(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】回路基板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20240412BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240412BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20240412BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L23/12 Z
H01L23/12 Q
H01L23/12 C
H05K3/38 E
(21)【出願番号】P 2022188028
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2021543688の分割
【原出願日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019159468
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】米津 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】末永 誠一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 幸子
(72)【発明者】
【氏名】那波 隆之
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7240511(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/019602(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/137651(WO,A1)
【文献】特開2015-092552(JP,A)
【文献】特開平10-158073(JP,A)
【文献】特開平05-319946(JP,A)
【文献】特開2012-115846(JP,A)
【文献】特開平05-148053(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101468799(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101148365(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 - 37/04
H01L 23/12
H01L 23/13
B23K 1/19
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板と、
回路形状を有する金属部材と、
前記
セラミックス基板と前記金属部材との間に設けられた接合層であって、
炭素の層を含む第1粒子と、
銀、銅、スズ、及びインジウムからなる群より選択された少なくとも1つの金属を含む第1領域と、
チタンを含み、前記第1粒子と前記第1領域との間に設けられた第2領域と、
を含み、前記第2領域におけるチタンの質量濃度は前記第1領域におけるチタンの質量濃度よりも高い、前記接合層と、
を備えた回路基板。
【請求項2】
前記第2領域におけるチタンの質量濃度は、前記第1粒子におけるチタンの質量濃度よりも高い請求項
1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記第1領域におけるチタンの質量濃度は前記第2領域におけるチタンの質量濃度の80%以下である、請求項1ないし請求項
2のいずれか1つに記載の回路基板。
【請求項4】
前記第2領域におけるチタンの含有率は、50質量%以上である請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の回路基板。
【請求項5】
前記第2領域は、前記第1粒子の周りに設けられ、
前記第2領域は、第2粒子を含み、
前記第2粒子は、チタンと、酸素、窒素、及び炭素からなる群より選択された少なくとも1つと、の結晶を含み、
前記第2粒子の大きさは、前記第1粒子の大きさよりも小さい請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の回路基板。
【請求項6】
前記第1粒子は、炭素の第1結晶層を含む請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1ないし請求項
6のいずれか1つに記載の回路基板と、
前記回路基板に搭載された半導体素子と、
を備えた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回路基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接合層を介して基板と金属部材を接合させた接合体がある。接合体における接合の強度は、高いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2011/034075公報
