(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240415BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/20 505
(21)【出願番号】P 2020083919
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良春
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-116858(JP,A)
【文献】特開2018-072492(JP,A)
【文献】特開2007-057647(JP,A)
【文献】特開平07-234626(JP,A)
【文献】特開2011-095569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を加熱する加熱装置と、
気流を発生させる気流発生装置と、
前記気流発生装置によって発生する気流を案内する流路形成部材と、
を備える画像形成装置であって、
前記加熱装置は、
加熱源と、
前記加熱源によって加熱される加熱部材と、
前記加熱部材に対向して前記加熱部材との間にニップ部を形成する対向部材と、
を備え、
前記流路形成部材は、一対の冷却用流路と、前記一対の冷却用流路のそれぞれの上部において前記一対の冷却用流路が合流する水蒸気回収流路とを有し、前記対向部材の下方から前記対向部材の上方へ向かって伸びる筒状のダクトであり、
前記冷却用流路は、前記対向部材に対向するように配置される冷却口
を有し、
前記水蒸気回収流路は、前記対向部材の上方であって、前記対向部材の長手方向中央に対して前記冷却口よりも長手方向に近い位置に配置される水蒸気流入口
を有し、
前記ダクトは、前記対向部材の下方から前記一対の冷却用流路内に空気を吸引し、吸引した空気を前記一対の冷却用流路の前記冷却口を介して前記対向部材に吹き付け、前記記録媒体が加熱された際に生じる水蒸気の少なくとも一部を前記水蒸気流入口から前記水蒸気回収流路内に流入させ、前記水蒸気を前記対向部材に吹き付けられた前記空気と合わせて外部へ排出する画像形成装置。
【請求項2】
記録媒体を加熱する加熱装置と、
気流を発生させる気流発生装置と、
前記気流発生装置によって発生する気流を案内する流路形成部材と、
を備える画像形成装置であって、
前記加熱装置は、
加熱源と、
前記加熱源によって加熱される加熱部材と、
前記加熱部材に対向して前記加熱部材との間にニップ部を形成する対向部材と、
を備え、
前記流路形成部材は、一対の冷却用流路と、前記一対の冷却用流路のそれぞれの上部において前記一対の冷却用流路が合流する水蒸気回収流路とを有し、前記対向部材の下方から前記対向部材の上方へ向かって伸びる筒状のダクトであり、
前記冷却用流路は、前記記録媒体が通過しない非通過領域で前記対向部材に対向するように配置される冷却口
を有し、
前記水蒸気回収流路は、前記対向部材の上方であって、前記記録媒体が通過する記録媒体通過領域に対応する位置に配置される水蒸気流入口
を有し、
前記ダクトは、前記対向部材の下方から前記一対の冷却用流路内に空気を吸引し、吸引した空気を前記一対の冷却用流路の前記冷却口を介して前記対向部材に吹き付け、前記記録媒体が加熱された際に生じる水蒸気の少なくとも一部を前記水蒸気流入口から前記水蒸気回収流路内に流入させ、前記水蒸気を前記対向部材に吹き付けられた前記空気と合わせて外部へ排出する画像形成装置。
【請求項3】
前記水蒸気流入口は、前記冷却口よりも前記流路形成部材の気流案内方向下流側に配置される請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記水蒸気流入口は、前記ニップ部よりも上方に配置される請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記水蒸気流入口は、前記対向部材の長手方向と交差する方向に長く形成されている請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記水蒸気流入口は、前記対向部材の長手方向に長く形成されている請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記流路形成部材は、前記水蒸気流入口よりも前記対向部材の長手方向両端側にそれぞれ前記冷却口を有し、
前記各冷却口に対応して前記気流発生装置を1つずつ備える請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記流路形成部材によって案内される気流を画像形成装置外又は記録媒体搬送路外に排出する排気口を備える請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記排気口から画像形成装置外又は記録媒体搬送路外に気流を排出する排気装置を備える請求項
