(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子の製造方法及び単量体水溶液
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240412BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240412BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240412BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
C08K3/36
C08L33/02
C08F2/44 A
(21)【出願番号】P 2021530659
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020026051
(87)【国際公開番号】W WO2021006179
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019126346
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 志保
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-318021(JP,A)
【文献】特開平3-115313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08K 3/36
C08L 33/02
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体及びシリカを含む単量体水溶液を調製することと、
前記単量体水溶液中の前記エチレン性不飽和単量体を水溶液重合法により重合して、含水ゲル状重合体を得ることと、
前記含水ゲル状重合体を粗砕することとを含み、
前記単量体水溶液中のシリカ濃度が0.02~4.0ppmである、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記単量体水溶液を
調製することが、前記単量体水溶液を調製するための水のシリカ濃度を調整することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
エチレン性不飽和単量体及びシリカを含み、シリカ濃度が0.02~4.0ppmである、単量体水溶液。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含む、請求項4に記載の単量体水溶液。
【請求項6】
吸水性樹脂粒子製造用である、請求項4又は5に記載の単量体水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の製造方法及び単量体水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野で広く使用されている。吸水性樹脂粒子としては、エチレン性不飽和単量体を重合させて得られる架橋構造を有する重合体(架橋重合体)を含む吸水性樹脂粒子が主に用いられている。
【0003】
吸水性樹脂粒子の製造方法として、水溶液重合法によりエチレン性不飽和単量体を重合して、塊状の架橋重合体の含水ゲルである含水ゲル状重合体を調製した後、粗砕、乾燥及び粉砕を行って吸水性樹脂粒子を得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
含水ゲル状重合体を粗砕する際に、粗砕されたゲルの一部が粗砕装置の内部表面に付着するため、粗砕後の回収率は、投入した含水ゲル状重合体全量に対して100%には満たない。
【0006】
また、最終的に得られる吸水性樹脂粒子において、重合に用いられなかった未反応の単量体が残存すると、吸収性能の低下や使用時の肌への影響(肌荒れ)、臭気発生等の問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、粗砕時の収率に優れ、残存単量体が低減された吸水性樹脂粒子を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、エチレン性不飽和単量体及びシリカを含む単量体水溶液を調製することと、上記単量体水溶液中の上記エチレン性不飽和単量体を水溶液重合法により重合して、含水ゲル状重合体を得ることと、上記含水ゲル状重合体を粗砕することとを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法に関する。上記単量体水溶液中のシリカ濃度は、0.02~4.0ppmである。
【0009】
上記製造方法において、エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0010】
上記単量体水溶液を調製することが、上記単量体水溶液を調製するための水のシリカ濃度を調整することを含んでいてよい。
【0011】
本発明の別の一側面は、エチレン性不飽和単量体及びシリカを含み、シリカ濃度が0.02~4.0ppmである単量体水溶液に関する。
【0012】
上記単量体水溶液において、エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0013】
上記単量体水溶液は、吸水性樹脂粒子製造用であってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、粗砕時の収率に優れ、残存単量体が低減された吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0016】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、エチレン性不飽和単量体及びシリカを含む単量体水溶液を調製することと、上記単量体水溶液中の上記エチレン性不飽和単量体を水溶液重合法により重合して、含水ゲル状重合体を得ることと、上記含水ゲル状重合体を粗砕することとを含む。