【文献】国際公開WO2018/021472公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、接合の強度を向上できる、回路基板及び半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る回路基板は、基板と、回路形状を有する金属部材と、接合層と、を含む。前記接合層は、前記基板と前記金属部材との間に設けられる。前記接合層は、炭素の層を含む第1粒子と、金属を含む第1領域と、チタンを含む第2領域と、を含む。前記第2領域は、前記第1粒子と前記第1領域との間に設けられる。前記第2領域におけるチタンの質量濃度は前記第1領域におけるチタンの質量濃度よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る接合体を示す模式的断面図である。
【
図2】
図1に示す接合体の一部を拡大した模式的断面図である。
【
図3】実施形態に係る接合体の一部を示す模式的断面図である。
【
図4】
図3に示す接合体の一部を拡大した模式的断面図である。
【
図5】
図3に示す接合体の一部を拡大した模式的断面図である。
【
図6】実施形態に係る接合体の一部を示す模式的断面図である。
【
図7】実施形態に係る接合体の一部を示す模式的断面図である。
【
図8】実施形態に係る接合体の一部を示す模式的断面図である。
【
図9】実施形態に係る接合体を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る接合体を示す模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る接合体100は、基板1、金属部材2、及び接合層3を含む。接合層3は、基板1と金属部材2との間に設けられる。
【0009】
基板1は、珪素(Si)及びアルミニウム(Al)からなる群より選択された少なくとも1つと、窒素(N)、酸素(O)、及びカーボン(C)からなる群より選択された少なくとも1つと、を含む。基板1は、ジルコニウム(Zr)及び酸素をさらに含んでも良い。基板1は、例えばセラミックス基板である。セラミックス基板として、窒化珪素基板、窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ジルコニア含有アルミナ基板(アルジル基板)、又は炭化珪素基板を用いることができる。
【0010】
基板1の3点曲げ強度は、500MPa以上であることが好ましい。基板1の3点曲げ強度が500MPa以上であると、基板1の厚みを0.4mm以下に薄くすることができる。3点曲げ強度が500MPa以上のセラミックス基板としては、窒化珪素基板、高強度化した窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ジルコニア含有アルミナ基板、炭化珪素基板等が挙げられる。
【0011】
これらのセラミックス基板の中では、窒化珪素基板が好ましい。窒化珪素基板を用いることで、3点曲げ強度は500MPa以上、さらには600MPa以上を実現することができる。基板1の3点曲げ強度が高いと、基板1の厚みを小さくした場合でも、熱サイクル試験特性(TCT特性)を向上させることができる。また、窒化珪素基板を用いることで、熱伝導率は50W/m・K以上、さらには80W/m・K以上を実現することができる。近年は、高強度と高熱伝導の両方を実現することができる窒化珪素基板もある。3点曲げ強度が500MPa以上、熱伝導率が80W/m・K以上の窒化珪素基板を用いることで、基板1の厚みを0.30mm以下と薄くすることもできる。3点曲げ強度は、JIS-R-1601に準じて測定される。JIS-R-1601は、ISO14704(2000)に対応する。熱伝導率は、JIS-R-1611に準じて測定される。JIS-R-1611は、ISO18755(2005)に対応する。
【0012】
金属部材2は、銅(Cu)及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む。金属部材2は、例えば、銅板、銅合金板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等である。これらの部材には、銅及びアルミニウム以外の元素が含まれても良い。例えば、金属部材2は、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、及びクロム(Cr)からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含んでも良い。具体的な例として、金属部材2は、Cu-W-Ni、Cu-Mo、Cu-Cr、Cu-W、又はAl-Siを含む。金属部材2は、Cu-W-Ni、Cu-Mo、Cu-Cr、Cu-W、及びAl-Siから選択された少なくとも2つからなるクラッド材を含んでも良い。金属部材2は、配線パターンに加工されていても良い。金属部材2の厚みは0.3mm以上、さらには0.7mm以上であることが好ましい。金属部材2を厚くすることにより、放熱性を向上させることができる。金属部材2が回路として用いられる場合には、通電容量を増やすことができる。
【0013】
熱抵抗(Rth)は、式:Rth=H/(k×A)により求められる。Hは、熱伝達経路を表す。kは、熱伝導率を表す。Aは、放熱面積を表す。熱伝達経路(H)を短くすること、熱伝導率(k)を大きくすること、又は放熱面積(A)を大きくすることにより、熱抵抗(Rth)を小さくできる。実施形態に係る接合体100は、基板1を薄型化することにより、熱伝導率が低い部分の熱伝達経路を短くできる。また、金属部材2を厚くすることにより、接合体100の熱伝導率(k)および放熱面積(A)を大きくすることができる。この結果、熱抵抗(Rth)を小さくすることができる。
