異常判定部であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載された自動分析装置において、
前記相関関係は、当該自動分析装置を用いて得られたものであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載された自動分析装置において、
前記ギヤポンプの吐出側と吸引側とを接続する戻り流路に配置された電磁弁を有し、
前記相関関係は、前記電磁弁を開状態としたときの前記測定済み送出圧力および前記計測済み時間と、前記電磁弁を閉状態としたときの前記測定済み送出圧力および前記計測済み時間と、のデータを含んでいることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項に記載された自動分析装置において、
前記分注機構は、複数の分注ノズルを有し、
前記相関関係は、
前記分注ノズルのうち一部のみから前記洗浄水を吐出たときの前記測定済み送出圧力、および、当該一部の前記分注ノズルから前記洗浄水を吐出するとともに、当該洗浄水が前記反応槽へ送出されて前記所定値に達するまでの前記計測済み時間、に関する第1のデータと、
前記第1のデータより多数の前記分注ノズルから前記洗浄水を吐出したときの前記測定済み送出圧力、および、当該多数の前記分注ノズルから前記洗浄水を吐出するとともに、一部の前記分注ノズルからの洗浄水が前記反応槽へ送出されて前記所定値に達するまでの前記計測済み時間、に関する第2のデータと、を含んでいることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項3に記載された自動分析装置において、
前記閾値は、前記判定用時間に関する第1の閾値と、前記第1の閾値より大きい第2の閾値と、を有し、
前記異常判定部は、
前記判定用時間が、前記第1の閾値未満の場合、異常なしと判定し、
前記判定用時間が、前記第1の閾値以上、かつ、前記第2の閾値未満の場合、前記ギヤポンプの異常であると判定し、
前記判定用時間が、前記第1の閾値以上、かつ、前記第2の閾値以上の場合、前記ギヤポンプ以外の異常であると判定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項に記載された自動分析装置において、
前記ギヤポンプに洗浄水を供給する給水タンクと、
前記給水タンクと前記ギヤポンプとの間の流路に配置された開閉可能なコックと、
前記ギヤポンプの吐出側と吸引側とを接続する戻り流路に配置された電磁弁と、を有し、
前記異常判定部は、
前記判定用時間が、前記第1の閾値以上、かつ、前記第2の閾値以上の場合、前記コックまたは前記電磁弁の異常であると判定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項に記載された自動分析装置において、
前記異常判定部は、
前記判定用時間が、前記第1の閾値以上、かつ、前記第2の閾値未満の場合であっても、前記圧力メータの目盛が所定値以上であることが確認できたときには、異常なしと判定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
試料または試薬の分注機構を洗浄するための洗浄水を送出するギヤポンプの状況を取得する、自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法であって、
前記ギヤポンプによる洗浄水の送出圧力を、予めアナログの圧力メータで測定するステップと、
前記ギヤポンプから反応槽に送出される洗浄水の液位または容量が所定値に達するまでに要した時間を、予めセンサで計測するステップと、
前記送出圧力と前記時間との相関関係を記憶するステップと、