【0017】
[単量体水溶液の調製]
本実施形態に係る製造方法において用いられる単量体水溶液は、例えば、水に、エチレン性不飽和単量体及びその他必要に応じて用いる材料を添加することにより調製することができる。本明細書における単量体水溶液とは、更なる水や材料等の添加又は除去を必要とすることなくそのままその後の重合に供することができる状態のものを指す。
【0018】
単量体水溶液を調製するための水(以下、「単量体水溶液用水」ともいう。)の原料水としては、通常の工業用水、例えば河川又は湖沼から取得される水、地下水等を用いることができる。単量体水溶液用水としては、原料水に、必要に応じて後述の前処理、蒸留、膜分離処理、脱イオン処理等の処理を施した水を用いることができる。これらの処理は複数を組み合わせてもよい。
【0019】
前処理により、主な濁質を除去することができる。前処理としては、例えば、砂ろ過処理、薬品による凝集反応処理、加圧浮上分離処理等が挙げられる。砂ろ過処理におけるろ材としては、例えば、天然砂、アンスラサイト、ガーネット、セラミックスサンド、活性炭、マンガン砂等を使用することができる。
【0020】
膜分離処理により、水中の微細な不純物を更に除去することができる。膜分離処理は、細孔を有する分離膜を用いて行われる。分離膜としては、例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)等が挙げられる。分離膜としては、限外ろ過膜又は逆浸透膜を用いることが好ましい。膜分離処理は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
分離膜のろ過方式としては、例えば、遠心ろ過、加圧ろ過、クロスフローろ過等が挙げられる。ろ過膜の形状は適宜選択することができ、例えば、中空糸型、スパイラル型、チューブラー型、平膜型等の形態を使用できる。ろ過膜の材質としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等の有機膜、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機膜などを使用できる。
【0022】
精密ろ過膜は、例えば、0.01~10μm程度の細孔径をもつものであってよい。精密ろ過膜の材質は、例えば、高分子膜又はセラミック膜であってよい。ろ過方式としては、ろ過面に垂直に水を流す全量ろ過方式であってよい。
【0023】
限外ろ過膜は、例えば、0.001~0.1μm程度の孔径を有するものであってよく、0.02~0.1μmの孔径を有するものが好ましい。限外ろ過膜の分画分子量は、例えば1000~500000、2000~200000、又は5000~100000であってよい。限外ろ過膜により、精密ろ過膜よりも細かい物質を分離することができる。限外ろ過膜を用いる場合、例えば、ろ過面に対して平行に流すクロスフロー方式が用いられる。
【0024】
逆浸透膜とは、逆浸透現象を利用した分離膜である。逆浸透膜は、一般的には数ナノメートル以下の孔を有する。逆浸透膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンが挙げられる。逆浸透膜としては、例えば、中空糸膜タイプ、スパイラル膜タイプ、又は平膜のディスクタイプを用いることができる。逆浸透膜は、例えば、高圧型逆浸透膜、低圧型逆浸透膜、超低圧型浸透膜等であってよい。
【0025】
脱イオン処理により、水中の不純物を更に除去することができる。脱イオン処理は上述の前処理後に行うことが好ましい。脱イオン処理は、例えば、イオン交換樹脂、イオン交換膜等を用いて行うことができる。イオン交換樹脂を用いる場合、例えば、H型の陽イオン交換樹脂、及びOH型の陰イオン交換樹脂を通水させることにより、水中の陽イオンを水素イオンに、陰イオンを水酸化物イオンに置き換えることができる。
【0026】
脱イオン処理は、例えば、イオン交換樹脂を充填した塔を備える装置により行うことができる。イオン交換樹脂を充填した塔は、例えば、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合して1つの塔に充填した混合塔式であってもよく、それぞれ別の塔に充填した多床塔であってもよい。多床塔式の一例として、2床3塔方式であってよい。2床3塔方式の場合、H塔、脱炭酸塔、及びOH塔で構成される。
【0027】
イオン交換樹脂としては、例えば、母体ポリマーに官能基を導入してイオン交換機能を持たせたものを用いることができる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、スルホン酸基等の強酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、カルボキシ基等の弱酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。陰イオン交換樹脂としては、例えば、4級アンモニウム基等の強塩基を有する強塩基性陰イオン交換樹脂、1~2級アミノ基等の弱塩基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂等が挙げられる。イオン交換樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
蒸留により、水中の不純物を除去することができる。蒸留は公知の方法により行うことができ、例えば水を加熱して気化した蒸気を冷却し凝縮させることにより行うことができる。