8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置として、記録媒体上の画像を熱により定着させる定着装置や、記録媒体上のインクを乾燥させる乾燥装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2017-187806号公報)においては、記録媒体を挟んで加熱するフィルムやローラの非通紙領域における温度上昇や、水蒸気が結露した際の記録媒体のスリップの問題を改善するため、フィルムやローラに送風するファンを備える定着装置が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の定着装置においては、ファンから送風することにより、フィルムやローラの非通紙領域を冷却して過剰な温度上昇を抑制すると共に、水蒸気をフィルムやローラの近傍から別の場所へ排出して結露による記録媒体のスリップを抑制できるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の定着装置においては、ファンからフィルムやローラへ送風される範囲が、主にフィルムやローラの長手方向両端側の非通紙領域であるため、長手方向中央側の通紙領域においては、送風の効果が得られにくい。このため、特に長手方向中央側(通紙領域)において発生する水蒸気を加熱装置の周囲から効果的に排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体を加熱する加熱装置と、気流を発生させる気流発生装置と、前記気流発生装置によって発生する気流を案内する流路形成部材と、を備える画像形成装置であって、前記加熱装置は、加熱源と、前記加熱源によって加熱される加熱部材と、前記加熱部材に対向して前記加熱部材との間にニップ部を形成する対向部材と、を備え、前記流路形成部材は、一対の冷却用流路と、前記一対の冷却用流路のそれぞれの上部において前記一対の冷却用流路が合流する水蒸気回収流路とを有し、前記対向部材の下方から前記対向部材の上方へ向かって伸びる筒状のダクトであり、前記冷却用流路は、前記対向部材に対向するように配置される冷却口を有し、前記水蒸気回収流路は、前記対向部材の上方であって、前記対向部材の長手方向中央に対して前記冷却口よりも長手方向に近い位置に配置される水蒸気流入口を有し、前記ダクトは、前記対向部材の下方から前記一対の冷却用流路内に空気を吸引し、吸引した空気を前記一対の冷却用流路の前記冷却口を介して前記対向部材に吹き付け、前記記録媒体が加熱された際に生じる水蒸気の少なくとも一部を前記水蒸気流入口から前記水蒸気回収流路内に流入させ、前記水蒸気を前記対向部材に吹き付けられた前記空気と合わせて外部へ排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱装置の周囲から水蒸気を効果的に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る送風ファン及びダクトの側面図である。
【
図4】本実施形態に係る送風ファン及びダクトの背面図である。
【
図5】本実施形態に係る送風ファン及びダクトの斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0012】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニング装置5と、を備えている。露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段である。なお、
図1では、1つの作像ユニット1Bkが備える感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニング装置5のみに符号を付しており、その他の作像ユニット1Y,1M,1Cにおいては符号を省略している。
【0013】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。中間転写ベルト11は、表面に画像を担持してその画像を用紙に転写する転写部材であり、無端状のベルト部材で構成されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0014】
定着部400には、用紙を加熱する加熱装置であって、熱により用紙上の画像を定着させる定着装置9が設けられている。
【0015】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0016】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0017】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0019】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーやその他の異物はクリーニング装置5によって除去され、感光体2は次の静電潜像の形成に備えられる。
【0020】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0022】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ニップ形成部材23と、ステー24と、反射部材25と、高熱伝導部材26と、分離部材27と、を備えている。
【0024】
定着ベルト20は、ヒータ22によって加熱される加熱部材であると共に、用紙P上の未定着画像を定着させる定着部材である。具体的に、定着ベルト20は、ニッケルもしくはSUSなどの金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された基材と、基材の外周面に設けられたテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などから成る離型層と、を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む。)によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどのゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0025】