その後、前記センサによって測定された、洗浄水の液位または容量が所定値に達するまでに要した時間と、前記相関関係と、に基づいて、前記ギヤポンプの状況を取得することを特徴とする、自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置および自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、分注機構とよばれる液体供給機構によって、分析のための試料を収容する試料容器、試薬を収容する試薬容器からそれぞれ所定量の試料、試薬を吸引し、これらを混合、反応させる反応容器に吐出する分注動作を行う。分注機構による液体の吸引、吐出の動作は、シリンジを用いてノズル内の圧力を変化させることで実施される。すなわち、ノズル内の圧力を負圧として内部に所定量の液体を吸引した後、正圧となるように圧力を変化させて反応容器に吐出する。
【0003】
分注機構のノズルは分析の種類や項目によってそれぞれ異なる試料、試薬を分注するため、自動分析装置では、一の試料または試薬の吸引、吐出を行った後、次の分注動作を開始する前に、毎回ノズルの洗浄を行っている。ノズル洗浄には、ノズルの外側に洗浄液をかけて洗浄する外洗と、ノズルの内部に洗浄液を吐出して洗浄する内洗とがある。これらのノズル洗浄工程において十分な洗浄が行われていないと、前の分注動作で使用した試料や試薬がノズルに残留することでコンタミネーションが起こり、分析結果に影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
ここで、外洗および内洗用の洗浄水(以下、それぞれ外洗水、内洗水と称することがある)は、給水タンクを経由して自動分析装置内に給水用のポンプによって引き込まれる。この後、内洗水はギヤポンプを経由することにより例えばギヤポンプ近傍(例えば内洗水の出口付近)の配管内の位置において330kPa程度の圧力となる。ノズル内の洗浄を十分に行うためには一定以上の圧力を加える必要があるが、ギヤポンプの経時的な劣化、あるいは空運転などの異常時の摩耗によって圧力が減少することがある。また、このような流路部品の劣化や故障といった要因以外にも、ユーザメンテナンスのエラーなどによって流路内の圧力の低下が起こりえる。例えば、定期的な清掃を行うために、給水タンクを取り外す際には自動分析装置本体と給水タンクの間にあるコックを閉めて、清掃後に再び開ける必要がある。しかし、ユーザによる清掃後、誤ってコックを開けなかった場合には、装置内に内洗水が給水されず、結果としてノズルの内洗時に必要な圧力よりも低くなってしまうことがある。
【0005】
自動分析装置では、一般的に、ギヤポンプや給水ポンプの圧力を機械式(以下、アナログと称する)で測定し表示する圧力メータを備えている。しかしながら、この圧力メータの示す値は数値情報ではないため、自動的に装置に取り込み、制御に使用することができない。そのため、上述した圧力の変動により分析結果に異常が生じた場合でも、ユーザはその原因を容易に突き止めることはできず、サービスマンによる圧力メータの目視による確認によって初めて明らかになる場合が多かった。
【0006】
そこで、特許文献1では、アナログの圧力メータに代えて、ノズルとシリンジを繋ぐ配管に、デジタルの圧力センサを設け、この圧力センサの出力値を装置に取り込むことにより、ギヤポンプなどの流路部品の劣化、故障を検知するシステムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-025812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1においては、ギヤポンプの圧力をデジタルの値として取り込むための専用の圧力センサを装置内に設ける必要があり、装置構成の大型化、複雑化を招くおそれがある。さらに、構造の複雑化により、故障のリスクが高まり、また故障時の対応も困難になる場合がある。
【0009】