【0014】
接合層3は、低融点の金属を含むことができる。当該金属の融点は、基板1の融点よりも低く、金属部材2の融点以下である。金属は、例えば、銀(Ag)、銅、スズ(Sn)、及びインジウム(In)からなる群より選択された少なくとも1つを含む。接合体100では、接合層3は、活性金属及び炭素をさらに含む。炭素が添加されることで、接合時のろう材の流動及び濡れを抑制できる。活性金属としては、主にチタン(Ti)が用いられる。チタンと、ジルコニウム及びハフニウム(Hf)からなる群より選択された少なくとも1つと、が活性金属として用いられても良い。
【0015】
例えば、接合層3は、銅、チタン、及び炭素を含む。接合層3は、銀をさらに含んでも良い。接合層3における銀の含有率は、0質量%以上80質量%以下であることが好ましい。銅の含有率は、15質量%以上88質量%以下であることが好ましい。接合強度を向上させるには、銀の含有率は45質量%以上80質量%以下、銅の含有率は15質量%以上45質量%以下であることが好ましい。チタンの含有率は、1質量%以上12質量%以下であることが好ましい。炭素の含有率は、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。炭素の含有率が0.1質量%未満のとき、ろう材の流動や濡れを抑制する効果が不十分となる可能性がある。炭素の含有率が2質量%を超えると、ろう材の流動性が低くなりすぎ、基板1への均一な塗布が難しくなる可能性がある。接合層3がスズ(Sn)及びインジウム(In)から選択される1つ以上を含むとき、スズ(Sn)及びインジウム(In)から選択される1つ以上の含有率は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。スズ(Sn)又はインジウム(In)は、接合ろう材の融点を低下させる。
【0016】
接合層3の厚みは、5μm以上60μm以下であることが好ましい。接合層3の厚みが5μmより小さいと、基板1表面の凹凸が接合層3の表面へ影響し、接合層3と基板1との均一な接合を阻害する可能性がある。接合層3の厚みが60μmを超えると、熱サイクルをかけた際の熱応力を緩和する機能が不足し、強度が低下する可能性がある。また、金属部材2及び接合層3をエッチングする際に、接合層3がエッチングされにくくなる可能性がある。このため、接合層3の厚みは、5μm以上60μm以下、さらには10μm以上35μm以下が好ましい。
【0017】
図1では、基板1に接合された1つの金属部材2を示している。実施形態に係る接合体100はこの例に限定されず、基板1の1つの面に複数の金属部材2が接合されていても良い。基板1の1つの面に1つ以上の金属部材2が接合され、基板1の反対側の面に別の1つ以上の金属部材2が接合されていても良い。
【0018】
図2は、
図1に示す接合体の一部を拡大した模式的断面図である。
図2は、
図1の部分P1の拡大図である。
図2に示すように、接合層3は、第1粒子11及び第1領域21を含む。第1粒子11は、炭素を含む。第1領域21は、低融点の金属を含む。第1領域21は、第1粒子11の周りに設けられる。例えば、後述する粉体10が、第1粒子11を含む。粉体10は、第1粒子11の周りに設けられた第2領域22を含む。粉体10の第2領域22は、第1領域21に接する。
【0019】
第1粒子11は、第1領域21中に複数設けられる。複数の第1粒子11の少なくとも2つは、互いに離れている。例えば、各第1粒子11は、第1領域21中に分散している。
【0020】
第1領域21は、例えば、銀を含む第1部分領域21aと、銅を含む第2部分領域21bと、を含む。例えば、第1部分領域21aは、銀を多く含む銀リッチ相である。第1部分領域21aにおける銀の含有量は、第1部分領域21aにおける銅の含有量よりも多い。例えば、第2部分領域21bは、銅を多く含む銅リッチ相である。第2部分領域21bにおける銅の含有量は、第2部分領域21bにおける銀の含有量よりも多い。
【0021】
図3、
図6、及び
図7は、実施形態に係る接合体の一部を示す模式的断面図である。
図4及び
図5は、
図3に示す接合体の一部を拡大した模式的断面図である。
図3、
図6、及び
図7は、第1粒子11近傍の拡大図である。
図4は、
図3の部分P4の拡大図である。
図5は、
図3の部分P5の拡大図である。
【0022】
図3に示すように、第1粒子11と第1領域21との間には、第2領域22が設けられる。第2領域22は、第1粒子11の周りに存在する。つまり、第1領域21は、第1粒子11及び第2領域22を含む粉体10の周りに設けられる。例えば、第2領域22は、第1粒子11の外縁を全て囲っている。第2領域22は、チタンを含み、第1粒子11と第1領域21との間に設けられる。第2領域22におけるチタンの濃度a(質量%)は、第1領域21におけるチタンの濃度b(質量%)よりも高く、第1粒子11におけるチタンの濃度c(質量%)よりも高い。つまり、濃度a>濃度bであり、濃度a>濃度cである。第1粒子11におけるチタンの濃度cは、第2領域22におけるチタンの濃度aの50%以下であり、好ましくは25%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、第1領域21におけるチタンの濃度bは、第2領域22におけるチタンの濃度aの80%以下であり、好ましくは70%以下、さらに好ましくは50%以下である。