【0029】
単量体水溶液中のシリカ濃度は0.02~4.0ppmである。単量体水溶液中のシリカ濃度が0.02ppm以上であることによって、得られた塊状の含水ゲル状重合体を粗砕する際の収率を向上させることができる。また、単量体水溶液中のシリカ濃度が4.0ppm以下であることによって、最終的に得られる吸水性樹脂粒子における残存単量体含量を低減することができる。これらの効果が得られる理由は明らかではないが、本発明者は次のように推察している。重合に用いられる単量体水溶液がシリカを一定以上含むことにより、粗砕装置内での含水ゲル状重合体間の再接着を抑制することができるために、粗砕装置から回収できる量が増加すると考えられる。また、単量体水溶液中のシリカ濃度が一定以下であることにより、重合阻害を防ぎ、最終的に単量体のまま残存する量を低下させることができると考えられる。ただし、本発明は上述の機構に限定されない。
【0030】
単量体水溶液中のシリカ濃度は、0.05ppm以上、0.08ppm以上、0.10ppm以上、又は0.12ppm以上であってもよい。単量体水溶液中のシリカ濃度は、3.5ppm以下、3.0ppm以下、2.5ppm以下、2.0ppm以下、1.5ppm以下、1.0ppm以下、又は0.8ppm以下であってもよい。
【0031】
単量体水溶液中の単量体に対するシリカの質量割合は、例えば、0.025ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.1ppm以上、0.15ppm以上、0.2ppm以上、0.3ppm以上、0.4ppm以上、0.5ppm以上、又は0.6ppm以上であってよい。単量体水溶液中の単量体に対するシリカの質量割合は、例えば、20ppm以下、15ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、3ppm以下、2.5ppm以下、2ppm以下、1.5ppm以下、又は1.1ppm以下であってよい。
【0032】
シリカは、特に種類を問わず、天然又は合成であってよく、結晶性又は非晶質であってよい。合成非晶質シリカは、湿式法シリカ又は乾式法シリカであってよい。シリカは、コロイダルシリカの形態であってもよい。コロイダルシリカは、例えば、非晶質単分散球状二酸化ケイ素粒子が水中に分散したコロイド溶液であってよい。
【0033】
シリカの粒子径は、例えば0.01~50μmであってよい。シリカがコロイダルシリカとして単量体水溶液に含まれる場合、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の粒子径は、例えば0.01~0.3μmであってよい。シリカが合成非晶質シリカとして単量体水溶液に含まれる場合、合成非晶質シリカの粒子径は、例えば0.1~50μmであってよい。
【0034】
シリカの平均粒子径及び粒度分布の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡での1万倍以上の高倍率画像から個々の粒子の粒子径(最長径と最短経の平均)を実測して、複数粒子を測定して平均値を求める方法、又はレーザー回折式粒子径分布測定装置を用いる方法により行う。また、市販品を使用する場合には、そのカタログ値で代用できる。
【0035】
単量体水溶液中のシリカ濃度は、ICP-AES法により測定される水溶液中のケイ素濃度から算出することができる。シリカを単量体水溶液に添加してシリカ濃度を調節する場合は、シリカ添加前の水溶液中のシリカ濃度を予め求め、添加したシリカ量に基づいて、最終的な単量体水溶液中のシリカ濃度を算出してもよい。また、シリカ以外のケイ素含有化合物を添加して用いる場合には、当該ケイ素含有化合物由来のケイ素濃度は本実施形態におけるシリカ濃度に含めない。単量体水溶液中のシリカ濃度は、エチレン性不飽和単量体等の材料を添加する前の単量体水溶液用水単独におけるシリカ濃度を予め測定しておき、必要に応じ添加される既知のシリカ量との合計量から算出することが好ましい。
【0036】
単量体水溶液を調製する際に、単量体水溶液用水のシリカ濃度を調整してもよい。単量体水溶液用水のシリカ濃度の調整は、例えば、単量体水溶液用水におけるシリカ濃度の低減又は増加であってよい。単量体水溶液用水におけるシリカ濃度の低減は、例えば、上述の前処理、蒸留、膜分離処理、脱イオン処理等の処理により行うことができる。単量体水溶液用水におけるシリカ濃度の増加は、例えばシリカを添加することにより行うことができる。シリカ添加は、単量体水溶液用水に対して行ってもよく、単量体水溶液用水に必要な材料の少なくとも一部を添加した後の水に対して行ってもよい。
【0037】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体を含む。エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和カルボン酸及びその塩等のカルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物等;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸及びそれらの塩等のスルホン酸系単量体等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。具体的にはエチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸及びその塩に、他のエチレン性不飽和単量体を共重合させて用いてよい。この場合、エチレン性不飽和単量体の総量のうち、上記(メタ)アクリル酸及びその塩が70~100モル%用いられることが好ましく、80~100モル%用いられることがより好ましく、90~100モル%用いられることが更に好ましい。エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0039】
エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基が予めアルカリ性中和剤により中和されたものを用いることができる。このようなアルカリ性中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いてもよい。アルカリ性中和剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、酸基の中和は、原料であるエチレン性不飽和単量体の重合前に行ってもよく、重合中又は重合後に行ってもよい。
【0040】
アルカリ性中和剤によるエチレン性不飽和単量体の中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで吸水性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在に起因する安全性等に問題が生じないようにする観点から、通常、10~100モル%であることが好ましく、30~90モル%であることがより好ましく、40~85モル%であることが更に好ましく、50~80モル%であることがより更に好ましい。ここで、中和度はエチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度とする。
【0041】
単量体水溶液中におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、通常20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25~70質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。
【0042】
単量体水溶液は、重合開始剤を含んでいてよい。単量体水溶液に含まれる単量体の重合は、単量体水溶液に重合開始剤を添加し、必要により加熱、光照射等を行うことで開始される。重合開始剤としては、光重合開始剤又はラジカル重合開始剤が挙げられ、なかでも水溶性ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、例えばアゾ系化合物、過酸化物等であってよい。
【0043】
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系化合物等を挙げることができる。良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られやすいという観点から、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩及び2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物が好ましい。これらのアゾ系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物類;過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。これらの過酸化物のなかでも、良好な吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素を用いることが好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムを用いることがより好ましい。これらの過酸化物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、重合開始剤と還元剤とを組み合わせて用いて、レドックス重合開始剤として用いることもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL-アスコルビン酸等が挙げられる。
【0046】
重合開始剤の総使用量は、急激な重合反応を回避し、かつ、重合反応時間を短縮する観点から、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体100モルに対して0.005~1モルが好ましく、0.01~0.5モルがより好ましく、0.0125~0.1モルが更に好ましく、0.015~0.05モルがより更に好ましい。
【0047】
単量体水溶液は、内部架橋剤を含むことが好ましい。内部架橋剤を含むことにより、得られる架橋重合体が、その内部架橋構造として、重合反応による自己架橋に加え、内部架橋剤による架橋を有することができる。内部架橋剤としては、例えば重合性不飽和基を2個以上有する化合物が用いられ、好ましくは、重合性不飽和基を2個有する化合物が使用される。例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及び(ポリ)グリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上記ポリオールとマレイン酸及びフマル酸等の不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉;アリル化セルロース;ジアリルフタレート;N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0048】