加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材であると共に、定着ベルト20に加圧される加圧部材である。具体的に、加圧ローラ21は、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFA又はPTFEなどから成る離型層によって構成されている。加圧ローラ21は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト20に対して加圧(圧接)され、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に、ニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ21が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nにおいて定着ベルト20に伝達されることにより、定着ベルト20が従動回転する。
図2に示すように、未定着画像を担持する用紙Pが、回転する定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に進入すると、定着ベルト20と加圧ローラ21とによって用紙Pが加熱されると共に加圧され、未定着画像が用紙Pに定着される。
【0026】
本実施形態では、加圧ローラ21を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ21の内部にヒータを配置してもよい。また、加圧ローラ21が弾性層を有しない場合は、熱容量が小さくなるため、定着性が向上する。しかしながら一方で、未定着トナーを定着させるときに、ベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、加圧ローラ21が厚さ100μm以上の弾性層を有することが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層があることにより、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができ、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。加圧ローラ21の弾性層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ21の内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いることも可能である。ソリッドゴムに比べてスポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト20の熱が奪われにくくなる点で望ましい。
【0027】
ヒータ22は、定着ベルト20を加熱する加熱源である。本実施形態では、ヒータ22として、ハロゲンヒータが用いられている。また、ハロゲンヒータ以外に、カーボンヒータ、セラミックヒータなどの他の輻射熱式のヒータを用いてもよい。また、電磁誘導加熱方式の加熱源を用いることも可能である。本実施形態では、2つのヒータ22が定着ベルト20内に配置されているが、ヒータ22の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0028】
ニップ形成部材23は、定着ベルト20の内側に配置され、加圧ローラ21からの加圧力を受けて定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材23の材料としては、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材を用いることが望ましい。具体的に、ニップ形成部材23の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性部材でニップ形成部材23を構成することにより、定着温度域で、熱によるニップ形成部材23の変形を防止することができるため、安定したニップ部Nの状態が確保でき、出力画質の安定化を図れる。
【0029】
ステー24は、ニップ形成部材23の加圧ローラ21側とは反対側に接触して、ニップ形成部材23を支持する支持部材である。ステー24によってニップ形成部材23が支持されることにより、加圧ローラ21の圧力によるニップ形成部材23の撓み、特に定着ベルト20の長手方向に渡るニップ形成部材23の渡る撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24の材料としては、剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料が好ましい。
【0030】
反射部材25は、ヒータ22から放射される熱及び光(例えば、赤外線光)を反射する部材である。反射部材25によってヒータ22の熱や光が定着ベルト20に向かって反射されることにより、定着ベルト20が効率良く加熱される。また、反射部材25は、ステー24とヒータ22との間に配置されており、ヒータ22によるステー24の加熱も抑制できる。このため、熱エネルギーの無駄な消費を低減でき、省エネルギー化も図れる。