【0023】
図4に示すように、第2領域22は、複数の第2粒子12を含む。第1粒子11は、複数の第2粒子12により囲まれている。複数の第2粒子12の少なくとも1つは、チタンと、酸素、窒素、及び炭素からなる群より選択された少なくとも1つと、を含む。例えば、複数の第2粒子12の少なくとも1つは、チタンと、酸素、窒素、及び炭素からなる群より選択された少なくとも1つと、の結晶を含む。例えば、各第2粒子12は、窒化チタン、酸化チタン、又は酸窒化チタンなどの結晶粒である。複数の第2粒子12の少なくとも1つの大きさは、第1粒子11の大きさよりも小さい。
図4の例では、第2粒子12の形状は、粒状である。第2粒子12の形状は、針状など、図示した形状以外であっても良い。
【0024】
図5及び
図6に示すように、第1粒子11は、複数の炭素の層Lを含む。例えば、複数の層Lは、第1層L1及び第2層L2を含む。
図5に示す例のように、第1層L1と第2層L2が互いに離れていても良い。第1層L1と第2層L2との間に、第3領域23が設けられている。
【0025】
第3領域23は、低融点の金属を含む。第3領域23に含まれる金属元素は、第1領域21に含まれる金属元素と同じでもよい。第3領域23は、基板から供給される元素を含んでいてもよい。つまり、第3領域23は、基板に含まれる元素と同じ種類の元素を少なくとも1つ含んでもよい。例えば、第1領域21が銀及び銅を含むとき、第3領域23は、銀及び銅からなる群より選択された少なくとも1つを含む。
【0026】
複数の層Lの少なくとも1つは、例えば結晶性である。層Lは、例えばグラファイト結晶を含む。グラファイト結晶では、炭素が規則的に配列している。第1層L1及び第2層L2は、第1方向D1に沿って設けられている。第1粒子11の形状は、例えば
図3に示すように、扁平である。断面の位置によっては、第1粒子11の形状が円状となる可能性もある。第1粒子11が扁平形であるとき、第1方向D1における第1粒子11の長さLe1は、例えば、第1方向D1と交差する第2方向D2における第1粒子11の長さLe2の、1.2倍以上40倍以下である。例えば、第2方向は、一断面において、長さLe2が最短となる方向である。
【0027】
第1粒子11の長さLe1及びLe2の測定方法、長さLe2に対する長さLe1の比の計算方法を説明する。接合層3の断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)により、単位面積として厚み方向に15μm×表面方向に100μmの拡大写真を撮影する。厚み方向は、基板1と金属部材2を結ぶ方向に対応する。表面方向は、厚み方向に対して垂直な一方向である。SEM写真の倍率は「1000倍」に設定する。SEM写真に写るそれぞれの第1粒子11に関し、第1粒子11の外縁上の最も離れた2点同士の間の距離を、長さLe1とする。当該2点を結ぶ線分に対して垂直であり、その線分の中点を通る線分における第1粒子11の長さを、長さLe2とする。1つの視野で見えるそれぞれの第1粒子11に対して、長さLe1及びLe2を測定する。それぞれの第1粒子11の長さLe1及びLe2に関し、長さLe2に対する長さLe1の比(Le1/Le2)を計算する。この作業を3つの視野に対して行うことで、それぞれの視野における長さLe2に対する長さLe1の比が得られる。全ての比の平均値が、その接合体100における、長さLe2に対する長さLe1の比である。当該比は、1.2以上40以下である。
【0028】
第2領域22は、第1部分領域21aと接する。第2領域22は、第2部分領域21bと接しても良いし、第2部分領域21bと接しなくても良い。
【0029】
第1粒子11及び第2領域22を含む複合粒子である粉体10は、接合層3中に複数設けられる。複数の粉体10の少なくとも2つは、互いに離れている。例えば、各粉体10は、第1領域21中に分散している。
【0030】
図7に示すように、接合層3は、チタン及び窒素を含む第4領域24を含んでも良い。第4領域24は、基板1と第1領域21との間に位置する。粉体10は、第4領域24から離れていても良いし、接していても良い。例えば、第4領域24と接する粉体10の数に対する、第4領域24から離れた粉体10の数の比は、9.0以上である。この比は、30μm×200μmの領域をSEMで観察し、その観察領域に存在する粉体10に基づいて計算される。観察領域は、任意の一辺からその反対の辺まで第4領域24が連続的に確認できるように、設定される。粉体10が第4領域24から離れている場合、粉体10と第4領域24との間には、第1部分領域21a又は第2部分領域21bが位置する。
【0031】
図7に示すように、接合層3は、第3粒子13を含んでも良い。第3粒子13は、チタンと、珪素及びスズからなる群より選択された少なくとも1つと、を含む。例えば、複数の第3粒子13が第1領域21中に分散している。第3粒子13は、第4領域24と接していても良い。
【0032】
第1粒子11及び第2領域22の構造及び大きさは、例えば、SEM、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)、又は走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;STEM)を用いて確認できる。第1粒子11、第1領域21、及び第2領域22のそれぞれに含まれる元素、及び各元素の濃度は、例えば、STEMによる元素マッピングを用いて確認できる。