また、上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物の他に、反応性官能基を2個以上有する化合物を内部架橋剤として用いることができる。例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物;(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、低温での反応性に優れている観点から、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルが好ましい。これら内部架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
内部架橋剤を使用する場合、その使用量は、得られる吸水性樹脂粒子の吸水能等の吸水性能を十分に高めるために、エチレン性不飽和単量体100モルに対して、0.0001モル以上が好ましく、0.001モル以上がより好ましく、0.003モル以上が更に好ましく、0.01モル以上がより更に好ましい。
【0050】
内部架橋剤の添加は、架橋重合体を不溶化させ、好適な吸水能をもたらすものの、内部架橋剤の添加量の増大は、得られる吸水性樹脂粒子の吸水能の低下につながることから、内部架橋剤の量は、エチレン性不飽和単量体100モルに対して、例えば0.50モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.25モル以下であり、更に好ましくは0.05モル以下である。
【0051】
[その他成分]
単量体水溶液には、必要に応じて、連鎖移動剤、増粘剤等の添加剤が含まれていてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。単量体水溶液には、適宜、水以外の水溶性有機溶媒等が配合されていてもよい。
【0052】
[重合]
上述のとおり調製した単量体水溶液を用いて、水溶液重合法により、単量体水溶液中のエチレン性不飽和単量体を重合させる。重合方式としては、例えば、単量体水溶液を撹拌しない状態(例えば、静置状態)で重合する静置重合方式、反応装置内で単量体水溶液を攪拌しながら重合する撹拌重合方式等であってよい。静置重合方式である水溶液静置重合により含水ゲル状重合体を得ることが好ましい。静置重合方式では、重合完了時、反応容器中に存在した単量体水溶液と略同じ体積を占める単一のブロック状の含水ゲル状重合体が得られる。
【0053】
製造の形態は、回分、半連続、連続等であってよい。例えば、水溶液重合において、水溶液静置連続重合においては、連続重合装置に単量体水溶液を連続的に供給しながら重合反応を行い、連続的な(例えば帯状の)含水ゲルを得ることができる。
【0054】
重合温度は、使用する重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより生産性を高めるとともに、重合熱をより容易に除去して円滑に反応を行う観点から、0~130℃が好ましく、10~110℃がより好ましい。重合時間は、使用する重合開始剤の種類や量、反応温度等に応じて適宜設定されるが、1~200分が好ましく、5~100分がより好ましい。
【0055】
[含水ゲル状重合体]
エチレン性不飽和単量体を重合して得られる塊状の含水ゲル状重合体の含水率は、粗砕工程が実施しやすいという観点から30~80質量%が好ましく、40~75質量%がより好ましく、50~70質量%が更に好ましい。含水率は、単量体水溶液の水分量、重合後の乾燥、加湿等の操作により調整される。なお、含水ゲル状重合体の含水率とは、含水ゲル状重合体の総質量に占める水の含量を質量%で表したものである。
【0056】
[粗砕]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、含水ゲル状重合体を粗砕する工程を含む。粗砕により、含水ゲル粗砕物が得られる。含水ゲル粗砕物は、粒子状であってよく、粒子が連なった細長い形状であってもよい。含水ゲル粗砕物の最小辺のサイズは、例えば、0.1~15mm程度であってよく、1.0~10mm程度であることが好ましい。含水ゲル粗砕物の最大辺のサイズは、0.1~200mm程度であってよく、1.0~150mm程度であることが好ましい。
【0057】
粗砕装置としては、例えば、ニーダー(例えば、加圧式ニーダー、双腕型ニーダー等)、ミートチョッパー、カッターミル、ファーマミル等を用いることができる。なかでも、双腕型ニーダー、ミートチョッパー、カッターミルがより好ましい。粗砕装置は後述のゲル乾燥物の粉砕装置と同一種類であってもよい。
【0058】
含水ゲル状重合体を粗砕する際は、粗砕装置投入前に、含水ゲル状重合体を適度な大きさ(例えば5cm角程度)に予め裁断してもよい。
【0059】
[乾燥]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、含水ゲル粗砕物を乾燥する工程を含むことが好ましい。含水ゲル粗砕物中の水を含む溶媒を加熱及び/又は送風により除去することで、含水ゲル粗砕物を乾燥し、ゲル乾燥物を得ることができる。乾燥の方法は、自然乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の一般的方法であってよい。乾燥は、例えば常圧下又は減圧下であってよく、乾燥効率を高めるために窒素等の気流下等で行ってもよい。乾燥は、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥が常圧で行われる場合の乾燥温度は、好ましくは70~250℃であり、より好ましくは80~200℃である。乾燥工程はゲル粗砕物の含水率が20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下になるまで行う。
【0060】
