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特許7471459液体クロマトグラフのカラム接続方法及び液体クロマトグラフ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフのカラム接続方法及び液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01N30/86 T
G01N30/86 D
G01N30/86 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022569894
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044925
(87)【国際公開番号】W WO2022131075
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2020208207
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】杉目 和之
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 翔
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148604(JP,A)
【文献】特開2008-107136(JP,A)
【文献】特開2011-099679(JP,A)
【文献】特開2011-220789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0088946(US,A1)
【文献】特開2011-117815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86
G06K 7/10
G06K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフのカラム接続方法であって、
カラムをカラム設置部に設置した後、当該カラムを分析流路に接続する前に当該カラムの識別情報を読み取り、第1読取結果を得る第1ステップと
前記カラムを前記分析流路に接続した後に、当該カラムの識別情報を読み取り、第2読取結果を得る第2ステップと、を有し、
前記第1読取結果と前記第2読取結果とを比較し、前記カラムの同一性を判定する、
液体クロマトグラフのカラム接続方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体クロマトグラフのカラム接続方法であって、
前記第1読取結果に基づいて、前記カラムと前記分析流路との接続制限を解除する、
液体クロマトグラフのカラム接続方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液体クロマトグラフのカラム接続方法であって、
前記第2読取結果に基づいて、前記分析流路から前記カラムへの送液を許可する、
液体クロマトグラフのカラム接続方法。
【請求項4】
カラム接続機構を有する液体クロマトグラフであって、
前記カラム接続機構は、
カラムを設置するカラム設置部と、
前記カラム設置部に設置されたカラムの識別情報を読み取る読取装置と、
前記カラム設置部に設置されたカラムに対して分析流路を移動して接続する流路移動機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カラムが前記カラム設置部に設置された後、当該カラムを分析流路に接続する前に当該カラムの識別情報から得られた第1読取結果と、前記カラムを前記分析流路に接続した後に、当該カラムの識別情報から得られた第2読取結果とを比較し、前記カラムの同一性を判定する、
液体クロマトグラフ。
【請求項5】
請求項4に記載の液体クロマトグラフであって、
前記カラム接続機構が電動式ロックをさらに備え、
前記制御部が、前記第1読取結果に基づいて、前記カラムと前記分析流路との接続制限を解除するように前記電動式ロックを制御する、
液体クロマトグラフのカラム接続方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液体クロマトグラフであって、
前記制御部が、前記第2読取結果に基づいて、前記分析流路から前記カラムへの送液を許可する、
液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフのカラム接続方法及び液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
カラムを用いた分析方法としてクロマトグラフィーがある。カラムは一例としてシリカゲルやポリマーゲル等の母材に、各種官能基が結合した粒子の充填材を、円筒状の細長い容器に高圧で充填したものである。クロマトグラフィーは、物質が固定相とこれに接して流れる移動相との親和力(相互作用)の違いから一定の比率で分布し、その比率が物質によって異なることを利用して各物質を分離する方法である。液体クロマトグラフィーは、移動相として液体を用いる。
【0003】
分析対象によって、固定相及び移動相が極性の高い・低い性質や酸・アルカリなど各々対極的な性質が存在するため、分析者は固定相及び移動相共に適したものを選択しなければならない。
【0004】