本発明の目的は、装置構成の大型化および複雑化を抑制しつつ、ギヤポンプの状況を容易に取得することのできる自動分析装置および自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、分注機構を洗浄するための洗浄水を送出するギヤポンプと、前記ギヤポンプによる洗浄水の送出圧力をアナログで測定する圧力メータと、制御装置と、を備えた自動分析装置であって、前記試料と前記試薬を反応させる反応容器を浸漬するための恒温液を保持する反応槽と、前記分注機構を介して前記反応槽に送出された洗浄水の液位または容量を測定するセンサと、を有し、前記制御装置は、予め求められた、前記ギヤポンプによる洗浄水の測定済み送出圧力と、前記ギヤポンプから送出される洗浄水の液位または容量が所定値に達するまでに要した計測済み時間と、の相関関係を記憶する記憶部と、前記センサによって測定された、洗浄水の液位または容量が前記所定値に達するまでに要した判定用時間と、前記記憶部に記憶された相関関係と、に基づいて、前記ギヤポンプの状況を取得する状況取得部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置構成の大型化および複雑化を抑制しつつ、ギヤポンプの状況を容易に取得することのできる自動分析装置および自動分析装置のギヤポンプ状況取得方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る自動分析装置の基本構成を示す上面図
図2】実施形態に係る自動分析装置における分注ユニットの基本構成を示す側面図
図3】実施形態の制御装置を示す機能ブロック図
図4】実施形態に係る相関関係を得るため処理を示すフローチャート
図5】6つの分注機構を用いて、相関関係を得るため処理を示すフローチャート
図6】ギヤポンプ用圧力メータの圧力と分注ノズル吐出時間との相関関係を示すグラフ
図7】閾値の算出方法を説明する図
図8】判定用時間を得るための処理を示すフローチャート
図9】予め取得した相関関係と判定用時間とに基づいて、ギヤポンプの圧力を推定する方法の一例を示すグラフ
図10】ギヤポンプ等の異常を判定するための動作を示すフローチャート
図11図10のS804~S806を図示化したもの
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係る自動分析装置の基本構成を示す上面図である。本実施形態の自動分析装置は、搬送機構2と、反応ディスク4と、反応槽5と、恒温液水位センサ6と、サンプル分注機構13と、試薬ディスク8と、第1試薬分注機構9と、第2試薬分注機構10と、反応容器洗浄機構11と、分光光度計12と、制御装置20と、を備える。搬送機構2は、試料を保持するサンプル容器1aを複数個収容可能なラック1を搬送可能とするものである。反応ディスク4は、時計回り、反時計回りに回転自在なディスク状のユニットであってその円周上に複数の反応容器3を配置可能とするものである。反応槽5は、反応容器3が浸漬される恒温液24を収容可能な円形のものである。恒温液水位センサ6は、恒温液24の水位を管理するものである。サンプル分注機構13は、サンプル容器1aから吸引した試料を反応容器3に分注するものである。試薬ディスク8は、試薬を保持する試薬ボトル7を複数搭載可能なものである。第1試薬分注機構9および第2試薬分注機構10は、試薬ディスク8内の試薬ボトル7から吸引した試薬を反応容器3に分注するものである。反応容器洗浄機構11は、反応容器3を洗浄するものである。分光光度計12は、反応ディスク4の外周付近に設置され、反応容器3内の試料と試薬の混合液の吸光度を測定するものである。制御装置20は、装置全体の動作を制御し、外部とのデータの交換を行うものである。
【0014】
反応容器3は、反応槽5に保持される恒温液24に浸漬されているため、恒温液24が濁ると分光光度計12による正確な測定ができない。そこで、恒温液24の濁りを抑制するため、反応槽5の上面は円形状の上面カバー25で覆われ、反応槽5内の恒温液24に異物が入らないようにしている。さらに、恒温液24の菌増殖を抑制するため、反応槽5内には抗菌剤が添加されている。抗菌剤を添加する際には、分注機構のノズルが、試薬ボトル7(試薬容器)に保管された抗菌剤を吸引した後、恒温液24の上面カバー25に設けられた抗菌剤吐出穴19から抗菌剤を添加する。なお、反応槽5内への恒温液24の給水は、分注機構以外の図示しない手段を用いて行われる。
【0015】
制御装置20は、各種パラメータや設定の入力画面、初回検査あるいは再検査の分析検査データ、測定結果等が表示される表示部22と、各種パラメータや設定、分析依頼情報、分析開始等の指示などを入力するための入力部23と、に接続される。また、各種パラメータや設定、測定結果、各試料ラックに搭載された試料容器に収容された試料の分析依頼情報等は、制御装置20の記憶部207に記憶される。