【0031】
また、反射部材25の機能を、ステー24に持たせてもよい。例えば、ヒータ22に対向するステー24の対向面を鏡面処理することにより、ステー24が反射部材25の機能を兼ねるように構成することができる。この場合、反射部材25を別途設けなくてもよいので、小型化及び低コスト化に有利となる。
【0032】
高熱伝導部材26は、ニップ形成部材23と定着ベルト20との間に介在し、定着ベルト20の熱量をその長手方向に移動させ、定着ベルト20の表面温度を均一化させる均熱部材として機能する部材である。高熱伝導部材26は、ニップ形成部材23よりも熱伝導率が高い部材によって構成される。高熱伝導部材26の材料としては、例えば、銅、アルミニウム、あるいは銀などを用いることができる。
【0033】
分離部材27は、ニップ部Nから排出された用紙Pを定着ベルト20から分離する部材である。分離部材27は、ニップ部Nの出口側(用紙搬送方向下流側)で定着ベルト20の外周面に対向するように配置されている。用紙Pがニップ部Nから排出されると、用紙Pの先端が分離部材27に接触することにより、用紙Pが定着ベルト20の表面から分離され、用紙Pが定着ベルト20に巻き付くのを防止することができる。
【0034】
ところで、ニップ部の通紙領域においては、定着ベルトや加圧ローラの熱が用紙によって奪われる傾向にあり、一方、用紙が通過しない非通紙領域においては、反対に定着ベルトや加圧ローラの熱が奪われにくい傾向にある。このため、特に複数枚の用紙を連続して定着処理した場合は、非通紙領域における定着ベルトや加圧ローラの熱が蓄積し、温度が上昇するといった、いわゆる端部温度上昇の問題が発生する。
【0035】
また、定着装置においては、定着処理の際に、用紙が加熱されると、用紙に含まれる水分が水蒸気となってニップ部から周囲に放出される。その後、この水蒸気が定着装置やその周辺で結露し、結露によりできた水滴が加圧ローラの表面に付着すると、用紙と加圧ローラの間でスリップが発生し、これが原因で画像不良や搬送不良が生じる問題がある。また、結露によりできた水滴が、用紙搬送路に設けられたガイド部材などに付着すると、用紙に水滴跡がついて画像不良となったり、両面印刷の場合に用紙の裏面に水滴が付着して画像が形成できなくなったりする虞がある。
【0036】
そこで、本実施形態においては、非通紙領域における定着ベルトや加圧ローラの温度上昇、及び水蒸気の結露によるスリップを抑制すべく、定着装置9の周辺に
図3~
図5に示すような送風ファン30やダクト31を設けている。以下、送風ファン30及びダクト31の構成について説明する。
【0037】
図3~
図5は、それぞれ、本実施形態に係る送風ファン30及びダクト31の側面図、背面図、及び斜視図である。
【0038】
図3~
図5に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100においては、定着装置9の周辺に気流を発生させる気流発生装置としての送風ファン30と、送風ファン30によって発生する気流を案内する流路形成部材としてのダクト31と、が設けられている。ダクト31は、概ね加圧ローラ21の下方から、加圧ローラ21のニップ部N側とは反対側を通過し、加圧ローラ21の上方へ向かって伸びるように設けられている。ダクト31の下部には、送風ファン30が配置され、送風ファン30からの気流は、ダクト31を通って上方へ案内されるように構成されている。
【0039】
図4及び
図5に示すように、ダクト31は、加圧ローラ21の長手方向Xに互いに離れた位置に配置される一対の冷却用流路32と、各冷却用流路32が合流する水蒸気回収流路33と、を有している。なお、本明細書における「加圧ローラ21の長手方向X」とは、加圧ローラ21の軸方向のことであり、通紙方向(記録媒体通過方向)とは直交する用紙幅方向(記録媒体幅方向)と同方向を意味する。
【0040】
一対の冷却用流路32は、加圧ローラ21のニップ部N側とは反対側の表面に対向する冷却口34を有している。このため、各冷却口34が設けられた箇所では、加圧ローラ21の表面に対して冷却用流路32内を通過する気流が吹き付けられる。
【0041】
水蒸気回収流路33は、加圧ローラ21の上方で下方を向く面に設けられた複数の水蒸気流入口35を有している。このため、定着処理の際に用紙から発生する水蒸気は、水蒸気流入口35からダクト31の水蒸気回収流路33内に流入する。
【0042】
ここで、
図4に示す符号W1は、最小幅サイズの用紙が通過する最小通紙領域である。一方、
図4に示す符号W2は、最大幅サイズの用紙が通過する最大通紙領域である。例えば、最小幅サイズの用紙がA6用紙であり、最大幅サイズの用紙がA4サイズである場合は、最小通紙領域W1が105mm、最大通紙領域W2が210mmとなる。本実施形態では、水蒸気流入口35が最小通紙領域W1内に配置され、各冷却口34が最小通紙領域W1の外側でかつ最大通紙領域W2内に配置されている。
【0043】
本実施形態に係る画像形成装置において、最小幅サイズの用紙が複数枚連続して通紙されると、最小通紙領域W1よりも外側の非通紙領域では、用紙によって定着ベルト20や加圧ローラ21の熱が奪われにくいため、定着ベルト20や加圧ローラ21の温度が上昇する。しかしながら、本実施形態に係る画像形成装置においては、一対の冷却口34が、最小幅サイズの用紙が通過しない非通紙領域(具体的には、