【0033】
実施形態に係る接合体100は、例えば以下の方法により製造される。
まず、基板1を用意する。基板1の上面に、ろう材ペーストを塗布する。ろう材ペーストは、銀、銅、チタン、及び炭素を含む。ろう材ペーストの上に、金属部材2を配置する。ろう材ペーストの厚みは、5μm以上60μm以下、さらには10μm以上40μm以下であることが好ましい。塗布厚みが5μm未満のとき、ろう材が不足して接合強度が低下する可能性がある。塗布厚みが60μmを超えると、塗工難度が上昇し、ろう材ペーストを均一性良く塗ることが難しくなる。ろう材ペーストの塗りムラが生じると、基板1と金属部材2との間の接合強度が低下する可能性がある。基板1の上面及び下面にそれぞれ金属部材2を設ける場合は、基板1の上面及び下面にそれぞれろう材ペーストを塗布する。
【0034】
金属部材2が設けられた基板1を加熱する。最初に、窒素雰囲気中で、圧力13.3Paにて、500℃付近まで昇温する。温度を480℃から500℃の範囲に保持し、基板1を30分以上加熱する。この際、ろう材ペーストに含まれるバインダー成分が溶融し、炭素は溶融せずに残留する。残留した炭素の周りにチタンを含む粒子が集まる。これにより、チタンを含む複数の粒子が、炭素を含む粒子の周りに設けられる。なお、窒素雰囲気中の圧力は、0.01Pa以上から常圧以下までの範囲が好ましい。常圧は、1気圧(0.101325MPa)である。圧力は、5Pa以上であることがより好ましい。また、窒素雰囲気は、処理空間に存在する気体中の窒素濃度が50vol%以上であることを指す。窒素雰囲気における窒素濃度は、70vol%以上であることが好ましい。窒素雰囲気は、窒素の他に、酸素、又は希ガスのような不活性ガスを含んでも良い。例えば、空気を減圧して、窒素雰囲気を得ても良い。空気の少なくとも一部が、窒素ガス、又は窒素ガスと希ガスの混合ガスに置換されても良い。好ましくは、窒素雰囲気における窒素以外のガスに対する、希ガスの割合は、0.5vol%以上である。
【0035】
次に、10-3Pa以下まで減圧する。温度を550℃から600℃の間の範囲に保持し、基板1を30分以上加熱する。この処理により、チタンを含む複数の粒子が安定化する。続いて、温度を700℃から950℃の間の範囲に保持し、基板1を10分以上、好ましくは30分以上加熱する。これにより、ろう材ペーストに含まれる金属が溶融し、基板1と金属部材2が接合される。
【0036】
その後、金属部材2へのエッチング工程が行われても良い。エッチング工程により金属部材2をパターニングする。接合体100を半導体回路基板として使う場合には、基板1に接合された1つ以上の金属部材2をパターン形状(回路形状)に加工する。
【0037】
図8は、実施形態に係る接合体の一部を示す模式的断面図である。
図8は、加工後の金属部材2の一例を示す。例えば、基板1は、第1面S1を有する。金属部材2は、第1面S1に接合層3を介して接合される。
【0038】
加工後の金属部材2の側面2Sの少なくとも一部は、
図8に示すように、第1面S1に垂直な第3方向D3に対して傾斜していることが好ましい。また、接合層3の一部は、第3方向D3において、基板1と金属部材2との間に挟まれていないことが好ましい。すなわち、接合層3は、基板1と金属部材2との間からはみ出たはみ出し部3Jを含むことが好ましい。側面2Sが傾斜し、はみ出し部3Jが設けられることで、基板1と金属部材2の応力を緩和できる。これにより、TCT特性を向上させることができる。
【0039】
第3方向D3と交差する第4方向D4におけるはみ出し部3Jの長さWは、10μm以上150μm以下であることが好ましい。第4方向D4は、例えば第1面S1に平行である。はみ出し部3Jの厚みTに対するはみ出し部3Jの長さWの比は、0.5以上3.0以下であることが好ましい。より好ましくは、厚みTに対する長さWの比は、1.0以上2.0以下である。はみ出し部3Jの厚みTは、はみ出し部3Jの第3方向D3における長さに対応する。はみ出し部3Jの長さWと厚みTを制御することにより、熱応力(収縮及び膨張)の方向性をより均一にできる。これにより、基板1及び接合層3におけるクラックの発生を抑制できる。
【0040】
金属部材2は、接触面CSにおいて接合層3と接触している。金属部材2の厚み方向(第3方向D3)の中心を通る線分を、中心線CLとする。中心線CLは、側面2Sと交点ISにおいて交わる。側面2Sの傾斜角度θ1は、接触面CSの端部と交点ISを結ぶ線分の第3方向D3に対する角度で表される。傾斜角度θ1は、40度以上84度以下であることが好ましい。
【0041】
金属部材2の上端部の角度θ2は、85度以上95度以下であることが好ましい。角度θ2は、金属部材2の上面2Uと側面2Sとの間の角度で表される。金属部材2の厚みが0.6mm以上、さらには0.8mm以上であるときに、特にこの構造が有効である。傾斜角度θ1を40~84度、角度θ2を85~95度とすることで、応力を緩和しつつ、平坦な上面2Uの面積を増大できる。上面2Uの面積が増大すると、半導体素子を搭載できる面積を広くできる。半導体素子を搭載できる面積が広くなることで、回路設計の自由度を高めることができる。言い換えると、実施形態に係る接合体は、回路基板に好適である。
【0042】