【0016】
次に、図2は、本実施形態に係る自動分析装置における分注システムの基本構成を示す側面図である。ここでは、一例として、第1試薬分注機構9または第2試薬分注機構10に係る分注システムの構成について説明する。
【0017】
本分注システムは、給水タンク36と、給水タンク用コック37と、給水ポンプ38と、給水ポンプ用圧力メータ39と、ギヤポンプ40と、ギヤポンプ用圧力メータ41と、高圧切替電磁弁42と、分岐管30と、電磁弁18と、第1試薬分注機構9または第2試薬分注機構10と、分注用シリンジ16と、を備える。給水タンク36は、ギヤポンプ40に供給するための洗浄水が収容され、取り外し可能となっている。給水タンク用コック37は、給水タンク36とギヤポンプ40との間の流路に配置されて開閉可能であり、給水タンク36を取り外した際は、流路を隔てるものである。給水ポンプ38は、給水タンク36に配管で接続され、圧力伝達媒体である洗浄水を供給するものである。給水ポンプ用圧力メータ39は、給水ポンプ38とギヤポンプ40の流路に接続され、給水ポンプ38における洗浄水の圧力をアナログで測定するものである。ギヤポンプ40は、給水ポンプ38から供給された洗浄水を加圧するものである。ギヤポンプ用圧力メータ41は、ギヤポンプ40と分岐管30の流路に接続され、洗浄水の圧力をアナログで測定するものである。高圧切替電磁弁42は、ギヤポンプ40の吐出側と吸引側とを接続する戻り流路に配置される。分岐管30は、ギヤポンプ40に配管で接続され、1つの入り口と複数の出口を持つ。電磁弁18は、分岐管30に接続され、分注用シリンジへと繋がる各液体流路の開閉を可能とするものである。第1試薬分注機構9または第2試薬分注機構10の先端には、液体を所定量吸引及び吐出するための分注ノズル14を有しており、主に血液や尿などの試料、および試薬の吸引や吐出を行う。分注用シリンジ16は、分注ノズル14内の圧力を変化させることで、規定量の洗浄水の吸引吐出動作を制御するものである。なお、ここでは分岐管30が第1試薬分注機構9または第2試薬分注機構10に接続している構成の例について説明したが、複数の分岐管30のうちのその他の出口は、サンプル分注機構13など、別の系の分注機構に接続されている。第1試薬分注機構9または第2試薬分注機構10で移動される分注ノズル14の可動範囲には、試薬ボトル7を搭載した試薬ディスク8、ノズル洗浄用の洗浄槽35が含まれる。上述した各構成の動作は、制御装置20の動作制御部201によって制御される。
【0018】
本構成を基に試薬を分注する場合の手順を以下に示す。まず、第2試薬分注機構10(第1試薬分注機構9)によって分注ノズル14が下降動作を行い、試薬ボトル7内の試薬の液中に達すると、分注用シリンジ16が試薬の吸引動作を行う。試薬吸引動作が終了すると、分注ノズル14は、反応容器3へ移動し、分注用シリンジ16によって反応容器3への試薬の吐出動作を行う。分注終了後、分注ノズル14は洗浄槽35に移動し、給水ポンプ38によって給水タンク36内の洗浄水を引き込む。引き込まれた洗浄水は、ギヤポンプ40と高圧切替電磁弁42によって高圧となるため、分注ノズル14を洗浄することが可能となる。洗浄吐出の切替は、電磁弁18で行い、制御装置20の動作制御部201によって制御される。
【0019】
ここで、上述の通り、ギヤポンプ用圧力メータ41はギヤポンプ40近傍の洗浄水の圧力をアナログ式で測定するため、このままではデジタル情報として装置内に取り込むことや、制御に使用することができない。そのため、圧力の変動により分析結果に異常が生じた場合でも、ユーザはその原因を容易に突き止めることはできなかった。
【0020】