図4に示す最小通紙領域W1の外側でかつ最大通紙領域W2内の領域W3)に配置されているため、各冷却口34から吹き付けられる気流によって加圧ローラ21の非通紙領域が冷却される。そして、これにより、定着ベルト20の非通紙領域も冷却される。すなわち、ダクト31内を流れる気流は、各冷却口34を介して主に加圧ローラ21のニップ部Nとは反対側の表面部分に吹き付けられるが、これにより冷却された加圧ローラ21の表面部分は加圧ローラ21の回転に伴ってニップ部Nで定着ベルト20に接触し、定着ベルト20の熱を吸収することにより、定着ベルト20が間接的に冷却される。これにより、非通紙領域における定着ベルト20及び加圧ローラ21の過剰な温度上昇を抑制することが可能である。
【0044】
また、本実施形態に係る画像形成装置においては、定着処理の際に用紙から水蒸気が発生しても、発生した水蒸気の少なくとも一部が加圧ローラ21の上方に配置される水蒸気流入口35を通してダクト31(水蒸気回収流路33)内に流入することにより回収される。特に、水蒸気流入口35は、水蒸気の発生しやすい通紙領域W1に対応して配置されているので、通紙領域W1において発生する水蒸気を効率よく回収することができる。そして、回収された水蒸気は、気流の流れに沿ってダクト31内を通過し、ダクト31の最下流に設けられた排気口36(
図4参照)から画像形成装置外に排出される。これにより、定着装置9の周辺に滞留する水蒸気を減らすことができ、水蒸気が結露することによる用紙のスリップや、画像不良を抑制できるようになる。また、排気口36からは、加圧ローラ21に吹き付けられることにより温められた空気も排出されるため、熱気が定着装置9の周辺に滞留するのを抑制できる。このため、定着装置9の周辺温度を低下させることができ、冷却効率を向上させることも可能である。なお、ダクト31の排気口36は、画像形成装置の外部に面する部分ではなく、画像形成装置内に配置されていてもよい。そのような場合でも、排気口36が用紙搬送路外(記録媒体搬送路外)に配置されることにより、定着装置9の周辺や用紙搬送路の周辺から熱気や水蒸気を除去することができ、結露による用紙のスリップや画像不良を抑制することが可能である。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置においては、ダクト31が、非通紙領域W3に配置された冷却口34と、通紙領域W1に配置された水蒸気流入口35と、を有していることにより、非通紙領域W3における定着ベルト20及び加圧ローラ21の過剰な温度上昇と、用紙から発生する水蒸気の結露との両方を、効果的に抑制することが可能である。これにより、定着ベルト20及び加圧ローラ21の過剰な温度上昇に伴う部品の損傷や、結露が生じることによる用紙のスリップ及び画像不良が生じにくくなり、信頼性が向上する。また、本実施形態のようなダクト構造を採用することにより、定着処理の速度を低下させるなどの定着ベルト20や加圧ローラ21の温度上昇を抑制する対策をとらなくてもよくなるため、小サイズ用紙の生産性を向上させることもできるようになる。
【0046】
図4に示すように、本実施形態に係る画像形成装置においては、各冷却用流路32のそれぞれに送風ファン30を1つずつ配置しているが、各冷却用流路32の上流側を1つの共通流路とし、その共通流路に1つの送風ファンを配置してもよい。また、ファン以外の気流発生装置を用いてもよい。さらに、送風ファン30に加え、排気口36又はその近傍に排気口36から気流を排出する排気装置としての排気ファン37(
図4における二点鎖線参照)を設けてもよい。その場合、気流の速度を速めて、冷却効果や水蒸気回収量を増大させることが可能となる。
【0047】
本実施形態では、冷却口34及び水蒸気流入口35が、最小幅用紙の通紙領域W1と非通紙領域W3とに分けて配置されているが、冷却口34及び水蒸気流入口35が配置される通紙領域及び非通紙領域は、最小幅サイズ以外の用紙の通紙領域及び非通紙領域であってもよい。すなわち、水蒸気流入口35は、最小幅サイズ、最大幅サイズ、あるいはこれらの間の中間幅サイズなどの種々の幅サイズの中から特定された特定の幅サイズの記録媒体が通過する記録媒体通過領域に配置され、冷却口34は、その特定の幅サイズの記録媒体が通過しない非通過領域に配置されていればよい。
【0048】
また、本実施形態では、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向中央を基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式を採用しているため、通紙領域よりも幅方向両側(外側)が非通紙領域となる。このため、本実施形態では、水蒸気流入口35が、加圧ローラ21の長手方向中央C(
図4参照)に対して冷却口34よりも長手方向に近い位置(中央寄り)に配置されている。ただし、本発明は、中央基準搬送方式の画像形成装置に限らず、各種幅サイズの用紙がその幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0049】
また、水蒸気流入口35は、通紙領域内に加え、非通紙領域に配置されていてもよい。その場合、より広い領域に渡って水蒸気を回収することができ、結露をより一層抑制することができるようになる。一方、冷却口34は、通紙領域内に配置されない方が好ましい。冷却口34が通紙領域内に配置されていると、加圧ローラ21の通紙領域に気流が直接吹き付けられることにより、定着ベルト20の通紙領域の温度が低下し、定着不良の原因となる虞があるからである。この点、本実施形態に係る画像形成装置においては、冷却口34が非通紙領域のみに配置されているため、通紙領域の温度低下を防止でき、良好な定着性が得られる。