接合体100に熱応力が加わると、強度の低い部分が最初に破壊される。基板1として、3点曲げ強度500MPa以上のセラミックス基板を用いることにより、基板1にクラックが発生することを抑制できる。基板1の強度が低いと、熱応力によって基板1にクラックが発生しやすくなる。基板1が窒化物系材料を含むとき、接合時に基板1の窒素と接合層3のチタンが反応して窒化チタンが形成される。窒化チタンの形成により、接合体100の接合強度を向上させることができる。金属部材2と接合層3との間では、接合時に、界面が溶融及び拡散することにより、接合体100の接合強度を向上させることができる。接合層3の界面での接合が強固になると、熱応力は接合層3内部に集中する。このため、接合層3の強度は、高いことが望ましい。
【0043】
実施形態に係る接合体100では、接合層3が、第1粒子11、第1領域21、及び第2領域22を含む。第1粒子11は、炭素を含む。炭素は、金属と濡れ性が良く無い。すなわち、第1粒子11は、第1領域21と濡れ性が良く無い。接合層3の内部に濡れ性が良く無い箇所が存在すると、その箇所に空隙が生じてクラックの起点となりうる。この結果、接合層3の強度が低下する可能性がある。
接合体100では、第1粒子11と第1領域21との間に、チタンを含む第2領域22が設けられる。第2領域22は、チタンに加えて、窒素、酸素、及び炭素などの、基板1から供給される元素を含む。このため、チタンの多くは、金属ではなく、酸化物や窒化物、酸窒化物、炭化物など、無機物の形で存在している。このような無機物の第2領域22を設けることで、第1粒子11と第2領域22との間の界面、及び第1領域21と第2領域22との間の界面が、それぞれ良好に形成される。すなわち、第1粒子11と第1領域21との間の濡れ性が改善される。この結果、接合層3の強度を向上させることができる。
【0044】
また、第2領域22は、第1粒子11の周りに設けられる。第2領域22は、複数の第2粒子12を含む。第1粒子11及び複数の第2粒子12は、粉体10として1つの固まりを構成している。複数の粒子が集合した粉体10を接合層3に設けると、粉体10が設けられた場所ではクラックの発生が抑制される。このため、接合層3の強度が向上する。
【0045】
接合層3の一断面を観察したとき、第2領域22は、第1粒子11の表面を90%以上覆っていることが好ましい。より好ましくは、第2領域22は、第1粒子11の表面の95%以上を覆う。第2領域22が第1粒子11の表面のより広い範囲を覆うことで、第1粒子11の周りにおける空隙の発生を抑制できる。これにより、接合層3の強度が向上する。
【0046】
第2領域22の厚みは、2nm以上1μm以下であることが好ましい。より好ましくは、第2領域22の厚みは、10nm以上500nm以下である。厚みが2nmより小さいと、濡れ性を改善する効果が弱くなる。また、厚みが1μmより大きい第2領域22の形成には、多くのチタン成分が必要である。第2領域22の形成に多くのチタン成分が使われると、基板1と接合層3との界面に形成される窒化チタン層が薄くなり、基板1と接合層3との間の接合強度が低下する可能性がある。
【0047】
第2領域22におけるチタンの含有率は、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、第2領域22におけるチタンの含有率は、60質量%以上である。第2領域22は、チタン及び窒素を含むことが好ましい。例えば、第2領域22に含まれる少なくとも1つの第2粒子12は、チタン及び窒素を含む。第2粒子12は、酸素をさらに含んでも良い。好ましくは、少なくとも1つの第2粒子12は、チタンと、窒素及び酸素からなる群より選択された少なくとも1つと、の結晶を含む。第2粒子12が結晶を含むことで、接合層3に発生する応力を緩和できる。
【0048】
複数の第1粒子11のそれぞれの周りに、第2領域22が設けられることが好ましい。一断面において、第1粒子11の全ての数に対する、第2領域22が周りに設けられていない第1粒子11の数の割合は、5%以下であることが好ましい。より好ましくは、前記割合は、3%以下である。前記割合が5%を超えると、空隙が発生し易くなり、接合層3の強度が低下する可能性がある。
【0049】
粉体10は、接合層3の断面において、厚み方向に15μm×表面方向に100μmの範囲に、5個以上存在することが好ましい。より好ましくは、粉体10は、前記範囲に、10個以上存在することが好ましい。厚み方向は、
図8に示す第3方向D3に対応する。表面方向は、
図8に示す第4方向D4に対応する。粉体10の数が多いほど、接合層3の強度をより向上できる。
【0050】
図9(a)~
図9(c)は、実施形態に係る接合体を示す模式的断面図である。
図9(a)に示す接合体110は、基板1、複数の金属部材2、及び複数の接合層3を含む。複数の金属部材2は、第1金属部材2a、第2金属部材2b、及び第3金属部材2cを含む。複数の接合層3は、第1接合層3a、第2接合層3b、及び第3接合層3cを含む。
【0051】
基板1は、第1面S1及び第2面S2を有する。第1金属部材2aは、第1面S1に沿う第2方向D2において、第2金属部材2bから離れている。第1金属部材2aは、図示しない部分で、第2金属部材2bと繋がっていても良い。第1金属部材2a及び第2金属部材2bは、それぞれ第1接合層3a及び第2接合層3bを介して、第1面S1に接合されている。第3金属部材2cは、第3接合層3cを介して、第2面S2に接合されている。
【0052】
図9(b)に示す接合体120は、接合体110と比べて、第4金属部材2d、第1接続部4a、及び第2接続部4bをさらに含む。第3金属部材2cは、第2方向D2において、第4金属部材2dから離れている。第3金属部材2cは、図示しない部分で、第4金属部材2dと繋がっていても良い。第4金属部材2dは、第3接合層3cを介して、第2面S2に接合されている。