そこで、本実施形態の制御装置20は、予め、ギヤポンプ40による洗浄水の送出圧力(測定済み送出圧力)をアナログのギヤポンプ用圧力メータ41で測定するとともに、ギヤポンプ40から送出される洗浄水の液位または容量が所定値に達するまでに要した時間(計測済み時間)をセンサで計測することで、相関関係を記憶しておく。その後、制御装置20は、センサによって測定された、液体の液位または容量が所定値に達するまでに要した時間(判定用時間)と、測定済み送出圧力と計測済み時間との相関関係と、に基づいて、ギヤポンプ40の状況を取得(圧力推定や異常判定)する。この方法によれば、デジタル式の圧力センサなどの複雑な構成を用いることなく、低コストかつ省スペースで信頼性の高い自動分析装置の提供が可能となる。また、アナログ式の圧力メータを用いることで、メータ自体の異常が発生し難く、仮に異常が発生した場合でも修理が容易であるため、分析(オペレーション)を中断する時間的ロスを抑制することもできる。
【0021】
図3は、本実施形態の制御装置20を示す機能ブロック図である。図3に示すように、制御装置20は、動作制御部201と、分析部202と、異常判定部203(ギヤポンプ状況取得部)と、時間計測部204と、検量線作成部205と、閾値算出部206と、記憶部207と、を備えている。動作制御部201は、各分注機構や電磁弁などの動作を制御するものである。分析部202は、試料の分析を行うための各種制御を行うものである。異常判定部203は、ギヤポンプ40の圧力を推定したり、ギヤポンプ40や他の部品の異常を判定したりするものである。時間計測部204は、センサ(恒温液水位センサ6)を監視し、液体の液位または容量が所定値に達するまでに要する時間を計測するものである。検量線作成部205は、測定済み送出圧力と計測済み時間との相関関係(以下、検量線ということがある)を予め作成しておくものである。閾値算出部206は、異常判定部203での判定に用いられる判定用時間に関する閾値を、相関関係を利用して算出するものである。記憶部207は、検量線作成部205で作成された検量線や、閾値算出部206で算出された閾値などを記憶するものである。
【0022】
図4は、本実施形態に係る相関関係を得るため処理を示すフローチャートである。本実施形態では、高圧切替電磁弁42を閉じた高圧状態としたときの測定済み送出圧力および計測済み時間と、高圧切替電磁弁42を開けた低圧状態としたときの測定済み送出圧力および計測済み時間と、の2つのデータを用いて相関関係を得る。図4(a)は、高圧状態における圧力と時間の計測を行うフローを示し、図4(b)は、低圧状態における圧力と時間の計測を行うフローを示している。
【0023】
まず、図4(a)を用いて、高圧状態での計測について説明する。制御装置20の動作制御部201は、高圧切替電磁弁42を閉じ、高圧状態とする(S301)。その後、制御装置20の動作制御部201が、分注ノズル14を洗浄槽35に移動させ、電磁弁18を開として内洗水を吐出する(S302)。ここで、サービスマンは、内洗水を吐出している間に給水ポンプ用圧力メータ39をハンドルの開閉等で調整し、さらにギヤポンプ用圧力メータ41の測定を目視にて行う(S303)。次に、制御装置20の動作制御部201は、恒温液ドレイン43を開放させ恒温液24を排出し、恒温液水位センサ6によって恒温液24の水位を一定化する(S304)。
【0024】
ここで、恒温液水位センサ6は、センサ部が恒温液24に触れているかをONとOFFとで判断し、恒温液24に触れているONの状態で恒温液ドレイン43を開け恒温液24を排出する。その間、恒温液水位センサ6は、常にセンサ監視を行い、センサ部がOFFになった時点を記憶する。この時点を起点とし、恒温液24を排出し終えるまでの時間を定義することで水位を一定とすることができる。さらに、恒温液水位センサ6は、上限と下限の2つを用いる装置も多く、その場合、下限センサがOFFになる瞬間まで恒温液を排出することで水位を一定とすることができる。2つのセンサであれば、恒温液ドレイン43の排出流量のばらつきが含まれないため、より正確に恒温液24の水位を定めることができる。なお、オペレーション時には、恒温液水位センサ6が常にONの状態となるように制御されている。
【0025】
恒温液24の水位が一定になった後、制御装置20の動作制御部201は、分注ノズル14を抗菌剤吐出穴19に移動させ、分注ノズル14により内洗水を吐出する(S305)。この時、制御装置20の時間計測部204は、内洗水を吐出開始した直後から恒温液水位センサ6がONになるまでの時間を記憶する(S306)。なお、反応槽5に上面カバー25が設けられていない場合、分注ノズル14からの内洗水の吐出場所は、抗菌剤吐出穴19に限らず、どのような形で反応槽5内へ吐出しても構わない。