[粉砕]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、ゲル乾燥物を更に粉砕する工程を含んでもよい。ゲル乾燥物の粉砕により、ゲル粉砕物が得られる。ゲル乾燥物の粉砕は、公知の粉砕機を使用することができ、例えば、ローラーミル(ロールミル)、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ロータビータミル等)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル等)等が使用できる。好ましくは、高速回転粉砕機が使用される。粉砕機は、出口側に多孔板やスクリーン、グリッド等の、粉砕粒子の最大粒径を制御する開口部を有していてもよい。開口部の形状は多角形、円形等であってよく、開口部の最大径は0.1~5mmであってよく、0.3~3.0mmが好ましく、0.5~1.5mmがより好ましい。
【0061】
[分級]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、ゲル粉砕物を分級する工程を含んでもよい。分級とは、ある粒子群を、粒径に応じて、2つ又はそれ以上の数の、粒度分布の異なる粒子群に分ける操作のことをいう。また、分級後の粒子を再度粉砕して、粉砕工程と分級工程とを繰り返すなど、複数の分級工程を行ってもよく、後述する表面架橋工程後に分級工程を行ってもよい。
【0062】
ゲル粉砕物の分級は、公知の分級方法を使用することができ、例えば、スクリーン分級、風力分級等であってよく、スクリーン分級であることが好ましい。スクリーン分級としては、振動篩、ロータリシフタ、円筒撹拌篩、ブロワシフタ、ロータップ式振とう器等が挙げられる。スクリーン分級とはスクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と通過しない粒子とに分級する方法をいう。風力分級とは、空気の流れを利用して粒子を分級する方法をいう。
【0063】
例えば所定の目開きの篩を用いて分級することにより、ゲル粉砕物の粒度調節をすることができる。また、分級したゲル粉砕物の混合比率を調整することによって所定範囲の粒度に調整してもよい。粒度調整は、最終的に得られる吸水性樹脂粒子に対して行ってもよい。
【0064】
ゲル粉砕物又は最終的に得られる吸水性樹脂粒子は、全重量の90%以上の粒径が、850μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。なお、本明細書において、粒径とは篩分け法により測定される粒径を意味する。
【0065】
ゲル粉砕物又は吸水性樹脂粒子は、中位粒子径が100~800μmであることが好ましく、150~700μmであることがより好ましく、200~600μmであることが更に好ましく、250~500μmであることがより更に好ましい。中位粒子径は、以下の方法で測定することができる。JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせる。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級する。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求める。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットする。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得る。
【0066】
[表面架橋]
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、粉砕工程後に、表面架橋工程を含むことが好ましい。表面架橋は、例えば、表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)を架橋重合体に対して添加して反応させることにより行うことができる。表面架橋剤の添加は、粉砕工程後のいずれかの時期に行えばよく、分級工程の前若しくは後、又は乾燥工程の前若しくは後のゲル粉砕物に対して行うことができる。なかでも、乾燥工程以降かつ分級工程後の粒度調整されたゲル粉砕物に対して行うことが好ましい。表面架橋剤を添加し表面架橋処理を行うことにより、架橋重合体の表面近傍の架橋密度が高まるため、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能を高めることができる。
【0067】
表面架橋剤の添加は、例えば、表面架橋剤溶液の添加、又は表面架橋剤溶液の噴霧添加により行うことができる。表面架橋剤の添加形態は、表面架橋剤を均一に分散する観点から、表面架橋剤を水及び/又はアルコール等の溶媒に溶解し、表面架橋剤溶液として添加することが好ましい。また、表面架橋工程は、1回又は2回以上の複数回に分割して実施してもよい。
【0068】
表面架橋剤は、例えば、エチレン性不飽和単量体由来の官能基との反応性を有する官能基(反応性官能基)を2個以上含有するものであってよい。表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらのなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物及び/又はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオール類が好ましく、ポリグリシジル化合物がより好ましい。これらの表面架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えばポリグリシジル化合物とポリオール類とを組み合わせて使用してよい。
【0069】
表面架橋剤の添加量は、吸水性樹脂粒子の表面近傍の架橋密度を適度に高める観点から、通常、重合に使用したエチレン性不飽和単量体の総量100モルに対して、好ましくは0.0001~1モル、より好ましくは0.001~0.5モルである。