【0050】
また、本実施形態に係る画像形成装置においては、冷却口34が、定着ベルト20ではなく、加圧ローラ21に対向するように配置されているため、定着ベルト20の表面に気流が直接的に吹き付けられるのを回避することができる。これにより、定着ベルト20の通紙領域の温度が送風の直接的な影響を受けて低下したりばらつきが生じたりするのを抑制でき、通紙領域の温度が安定し、良好な定着性が得られるようになる。なお、冷却口34の位置は、加圧ローラ21にニップ部Nとは反対側の位置に限らず、加圧ローラ21に対向するその他の位置であってもよい。
【0051】
一方、水蒸気流入口35は、
図3に示すようなニップ部Nの上方に配置されることが好ましい。用紙から生じる水蒸気は、通常上方へ移動するので、水蒸気流入口35がニップ部Nや加圧ローラ21の上方に配置されていることにより、水蒸気が水蒸気流入口35へ流入しやすくなる。このため、水蒸気流入口35がニップ部Nや加圧ローラ21の上方に配置されている場合は、水蒸気を効率よく回収することができ、結露が生じることによる用紙のスリップ及び画像不良をより一層効果的に抑制できるようになる。なお、ここでいう「ニップ部Nや加圧ローラ21の上方」は、ニップ部Nや加圧ローラ21の真上(鉛直方向上方)のみに限らず、ニップ部Nや加圧ローラ21よりも高い位置を広く含み、定着処理に伴って用紙から生じた水蒸気の少なくとも一部を回収できる位置であればニップ部Nや加圧ローラ21の真上以外の位置であってもよい。
【0052】
また、本実施形態に係る画像形成装置においては、水蒸気流入口35が、冷却口34よりもダクト31の気流案内方向下流側に配置されているため、冷却口34の位置で加圧ローラ21に吹き付けられて温められた空気が下流側の水蒸気流入口35へ送られる。このため、本実施形態に係る画像形成装置においては、水蒸気流入口35から回収された水蒸気がダクト31内で結露しにくくなり、水蒸気を排気口36から効果的に排出することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る画像形成装置においては、水蒸気流入口35が、加圧ローラ21の長手方向Xと交差する方向(直交又は斜め方向)へ長く伸びるスリット状の孔で構成されているため、結露した水滴が水蒸気流入口35の縁に付着しても、その水滴が水蒸気流入口35を伝ってその長手方向へ移動することにより、水滴を加圧ローラ21の上方や用紙搬送路から遠ざけることができる。これにより、水滴が加圧ローラ21や用紙搬送路のガイド部材などに付着するのを回避でき、用紙のスリップや画像不良の発生をより確実に抑制できるようになる。
【0054】
また、本実施形態とは異なり、
図6に示す例のように、水蒸気流入口35を、加圧ローラ21の長手方向Xへ長く伸びるように形成してもよい。この場合、水蒸気を加圧ローラ21の長手方向Xに渡ってムラなく回収することができるようになる。
【0055】
また、水蒸気流入口35の形状や大きさ及び数は、適宜変更可能である。例えば、水蒸気流入口35を、円形の孔とし、水蒸気回収流路33の壁に多数設けてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、一対の冷却用流路32と水蒸気回収流路33とが一体に構成されているが、これらを別体で構成してもよい。各冷却用流路32と水蒸気回収流路33とを別体で構成することにより、これらを定着装置9の周囲に設置する際の組付け性が向上する。
【0057】
また、加圧ローラ21の変形防止やジャム処理作業性向上のために、加圧ローラ21が定着ベルト20に対して接近離間可能に構成されている場合は、加圧ローラ21の接近離間動作に応じて、各冷却用流路32が連動するようにすることが好ましい。これにより、加圧ローラ21を定着ベルト20から離間させ、加圧ローラ21の変形(塑性変形)を防止できると共に、ジャム処理作業も行いやすくなる。
【0058】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態では、定着ベルトと加圧ローラとを備える定着装置を例に説明したが、本発明は、定着ベルトの代わりに定着ローラを備える定着装置にも適用可能である。また、加圧ローラの代わりに加圧ベルトを用いた定着装置であってもよい。
【0059】
また、本発明に係る定着装置は、
図1及び
図2に示すような用紙を下方から上方へ搬送する定着装置に限らず、用紙を水平方向に搬送する定着装置であってもよい。
【0060】
さらに、本発明は、画像形成装置に搭載される加熱装置の一例である定着装置に適用される場合に限らない。例えば、インクジェット式の画像形成装置において、用紙を加熱して用紙上のインク(液体)を乾燥させる乾燥装置などの加熱装置にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(加熱部材)
21 加圧ローラ(対向部材)
22 ヒータ(加熱源)
30 送風ファン(気流発生装置)
31 ダクト(流路形成部材)
32 冷却用流路
33 水蒸気回収流路
34 冷却口
35 水蒸気流入口
36 排気口
37 排気ファン
100 画像形成装置
C 加圧ローラの長手方向中央
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
X 加圧ローラの長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】