【0026】
次に、図4(b)を用いて、低圧状態での計測について説明する。動作制御部201は、高圧切替電磁弁42を開け、低圧状態とする(S311)。その後、動作制御部201が、分注ノズル14を洗浄槽35に移動させ、電磁弁18を開として内洗水を吐出する(S312)。ここで、サービスマンは、内洗水吐出中の圧力メータの測定を行う(S313)。次に、動作制御部201は、恒温液水位センサ6を用いて、恒温液24の水位を一定化する(S314)。その後、動作制御部201は、分注ノズル14を抗菌剤吐出穴19に移動させ、内洗水吐出を行い(S315)、時間計測部204が、恒温液水位センサ6がONになるまでの時間を測定する(S316)。
【0027】
上述したアナログのギヤポンプ用圧力メータ41の測定は、読取誤差を小さくするため、オペレータではなくサービスマンにより行われる。測定回数は極力少ないことが望ましいため、基本的には、装置のセットアップ時のみの測定とするが、給水ポンプやギヤポンプ、電磁弁、分注機構の構成部品、それらを繋ぐ配管など、内洗水の流路部品が変更となった場合は、測定が必要となる。なお、本実施形態では、恒温液水位センサ6によって恒温液24の水位をモニタする構成について説明するが、水位に代えて、同様に水量をモニタする構成を適用することも可能である。
【0028】
図6は、本実施形態に係る、ギヤポンプ用圧力メータ41の圧力と、分注ノズル吐出時間と、の相関関係を示すグラフである。図6において、横軸はギヤポンプ用圧力メータ41の目盛測定により得られる圧力値、縦軸は恒温液水位センサ6により得られる分注ノズルが所定水量を吐出する時間となっている。また、図6中の(1)は、図4(a)で説明した高圧状態での結果であり、図6中の(2)は、図4(b)で説明した低圧状態での結果である。制御装置20の検量線作成部205は、この(1)と(2)の2点を繋ぐことで、検量線を作成する。また、作成された検量線は、制御装置20の記憶部207に記憶される。
【0029】
また、図4では、1つの分注機構を用いて、高圧切替電磁弁42を閉じた高圧状態と、開けた低圧状態と、の2点から検量線を作成する例について説明したが、これに限られず、分岐管30に接続する他5つの分注機構を用いて検量線を作成することも可能である。
【0030】
図5は、図4の場合と異なり、6つの分注機構を用いて、相関関係(検量線)を得るため処理を示すフローチャートである。図5の場合は、次のような、第1のデータおよび第2のデータを用いて、相関関係が算出される。第1のデータは、1本の分注ノズルのみから洗浄水を吐出したときの測定済み送出圧力、および、この1本の分注ノズルから洗浄水を吐出するとともに、当該洗浄水が反応槽5へ送出されて所定値に達するまでの計測済み時間、に関するものである。第2のデータは、6本の分注ノズルから洗浄水を吐出したときの測定済み送出圧力、および、6本の分注ノズルから洗浄水を吐出するとともに、1本の分注ノズルからの洗浄水が反応槽5へ送出されて所定値に達するまでの計測済み時間、に関するものである。
【0031】
図5(a)は、第1のデータを得るための圧力と時間の計測を行うフローを示し、図5(b)は、第2のデータを得るための圧力と時間の計測を行うフローを示している。図5では、図4の場合と異なり、高圧切替電磁弁42を開状態とした処理が不要となる利点がある。また、通常のオペレーション時と同様に、高圧状態で時間の計測ができるため、計測精度も高い。
【0032】
第1のデータを得るための処理は、図5(a)に示すように、図4(a)と同様のフローである。一方、第2のデータを得るための処理は、図5(b)に示すように、図4とは異なるフローを含むため、この処理について具体的に説明する。
【0033】