特許文献1では、カラムごとに管理用電子タグが備えられており、分析処理前に推奨するクロマトグラフの送液条件や温度条件などを検出する。検出した情報を基に適切な条件でクロマトグラフが制御する分析システムが構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5345970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、情報を読み取る工程はカラムをクロマトグラフのカラムオーブンに装着させた後となるため、識別前にカラムの入口/出口部は分析流路と接続される。そのため操作者が誤ったカラムを装着させると、分析流路と接し使用済カラムと同等となり、更に固定相と移動相が不適な組合せとなる場合、カラムの品質を保つことができない。
【0007】
本発明の目的は、操作者が誤って設置したカラムを未使用として保つことが可能な液体クロマトグラフのカラム接続方法及び液体クロマトグラフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、液体クロマトグラフのカラム接続方法であって、カラムをカラム設置部に設置した後、当該カラムを分析流路に接続する前に当該カラムの識別情報を読み取り、第1読取結果を得る第1ステップと前記カラムを前記分析流路に接続した後に、当該カラムの識別情報を読み取り、第2読取結果を得る第2ステップと、を有し、前記第1読取結果と前記第2読取結果とを比較し、前記カラムの同一性を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作者が誤って設置したカラムを未使用として保つことが可能な液体クロマトグラフのカラム接続方法及び液体クロマトグラフを提供することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係るカラム接続機構の正面図。
図2】実施例1に係るカラム接続機構の上面図。
図3】実施例1に係るカラム接続機構の正面図(カラム-流路接続時)。
図4】実施例1に係るカラム接続のフローチャート。
図5】実施例2に係るカラム接続機構の正面図。
図6】実施例2に係るカラム接続機構の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0014】
なお、以下の実施例では液体クロマトグラフィー(HPLC)を例に説明しているが、本発明は分析装置全般に適用可能なものである。本発明は、例えば、ガスクロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー、HPLC/MSおよびカラム分離部を備える臨床検査装置にも適用できる。
【実施例1】
【0015】
一般的なHPLCは、送液ポンプと、インジェクタと、カラムと、カラムを温調するカラムオーブンと、送液ポンプとインジェクタと分離カラムを繋ぐ配管からなる。本実施例の装置全体の構成は、複数のHPLC流路を、HPLC流路を切替えるストリームセレクトバルブを介して1つの検出部に結合し、相互に分析を実施できるマルチストリームHPLC装置である。各HPLC流路は同一の構成からなり、並列に配置される。カラム自体は定期的に交換する消耗品のため、分析流路とカラムの着脱を定期的に行う。
【0016】
カラムは製造時期や推奨する分析条件を予め記録した管理用電子タグ(以下カラムタグ)を備える。カラムタグに代えて、カラムボディに付与したバーコード等で情報管理することも可能である。
【0017】
読取装置に対しカラムタグが平行平面となる位置関係が望ましい。しかし、一般的にカラムボディは円筒形状のため、タグを備える部位については平面取り、もしくは、カラム自体を直方体のカートリッジに封入し、カートリッジ上にカラムタグを備えることが望ましい。
【0018】
図1(正面図)及び図2(上面図)に基づいて、カラムと分析流路の接続機構(カラム接続機構)について説明する。
【0019】
カラムタグ102を備えたカラム101及び入口側流路103及び出口側流路104が直線上に位置し(Y座標、Z座標が等しい)、入口側流路103及び出口側流路104がそれぞれ直線運動することでカラム101と各流路が脱着できるよう配置する。
【0020】
入口側流路103及び出口側流路104は内径0.1mm、外径1/16インチ(≒1.59mm)のステンレス製としている。径や材質はこれに限る必要はなく、適宜設定可能である。
【0021】
交換機構ベース105上に、入口側流路103の入口側ガイドレール106及び入口側ガイドブロック107が配置され、入口側流路103の直線運動を行う。図1ではレール状のガイド及びブロックで表しているが、シャフトとブッシュのように直線運動が実現できるものでもよい。出口側流路104はカラム101の中心に対し入口側と対称に配置される。出口側流路104の直線運動を行う出口側ガイドレール108及び出口側ガイドブロック109も入口側ガイドレール106及び入口側ガイドブロック107と同様にカラム101の中心に対しと対称に配置される。
【0022】
入口側ガイドブロック107上に入口側流路ベース110、更に入口側流路ガイドブロック111が配置されている。入口側ガイドブロック107の運動に追従し、入口側流路103がカラム101の入口に挿入される。
【0023】
入口側と同様に、出口側ガイドブロック109上に出口側流路ベース112、更に出口側流路ガイド113が配置されている。出口側ガイドブロック109の運動に追従し、出口側流路104がカラム101の出口に挿入される。
【0024】
カラム101をカラム置台114に設置すると、カラムタグ102の中心位置に対し、図1の紙面の奥行方向に平行な直線上に読取装置115が配置される(X座標、Z座標が等しい)。
【0025】
読取装置115がカラムタグ102を読取り(第1読取)、設置したカラム101の正誤が確認されるまで、入口側流路103、出口側流路104と接しないよう、先端ロッドが出戻動作を行う電動式ロック116により、入口側流路103及び出口側流路104の直線運動が制限される。電動式ロック116は、電磁ソレノイド、空圧シリンダ、油圧シリンダ等、直線運動を行うものが挙げられる。