【0070】
表面架橋工程は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して1~200質量部の範囲の水の存在下で行うことが好ましい。適宜、水及び/又はアルコール等の水溶性有機溶媒を用いることで水分量を調整することができる。表面架橋工程時の水分量を調整することによって、より好適に吸水性樹脂粒子の粒子表面近傍における架橋を施すことができる。
【0071】
表面架橋剤の処理温度は、使用する表面架橋剤に応じて適宜設定され、20~250℃であってよく、処理時間は、1~200分が好ましく、5~100分がより好ましい。
【0072】
表面架橋は、一度のみ行ってもよく、複数のタイミングで行ってもよい。表面架橋は、粉砕工程後の実施に代えて、又は粉砕工程後の実施に加えて、粗砕後粉砕前に実施してもよい。
【0073】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、架橋重合体のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含むことができる。追加成分は、架橋重合体の粒子の内部、表面上、又はこれらの両方に配置され得る。
【0074】
吸水性樹脂粒子は、架橋重合体の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、架橋重合体と無機粒子とを混合することにより、架橋重合体の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。
【0075】
吸水性樹脂粒子が、表面上に配置された無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、架橋重合体の全質量を基準として下記の範囲であってよい。無機粒子の含有量は、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は0.2質量%以上であってよい。無機粒子の含有量は、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.3質量%以下であってよい。
【0076】
無機粒子の平均粒子径は、0.1~50μm、0.5~30μm、又は1~20μmであってよい。平均粒子径は、粒子の特性に応じて、細孔電気抵抗法又はレーザー回折・散乱法によって測定できる。
【0077】
本実施形態に係る製造方法により得られる吸水性樹脂粒子は、例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野において用いることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
(単量体水溶液用水の調製)
河川より取得した原料水(シリカ濃度8.7ppm)を栗田工業社製二層ろ過器DM-24L(ろ材:アンスラサイト、ろ過砂)に通した後、酢酸セルロース製中空糸限外ろ過(UF)膜モジュール(FT50-AC-FUC1583、ダイセン・メンブレン・システムズ社製)を有するクロスフロー方式の膜ろ過機に通し、更にその後、H+及びOH-のイオン交換樹脂によるイオン交換処理を行った。得られたUF膜処理イオン交換水(シリカ濃度0.15ppm)を吸水性樹脂粒子の製造に用いた。
【0080】
(単量体水溶液の調製)
2Lのセパラブルフラスコに162.8g(2.26モル)の100%アクリル酸を入れた。セパラブルフラスコ内を撹拌しながらUF膜処理イオン交換水140.5gを加えた後、氷浴下で141.2gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより、単量体濃度45質量%のアクリル酸部分中和液を調製した。
【0081】
撹拌子(直径8mm、長さ45mm)を備えたステンレス容器(内径:200mm、高さ:60mm)内に、上記アクリル酸部分中和液444.4g、UF膜処理イオン交換水72.0g、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.071g(0.408ミリモル)を入れ、撹拌子を回転させて成分を均一に分散させ、混合物を得た。ステンレス容器内を窒素置換後、上記混合物の温度を25℃に調整した。次いで、2質量%過硫酸カリウム水溶液8.09g(0.599ミリモル)及び0.5質量%L-アスコルビン酸水溶液1.70gを、順番に300rpmの撹拌下で滴下することにより、単量体水溶液を調製した。単量体水溶液中のアクリル酸濃度は38%であり、単量体水溶液中のシリカ濃度は、0.14ppmであった。
【0082】
(重合)
上記の0.5質量%L-アスコルビン酸水溶液を滴下後、直ちに重合が開始した。重合開始後、単量体水溶液で重合反応が進行すると単量体水溶液の粘度が増加し、撹拌子が停止した。重合開始から15分後、得られた含水ゲル状重合体を容器に入れたまま75℃の水浴に浸し、20分間熟成させた。得られた含水ゲル状重合体の厚みは約13mmであった。
【0083】
(粗砕)
熟成後の含水ゲル状重合体全量を容器から取り出し、5cm間隔の格子状に切れ目を入れて裁断した。裁断した含水ゲル状重合体の全量を喜連ローヤル社製ミートチョッパー12VR-750SDXに順次投入し、粗砕した。ミートチョッパーの出口に位置するプレートの穴の径は6.4mmとした。粗砕は、ミートチョッパーのプレートから、粗砕されたゲル(含水ゲル粗砕物)が出てこなくなるまで行った。このとき、ミートチョッパーに投入した含水ゲル状重合体量は410gであり、排出され回収できた含水ゲル粗砕物は353gであった。粗砕効率は以下の式から算出した。粗砕工程の収率は86%であった。