制御装置20の動作制御部201は、高圧切替電磁弁42を閉じた後、6本の分注ノズルをそれぞれ洗浄槽へ移動させ、電磁弁18を開として6本の分注ノズルに内洗水を吐出する(S*12)。この内洗水吐出中に、サービスマンが圧力メータの測定を行う(S*13)。次に、恒温液24の水位が一定化された後、動作制御部201は、図5(a)でも用いる1本の分注ノズルのみを、抗菌剤吐出穴19へ移動させ、反応槽5へ内洗水を吐出する(S*15)。このとき、残りの5本の分注ノズルは、それぞれ洗浄槽へ内洗水を吐出する。時間計測部204は、反応槽5の恒温液水位センサ6がONになるまでの時間を測定する(S*16)。
【0034】
なお、相関関係は、当該自動分析装置を用いて取得する以外にも、同様の構成を有する別の自動分析装置を用いて予め取得し、記憶部207に記憶しておくことも可能である。この場合、異常判定部203(状況取得部)は、必要なときに当該検量線を参照することにより、ギヤポンプ40の圧力を推定できるだけでなく、検量線を作成する作業が不要になる利点がある。
【0035】
図8は、相関関係の取得後に行われる、判定用時間を得るための処理を示すフローチャートである。上述したように、本実施形態の異常判定部203(状況取得部)は、予め取得した相関関係と、判定用時間と、に基づいて、ギヤポンプ40の圧力を推定することが可能である。
【0036】
図8に示すように、初めに、内洗水の圧力をオペレーションと同じ高圧とするために、制御装置20の動作制御部201は、高圧切替電磁弁42を閉じる(S601)。その後、恒温液水位センサ6により、恒温液24の水位を一定化する(S602)。次に、動作制御部201は、分注ノズル14を抗菌剤吐出穴19に移動させ、分注ノズル14により内洗水吐出を行う(S603)。その後、時間計測部204は、恒温液水位センサ6がONになるまでの時間を測定する(S604)。
【0037】
図9は、予め取得した相関関係と、判定用時間と、に基づいて、ギヤポンプ40の圧力を推定する方法の一例を示すグラフである。図9に示すように、恒温液水位センサ6による計測時間(判定用時間)が例えば170sの場合、異常判定部203(状況取得部)は、記憶部207に記憶された検量線を適用することで、ギヤポンプ用圧力メータの推定値として320kPaを出力する。
【0038】
なお、ギヤポンプ40の圧力を推定するための判定用時間の計測は、毎日の装置立ち上げ時や恒温液24の交換時など、オペレーション前に行うのが望ましい。また、判定用時間と検量線に基づいて、ギヤポンプ40の劣化、給水タンク用コック37の閉め忘れ、電磁弁18の動作不良、などについても、判定することが可能である。オペレーション前に判定用時間の計測と異常判定を行うことで、故障がない状態での測定結果を保証できる。
【0039】
ここで、検量線から算出された閾値と、判定用時間と、に基づいて、ギヤポンプ40等の異常を判定する方法について説明する。まず、制御装置20の閾値算出部206が、検量線から、判定用時間に関する第1の閾値と、この第1の閾値より大きい第2の閾値と、を算出する。
【0040】
図7は、本実施形態に係る閾値の算出方法を説明する図である。第1の閾値は、主にギヤポンプ40の劣化を判定するための時間であり、ギヤポンプ用圧力メータ41の仕様と検量線から定められる。ギヤポンプ用圧力メータ41の仕様は、調整仕様330kPaに対し、ギヤポンプ40の摩耗を想定した安全率を設けており、例えば1割減となる300kPaとする。この300kPaと検量線より第1の閾値は180sとなる。
【0041】
第2の閾値は、主に給水タンク用コック37の閉め忘れと電磁弁18の動作不良を判定するための時間である。給水タンク用コック37が閉まっているとき、また、電磁弁18の動作不良により電磁弁18が閉じたままになっているときは、ギヤポンプ用圧力メータ41の値は極端に低く100kPa以下となることが知られている。よって、第2の閾値はギヤポンプ用圧力メータ41の仕様300kPaよりも極端に低い値とするのが望ましく、例えば、仕様300kPaの3割減となる210kPaとする。この210kPaと検量線より第2の閾値は215sとなる。
【0042】