【0053】
第1接続部4a及び第2接続部4bは、基板1中に設けられている。第1接続部4aは、第1方向D1において、第1接合層3aと第3接合層3cとの間に設けられ、これらの接合層と電気的に接続されている。第2接続部4bは、第1方向D1において、第2接合層3bと第3接合層3cとの間に設けられ、これらの接合層と電気的に接続されている。
【0054】
図9(c)は、実施形態に係る接合体110を用いた半導体装置210を示す。半導体装置210は、接合体110、半導体素子5、及び接合層6aを含む。半導体素子5は、接合層6aを介して、第1金属部材2aに接合されている。第1金属部材2aは、第1方向D1において、基板1と半導体素子5との間に位置する。
【0055】
半導体装置210は、ボンディングワイヤ7及び金属端子8をさらに含んでも良い。金属端子8は、接合層6bを介して、第2金属部材2bに接合されている。第2金属部材2bは、第1方向D1において、基板1と金属端子8との間に位置する。ボンディングワイヤ7は、第1金属部材2aと第2金属部材2bを接続している。接合層6a及び6bのそれぞれの組成及び構造は、接合層3の組成及び構造と同じでも良いし、異なっていても良い。
【0056】
実施形態に係る接合体の具体例を説明する。
基板1として、例えば、表1に示す2つの基板が用いられる。
【表1】
接合層3の材料として、例えば、表2に示す4つのろう材が用いられる。
【表2】
【0057】
金属部材2として、例えば、厚みが0.8mmの銅板が用いられる。基板1の上面及び下面にろう材ペーストを塗布する。ろう材ペーストの厚みは、25μmである。上面及び下面にそれぞれ金属部材を配置して接合する。上面に配置された金属部材をエッチング加工する。基板1と金属部材2を接合させる際の熱処理は、以下の7つの条件で実施される。
熱処理条件3~6では、基板1の温度を約600℃に保持したときの雰囲気、圧力、保持時間は、熱処理条件2と共通である。また、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持したときの雰囲気及び圧力は、熱処理条件2と共通である。熱処理条件7では、基板1の温度を850℃以上950℃以下に保持している。
(熱処理条件1)
1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持し、基板1を30分加熱する。非酸化雰囲気は、処理空間に存在する気体中の酸素濃度が25vol%以下であることを指す。
(熱処理条件2)
最初に、13.3Paの窒素雰囲気中で、基板1の温度を約500℃に保持し、基板1を30分加熱する。窒素雰囲気における窒素濃度は、90vol%である。次に、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、基板1の温度を約600℃に保持し、基板1を120分加熱する。その後、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持し、基板1を30分加熱する。
(熱処理条件3)
最初に、0.01Paの窒素雰囲気中で、基板1の温度を約500℃に保持し、基板1を30分加熱する。窒素雰囲気における窒素濃度は、99.9vol%である。次に、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、約600℃で加熱後、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持し、基板1を30分加熱する。
(熱処理条件4)
最初に、0.5Paの窒素雰囲気中で、基板1の温度を約500℃に保持し、基板1を60分加熱する。窒素雰囲気における窒素濃度は、70vol%である。次に、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、約600℃で加熱後、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持し、基板1を30分加熱する。
(熱処理条件5)
最初に、0.03Paの窒素雰囲気中で、基板1の温度を約500℃に保持し、基板1を120分加熱する。窒素雰囲気における窒素濃度は、80vol%である。次に、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、約600℃で加熱後、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持し、基板1を120分加熱する。
(熱処理条件6)
最初に、5Paの窒素雰囲気中で、基板1の温度を約500℃に保持し、基板1を150分加熱する。窒素雰囲気における窒素濃度は、70vol%である。次に、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、約600℃で加熱後、基板1の温度を700℃以上850℃以下に保持し、基板1を200分加熱する。
(熱処理条件7)
最初に、5Paの窒素雰囲気中で、基板1の温度を約500℃に保持し、基板1を150分加熱する。窒素雰囲気における窒素濃度は、90vol%である。次に、1×10-3Pa以下の非酸化雰囲気中で、約600℃で加熱後、基板1の温度を860℃以上950℃以下に保持し、基板1を100分加熱する。