粗砕効率(%)=[得られた含水ゲル粗砕物重量/粗砕前含水ゲル状重合体重量]×100
【0084】
次いで、含水ゲル粗砕物を180℃で30分間熱風乾燥してゲル乾燥物を得た。ゲル乾燥物30gを採取して、小型粉砕機(Wonder Blender WB-1)で2秒間粉砕した後、目開き850μmの篩を通過し、106μmの篩上に残留した粒子を回収し、吸水性樹脂粒子として後述の評価に用いた。分級後、回収した吸水性樹脂粒子は約10gであった。
【0085】
[実施例2]
実施例1で用いたUF膜処理イオン交換水を、更にADVANTEC社製純水製造装置RFD343HAに通すことにより、更に蒸留処理及びイオン交換処理を施し、蒸留処理イオン交換水を得た。蒸留処理イオン交換水のシリカ濃度は0.02ppm未満であった。蒸留処理イオン交換水に、非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)をシリカ濃度1.5ppmとなるように加え、シリカ濃度1.5ppm水を得た。
【0086】
UF膜処理イオン交換水の代わりにシリカ濃度1.5ppm水を用いたこと以外は実施例1と同様にして、単量体水溶液を調製した。単量体水溶液のシリカ濃度は0.63ppmであった。当該単量体水溶液を用いて実施例1と同様の処理を行い、吸水性樹脂粒子を得た。粗砕工程において、ミートチョッパーに投入した含水ゲル状重合体量は431gであり、排出され回収できた含水ゲル粗砕物は346gであった。粗砕効率は80%であった。
【0087】
[比較例1]
実施例1で用いたUF膜処理イオン交換水をADVANTEC社製純水製造装置RFD343HAに通すことにより、更に蒸留処理及びイオン交換処理を施し、蒸留処理イオン交換水を得た。蒸留処理イオン交換水のシリカ濃度0.02ppm未満であった。
【0088】
UF膜処理イオン交換水の代わりに蒸留処理イオン交換水を用いたこと以外は実施例1と同様にして、単量体水溶液を調製した。単量体水溶液のシリカ濃度は0.02ppm未満であった。当該単量体水溶液を用いて実施例1と同様の処理を行い、吸水性樹脂粒子を得た。粗砕工程において、ミートチョッパーに投入した含水ゲル状重合体量は409gであり、排出され回収できた含水ゲル粗砕物は242gであった。粗砕効率は59%であった。
【0089】
[比較例2]
比較例1で用いた蒸留処理イオン交換水に、非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)をシリカ濃度10ppmとなるように加え、シリカ濃度10ppm水を調製した。
【0090】
UF膜処理イオン交換水の代わりにシリカ濃度10ppm水を用いたこと以外は実施例1と同様にして、単量体水溶液を調製した。単量体水溶液のシリカ濃度は4.22ppmであった。当該単量体水溶液を用いて実施例1と同様の処理を行い、吸水性樹脂粒子を得た。粗砕工程において、ミートチョッパーに投入した含水ゲル状重合体量は422gであり、排出され回収できた含水ゲル粗砕物は359gであった。粗砕効率は85%であった。
【0091】
[比較例3]
比較例1で用いた蒸留処理イオン交換水に、非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)をシリカ濃度1000ppmとなるように加え、シリカ濃度1000ppm水を調製した。
【0092】
UF膜処理イオン交換水の代わりにシリカ濃度1000ppm水を用いたこと以外は実施例1と同様にして、単量体水溶液を調製した。単量体水溶液のシリカ濃度は404ppmであった。当該単量体水溶液を用いて実施例1と同様の処理を行い、吸水性樹脂粒子を得た。粗砕工程において、ミートチョッパーに投入した含水ゲル状重合体量は416gであり、排出され回収できた含水ゲル粗砕物は332gであった。粗砕効率は80%であった。
【0093】
[シリカ濃度の測定]
用いた各種水におけるシリカ濃度の測定は、下記方法によりSi濃度を測定し、測定されたSi濃度からSiO2濃度に換算して求めた。液中のSi濃度は、日本ジャーレルアッシュ製IRIS Advantage型を使用してICP-AES法で測定した。Si濃度は、富士フィルム和光純薬株式会社製ケイ素標準液(1000ppm)を用いて作製した検量線を用いて算出した。測定した条件を以下に示す。
分析条件 :高周波出力 1350W
測定波長 251.6nm
補助ガス流量 0.5L/min
ネブライザーガス圧 26psi
センターチューブ内径 2mm
ポンプ回転数 130rpm
積分時間 15秒
測定回数 3回
前処理工程 :希釈無し(サンプル直接導入)
【0094】
[残存単量体含量測定]
得られた吸水性樹脂粒子における残存単量体含量を以下の方法により測定した。測定は25±2℃、湿度50±10%の環境下で行った。
500mL容のビーカーに生理食塩水500gを入れ、スターラー(スターラー台:小池精密機器製作所製モデルM-16GM、スターラーチップ:直径0.7cm、長さ3cm、回転リング無し)を用いて600rpmで回転させた。撹拌しているビーカーに吸水性樹脂粒子2.0gを添加して60分間撹拌した。上記ビーカーの内容物を、目開き75μmのJIS標準篩及びろ紙(ADVANTEC社製、濾紙No.5C)によりろ過して、吸水ゲルとろ液と(抽出液)に分離した。得られたろ液中に溶解している単量体含量を、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。ここで測定対象とした残存単量体は、アクリル酸及びそのアルカリ金属塩である。測定値を、吸水性樹脂粒子質量当たりの値に換算して残存単量体含量(ppm)とした。結果を表1に示す。
【0095】
【0096】
実施例では、比較例に比べて粗砕効率が高く、かつ得られた吸水性樹脂粒子における残存単量体の含量が低く抑えられていた。