【0026】
カラム101をカラム置台114に設置する際に、操作者がカラム101と入口側流路103及び出口側流路104に誤って接触しないよう、カラム保護カバー117がカラム101の入口側、出口側に設置されている。カラム保護カバー117には、カラム101と入口側流路103及び出口側流路104との接続時、入口側流路103及び出口側流路104だけを通す孔が設けられている。入口側流路103及び出口側流路104の外径を1/16インチ(≒1.59mm)とした場合、この孔の径は2mm程度とすることが望ましい。
【0027】
カラム101と入口側流路103及び出口側流路104とが接続するには、それぞれ流路側からカラムへ一定の力で押圧し続ける必要がある。
【0028】
押圧の手段は、手動ハンドル、電動モータ、エアシリンダ等が挙げられる。
【0029】
第1読取でカラム101が正しいと判断されると、電動式ロック116が解除され(入口側流路103及び出口側流路104の直線運動を制限しない位置に電動式ロック116の先端ロッドが移動し)、入口側流路103及び出口側流路104がカラム101と接続することができる。
【0030】
図3はカラム101と入口側流路103及び出口側流路104が接続された状態を表している。第1読取で誤りと判断した場合は、電動式ロック116は解除されないまま(入口側流路103及び出口側流路104の直線運動を制限する位置に電動式ロック116の先端ロッドが突出したまま)となる。このため、このカラムを取り外し、カラムの設置から再度行う。
【0031】
第1読取後に操作者が誤って別のカラムと取り違えないように、カラム101と入口側流路103、出口側流路104の接続後に、再度カラムタグ102を読取り(第2読取)、第1読取と同一であることを確認する。第2読取で誤りと判断した場合、カラム101をカラム置台114から取出し、入口側流路103及び出口側流路104を接続前(初期位置)に戻し、電動式ロック116のロッドを出の状態にする等リセット動作がかけられる必要があるため、一例としてフォトインタラプタを活用し初期位置を検知するものが望ましい。
【0032】
制御部100は、読取装置115による第1読取、第2読取の結果を受けて、電動式ロック116の動作を制御する。制御部100は、設置したカラム101の正しさを検証するために必要な情報を予め記憶していてもよいし、外部から当該情報を取得してきてもよい。また、制御部100はカラム接続機構内に設けられる必要はなく、外部の制御装置であってもよい。
【0033】
以上の工程後、カラム101に対して移動相及び分析サンプルが送液され、クロマトグラフによる分析が行われる。
【0034】
図4は、カラムと分析流路の接続するフローチャートである。
【0035】
カラム設置指示が通知され(S1)、ユーザーがカラムを設置し(S2)、設置されたカラムのカラムタグを読み取って、設置したカラムが正しいかを判定する第1読取を行う(S3)。
【0036】
第1読取(S3)において、設置したカラムが正しくないと判定された場合(No)、カラム設置指示の通知(S1)へ戻る。設置したカラムが正しいと判定された場合(Yes)、電動式ロック116を解除するロック解除を行う(S4)。
【0037】
その後、カラム101と入口側流路103及び出口側流路104との接続を行うカラム-流路接続を行い(S5)、流路と接続されたカラムのカラムタグを読み取って、接続されたカラムが正しいかを判定する第2読取を行う(S6)。
【0038】
第2読取(S6)において、接続したカラムが正しくないと判定された場合(No)、カラムの取り出し(S7)と、入口側流路103及び出口側流路104の位置を戻し、電動式ロック116の解除を取り消す流路位置・ロックリセットの実施(S8)とを経て、カラム設置指示の通知(S1)へ戻る。接続したカラムが正しいと判定された場合(Yes)、カラム101への送液や加熱が許可され、カラム101を利用した分析の開始が可能となる(S9)。これらの制御は制御部100が行ってもよいし、他の制御装置で行ってもよい。
【実施例2】
【0039】
図5(正面図)及び図6(上面図)はカラム501をカートリッジ502に封入し、カラムタグ503をカートリッジ502上に備えた交換機構を表している。カートリッジ502、及びカラムタグ503、カラムカートリッジ置台504以外の構成及び交換工程については図1図2図3で示したものと同一である。
【0040】
本実施例によれば、カラムカートリッジ上にカラムタグ503を設けられるため、読取装置に対しカラムタグが平行平面となる位置関係を容易に実現可能である。
【0041】
上述の各実施例によれば、分析流路に接続する前にカラムの識別情報を読み取り、カラムの正誤を判断し、正しいと判断しないとカラムと流路が接続できない機構を有する。よって、操作者が誤って設置したカラムを、未使用として保つことができる。
【0042】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
100:制御部、101:カラム、102:カラムタグ、103:入口側流路、104:出口側流路、105:交換機構ベース、106:入口側ガイドレール、107:入口側ガイドブロック、108:出口側ガイドレール、109:出口側ガイドブロック、110:入口側流路ベース、111:入口側流路ガイドブロック、112:出口側流路ベース、113:出口側流路ガイド、114:カラム置台、115:読取装置、116:電動式ロック、117:カラム保護カバー、501:カラム、502:カラムカートリッジ、503:カラムタグ、504:カラムカートリッジ置台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6