図10は、ギヤポンプ40、給水タンク用コック37、電磁弁18の異常を判定するための動作を示すフローチャートである。まず、閾値算出部206は、図4または図5により得られた検量線から、図7に従い第1の閾値と第2の閾値を定義する(S801)。次に、時間計測部204は、図8に基づき、恒温液水位センサ6により恒温液24が所定水量に達するまでの時間(判定用時間)を測定する(S802)。その後、異常判定部203は、測定された判定用時間と第1の閾値を比較し(S803)、判定用時間が第1の閾値未満の場合は、異常なしと処理する(S851)。
【0043】
次に、判定用時間が、第1の閾値以上、かつ、第2の閾値未満の場合、ギヤポンプ用圧力メータ41の推定値は210kPa~300kPaとなり、仕様300kPaを外れることから、ギヤポンプ40の劣化が想定される。
【0044】
ただし、検量線は、温度や湿度の変化、恒温液水位センサ6の劣化、分注ノズル14の劣化、ギヤポンプ用圧力メータ41の読み取り誤差、恒温液ドレイン43の屈曲や汚れなど、様々な要因により変化してしまっている可能性がある。そのため、判定用時間が、第1の閾値以上で、かつ、第2の閾値未満の場合、異常判定部203は、表示部22等を介して、オペレータに対し、ギヤポンプ用圧力メータ41の確認指示を行う。これを受けて、オペレータが、ギヤポンプ用圧力メータ41の目盛確認(S805)を行った結果、仕様300kPa未満だった場合、入力部23を用いて所定の入力を行う。すると、異常判定部203は、ギヤポンプ40の劣化と判定し、アラームを発生させる(S852)。一方、ギヤポンプ用圧力メータ41の目盛が仕様300kPa以上だった場合、閾値算出部206が閾値を補正し(S806)、異常判定部203は異常なしと処理する(S851)。
【0045】
図11は、図10のS804~S806を図示化したものである。例えば、判定用時間が185sであった場合、ギヤポンプ用圧力メータ41の推定値は290kPaとなる。しかし、オペレータが、ギヤポンプ用圧力メータ41の目盛を確認し、300kPa以上だった場合、入力部23を用いて所定の入力を行い、その入力情報が制御装置20へ送られ、閾値算出部206が第1の閾値を185sに補正する。次に、検量線作成部205は、この185sと仕様300kPaの接点(3)を定め、この接点と、予め求めていた検量線の傾きと同じ傾きによる新たな検量線を作成する。その後、閾値算出部206は、新たな検量線と仕様300kPaの3割減にて得られた210kPaの接点(4)を求めることで、第2の閾値の補正値220sを得ることができる。
【0046】
図10の説明に戻ると、S804にて判定用時間が第2の閾値以上の場合、ギヤポンプ用圧力メータ41の推定値は210kPa以下となり仕様300kPaを大きく外れることから、ギヤポンプ40の劣化以外の異常が発生していると推測される。そこで、オペレータが、給水タンク用コック37の閉め忘れを確認する(S807)。閉め忘れがあった場合は、給水タンク用コック37を閉め(S808)、再度、図8に基づき判定用時間の計測を行う(S802)。一方、閉め忘れがなかった場合は、電磁弁動作不良のアラームを発生させる(S853)。
【符号の説明】
【0047】
1a・・・サンプル容器
2・・・搬送機構
3・・・反応容器
4・・・反応ディスク
5・・・反応槽
6・・・恒温液水位センサ
7・・・試薬ボトル
8・・・試薬ディスク
9・・・第1試薬分注機構
10・・・第2試薬分注機構
11・・・反応容器洗浄機構
12・・・分光光度計
13・・・サンプル分注機構
14・・・分注ノズル
16・・・分注用シリンジ
18・・・電磁弁
19・・・抗菌剤吐出穴
20・・・制御装置
22・・・表示部
23・・・入力部
24・・・恒温液
25・・・上面カバー
30・・・分岐管
35・・・洗浄槽
36・・・給水タンク
37・・・給水タンク用コック
38・・・給水ポンプ
39・・・給水ポンプ用圧力メータ
40・・・ギヤポンプ
41・・・ギヤポンプ用圧力メータ
42・・・高圧切替電磁弁
43・・・恒温液ドレイン
201・・動作制御部
202・・分析部
203・・異常判定部
204・・時間計測部
205・・検量線作成部
206・・閾値算出部
207・・記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11