【0058】
上述した各熱処理条件の概要を、表3に示す。
【表3】
【0059】
基板1の種類、ろう材の種類、及び熱処理条件の種類の組み合わせは、例えば表4に示す通りである。
【表4】
【0060】
それぞれの例に係る接合体について、ピール強度を測定し、且つTCTを行った。ピール強度は、基板1に1mm幅の金属部材2を接合し、金属部材2を垂直方向に引っ張ることで測定した。TCTでは、5000サイクル後の接合体における不具合の有無を測定した。1つのサイクルでは、-50℃で30分保持→室温で10分保持→200℃で30分保持→室温で10分保持を行なった。接合体における不具合は、超音波探傷装置(Scanning Acoustic Tomograph:SAT)により、基板1と金属部材2との間のクラック発生面積を求めた。クラック発生面積は、指数ηとして評価した。ηが100%の場合を「クラックなし」、0%の場合を「全面的にクラック発生」として示した。その結果を表5に示す。
【表5】
【0061】
表5の結果から、ろう材2~4のいずれかと熱処理条件2を用いたときは、ろう材1と熱処理条件1を用いたときに比べて、ピール強度を向上させ、クラックの発生を抑制できることが分かる。ろう材2~4は、ろう材1に比べて、炭素(C)をさらに含む。発明者らは、炭素が特性の向上に寄与していると推測した。発明者らは、この推測に基づき、接合層3において炭素を含む粒子に関する観察を行った。表6は、例1~7のそれぞれの接合層3の断面を電子顕微鏡により観察した結果を示す。粉体の数は、15μm×100μmの範囲を測定した。
【表6】
表6に示す厚みは、第2領域22の厚みを示す。第2領域22の厚みは、以下の方法で測定される。それぞれの第1粒子11の周りに存在する第2領域22の厚みを、第1粒子11から第1領域21に向かう一方向において測定する。方向は、無作為に決定される。それぞれの第2領域22の厚みは、次のように測定する。AMC断面を加工し、TEMで観察する。測定個所として、無作為に第2領域22を3か所選ぶ。測定個所の厚みを測定し、それらの平均値を「第2領域22の厚み」とする。
被覆率は、以下の方法で測定される。それぞれの第1粒子11について、外周の長さに対する、第2領域22と接する外周の長さの割合を計算する。それぞれの第1粒子11の割合を平均化し、「被覆率」とする。
【0062】
具体例に係る接合体の第2領域22を、STEM-EDSにより組成分析した。その結果、いずれの具体例においても、第2領域22におけるTi濃度は、50wt%以上であった。いずれの測定点からも、Ti、N、及びOが検出された。また、TEM像を観察すると、第2領域22は、微結晶の集合体であることが確認された。微結晶からは、炭素が検出された。
【0063】
炭素を含むろう材を用いたとき、接合層3にて粉体10が確認される。すなわち、炭素を含む第1粒子11と、チタンを含む第2領域22が、接合層3に存在する。そして、第1粒子11は、第2領域22により囲まれている。このような構造の粉体10が設けられることで、接合体の強度が向上し、クラックの発生が抑制されると考えられる。
【0064】
具体例に係る接合体の断面をSEMで観察した。それぞれの接合体の断面において、第1粒子11の長さLe1及びLe2を測定した。また、長さLe2に対する長さLe1の比(Le1/Le2)を計算した。長さLe1及びLe2の測定方法、及び長さLe2に対する長さLe1の比の計算方法は、上述した通りである。その結果を表7に示す。
【表7】
表7から、具体例に係る接合体において、第1粒子11の長さLe2に対する長さLe1の比は、1.2以上40以下の範囲内であることが確認された。
【0065】
以上で説明した各実施形態によれば、接合強度を向上できる接合体を提供できる。
【0066】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、接合体に含まれる基板、金属部材、接合層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0068】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0069】
その他、本発明の実施の形態として上述した接合体を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての接合体も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0070】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 基板、 2 金属部材、 2S 側面、 2U 上面、 2a~2d 金属部材、 3 接合層、 3J はみ出し部、 3a~3c 接合層、 4a,4b 接続部、 5 半導体素子、 6a,6b 接合層、 7 ボンディングワイヤ、 8 金属端子、 10 粉体、 11 第1粒子、 12 第2粒子、 13 第3粒子、 21 第1領域、 21a 第1部分領域、 21b 第2部分領域、 22 第2領域、 23 第3領域、 24 第4領域、 θ1 傾斜角度、 θ2 角度、 100~120 接合体、 210 半導体装置、 CL 中心線、 CS 接触面、 D1 第1方向、 D2 第2方向、 D3 第3方向、 D4 第4方向、 IS 交点、 L 層、 L1 第1層、 L2 第2層、 Le1,Le2 長さ、 S1 第1面、 S2 第2面、 T 厚み、 W 長さ